みほ「○んしゃ道?」 (68)

みほ「そういえば、大洗の戦車道以外の必修選択科目なんだけど……」

優花里「はい?」

みほ「黒森峰に比べて、ずいぶんたくさんあるなって思って……」

麻子「そうなのか?」

華「茶道・書道・合気道・華道・弓道・仙道・香道・長刀道・忍道ですね」

みほ「仙道や忍道とか、わたしこっちに来て初めて知ったの」

沙織「そうなんだ。へえ~意外」

優花里「母から聞いたんですが、昔はもっとヘンな授業があったらしいですよ!」

華「生徒会なら、なにか知っているかも知れませんね」


――生徒会室


みほ「戦車道以外にも、廃止になった科目があるってほんとうですか?」

杏「ま~ね~。で、調べてみたら、いろいろ面白いものがあってね」

柚子「この前資料を探したときに、見つかったものをまとめてみたの」

桃「五十音順になっているから、順を追ってみよう」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1465570541

『あ』あんしゃ道(暗車道)


杏「暗車っていうのはふるい日本語表現で、いわゆるスクリューのことだね」

柚子「スクリューは、いわばエンジンやモーターの性能を引き出す機関。船を動かす上で、ものすごく重要な役割を果たすんです」

桃「それで、学園艦ということもあり、スクリューの研究は昔から盛んに行われていたらしい」

沙織「へえ~~」

優花里「すごいです! 」

みほ「でも、どうしてそれが乙女のたしなみとして採用されているんですか?」

杏「そりゃ、GⅠやSGを制覇するためでしょ」

みほ「!?」

柚子「早いうちからペラ打ちの経験を積むことで、優秀なレーサーを養成するのが目的だったそうよ」

麻子「競艇のペラの研究ってことか」
(※プロペラの意。競艇ではスクリューといわずこう呼ぶ)

沙織「ペラ打ち!? 競艇!?」

華「あ、あの、なんの話を……?」


杏「いやー、ボートレースの賞金って、女子のスポーツ選手のなかでも結構なランクを誇るじゃない? だから、思った以上に夢のある職業なんだよ」

柚子「世界レベルのプロとして活動できる自立した女性を養成するにあたり、体格で劣る日本人にできることは何かと模索した結果、ボートレースが選ばれたそうです」

杏「昔のプロペラって、選手自身が研究して取り付けるものだったから、勝敗に直結する大きな要素だったんだねー」

桃「だが、現在のボートレースのプロペラは、選手が所有するものではなく、モーターに備え付けられるものを使用することになっている」

桃「むろん、いまでもモーターとのかねあいでプロペラの調整には高い技術を要するが、昔ほど研究に没頭する必要がなくなった。それゆえの廃止だな」

優花里「へえ~~っ……。そんな歴史があったんですね」

杏「ちなみに女子で茨城出身の選手といえば、大橋由珠(ゆず)選手がいるねー」

華「あら? 会長、妙に現在のボートレースにもお詳しいですね」

杏「!」ビクッ

みほ「まさか……会長……」

杏「な、なんのことかなー……」プイッ
(※舟券の購入は20歳になってから)

『い』いんしゃ道(隠者道)
(※隠者:俗世間を離れ、山野などにひっそりと暮らす人。宗教的な意味合いが強い)


華「世間から離れるための教育をするんですか? それも授業の一環で?」

麻子「そんな科目、すぐに廃れるぞ。学校はそういう人間をつくるところじゃない」

杏「いや~、そう言われるとその通りだよね。でも、本来はもっと別の意義があったみたいだけど」

柚子「なにかと精神をすり減らしがちな現代人。でも、娯楽や機械、そういう人工的で刺激的なもので気を紛らわすのでなく、そこから離れ、深く自然とふれあい、その中で心の安らぎを見つけるのが目的だったそうよ」

沙織「そういわれると、良い科目のような気がするけど」

ミカ「名前とその中身が大きく異なるって、よくあることだね」

みほ「ミカさん!?」

ミカ「そもそも、隠者がなぜ世間を離れるかというと、孤独と向き合うことで自分のことを知ろうとするからさ。つまり、いまの社会の構造そのものが自分らしい自由さを失う仕組みになっているということなんだ」

桃「おいおい! 他校の生徒が用もなく無断で入ることは禁止なんだぞ!」

ミカ「だから、入ったのさ」ポロローン♪

アキ「あ、もーっ! ミカ、ここにいたんだ!」


ミッコ「早く帰るよ!」ガシッ

ミカ「人間が行きたい所へ足を運ぶだけなのに、理由も許可もいらないんじゃないかな?」ズルズル

アキ「またそーやってひねくれたこと言うー!」ズルズル

ガチャ バタン

みほ「…………」

優花里「…………」

沙織「…………」

華「…………」

麻子「…………」

桃「……継続高校には、まだ隠者道が残っているのか?」

みほ「いえ、あの人だけだと思います……」

『う』うんしゃ道(運者道)
(※運者:運がいい人のこと)


柚子「当時はこの科目は相当な人気で、毎年教室はいっぱいだったそうよ」

優花里「でも、運が良くなるってどういうことなんですか?」

柚子「縁起をかつぐ、という言葉があるように、運気が良くなるふるまいなどがあるでしょ?」

柚子「逆に、縁起が悪くなる言い伝えも多く残っているから、それを避けたりとかね」

柚子「そういう行動やおまじないを学び、良い1日にする。毎日が良い1日で過ごせたなら、幸せな人生になる。そういう目的のようです」

沙織「なんだか女子力上がりそー! あたし、まだこれが残ってたら選んでたかも!」

麻子「でも、廃れた理由はなんとなく察しがつく」

沙織「?」

麻子「運気が良くなるということが幸せにつながるなら、そこにカネの匂いを感じるぞ」

杏「ご明察。そこに目をつけた誰かが、手作りのアクセサリーを運者道の授業で販売したのがすべての元凶」

柚子「やがて運者道履修者以外にも『幸運グッズ』や『幸せになるグッズ』というアヤしい物品が飛ぶように売れて、それはもうすごい額のお金が動いたって大問題になったんだって」


