芳乃「はむー」カプッ
P「あー……」
ちひろ(嬉しいんだかつらいんだか複雑そうな顔してるわねプロデューサーさん)
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P「見てないで何とかして貰えませんか、ちひろさん」
ちひろ「何とかしろってどうして欲しいんですか?」
P「そうですねぇ。とりあえず腕、芳乃のせいで片腕が使えなくなるのは仕事にも支障をきたしますから」
ちひろ「芳乃ちゃんの甘噛みから解放されたい、と」
P「はい。俺が無理やり離そうとすると絵面が……」
ちひろ「あー、芳乃ちゃんに乱暴してるみたいになりますね」
P「乱暴されてるのはこっちなんですがね、いや全然痛くはないですけども」
ちひろ「わかりました。……だそうですよ、芳乃ちゃん。プロデューサーさんを離してあげてくださいなー」
芳乃「んーんー」 ガブッ
P「いてえ」
ちひろ「だめみたいですね」
P「諦めないでくださいよ」
ちひろ「でも無理やりひっぺがそうとすると……」
P「下手すりゃ食いちぎられますかね……」
ちひろ「なら無理やりでなければいいんですよ」
P「俺もそれは考えました」
ちひろ「ほほう、上手くいかなかったんですか?」
P「俺は俺で芳乃に甘噛みし返そうとしたんです。人が困るようなことはしちゃいけないって、そのちいさな身体に刻み込んでやろうかと」
ちひろ「こらっ」
P「ちひろさんもそういう反応するでしょう? 周りにいたアイドル達に止められましたよ」
ちひろ「芳乃ちゃんがプロデューサーさんを甘噛みするようになったことはみんな知ってるんですね?」
P「ええ、まあ。誰一人として芳乃には強く当たろうとしなかったので心細くなりまして」
ちひろ(芳乃ちゃんには探し物とかでお世話になってるものね、みんな)
P「どうしたらいいんでしょうね、ほんと」
ちひろ「そもそもどうして芳乃ちゃんから甘噛みされるようになったんですか?」
P「さあ、理由なんてあるんですか?」
ちひろ「理由もなくこれだけ甘噛みされても……。芳乃ちゃん? どうしてプロデューサーさんに甘噛みしてるのかしら?」
芳乃「もごむー、むぐむももぐむー」
ちひろ「甘噛みしながらじゃ何言ってるのかわからないわね」
P(声の振動がちょっと気持ちよかったとか言えない)
ちひろ「でもこの様子なら理由はあるみたいですし、まずはそこから芳乃ちゃんを理解してあげたらいいんじゃないですか?」
P「うーん、じゃあ筆談で芳乃に聞いてみましょうか。メモ帳とペンは……っと」
ちひろ「これ使いましょう。はい芳乃ちゃん、どうしてプロデューサーさんに甘噛みしてるの?」
芳乃「…………」サラサラ
ちひろ「えっと、『ペンより筆の方が書きやすいのでしてー』だそうです。ほらっ」
P「上手に書けてるやないかい!」
ちひろ「あ、そろそろレッスンの時間でしたっけ?」
P「そうですね。ほら芳乃、もうおしまいだ」
芳乃「ふむー。それではまたのちほどー」サッ
ちひろ「あら? 聞き分けはいいんですね」
P「逆に言えば空き時間になると隙あらば甘噛みしようとしてくるんですがね」
ちひろ「噛まれる前に逃げるなり防衛するなりは?」
P「やりましたとも。全力で逃げたりとか」
ちひろ「逃げ切れたんですか?」
P「まあ、身体能力的には容易でした」
ちひろ「でも逃げられなかった、と」
P「振り返ってみたら、へたり込んで瞳を潤ませながらこちらをすがるように見ている芳乃がいたんですよ」
ちひろ「あー」
P「あれは反則でしたね……」
ちひろ「あー……」
ちひろ「つまりプロデューサーさんはもう、芳乃ちゃんからは逃れられないということですか」
P「せめて甘噛みさえしなくなればかわいいもんなんですけども」
ちひろ「子ネコなんかの愛情表現でしたよね? 甘噛みって」
P「そうだったかと。……だからといって、人間の女の子である芳乃が愛情表現をしようとして、わざわざ甘噛みなんてしますかね?」
ちひろ「…………する、こともある……んじゃない、ですか?」
P「えー……人目もはばからず?」
ちひろ「私に聞かれても。あとは芳乃ちゃん本人と向き合ってなんとかしてください」
P「そんな、ちひろさんだけが頼りだったのに」
ちひろ「私がどうこうできる問題でもなさそうですし」
P「……やっぱり俺も芳乃に甘噛みしてみるしか」
ちひろ「それはだめです」
P「……やっぱり俺も芳乃に甘噛みしてみるしか」
ちひろ「二回言ってもだめです」
P(子ネコの愛情表現……か。なら甘噛みしたくなる心理はネコに聞いてみるのがよさそうだ)
P「むぐぐぐ、もごごもごむぐ?」
みく「にゃあああああああああ!? 何してるにゃPチャン!」
P「いや、みくに聞きたいことがあってさ」
みく「普通に聞いてよ! どうしてみくのネコミミ噛むの!?」
P「なんとなく。実は子ネコなんかが甘噛みしたくなる時の心理をさ、猫キャラ演じてるみくに聞けばわかるかなと思って」
みく「演じてるとか言わない! ……甘噛みかぁ、さすがにみくもそんなにしたことないからにゃあ」
