【ガルパン】まほ「我々は“ひまわり中隊”だ」操縦手「ひまわりぃ?」 (59)

・劇場版の公開を受けて、まほが搭乗するティーガー車内の様子を再び妄想してみました。
 前作↓
 まほ「西住流に、逃げるという道はない」操縦手「いいから始めようよ。隊長」 - SSまとめ速報
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・劇場版の核心部分について盛大にネタバレしています。未視聴のかたは御注意ください。
・実在及び架空の人物・団体などとは一切関係ありません。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467972655

──対大学選抜試合前 作戦会議テント


みほ「連携がとれる距離を保ちつつ、離れ過ぎないよう注意してください!」

一同「はい!!」

まほ「分かった」

ダージリン「で、ここからが肝心なんだけど…」

一同「……」

ダージリン「作戦名はどうする?」

アンチョビ「3方向から攻めるんだから、3種のチーズピザ作戦!」

カチューシャ「ビーフストロガノフ作戦がいいわ! 玉ネギと牛肉とサワークリームの取合せは最高よ!」

ダージリン「フィッシュ・アンド・チップス・アンド・ビネガー作戦と名付けましょう」


アーダコーダ カンカンガクガク


まほ「好きな食べ物と作戦は関係ないだろう」

カチューシャ「じゃあ何がいいのよ?」

まほ「ニュルンベルクのマイスタージンガー作戦はどうだ。これは3幕から成るオペラ…」

河嶋「長い!」

まほ「大隊長、決めてくれ」

みほ「じゃあ……」


──黒森峰ティーガーⅠ車内


砲手「ふぅ。やっぱ黒森峰のパンツァージャケットを着て自分の席に座ると落ち着くぜ」

装填手「でも先輩」

砲手「何だ」

装填手「大洗の制服、似合ってましたよ。先輩に」

砲手「……」

通信手「そうね。それにあんた、結構まんざらでもなかったみたいじゃない」

砲手「何だ? どういうことだ」

通信手「あんなに可愛い制服着られて嬉しかったんでしょ?」

操縦手「黒森峰の制服ってダサいからねえ」

装填手「他校の生徒には陰でさんざんバカにされてるらしいですよ」

通信手「お嬢様学校の聖グロリアーナとかに比べると、月とスッポンね」

操縦手「大洗って黒森峰より規模が小さい学校だけど、制服は…」

装填手「可愛さでいったら、大洗の圧勝ですね」

通信手「あんたはそんな制服着られて、しかも似合ってた」

砲手「……」

通信手「意外と嬉しかったんじゃない?」

砲手「……///」

装填手「あれ? 先輩、赤くなってませんか?」

砲手「うっせーな。大体どうしてあたしたち、あんな制服着なくちゃならなかったんだ」

操縦手「我らが西住まほ隊長の指示だから」

通信手「私たちは今だけ短期転校して、大洗の生徒」

装填手「その生徒が自分の学校の制服を着る。どこにもおかしいことはないと思います」

砲手「メンドくせーんだよ。いちいち制服着たり、やっぱジャケットに着替えたり」

装填手「全て隊長の指示ですし」

操縦手「従わないわけにいかないよね」

砲手「全国大会が終わって、戦車道から引退したはずだったのに……」

操縦手「あんたにはいい暇潰しだと思うけどね。もう大学への推薦入学が決まってるんだから」

砲手「そりゃそうだが、お前はどうなんだ。こんなことしてていいのか?」

操縦手「確かに、受験勉強で忙しいはずだよね」

砲手「前にも言ったが、お前もまほさんやあたしと同じく戦車道で推薦を取れば良かったんだ」

操縦手「その話はもういいよ。普段ガリ勉してる私にとってこの試合、いい気分転換だよ」

砲手「そうか」

操縦手「またこのティーガーで思いっ切り走らせてもらうよ」

砲手「ま、仕方ねーなあ……あたしも一丁暴れてやるか」

装填手「この5人が再びそろいました。伝説の黒森峰最強チーム、一時復活です!」

砲手「そういえば、その最強チームで一番肝心な人はどうした」

通信手「まほちゃんは試合前の作戦会議に行ってるの」

操縦手「実力校の隊長や副隊長たちが勢ぞろいしてる会議。壮観だろうね」

装填手「でも、その中心にいるのがあの頼りなかったみほなんて、信じられません」

通信手「当然のことじゃない。大洗の隊長だもの」

操縦手「うん。つまり大洗と、短期転校した私たち全員のリーダーだね。西住妹ちゃんは」

砲手「……」

通信手「さて、私は作戦行動が始まる前にひと仕事しないと」

砲手「ひと仕事?」

通信手「今のうちに大洗の隊長車へ挨拶をしておかなくちゃ」

操縦手「そうだね。試合の最中、連携が必要になることが絶対あるはずだから」

通信手「みんなで今の私たちのリーダー、みほちゃんに挨拶をしておこうよ」

操縦手「久しぶりに妹ちゃんと話すのかあ。少し嬉しいかもね」

装填手「自分も、元クラスメイトですから懐かしいです」

