【モバマスSS】杏「八尺様・・・?」 (29)
※キャラやら作風やらいろいろとカオスなので注意
~杏の自宅~
杏「ふあぁ・・・眠い」
杏(けどお腹もすいたし、とりあえず起きて・・・カップ麺でも食べるかー)
杏(・・・カップ麺切らしてた)
杏(こういう時に限って誰もいないしなあ、どうしようか)
???「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ・・・」
杏(ん?なに今の、変な・・・声?音?)
杏(玄関の外から聞こえたような気がしたけど・・・子供か何かかな)
ガチャッ
杏「えっ?」
杏(鍵しめ忘れてたっけ?それともやっぱりきらりが来てくれたかな・・・?)
杏(歩いてくる音も聞こえるし。あれ?でもきらりが何の声もかけずに入ってくるなんて)
杏「・・・きらりー?来たのー?」
???「ぽっ、ぽぽっ、ぽぽ、ぽっぽぽ・・・」
杏「っ!?」
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それは、きらりではなくきらりよりも大きな何者かだった。
きらりでさえそのまま入ってくる扉を、腰を屈めて頭をぶつけないようにして入ってくる。
白いワンピース、髪も腰ほどまで伸び、体型からも女性だろうと判断できる。
目深にかぶった白い帽子と長い前髪のせいで、表情を窺い知ることはできない。
玄関から杏のいるリビングに入ってきて直立したことで、彼女のおおよその大きさを知ることができた。
リビングの天井の高さは何メートルだったか?天井に頭が付きそうになっている。
普段の杏なら、見知らぬ何者かが勝手に入ってきたとして、相手を観察し、危険度を判断し、
逃げるなりなんなりの対応をすることができただろう。
しかし、今までに見たこともない長身への動揺、言葉で言い表せないような気持ちの悪い威圧感、
そして何より、
???「ぽぽっ、ぽ、ぽぽ、ぽぽっぽ・・・」
目の前の彼女から放たれる、聞けば聞くほどこの世のものかすら怪しくなる音声への嫌悪感。
それらの要素が冷静さを奪い、杏は身体を動かすことはおろか声を出すことすら忘れ、ただ彼女を眺めることしかできなかった。
???「ぽ、ぽっぽ、ぽぽっ、ぽ・・・」
こちらを見ているのか見ていないのか、それでも彼女は杏の方にゆっくりと歩いてくる。
その長身のせいで、寝転がっていたままの杏の視界にはもう彼女の細く白い足しか映らない。
いよいよ杏の目の前にまで近づいてきた彼女は、ゆっくりと杏に向かって手を伸ばす。
上から降りてきた白い手が目の前に見えたとき、杏は既にこの状況がどうしようもないほどに致命的だということを理解した。
杏「あ、た、助け、プロデューサー、きら」
生命の危険を感じた杏の脳内に、いくつもの場面が浮かぶ。
幼少の頃の記憶、プロデューサーやきらりとの出会い、初めてのステージ、仲間たちとのレッスン、
決裂や挫折、それを乗り越えて強くなった絆、数万人規模でのライブ、大切な人たちの笑顔・・・
本来、死の直前に見るといういわゆる『走馬灯』は、危機に瀕してそこから助かるための情報を
脳が高速で検索することによってみられるものだという。
ただ、杏が今わの際に見た光景は、この状況を脱出することとは何ら関係のない、楽しい思い出ばかりだった。
それらの経験はもう二度とできそうにないことを感じた杏の頬を、一筋の涙が伝ったその時、
ズドンッ!
という音すら聞こえてきそうなほどの強烈な左フックが八尺様のボディを襲う!
思わずたたらを踏んだ八尺様の隙を見逃すはずもなく、きらりの連打が八尺様を追い詰める。
あまりにもの手数に何発かもらいながらも、八尺様は急所を守りつつ体勢を立て直し、反撃に打って出る!
八尺様の拳が唸りをあげきらりに襲い掛かる。
先ほどの左フックが勝負を決定づけるようなダメージを与えていないと把握していたきらりは深追いはしない。
根っからのストライカーである八尺様の剛腕は、下手をすれば一発貰うだけで致命的である。
その攻撃を潜り抜け、いなしながら、きらりは1Rから執拗に続けてきたローキックを数発入れる。
さすがにダメージが蓄積してきたか、八尺様はローキックを嫌がっているようだ。
きらりは八尺様の連打のうちの一発を選び冷静にカウンターをとる。
きれいに鳩尾に入った左ストレートに、再び体勢を崩す八尺様。
4R残り15秒、きらりはさらに追撃を加えんと前に出る!
しかし、体勢を崩したように見せて中腰で力を溜めた八尺様の体がそのまま一回転、
八尺様の渾身の後ろ回し蹴りがきらりの顔面を捉える!
きらりは驚異の反射神経で直撃を避けるも、額をかすめた蹴りの威力は凄まじく、左瞼の上から鮮血が迸る!
