白菊ほたる「わたしの幸せ」 (27)
プロデューサーさんがまた不幸になりました
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二つめのプロダクションが潰れて、受けた面接
わたしは運の悪さを話し、今までにあった自分や周りの人に起きた不幸を話し、このプロダクションでも迷惑をかけるかもしれないといいました
それをきいて、プロデューサーさんは他の人を不幸にしてまでアイドルを続けたいのかとききました
わたしはすぐには言葉をかえせませんでしたが、アイドルをしたいです、とだけいいました
しばらくして合格通知が送られてきました
はじめてのお仕事の日
簡単な写真撮影でしたが、トラブルが起きて、撮影は予定より長引き、プロデューサーさんは時間をとられて、他のお仕事に支障が出ました
わたしのせいでごめんなさい
そういうと、プロデューサーさんは、わたしのせいじゃないといって、笑ってくれました
でも、わたしは
この人はいつ、わたしのことをうとましい目で見てくるようになるだろうかと、考えていました
しばらくたったある日
その日も、ちょっとした不運があって、たくさんの人が迷惑を受けました
この頃には、プロダクションの一部の人は、わたしのことをうとましい目で見てくるようになっていました
そんな中、プロデューサーさんは変わらず、接してくれていました
わたしのせいでごめんなさい、そういうと
わたしのせいじゃない、そういってくれました
ただ、その日のプロデューサーさんは違いました
不幸がおきて、謝るわたしに、いつものように声をかけようとして、口をつぐみ、考え込みはじめました
その様子を眺めながら、わたしは、ああ、プロデューサーさんもか、と思いました
しばらくして、プロデューサーさんは厳しい顔で、わたしを近くのケーキ屋さんに連れていきました
プロデューサーさんにうながされるまま、ケーキを選び、食べていると、プロデューサーさんはこういいました
"これから、嫌なことがあった日は甘いものを食べることにしよう。ほたるのおかげで、甘いものが食べられる。ああ、幸せだな"
それをきいて、わたしは
わたしは
心が暖かくなりました
やがて、わたしはアイドルとして少しずつ、人気を集めていきました
不幸はあいかわらず、やってきましたが、プロデューサーさんと、甘いものを食べて、プロデューサーさんが、笑いかけてくれると、わたしは笑顔になりました
プロダクションの人たちの、わたしを見る目も、いつの間にか、やわらいでいました
今までたいへんだったね、ほたるのせいじゃないよ、これくらいたいしたことないって
そういって慰めてくれました。わたしは、うれしかったです
でも、あるとき気がつきました
ふりかかる不幸のほとんどを、わたしとプロデューサーさんだけが受け取っていることに
順調なアイドル活動と比例するように、不幸は増えていきました
ごめんなさい、わたしのせいで
最近は、わたしがこうつぶやいても、甘いものを食べにいかないことは、珍しくなくなっていました
不幸が起きる度に行っていたら、きりがないからです
それでも、プロデューサーさんが、わたしのせいじゃない、といってくれれば、わたしはがんばろうと思えました
ーーーそんなある日、プロデューサーさんが事故に遭いました
かすり傷でした。プロデューサーさん以外は誰も傷つきませんでした。お仕事にも影響はありませんでした
ーーーでも、かすり傷ですんだのは最初だけでした。
次の事故で、プロデューサーさんは骨折しました
それから、不幸は少しずつ強くなっていきました
ーーープロデューサーさんにかかる不幸だけが
その頃のプロデューサーさんは、いつもどこかに包帯を巻いていました
そして、その包帯がとれる頃、新しい包帯が巻かれ、その度に、わたしは泣きながら、謝りました
ごめんなさい、わたしのせいで
ごめんなさい、わたしのせいで
けれど、プロデューサーさんは決まって笑いながらいってくれます
わたしのせいじゃない、と
この頃、わたしのプロダクションでの扱いは、また違ったものになっていました
以前のように、うとまれることはありませんし、プロデューサーさんのことを、わたしのせいじゃないといってくれます
でも、みんながわたしを見る目には、必ず怯えが混じっていました
そして、プロデューサーさんが痴漢で逮捕されたのは、わたしにCDデビューの話が持ち上がったころでした
ーーーそれから、いろいろなことがあって
わたしは考えました
わたしの不幸について
"ごめんなさい、わたしのせいで"
そうくり返してきたわたしですけど、こころの底から、そう思っていたかというと、そうでもないんです
だって、不幸を呼ぶ少女なんて、おとぎ話にしか思えません
でも、今は、もしかしたらーーー
それでも、わたしはプロデューサーさんに会いに行きます
ごめんなさい、わたしのせいで
以前と違い、今のプロデューサーさんの笑顔からは、無理をしているのが伝わってきます
それでも
わたしのせいじゃないと
いってくれる
その言葉をきくと
わたしの心はーーー
おわり
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