通信手「ほら。あんたも、よ?」

砲手「……」

通信手「何よ、ムスッとしちゃって」

砲手「……」

通信手「昔のことはもういいじゃない」

装填手「でも…」

通信手「何?」

装填手「みほのせいで優勝を逃したあの時、誰よりも悔しがってのは先輩でしたから」

通信手「それにしたって……」

砲手「……」

通信手「あんた、みほちゃんに対してずっとそんな態度でいる気? 何しに来たのよこんな所まで」

砲手「……」

通信手「まあいいわ。好きなだけそうしていなさい」

通信手「こちら元黒森峰、隊長車ティーガーⅠ。大洗女子学園隊長車、応答願います」

通信手「こちら黒森峰女学園から転校して来ましたティーガーⅠです」

通信手「大洗女子学園隊長車、応答願います」

沙織『こちら大洗女子学園隊長車Ⅳ号、あんこうチームです』

通信手「あんこう?」

沙織『はい。うちの学校ってチームごとに動物のニックネームが付いてて…』

通信手「そう。あなたが通信手? 私はティーガーⅠの通信手、中村幸子です」

沙織『中村さんですね、初めまして。私はⅣ号通信手の武部沙織です』

通信手「初めまして。今回はよろしくお願いします」

沙織『私たちこそです。助けに来てくれてマジで超感謝してます。ホントにありがとうございます』

通信手「“マジで超”? ふふふ。武部さん、あなた何年生?」

沙織『え? 2年ですけど……』

通信手「それなら3年生の私のほうがお姉さんね。じゃあ、沙織ちゃんって呼んで構わない?」

沙織『あ、はい! 堅苦しくない方が嬉しいです! 私も幸子さんって呼んでいいですか?』

通信手「もちろん。沙織ちゃん、“マジ”とか“超”なんて、戦車乗りらしくないわね」

沙織『そうですか? だって私たち、戦車に乗り始めてまだそんなに経ってなくて……』

通信手「戦車道を始めたばかりなのに全国大会を制覇したのね。すごいわね」

沙織『そんなことありません。あれはみぽ…西住隊長がいたから』

通信手「ねえ沙織ちゃん」

沙織『はい、幸子さん』

通信手「いきなりこんなふうに先輩面されて気を悪くした?」

沙織『それって逆です。幸子さんってすごくフレンドリーな人でホッとしました』

通信手「ホッとした? どうして?」

沙織『だって、黒森峰の隊長車に乗ってる人たちって、戦車道の超エリートで…』

通信手「……」

沙織『怖いくらいに頭が切れまくってて、喋ることとかやることに無駄が全然ない…』

通信手「……」

沙織『そういう人たちなんだろうなあ、って思ってたんです』

通信手「そんなことないわよ。私たちの隊長を見ればそう考えるかもしれないけど」

沙織『あ』

通信手「何?」

沙織『うちの隊長が作戦会議から戻って来ました。──みぽりん、丁度良かった』

みほ『──何が?』

沙織『──黒森峰の戦車の人と今、無線がつながってるよ』

みほ『──えっ!?』

沙織『──どうしたの?』

みほ『──だ、誰と?』

沙織『──ティーガーⅠの通信手、中村幸子さんって人。めっちゃいい人だね』

みほ『──あ、さっちゃん先輩かぁ』

沙織『──さっちゃん先輩?』

みほ『──うん。“黒森峰のお母さん”っていわれてる人なの』

沙織『──お母さん?』

みほ『──黒森峰の戦車隊を陰でまとめて支えてるのは、この人っていわれてるの』

沙織『──……』

みほ『──優しくて全員に好かれてて、後輩からは苗字じゃなくてさっちゃん先輩って呼ばれてる』

沙織『──……』

みほ『──そういう人が隊長車の通信手だから。黒森峰を陰でまとめてる人っていわれてるの』

沙織『──ふーん』

華『──沙織さん、お立場が似ているじゃありませんか』

みほ『──お姉ちゃんもこの人には頭が上がらない。お姉ちゃんを怒れるのは戦車隊でこの人だけ』

優花里『──あの西住まほ殿に対して意見できる人なんてすごいです!』

みほ『──さっちゃん先輩たち、全国大会が終わって引退したはずなのに…』

沙織『──……』

みほ『──もう一回、ティーガーに乗ってくれたんだ……』

通信手「沙織ちゃん?」

沙織『はい? …あっ、しまった!』

通信手「何やってるの? さっきからそっちの会話が丸聞こえよ?」

沙織『はっはい、すいません!』

通信手「そういう場合はモードを切り替えなくちゃ」

沙織『はい……』

みほ『さっちゃん先輩、お久しぶりです』

通信手「久しぶりね、みほちゃん」

みほ『私、もう、皆さんにどうお礼を言ったらいいか…』

通信手「そんなこと気にしないで」

みほ『……』

通信手「ね、みんな?」

操縦手「妹ちゃん、久しぶりだねえ。操縦手の松本文子だよ」

みほ『松本先輩……来てくれてありがとうございます』

装填手「みほ、元気にしてた? 私が誰か分かる?」

みほ『うん。装填手の村上和子さん……ありがとう』

通信手「で、最後はこの人」

