まほ「それはもちろん感謝してる。だが今日も疲れた。先に寝るとするよ」

エリカ「あ、ちょっとあなた！」

まほ「おやすみ」

ﾊﾞﾀﾝ

エリカ「もう……！」


エリカ（昔は素敵で格好良くて私の憧れだった……新婚の頃は本当に幸せだったのに……）


まほ（昔は私を慕ってくれる可愛い奴だったのに……なんでこんなことに……）


エリカ・まほ「はあ……」

まほ「おはよう。エリカ」

エリカ「おはよう。ご飯出来てるわよ」

まほ「ああ、いただきます」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

エリカ「ねえ、明日はお休みよね？久々にどこかに出かけない？」

まほ「そうだな。どこがいい？」

エリカ「映画とかは？それに戦車喫茶でお茶するの」

まほ「わかった。そうしよう。映画の予約は頼んでいいか？」

エリカ「ええ！楽しみね」

まほ「ああ、楽しみだ。じゃあ行ってくる」

エリカ「いってらっしゃーい」

まほ「ただいま。すまないな、今日も遅くなって」

エリカ「おかえりなさい。映画はお昼すぎに予約したから、明日の朝はゆっくり寝てて大丈夫よ」

まほ「……あー、それなんだが」

エリカ「え？」

まほ「悪いが、明日から急な仕事でドイツに１週間ほど出張に行くことになった」

エリカ「はぁああ？」

まほ「国際戦車道連盟のドイツ支部で少々面倒な問題が起きたんだ」

エリカ「何それ、あなたが行かなきゃ駄目なの？」

まほ「日本支部の役員で明日から動けるのは私しかいない。本当にすまない。
映画はまた今度にしてくれ」

エリカ「……何よ。何が明日動けるよ！私との約束はどうでもいいってこと？」

まほ「エリカ、そんなことは……」

エリカ「もう良いわ！一人で行くから！どうせ、大して楽しみでも無かったんでしょ！」

まほ「そんなことは無い……」

エリカ「おやすみ！出張の支度は自分でしなさい！」

ﾊﾞﾀﾝｯ！

まほ「エリカ……」

まほ「おはよう。エリカ」

エリカ「……」

まほ「いつもいつも、迷惑かけてすまないな。
ドイツから帰ってきたらちゃんと休みを取る。約束するよ」

エリカ「……」

まほ「留守は任せたぞ」

エリカ「……」

まほ「行ってきます」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

エリカ「……」

ｶﾞﾁｬ　ﾊﾞﾀﾝ……

エリカ「……馬鹿」ﾎﾞｿｯ

エリカ「はあ、今日はどうしようかな……一人で映画見に行く気力も起きないし」

エリカ「家事をする気も起きない……散歩でも行こうかな」



ｽﾀｽﾀ

エリカ（とりあえず外に出たけど、何しようかな。適当に図書館にでも行って……）

近所のママ「あら、西住先生じゃないですか。こんにちは」

エリカ「あ、こんにちは」

近所のママ「いつもうちの子がお世話になっております～」

エリカ「いえいえ、そんな……」

近所のママ「うちの子、いつも言ってますよー。西住先生に教わるのがすごく楽しいって！
戦車道教室に通わせて良かったです」

エリカ「そう言ってもらえると嬉しいです」

近所のママ「中学校に上がったら、本格的に戦車道をやらせようかしら？」

エリカ「……それは、本人の意思をちゃんと確認してあげてくださいね」

近所のママ「そういえば、奥様はお元気で？やはりお忙しいんですか？」

エリカ「ええ、今日も仕事です」

近所のママ「あら、さすがですねえ。奥様にもよろしくお伝え下さいね」

エリカ「はい」ﾍﾟｺﾘ

エリカ（まほは世界を飛び回る国際戦車道連盟の役員、私は近所の小学生向け戦車道教室の先生）

エリカ（選手としての実力なら、たぶん負けてなかった。高校大学プロチームと私は必死にまほに喰らいついてきたから。
だけどこうして結婚して実感する、根本的な『格』というか身分の違いを……）

エリカ「やっぱり釣り合って、無かったのかしら……」


エリカ「なんか気分悪くなってきたわ。帰ろ」

まほ（やっと日本に戻ってこれた）

まほ（結局問題が片付かず、2週間以上も滞在するハメになってしまった……）

まほ（はあ、エリカはきっとカンカンだろうな）

まほ（エリカまで西住流の使命に巻き込んで、私はどうしたいんだろう）

まほ（私と結婚しなければ、エリカはもっと幸せになれたんじゃないだろうか……）


まほ「ただいま……」

ｶﾞﾁｬ

エリカ「……おかえりなさい」

まほ「エリカ、悪かった。私もここまで長引くとは思って……」

ｶﾞﾊﾞｯ　ｷﾞｭｳｳｳ

まほ「え、エリカ……！？//」

エリカ「出来たの……」

まほ「え……まさか」

エリカ「赤ちゃんが出来たのよ！あなたの子よ！！」

まほ「ほ、本当か！」

エリカ「ええ、やっと、やっと……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

　色々あったけど、これからはこの子が私たちに幸せを運んでくれる
　
　今は、そう思えるんだ。そう、今は……




　おわり