体勢を崩している八尺様から距離をとり、ダメージを確認するきらり。
かすめただけとはいえあの威力、一瞬意識が飛ぶかと思ったがまだまだ動ける。問題は額からの出血、左目に血が垂れてくる。
そしてお互いを窺う状態でゴングが鳴り4Rが終了、二人がコーナーに戻る。
モバP(以下P表記)「ここでゴング!4R、ついに試合が大きく動きました!」
マサキ「ええ、きらり選手も相当うまく立ち回っていましたが、残り15秒での八尺様の後ろ回し蹴りが強烈でした」
P「額・・・左瞼の上を切っていますか?直接のダメージは軽そうですが出血が心配です」
マサキ「そうですね、場所が場所だけに視界に少なからず影響が出るでしょうし、出血量によってはドクターストップもあり得ます」
P「ではここで改めてルールなどの確認を致したいと思います」
P「日本の総合格闘技の最高峰『JSC』タイトルマッチ、5分5R、延長1Rで行われています」
P「1Rに2回のダウンでKOとなる2ノックダウン制を採用しています」
P「解説にはWKC元王者の伊沢マサキさんをお招きしています、改めましてよろしくお願いします」
マサキ「よろしくお願いします」
P「なんと身長242cmの王者・八尺様に新進気鋭の挑戦者・諸星きらり選手が挑む注目の一戦ですが」
P「マサキさん、ここまでの4Rを振り返っていかがですか?」
マサキ「そうですね、きらり選手の身長は185cmでしたか?身長差がなんと60cm弱という対戦となっています」
P「これだけ体格に差があると、厳しいものでしょうか?」
マサキ「ええ、強いですからね、デカければ」
マサキの言っている事は曖昧なイメージの話ではない
骨格の大きさがそのまま力の大きさになる
それが力学的な現実だ
人間の身体は殆ど この機構で動いているので
各部位から発生する力はおのずと違ってくる
さらには受ける衝撃を大きなフレーム程分散 できる事
単純に力の計算は力=質量×速さである事
絞めや関節技ならその差をある程度軽減する事も可能かもしれないが―――
打撃の勝負ではすべてのファクターが残酷なまでの差となるのだ!!!
マサキ「過去の挑戦者は身長差に相当苦しめられていましたが、3Rまではきらり選手は非常に上手く立ち回っていました」
マサキ「身長が高い相手への常套手段であるローキックが非常に有効で、ラウンドを重ねるごとに八尺様の出足が鈍っています」
P「今3R終盤の映像が出ていますが、ローを受ける八尺様の表情が険しいですね」
マサキ「また基本的には打撃しかない八尺様に対し、2R中盤ではきらり選手がタックルで崩しに行きました」
P「ガードポジションから逃れられましたが、いい攻めでした」
マサキ「八尺様もローをカットしたりタックルを切る技術はもちろんありますが、きらり選手がそれだけ上手いということでしょう」
マサキ「スピードが持ち味のきらり選手の、懐に入ってからのボディも強烈でした」
P「ローとともに1Rから積極的に打っていますが、これは?」
マサキ「やはり身長差があり顔面に打撃を当てることが難しいですからね、スタミナを奪う目的でしょう」
マサキ「一方で八尺様も2R後半、得意技であるチョッピングライトを繰り出しましたが、不発に終わりました」
P「こちらの映像です、間一髪での回避で、ひやりとした場面でしたが」
マサキ「一撃で終わらせられる技はプレッシャーにはなりますが、ここはきらり選手がクレバーでしたね、冷静に対処しました」
マサキ「そして3Rまでのポイントは30-28できらり選手がリード、先ほどの4Rで八尺様は勝負に出ましたね」
P「カウンターを貰ってからの流れるような後ろ回し蹴りでしたが、これは狙っていたということでしょうか?」
マサキ「表情から見ると、おそらくカウンターを貰うところから折り込み済みだったかと思われます」
P「わざとカウンターをとらせたということですか!?」
マサキ「ええ、普通にやっていては逃げ切られてしまうという判断でしょう」
マサキ「危険な賭けでしたが、リターンは非常に大きかったですね」
P「さて、いよいよ最終5Rですがこの傷の影響はどうでしょう?」
マサキ「八尺様は執拗に狙いに行くかと思われます。こうなると右ストレートは見えづらいですし」
マサキ「最悪、ドクターストップ狙いも考えられます」
P「さあゴングが鳴って最終5R、お互い距離を取ってスタートです」
P「先ほど後ろ回し蹴りを入れた八尺様ですが、攻めに行かないですね」
マサキ「インターバルもありましたし、ある程度回復されているにしてもここは攻めきりたいところですが」
P「ん?八尺様、スイッチしてますか?」
マサキ「そうですね、右足が前の左構えになっています」
マサキ「きらり選手が左目の上を切っていますからね、右ジャブを集めようということでしょう」