みほ『……』

通信手「ほら敏子、いつまでもそんな顔してるんじゃないわよ」

砲手「……」

通信手「あんたさっき“一丁暴れてやるか”って言ってたじゃない」

砲手「……」

通信手「暴れてやる前に、今の私たちのリーダーに挨拶くらいしなさいよ。砲手、田中敏子」

みほ『いえ、いいんです。さっちゃん先輩』

通信手「みほちゃん……」

みほ『田中先輩。お久しぶりです』

砲手「……」

みほ『私、あの時のことを…』

砲手「うっせーな」

みほ『……』

砲手「黙れよ。済んだことをグダグダと口にするんじゃねーよ」

みほ『……』

通信手「まあ呆れた。その“済んだこと”をいつまでも気にしてる人は誰?」

砲手「もちろんあたしは、お前のせいで全国大会の優勝を逃したことを忘れない」

みほ『……』

砲手「そして次の全国大会で、お前に優勝を攫われたことも忘れない」

みほ『……』

砲手「だが、あたしはただの砲手だ。ただの射撃の職人、ただの一兵卒だ」

みほ『田中先輩……』

砲手「隊長や副隊長、あたしを指揮する者の命令には必ず従う。そして必ず、結果を出す」

みほ『はい、先輩は常に結果を出し続けてきました。狙った相手車両を必ず撃破してきました』

砲手「今のあたしを指揮するのはお前なんだな?」

みほ『はい……私が全体の指揮を執ります。私が今回の試合の大隊長です』

砲手「そうか。じゃあ大隊長」

みほ『はい』

砲手「命令しろよ、あたしへ」

みほ『……』

砲手「命令して、あたしを使えよ」

みほ『……』

砲手「あたしは射撃の職人。その腕前をもう一度見せてやるよ。お前が望む結果を出してやるよ」

みほ『はい、ありがとうございます。よろしくお願いします、田中先輩』

砲手「分かったなら、あたしからの挨拶は以上だ」

みほ『はい』

砲手「……」

通信手「ふふふ」

砲手「……何だよ。人の顔見て笑うんじゃねーよ」

通信手「ふふふ。ねえ敏子、結局こういうことになるんじゃない」

砲手「……」

通信手「面倒臭い女ね、あんたって。ふふふ」

砲手「……うっせーな」

まほ「お前たち、待たせたな」カチャ

通信手「あ、こっちも隊長が戻って来た。沙織ちゃん、そろそろ交信を終了しましょう」

沙織『分かりました。じゃあこれからよろしくお願いします、さっちゃん先輩』

通信手「あら、沙織ちゃんも私をそう呼んでくれるの?」

沙織『あっ? す、すいません馴れ馴れしくて! こっちの方が呼びやすいし、つい…!』

通信手「ふふふ。その呼び方で構わないわよ。私は今、同じ学校の先輩だものね」

まほ「どこかと無線がつながっているのか」

通信手「みほちゃんのⅣ号よ。まほちゃん、代わる?」

まほ「いや、必要なことは会議で話した。今ここで言葉を重ねる必要はない」

通信手「そう。…沙織ちゃん、交信を終了します」

沙織『了解。交信を終了します』

操縦手「遅かったね、隊長。Ⅳ号の車長はとっくに戦車へ戻ってるよ」

まほ「サンダースのケイやプラウダの二人、グロリアーナの田尻たちと少し雑談をしてきた」

砲手「つい、話がはずんじまったか」

まほ「メールなどをやり取りすることはあるが、実際に顔を合わせるのは滅多にないからな」

装填手「そんなすごい人たちが集まってる場面、自分も見てみたかったです」

通信手「でも“田尻”って、ダージリンさんのこと? そういう本名だったかな」

まほ「ん? 違ったか。まあどうでもいい。ダージリンだから田尻くらいが妥当だ」

通信手「ひどいわねえ、人の名前のことなのに」

まほ「そんなことより、隊の編成が決定した。まずチームのお前たちにそれを伝える」

装填手「はい、隊長」

まほ「全体を大隊とし、それは3個中隊から成る」

砲手「さっき無線で言ってたが、大隊長があいつだな」

まほ「ああ、みほだ。そして我々は中隊の一つを率いる中隊長車となり、私が隊長だ」

操縦手「その中隊にはどんな車両が所属するの?」

まほ「元黒森峰の4両と元プラウダの4両、そして大洗のⅢ号突撃砲とヘッツァー」

通信手「それなら副隊長はカチューシャさん?」

まほ「そのとおりだ」

砲手「へー。あたしたちを全国大会でおちょくりまくったあのヘッツァーと同じ隊の仲間になるのか」

操縦手「面白い試合になりそうだね。やっぱり来て良かったね」

装填手「中隊ということは、その下に更に細分化された小隊などがあるんでしょうか」

まほ「大隊長はそのことへ特に言及しなかった」

装填手「え。でも…」

まほ「何か考えがあると思われるが、その時点で詳らかに知る必要がなかったので誰も質問しなかった」

砲手「あいつのことだ。何両かピックアップした特殊小隊でも状況次第で作る気なんじゃねーか」

装填手「なるほど……」

操縦手「各中隊に番号や名称はあるの? 隊を識別するのに必要な」

まほ「ん? 隊の名前か」

通信手「うん。特に私はそれを早く憶えないと」

