京子「20」 (25)

結衣の家


結衣「20歳になったな」

京子「うん」

結衣「20歳になった記念にビールで乾杯しようか」

京子「おっ、いいねぇ」

結衣「京子のコップにビール注いでおいたよ」

京子「おー、さすが我が嫁、やる事が早い」

結衣「じゃあ、行くぞ」

京子「せーの」



「カンパーイ!」


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ゴクゴクゴク

京子「うーん、ビールを初めて飲んだけど、初めて飲んだ気がしなかったな」

結衣「そりゃ中学の時からアルコール入りチョコやラムレーズンを食べていたからな」

京子「酔っている感じもあまりしないな」

結衣「これは耐性が付いてたんだな」

京子「そういえば、結衣も初めて飲んだ時は酔わなかったな」

結衣「両親や親戚にお酒に強い人が多いから、私にも受け継がれたらしい」

京子「綾乃と千歳はあんなに大暴れしたのに…」

結衣「思い出すなよ… 千歳のキス攻撃を何度も食らっているんだぞ」

京子「しかもガード下にある居酒屋だったから、私たちでなく他のお客さんにもかなりキスをしていたよね」

結衣「店長や被害にあったお客さんに謝る綾乃と千鶴さんが可哀想だったよ」

京子「「酒に酔って暴れるお客さんは普通にいますけど、キスして暴れるお客さんは初めて見ましたよ」と店長も苦笑いしていたね」

結衣「新橋や錦糸町やミナミや中洲に行っても、千歳みたいな暴れ方する人はいないんじゃないかな?」

京子「まぁ、少し暴れた後に寝ちゃったからスプラッター映画みたいにならなくて良かった」

結衣「ごらく部の部室の二の舞は何とか避けられたね」

京子「あの時も生徒会メンバーも含めて総出で部室を掃除したからね」

結京「何年経ってもあの日の事は忘れられないよ」

京子「意外だったのは綾乃だったな」

結衣「千歳ほどじゃないけど、結構暴れてたね」

京子「あかりを人質に取って「こんな部員と一緒にいた赤座さんが可哀想」と言ってたな」

結衣「さらにはあかりに向かって「赤座さん、結婚しよ」まで言ってたな」

京子「「赤座さん、あなたの生き方に口出しする権利は私にはないわ。だからこれはただの私の願望なんだけど・・・胸張って生きてね」も言ってた」

結衣「酔いが覚めた後、綾乃は全く覚えてないと言ってたけど」



「綾乃、本当はあかりの事が好きじゃないのかな?」

結衣「20歳になったけど、京子は将来、何になりたいの?」

京子「裸足の女神」

結衣「何だよ、それ」

京子「今の私だよ」ドヤッ

結衣「靴下脱いでドヤ顔で言うな」

京子「どれだけ突っ込めば結衣は照れてくれる?」

結衣「はっ?」

京子「どこまで走れば結衣に会える?」

結衣「私はここにいるよ!」

京子「何かもっと気が利いた突っ込みをしてくれよ」

結衣「出来るか!」

京子「服の上からは計れないね 色っぽい結衣のチャーミング」

結衣「「裸足の女神」じゃなくなってるよ!」

京子「やれば出来るじゃん!」

結衣「うるさい!」

結衣「(でも、今の台詞がちょっと心に響いてしまった…)」/// 

結衣「本当は何になりたいの?」

京子「漫画家」

結衣「それはもうなっているだろうが!」

結衣「ミラクるんのアンソロの締め切りは大丈夫なのか?」

京子「大丈夫!もう終わらせたから」

結衣「別冊リリーの連載の方は?」

京子「そちらの方も大丈夫!」

結衣「大学のレポートの方は?」

京子「全然!」

結衣「そっちも進めろよ!」

京子「大丈夫、いざとなったらあかりとちなつちゃんにも手伝わせるから」

結衣「原稿だけでなく、自分のレポートにあかりとちなつちゃんを使わせるな!」

京子「じゃあ、本当になりたい物を言うよ」

結衣「初めからやれよ」

京子「私が将来なりたい物は」



「結衣のお嫁さん」

結衣「お、おい、何を言ってるんだよ」

京子「漫画家になる夢もミラクるんのアンソロを描く夢も叶ったし、残っているのは結衣のお嫁さんになる夢だよ」

京子「結衣は私がか弱くて泣き虫だった時からずっと助けてくれた…」

京子「今度は私が結衣を助ける番だよ」

京子「漫画家になってもっともっと稼いで結衣を助けるんだから」

結衣「それって私が無職になる前提で言っているのか!」ビシッ

京子「いてっ!」

結衣「漫画家になったからって生活出来るほど稼げる人なんて意外と少ないんだぞ!」

京子「うっ」

結衣「それどころか人気が無くなったらいつ連載が打ち切られてもおかしくないくらい収入など色んな物が不安定なんだぞ!」

京子「うっ、うっ」

結衣「京子だって連載を持っているけど、その連載が3年後も続いている保障はあるのか?」

京子「そ、それは…」

結衣「別冊リリーで5年後も自分の作品が掲載されている保障はあるのか?」

京子「…」

結衣「それ以外の雑誌でも自分の作品が掲載されるとでも思っているのか?」

京子「それは… 多分…」

結衣「だからこれからも私が京子を守るよ」

京子「結衣…」

