モバP「恋をするたび歳を重ねていく」 (92)
モバP「恋をするたび歳を重ねて」の続編になります
一応話が繋がっているので初見の方は↓の前スレから読んでもらえたら幸いです
モバP「恋をするたび歳を重ねて」 - SSまとめ速報
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P「―――」
P「…っ、うぅ」むくっ…
P「……」
P「(学生服、か…)」
P「(ということは、中学生になったってことで良いんだな…)」
P「……」
P「(ありす、晴…)」
P「(いや、二人だけじゃない…)」
P「(今まで俺が会ってきたアイドルの子たちは…)」
P「(志希と同じように、みんな俺のことをわかっていたのか…?)」
P「(俺のことを同級生だと認識していたのも演技だったのか…?)」
P「(そうじゃなきゃ、ありすの最後の言葉…)」
『―――さようなら、プロデューサー』
P「……」
P「なんで、『さようなら』なんだよ…」
「なんでだと…思いますか?」
P「えっ…?」
P「――キミは」
P(13歳)「…ほたる」
ほたる「……」
P「(中学生になって一番最初に会ったのはほたるか…)」
P「(ほたるは13歳…だったな)」
P「(ていうか、俺とほたる以外誰もいないな…)」
P「(つまり今回は、ほたるだけにキスをしてもらうためにってことか…)」
ほたる「はじめまして…で良いんでしょうか…?」
ほたる「こうやって同級生として会うのは初めてですし…」
ほたる「プロデューサーさんが同級生…なんだか不思議な感じで…」
ほたる「でも少し…嬉しいかも…」
P「……」
P「えっ?」
P「(…聞き間違いじゃないよな?)」
P「…ほたる?」
ほたる「はい?なんでしょう…?」
P「今、俺のこと…」
P「『プロデューサーさん』って呼んだか…?」
ほたる「あっ…」
ほたる「同級生なのに「さん」付けは変ですよね、すみません…」
ほたる「プロデューサーくんっ…えへへ…」
P「うん。可愛いけどそうじゃないんだよ」
P「(…というよりもだ)」
P「(ほたるの口ぶりだけ聞いてると…)」
P「ほたる…」
P「もしかしてキミは、全部わかっている子なのか…?」
ほたる「……」
ほたる「わかっている…ですか…」
ほたる「そうですよね…志希さんとはもうお会いしているんですもんね」
P「…!」
P「それじゃあ…」
ほたる「…はい」
ほたる「私は…アイドルとプロデューサーという関係の時から、あなたと一緒にいる…」
ほたる「白菊ほたるです…」
P「……」
P「(前回…12歳の時に志希と会った時に…)」
P「(志希以外にも本来の記憶をそのままにタイムトラベルをしている子がいるとは聞いていたが…)」
P「(ほたる…これは予想外だな…)」
P「(てっきり次にタイムトラベルしている子に会うなら、それこそ晶葉あたりかと思ったが…)」
P「(いや、14歳になれば会えるのか?本来の年齢そのものだけど…)」
P「(ていうか、今俺の目の前にいるほたるも本来の年齢そのままのほたるか…)」
P「(…12歳の姿で現れた志希が特殊だっただけか?)」
ほたる「…えっと、プロデューサーさん?」
P「あ、あぁ…すまない…」
P「ちょっと色々と考えちゃってな…」
ほたる「そうですか…」
ほたる「あの、私が答えられる範囲でしたらプロデューサーさんの質問には答えますから…」
ほたる「遠慮しないで…くださいね?」
P「そ、そうか?」
ほたる「はいっ」
P「(いざ質問しても良いと言われると、何から聞いたら良いのかわからなくなるな…)」
P「……」
P「…そうだ」
P「なぁ、ほたる?」
ほたる「はい?」
P「ほたるが俺に最初に話しかけてきた時…」
P「なんで『さようなら』だと思いますか?って言ったよな?」
P「ほたるは…この『さようなら』の意味、わかってるのか…?」
ほたる「……」
ほたる「…そうですね」
ほたる「私はその言葉の意味を…知っています」
P「…!」
P「…ほたる、教えてくれ」
P「ありすは…どうして俺に『さようなら』なんて言ったんだ…?」
P「それにありすは、最後に俺のことを『プロデューサー』って呼んだんだ…」
P「今、俺が体験している世界にいる女の子たちは、本当はみんな俺のことをプロデューサーとして認識しているのか…?」
ほたる「……」
ほたる「まずは…『さようなら』の意味ですね…」
ほたる「この言葉は、そのままの意味で受け取ってもらってかまいません…」
P「そのままの意味って…」
ほたる「…そのままなんです」
ほたる「あなたの知っているありすちゃんとは、もう…」
ほたる「二度と…会うことは無いと思います…」
P「…!?」