まほ「我々は“ひまわり中隊”だ」

装填手「はあ?」

操縦手「ひまわりぃ?」

まほ「ほかの2個中隊は、大洗を主体とし、みほが中隊長を兼ねる“たんぽぽ中隊”と…」

一同「……」

まほ「サンダースを主体とした“あさがお中隊”。これはケイが隊長だ」

一同「……」

通信手「まほちゃん…」

まほ「何だ」

通信手「その名前を、考えたのって…」

まほ「みほだ」

通信手「やっぱり……」

砲手「何ていうか……」

装填手「変わってませんねえ……」

操縦手「妹ちゃんの、独特のセンスだよね……」

砲手「独特のセンスといえば、あの噂って本当なのか?」

通信手「あの噂?」

砲手「あいつの部屋は、キモいぬいぐるみで埋め尽くされてるっていう……」

操縦手「あ。それ、私も聞いたことがある」

通信手「キモいぬいぐるみ? どんな?」

装填手「それは“ボコられグマ”ですね……」

通信手「何それ?」

砲手「知ってるのか?」

装填手「はい……。“ボコられグマ”は、基本的にはただのクマのぬいぐるみなんですけど…」

操縦手「うん」

装填手「どれも体のどこかをケガしてて、絆創膏、包帯や眼帯、傷を縫い合わせた跡があるんです」

通信手「何よそれ……気味が悪い」

操縦手「妹ちゃんの部屋にそれがいっぱいある、部屋が埋め尽くされてるって噂なんだよね」

砲手「で、本当なのか? その噂は」

装填手「本当みたいですよ。別に本人とかへ確かめたわけじゃないですけど」

通信手「でもそんな気色の悪いぬいぐるみなんて、どう手に入れるの? お店で売られてるの?」

装填手「そうみたいです。ちゃんと売り物になってるらしいんですよ」

砲手「売ってることも驚きだが、それを買う奴がいるのはもっと驚きだ」

装填手「熱狂的なマニアがいるって話です」

操縦手「妹ちゃんはそのマニアの一人ってことか。でも絶対、そんなマニアなんて少数派だよね」

装填手「そのクマのテーマパークとかミュージアムみたいなのがどこかにあるって話も聞きました」

通信手「そんな所へ行く人なんているのかな。お客さんが来なくてすぐ潰れちゃうんじゃない?」

砲手「まほさん」

まほ「何だ」

砲手「本当なのか? その噂は」

まほ「……人の趣味だ。周囲がとやかく言うことではない」

砲手「否定しねーのか。やっぱ本当なんだな」

通信手「でも、いくら趣味だからって…」

操縦手「そんなキショいぬいぐるみだらけの部屋なんて…」

砲手「まほさん、姉貴なのに放っとくのか? 妹がそんなことになってて」

まほ「……だから、人の趣味の問題だと言っているだろう。それに…」

装填手「何ですか?」

まほ「“埋め尽くされてる”とは少しひどくないか? 棚やベッドに幾つか並んでる程度だ……」

操縦手「そんな物が部屋にあるってだけで十分だよ。インパクト強烈過ぎ」

通信手「まほちゃん、敏子の言うとおりよ。まほちゃんはそれでいいの?」

まほ「……」

通信手「お姉さんとしてそれでいいの?」

まほ「……」

通信手「どうして黙ってるの?」

まほ「怒らないでくれ、こんなことで……」

通信手「別に怒ってなんかないわよ。訊いてるだけよ」

まほ「お前に怒られると、お母様に叱られてる時みたいで怖いんだ……」

通信手「わけの分からないこと喋らないで頂戴。まほちゃん、お姉さんとして何も感じないの?」

まほ「私だって、あの趣味はいかがなものか、と思ってるんだ……」

一同「……」

まほ「だが、みほはあの趣味について語り始めると、妙にテンションが高くなるほどだし……」

砲手「まあ冷静に考えると、周囲にとってはキモいだけで実害があるわけじゃねーな」

操縦手「無理にやめさせたり、取り上げたりする必要なんてないかもね」

通信手「個人の趣味なんだからそっとしておくべき、ってことか……」

まほ「聞いたところによると、大洗のみほの部屋にも、そのぬいぐるみがたくさんあるらしい」

装填手「やっぱり……」

操縦手「これも妹ちゃんの、独特のセンスだよね……」

まほ「そんなことはどうでもいい。次に、作戦の概略について説明するぞ」

一同「作戦……?」

まほ「どうした」

一同「……」ジー

まほ「何だ。どうしてお前たち、私をそんな目で見つめるんだ」

操縦手「訊いたほうが、いいのかな……」ボソ

砲手「だが、訊かねーわけにもいかねーし……」ボソ

通信手「まあ、予想どおりの結果だろうけど……」ボソ

装填手「そうですね……」ボソ

まほ「何だ。どうしてお前たち、そんなボソボソ声で喋るんだ」

操縦手「隊長…」

砲手「まず…」

通信手「作戦の、名前を…」

装填手「教えて、くれますか……?」

まほ「ん? 作戦名か」

一同「……」ジー

まほ「議論百出したが、最後に鶴の一声でこう決まった」

一同「……」ジー

まほ「“こっつん作戦”だ」

一同(こっつん作戦? 何それ……)