柚子「本来の目的を見失った運者道は廃止。グッズ販売も禁止。ちなみに、この騒動は全国的なものだったそうよ」

桃「どの学園艦でも似たような事件がいくつもあったようだ。まさに現代の流行病といったところだな」

優花里「あ、あのう……」

杏「なーにー?」

優花里「そのグッズってどんなものがあるか、写真とか残っていますか?」

杏「あるよ。たとえばそーだねー、運気が上がる置物とかいうシリーズはこんなのが人気だったらしいよ」


< 1/72スケール『厳かなモノリス』¥5,500 >


沙織「ぶっ! ヘンなのー!」

麻子「いかにも怪しいデザインだな」

華「こんなものに大金を払って買う生徒がいたんですねえ」

みほ「……あれ? 優花里さん?」

優花里「あ、ああ……やっぱり……ウチの店にあるヘンな置物だぁ……」ガタガタガタ

みほ「!?」
沙織「!?」
華「!?」
麻子「!?」

『え』えんしゃ道(演者道)


柚子「演者道の心得。それはどんな役でも演じきってみせること」

桃「ここから芸能界入りした人もたくさんいて、結構なレベルだったそうだ」

杏「ちょっとやってみようか。西住ちゃん、『ありすちゃん』のマネしてみてよ」

みほ「うええっ!?」

杏「ハイ西住ちゃん、スタート!」

みほ「か、カッチカチのロゼッタウォ~~ルっ!!」

杏「おお~~~~っ! 似てる~~~~っ」

沙織「そっちなの!? 島田流のあの子じゃなくて!?」

杏「ウイッチに不可能はないんだよ! ペリーヌちゃん!」

沙織「誰!?」

そど子「奏者を出さないと」
ゴモヨ「この町の犬も猫も」
パゾ美「み~んな解剖しちゃうゾ~!」

麻子「いやーーッ! 響ーーッ!!」

沙織「風紀委員がいつの間に!? えっ!? 麻子、そんな大きな声出せるの!?」


麻子「切歌ちゃん、助けに来てくれたの!?」

沙織「わたしが切歌ちゃん……? うッ! 頭が……デース……デース……」

桃「しっちゃかめっちゃかじゃないか!!」

優花里「仕方ありません、ここは私の忘却のトイズで……」キュイイン

桃「お前も錯乱してるぞ秋山!!」

沙織「……ハッ!」

みほ「うう~~ん……いったい何が……」

柚子「演者道は、ときどきこうしてわけが分からなくなる生徒が続出したために廃止となったそうです」

杏「やっぱ前世の記憶(?)が濃ければ濃いほどなりやすいみたいだね~」


―― 一方その頃


まほ「イカちゃ~ん」

エリカ「実験させて~」

カチューシャ「ぎゃああっ! この2人はどっちの作品でも苦手でゲソー!」?

『お』おんしゃ道(恩赦道)


桃「全国大会で優勝したときに、風紀委員が冷泉の遅刻記録を免除しただろう?」

麻子「ああ」

桃「あれが恩赦道だ」

麻子「!?」

桃「昔の風紀委員は、必ず恩赦道を履修し、相手を許す心を養ったそうだ」

桃「また、『どのくらい許すか』という責任論、現実的で実践的な信賞必罰のノウハウを学習するという」

柚子「それで、現在はもうやっていない科目でも、風紀委員の伝統として、その学習内容の一部がいまだに生き続けているということなんですね」

沙織「麻子、なんだかんだでそど子さんに許されてるんだから、感謝しなさいよ?」

麻子「アレはありがたかった」

そど子「そう思うなら、ちょっとは遅刻の回数を減らしなさいよ!」

『か』かんしゃ道(感謝道)


みほ「感謝するって……どういうことですか?」

柚子「1日のうち1つ、感謝できることを発表するというものですね」

沙織「いわゆる『よかった探し』ってやつ?」

桃「それに近い。そうやって日々の暮らしに目をこらすことで、なにげない日常にも新たな発見があるというわけだ」

麻子「私なら、昼寝できる場所に感謝して眠る……」

沙織「こら! そーゆーズルい使い方はだめでしょ!」

優花里「じゃあ私は、西住殿に会えたことに感謝ですう♪」ギュッ

みほ「ふええっ!?」ギュー

杏「あたしも、西住ちゃんが学校を守ってくれたことに感謝♪」ムギュー

華「お花しか知らなかったわたしに戦車を教えてくれたみほさんに、感謝です♪」ギュッ

みほ「あ、あの、みなさん……」ムギュー

小梅「西住さん、戦車道、続けていてくれてありがとう……」ギュッ

みほ「ええっ!? ちょっ……! なんで赤星さんが……!!」ギュギュー


優花里「感謝♪」ギュー

杏「感謝♪」ギュー

華「感謝♪」ギュー

小梅「感謝♪」ギュー

みほ「うええっ! みなさん、危なッ……!」グラッ


ドンガラガッシャーーン!


みほ「うわあ~~~~っっ!!」ドテーン!