P「ど、どういうことだ…?」
P「ありすともう…会えないって…!」
ほたる「……」
P「…っ!!」
P「俺は元の世界に戻って、またあの子たちのプロデュースをしなくちゃならないんだっ!!」
P「それなのにもう会えないって…!!」
P「どうして…!?」
ほたる「……」
ほたる「…みんな、そうなんです」
P「…みんな、って」
ほたる「思い出だけを残して…いなくなってしまうんです…」
ほたる「ずっとそばにいることは難しい…」
ほたる「どれだけ、一緒にいたくても…」
P「……」
P「すまない…大声出してしまって…」
ほたる「…いえ」
P「(…未だに根本的なことは何も理解出来ていない)」
P「(ありす…アイドルのみんなと二度と会えなくなるなんて考えたくもない…)」
P「(だけど俺は…ありすたちと会えなくなってしまうという告白をするほたるの表情が…)」
P「(あまりにも悲しすぎて、それ以上は何も聞くことが出来なかった…)」
ほたる「その…会えなくなる理由というのは…」
P「…いや、もういいよほたる」
ほたる「えっ…?」
P「話しているほたるだって、つらいだろ?」
P「俺でさえ会えなくなるなんて言葉…聞いてるだけでどうにかなりそうだったんだから…」
ほたる「…プロデューサーさん」
P「けど、立ち止まるわけにはいかないんだ」
P「二度と会えないなんて言われても、簡単に諦めるわけにはいかない」
P「だから…これから先の真実は、自分の目で確かめるよ」
ほたる「……」
ほたる「プロデューサーさんはやっぱり優しい人ですよね…」
ほたる「聞きたいこと…もっとたくさんあるはずなのに…」
ほたる「こんな状況でも、私のことを気遣ってくれて…」
P「…それが優しさかどうかはわからないけど」
P「大切なんだよ、みんなのことが」
P「もちろんほたる…キミのこともだ」
ほたる「……」
ほたる「…その台詞だけでも、優しさが伝わりますよ」
P「それでだ…そんな台詞のあとに言うことじゃないのかもしれないけど…」
ほたる「…?」
P「俺が次の…14歳に成長する為には…」
P「ほたるから…キスをしてもらえばいいのかな…?」
ほたる「あ…そ、その…」
ほたる「えっと…」
ほたる「……」
ほたる「私なんかで良ければ…したいです…すみません…」
P「……」
ほたる「や、やっぱり私じゃイヤですか…?」
ほたる「そうですよね…キスで不幸がうつってしまうかもしれませんもんね…」
ほたる「でも…そしたらどうすれば…」
P「むしろ俺がほたるとキスしたい」
ほたる「……」
ほたる「ふぇっ…!?」
P「(そうか…今の俺は13歳…)」
P「(この胸の高鳴り…)」
P「(これが思春期か…!)」
ほたる「そ、その…」
ほたる「プロデューサーさんにキスされたら…きっと幸せだと思うんですが…」
ほたる「あ、う…」
ほたる「は、恥ずかしいです…」
P「……」
P「(ほたるはほたるで爆弾発言してるけど…)」
P「(俺は俺で思春期を言い訳にとんでもない発言をしてしまったな…)」
P「(…反省)」
P「…すまん、ほたる。少し調子に乗り過ぎたよ…」
ほたる「…え?」
P「今の俺の発言は忘れてくれ…」
ほたる「…してくれないんですか?」
P「……」
P「…え?」
ほたる「……」
ほたる「す、すみません…わ、忘れてください…」
P「……」
P「(かわいい…)」
P「こ、こほんっ…!」
P「じゃあ…キスしてもらっても良いのかな…?」
ほたる「は、はい…!」
ほたる「…あ」
ほたる「でも…」
P「…?どうした?」
ほたる「す、すみません…」
ほたる「もちろん最後には、キスをさせてもらうんですけど…」
ほたる「キスをしてしまったら…同級生のプロデューサーさんとの時間も終わってしまうなって思うと…」
ほたる「なんだか、もったいなくて…」
P「…ふむ」
P「(確かにせっかくほたると同級生になったのに、ちょっと会話して終わりというのも…)」
P「……」
P「(…中学生だし、少しぐらい青春したっていいよな?)」
P「(なんて…なんだかんだで今の状況を楽しんでいる俺もいるな…)」
P「…よしっ!決めた!」
ほたる「え?」
ほたる「なにを…決めたんですか?」
P「ほたる、今から俺とデートしようぜ」
ほたる「…えっ」
ほたる「私と…プロデューサーさんが…?」
P「うん」
P「同級生で、しかも制服姿なんだしさ」
P「一回してみたかったんだよな俺。制服デートって」
ほたる「わ、私なんかと…?」
P「『なんか』じゃなくて、ほたると『だから』俺はデートしたいな」
ほたる「ぷ、プロデューサーさん…」
P「ほたるは俺とデートするのイヤか?」
ほたる「そんな…!そんなことないですっ…!!」ブンブン…!