砲手「まほさん。鶴の一声って言ったが…」

まほ「ああ」

操縦手「その名前を、考えたのって…」

まほ「みほだ」

一同(やっぱり……)

~~~~~~~~~~~


──遊園地跡 中央広場


まほ「今だ!」

みほ『撃て!』


ズガァァアアアン


シュバッ


通信手「敵副官搭乗車パーシングの2両目をⅣ号が撃破!」

装填手「残ってるのは…!?」

通信手「最後の副官搭乗車パーシング1両、そして隊長車のセンチュリオン」

砲手「こっちはこのティーガーとⅣ号。これで2対2だ」

まほ「油断するな。敵はいつでも我々を見ている。左へ回頭」

操縦手「分かってる。あっちにパーシングが来てるね」


ゴガガガガガ


まほ「相手は常に動き回り、常に我々を狙っている。気を抜くな」

砲手「これが変幻自在の忍者戦法か」

まほ「こちらも同じように動き回るぞ」

砲手「どっちも動いてて狙いにくいったらねーぜ」

まほ「それを何とかするのがお前の仕事だ」

砲手「そんなのは分かり過ぎるほど分かってる。よし、あそこだ!」カチ


ドォォォオオオン


砲手「チッ、逃げられたか」

まほ「追え」

操縦手「了解」


グォォオオンン


装填手「あっ、でも進路が錯綜して後ろを取られた…!?」

操縦手「ここはいろんな乗り物や遊具がごちゃごちゃ置かれてるからね。走り甲斐があるよ」

まほ「構わん、そのまま行け。我々を追わせろ」

操縦手「了解」


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


まほ「Ⅳ号と敵隊長車の状況を確認しろ」

通信手「沙織ちゃんたち、今どこで何してる?」

沙織『富士山みたいな山の周りでセンチュリオンと撃ち合ってます!』

通信手「まほちゃん、それぞれ一対一の状況よ」

まほ「前方に乗り物がある。あれは何と言ったか」

装填手「バイキングです!」

まほ「あれを撃て」

砲手「何だと?」

まほ「あれを動かせ。スイングさせろ」

砲手「分かった。発射」カチ


ドォォォオオオン


バシッ ズオオオオオオ……


まほ「全速前進。あれが向こう側へスイングしている間に下を突っ切れ」

操縦手「了解」

まほ「次弾装填」

装填手「装填完了」

砲手「お前、今日はいつも以上に装填が速いな」

装填手「黒森峰最強チームが復活、再びその一員になって気分は最高です!」

操縦手「ここでUターンだね?」

まほ「そうだ」

通信手「私たちを追ってたパーシングが…」

操縦手「逆方向へスイングしたバイキングに衝突して、吹っ飛ばされる」

砲手「フッ、大学生といってもその程度か。直前での回避ぐらいできねーのか」

まほ「思いどおりになった。今だ」

砲手「ほらよ。一丁あがり」カチ


ドォォォオオオン


シュバッ


装填手「これであと1両!」

通信手「敵隊長車、センチュリオンだけ」

まほ「Ⅳ号へ合流しろ。富士山だ」

操縦手「了解」


グォォオオンン


砲手「なぁまほさん」

まほ「何だ」

砲手「大学生なんて大したことねーな」

まほ「何を言う。我々だってこれまで何十両も撃破されて2両だけになってしまった」

砲手「そりゃそうだが、ちょっとガッカリしねーか?」

まほ「それならお前は大学への推薦を辞退して、実業団で戦車道をやったらどうだ」

砲手「敵の隊長は飛び級で大学生になった、まだ13歳のガキらしいじゃねーか」

まほ「そのようだな」

砲手「あたしたちにもねーのか? その飛び級みたいなの」

まほ「あるはずがないだろう。高3にもなって言うことではない」

砲手「今さら遅いか」

まほ「大学のレヴェルにガッカリしたのなら高卒で社会人チームにでも入れ。私は大学へ行くぞ」

砲手「まあ大学ってのがどんな所か、あたしも入学して見物させてもらうぜ」

操縦手「富士山へ来たよ」

まほ「無駄話はここまでだ。お前たち、我々はこれよりⅣ号と連携してセンチュリオンを倒す!」

装填手「了解!」

操縦手「了解」

通信手「了解。いよいよ大詰めね」

砲手「了解。……何だあの戦車、富士山のてっぺんでモゾモゾ動き回ってやがる」

装填手「少しもじっとしてませんね」

まほ「下りてくるぞ。射撃用意!」


ガガガガガガガガガ


砲手「ほらよっ」カチ


ドォォォオオオン


まほ「躱された。次だ」

通信手「Ⅳ号の射撃も躱した…!」

操縦手「隊長、敵を追って山を下りるよ」

まほ「Ⅳ号とは違う方向へ行け。挟み撃ちだ」

操縦手「了解」

まほ「まずこっちへ来た。撃て!」


ドォォォオオオン


砲手「くそっ、こんな近距離でなぜ当たらねーんだ」

通信手「すごい。何よあの戦車の動き」

操縦手「回転しながら高速で移動して…」

まほ「同時に砲撃も行なっている」

装填手「しかも2両を相手に、です!」

砲手「360度、どの方向にも隙がない」

操縦手「妹ちゃんのドリフト戦法が全く通用してないね」

砲手「あんな奴初めて見たな」

まほ「大学生についての前言を撤回するか?」

砲手「ケッ、仕方ねーからそうしてやるよ」

まほ「あれが弱冠13歳で大学選抜を率いている天才少女の実力だ」

砲手「最後にやっと手応えのある相手が現れたぜ」

通信手「あっ、みほちゃんたちが危ない!」