京子「もう、その台詞聞き飽きたよ」

京子「小学生の時から度々言ってたから、もう聞き飽きちゃったよ」

結衣「じゃあ、何と言えばいいんだよ」

京子「「私が京子を守るよ」」

結衣「同じじゃないか!」

京子「聞き飽きたと言っても、いつまでも言って欲しいよ」



「私と結衣が一緒にいる間は」

京子「永遠は無理だと思うけど、私たちがいつか別れる日が来るまでその台詞、言い続けて欲しいよ」

結衣「おいおい、別れる日とか言うなよ」

京子「でも、私たちは今、こうして生きているんだから、別れる日が来るのは必然だよ」

京子「それがいつの日になるのか分からないけど」

京子「その日まで言い続けて欲しい!」

京子「おばあちゃんになった時にも、「私が京子を守るよ」と言って欲しいよ!」

結衣「おばあちゃんか… まだまだ遠い先の事だと思うけど」

京子「何か、あっという間に来ちゃいそうだね」

結衣「あんなにか弱かった京子があっという間に20歳になったんだから、おばあちゃんになる日も近そうだよ」

京子「でも、十数年と50年じゃ大きな違いがあるけどね」

結衣「50年と言うと、半世紀か…」

京子「半世紀と言うと、凄い遠い時間だということを感じるよね」

京子「半世紀後の私も漫画を描いていて欲しいな」

結衣「半世紀後もボケずに元気でいて欲しいな」

京子「結衣はその時もひたすらツッコミ入れていそうだな」

結衣「京子が今と同じくらい元気ならばな」

結衣「半世紀後も京子も私もずっと元気でいて欲しいよ」ボソッ

京子「…」

京子「結衣、そこにあるポカリ取ってくれない?」

結衣「んっ、いいけど、飲むのか?」

京子「確かに飲むけど、ポカリを使ってやりたい事があるんだ」

結衣「何をやるんだ?」

ゴクゴクゴク

京子「んー、ポカリうめぇ〜」

京子「じゃあ、始めるよ」

結衣「ポカリをマイクにして何をするんだよ」

京子「じゃあ、行くよ。せーの!」

京子「♪揺れ〜る想い〜 体じゅう感じて〜」

京子「♪このまま、ずっとそばにいた〜〜い」

京子「♪青く〜 澄んだ〜 あの空のような」

京子「♪結衣と歩き続けた〜い」

京子「♪in our dream〜〜〜」

結衣「な、何歌ってるんだよ///」

京子「そんでもって」


チュッ


結衣「お、おい、いきなりキスするなよ///」

京子「えっ、私はキスする合図を送ったよ」

京子「私の瞳の奥から」

結衣「そ、そんな合図、見なかったぞ」

京子「えー、何で見逃したの?」

京子「結衣が「半世紀後も私も京子も元気でいて欲しい」と言ったのは私は聞き逃さなかったのに」

結衣「き、聞こえたのかよ///」

京子「うん、はっきりと」

結衣「は、恥ずかしい… 京子に聞かれてたなんて…///」

京子「それでとっさに思いついて歌ったんだよ」


「私の揺れる想いを」

結衣「全く京子はいくつになっても変わらないな」

京子「おばあちゃんになっても絶対に変わらないからね」

結衣「そんな心から私にほほえむ京子の肩を引き寄せて」グイッ

京子「な、何をするんだよ…」

チュッ

京子「ゆ、結衣…///」

結衣「京子だってさっきキスしたからお返ししたんだよ」

京子「だったら私もお返ししてやる」

結衣「ならば私も返してやる」

チュッ

チュッ



近所の住民A「船見さんち、今日はいつにも増してキスの回数が多いですわね」

近所の住民B「超ラブラブで羨ましいですわ」

近所の住民C「私たちも20歳の時はあれくらい熱かったですわね」

近所の住民D「若いっていいですわ」

数時間後


結衣「はぁ… はぁ… はぁ…」

京子「はぁ… はぁ… はぁ…」

結衣「まさか夜明けまでキスをし続けるなんて…」

京子「結衣の体のあちこちにキスしちゃったよ…」

結衣「私も京子の体のあちこちにキスしまくっちゃったよ…」

京子「もう結衣の体でキスをしていない場所なんて無いんじゃないかな…」

結衣「私も京子の体でキスしていない部分はもう無いと思うよ…」

結衣「なんか、とんだ20歳の祝いになってしまったな…」

京子「でも、これは一生に心に残ると思うよ」

結衣「ははは… これはトラウマとしてか」

京子「いや、素晴らしい思い出として残るよ」


「好きな人に死ぬほどキスをしたり、キスを浴びせられたんだから」

京子「太陽が昇って来たね」

結衣「最後に昇る太陽を背景にしてもう1回やろうか」

京子「いいねぇ」

結衣「せっかくだから屋上でやろうか」

京子「やろうやろう」

結衣「じゃあ、屋上に行こう」

屋上

京子「屋上に着いたよ」

結衣「じゃあ、太陽を背景にしてやるよ」

京子「準備はOK?」

結衣「京子こそ大丈夫?」

京子「私は準備万端だよ」

結衣「じゃあ、行くよ」

結衣「京子…」

「20歳の誕生日おめでとう」


チュッ


「大人の仲間入りおめでとう」


チュッ



おしまい

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