P「それじゃあ決まりだ。ほら、行こう!」
ほたる「……」
ほたる「…うんっ!」
ほたる「今日は、ずっと一緒だよ…」
ほたる「プロデューサーくんっ…!」
ほたる「―――カラオケ、ですか…」
P「あ、もしかして苦手だったか…?」
ほたる「い、いえ!そんなことは…!」
ほたる「私、歌は好きですし…」
P「そっか、なら良かった」
ほたる「ただ…こういう場所に誰かと一緒に行くことって今まであまり経験が無くて…」
ほたる「私が行っても、迷惑をかけるだけなんて思ったりもして…その…」
P「……」
ほたる「だけど、今は…たくさんの仲間に…」
ほたる「あなたと会えて、幸せを分け与えてもらえて…前向きになれたんです」
ほたる「だから今日はきっと…」
ほたる「ううん…絶対楽しめるなって思います…!」
P「ほたる…」
P「…よしっ!!」
P「まずは俺がメルヘンデビュー!でウーサミン!するから、しっかり聴いてるんだぞ!」
ほたる「…ええっ」
P「え、なんで引いてんの…?」
ほたる「私は…どうしよう…毒茸伝説にしようかな…」
P「…ええっ!?」
ほたる「え、い、意外ですか…?」
P「(そんなコントも交えつつ、俺はほたるとのカラオケを楽しんだ…)」
P「―――いや~久々にこんなに歌ったな~!」
P「(しかし財布の中身がギリギリだったのは焦ったな…)」
P「(今まで確認してこなかったけど、金額は年齢ごとで決まってるのかな…?)」
P「(…まあ、そんな気にすることでもないか)」
ほたる「私もアイドル活動以外で、あんなに大きな声出したのは久しぶり…」
ほたる「気持ちがスッキリして…不幸も飛んでいってしまったような感覚で…」
ほたる「それでいて、とても楽しくて…」
P「そう言ってもらえるなら俺も嬉しいよ」
ほたる「プロデューサーくんも、楽しかった…?」
P「もちろん」
P「ほたると一緒だったから、楽しかったよ」
ほたる「プロデューサーくん…ありがとう…」
ほたる「……」
ほたる「プロデューサーくんと来れてよかった…」
ほたる「…最後に」
ほたる「最後に、大切な思い出が…また一つ増えました…」
P「……」
P「最後だなんて、言うなよ」
ほたる「…そう思えるくらいに、楽しかったんです」
P「なら…最後じゃなくて、また次もあるよな…?」
ほたる「……」
P「制服デートは今回きりかもしれないけど、元の姿に戻れたら…そうだな…」
P「今度は遊園地にでも行こうか?きっと今日以上に楽しく…!」
ほたる「…プロデューサーさんっ」
P「……」
P「…別にプロデューサーくんのままでも良いんだぞ?」
ほたる「いえ…もう大丈夫です」
ほたる「やっぱり私にとって、プロデューサーさんはプロデューサーさんですから…」
P「…そっか」
ほたる「プロデューサーさん…今日は本当にありがとうございましたっ」
ほたる「私、今まで生きてきた中で今日が一番幸せだったって胸を張って言えます…!」
ほたる「好きな人にデートに誘ってもらえることがこんなにも幸せで…」
ほたる「こんなにもあたたかい気持ちになれることだなんて、私…知りませんでしたっ…!」
P「ほたる…」
ほたる「プロデューサーさんには、いつも幸せをもらってばかりで…私…!」
ほたる「何も…恩返しなんて出来てないのにっ…!」
P「……」
P「それは、少し違うかな」
ほたる「…えっ?」
P「ほたるは、よく俺のことを優しいって言ってくれるよな」
ほたる「は、はい…」
P「それは、相手がほたるだからだよ」
ほたる「え、えっと…?」
ほたる「どういう意味…」
P「ほたるが優しい子だから、俺もほたるに優しくできるんだ」
ほたる「…!」
P「ほたるがあたたかい気持ちを持っている子だから、俺もあたたかい気持ちになれる」
P「俺がほたるに幸せをあげていたわけじゃない…」
P「俺がほたるに幸せをもらっていたんだ」
P「だから…俺の方こそありがとう」
ほたる「プロデューサー…さん…」
P「つまり、俺が言いたいのは…」
P「一緒にいれば、幸せだろ?」
P「不幸だってはんぶんこに出来る」
P「だから…これからも俺のそばにいてくれ、ほたる」
ほたる「…っ、く」
ほたる「ひ、ぐっ…!」
P「…勝手なことを言って、困らせてると思う」
P「だけど、これが最後だなんて俺には…」
ほたる「う…ぅ…!」
ほたる「わ、わたし…私、だって…!」
ほたる「一緒に…ずっと一緒に、いたいっ…!!」
P「…ほたるっ!」
ほたる「プロデューサーさんっ…私…!!」
ほたる「これからも…!」
『―――それでも、叶わないよ』
ほたる『―――っ!!』ドクンッ…!
ほたる「……」
P「…ほたる?」
ほたる「…プロデューサー、さん」
P「どうした…?急に顔色が…」
ほたる「私…」
ほたる「やっぱり、これが最後みたいです…」
P「…!?」
P「そんな…!どうして…!?」
ほたる「…どうしても、です」
ほたる「ごめんなさい…最後の最後まで、私…」
P「なんでだよ…!?」
P「一緒にいたいって…言ってくれたじゃないか…!!」
ほたる「一緒に、いたいです…」
P「だったら…!」
ほたる「だけど…私は自分の幸せよりも…」
ほたる「あなたの幸せを願わずにはいられないんです…!!」
P「俺の、幸せって…」
P「そこにはお前がいなきゃっ…!!」
ほたる「……」ニコッ…
ほたる「……ありがとう」ちゅっ…
P「…!!」
P「……」
P「…っ!?」
P「ほたる…!?」
P「(ほたるが、いない…?)」
P「(さっきまで、俺の目の前にいて…)」
P「(キスも、したのに…)」
『やっぱり、これが最後みたいです…』
P「……」
P「わからない…わかんないよ、ほたる…」
P「どうして、最後なのか…!」
P「これが最後なら、もう思い出だって作れないじゃないかっ…!!」
P「ほたるっ…!!」
P「……っ!!」ズキッ…!
P「(頭痛…)」
P「(14歳に……なるん…だな…)」
P「(……ほたる)」
P「(キミと…また会えたなら……)」
P「(俺は…)」
P「―――」
P「…っぐ」むくっ…
P「……」
P「(学校の教室…だな…)」
P「(さっきと違ってクラスメイトで溢れかえっている…)」
P「(無事に中学二年生に成長したってわけか…)」
P「……」
P「(その世界のメインの子とキスをして、成長することが一番の目的だが…)」
P「(志希やほたるみたいに、記憶をそのままにタイムトラベルをしているアイドル…)」
P「(きっと、まだいるはずだ…)」
P「(もうこれ以上…誰も失いたくない…)」
P「(今度は絶対に手放したりは…)」
P「(…そうだ、俺の周りの席)」
飛鳥「……」くるくる…
P「(隣でエクステをいじっているのは飛鳥…)」
紗南「…すぴー」
P「(前の席で爆睡してるおさげ頭は…紗南か…?)」
P「(…ん?後ろから強い力を感じる…?)」くるっ…
裕美「……」じーっ…
P「(なるほど、裕美の眼力だったか…)」
P「……」
P「(ついに一つの学年で3人も出てくるようになったか…)」
ガラッ…!