P「ミドル!しかしここでいいミドルが入りました!」
マサキ「きらり選手はずっとローを見せていましたからね、ここでのミドルは完全に無警戒でしたね」
P「さらにローキック!執拗に八尺様を攻め立てます!」
P「先ほどのダメージは抜けていると考えてもいいのでしょうか?」
マサキ「いや、直撃でないにしても強烈でしたからね、守っていては潰されるとの判断かもしれません」
P「右ストレート!ここで八尺様がラッシュに出る!」
マサキ「いいですよ!圧力をかけていくのは重要です」
P「一気にコーナーまで詰められる!」
マサキ「右フックか何かを引っ掛けて脱出したいところですが」
P「膝ァ!この体格を生かしての膝蹴りが強烈です!」
マサキ「うまく外しています、まともに一撃もらえば倒れますからね、要注意です」
P「きらり選手もローで・・・おおっと八尺様の体勢が崩れたか!?」
マサキ「今のローはよかったですね、ダメージも蓄積しているようです」
マサキ「特にサウスポースタイルになったことで右足が前に出ますからね、格好の的でしょう」
P「先ほどのラッシュ、最初の右ストレートはヒットしているように見えましたが?」
マサキ「やはり左目が多少見えづらいようですね」
マサキ「しかし先ほどから、きらり選手右を使いませんね」
P「使いたい場面もちらほらあったように見えますが」
マサキ「まさか・・・」
P「ここでローキック!からの左ミドル!」
マサキ「きれいに入っ・・・いや右!」
P「右ハイキックー!八尺様ダウン!立てるか!?ああっとレフェリーが手を交差した!KOです!」
P「5R1分24秒、きらり選手の右ハイキックが八尺様の顎を捉えてKO勝利ー!」
マサキ「完全に狙い通りでしたね、これで倒すビジョンは見えていたんじゃないでしょうか」
P「といいますと?」
マサキ「1Rから執拗に左ロー、ダメージが蓄積してきたと見るや左ミドル」
マサキ「完全に意識が左に向いているところで、さらにローからミドルでのコンビネーションで体勢を崩して」
マサキ「顎が下がったところに今日一度も見せていない右ハイキックと」
マサキ「さらに八尺様が不運だったのはサウスポースタイルで右ハイに対して体が開いてるんですよね」
マサキ「結果、がら空きの顎にまともにハイが入るという結果になってしまいました」
P「しかし最後のハイ、飛び上がりながら蹴ったように見えましたが」
マサキ「あれだけの身長差ですから、いくら体勢を崩しても普通に打ってハイは入りませんからね」
P「ああっと八尺様、起き上がれません、担架で運ばれていきます」
マサキ「顎が割られてるかもしれないですね」
P「ではここでJSC新王者、諸星きらり選手のインタビューです」
杏「という夢を見たんだー」
P「まさかの夢オチ」
杏「夢ってなんか場面転換が唐突っていうか、本来絶対繋がらないはずのシーンが無理やり繋がってても違和感感じないよね」
P「わかる」
ガチャ
きらり「にゃっほーい!Pちゃん、杏ちゃん、おっすおっすー☆」
杏「あ、おはよーきらりー」
P「おう、おはようきらり」
きらり「なんの話してたのー?」
杏「あー、杏の見た夢の話ー」
P「八尺様っていう超怖い妖怪・・・なのかな?まあそいつが杏の夢に出てきたんだけど、きらりが倒しちゃったんだってさ」
きらり「にゃは☆きらりは杏ちゃんが危なくなったらいつでも守るからにぃ☆」
杏「あははー、いつものことだけどありがたいねー」
きらり「よーいしょっ☆」ギュッ
杏「え?」
きらり「杏ちゃんの見た夢、とってもとーっても怖かったんだにぃ?」
きらり「また怖い夢見ても、きらりがどかーん☆って蹴っちゃうから、呼んでくれるとうれすぃな☆」
杏「・・・うん、ありがと」ギュッ
P「あれ?きらり、そのおでこの絆創膏どうした?」
きらり「うぇ?あー、ぼーっと歩いてたら頭をぶつけちゃって、は、はずかすぃー☆」
P(あれ?そういえばさっききらりが『蹴っちゃう』って言ったような・・・?それにあの絆創膏)
P(まさか杏が見たのは夢じゃなくて、恐怖のあまりその時見た光景を夢としか思えない内容に脳内で改竄、とか)
きらり「Pちゃん?」
P「お、おう、どうしたきらり?」
きらり「内緒にしてもらえると、助かるにぃ?」
P(・・・マジか)
杏「なになに、何の話ー?」
きらり「なんでもないよー?にゃはは☆」
以上で完結です。ここまで読んでくれた方ありがとうございました。
「きらりvs八尺様」でストーリーを考えてたのですが途中で「ホーリーランド」を読み始めたらいつの間にかこんなことに。
ちなみに私に格闘技の知識や経験はありませんので相当ありえないことなど起こってるでしょうがそこはスルーしていただければ。
このSSまとめへのコメント
つまんねえんだよカス
ポケモンタグ消せやタヒね