優花里「いたた……でも、どうしてなくなったのでしょう?」

杏「他の科目と比べて、やってることは地味だからね~。わざわざ授業の一環としてやることかといわれたら微妙なとこじゃない?」

華「確かに……」

小梅「そうかもしれませんね」

みほ「お、重いぃ……みんな早くどいてぇ……」ピクピク

『し』しんしゃ道(新車道)


華「車の新車ってことですか? どういう活動なのでしょう?」

ナカジマ「名前の割には本格的だぞ。次世代の自動車をつくるために、何ができるかを考えるのが目的だ」

みほ「自動車部のみなさん!」

スズキ「技術の面、予算の面、環境の面、道路交通の面……」

ホシノ「ありとあらゆる角度をとらえ、いままでにない新しいクルマの可能性を見出すのさ」

ツチヤ「その科目は、いまは部活動としてわが校に残っているというわけ!」

優花里「へえ~。はじめて聞きました!」

ナカジマ「聞くところによると、昔の先輩が授業だけでは飽き足らず、放課後にも工具を持ち込んで車をいじってたのが自動車部の起源らしい」

スズキ「やがて、学習指導要領の変更で科目がなくなったけど」

ホシノ「余った大量の工具や、自動車の部品はどうする? ってことになって」

ツチヤ「で、大洗には意外とクルマ好きがたくさんいるってことが分かって、いっそのこと部活にしちゃえ、って自動車部ができたらしいってこと!」

ナカジマ「もちろん、その精神はあたしたちみんな受け継いでいるよ!」

ホシノ「いまは自動車というよりは戦車について考える方が多いけどね。でも実は、ちょっとした夢があるんだ」

スズキ「将来、新しい自動車ができるときに、私たちが考えた機構やシステムが組み込まれてたらうれしいなってね」

華「まあっ」

優花里「素晴らしい考えです! 私、感激しました!」

『せ』せんしゃ道(洗車道)


優花里「戦車ではなくて!?」

柚子「水着を着て、大きなスポンジを手に、泡だらけになって車を洗う武道(?)です」

麻子「意味が分からんぞ」

沙織「やだもー! そんなのって許されるの!? セクハラじゃない!」

みほ「これはなくなってよかったとおもう……」

杏「あ、ちなみに、サンダース大付属にはまだあるらしいよ」

全員『!?』

杏「戦車道に次いで人気があるって」

全員『!!???』

杏「確かめてみる?」

みほ「は、はい……」


プルルル プルルル


ケイ『ハロー! ミホ!』


みほ「あの……つかぬことを訊きますけど……」

ケイ『ザッツ・洗車道のことね! モチロン知っているわ!』

みほ「ほんとうにまだあるんですか……?」

ケイ『あるも何も、うちのナオミはそこからあたしがスカウトしたのよ?』

みほ「!?」

ケイ『あ、ちなみにこの話をナオミにすると、キレたベジータのように暴れるから内緒でネ♪』


ガチャ ツーツー


みほ「…………」

優花里「どうでしたか西住殿?」

みほ「ううん。なんでもない」フッ

麻子(心に棚を作ったな……)

『た』たんしゃ道(単車道)


優花里「これはわかりやすいですね!」

みほ「そういえば知波単学園の西さんは、バイクに乗るのが好きでしたね」

沙織「『ウラヌス』だっけ? カッコイイよね~」

みほ「これも自動車部に組み込まれたんですか?」

桃「いや、そんな記録はないぞ……?」

華「そのへんの事情、自動車部の方々はご存知でしょうか」

ナカジマ「これは単なるうわさというか、言い伝えなんだが……」

ホシノ「統廃合の折に新車道と一緒になるはずが『クルマと一緒にするな!』といって、ケンカ別れしちゃったらしいんだよ。それでそのままバイク関連は消滅」

ツチヤ「それでも一時期はかつての戦車道に及ぶくらいの人気を誇ってたらしい」

スズキ「あたしたちでさえ知っているのはこのくらいだけど……」

柚子「ただ、あれだけ人気があったのにあっさりなくなっちゃったことと、それに関して特に何も記録がないっていうのが逆に不気味で……」

杏「『大洗女子学園七不思議』のひとつだね。『消えたバイク』の話」

桃「単車道の廃止が決まった瞬間、まるで、もとからそこになかったかのように学園艦じゅうのバイクが消えたそうだ」

麻子「うっ! 怖い話はやめろ……」ビクビク

『ち』ちんしゃ道(陳謝道)


みほ「よく意味がわからないんですが……」

杏「謝り方ってのは大事だよ? やらかした後でも、態度しだいでうまくいくことだってあるから」

柚子「そこで、『どう謝るか』に重きを置いたこの武道(?)ですが、採用された経緯があるのは、やはり大洗が女子高だというところがポイントですね」

沙織「わかった! 女の涙で泣き落としってことだよね?」

桃「そうだ。それも、さまざまな泣き方があったという」

麻子「ズルい手だが、使わざるを得ない場を考えると、わりと現実的にアリだな」

杏(……ねえ、西住ちゃん)ヒソヒソ

みほ(……ええっ!? できませんよそんなの……)ヒソヒソ

杏(お願い。あとでボコのグッズあげるから)ヒソヒソ

みほ(わかりました)

柚子「桃ちゃんすぐに泣いちゃうから、試しにこれ、やってみたら?」

桃「桃ちゃんと呼ぶな! それに、私が何に謝るというんだ!」

みほ「そんなのウソでしょ、河嶋さん」ダン!


桃「ひッ!?」ビクッ!

杏「あ~、西住ちゃんをついに怒らせちゃったね~。マジギレだよ~」(大嘘)

みほ「いままでのこと、とぼけるの?」グイッ

桃「い、痛っ……! 西住、やめて……」ビクビク

みほ「味方は撃つ。肝心なところで外す。大事な場面で取り乱す」

みほ「それなのに、一度だって謝ったこと、あります?」ギロッ

桃「あ、あああ……ごめんなさい……」ポロポロ

みほ「わたしだけじゃなく、ここにいるみんなに謝ってください」

桃「ゔ、ゔん……ごべんなざい……」ビクビク

桃「わ、わだじ……グスッ、もっどがんばるがらぁ……」メソメソ

みほ(……さすがにもうかわいそうですよ会長)ヒソヒソ

杏「うーん。やっぱり河嶋はなんとなく許せちゃうなー」ナデナデ

桃「……っ?」

杏「みんな、許してくれるってさ」

桃「ほ、ほんとうに……?」

みほ「河嶋さん、さっきは乱暴にして、ごめんなさい」ギュッ

桃「に、西住いいい……っ!」ポロポロ

柚子「あらあらこんなに泣いて。桃ちゃんやっぱり泣き虫ね」ギュッ

桃「うるさい! 桃ちゃんとゆーな!」グスッ

沙織「……涙の力ってすごいね。あれも女子力ってやつ?」

麻子「いいたいことはわかるが、違うぞ」

優花里(ああ……わたしも西住殿につよく詰問されたい……)モジモジ

『て』てんしゃ道(転写道)


