【艦これ】妙高さんは焦ってる (34)

足柄 「そろそろねー  本気にねー将来のことをねー」

那智「考えなければいかんか 」

足柄「だからさー 一緒に参加しましょうよ。ほら婚活パーティーの参加用紙」

那智「ううぅ 婚活など飢えて発情した女のようで恥ずかしいな」

足柄「ねぇ  今私のことディスらなかった? らなかった?」

足柄「まあいいわ 相棒。宜しく頼むわね」

那智「今回だけだぞ」

足柄「いやいや、これからも、よ。 やっぱ街コンとかペアが望ましいことは多いし」

足柄「頑張りましょ 20代のうちに」

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そんな会話を妹たちがしているのが聞こえ
なんとも言えない虚脱感と不快感を覚えた妙高
2○歳  来年には3○歳 年齢は秘密。

足柄はどうして若さが先短い自分を誘ってくれなかったのか
那智だって合コン向きではないのに

性格?
トーク力?
ま、まさか年齢では

自分も行きたいという言葉を押し込めてただただ焦っていた。

妹がガチ婚活開始した自分独身そりゃそうだ
二人ともその気になればあっさり決まりそうなタイプだし
下手したら

数年後。妹三人の子供にお年玉をあげて
「ありがとう妙高おばちゃん」と 呼ばれる三十代半ば独身私?

「ドン!!」

足柄「うにゃ? 今の音なに?」
那智 「その『うにゃっ』ての外で言ったら他人のフリな」

机に妙高ヘッドを打ち付けながら考える
「先を越されたくない」
「負けてたまるか」
「だがどうやったら」

恥ずかしながらこの年齢にして男性とのお付き合いは
お見合いで外出の機会を持った人が二人のみ

その時の方に大きな不満はなかったが
特段ときめきもなく、急ぐ必要もなくお断り
そのあとこんな男女比率の場所で仕事をするとは思わなかった。

女は何百人
男は提督以外は憲兵さんたちくらい

提督は四十代半ば。穏和なおじさま
育ちの良さそうな顔と雰囲気にファンは多いが
普通に妻帯者なせいかカッコカリすら未実行。

憲兵さんたちは常に無表情で愛想もなく、 っていうか仕事柄あたりまえだよね。
どちらも相手としては考えにくく

なら妹たちのように外で交際相手を求めなければいけないのに
見栄とプライドと若くもない自分の年齢が邪魔をして
積極的な取り組みができないこともう六周年。

ホントに若くなくなったし、妹ですら焦ってる。

行動を起こさなければならない
かと言って

鈴谷「でさー 来週合コンなに着てくー」
熊野「下士官相手ですわよね  普段着でよろしいのでは?」
愛宕「うーん 熊野ちゃんの普段着高そうね」
プリンツ「お金持ちいいなー  よーし狙うはクマノーコシ」
熊野「な、なにを狙って」
鈴谷「きゃはははは」

リア充系に混じる勇気はない
あったらそれは勇気ではない。無謀だ。

文月「みてみてー ほら口紅塗ってみたのー」
皐月「 うわぁっ ! かっわいいね!」
三日月「はい、素敵です」
文月「えへへ これで文月も  お と な の女なの」
皐月「ボクも試していい?」
三日月「み、三日月も」

