果南「憧れ分類学」 (13)

かなマリだよ。
多分漫画とドラマCD意識だよ

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「ねー、果南はどう?」

いきなりぶつけられた質問に思考が停止して思わず固まっちゃっていた。


「え、えーと、鞠莉、ごめん……なんの話だっけ?」


「もうっ、果南ったら最近ずーっと上の空じゃない、もうちょっとcoolに、シャキッとしなきゃ。」


なんて、注意を受けても私の意識は彼女の後ろで揺れる波の方へと向いてしまう。

良くないとはわかっているのに、ついついそちらを見ちゃう。


「だからー、スクールアイドルを始めて果南はどんな感じって……もうっ、果南ったらまたボーッとしちゃって。」


今の私はすごくわかりやすいみたいで、ちょっと声色も変わって、本気で心配させてるみたいなんだけど……

本当は隠すようなことでもなくて、でもわざわざ言うような物でもなくて…。

大した事じゃないからこそ、こんなに悩んでるのかもしれないのかな。

「……うぅん、本当に大したことじゃないの。」


「ふーん……ならむしろ私にだけ言っちゃえば?」


「えっ?」


「ほら、『なんと王様の耳がロバの耳だったのだ!』、って昔話みたいにすっきりするかもしれないわよ?」



「もうっ、それじゃ最後にはみんなにバレちゃうでしょ。」


なんて笑って、鞠莉の雰囲気に釣られてついつい口が緩くなって言葉が漏れてくる。

「本当に大したことじゃないんだけど、私ってスクールアイドルをするのにふさわしいのかなって。」


驚いた顔をされた。

それもそっか、もう二曲もPVを発表してて、千歌たちの提案でユニット活動もしてみよう!みたいな事にもなってるタイミングで、こんな悩み打ち明けるなんて変だよね。


私にとって、あくまで千歌を助けるために始めたAqoursの活動だけど、それはすっごく楽しくて、私も最初に誘われた時とは比べ物にならないくらいに夢中になってる。

私の中でも大きな物になっているって自分でもわかってる。

だけど、だからこそ改めて最初に千歌が見せてくれたμ'sの動画を見たときに、少しもやもやする様になった。

千歌はμ'sのことを、どこにでもいる普通の女の子達だって言ってた。


でも私には初めてみた時から、どこも普通の女の子じゃなかった。

私には彼女達とアイドルの違いがわからなかった。


「スクールアイドルを始めて、一歩だけ近づいたつもりでも、やっぱり彼女達は私の"普通"のずっと遠くにいた。」

「彼女達は私にはやっぱり"アイドル"で、私とは違うんだって。」

「そんな事を気にしだしたら止まんなくなっちゃって…。」

「ふーん、果南もそんなセンチメンタルな悩みとか持つのね。」


鞠莉、ちょっと酷くない?


「でも、それでいいんじゃないの?」

「だって果南の見たμ's達だってスタートした時からあんなにすごい女の子として輝いてたわけじゃないでしょ。」

「でも普通の女の子…って言われると確かにちょっぴりクレイジーよね。」

「学校が廃校になっちゃうからアイドルをしようなんて…そんなの千歌も影響を受けちゃうわよね。」

「もしかしたら、同じ様にそんなエキサイティングな発想をしちゃう子が、μ'sにもいたのかもしれないわよ?」

「千歌にとっての"μ's"、みたいなのがあって、"μ's"がそれを越えられたなら私たちもそうなれないわけないでしょ♪」

「だから果南もなれるよ、アイドルに。」

「そっか、そういうもの……なのかな。」

ボソッと漏れた言葉は多分鞠莉に届く前に海が飲み込んじゃったのかな。

聞き返されても同じ事は言えなくて、代わりにでたのはありがとうっていう言葉。

それを聞いて鞠莉はまた夕日に似合う笑顔を浮かべる。

やっぱり鞠莉はすごいなぁ、キラキラしてる。


「鞠莉、ありがとうね。」


鞠莉もちょっぴり満足げだ。

こういう所もあるから鞠莉は本当に好きなんだよね。


「ま、それでも果南はもう普通の女の子じゃないって思うけれど。」

えっ、と思わず漏れる言葉、それは波と船には飲み込まれるけど、今度はキチンと聞き取られちゃったみたいで、不敵な笑いを浮かべると


「だってPVを取ってる時の果南、もうすっごくキラキラしてたもの。」

「それはもうμ'sと同じぐらい!」


なんて、キラキラした顔で…お世辞なんかじゃなくて本気で言ってるって雰囲気で、堂々とこんなことを言ってきて。

やっぱり鞠莉には敵わない。


不意打ちに顔が朱くなってる気がして、悔し紛れに


「鞠莉もね。」


なんて返しても、それにも自信満々に


「もっちろん♪」

なんて返されて、やっぱり鞠莉には敵わないや。

でも私の中で、その笑顔はさっきよりもずっと近い物に変わっている気がした。

明日、ダイヤとマルに提案してみようかな…。

私もユニット曲の歌詞を考えたいって。


「あっ、そういえば鞠莉は何か聞きたがってたけど、なんの話だったの?」

「え?んー……もう解決したから大丈夫よ」

「うん、そっか……わわっ!?」


船が止まって少しだけ揺れる。

ちょっと油断しちゃってたみたいだ。

船を降りて、茜色の海を見つめて…。

また、この帰りの船に乗る時の私は、この笑顔ができてるのかな?

-Fin-

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