杏「これも『大洗女子学園七不思議』のひとつ」

沙織「出た! 七不思議!」

麻子「ッ!」ビクッ

柚子「もともとは写経を主な活動にしていて、書道履修者との交流も盛んでした」

柚子「書き写すという点から、美術部員も多くかけもちしていたそうです」

桃「ところが、そこにひとりの天才がいたらしい」

杏「なんでもそっくりそのまま書き写しちゃって、名画を描かせれば見分けがつかないほどの腕前の子がいたんだって」

杏「だんだんそれがエスカレートして行って、筆跡や印鑑の形を完璧に写し、契約書を偽造したり……贋作の名画を転売したり……」

杏「果ては、お札までそっくり写すまでになっちゃったというよ」

みほ「……」ゴクリ

杏「ところが、まったく同じお札ってことは、番号も同じ。ニセ札とわかるのにそう時間はかからなかった」

杏「追われる身となったその生徒は、とうとう『自分自身を写す』という手段に出た」


華「どういう、ことでしょう……」

杏「自分の脳の記憶を何かにそっくりそのまま写したらしい」

杏「どうやったのかはわからない。だけど、警察が駆けつけたときにはすでに……」

杏「その子の頭部は、からっぽで何もなかったんだって」

麻子「ムーン」バタン

沙織「麻子ーっ!」

杏「そういうわけで、転写道は廃止。だけど、ひとつの謎が残った」

杏「その子は、何に記憶を写したのか?」

杏「もしかしたら、その子はこの学園艦そのものに記憶を写していて」

杏「いつか人間の体を手に入れるために、ずっとここの生徒を狙ってる。ってね……」

みほ「あわ、あわわわ……」ガクガク

沙織「や、やだもぅ……ウソよね」ブルブル

麻子「」ブクブクブクブク

華「学園艦さーん。見てますかー?」フリフリ

優花里「私、ときどき五十鈴殿が恐ろしいです!!」

『と』とんしゃ道(豚舎道)


沙織「ブタ小屋!?」

麻子「どーいう科目か見当もつかん。いや、そもそもなんで発足しようとしたんだ?」

杏「ブタってさー、牛や羊と違って、食べられるためだけが目的の家畜なわけじゃん?」

桃「しかし、映画『ベイブ』を観た教師が大きく感銘を受け、人間の役に立つブタをつくろうとしたという」
(※ベイブ:子豚のベイブが牧羊犬の代わりに羊を操る「牧羊豚」をめざす話)

柚子「ブタはもともとかしこい生き物だし、情操教育の面としては最適なんじゃないかって一時は成功しているかのように見えたんだけど……」

杏「知ってのとおりウチには畜産科があるでしょ? 食べないブタを増やすことに大きな反発があってすぐさま廃止」

杏「んで、その科目を考えた教師たちもブタといっしょに出ていっちゃって……」

沙織「ちょっとかわいそう……」

杏「いまはヨーロッパの山間部でトリュフ探しの達人になったってさ」

沙織「!?」

優花里「聞いたことがあります。たしか、土に埋まっている位置を探るのにブタの嗅覚を利用するんでしたよね」


華「でも、ブタはそのまま勢いでトリュフを食べてしまうから、最近では犬を利用しているとか……」

桃「そうだ。だが、彼とそのブタは深い絆でつながっているからな。そういう事故は起こらないそうだ」

柚子「その腕前を買われ、世界最高のトリュフハンターとして賞をもらったんだって」

麻子「追われるように出て行った先で、大成功を収めたわけか。人生何があるかわからんな」

華「うふふ。まるで、誰かを思い出しますね」チラッ

みほ「?」

柚子「その縁で、数年に一度、トリュフが贈られてくるんです」

杏「七不思議のひとつ『学園艦に突如送られてくる高級品』の正体はこんないきさつがあったってこと。わかった~?」

『な』なんしゃ道(軟車道)


みほ「軟車?」

杏「これのことだね」スッ


< 『やわらか戦車』 >


みほ「なんですかコレ!!?」

優花里「コレが戦車を名乗っていいのでありますかっ!?」

~♪や~わらか戦車の こ~ころはひとつ
~♪生き延びたい 生き延びたい
~♪む~ねに刻むは 退却魂
~♪生まれてこのかた 後ずさり~

優花里「西住流をとことん対極の方向に突き詰めたような理念ですね……」

~♪パパのかかと~ ほ~どにもかたくない
~♪(蚊に刺されたーっ! 退却ーーッ!!)

華「とても、花を生けられる代物ではありませんね」

みほ「ええ~~っ……」


~♪3日に1度 子猫にさらわれる
~♪(兄者ーーーッ!!)