ヘレン「グッモーニンエヴリワンッ!!」
P「!?」
ヘレン「もう知っていると思うけれど…」
ヘレン「世界レベルの担任…ヘレンよ…」
P「……」
P「(ほたるとの別れを惜しむ間も無く…)」
P(14歳)「(俺はとんでもない魔境に迷い込んできてしまったようだ…)」
一旦中断
というわけで中学生編です
まだまだ先は長いですが、のんびりとやっていくつもりです
それでも良ければ今回もお付き合いお願いします
また来週あたりに書けたら
ヘレン「清々しい朝ね…」
ヘレン「私たちは、これから始まる1日に世界からの祝福を受けている…」
ヘレン「つまり、そういうこと」
ヘレン「さぁ、朝のHRを始めましょう!」
P「……」
P「(ヘレンには確かに青春公演で教師役をお願いしたことはあったけどさ…)」
P「(流石に担任として出てくるとは夢にも思わなかったぞ…)」
P「(これはあれか?千秋の時と一緒で、キスしてもらう必要は無いけど重要なポジションを担っている的な…)」
ヘレン「まずは、今朝の世界レベル」
P「(なんだそれ!?)」
ヘレン「dark history」
ヘレン「飛鳥…貴女なら日本語訳に直せるかもしれないわね…」
飛鳥「……」
飛鳥「黒歴史…かな」
ヘレン「good」
ヘレン「黒がblackではなくdarkと表現されている部分に世界を感じるわね」
P「……」
P「(なんだこれ…)」
ヘレン「では、朝のHRはこれにておしまい」
P「(終わった!?)」
ヘレン「各自1限目の授業に向けて予習するもよし…」
ヘレン「世界情勢について考えてみるもよし…」
ヘレン「あなた達の時間はあなた達だけのモノ」
ヘレン「それを、忘れてはいけないわ」
ヘレン「それでは…シーユー!!」ダッ…!
P「……」
P「(な、なんだったんだ…)」
飛鳥「…ボクたちだけの、時間とは言うけれど」
飛鳥「ボクたちはイマ、この学び舎という監獄の中で束縛を受けている…」
飛鳥「これはボクたちの時間…つまり魂を凌辱されていることと何ら変わりはないと思うな」
飛鳥「もっとも…ヘレン先生のユニークさは、このセカイでの救いとも受け取れるけどね…」
P「……」
P「(とりあえず、隣の席にいるってことは…)」
P「(まずは飛鳥にキスをしてもらえれば、いいんだよな…?)」
飛鳥「ところで…」
飛鳥「先ほどから受けるキミの視線…気づいていないとでも思ったかい?」
P「…えっ!?」
P「(お、俺のことだよな…?)」
飛鳥「…フフッ」
飛鳥「そんな顔はしなくてもいいよ」
飛鳥「別にボクは不快だったわけじゃ、無いんだから」
飛鳥「だけどキミは、ボクに興味を示し…そして何かを期待しているんだろう?」
飛鳥「その真実をボクが知らない儘というのは、アンフェア…良い気分では無いね」
飛鳥「さあ、教えてくれよ…キミの秘め事をボクにさ…」
P「……」
P「(驚くほどにいつも通り過ぎて…)」
P「(飛鳥もタイムトラベラーの一人なんじゃないかって思えてきたぞ…)」
P「…なら」
P「場所を、変えようか」
紗南「すぴー…」
裕美「……」
飛鳥「――屋上か」
飛鳥「この場所は時間によって、その景色を変えてくれる…」
飛鳥「退屈がなくて…ボクはスキだよ」
飛鳥「けれど、良いのかい?」
飛鳥「このままだとボクたちは1限目の授業を抜け出した…所謂不良生徒になってしまう」
P「…まぁ」
P「今どきの14歳なんて、授業の一つや二つはサボるだろ」
P「これも青春さ」
飛鳥「フフッ…なかなか言うね」
飛鳥「無責任だけど…キライじゃないよ」
P「……」
P「(ちょっと踏み込んだ発言をしてみるか…)」
P「そう言ってくれると思ったよ」
P「やっぱり飛鳥は『このセカイ』での飛鳥でも変わらないな」
飛鳥「……」
飛鳥「…へぇ」
飛鳥「その言い回しだと、キミはまるで…」
飛鳥「『違うセカイ』での『ボク』も見てきた…」
飛鳥「そう…伝えたいのかな?」
P「…あぁ、その通りだな」
P「飛鳥もそうじゃないのか?」
P「お前も…『違うセカイ』での『俺』を知っているんじゃないのか?」
飛鳥「……」
P「同級生じゃなく…アイドルとプロデューサーとしての…」
飛鳥「ぷっ…あははっ」
P「…?」
飛鳥「そうか…そういうことだったんだね」
飛鳥「キミがボクに視線を向けていた意味…理解したよ」
飛鳥「キミもボクと同じで…」
飛鳥「『痛いヤツ』だったというわけだね」
P「……」
P「…!?」
P「いや、違うっ!そうじゃないぞっ!?」
P「(飛鳥のこの反応はまるで…)」
P「(俺が『違うセカイ』という妄想の中に飛鳥を登場させた…)」
P「(痛いヤツ…中二病患者扱いだ…!?)」
飛鳥「なに、恥ずべきことはない」
飛鳥「キミの物語の中に登場するボク…とても興味深いよ」
飛鳥「良ければ、聞かせてくれよ」
飛鳥「キミとボクの物語の軌跡…」
飛鳥「そして、その結末をさ…」
P「ううっ…」
P「(このままだと俺はただの中二病患者…)」
P「(飛鳥にキスしてもらうどころじゃ…)」
P「……」
P「(いや…)」
P「(飛鳥が相手なら逆にそれを利用できたりしないか…?)」
飛鳥「どうしたんだい?」
飛鳥「ボク本人が、キミの中のボクを語ることを許しているんだよ?」
飛鳥「それほどまでにボクが…キミに興味を示したんだ」
飛鳥「もっとも…強制はしないけれどね」
P「……」
P「…いや」