装填手「あの戦車が仕掛けた攻撃で乗り物が倒壊します! 下敷きに…!!」

通信手「沙織ちゃんたち、落ち着いて逃げて!」

沙織『さっちゃん先輩、問題ありません』

通信手「あら、意外と冷静?」

沙織『隊長が動揺しないで指示し続けてますから。全員、普段どおりです』

通信手「そう。頼もしいわね」

沙織『だってこんなの超ありがち。周りの建物とかを壊して相手を追い詰めようとするなんて』

通信手「……耳が痛いわね」

まほ「みほと直接話す。つなげ」

通信手「了解。…どうぞ、まほちゃん」

まほ「みほ、聞こえるか」

みほ『うん、何?』

まほ「倒壊する乗り物の下を抜け出せるか」

みほ『可能だよ』

まほ「今の敵はこれまでの相手の中でおそらく最強だ。我々は分散させられるのを避けるべきだ」

みほ『私もそう思ってた。このセンチュリオンは完全に別格。一対一に持ち込まれると危ない』

まほ「合流して態勢を立て直すぞ」

みほ『了解。ね、お姉ちゃん』

まほ「何だ」

みほ『私に考えがある。お姉ちゃんたちに協力してほしい』

まほ「何だ。何でも言え」

みほ『少し待って。Ⅳ号のみんなへ先に話す。危険かもしれないから全員に同意してもらう』

まほ「分かった。…そこで右へ回り込め」

操縦手「了解」


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


まほ「よし、合流できたな」

みほ『うん』

まほ「ついて来い、みほ!」

みほ『うん!』


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴガガガガガガガガ


まほ「敵と交錯するぞ、撃て!」

砲手「発射…!」カチ


ドォォォオオオン


まほ「躱された。もう一回だ」


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


操縦手「遊具エリアの陰で敵が左へ急転回ッ」

まほ「何だと?」

操縦手「間違いないよ!」

まほ「我々は間に合わない。みほ、左へ行け!」

みほ『分かった!』


ガシィィイイイン


通信手「うわぁ…あの2両、車体が交錯しちゃったよ」

装填手「敵はこの広場にある物を、憎たらしいくらいにうまく利用してますね」

操縦手「どこに何があるかもう頭に入ってるんだろうね」

砲手「場所や局面へ即座に対応して素早く動き回る。やっぱ忍者だな」

まほ「平気か、みほ」

みほ『大丈夫』

まほ「もう一回だ。何度でもやるぞ」

みほ『待って、今度は私たちが先行する。ついて来て!』

まほ「分かった。…Ⅳ号へ追随しろ」

操縦手「了解」

みほ『今度は真正面から行かずに並走して攻撃してみる』

まほ「試す価値はあるな。後に続こう」

みほ『あのメリーゴーランドの所で二手に分かれ…』

まほ「みほ! 前だ!!」

みほ『えっ!?』



グワッシャァァァアアアアアン


通信手「うわっ…」

装填手「敵戦車がメリーゴーランドを…!」

操縦手「突破して来た!?」

砲手「あり得ねー、乗り物へあえて突っ込むなんて!」

まほ「みほ!!」


ガシィィイイイン


操縦手「回避、緊急停止!」

まほ「全員何かに掴まれ!」

装填手「了解!」

通信手「あっ、Ⅳ号が…!」

砲手「後ろを取られた!?」




♪~ ♪~ ♪~ ♪~



みほ『前進!!』

まほ「我々も発車しろ!」

操縦手「りょ、了解!」


グォォオオンン


砲手「何だ今のは? 何があったんだ?」

装填手「センチュリオンが撃ちませんでした、Ⅳ号を!」

まほ「いや、撃った。しかし撃つのを一瞬ためらった」

操縦手「その隙にⅣ号があの場から退避できたね」

通信手「クマだった……」

装填手「え?」

通信手「クマ。遊園地とかによくあるクマの乗り物。それが2両の間を横切って行った」

砲手「クマの乗り物? どうしてそんな物が…」

通信手「知らないよ。それが音楽を流しながらゆっくり歩いて行った」

砲手「……」

通信手「敵戦車の車長らしい子はびっくりして見てた」

装填手「だから発射の指示を一瞬ためらったんですね」

操縦手「敵戦車の、子……」

通信手「すごく可愛い女の子だった。髪が長くて色の白い、まるでお人形さんみたいな子……」

砲手「それが、あたしたちの敵……」

通信手「あの子が、まだ13歳なのに大学生の、天才少女なのね……」

みほ『お姉ちゃん』

まほ「何だ」

みほ『今の状況が続けばいつか必ずやられる』

まほ「考えがあると言っていたな、みほ」

みほ『うん、それで決着をつけたい。あの山のてっぺんで合流しよう』

まほ「分かった。…富士山の山頂へ向かえ」

操縦手「了解」


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


まほ「Ⅳ号に寄せろ。…みほ、お前が全員に直接伝えるんだ」

みほ「ティーガーの人たちへ? いいの?」

まほ「私を介している時間はない。今も相手は我々を見ている。狙っている」

みほ「うん、分かった」

みほ『さっちゃん先輩、西住みほです』

通信手「うん、聞こえてるわよ」

みほ『これから皆さんに直接指示を出します』

通信手「了解、大隊長」

みほ『松本先輩』