麻子「昆虫のような弱さだ……」

~♪や~わらか戦車 や~わらか戦車
~♪他の追随を 許さぬ弱さ
~♪ゆ~びさきで つ~つかれたら
~♪そこから腐る~~♪

沙織「腐るの!?」

桃「ちなみに2番の歌詞では、コイツに主砲が搭載される」

優花里「あ、いちおう戦車らしいところはあるんですね」

桃「ちくわだがな」

優花里「主砲がちくわ!?」

麻子「まったく意味が分からんぞ」

柚子「そうなの。この軟車道が廃れたのは、『意味が分からないから』というのが大きな理由だそうよ」

みほ「そりゃ廃れますよ……」

沙織「これも七不思議なんですか?」

杏「そーなんだけど、一番ふしぎなところは別にあるんだよね」

柚子「これが廃止されたのは、戦車道が廃止された1年後になってるわ」

みほ「!!?」

優花里「戦車道より長く続いたんですかっ!??」

杏「いやー、当時の教育現場どうなってたんだろうねー」

『に』にんしゃ道(忍者道)


桃「これはまだある。忍道のことだ」

柚子「ただ、当時といまとではずいぶん中身が違ったみたい。まるで本物の忍者のような、いろいろな『術』を教えていたそうよ」

おりょう「われわれはこっちの方の忍者道を学びたかったぜよ」

みほ「みなさんが1年生のときには、忍道はどんな授業だったんですか?」

カエサル「ああ。忍者とはあまり関係ない、近代的なスパイ任務に関する諜報活動がメインだった」
(※ドラマCD第1弾にそういう説明があります)

佐衛門佐「むろん、黒装束に手裏剣の、あの典型的なイメージの「ニンジャ」が現実にはいないことはわかっている」

エルヴィン「だが、あの非現実的ながら熱い血が流れている「ニンジャ」の世界にはあらがえぬ魅力があるのだ」

おりょう「面白いのはやはり流行の最先端を行くツイッター小説『ニンジャスレイヤー』ぜよ」

カエサル「いや、日本が誇る漫画『NARUTO』だな」

エルヴィン「知名度ならアニメ『ミュータント・タートルズ』も負けてはいないぞ」

佐衛門佐「特撮の『世界忍者戦ジライヤ』だと思う」



『それだッ!!!』


沙織「本当にそれでいいの!?」

優花里「さあ……私もちょっと専門外ですから」

みほ「特撮なら、阪口さんに聞いてみましょう」

桂利奈「ジライヤ? 面白いよー! 特にこの『牢忍ハブラム』がいいキャラなの!」

華「まあ。まるで北斗の拳に出てくるザコのような見た目ですが……」

桂利奈「でしょ? でもこの人ジライヤの味方なんだよね~」

みほ「!?」

優花里「な、なんだか中身がものすごく気になるんですが……」

『ね』ねんしゃ道(念写道)


杏「これは、ビデオを見てもらったほうが早いね」ピッ

『…………』

『…………』

華「初老の男の人がいますね」

優花里「机の上には、年代物のカメラがあります」

『隠者の紫(ハーミット・パープル)ッ!!』ゴシャアッ!!

全員『!?』

ウイーン……

みほ「壊れたカメラから、写真が……!?」

沙織「なによもー! 手品か何か?」

桃「これが、念写道だそうだ」

柚子「それでね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

優花里「なんでしょうか?」

桃「あのカメラを壊したとき、男の手からなにかバラのいばらのようなものが見えたか?」


みほ「?」

桃「会長にはそれが見えたそうだが、私達にはまったくわからん」

杏「でも確かに見えるんだもん。仕方ないじゃん」

華「私も、ただ男の人が手刀でカメラをまっぷたつにしたとしか……」

麻子「……ちらっと見えた気がするが、気のせいだと思っていた」

杏「おおっ! やっと見つけた、見えるひと!」

柚子「どうやら念写道には、何かが見える特別な才能が必要らしいの」

沙織「だから広まる間もなく、廃止になったんだね」

杏「あたし、この動画を見てるとさー、なんだか知らないけどコーヒー味のガムが食べたくなったり、砂を触りたくなるんだよ」

麻子「私も、急に折り紙がしたくなってきた……」

みほ(いったい何の話だろう……?)

『は』はんしゃ道(反射道)


沙織「反射?」

優花里「何かをはね返すんですか?」

杏「いや、こっちのほう」プニッ

みほ「ひゃあんっ!?」ビクッ!

優花里「!?」

みほ「か、会長、いきなり何を……」プルプル

杏「いやー、まさか西住ちゃんがここまで脇腹が弱いとはね」

柚子「脊髄反射。つまり、触れることで人体の構造を知ることが目的でした」

桃「どこをどういうふうに刺激を与えると、どう反応するかを身をもって体験する。護身術や応急処置など、その用途はとても広かったらしい」

杏「エステやマッサージにも応用できたし、実際役に立つ立派な科目だよ」

沙織「いいじゃない! でもどうして廃止に?」

麻子「その本来の目的を見失ったからだろう」

華「どういうことでしょう?」

杏「こうやって、ただ単に触りたいところ触るのが面白くなっちゃったってことじゃない?」モミモミ

みほ「ふえぇっ!? 会長、ど、どこ触って……!」ビクッ!

優花里「うらやまッ……じゃなかった! 会長! なんてことを!」

柚子「会長の言うとおり、趣旨を外れてしまい、授業の光景があまりにいやらしすぎるからという理由で廃止になりました……」

桃「七不思議のひとつ『空き教室に響き渡る叫び声』の正体じゃないかという説がある」

沙織「やだもー!」

『ひ』ひんしゃ道(貧者道)


柚子「貧者道の精神は、マザー・テレサが創設した修道会『ミッショナリーズ・オブ・チャリティ』の理念に基づいています」

みほ「あのマザー・テレサですか?」

華「確か、貧しい人々のために人生をささげた方でしたね」

優花里「どういうことをするんですか?」

杏「簡単だよ。そういう人たちのために、何かしてあげたいっていう気持ちを行動に表すってこと」

麻子「だが、ここは学園艦だぞ。深刻な格差があるわけじゃない」

杏「ほんとうにそうかな?」

沙織「??」

柚子「貧者道には、マザーの教えを踏まえた言葉があります」

 『真の貧しさとは、自分が必要とされていない、愛されていないと思う心の飢えである』

 『たとえば、6日間食事を満足に得られない人がいれば、それはひどく貧しい暮らしだと思う人はいくらでもいるでしょう』

 『しかし多くの人は、愛されている、自分は大切に思われているという実感を得られないまま、6日でも、6週間でも、ときには60年間もそのままに生きてしまっているのが現実ではないでしょうか』