P「語りたくないわけではないんだが…」
P「ちょっと心の準備というものがあってな…」
飛鳥「へぇ?」
飛鳥「そんなにも衝撃的な内容なのかい?」
P「飛鳥からすれば…な」
飛鳥「…いいよ、覚悟は出来ている」
飛鳥「さぁ…聞かせて?」
P「…なら、結論から言うぞ」
P「『違うセカイ』での俺と飛鳥は…」
P「恋人同士、だったんだ」
飛鳥「…恋人」
P「…驚いたか?」
飛鳥「……」
飛鳥「…そうでもないさ」
飛鳥「仮にも思春期の男女の間柄だ」
飛鳥「二人の感情が、仮初めか永遠かはわからないけれど…」
飛鳥「所謂恋人関係になるのも不思議なことじゃない」
P「…そうかもな」
P「ちなみに聞いておきたいんだが…」
飛鳥「…?」
P「イヤな気分にはなってないか?」
飛鳥「イヤな気分?」
飛鳥「どうしてそんなことを聞くんだい?」
P「どうしてって…そりゃ…」
飛鳥「……」
飛鳥「…あぁ、そうか」
飛鳥「ボクからすれば、勝手にキミの恋人にさせられているわけだ
飛鳥「こうして向かい合うボクたちは、ただの同級生に過ぎない…」
飛鳥「確かに不満を抱いてもおかしくはないかもね」
P「…やっぱり飛鳥も不満か?」
飛鳥「……」
飛鳥「…そうでもないよ」
飛鳥「何故だろうね…」
飛鳥「キミとボクは、席が隣というだけの同級生…」
飛鳥「その関係の中に、見えない何かがあるとも思ってはいなかった」
P「……」
飛鳥「だけど…暖かいんだよ」
飛鳥「キミとボクが恋人同士と聞いた時に…」
飛鳥「…いや」
飛鳥「キミに『飛鳥』と名前を呼んでもらうたびにね…」
飛鳥「胸が、鼓動を打つんだ…」
飛鳥「この胸の暖かさは…」
飛鳥「……」
飛鳥「…そうか」
飛鳥「こうも考えられるな…」
飛鳥「イマ、キミとボクがいる『セカイ』が偽りで…」
飛鳥「キミの言う『違うセカイ』というものが…」
飛鳥「ボクたちの真実なのかもしれないね…」
P「……」
P「(恋人同士、というのはあくまで飛鳥をその気にさせる為の方便だったんだが…)」
P「(今、俺の目の前にいる飛鳥は…俺の知っている二宮飛鳥なんだよな…)」
P「(俺からすれば、この『セカイ』は偽りだ)」
P「(だけど、小学生の時に志希が言ったこと…)」
『キミがここまで歩んできた世界は、元の世界を含めて全部同じ世界なんだよ?』
P「(…志希、ほたるは最初から自分が元の記憶を持っていることを俺に明かしてきた)」
P「(他の子たちは…どうだったんだ…?)」
P「(同級生として接していたとはいえ…)」
P「(少なからず、アイドルとプロデューサーという関係だった時の記憶も残っていたんじゃないのか?)」
P「(だとしたら…飛鳥も…)」
P「…なぁ、飛鳥?」
飛鳥「…なにかな?」
P「飛鳥が感じている胸の暖かさ…」
P「それは、飛鳥にとって『初めて』の感覚か?」
飛鳥「……」
飛鳥「その答えを知るのは、ボクじゃない…」
飛鳥「キミ、なんだろう…?」
P「……」
飛鳥「教えてほしい…」
飛鳥「ボクが抱いているこの感情…」
飛鳥「この正体は一体…」
P「(飛鳥…)」
P「…すまない、飛鳥」
P「俺はお前に嘘をついた」
飛鳥「…嘘?」
P「本当は、俺と飛鳥は恋人同士なんかじゃない」
P「少し歳の離れた…仕事上のパートナーなんだ」
飛鳥「……」
飛鳥「…キミの嘘というのはそれだけかい?」
飛鳥「キミの言う『違うセカイ』で…」
飛鳥「ボクは確かに存在しているのか…?」
P「うん、それは嘘じゃない」
飛鳥「そうか…」
P「…すまない」
P「俺も色々と事情があって恋人同士だったなんて嘘をついたが…」
飛鳥「謝罪はいらないよ」
飛鳥「嘘だということを明かしたのは、きっとキミの良心がそうさせたんだろう」
飛鳥「キミは狡いヤツなんだろうが…」
飛鳥「同時に優しいヤツなんだろうね…」
飛鳥「…恋人同士では無いと言われた今も」
飛鳥「胸の暖かさが消えないのは…」
飛鳥「仕事上のパートナーというキミのことをボクは…」
飛鳥「信頼していて…そしてスキだった…」
飛鳥「そうじゃないのかな?」
P「……」
飛鳥「なんて…『違うセカイ』でのボクの心の奥底をキミが知る由も無いか…」
飛鳥「…フフッ、もう完全に『違うセカイ』が存在しているということを前提に話が進んでいるね」
飛鳥「あぁでも…そこに嘘は無いと言ってくれたか…」
P「…確かに飛鳥の全てを知っているかと聞かれたら、自信は無い」
飛鳥「……」
P「だけど…」
P「俺は飛鳥を信頼しているし、飛鳥も俺のことを信頼してくれていた…」
P「それだけは自信を持って言えるよ」
飛鳥「……」
飛鳥「きっと充分過ぎる答え、なんだろうね」
飛鳥「…それでも」
飛鳥「感情というものは簡単には制御出来ない」
飛鳥「そこに、欲望が加わると尚更だ…」
飛鳥「…イマ」
飛鳥「イマ、この瞬間だけ…」スッ…
P「…!」
飛鳥「キミの、恋人でいさせてくれ…」ちゅっ…
P「(飛鳥…)」
飛鳥「……」
飛鳥「…うん」
飛鳥「胸が、熱い」
飛鳥「『違うセカイ』からボクが引き継がれて、『このセカイ』にいるとするのなら…」
飛鳥「やっぱりボクは、キミに恋愛感情を抱いていたようだ」
飛鳥「イマ、答えが出たよ」
P「飛鳥…」
P「……」
P「飛鳥、『違うセカイ』でのこと…何か思いだしたりはしないか?」
飛鳥「……」
P「…飛鳥?」
飛鳥「まだ、だよ」
P「えっ…?」
P「……ぐ、ぅっ!?」ズキッ…!