操縦手「うん、何? 妹ちゃん」

みほ『私の合図で山頂から目標に向かって前進します。Ⅳ号の後に続くよう位置についてください』

操縦手「オッケー」

みほ『村上さん』

装填手「何? みほ」

みほ『空砲の発射用意』

装填手「空砲ぉ!?」

みほ『うん』

装填手「みほ、何言ってるの!? 今この状況で!?」

まほ「口ではなく手を動かせ」

装填手「は、はいっ。了解!」

みほ『今からⅣ号とティーガーは1列縦隊で山を駆け下ります』

みほ『ティーガーはⅣ号へ接射の距離を保ってください』

砲手「Ⅳ号へ接射?」

装填手「どういうこと?」

みほ『2両はその態勢でセンチュリオンへ向かって全速前進』

みほ『ティーガーはⅣ号の後部を空砲で撃ってください』

砲手「何だと!?」

みほ『爆圧で加速したⅣ号が目標へ突進、近接射撃で撃破します』

通信手「何てことを……」

装填手「空砲って、そういう意味か……」

操縦手「妹ちゃんのブッ飛んだ作戦がまた出たね。全国大会の決勝以来だ」

砲手「おい待てコラ!」

みほ『何でしょう、田中先輩』

砲手「お前はあたしに味方を背後から撃たせる気か!?」

みほ『そうです』

砲手「ふざけんな! たとえ空砲でもそんなことができるか!!」

みほ『でも田中先輩は試合が始まる前、私にこう言ってくれました』

砲手「な、何だよ…」

みほ『“あたしへ命令しろ”“あたしを使え”って』

砲手「う……」

みほ『先輩たちはⅣ号を突撃要員として使ってください』

みほ『もしこの作戦が失敗しても、まだ先輩たちが残るんです』

みほ『作戦に協力してください。お願いします』

まほ「空砲を受けて加速したⅣ号のスピードは最高速度以上になる」

みほ『もちろん』

まほ「車両はいうまでもなく、搭乗員にもどんな影響があるか推測不能だ」

みほ『こっちの全員にはもう作戦に同意してもらってるよ』

通信手「沙織ちゃん? いいの?」

沙織『私たちは平気です! さっちゃん先輩たち、思いっ切りやっちゃってください!』

まほ「センチュリオンが我々の正面にいる。みほ、やるなら今だ」

みほ『作戦開始! Panzer vor!』


ゴガガガガガガガガ
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


みほ『田中先輩、砲口をⅣ号の車体後部へ』

砲手「くそっ…命令どおりにしてやるぜ!」

みほ『松本先輩、砲口と車体との間が15センチ以内になる車間距離を維持』

操縦手「センチ単位の要求か。うちの隊長より厳しいね」

みほ『両車とも全速! 目標へ突撃!!』


ゴガガガガガガガガ
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


まほ(だが、みほ…)

まほ(みほ、本当にいいのか?)

まほ(みほが少し振り向いて、うなずいた…!)

まほ「撃て!!」

砲手「発射!」カチ


ドォォォオオオン


通信手「Ⅳ号が…」

操縦手「まるで、飛んで行くみたいに…!」


ズガァァアアアン
ギャガガガガガガガガガガガガ


シュバッ

シュバッ


審判『センチュリオン、Ⅳ号、行動不能』


通信手「沙織ちゃん? 沙織ちゃん!? 応答して!」


審判『残存車両、確認中』


通信手「交信できない。電気系統もダメージを受けてるようね」

砲手「動力も、電気も…」

操縦手「完全に沈黙か」


審判『目視確認、終了』


まほ「お前たち、あれを見ろ」

装填手「あっ、みほがこっちへ手を振ってます!」

操縦手「笑顔だね」

砲手「あの様子なら全員無事だ」

通信手「良かった……」


審判『大学選抜。残存車両、無し』


砲手「勝った、か」

通信手「私たちの、勝利…」

装填手「我が校の勝利です!」


審判『大洗女子学園。残存車両、1』


砲手「そうだな。我が校…」

操縦手「今の我が校…」

まほ「大洗の、勝利だ」


蝶野『大洗女子学園の、勝利!!』

砲手「なぁまほさん」

まほ「何だ」

砲手「これで本当に終わりだな」

まほ「ああ」

砲手「帰るか」

まほ「ああ。我々の役目は終わった」

通信手「そうね」

まほ「短期転校は、終わりだ」

操縦手「面白かったよ。こんな経験、二度とない」

通信手「黒森峰に帰ろう」

装填手「でも……これで、また…」

砲手「どうした」

装填手「この最強チームが、解散しちゃうんですね……」

操縦手「そうだね。一時復活、役目を終えたら解散」

装填手「やっぱり、寂しいです……」

まほ「何を言っている」

装填手「は…」

まほ「お前には寂しがっている暇などないはずだ」

通信手「昨日の敵は今日の友。でも明日からまたライバル同士」

砲手「今日この試合に参加した全ての学校が、だ」

操縦手「特に大洗。妹ちゃんたちより強くならないと、全国大会優勝はないよ」

まほ「エリカやお前、現役メンバーで新しい最強チームを作れ」

装填手「は……はい!」

まほ「このチームを上回るものを作れ。期待している」

装填手「はい! 了解しました!」

砲手「帰るから、アレ……」

まほ「ん?」

砲手「その……アレはどうするんだ?」

まほ「何のことだ」

砲手「短期転校して、その、アレが……」

