魔王「ええっと…キミ誰?」勇者「誰だと思う?」 (16)

魔王「待って待って!当てる!当てるから!」

勇者「うん」

魔王「ええと…いつもワタシのお茶を汲んできてくれる」

勇者「違う」

魔王「ええー…じゃあこの前ビリヤードでくしゃみで玉転がしてた」

勇者「違う」

魔王「この間の会議中に念話でしりとりに付き合ってくれた」

勇者「違う」

魔王「公演の時にいつも足踏み台用意してくれる」

勇者「違う」

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魔王「あ!分かった!学園の時一緒のクラスだった!」

勇者「違うぞ」

魔王「名前も言ってないのに…」

勇者「違うって分かってるし」

魔王「でも惜しかった?惜しかったよね?」

勇者「掠りもしてない」

魔王「ヒント!ヒントちょうだい!」

勇者「」剣チャキッ

魔王「あ、軍志望なの?それだったらワタシじゃなくて」

勇者「違うし話変わってんぞ」

魔王「だって剣構えられたくらいじゃヒントにならないし」

勇者「この服装でピンと来ないのか?」

魔王「いや来ないよ、キミ熊のきぐるみ着てるんだもの」

勇者「……これかわいいし?」

魔王「それは分かるけど何で疑問系なんだ」

勇者「それに体が覆われてる安心感がすごい」

魔王「それが本音か」

勇者「一回着てみればわかる」

魔王「ずっと言おうかと思ってたんだけどそれ暑くないの?」

勇者「慣れた」

魔王「そう…最近異常気象かなんかで今もめっちゃ暑いけど」

勇者「砂漠程じゃないし」

魔王「砂漠でもそれ着たの?馬鹿なの?」

勇者「全部お金に換えたから他に着る物なくて」

魔王「ええ…」

勇者「で、分かったの?」

魔王「もちろん!」

勇者「おっ!本当か!」

魔王「うん、分からない!」

勇者「……」

魔王「…あ、この前部屋に出た虫を殺してくれた」

勇者「違うよ!無理して答えなくていい!」

魔王「きぐるみの上からでも分かるくらい見るからにしょんぼりしたし」

勇者「いや普通にショックだった」

魔王「いきなり部屋に入ってきたきぐるみ着てる謎の人に落ち込まれるこっちの身にもなってよ」

勇者「その発想はなかった」

魔王「うん、冷静になったらなかなかに怖いよ?」

勇者「剣構えるしな!」

魔王「何でちょっと楽しそうに言うのさ」

勇者「楽しいからな!」

魔王「………」

勇者「露骨に距離を取られた」

魔王「怖いからな」

勇者「」スタスタスタ

魔王「何でこっち来るんだよぉぉぉぉ!」ダッ

勇者「いやおもしろいから」

魔王「何なの!?普通に不審者なんだけど!」

勇者「普通ならセーフだな」

魔王「なんの基準だよ!不審者の時点でアウトだからね!?」

勇者「むしろチェンジ?」

魔王「じゃあさっさと変わってくれよ!」

勇者「Next不審者、"催眠術を覚えたオーク"」

魔王「そのままのキミでいてくれ」

勇者「なんだよ、オークさんが催眠術であんなことやこんなことするって決まったわけじゃないだろ」

魔王「でも不審者なんだろ?」

勇者「R行き確定だな」

魔王「勘弁してくれ!」

勇者「健全な洗車でもアウトとか…」

魔王「おい何の話をしている」

勇者「あ、そろそろアイドル村でポロリもある水中運動会の時間だ」

魔王「え?行くの?」

勇者「だって始まっちゃうし」

魔王「いや、キミが誰だか分からないままなんだけど」

勇者「…どうでもいいんじゃない?」

魔王「ショック受けてたキミはどこへ行ってしまったんだ」

勇者「じゃあまた来るね!」バタン

魔王「また来るのか!?」

魔王「……何だったんだ」


おわり

魔王「ねぇ側近」

側近「なんですか魔王ちゃ…様」

魔王「今魔王ちゃんって言おうとした?」

側近「してませんよ」

魔王「…まぁいいや」

側近「で、どうかしました?」

魔王「いや…さっき変なのが入ってきたんだけどさ」

側近「ああ、熊の」

魔王「そう、熊」

側近「その熊が何か?」

魔王「何か?じゃないだろ、私の部屋に堂々と入ってきたんだけど」

側近「私も堂々と入っていますよ?」

魔王「うん、毎回この時間になると決まって入り浸るよね」

側近「おかし持ってきてあげてるじゃないですか」

魔王「……一昨日は魔の湯饅頭、昨日は黒い愛人、今日は北の地方にある有名店で売ってる30個限定の赤いチーズケーキなんだけど」

魔王「いつもどこかのお土産だよね?」

側近「おいしいですね」

魔王「うん…ってそうじゃなくて」

側近「魔王様あーん」

魔王「自分で食べれるから」

側近「そんな…私の事が嫌いなんですね…」

魔王「い、いや、そうじゃなくてだな」

側近「ではどうぞ」

魔王「……」モグモグ

側近「どうですか?」

魔王「…おいしいけど、何?おまえらワタシ抜きでどっか旅行でもしてるの?」

側近「魔王様あーん」

魔王「……」モグモグ

側近「どうですか?」

魔王「うんおいしい…誤魔化してないか?」

側近「何のことだかさっぱりですね」

魔王「その話は置いておいていいや、問題はあの熊なんだが」

側近「はい」

魔王「…あいつ誰なの?」

側近「…さぁ?」

魔王「えっ?知らないの?知らない奴なのに放っておいたの?」

側近「魔王ちゃんの知り合いかと思いまして」

魔王「サラッと魔王ちゃんって言ったな」

側近「この前もビリヤード大会の時にデカいドラゴン連れ込んだじゃないですか」

魔王「あ、あれはワタシの偉大さを感じて貰いたくて」

側近「城が崩れるかと思いましたよ、いえ、半壊はしましたけど」

魔王「全壊しなかっただけマシでしょ?」

側近「あなたが言わないでください」

魔王「側近さんが人化の呪いかけなかったらどうなっていたことやら」

側近「ええ、本来解決すべき魔王ちゃんが速攻テレポートで逃げましたからね」

魔王「用事思い出しちゃって」

側近「ほう?どのような?」

魔王「………」

側近「せめて何か言ってください」

魔王「程度のいい言い訳が思いつかなくて」

側近「本当にポンコツですね魔王ちゃんは」

魔王「ぽ、ポンコツじゃないし!」

側近「やれやれ」

魔王「本当だぞ!ワタシの偉大さを思い知らせてやるからな!」

側近「また城を半壊させるつもりですか?」

魔王「ち、違う!今度はそれなりの大きさの奴を連れてくる!」

側近「そもそも自分の力で偉大さを証明しようとは思わないのですか?」

魔王「……知り合いの力はワタシの力だから」

側近「よかったですねー」

魔王「くそ…まともに取り合わなくなった」

側近「この漫画の続きあります?」

魔王「おい待て、ワタシそれまだ読んでないんだが」

側近「ええ、知ってますが」

魔王「………」

側近「もう、そっぽ向かないで下さいよ」

魔王「側近なんて知らないし…」

側近「こっち向けば熊の正体教えてあげますから」

魔王「知ってたのか!?」

側近「いいえ?知りませんよ?」

魔王「…そうやっていつも意地悪するんだ」

側近「楽しいですから」

魔王「ワタシ以外にまともな奴はいないのか…?」

側近「魔王様のポンコツ度もまともではありませんよ」

側近「この前なんて城の罠にかかってたじゃないですか」

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