P「(この、タイミングで……頭痛が…)」
P「(まぁ……そう、だよな……)」
P「(あと…ふたり…いるんだ、から……)」
飛鳥「……」
飛鳥「まだ…」
飛鳥「ボクとキミの同級生ライフは始まりを告げたばかりさ…」
P「―――」
P「…う、ぐ」むくっ…
P「……」
P「(学校の教室…)」
飛鳥「……」
P「(飛鳥が前の席に移動している…)」
P「(とりあえず無事に先には進んだみたいだな…)」
P「(さて、そうなると隣の席だが…)」
紗南「…くかー」
P「……」
P「(隣の席でも寝てるぞ、この子…)」
P「(今度は紗南…でいいんだよな?)」
裕美「……」
P「(紗南をクリアしたら、ラストは裕美…)」
P「……」
P「(ヘレンは…無いよな…?)」
一旦中断
遅くなって申し訳ない
まだ時間はかかりそうですが次の紗南編はなるべく早く投下出来るように頑張るでごぜーます
更新が滞って申し訳ない
明日更新予定です
とりあえず生存報告だけ…
P「(さて…)」
P「(まずは紗南とコンタクトを取らないことには何も始まらないよな…)」
紗南「むにゃむにゃ…」
P「……」
P「(徹夜でゲームしてたから寝不足、ってとこだろうな…)」
P「…おい、紗南」ゆさゆさ…
紗南「んー…んぐっ…」
紗南「……」
紗南「…んぁ?」
P「おはよう」
紗南「……」
P「もうすぐヘレン先生来るから、そろそろ起きとけ?」
紗南「…ふひゃあ!?」
P「…ふひゃあ?」
P「…新しい呪文か?」
紗南「え、ええっと…」
紗南「ぷ、プロくん…?」
P「うん?」
紗南「…あたし、プロくんに起こされたの?」
P「まぁ、隣にいたし」
紗南「……」
P「……」
紗南「…ゆ、ゆうべはおたのしみでしたね?」
P「なんでだよ」
紗南「…はっ!?」
紗南「ここは…教室…」
紗南「…なんだぁ、夢オチかぁ」
P「…どんな夢見てたんだよ」
紗南「どんな夢と言われても、ちょっと記憶が曖昧…」
紗南「…あっ!」
紗南「聞いて聞いて!」
紗南「あたし、夢の中で女勇者サナだったのっ!」
紗南「ボスも倒して、次の町に行って…」
紗南「夜になったから宿に泊まったってわけね!」
P「それは一人でか?」
紗南「ううん!遊び人との二人旅っ!」
P「遊び人とな…」
紗南「それで、その遊び人と…」
紗南「……」
P「…紗南?」
紗南「…続きはダメ」
P「…なんで?」
紗南「だって…」ちらっ…
紗南「…はずいんだもん」
P「……」
P「(俺に対する紗南の初期好感度はどんなものかと思っていたが…)」
P「(こういう反応されると勘違いしてしまうな…)」
P「(けど、かわいい…)」
ガラッ…!
ヘレン「グッモーニンエヴリワンッ!!」
P「!?」
ヘレン「雨上がりの空にかかる虹よりも美しく…」
ヘレン「世界レベルの担任…ヘレンよ…」
ヘレン「ゲームも良いけど、リアルもね」
ヘレン「つまり、そういうこと」
ヘレン「さぁ、朝のHRを始めましょう!」
P「……」
P「(飛鳥の時と、前置きの台詞が違うな…)」
P「(裕美の時にはまた違う前置きになるのか?)」
P「(…ちょっと楽しみだ)」
ヘレン「まずは、今朝の世界レベル」
P「(やっぱそこからなんだ!?)」
ヘレン「今朝は紗南に答えてもらうわ」
紗南「うへぇ…」
ヘレン「I spend more time playing games than studying.」
ヘレン「紗南…貴女だからこそ日本語に訳すことが出来るかもしれないわ…」
紗南「えー!単語じゃなくて文章なのー!?」
紗南「うー…」
紗南「えっとぉ…プレイングゲームはゲームをしてるって意味だよね…?」
紗南「タイムは時間で…スタディングは…勉強?」
紗南「……」
紗南「…!!」
紗南「あたしは勉強よりゲームをしてる時間の方が長いっ!!」
ヘレン「Excellent」
ヘレン「フッ…ゲームだけでなくリアルでもレベルアップしたようね紗南…」
紗南「やったねっ♪経験値大儲けっ!」
P「……」
P「(長いって…ロングじゃないのか…?)」
P「(…俺、正直わからなかったぞ)」
ヘレン「では、朝のHRはこれにておしまい」
P「(終わった…)」
ヘレン「…そうそう」
ヘレン「本来ならば本日の1限目は、私の世界レベルの授業が行われる予定だったけれど…」
ヘレン「私はこれから屋上で乾布摩擦をしなければならない…」
P「(乾布摩擦!?)」
ヘレン「つまり、自習よ」
P「(そんなバカな…)」
飛鳥「屋上を使うのか…参ったね…」
紗南「乾布摩擦、ヘレン先生の日課だもんね」
裕美「……」
P「……」
P「(『このセカイ』では普通なのか…?)」
P「(…いや)」
P「(ヘレンはどこに行っても、世界レベルか…)」
ヘレン「それでは…シーユー!!」ダッ…!