 
 『それは何不自由なく暮らしているように見えても、貧しい者なのです』

 『あなたたちのまわりに、本当にいないといえますか? そんな人たちが』

 『自分なんか必要ない、他人に愛されていないと孤独に暮らす人が』

優花里「…………」

 『もっと親に話しかけてもらいたいと願っている子供が』

みほ「…………」

 『彼らはひと切れのパンに飢えているのではなく、愛情に、ちいさなほほえみに飢えているのです。それは食べ物に対する飢餓よりも、もっと恐ろしい飢えなのです』

 『あなたのごく近くに、愛情と優しさに飢えている人々がきっといます。どうかその人を見捨てないでください』

 『彼らに、人間としての尊厳を認め、あなたにとって大切な人なのだと、まごころをこめて認めてあげてください』

 『あなたよりも貧しい人を含めて、他人を愛しているのだということを行動によって示すことで、彼らを幸せにすることができます。』

 『たくさんのものが必要なわけではありません。ただ、微笑みかけてあげるだけでいいのです』

沙織「わあっ。素敵」

華「なんだか、ものの考えがガラリと変わりそうです」

柚子「素晴らしい考えの貧者道ですが、あくまで修道会の教えに基づいているため、ミッション系でない大洗女子学園ではそこまで浸透しなかったみたい」

杏「ただ、科目としてなくなっただけで、こういう活動をしている人はたくさんいるってことは知っててほしいな」


『ふ』ふんしゃ道(噴射道)


杏「正式には『噴射推進式飛行機道』」

優花里「ロケットですかっ!?」

麻子「すさまじく金がかかりそうだ。ロケットは、どんなに素晴らしい性能でも使い捨てだからな」

沙織「宇宙飛行士ってモテるのかなあ?」

華「宇宙の研究とは、壮大なものですね」

柚子「でも、実はこれは名前が残っているだけで、いかんせん予算がつかず、活動までこぎつけられなかったそうなの」

みほ「それでも夢とロマンにあふれてます!」

優花里「面白そうです! 宇宙ってテーマを聞くだけでワクワクしますね!」

杏「そんなわけで七不思議のひとつ『幻の科目』はこれのことだったというわけ」

桃「現在は無理でも、20年後には定番の授業となっていてもおかしくないかもな」

『ま』まんしゃ道(満車道)


沙織「駐車場をいっぱいにするの?」

桃「ヒントを出そう。駐車場にたくさん車が停まっている。では、その車に乗っていた人はどこにいる?」

華「ふつうに考えたら、その駐車場がある建物へ行きますよね」

みほ「お客さんでいっぱいのお店ってことですか?」

麻子「わかったぞ。駐車場が満車になるほど、お店にお客さんが来てくれるようなアイデアを考える科目だ」

杏「せいかーい。経営学の一種で、とくに集客に力を入れることが成功の秘訣と考えるビジネス講座のような感じだったみたい」

優花里「とっても役に立ちそうですね!」

桃「だが、店舗の経営はそう簡単なものではない」

柚子「ちょうどバブル崩壊に伴い、商行為に関する特別科目はことごとく自粛となったらしく、これもその影響を避けられなかったようです」

杏「とにかくたくさんのお客さんを集める、っていうのも大量消費社会じみてたからね。どーしても古臭いイメージがつきまといがちなのかなー」

優花里「でも私、これに興味があります」

沙織「そっか。そうだよね。ゆかりんのお家は自営業だもんね」

華「秋山さんは、お店を継ぐんですか?」

優花里「親から言われたことはないですけど、最近、少しはこういうことも勉強してみたほうがいいんじゃないかとおもってきて……」

杏「おっ! もう進路のこと考えてるワケ?」

柚子「桃ちゃんも、しっかりしないとね」

桃「なぜ私が真っ先に心配されなきゃならんのだ!」

『ら』らんしゃ道(乱射道)


ドガガガガガ! ドガガガガガ!

優花里「ヒヤッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇぇ!!」

バキューン! バキューン!

桃「撃てー! うてうてもっと撃てーーっ!!」

ダララララ! ダララララ!

沙織「快・感♪ コレ一度言ってみたかったんだよね~♪」

ドゴーン! ドゴーン!

ダダダダダ! ダダダダダ!

グワタタタ! グワタタタ!

ドババババ! ドババババ!

みほ「…………ふう」

杏「スッキリしたでしょ?」

柚子「とにかく弾丸をぶっ放して破壊の限りを尽くす。それが乱射道」

華「なんだか背筋がゾクゾクして、魅力に取りつかれちゃいそうです」

麻子「ただ、これって教育的な目的が見当たらないと思うぞ」

沙織「楽しかったけど、やってることはただのストレス解消……」

柚子「そうよね。さらには、とある乱射道履修者が『環境破壊は気持ちがいいゾイ』と発言したことが問題となり、そこから廃止の気運が高まったそうです」

杏「そりゃ、そうだ」

優花里「しかし、大洗にこんなに銃器(※安全に配慮されたもの)があったとは……」

柚子「つい最近購入した記録があります。名義は風紀委員で」

沙織「!?」

そど子「廃校が決まったとき、立てこもることを想定して一式揃えたのよ」

みほ「物騒!」

ゴモヨ「でも、もう必要のないものだから、じゃんじゃん撃っちゃってください」

麻子「お前ら、どれだけショックだったんだ」

『れ』れんしゃ道(連射道)


沙織「乱射道と大した違いがない気が……」

杏「ぜんぜん違うよ。ハイこれ、2Pコントローラー」


< 『ドラゴンボールZ 超武闘伝2』 >


沙織「ゲーム?」

優花里「うわあっ! 名作ですう!」

杏「連射を制する者は、かめはめ波の撃ち合いを制する!!」


カメハメハー!!