まほ「何をごにょごにょ喋っている。お前らしくない」

砲手「その……大洗の、せ、制服はどうするんだ?」

まほ「制服か」

砲手「そ、そうだ」

まほ「あれは支給した物だ。不要なら自分の責任で処分しろ」

砲手「えっ。くれるのか、アレ?」

まほ「支給した物だと言っている。貸与したのではない。それに返されても困る」

砲手「そうか……くれるのか、アレ」

装填手「先輩」

砲手「何だ」

装填手「嬉しそうですね」

砲手「嬉しい?」

通信手「ふふふ。そうね」

操縦手「試合に勝ったことより嬉しいんじゃない?」

砲手「3人とも何を言ってんだ。勝って嬉しいのは当たり前じゃねーか」

操縦手「いやだからそうじゃなくて」

通信手「あんた、あの可愛い制服が自分の物になって嬉しいんでしょ」

操縦手「あんなに似合ってたからねえ。すっかり気に入っちゃったみたいだ」

装填手「でも先輩、あの制服を着て学校へ行っちゃいけませんよ?」

砲手「えっ。ダメなのか、アレ?」

装填手「だって大洗の制服ですから。我が校の制服じゃありません」

操縦手「いってみればただの私服だね。学校とは無関係の個人的な服、私服」

通信手「学校は私服での登校を認めていない。こんなの知ってるはずだと思うけど」

砲手「だ、だって……じゃあどこで着るんだよ。着ねー服なんか持ってても意味ねーだろ」

まほ「意味がなければ処分しろ。さっきも言ったぞ。自分の責任で処分しろ」

通信手「私服なんだから学校以外の場所で着ればいいじゃない。日曜日に外出する時とか」

砲手「どうして学校が休みの日に制服なんか着るんだよ」

装填手「じゃあ自分の部屋の中だけで着る? で、鏡に映った姿を見て楽しむ、と」

砲手「何だそりゃ、そんな変態みたいなことするわけねーだろうが!」

装填手「それなら記念に取って置くだけにすればいいと思います。自分はそうするつもりです」

砲手「あ、そうだ……あたしたちは転校生になるんだよな? 大洗からの」

まほ「そうだな。大洗に短期転校して、そこからまた黒森峰に転校する。転校生には違いない」

砲手「それならまほさん、転校生が前いた学校の制服で登校してもおかしくないよな?」

まほ「……」

砲手「そういうのってよくあるよな? な? な?」

まほ「お前はどうして私へそんなことを言うんだ」

砲手「えっ」

まほ「私に対して食い下がっても意味ないだろう」

砲手「そ、そんな。まほさん……」

装填手「だって隊長は風紀委員でもなければ、生活指導の先生でもありませんから」

通信手「仮にまほちゃんがいいと言っても、学校がダメって言ったらやっぱりダメじゃない」

操縦手「こりゃあもう部屋で着るしかなくなったね。で、自分の姿を鏡で見ていろいろ楽しむ、と」

砲手「“いろいろ”って何だ! そんな変態みたいなことするわけねーって言ってんだろうが!!」

まほ「どうでもいい話はここまでだ。Ⅳ号の前で停車して全員降車しろ。ワイヤーを準備」

装填手「え? ワイヤーですか?」

まほ「Ⅳ号を牽引する」

通信手「あ、そうね。私たちは自走できるんだし」

操縦手「妹ちゃんたちを引っ張って行ってやろう」

砲手「回収車を待つまでもねーか」

まほ「そして全員の所へ戻ろう」

装填手「大隊長車と残存車両の自分たちで、勝利の凱旋です!」

操縦手「着いたよ。反転して車体後部をⅣ号に向けるからちょっと待って」

通信手「作業用の手袋って、人数分あったっけ?」

砲手「何だ、この5人でやるのか?」

まほ「当然だ」

装填手「みほたちには休んでいてもらいましょう」

操縦手「この試合で最大の功労者だからね」

砲手「そうだな。よし、あたしもやってやるか」

まほ「では全員降車。みんな、御苦労だった」

砲手「ああ、まほさんも。みんな、お疲れさん」

通信手「はーい。全員お疲れ様でした!」

操縦手「お疲れ様」

装填手「お疲れ様でした!」




このオラついた田中先輩も決勝の最終局面で華さんに紙一重で負けて涙を飲んだんだろうなあ

おつ
せっかくいいキャラしてるし決勝戦の時のもみたいね

【劇場版】みたいの付けて書いてた人か?

酷評ですけど今どんな気持ちですか?
http://elephant.2chblog.jp/archives/52171894.html

>>1です。
皆さん、レスありがとうございます。

>>46
>>47
全国大会決勝戦については前作で題材にしていますので、よろしければ>>1のリンク先を見てやってください。

>>48
私が劇場版公開後にssを書いたのは、これが初めてです。

>>49
酷評でも好評でも、「評」を頂けることを嬉しく思います。
私はマゾではないので、頂いてより幸せなのは好評の方ですが。
書き手が最も嫌がるものは酷評ではないと考えています。

まほ以外の搭乗員4人について、前作では名無しでしたが今回はそういうわけにもいかず名前を付けました。
「田中」「中村」「松本」「村上」は熊本県で多い苗字の上位4つとのことです。

最後に、これを読んでくださった全てのかたがたにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。

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