紗南「あははっ♪相変わらず自由度高いよね、ヘレン先生って!」
P「……」
P「(一応フリーダムって認識ではあるんだな…)」
紗南「んー…自習時間どーしよっかな…」
紗南「二度寝して夢の世界へコンティニュー…?」
紗南「女勇者サナの冒険はまだまだ…」
P「おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました」
紗南「……」
紗南「ちょ!?なに勝手にセーブデータ消してんのっ!?」
紗南「しかもトラウマになりそうなメッセージで!!」
P「いや、二度寝するぐらいなら俺と話でもしてくれないかなと思って」
P「(ていうか、恐らくこの自習時間が紗南攻略チャンスだろうし)」
紗南「えっ…?」
紗南「もしかして…フラグ立った…!?」
P「(この台詞…バレンタインの時に聞いたことあるような…)」
P「(…掴みはOKって感じだな)」
P「フラグか…そうだな…」
P「恋愛ゲームはそれほど詳しくないんだが…」
P「所謂ルートに入ったっていうのか?こういうのって」
紗南「え…」
紗南「ええぇっ!?」
紗南「そ、そうなんだ…」
紗南「ぷ、プロくん…あたしのこと…そういう風に…」
P「……」
P「(なんか色々とすっ飛ばしてる気がするけど…)」
P「(話はいい方向に向かっている気がするぞ…)」
紗南「え、えーっと…」
紗南「あ、あたしもさ…恋愛ゲーは経験少ないんだけどさ…」
紗南「……その」
P「ん?どうした?」
紗南「所謂…ら、ラブラブなイベントって…」
紗南「みんながいる教室で起きたりするもの、なの…?」
P「……」
P「…あー」
紗南「あたしとしては…うん…ちょっと恥ずかしいな…」
紗南「い、いや!?プロくんと、このままハッピーエンド迎えたいとかじゃなくて!?」
紗南「だ、だけど…選択肢次第で……ね…?」
P「……」
紗南「なんていうか…わかってっ…!」
P「(メインヒロインのサナと恋人になれる選択肢…)」
P「(つまりイベントが発生する場所を選べってことだよな…)」
P「(…もはや好感度MAX?)」
P「(とりあえず教室は紗南の言うとおり、周りの目が恥ずかしい…)」
P「(となると、屋上…)」
P「(…ダメだ、ヘレンが乾布摩擦していてムード台無しだ)」
P「(残された選択肢は…)」
P「……」
P「…紗南」
紗南「は、はいっ…!」
P「保健室、行くか」
紗南「……」
紗南「…え?」
紗南「―――あ、あのっ…」
紗南「こ、このゲームに出てくる女の子はみんな18歳以上ってわけじゃなく…」
紗南「あたしはリアルな14歳で…その…」
P「……」
紗南「あたし、アダルトゲームなんてプレイしたこと…ないもん…」
紗南「だから…どうしていいかわからないよ…」
P「……」
紗南「やっぱり…えっちなことしなきゃ…だめ、なのかな…」
紗南「でも、あたし…ちいさいし…」
P「紗南」
紗南「えっ!?もうイベントCG…!?」
紗南「まって…!まだ心の準備がっ…!!」
P「確かに中学生の男女が保健室のベッドの上で二人きり…なんてヤバいシチュエーションだけど…」
P「そういうことがしたくて、紗南をここに連れ出したわけじゃないのはわかってるよな?」
紗南「…えっ?」
紗南「…しないの?」
P「しないっての」
紗南「な、なんだぁ…」
紗南「あたしはてっきり、そういうエンディングに向かってるものかと…」
P「流石に14歳に手を出すほど、落ちぶれてないっての」
紗南「…?」
紗南「プロくんも、14歳だよね?」
P「あ…」
P「(普段の接し方と変わらないせいか、一瞬自分が14歳だってこと忘れてたな…)」
P「(俺が本当に14歳の時なんて、もう…)」
P「……」
P「(…あれ?)」
P「(何年前だっけかな…)」
P「(まぁいいか…)」
紗南「…ふーん」
紗南「つまり、同年代のお子様は非攻略対象ってわけだ…」
P「…え?」
紗南「そうだよねー…あたし以外にも飛鳥ちゃんや裕美ちゃんていう攻略対象がいて…」
紗南「さらにヘレン先生っていうオトナの魅力満載な女の人がいて…」
紗南「わざわざあたしみたいなモロお子ちゃまなクレイジーゲーマーなんかにときめいたりしないよね…」
P「……」
紗南「でも、それなら教室での会話はなんだったのって感じだよ…」
紗南「これでも…ちょっとはドキドキしてたんだけどな…」
P「紗南」
紗南「…なに?」
紗南「フォローの必要とかは…」
P「もしも…」
P「俺が『別のセカイ』から、『このセカイ』の紗南に会いに来たって言ったら…」
P「信じてくれるか?」
紗南「…へ?」
P「簡単に言うとだな…」
P「『別のセカイ』では俺は社会人で、アイドルのプロデューサーをしているんだ」
P「そして担当アイドルの中に、紗南…14歳のお前がいる」
紗南「……」
紗南「…それ、なんてゲーム?」
P「ゲームの話でも、夢の中の話でも無いんだ」
