まほ「山月記」 (14)

古代、隴西のまほは博学才穎、天宝の末年、若くして名を強化選手に連ね、江南尉に補せられたが、一隊員に甘んずることを潔しとしなかった。いくばくもなく隊を退いた後は熊本に帰臥し、人と交わりを絶って、ひたすらに詩作にふけった。部下となって長く膝を俗悪な隊長の前に屈するよりは、詩家として名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし文名は容易に上がらず、生活は苦しくなる。まほはようやく焦燥にかられてきた。数年後、貧窮に堪えず、遂に節を屈して、再び東に赴き、一隊員の職を奉ずることになった。かつての同輩は既にはるか高位に進み、彼女が昔、歯牙にもかけなかった連中の下命をはいかねばならぬことがまほの自尊心をいかに傷つけたかは、想像に難くない。彼女は怏々として楽しまず、狂悖の性は抑えがたくなった。一年の後、公用で旅に出、大洗に宿った時、ついに発狂した。ある夜半、急に顔色を変えて寝床から飛び上がると何かわけのわからぬことを叫びつつ闇の中に駆け出した。そして二度と戻ってくることはなかった。

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翌年、陳群のみほという者、使いとして大洗に立ち寄った。朝いまだ暗いうちに出発しようとしたところ、駅吏が言うことに、これから先の道に人食い虎が出るゆえ、旅人は白昼でなければ、通れない。まだ朝は早いので少し待ったほうがよいでしょう、と。しかしみほは多勢なのを理由に駅吏の言葉を退け、出発した。

そして残月の光を頼りに林中を通っていた時、



ブロロロロロロロロォォォン!!










一輌のティーガーⅠが叢から躍り出た。






みほ「へ!?」

ティーガーはあわやみほに踊りかかると見えたがたちまち西住ターンを決め、元の叢に隠れた。

みほ「…いやこの時代に戦車無いよ……」

ティーガー「危ないところだった…危ないところだった…」

その声にみほは聞き覚えがあった。彼女はとっさに思い当たり、叫んだ

みほ「その声は、お姉ちゃん!?」

叢の中からはしばらく返事はなかった。ややあって、答えた

まほ「…いかにも私はみほの姉、まほだ」

みほは恐怖を忘れ叢に近づいた。そして何故出てこないのかと問うた。まほの声が答えて言う。

まほ「自分は今、異類の身となっている。どうして、妹の前にこんな姿をさらせるか!それに私の姿を見せれば必ず恐れると決まっている!……しかし、偶然にもみほに会うことが出来て、とても懐かしい。どうかほんのしばらくでいいから、この外見を厭わず、かつてみほの姉であった私と話を交わしてくれないだろうか」

みほ「うん!もちろんだよ!」

後に考えれば不思議だったがみほは素直に受け入れて怪しもうとしなかった。積もる話をしたあと、みほは、まほがどうして今の身となったかを訪ねた。すると次のように語った。



まほ「今から一年ほど前、自分が大洗に止まった夜、ふと目を覚ますと外で誰かが私の名前を呼んでいる。声に応じて外に出てみると声は闇の中からしきりに自分を招く。私を追って走り出した。無我夢中で駆けていくうちに、いつしか道は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を掴んで走っていた。身体中は力が満ち足りたような感じで、軽々と岩石を踏み砕いて行った。気がつくと、手先や肘あたりに履帯が生じていた。少し明るくなってから谷川に姿を映してみると、既にティーガーとなっていた。自分は始め目を信じなかった。次にこれは夢だと思った。しかしどうしても夢でないと悟らなければならなかったとき、私は呆然とした。そして恐れた。」

みほ「…」

まほ「私はすぐに死を思うた。しかし、」




梓『進めぇ!!』

あゆみ『撃てぇ!!』

目の前に一輌のウサギさんチームが通りかかったのを見たとたんに、自分の中の“人間”はたちまち姿を消した。再び自分の中の“人間”が目を覚ました時、自分の砲口からは煙が吹き出し、白旗の上がったM3リーが倒れていた。これがティーガーとしての最初の経験であった。

みほ「ウサギさん…何故唐突に…」

まほ「これまでにどんなことをしてきたのかは到底語るのに忍びない。ただ、一日のうちに数時間は必ず人間の心が帰ってくる。そのときは人間と同じような考えもできる。しかしその数時間も日を追うごとに短くなっていく。そのうち今日のようにみほと会っても妹と認めることなく、みほを撃ってしまうだろう……きっと人間の心が無くなってしまえば私は幸せになれるだろう。しかしそれが恐ろしいのだ!この気持ちは誰にもわからない、同じ身の上になった者でなければ……ところで私がすっかり人間で無くなってしまう前に、一つだけ頼んでおきたいことがある」

みほ「何でも言ってお姉ちゃん!」

まほ「他でもない、私の考えた物語を伝禄してもらいたいのだ。少しでも自分の名を、生きた証の残したいのだ」

みほ「沙織さん、お願い」

沙織「わかった」

まほが自分の考えた物語を語る

そして、自分を嘲るような口調で言った

まほ「恥ずかしいことだが、いまでも、こんな姿となり果てた今でも、私はこんな夢を見るのだ。沢山の少女達が戦車に乗って、戦車を通して友情を育む、そんな夢だ、笑ってくれ」

みほ「……お姉ちゃん」

樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた…

まほ「別れを告げなければならない。最後に頼みがある。それはエリカの事だ。彼女はいまだ熊本にいる。元より私の運命について知るはずがない。私が死んだと伝えてくれないか」

みほ「…わかったよ」

まほ「そして、使いの帰りには決してこの道を通らないで欲しい。今度こそみほを襲ってしまうかもしれない。」

まほ「また、今別れてから、前方百歩のところにある、あの丘に登ったら、こっちを振り返ってもらいたい。」

まほ「私はもう一度今の姿を見せよう。別に誇ろうとしてではない。私の異形を示して、再びここを過ぎて自分に会おうという気持ちを起こさせないためだ」

みほ「…わかった……さよなら、お姉ちゃん…」

まほ「ああ、さよならだ…」

叢の中から悲泣の声が漏れた。

みほも何度も後ろを振り返りながら出発した。

一行が丘の上についたとき、林間の草地を眺めた。たちまち一輌のティーガーが道の上に躍り出たのを見た。

ドォン!ドォン!ドォン!

月を仰ぎ、三度砲撃すると叢に戻り、二度とその姿を表すことはなかった。



ちなみにまほの考えた物語はアニメ化され、大ヒットを飛ばしたそうな

これがやりたかっただけ。読みにくくてすいません……

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