P「猫キャラとしてそれはどうなんだ?」
みく「どうもこうもないにゃ! うーん……。想像だけど、独占欲の表れなんじゃない?」
P「独占欲?」
みく「うん。噛む力ってからだが大きくなくても強いのに、小さなネコチャンがちゃんと力加減をして噛んでくるってかわいくない? もうなんか好きにしてーって構っちゃうでしょ?」
P「なるほど。甘噛みで油断させ、逃れようとすれば強く噛んで痛い思いをさせて勝手に離すなってことをわからせてくるわけだな?」
みく「甘さのカケラもないねそれ……」
P「少しだけわかったような気がした。みくに聞いてよかったよ、ありがとう」
みく「あ、待って! Pチャンは……そのぅ、ネコチャンのみくに甘噛みしてほしいとか思ったりなんかは……ふにゃっ!?」ゾクッ
??「…………」
P「どうした?」
みく「な、なんでもない……なんでもないってみくの本能が叫んでるからなんでもないにゃ……!」
P「お、おう」
芳乃「むーむー」カプカプ
P(芳乃も俺を独占したくて甘噛みしてるのか? それとも普通に愛情表現? うーむ)
P「なあ芳乃、なんでそんなに俺に甘噛みするんだ?」
芳乃「…………」カプカプ
P「答えたくないならいいけど、ひっきりなしに噛まれてるとさすがにな」
芳乃「…………」カプカプ
P「芳乃の手、いや口か、が空いてても俺にはやることがある時だってあるし」
芳乃「…………」カプカプ
P「仕事に差し障りが出てくると、もしかしたら俺は芳乃のプロデューサーでいられなくなるかもしれないんだぞ」
芳乃「…………」カプッ
P「それでも、芳乃はいいのか?」
芳乃「……」
P「芳乃?」
芳乃「……。それはー……困りまするー」
P(喋ってくれたか。ちひろさんの言う通り最初からちゃんと聞いてみればよかったな)
P「なあ芳乃。どうして俺に甘噛みなんてするようになったんだ?」
芳乃「……言の葉にてそなたに伝えられないものをー、わたくしなりに感じ取ってほしかったのですー」
P「ほう」
芳乃「みなに愛されるためにアイドルとなったいまのわたくしはー、この気持ちを口にすれば言霊となりて身を焦がすことになりましょうー」
P(言霊って言ったことが本当になるとか、良いことも悪いことも引き起こしたりするとかそういうのだっけ)
芳乃「ゆえにー、みなの愛に背かぬよう、言葉無き者にならったのでしてー」
P「それで甘噛みか。……え、じゃあ芳乃って少なからず俺のこと」
芳乃「……」カプッ
P「あいたっ」
芳乃「言ってはならないのでして。わたくしの話、聞いてましてー?」
P「聞いてたよ。聞いてたけど……」
P(ちひろさん、どうやら本当に甘噛みじゃなきゃいけない理由があったみたいですよ。芳乃らしい理由で)
P「芳乃……まあなんだ、その。芳乃が甘噛みする理由は察したことにしよう」
芳乃「…………」カプカプ
P「でもな、やっぱり時と場所を選んでほしいというのが本音かな。それはさっきも言った通り、わかるだろう?」
芳乃「…………」カプカプ
P「芳乃の気持ちは俺も嬉しいから。芳乃なりに気を遣った結果がこれなら、俺も悪い気はしない。人前でもやるのはさすがに大胆だとは思うけど」
芳乃「…………」カプカプ
P「今は二人きりだから少しの間なら好きにするといいさ。でも俺にも片づけなきゃいけない仕事や書類があるんだ。片腕が使えなくなると片づくものも片づかない。わかってくれるな?」
芳乃「…………」
P「返事は?」
芳乃「…………」カプッ
P「いや、噛んで返事されてもわからん」
芳乃「……ねーねー、そなたのお邪魔にならなければよいのでしょうー?」
P「んー、それが第一ではあるか。みんなの前でとかも控えてほしくはあるけど」
芳乃「それならばー、わたくしにも考えがございますー」
P「ほほう?」
ちひろ(さてと、休憩も終わったしプロデューサーさんのアシストを――あらっ?)
芳乃「…………」カプカプ
P「芳乃……すまん、たしかに腕は使えるようになったけど代わりに集中できない」
芳乃「これを機にそなたの心を鍛えましょうー。何事にも動じぬ大山のような精神をー」カプッ
P「これに動じないって逆にだめだと思うんだが……ふおぅ」
芳乃「手が止まってましてー。はやくーほらー」
P「ぐぬぬ……芳乃、覚えてろよ? 周りに誰もいなくなったら、俺も芳乃にならって俺の気持ちを伝えてやるからな? 同じところに」
芳乃「…………」カプカプ
ちひろ(芳乃ちゃんが腕じゃなくて首筋を甘噛みしてる……絵的にはもっとまずいことになってるわね)
ちひろ(…………ま、いっか。プロデューサーさんも両腕使えて仕事ができてるわけだし。事務所のみんなからいろんなオーラが漏れ出てるけど、ちっひ知ーらないっ♪)
このあと、アイドル達の前で自分のものだと言わんばかりに芳乃からめちゃくちゃ甘噛みされた
終われ
芳乃に甘噛みされたい人生だった……
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