杏「1秒間に16連射をめざして!!」ダダダダ


バシューン!!


優花里「うおおおおッ!!」ダダダダ


バシューン!!


柚子「これが教育科目にあったのは、ゲームが脳に影響をどう及ぼすかを模索していた時代の名残ですね」

桃「大人気の科目だったが、テレビゲーム反対論に世論が傾いたことと、指がやられる生徒が続出したため廃止となった」

華「テレビゲームのたぐいは、やったことがありません」

みほ「わたしも……」

沙織「アリクイさんチームは連射が速そう」

ねこにゃー「ネ、ネトゲは連射を求めるイベントがないから……」

『ろ』ろんしゃ道(論者道)


杏「秋山ちゃん、ちょっとお願いなんだけど」

優花里「なんでしょうか?」

杏「コレ、読んでみてくれない?」スッ

優花里「はあ。では……」

優花里『んんwww戦車道は役割ですぞwww』

優花里『車輌はヤークトティーガーかヤークトパンター以外ありえないwww』

優花里『役割を持てぬ八九式など論外ですなwww』

みほ「なんですかコレは!?」

桃「かつて流行ったという戦車戦術、その名は『役割流』」

柚子「そのあまりに独特な考え方のため、戦車道の枠を超え、というか戦車道からさえも別物とみなされてしまい、『論者道』として事実上の隔離となりました」

麻子「そりゃそうだろ。ていうかなんだこの口調は」

優花里『んんwww我が使いこなしている言語は論者道の公用語ですぞwww』

優花里『この言語で話さない者wwwつまり論者道を歩まぬ者は異教徒と呼ばれておりますなwww』

優花里『異教徒は導く以外ありえないというのがモットーだそうですぞwww』

華「どちらかというとそっちが異教なのでは……」

優花里『西住殿www西住殿www』

優花里『んんwwwヒャッホウwww最高ですぞwww』

みほ「うわあ! なんだかイヤすぎます!!」

沙織「ゆかりん、もういいから! やめてあげて!」

『わ』わんしゃ道(腕車道)
(※腕車:人力車の別名)


華「新三郎」

新三郎(人力車)「へいっ」

華「あなたは車を走らせているとき、何を考えているの?」

新三郎(人力車)「何も考えちゃいません。乗ってくださる方が安らかであるように。ただそれだけを第一に思うだけです」

沙織「かっこいい~っ!」
麻子「かっこいいが……」
優花里「本当に大丈夫ですか?」
みほ「あ、あの、無理しないでくださいね……」
華「これだけの人数を乗せるのは無茶よ……」ギッシリ

新三郎(人力車)「……へへッ! これくらいハンデとしてどうッてこたァありませんよ! 絶対にお嬢を1位にしてみせまさァ!」プルプル

新三郎(人力車)「ふンぬぬぬ……うおおおおッ……!」ズズズ…

みほ「す、すごい……スピードが乗ってきてる……」

柚子「あんこうチームが追いついてきます!」

杏「かーしまー。がんばって~」


桃(人力車)「会長も手伝ってくださいよ!!」ズズズ

杏「ダメだよ~。腕車道のルールだとカメさんチームは運転手は1人って決まってるんだから」

桃(人力車)「だったら早く代わってください!!」

杏「だって、あたしの体格じゃ2人を引けないもん」

みほ(現在、わたしたちは『腕車道』の試合を行っています)

みほ(チームを運転手と乗員にわけ、人力車によるレースを行います)

みほ(ただし、運転手は乗員と同じか、少なくなければならないという決まりなのです)

みほ(大人数で乗り込み、途中で何度もメンバーを入れ替える作戦か)

みほ(少人数で負担は大きいけど、総重量が軽い逃げ馬タイプにするか。意外と奥が深いです)

佐衛門佐「武田の騎馬軍!」
おりょう「ミャンマーの象部隊!」
エルヴィン(人力車)「ポーランドの騎兵隊!」ドドド
カエサル(人力車)「古代ギリシア軍の戦車(チャリオッツ)!」ドドド

『それだッ!!』

あゆみ「梓ちゃん、しっかり!」

優季「がんばって、かりなちゃん」

あや「やればできる子だよ、桂利奈ちゃん!」

桂利奈(人力車)「あ゛い゛い゛ぃ゛っっ!!」プルプル

梓(人力車)「ダメだよ~! ビクとも動かな~い!」

桂利奈(人力車)「まるで車を押す人手がぜんぜん足りてないみたい……ってアレ?」

紗希(人力車)「…………ちょうちょ」ニッコリ

梓(人力車)「紗希ー!」

桂利奈(人力車)「ダメだこりゃー!」



杏「いやーみんなお疲れ様ー。どーだった? 大洗女子学園の歴史を感じたでしょ?」

桃「乱射道、こっそり続けてみようかな……」ボソッ

柚子「桃ちゃん?」ニッコリ

桃「……ゴホン! なんでもない」

華「新鮮な気分を味わえました」

優花里「面白かったです!」

沙織「たまにはいいね、こういうのも」

麻子「つ、疲れた……眠い」

みほ「ふだん知ることのないことが分かって、素敵な1日でした」

みほ「特に七不思議が……アレ?」

優花里「どうしました?」

みほ「七不思議の数が……」

華「バイク、学園艦、豚さん……」

沙織「戦車、えっちなやつ、ロケット……」

麻子「6つしかないぞ」

杏「そりゃそうでしょ」

みほ「どういうことですか?」

杏「七不思議の最後は『戦車で優勝!』私たちが生きる伝説そのものだから!」

みほ「会長、いま思いついただけですよね……」

杏「いやいや~。これは語り継がせる価値があるよ」

桃「すでに広報活動は始まっている。うまく進んでいるようだ」

柚子「西住さんの活躍は、大洗にずっと残ることになるでしょう」

優花里「西住殿がいる限り、戦車道はまだまだ終わらないということですね!」

華「そうですね」

沙織「そうだね!」

麻子「おうよ」

みほ「ふええっ!?」


おしまい

おまけ
『の』のんしゃ道(ノンシャ道)