P「さっき俺が14歳に手を出す云々って言ったのは、本来の俺は大人だから…」
P「14歳に手を出すのは犯罪っていう意味合いであってだな…」
P「確かに紗南はゲームが好きすぎる部分が目立つけどさ」
P「好きなことにとことん夢中になれるのって魅力的だと思うし…」
P「ゲーム以外じゃ、ちょっと照れ屋なところもあって俺は凄く可愛いと思ってる」
紗南「…!」
紗南「…あたしが」
紗南「カワイイ…?」
P「あぁ、もちろんだ」
P「立場上あまり大きな声では言えないけど…」
P「紗南が恋人だったなら、きっと毎日楽しいんだろうな」
紗南「ふ、ぇ…!?」
紗南「こ、こいびと…」
紗南「あたしと…プロくんが…」
P「…『別のセカイ』じゃ今は叶わないけどさ」
P「『このセカイ』でなら、叶えられないかな…?」
紗南「…え、と」
P「あ…」
P「もちろん紗南が俺のことを好きっていう前提の話なんだけどさ…」
P「(…これ、完全に告白してるよな俺)」
P「(これでフラれたりなんかしたら、詰みじゃないか…?)」
紗南「……」
紗南「…その、ね」
紗南「あたし、今までカワイイとかって言われ慣れてなくって…」
紗南「頭の中、フリーズしちゃってるっていうか…」
紗南「でも!でもねっ…!」
紗南「ゲームが好きなあたしのことを魅力的って言ってくれて…」
紗南「すっごく嬉しかったっていうか…」
紗南「…あーっ!!」
紗南「セーブデータ分けたいっ!」
紗南「こういう時にどんなセリフを言えば良いのかわかんないよー!」
P「…えーと」
P「俺も気の利いたセリフとか言えないからさ…」
P「もうストレートに聞いちゃうんだけど…」
紗南「な、なに…?」
P「紗南は、俺のこと好きか?」
紗南「え、えぇっ!?」
紗南「そ、そういうのってヒロインに聞いちゃうのっ!?」
P「だ、ダメだったかな?」
紗南「う、うーっ…」
紗南「なんかズルい…」
紗南「夢の中と、一緒だよ…」
P「夢?」
紗南「…あっ!?」
紗南「い、今のは…その…!」
P「……」
P「(…あれか)」
P「(女勇者サナと遊び人…)」
P「(その遊び人っていうのは…)」
紗南「…なんか、察しちゃった?」
P「…まぁ、なんとなく」
紗南「ううぅぅ…」
紗南「ロードしてやり直したい…」
P「……」
紗南「……」
紗南「…なにも聞かないの?」
P「えっ?」
紗南「その…あたしと遊び人がどういう関係だったとか…」
P「聞いた方が良かったか?」
紗南「いや、その…恥ずかしいんだけど、さ」
紗南「でも、察しちゃったんでしょ…?」
P「気にならないと言えば嘘になるけど…」
P「でも、今俺の目の前にいるのはリアルの紗南だから」
紗南「…!!」
紗南「……」
紗南「…夢の中とおんなじだね」
紗南「ううん、夢の中っていうか本来のプロくんがきっとそういう人なんだよね」
紗南「きっと…」
紗南「『別のセカイ』のあたしも、そんなプロくんのことが…」
紗南「…なんて、その話も夢の話だと思ってるんだけどね…あははっ」
P「…良ければ、今の紗南の気持ちが聞きたいな」
紗南「…うん」
紗南「そのさ、言葉にすると難しいの…」
紗南「だから…形で示しても、良いかな…?」
紗南「頑張ってそれっぽい一枚絵にするからさ…」
P「…わかった」
紗南「……」
紗南「…はじめてだから」
紗南「うまくできなかったら…ごめんね…?」スッ…
紗南「んっ…」ちゅっ…
P「(紗南…)」
紗南「……」
紗南「こ、こうで…良かったのかな…?」
P「…うん、ありがとな」
紗南「えへへ…」
紗南「…これであたしたち」
紗南「ホントにパートナーになったんだね…」
P「……」
P「…ああ」
P「ゲームとは違う…」
P「本当の…」
P「……う、ぐっ!?」ズキッ…!
P「(とは、言っても…だ…)」
P「(まだ裕美も、いるん…だ…)」
P「(ホントに…パートナーって、わけ…には…)」
紗南「……」
紗南「…やっぱり」
紗南「『あたしの存在』じゃ、ハッピーエンドは無理なのかな…?」
P「―――」
P「…う、ぐ」むくっ…
P「……」
P「(教室に戻ってきたか…)」
紗南「ぐー…」
P「(紗南は前の席で、爆睡…)」
P「(多分飛鳥は後ろの席でエクステをいじっている…)」
P「(つまり…)」
裕美「……」
P「(裕美が14歳編のラスボスか…)」
P「(ちょっと不機嫌そうな表情をしているけど…)」
P「(多分怒っているわけじゃないよな…?)」じっ…
裕美「……」
裕美「…なに?人の顔を見てさ…」
P「……」
P「(た、多分ね…)」
一旦中断
ホントに亀更新で申し訳ない
今回みたいにかなり遅くなったりもしますが完結はさせる気なので、気長にお付き合い願いたいです
次の裕美編はまたそのうち…
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