あの集団にも入れない

入っていたら   …よそう、おぞましい妄想は。

どうしたらいいか

相談できる女子力の高い人
パッと思いついたのは妹。
多少悩んだが聞くは一時の恥。聞かぬは一生の恥

思いきって思いの丈を打ち明けてみると
羽黒「女子力 ですか」
彼女はきょとん首をかしげ。くそう姉から見ても可愛いなこの子。

羽黒「あのあのその」

羽黒「私から見ても姉さんは料理も掃除もしっかり女子力高いと」

羽黒「でもでも 逆に高すぎて隙がない気がします」

妙高「隙?」

羽黒「はい 押せばなんとかなりそうな感がないと行動が起こしにくいです」

羽黒「とりあえず手に取りたくなるように演出するのはマーケティングの基本」

羽黒「完全防備ではなくあえて隙を作り攻め手を誘導  そこで屠る」

羽黒「島津が誇る釣り野付せ 男女の間でも有効かと」

と、最初は自信なさげ、途中から真顔のとても真摯な回答。
大変勉強になった
あと少し人間不信になった。


羽黒「まずは 自分で考えて実行。さらに色々な子に意見を求めるとよいと思います」

羽黒「そして最後、見違えた姿を私に見せてください」

と言われたので隙のある姿について検討。

好きで集めている池波正太郎と少女漫画に頼った結果

とりあえず食パン咥えながら走ってみることにする。

古典的方法と侮るなかれ
今でもは 孫子は戦略理論として高い評価を受けている。

さぁ、パンを咥え
手を肩幅に開き地面につけ
腰を高くあげて

犬も歩けば棒に当たる、妙高歩けば誰に当たる当たった人に相談してみよう
はい 位置について よーい スタート!!

妙高「キャー 遅参遅参ー」

「グベっ」

艦娘の瞬発力で概ね初速80キロ。最初の曲がり角で誰かに衝突
当たり所は悪かったようで

妙高「あらやだ変な効果音」

ぶつかった時の音は鈍く。

初風「この首の角度を見てその反応はおかしい」

衝突した相手はちょっと顔が曲がっている。

妙高「艦娘たるもの45度程度までかすり傷」

だから大丈夫ではあるのだけど

初風「いやいやいや」

初風「それでどうしてパンなんか咥えて」ゴキゴキ

妙高「かくかく」モグモグ

初風「しかじか と」ヨウセツー

初風「そんなこと駆逐艦に聞かれてもねぇ。じゃなかった聞かれましても」

初風「じゃあ笑顔を増やしてみましょう」
妙高「笑顔?」
初風「いつも眉間に皺寄せてるイメージあるし、たまには満面の笑みを」
妙高「あなたに言われるとは思わなかった」
初風「確かに」

まぁ正論なので試してみよう

と、言っても自分はいきなり笑顔を作れるキャラじゃない

一生懸命考えたあげく、 全表情筋を用い、脳内では睦月ちゃんを模倣した満面の笑みを

初風:(*´'Д'):;*.':;ブファ

披露したところ目の前の少女はとっても失礼な反応をした

初風「いや、あの、 他意は」

初風「妙高姉さん。もう、やめ  やめて もう45度」

初風「あっ、今凄くいい笑顔。そんな本性」

初風「助けて憲兵さん。ここに悪魔のサディストが がががっ」

教育的指導に勤しんでいたところ
ピーピーと笛を吹きながら慌てた憲兵が走り寄ってくる。

残念。
90度にチャレンジしたかったのに。

吐瀉物で汚れた手を拭って次の相談相手探し

さて、やはり自分のキャラクターというものを自覚しないといけませんね
そう
私、妙高に求められているものは明るい笑顔ではない
自分でいうのもなんですが 可愛いより美人系の顔立ち
そうだ美人系の子に聞いてみましょう

美人美人美人

「扶桑さん」は造形はともかく目指したらいけないのはわかる

「狭霧ちゃん」さすがに駆逐艦はねぇ

「グラーフ」洋物もちょっと

あら、 ちょうどいい感じなのが
「すいませんちょっと」
飛鷹:?

妙高「かくかく」

飛鷹「しかじかなのね」

たまたま通りかかった美人系に内容説明

飛鷹「ん~?」

飛鷹「妙高さんはそんなに女子力が低いようには思えないのだけれど…」

飛鷹「しいて言うならお召し物」

妙高「服装ですか?」

横の鏡を 見る

うん、今日も 皺一つない軍服。

飛鷹「それじゃダメなのよ」

飛鷹「自分で選んだだろう服で男性はその人の印象を決める」

飛鷹「常に同じ服では一つの印象しか与えられない」

飛鷹「妙高さんも ほら たまには別の服を

飛鷹「多分私と体型ほぼ同じじゃない?ちょっと測らせてね」

そう言うとメジャーを取り出してひと測り
満足そうに頷いて奥から高そうな着物をとりだすと

飛鷹「この髪どうなってるの? 解くと案外長いのね」

人のことを着せかえ人形扱い

飛鷹「はーい、手上げてー脱いでー着てー」

和服は初体験、手順がわからないので支持に従う。

飛鷹「あら? あらあらら?」

飛鷹「誰?」

自分でやっといて誰とはなんだ
と、思いながら鏡を見ると
平安時代のお姫様っぽい人がいた。

妙高「誰!?」

飛鷹「うん、イメージがチェンジ大成功」

妙高「タイ厶もトラベルしてますが…」

飛鷹「まぁいいじゃない じゃ表一回りしてきましょうか」

妙高「えっ」

翌日
謎の艦娘
服装から空母系と推測される女性の目撃情報が多数寄せられた。

妙高「ひ、秘密ですからね」
飛鷹「オッケー 」

それ以降も月に1度程度は目撃されることがあるという。

誰も知らない違った自分って。やだ、楽しい。 

さて次次
表情 服装 つまり外面を整えた後
私、妙高は
「内面的なことを整えるべきだ」と考えた。

具体的にはなにか。
苦手な分野鍛えるべきつまりそれは

鹿島「鹿島になにかご用ですか?」

妙高「かくかく」

鹿島「なるほど苦手な技能を習得したいと でも鹿島に教えられるでしょうか」

妙高「一応言っておくと性的な講義と勘違いした的なボケは不要です」

鹿島「チッ」

妙高「指導願いたいのは男性との会話術を」

鹿島「一口に男性との会話術と言われても相手のタイプにより模範解答は異なり」
鹿島「ところでなんで鹿島に?」
妙高「そういうとこだぞ」

ケースバイケースで提案してくれるのがプロ、知ってる。

鹿島「ではどんな相手を狙うかヒアリングから始めましょう。男性にどのような条件を求めますか?」

妙高「ありのままの私を大切にしていただけたら」 

鹿島「他には? 例えば財力とか容姿社会的地位」

妙高「いえ、そちらだけで十分」

鹿島「はい 妙高さん アウトー」

妙高「ええっ」

なんで?

ピンポーン

「宅急便でーす」

鹿島「お、ちょうどいいところに来たこの荷物。中身は定期購読している女性誌」

鹿島「あなたのリアルな離婚原因欄 はい上位は生活費などの金銭面」

鹿島「フルタイム共働きすれ違い」

鹿島「やっぱりお金 子供ができればお金がかかる。日々の暮らしにはお金がかかる」

妙高「…お金などなくてもよいと思うのですが」

妙高「そういう打算的なのはちょっと」

妙高「やはり夫婦とはお互いを大切に思えれば」

鹿島「いいですか?」

鹿島「妻に豊かな暮らしと、社会的身分を提供するために努力し、結果を出す。それが愛です」

鹿島「金はないけど愛している? うふふっ。ソレなんてギャグ?」

鹿島「メルカリで大切に使うからタダで下さい。って言ったら誰かくれます?」

妙高「…違います!! それは確かに豊かなほうがよいかもしれませんが」

妙高「不幸にも経済的基盤に恵まれなかった方 運に恵まれなかった方」

妙高「そんな方であっても、相手を大切にする気持ちさえあれば十分に幸せな家庭は築けると」

鹿島「それは違います!!」

妙高「いいえ!!」

結局喧嘩別れ
金銭がもたらす価値についての理解が成立しなかった。

仕方ない。内面は妹に教えてもらおう。

と、不完全な状態ではあるが再度羽黒に指導を乞うと。

羽黒「大丈夫、もう十分に支度は整いました」

えっ?

私のやったことといえば駆逐艦の首を絞めたのと、コスプレと口喧嘩くらい
いったいなんの支度が

羽黒「まぁ実際のところ姉さんくらいの容姿で体形で社会的身分であれば相手など困らないのです」

羽黒「姉さんが自ら動く気さえあれば」

羽黒「ただ、姉さんは真面目だから。訓練パートを挟まないと動き出さないのでしょう?」

…確かに

羽黒「さぁ 訓練後は実戦  モテ期はもうすぐそこですね!」

妙高「本当に?」
そう言われるとそんな気がしてくる

羽黒「まぁ見たところ」

羽黒 「もう来ているかも知れませんが」ニヤリ






憲兵A「お、おい凄かったなさっきの」
憲兵B「ああ、まさに眼福と言うのだろうな」

憲兵A「見た瞬間、全身に稲妻が走ったよ」
憲兵B「恥ずかしながら股間がもう」

憲兵A「そうだよなぁ えがったよなぁ」
憲兵B「首を絞めながらの笑み ハアハア妙高さんたまらん」
憲兵A「えっ?」
憲兵B「え ?」


憲兵A「ソコぉ?」
憲兵A「レベル高い  ついてけん」
憲兵B「なんと言われようが構わん 俺は彼女に総てを捧げる」
憲兵B「願わくばあの笑顔を 眼前に」ハアハア
憲兵A「同僚が変態だった」

ここに一人 妙高への愛を得た男が生まれた

憲兵B「じゃあお前は何に興奮してたん?」
憲兵A「泡吹いて白目な初風ちゃん」

提督「明石さん これをいただけるかな」つ指輪

明石「あ、はいまい、  ど?」

提督「それとこれを郵送頼むよ、ただ送ればわかるようには話した」

明石「離婚届け!?」

明石「 い、い、いったいなにが」

提督「いい年をして恥ずかしいが 一目惚れでね」

名も知らぬ女
先日すれ違った
和装でセミロングの黒髪の女性

提督「すべてを捨てても…第二の人生を歩みたくなった」

提督「妻帯者では挑戦券は得られないだろう?」

明石「oh… なぜ貴方のような常識人がこんな」

提督「わからない…わからないんだ」

提督「捨て去るにはもう荷物を抱えすぎた年なのにな…」

提督「だが…他の道が考えられない」

明石「はぁ…」

「やはり夫婦とはお互いを大切に思えれば」

一晩たってもあの言葉が頭から離れない

高校を中退して三年。学も技術もなく、仕事も女も自分を軽んじているのを実感。
職を転々としてとりあえずたどり着いた配送員アルバイト

目的もなくただただ荷物を配り歩く毎日にはとっくに嫌気
退職日を考えつつ、訪ねた場所で聞こえた言葉。

あんな美人でもそういう風に考えたりするものなのか

…ひょっとしてチャンスがある?

考えはまとまらないけれどとりあえず退職届けを出すのはやめた。

おや、またあの地区への配達が…
もしまたあの人に会えたならば…


若く、安定した仕事を所持しつつ多少性癖の歪んだ憲兵
一回り以上年が離れバツイチだが、 人柄財産権申し分のない提督
若さと気持ちだけ握りしめたフリ ーター

それぞれ一癖ある彼らとの四角関係

さぁ 妙高さんのモテ期はこれからだ!!


第一部 完 (続かない)

一方同時刻  とあるセミナーホール

男「ぜひ結婚前提に」
男「むしろ今すぐ」
男「どちらでもいいです」
男「むしろダブルで」

大規模婚活パーティ会場にて
二人にもモテ期は来ていた

那智「お、お、おちつけ君たち話せばわか あっ馬鹿触るな  押すな」
那智「あし、足柄っ プロフィール欄になんて書いた」

足柄「職業国家公務員 2○歳 容姿職業問わず即結婚願望希望者全員に面談の機会あります先着順 って」
那智「人手不足企業の求人か」
足柄「あと スリーサイズに水着写真に握手件」
那智「アイドル気取りかよ」


迫り来る50人近くの男性と他参加女性の白い目
5人目くらいからはもう名前も覚えられず、 疲れは溜まり
握手を求めてくる手は臭い

那智「もう 帰りたい」
足柄「あはははは 選り取りみどりぃ」 
足柄「どう? モテモテの感想は」
那智「とほほ もう婚活なんてコリゴリだよ」

おわり。

あの黒丸が画像の端から絞られてくる演出、アイリスアウトって言うのね。

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