カチューシャ「はあ……ひどい目にあったでゲソ……じゃなかった! なんなのよまったく……」ヨロヨロ

カチューシャ「あの後、今度は急にプリキュアがどうのとか言い出すし……あの2人にはまいったわホント」

ノンナ「カチューシャ。大丈夫ですか?」

カチューシャ「ああノンナ、いいとこに来たわね。肩車して」

ノンナ「はい」スッ

ノンナ「ところでカチューシャ。私は、プラウダをさらに強固なものにするための作戦を考えました」

カチューシャ「どういうことよ」

ノンナ「カチューシャを称え、カチューシャのもとに団結することを我がプラウダの是(ぜ)とし、全生徒へ向けての新たな必修科目として行わせるのです」

カチューシャ「そ、そう? ふ~ん。まあ悪くない考えだとおもうけど?」ニヤニヤ

ノンナ「そこで、カチューシャの魅力をさらに高めるべく、この私がカチューシャの引き立て役を務めます」

カチューシャ「殊勝なことだわ。せいぜい引き立ててもらうわ」

ノンナ「つきましては、私とカチューシャの絡みやそのシチュエーションをまとめた教科書『ノンナとカチューシャの偉大なる百合道』略して『ノンシャ道』を作成しました」

カチューシャ「!?」


ノンナ「それではさっそくノンシャ道第34段『小さい頃は身体が弱く、内気でいじめられっ子だったノンナを、幼馴染のカチューシャが一生守ってあげると宣言。今では立場が変わったように見えるけど、あの頃の思いはずっと変わっていないことを示すように、肩車の折にこっそりノンナの頭をやさしくなでてあげるカチューシャ』をしましょう」

カチューシャ「長っ!! ていうかカチューシャたちにそんな設定もいきさつもないわよ!!」

カチューシャ「そんな妄想の相手なんてやってられないわ! 降ろして!!」

ノンナ「はい」スッ

カチューシャ「まったく……ってアレ?」ガシッ!

ノンナ「……」ニコニコ

カチューシャ「あ、あ……。どーしてカチューシャの手をつかんでいるの……?」

ノンナ「カチューシャ、カチューシャ……ああ、いとおしい……かわいいおてて……」スリスリ

カチューシャ「ノ、ノンナ……目が怖いわよ……」ガタガタガタ

ノンナ「ノンシャ道第1段『どんなに強がっていても体格差はどうしようもなく、結局カチューシャは腕力ではノンナに逆らえないのだ』を思い出しました」ズイッ

カチューシャ「最初のシチュエーションがよりによってソレってもう色々とおかしいじゃない!!?」

ノンナ「だいじょうぶ。こわくないですよ。甘~いおくすりもありますからね。フフ……」ズイッ!

ノンナ「……ウフフ。カチューシャといっしょ。ずうっといっしょ……」ズイッ!

カチューシャ「あ、ああ…………」ガタガタガタ

おまけ2
『り』りんしゃ道(リンシャ道)


カチューシャ「グス……ヒック……」トボトボ

ダージリン「あらカチューシャ、どうしたの?」

カチューシャ「……ノンナなんかきらいよ……」メソメソ

ダージリン「なんだかワケありのようね。そこでお茶でもいかが?」


――戦車喫茶内


ダージリン「――そう。それで、怖くなって逃げてきたというのね」

カチューシャ「次にどんな顔して会ったらいいかわかんないわよ……」

ダージリン「まったく。ノンナは下品な女ね」

カチューシャ「そうよ! いったいカチューシャを何だと……」

ダージリン「少女の愛し方をまったく理解していないわ」

カチューシャ「」

ダージリン「こんな話をご存じかしら? イギリスの作家ルイス・キャロルは『不思議の国のアリス』で有名になって色々と言われているけど、彼自身は少女性愛者ではなかったそうよ」

ダージリン「少女を愛するといっても単なる子供好きの部類で、決してそういう目で見るということをしなかったの」

カチューシャ「何の話!?」


ダージリン「わたくしが、本場イギリスの愛で方をひとつ教えて差し上げようといっているのよ」ナデナデ
(※日本人です)

カチューシャ「ちょ、ちょっと……人がいる場で何を……」

ダージリン「これは少女愛に対するロシアVSイギリスの代理戦争」

ダージリン「さしずめ、ロリータ・コンプレックスVSアリス・コンプレックスといったところかしらね」ナデナデ

カチューシャ「じゃあアンタも同類じゃない!!!」

ダージリン「思えば、全国大会の準決勝の前でのやりとり。そして、エキシビジョンマッチでの連合」

ダージリン「いずれも十分な交流と絡みがあったのに、わたくしたちのカップリングがほとんどないのは何故?」

カチューシャ「知らないわよ!」

ダージリン「『ダージリンとカチューシャの密やかな花園道』略して『リンシャ道』が流行らないかしら?」

カチューシャ「シベリアの凍土が解けるよりも永劫にありえないわ!」

ダージリン「ねえカチューシャ。紅茶を飲むとき、いっしょにジャムを食べさせ合うというのはどう?」

カチューシャ「アンタいまコーヒー頼んでるじゃない!!!」


ほんとにおしまい


これで以上です
書いてみてわかったんですが、あ行がパーフェクトなのが驚きでした
ガルパンは面白いですね


過去作↓
みほ「プロ戦車道1日訓練?」
みほ「未公開シーン?」

みほ「笑ってはいけない西住流?」
みほ「笑ってはいけない西住流の未公開シーン?」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom