まゆ「単独遠征」 (142)



元ネタ:笑う犬の冒険『引越』シリーズ


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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1464433025


まゆ「これと、これと――……、うーん」

幸子「……まゆさん」

まゆ「あら、幸子ちゃん」

幸子「プロデューサーさんに聞きました。明日、単独遠征だそうですね」

まゆ「そうなの。でも、一人で遠征って経験がないから手間が掛かっちゃって……」

幸子「ボクが手伝ってあげますよ。カワイイボクは単独遠征も何度もこなしてますからね!」

まゆ「ありがとう幸子ちゃん。たすかります」

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幸子「それじゃあ、まずはいるものといらないものにわけていきましょうか」

まゆ「えっと、それじゃあまずは……これ、名刺」

幸子「アイドルも職業だって、プロデューサーに言われてみんなで作ったやつですね」

まゆ「そう。私はデザインもプロデューサーさんと一緒にしたの。まるで夫婦みたいな――」

幸子「いりません」

まゆ「……え?」

幸子「この仕事の間、まゆさんの肩書は『アイドル』では無いそうですから、この名刺は使えません」

まゆ「プロデューサーさんに聞いたの? 本気度の高いお仕事なのかしら……」


まゆ「でも、これは、これは要りますよね? プロデューサーさんに初めて見立ててもらったステージ衣装」

まゆ「肩書が違うって言っても、ステージの一つでも立たせてもらえるかもしれないし……」

幸子「いりません」

まゆ「え?」

幸子「奴らは基本的に赤外線でモノを見る夜行性ですからね。衣装なんて意味を成しませんよ」

まゆ「奴ら? 奴らって……な、なに、誰?」

幸子「まあ、初回なら腫れるだけで済むという話ですし……」

まゆ「初回!? 腫れる『だけ』!?」

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幸子「それでも、攻撃されないに越したことはありませんからね」

まゆ「攻撃! 本当にそれはどういう……!?」

幸子「だから、何を忘れても、これだけはちゃんと持って行ってください」

まゆ「なぁに、この長い棒? 刃の無い高枝切鋏みたいな……」

幸子「ハブ取り棒です。柄の部分のボクの顔シールの辺りを持って使えば、程よい距離で対処できますから」

まゆ「ハブ!? ちょ、ちょっと待って、待って。そんな、今回の遠征って、まさか……!」

幸子「『まゆんぐーす対百匹のハブ』だそうですよ」

まゆ「ひゃ、百匹!!?」

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まゆ「む、むり……。い、一匹だってどうにもならない……、ひゃっぴきって……?」

幸子「……あなたが、あなたがいけないんですよまゆさん……」

幸子「あなたが、プロデューサーさんの名刺を」

幸子「自分の名前を書き加えたものにすり替えたりするからぁ……!」

まゆ「周知させてしまえば、そうせざるを得なくなると思ってぇ!!!」

幸子「……三匹あたりから見た目には慣れますから。頑張って下さい」

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まゆ「う、ううう……そんな……」

幸子「……」

まゆ「……だいすきぃだよ……あなた、だーけよ……」

まゆ「この……恋は、まあっか……」

まゆ「赤い……、くすり、ゆーびの、糸は、えいえーん……」

まゆ「……えぶりでい、どりぃーむ…………!」

幸子「くっ……ううっ……、ま、まゆさぁん!!」

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続きます。

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再開します。

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まゆ「うーん、そろそろいい塩梅かしら……?」

幸子「……まゆさん、お邪魔します」

まゆ「あら、いらっしゃい、幸子ちゃん。狭いテントだけれど座って座って」

幸子「あの日からずっとテント暮らしだったんですよね」

幸子「これも何回か張り直したんですね……。手慣れた人が組んだんだなって感じですよ」

まゆ「うふふ。最初はどうなるかって思ったけれど……」

まゆ「でも、今ではもう長いキャンプみたいで楽しく過ごせてるの」

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まゆ「見て見て、ほら。ハブ酒もこんなに出来ちゃって」

幸子「おおー、中々いい感じみたいですね」

まゆ「幸子ちゃんのおかげですよぅ。幸子ちゃんがこっちで前に造っていた『僕可愛』が凄い銘酒だって褒められていて」

まゆ「お酒が飲めなくても良いものが造れるって、とっても励みと参考になったから」

幸子「フフーン! カワイイボクは、酒造りもプロ並みですからね!」

まゆ「本当なら何年もかかるものを、こんな短期間で作るあんな方法があるなんて……、目から鱗です」

幸子「ハブだけに――って、言うと楓さんみたいですね」

まゆ「うふふ」

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まゆ「それで、早く仕上がったのは先に送ったし、まだまだこんなに沢山出来てるんだけれど……」

まゆ「こんなにおみやげ、プロデューサーさん、喜んでくれるかしら……?」

幸子「まあ、事務所には大人でお酒を飲む人もいっぱいいますから、きっとみんなで飲みますよ」

幸子「……所で、まゆさん。次のお仕事が決まりましたよ」

まゆ「あら、本当ですかぁ? 幸子ちゃんはそれを教えに来てくれたの?」

幸子「そうです。まあ、ボクにはこの辺の土地勘もあったので、白羽の矢が立ちまして」

まゆ「そうよねえ。ここ、結構森の奥深く入ってきてるから、普通に来たら迷っちゃうでしょうねえ……」

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幸子「で、次のお仕事ですけど……。また単独遠征という形で、ここから直に現地入りだそうです」

まゆ「え? えええええっ!? じ、事務所に戻らないで?」

幸子「はい」

まゆ「プロデューサーさんに会えないまま?」

幸子「そういうことになります」

まゆ「し、しんじゃう……、まゆ、しんじゃいますよぅ……!」

幸子「お仕事があるのはありがたいことですよ。特に次は海外ですからね、準備はしっかりしないと」

まゆ「外国ですか!? うう……、わ、わかりました、気を引き締めて……」

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まゆ「えっと……、まずはこの名刺なんですけれど」

幸子「あ、肩書のところ、『アイドル・狩人』になってますね。手書きで足したんですか」

まゆ「そうなの。せっかく頑張ったから、書き加えておこうと思って――」

幸子「いりません」

まゆ「そんなぁ」

幸子「次のお仕事は、アイドルでもハンターでもないので」

まゆ「また、アイドルのお仕事じゃないんですねぇ……」

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まゆ「えっと……、それじゃあこれ、ステージ衣装!」

幸子「持ち出してたんですか」

まゆ「プロデューサーさんとの思い出の一品ですもの」

まゆ「今度は夜ばかりということもないでしょうし、アピールの為にも、一着持って行っておいても……」

幸子「いりません」

まゆ「い、衣装も……」

幸子「色合いはいいんですが、今度はユニフォームがありますから。必要ないですよ」

まゆ「ユニフォーム? それじゃあ、スポーツ関連? まゆは運動神経が良いといえるほどじゃあないと思いますけれど……」

幸子「頑張りましょう。人間の限界点って、思ったより曖昧ですからね。為せば成る、という感じで」

まゆ「……えええ……」

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まゆ「……あとは……、そうだ、それじゃあ、この軍手とか必要ですよね。体を動かすなら怪我をするかもしれないし」

幸子「いりません」

まゆ「そ、そう? で、でも備えあれば患いなしっていうし、一応準備していって……」

幸子「ダメですよ、そんなカワイくないもの! ただでさえ体力足りないんですから減点されたら厳しいですよ!?」

まゆ「減点!? 試験があるの?」

幸子「はい。そのために、まずこれは必須ですから移動中にマスターしなければなりません」

まゆ「『アイドルでも分かるデンマーク語』……デンマーク?」

まゆ「ま、まゆ、ちょっと地図で探しても、すぐには見つけられなさそうなんですけれど……」

幸子「まあ、本国ではないです。深く気にしなくていいですよ」

幸子「ボクの顔マークが付いた付箋のページは、思いの外使いますから気をつけてください」

まゆ「びっしりついてますねぇ……」

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幸子「そしてこれが今回の衣装になります。これは持っていくんじゃなくて、ここから着て行ってくださいね」

まゆ「まあ、可愛い和服の――サンタ衣装? この時期に?」

まゆ「というか、かなりしっかり着物になっていて着付けが大変そうですねぇ」

まゆ「ここで来ていくのは流石に暑いと思うのだけれど……。着るのは現地についてからじゃダメなの?」

幸子「着ていってください。それも試験の一環です」

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まゆ「…………あの、今回のお仕事って……」

幸子「本場、グリーンランドで行われる『公認サンタ試験』です」

まゆ「公認……! そ、そのお仕事、もっと向いた人が居るような気が……」

幸子「いえ、今度のお仕事自体、シーズンにイヴさんとユニットを組むことを見越した準備のようなモノだとか」

幸子「それに、本来なら色々な条件のいくつかをイヴさんのコネのおかげで免除してもらえたので」

幸子「しっかり受かった暁には、仮免ですが本当にサンタ資格が交付されるんだそうです」

幸子「仮免とは言え、公式では日本人――アジア圏では二人目になるそうです。栄誉ですね! 凄いことですよ!」

幸子「その分、更に厳しい本試験は厳格になってると思いますけれど」

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まゆ「こ、コネとか話が通ってしまっているということは……」

幸子「逃れられません」

まゆ「あああ…………」

幸子「…………」

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まゆ「うう、ぷろ、プロデューサー……、プロデューサー、さん……ううう……」

幸子「…………まゆさん……」

幸子「まゆさんが……、いけないんですよ……!」

幸子「まゆさんが、先に送ってきたハブ酒に」

幸子「『プロデューサー夜の憩』なんて銘を付けたりするから!!」

まゆ「晩酌に楽しんでもらえると思ってぇええ!!!!」

幸子「……高さ280センチとはいえ、煙突は、外から登るときに案外怖いですけれど」

幸子「実は、視界の得られない中を降りるときが危ないので、気をつけて、下さい……」

まゆ「う、ううう……」

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まゆ「…………だ……」

幸子「…………」

まゆ「……だいすきぃだよ……あなた、だーけよ……」

まゆ「この……恋は、まあっか……」

まゆ「赤い……、くすり、ゆーびの、糸は、えいえーん……」

まゆ「……えぶりでい、どりぃーむ…………!」

幸子「……うううっ……、ま、まゆさぁあん!!」

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続きます。

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訂正

前回部で間違いがありましたので訂正します

>>28
幸子「それに、本来なら色々な条件のいくつかをイヴさんのコネのおかげで免除してもらえたので」



幸子「それに、本来なら色々と必要な条件のいくつかをイヴさんのコネのおかげで免除してもらえたので」





再開します

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サンタ「HoHoHo!」

幸子「HoHoHo!!」

サンタ「HoHoHoHoHoHo」

幸子「Ho!」

サンタ「Ho!」

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まゆ「HoHoHo!」

幸子「まゆさん、ボクとは日本語で大丈夫ですよ」

まゆ「あ、そうでした! ずっと練習しっぱなしだったからうっかり……」

幸子「わかります」

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幸子「でも、ありがとうございます。まゆさんの頑張りのおかげで、ボクまで仮免が交付されるなんて……」

まゆ「お礼を言うのはこっちですよう。それぞれの項目で、幸子ちゃんが伝説を残していてくれていたからこそ」

まゆ「変に侮られないで、課題をクリアすることに全力で取り組めましたからぁ」

まゆ「それに向こう側も、幸子ちゃんの時、資格を発行できなかったことに歯痒い思いをしていたみたいで」

まゆ「仮免でもようやく評価することができた、ってホッとしていたみたいですし」

幸子「そこまで言われると……、カワイイボクも照れてしまいますねぇ。えへへへ」

まゆ「うふふ」

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幸子「…………」

まゆ「…………ゴクリ」

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幸子「さて、今回のお仕事もひと段落しましたので、まゆさん」

まゆ「そ、そうですよね! 今回もまゆ頑張りましたから、もう帰こ――」

幸子「次の単独遠征の準備をしましょう」

まゆ「く、を……」

まゆ「…………薄々、薄々そうなるんじゃあないかなって思ってました。思ってましたけどぉ……!」

まゆ「ううう……、プロデューサーさぁああん……! 会いたい、会いたいのにぃ……!」

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幸子「まずはこの名刺ですね。さすがまゆさん。『アイドル・狩人・サンタ仮免』こまめに書いてありますね」

まゆ「はい……。もうこうなったら、ゆくゆくは仮免も取り払えたらな、とも……」

幸子「いりません」

まゆ「また違うお仕事なんですねぇ……」

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まゆ「あの、でも、今度こそ、今度こそ衣装はどうですかぁ?」

幸子「持ってきていたんですね」

まゆ「森の中に置いていくわけにはいきませんよぅ。大事なものだもの」

幸子「いりません」

まゆ「あう……」

幸子「あんなところで着たら、太陽光と潮風で大変なことになってしまいますよ」

まゆ「潮風と……って、海? 今度は船の上なんですかぁ?」

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幸子「後はそうですね……。ちょっと迷いますけど、このコートの類は要らないですね」

まゆ「迷う、っていうのは……」

幸子「寒いときもあると思うんですけど、持っていくにしても、これだと……」

幸子「結構、海水を吸いそうですからねえ。時間によっては危険です」

まゆ「時間によって!? そ、そんなに日常的に荒れている海……!?」

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まゆ「一体何を、今度は一体船でどこに行くんですかぁ!?」

幸子「どこ、と言いますか……。この海図をどうぞ」

まゆ「海図。海図が来てしまいましたか……。……幸子ちゃんの顔マークがいくつかあるんですが」

幸子「以前使ったものそのままですから最新の情報ではないですが、そのマークの辺りにいます」

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まゆ「いるって、何が――、……あら? 一つだけある、泣いてる幸子ちゃんの顔マークは」

幸子「危険マークです。辺りを知り尽くした屈強な海の男も避けて通る海域の主」

幸子「彼らに、『リヴァイアサン』と呼ばれる超大物が潜んでいます」

まゆ「り、リヴァイアサン!? 分かりました、その辺りには近づかな――」

幸子「気をつけて狙ってください」

まゆ「狙うんですかぁ!?」

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まゆ「あ、あの、あの、こ、今度のお仕事は……」

幸子「765さんとの合同企画『最高の食材、最高の味』です」

幸子「765側は我那覇さんがツバメの巣を入手して、佐竹さんが調理」

幸子「こちら側は、まゆさんが獲得してきた食材を、葵さんが料理する企画です」

まゆ「……ツバメの巣に並ぶような、海産物の食材って、まさか……」

幸子「はい。まゆさんが入手してくるのは、フカヒレ、です」

まゆ「じゃ、じゃあ、そのリヴァイアサンっていうのは!」

幸子「超巨大化け物ザメです」

まゆ「」

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まゆ「いくらなんでも! いくらなんでもぉ!」

まゆ「御馳走にする前に、まゆが御馳走になってしまいますよぅ!」

まゆ「ま、まゆを食べていいのは、プロデューサーさんだけなのにぃ……!」

幸子「…………まゆさん……」

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幸子「まゆさんが……、いけないんですよ……!」

幸子「まゆさんが、仮免許獲得後の地元紙のインタビューで」

幸子「『本免取得に向けて、プロデューサーと二人で頑張りたい』なんてコメントするからぁ!!」

まゆ「だって、だって本免許の条件の一つが『子持ちであること』だったからぁ!!!」

幸子「……まゆさん、奴の右目は潰れてますが、奴はそれを理解してこちらを誘います」

幸子「ジャックはそれで右腕を持っていかれました」

幸子「だから、攻めるときも逃げるときも、決して、決して、絶対に気を抜かないで下さいね……」

まゆ「ジャックって誰ですかぁ! ううう……!」

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まゆ「……うう…………だ……、だ……」

幸子「…………」

まゆ「……だいすきぃだよ……あなた、だーけよ……」

まゆ「この……恋は、まあっか……うっううう……」

まゆ「赤い……、くすり、ゆーびの、糸は、えいえーん……」

まゆ「……えぶりでい、どりぃーむ…………!」

幸子「……くぅっ……ああっ……、ま、まゆさぁああん!!」

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続きます。

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再開します。

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まゆ「…………」

幸子「……花束、ですか?」

まゆ「幸子ちゃん。……そうなの。どうしても、感傷的になってしまって」

まゆ「彼女も、赤い糸を信じていた女の子だった」

まゆ「彼女と私との違いは、そのつながりに包まれていたかどうか」

まゆ「そんな、ささやかなものだったのかも……」

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幸子「……リヴァイアサン、雌でしたね」

幸子「あまりに一匹強大過ぎたリヴァイアサン」

幸子「彼女は、ただ、自分に見合うつがいを探して、延々生き続けていたのではないか――」

幸子「ボクも、後から七海さんに聞きました」

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まゆ「……幸子ちゃん、これを」

幸子「これは……、ボクのマークの付いたカワイイ銛! ひょっとして――」

まゆ「ええ。お腹の中から出てきたの。他にも、何本も何本も、いろんなものが」

まゆ「いろんな、得物が……」

幸子「……長い間、長い間戦ってきたんですね。……大事に、取っておきます」

まゆ「そうしてあげて?」

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幸子「…………」

まゆ「…………」

幸子「…………まゆさん、次の遠征です」

まゆ「ううう、やっぱり、そうですよねぇ……!」

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幸子「何はなくとも名刺ですが……『アイドル・狩人・サンタ仮免・漁師』」

まゆ「わかってます、わかってますよぅ!」

幸子「いりません」

まゆ「こんなに肩書増えちゃって、もう次どうなるか予測できるような気がしますからぁ!」

幸子「あー、あー、ありますよね、そういうこと」

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まゆ「勿論この衣装も!」

幸子「丁寧に厳重に梱包してますねえ……、いりません」

まゆ「もう、まゆとしては二択まで絞れてます!」

まゆ「それじゃあこれ! これはどうですか、命にかかわる大事な酸素ボンベは!」

幸子「それはいりませんね」

まゆ「わ、わかりました……! 空、空なんですねぇ!」

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まゆ「空か山だろうと思っていたけど、山だったらボンベが必要なはずですものねぇ!」

まゆ「どこですか! まゆは、どこの国の空を飛べばいいんですかぁ!」

幸子「どこといいますか……。兎に角これを肌身離さず持っていてください」

まゆ「なんの機械ですか? ピコンピコンっていう電子音が不安になってくるんですけれど……」

幸子「晶葉さん謹製の、高性能発信器です」

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まゆ「晶葉ちゃんの作った発信器ですかぁ。……発信器。発信器……!」

まゆ「あ、あの、これは、もしもの時のものですよね?」

まゆ「まさか、落ちる場所さえ決まってないとかじゃあないんですよね!?」

幸子「落ちる場所は決まってますよ。そこが目的地です」

まゆ「空からじゃないと行けない場所……! い、いったいまゆは、どんなところに……?」

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幸子「行くというか、なんというか……。これが資料になりますから、しっかり読み込んでくださいね」

まゆ「…………ラ○ュタのDVDと、ガリバー旅行記って……」

幸子「天空城や天空都市の伝説って、まあ結構あるらしいんですが、入門編はその辺りでしょう」

まゆ「じょ、冗談……、今回ばかりは、ジョーク的な」

まゆ「こう、無いとわかってるけど、探してみようという、そういう流れのお仕事……なんですよね?」

幸子「本気で探してください」

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まゆ「嘘、いや、無理ですよぅ。死ぬかもとか、危ないからとかじゃなく」

まゆ「あからさまに不可能なお仕事じゃないですかぁ!」

まゆ「本当に何をどうしたらいいんですかぁ!」

幸子「…………まゆさんが……」

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幸子「まゆさんが……、いけないんですよ……!」

幸子「まゆさんが、今回の企画でチャーターした漁船の船体に……」

幸子「いっぱいいっぱい、限界まで大きくプロデューサーさんの肖像画なんか描くからぁ!」

まゆ「会えない寂しさに手が勝手に動いたんですぅ!!!」

幸子「しかもリヴァイアサンにがりがり噛まれて、ぐちゃぐちゃになちゃってたじゃないですか!」

まゆ「最初はあそこまで凶暴な相手だなんて思ってなくてぇ……!」

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幸子「……今回ばかりは、カワイイボクでもこの世界では未知の領域です」

幸子「でも、以前ロケを行った古代遺跡で石碑に書いてありました、その秘密は空の果てにあると――」

幸子「それで今回の為に、空力限界まで飛ぶ特別なジェットを用意してくれたそうです」

幸子「だから、その、……頑張ってください」

まゆ「……最早、何をどう頑張れっていうんですかぁ……!」

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まゆ「……うう…………うううう……」

幸子「…………」

まゆ「……だいすきぃだよ……あなた、だーけよ……」

まゆ「この……恋は、まあっか……」

まゆ「赤い……、くすり、ゆーびの、糸は、えいえーん……」

まゆ「……えぶりでい、どりぃーむ…………!」

まゆ「……うううわあああ!」

幸子「……くっ、ま、まゆさん……! まゆさぁあああん!!!」

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次回、完結予定

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幕間


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某日、事務所


??「おっはようございまーす!」

??「……ってあれ。だれもいませんね」

??「みんなお仕事のタイミングだったんですかねー」

??「あら? これは……」

??「まゆちゃんが造ったという、噂の『プロデューサー夜の憩』!」

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??「すごく美味しいという評判ですけれど、人目があって呑めてないんですよねえ……」

??「……でも、今は事務所に一人だし」

??「ちょーっとだけ、17歳を休業して、貰っちゃってもいいですかね……?」

??「誰もいないし……、ちょっとだけ、ちょっとだけ味見を……」

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??「んんんっ! き、キツイ!! こ、これ、40度近くあるんじゃないですか!?」

??「あ、でも、この風味、なんだか独特で……はふぅ……なるほど……」

??「…………まだ、誰も来ないみたいですし、もうちょっともらっても……」

??「まだまだいっぱいありますし、もうちょっとなら、バレることもないはず」

??「い、いただきまーす……」

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~1時間後~



??「うひへへへ!」

??「ああぁ! 飲めば飲むほど癖になる! 悪いお酒ですよぉこれはぁ!」

??「プロデューサーとつくだけはありますねぇ! 本当に悪いお酒……ぬふぇへへ」

??「もう、だからぁ、あんまり他の人が飲んれ、悪いことにならないように……」

??「もうちょっと、呑んじゃいましょうねえー」

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??「ああー! 良いですねえ、最近人目が多かったから、こうしてリラックスも中々……」

??「……ってあれ? 電話ですかぁ……! まったく、こんなときにぃ」

??「はぁーい! うっさみーん星人でぇーす!」

??「ちょっといま、地球の人とはおはなしできませーん」

   『ウサ! ウサウサウサ!』

??「はれ? 本星の人ですかぁ? じゃーしょーがない。しょーがないですねえ!」

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   『ウサウサ! ウサウサ、ウサ!』

??「地球で一番いいものぉ……? それはね、このプロデューサーですねぇ!」

??「こんなにいい、いやいや、悪いものは他にはぁ、ないですよ!」

   『ウサウサウサ!』

??「なぁにいってるんですかぁ! これは、ナナのものれすからねえ!」

??「他の人には、あげませんよぅ!」

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   『ウサウサ!』

??「はいはい、どーぞどーぞ、ごかってにぃ!」

??「ナナは、これをどうにかするのに忙しいんですから!」

   『ツー、ツー、ツー……』

??「気持ちよく飲んでたのに……。よおし、のみなおしぃを――」

??「千川ただいま戻りましたー、って事務所がお酒臭っ!?」

??「あー、ちひろさん、おかえりなさぁーい」

??「菜々さん!?」

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幕間、終り

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本日の分は明日に延期します。

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再開します

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まゆ「んふふ」

まゆ「うふふふふふふ」

まゆ「あはっ! あはははははは!」

幸子「…………」

まゆ「ようこそいらっしゃい、幸子ちゃん」

まゆ「まゆの愛の城へ」

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まゆ「この城に自分で来られるのは、幸子ちゃん位なものだとわかってましたけれど」

まゆ「さすがですねえ……」

幸子「……高度80000フィートからの、自由落下の加速中でしか見つけられず侵入不可能」

幸子「そんな超々高度にあるというのに、息苦しさも寒さも感じない快適さ」

幸子「まったく古代超文明というものは、理解不能な癖に圧倒的ですね」

まゆ「そうよねえ。まゆの挙動は発信器が全部伝えていたのだもの」

まゆ「ここへの理屈も分かってしまっていたでしょう」

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まゆ「でもね?」

まゆ「先住者達が遥か歴史の中で滅亡し、この城が主なき幽霊船だったことや」

まゆ「来訪者たるまゆが新たな継承者となったことまでは、分からなかったですよねぇ」

まゆ「うふふふふ……」

幸子「どうしようって、つもりですか?」

まゆ「どうする? うふふ、どうしましょうかぁ」

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まゆ「凄いんですよぉ、この城の力って。どこへだって行けるし、何だってできる」

まゆ「例えば、世界地図を変えることだってあっと言う間」

幸子「まゆさんっ!」

まゆ「ふふ。冗・談、ですよぅ」

まゆ「そんなことしたって、なぁんの意味もないもの」

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まゆ「まゆにとって意味があるのはただ一つ、一つきり」

まゆ「でも、これほどの力があれば、その一つだって……」

幸子「……まゆさん」

まゆ「なぁに? 幸子ちゃん」

幸子「次のお仕事です」

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まゆ「……。面白いことを言うのね?」

まゆ「今のまゆに、どこに行かせるっていうんですかぁ?」

まゆ「誰にそれができるの?」

まゆ「たとえ、プロデューサーさんだって」

まゆ「まゆの方が捕まえて、どこへだって、どこへだって一緒に行けるんですよぅ?」

まゆ「どこへ行こうかしら……、二人の新しい門出。うふふふふ」

幸子「……そのプロデューサーさんが、菜々さんと攫われました」

まゆ「……え?」

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幸子「犯人らの動機は不明、ですが下手人たちは月面に潜伏中」

幸子「そこからさらに遠くへ離脱しようとしているそうです」

幸子「それが起きるまでの時間的猶予は――」

まゆ「待って」

まゆ「待って幸子ちゃん!」

まゆ「調子に乗ってたのは謝りますから、ちゃんと、ちゃんと話を聞かせてくださぁい!」

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まゆ「プロデューサーさんが、攫われた!? 誰に!? どうして!?」

幸子「菜々さんもです。目撃者の話では、謎のウサギ型生物だそうで」

幸子「人参型のロケットで空に飛んでったとか」

まゆ「……ハブ酒、作りすぎちゃいましたかねえ……」

幸子「酔っぱらいの見た幻じゃないですよ。事務仕事中にちひろさんが窓から見たそうです」

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幸子「大体、事務所で前後不覚になるほど飲む人なんて流石に居ませんよ!」

まゆ「それもそうですよねえ……。で、でもそれじゃあ、どうして月にいるなんて?」

幸子「765の四条さんを通じて菜々さんから連絡があったそうです」

まゆ「はい? え、えっと、四条さんって、あの四条貴音さん?」

幸子「そうです。何でも、『美味しいきゃびあとふぉあぐらのお礼です』とのことで、今回色々と協力してくれています」

まゆ「そう意味じゃなくて」

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幸子「ボクも色々と意味が解らないですけれど、菜々さんからの連絡というのが本物らしくて……」

まゆ「ほ、本当のことなんですねぇ……」

幸子「現在、四条さんの手の方々が犯人達を月面に釘付けにしていますが、長くは引き延ばせないそうです」

幸子「持って3時間だと」

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まゆ「3時間……。……それで、幸子ちゃん。まゆが月に行く手段はあるのね?」

幸子「……可能性です。この古代の超技術の塊に晶葉さんが手を加えれば……確率は、低くはないです」

幸子「ただ、低くはない、と言うだけです。確実じゃあないです」

まゆ「じゅうぶんじゃないですか」

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まゆ「そんなことより、宇宙服とかはやっぱり必要ですよねえ……」

幸子「いりません」

まゆ「そうなの?」

幸子「はい。ちょうどこの城のような空間が月面でも展開しているらしくて」

幸子「目的地付近ならば、ここと同様に生身で活動できるはずです」

幸子「だから、捕らわれた二人も無事であるはずですが……」

まゆ「成程、成程、良い。とても良いですねぇ」

まゆ「つまり、どんな格好で行っても問題ないという事ですものね?」

幸子「それは、そうですけれど……」

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まゆ「時間の方は?」

幸子「……今、晶葉さんが準備をしてここへ来ます」

幸子「一時間から一時間半あれば、月まで一時間で辿り着くようにして見せるって息巻いてます」

まゆ「つまり向こうでは最低30分も猶予がある」

まゆ「やっぱり、じゅうぶん過ぎるじゃないですか」

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幸子「まゆさん、軽く言ってますけれど……、本当にわかってますか?」

幸子「今回は本当に、生存の保証がないんです。動き出してしまえばどこにも逃げ場がないんですよ?」

まゆ「うふふ、幸子ちゃんってばズルいのねぇ」

まゆ「そんなこと言いながら、もう晶葉ちゃんを呼んだ後……」

まゆ「もしもまゆが断ったら、自分だけで行くつもりだったんでしょう?」

幸子「…………」

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まゆ「でも、ダメ」

まゆ「これだけは絶対に誰であっても我慢できないの」

まゆ「プロデューサーさんがまゆに助けを求めている」

まゆ「まゆがプロデューサーさんを迎えに行くことができる」

まゆ「プロデューサーさんがまゆだけに、まゆだけがプロデューサーさんを……」

まゆ「まゆだけ、まゆだけの……、うふふ……、うふふふふ……」

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幸子「……わかりました。じゃあボクは、後追いができるようにはしておきますね」

幸子「突貫で行ってもらった後、色々サポートできるようにすぐに準備しますから」

まゆ「別にいいのに。幸子ちゃんは、安心して待っていて?」

まゆ「まゆが、まゆだけが、プロデューサーさんのもとに行くんだから……!」

まゆ「うふふ、ふふふふふ…………」

幸子「…………」

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幸子「もう、晶葉さんも着く頃です。猶予はあと一時間半。準備の方、注意してやってくださいね」

幸子「ボクは晶葉さんのお手伝いをしますので、今回は一人で、必要だと思うものを選んで持って行ってください」

まゆ「そうね。しっかりおめかししなくっちゃ、ですものね。うふふ……」

幸子「………………今回は今までで一番頼りになりそうなのに、同じくらい不安になりますね。何故か……」

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………………

…………

……

.


まゆ「久し振りに袖を通したけれど……、この衣装はやっぱり素敵」

まゆ「プロデューサーさんの心に、思い出に包まれているよう……」

まゆ「プロデューサーさん……プロデューサーさん……」

幸子『――まゆさん、まもなく増設エンジンに火が入ります』

まゆ「……プロデューサーさん……プロデューサーさん……プロデューサーさん……プロデューサーさん……」

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幸子『まゆさん、聞こえてますか、まゆさん!?』

まゆ「はいはい、聞こえてますよぅ。ちょっと瞑想して、意識を集中してました」

幸子『そ、そうですか……』

幸子『……とにかく、今回の作戦を確認しますね』

まゆ「どうぞ」

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幸子『菜々さんからの連絡では、着陸予定地から真っすぐ100メートルほど進むと、目的のアジトがあるそうです』

幸子『そして、向かって右側、3.5メートルの高さに排気ダクトがあって、そこから侵入』

幸子『すぐに廊下に出るそうですから、そこからさらに真っすぐ』

幸子『侵入地点から数えて3番目の扉の先に、プロデューサーさん達は監禁されているそうです』

.


幸子『兎に角二人を連れだせば、どうにでもなるらしいですが』

幸子『一度侵入してから警備の人員が集まるまで恐らく3分程度しかないそうです』

幸子『事は迅速にこなす必要があります』

まゆ「うふふ、そう、そうなの……。……思い出しますねぇ。偶然かしら?」

幸子『……確かに、いつかのサンタクロース試験そっくりの状況です』

幸子『ただし、どの数字も試験より大きくなっていますし、今回はとちっても再試験はありませんよ』

幸子『その場で別の方法を探してください』

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まゆ「わかってますよぅ。大丈夫」

まゆ「大丈夫よ、幸子ちゃん」

まゆ「……神経が研ぎ澄まされるのがわかるの。今までのどんな危険を前にしたよりも、鋭く、純粋に……」

まゆ「でもね、それ以上に、プロデューサーさんのところに行ける、プロデューサーさんに会えると思うだけで」

まゆ「心が、熱くて……!」

まゆ「今試験をしたら、きっと幸子ちゃんの残した記録だって抜いちゃうかも」

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幸子『……わかりました』

幸子『まゆさん……、よろしく、お願いします』

まゆ「ええ、まかせて」

幸子『――エンジン、準備できました』

幸子『発射まで、あと5秒』

幸子『4、3、――』

まゆ「幸子ちゃん。……――いってきます」

幸子『――いってらっしゃい。――発射!』

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――――

まゆ「ぐ……、活動は快適でも、加速のGは感じるんですねぇ……」

まゆ「ああ、でも、わかる。感じる――まゆは、今間違いなく、プロデューサーさんに、近づいている!」

まゆ「うふふっ」

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まゆ「……大好きだよ、あなた、だーけよ」

まゆ「この恋は、まあっか……」

まゆ「赤い、薬ゆーびの、糸は、えいえーん……」

まゆ「えぶりでい、どりぃーむ……」

まゆ「……プロデューサー、さん……」

まゆ「……まゆが、まゆが今行きますよぅ……」

まゆ「プロデューサーさぁああん!!」

.


―――

幸子「……まゆさん……」

幸子「……あっと言う間に、見えなくなりましたね……」

晶葉「……ああ。間違いなく成功したようだ」

晶葉「流石の私も肝を冷やしたが、第一段階はクリアだ」

晶葉「そして、今度は幸子の番だ。急ピッチで作業をするぞ!」

幸子「はい!」

.




――かくして、一人の少女が月へと舞った。


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大事な大事な一張羅を身に纏い、唯一そして無二の己が愛だけを携えて。

この世のどんな試練より厳しいことでも。世界の何より愛しい人のために。


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彼女の挑戦が如何な結果をもたらすか――

果たして事ここまで至った物語。

無為に語るは野暮というものである。



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野暮な蛇足

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幸子「いやー、流石ですねまゆさん」

幸子「急いで晶葉さんに準備してもらってきましたけれど、もう全部終わった後でしたね」

まゆ「うふふ、プロデューサーさんの為ですもの。当然ですよぅ」

幸子「まゆさんなら、そう言うでしょうね」

幸子「……でも、無事でよかったです」

まゆ「幸子ちゃん……。ありがとう」

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幸子「…………」

まゆ「…………」

幸子「…………それでは、まゆさん」

まゆ「…………はい」

幸子「次の遠征です」

まゆ「あ、ああ、ああああああ!」

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まゆ「まゆ、頑張りましたよ、頑張りました!」

まゆ「もうこうなったらプロデューサーさんと二人で愛のハッピーエンドを迎えられるくらい頑張りましたよぅ!?」

幸子「それじゃあ、まずは、あ、名刺、ちゃんと持ってきてたんですね」

まゆ「無視しないでぇ……」

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幸子「『アイドル・狩人・サンタ仮免・漁師・女王・愛のエージェント』」

幸子「いやー、書き足すの早いですねえ」

幸子「いりません」

まゆ「最早何をさせられるっていうんですかぁ!? まだここ月面なのに!?」

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幸子「せっかく着飾った衣装。とっても似合ってますが」

幸子「いりません」

幸子「着たままだと今度は熱に耐えられませんからね、服も、まゆさんも」

まゆ「……あの、嘘、嘘ですよね? だ、だって、まゆにはこんなにすごいお城が……」

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幸子「このお城ですか? 確かに超技術の塊ですが……」

幸子「いりません」

幸子「というか、増設装備壊しちゃいましたからね。もうこれじゃあ帰れませんよ」

まゆ「そ、そんな! どうにかならないんですかぁ!? 晶葉ちゃんに来てもらうとかぁ!」

幸子「あっはっは! 月面にいるのに無茶言いますね」

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幸子「というわけでどうぞ。カワイイ上にもしもの準備もばっちりなボクが持ってきた、帰還ポッド(二人乗り)です」

まゆ「ち、小さいですね……、二人入ったら本当にぎりぎり」

幸子「専用のスーツを着れば、大気圏も通過できるスグレモノですよ」

まゆ「……で、でも、二人乗りなら、プロデューサーさんと二人なら……!」

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幸子「そうですね、二人乗りです。なんと、今回は単独じゃないんですよ!」

幸子「今回の騒動の原因だったことが分かった菜々さんと一緒です」

幸子「一人じゃないって、寂しくなくていいですよね」

まゆ「……そ、そんな! じゃ、じゃあプロデューサーさんは!?」

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幸子「ボクの乗ってきた、機動メカウサギロボKB」

幸子「既存の有人ウサギロボを、このお城の技術で急きょ改造したものですが」

幸子「実は操縦席は複座式なんですよね。心配しなくて大丈夫です」

まゆ「ず、ズルい、そんなのズルいですよぅ!」

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幸子「と、いうわけで、今回のお仕事は『ミツボシ☆☆★』のプロモーション撮影です!」

幸子「流星になって大気圏突入にする様子を撮るんですが」

幸子「事務所から高性能カメラでばっちりですから安心してください」

まゆ「何を安心すればいいんですかぁ!!」

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幸子「まゆさんが悪いんですよ」

幸子「せっかく奪還に成功したと思ったら」

幸子「『新しい星でアダムとイヴに』とか言って、プロデューサーさんだけ連れて飛び立とうとするから」

まゆ「出来心、出来心だったんですぅ!!!!」

幸子「そのせいでボクは追加エンジンを破壊せざるを得なかったんだから、まあ、本当に自業自得ですよね」

まゆ「あああ、ごめんなさい、ごめんなさいぃ……!」

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幸子「それでは、ボクはプロデューサーさんを連れて先に帰ってるので」

幸子「ロケのベテランとして、菜々さんをしっかりフォローしてあげてくださいね」

まゆ「ま、待って」

幸子「よし、カワイイボク、先に上がりまーす。じゃ、地球で会いましょう」

まゆ「まってぇええええええ!!」

.


まゆ「…………い、行っちゃった……本当に……」

まゆ「……う」

まゆ「……ううううっ……」

.


まゆ「……だいすきぃだよ……あなた、だーけよ……」

まゆ「この……恋は、まあっか……」

まゆ「赤い……、くすり、ゆーびの、糸は、えいえーん……」

まゆ「……えぶりでい、どりぃーむ…………!」

まゆ「……さ、幸子ちゃあああん!! プロデューサーさああああん!!!」

まゆ「かむ、ばああああっくぅ!!!」

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ご愛読ありがとうございました。

佐久間まゆの次のお仕事にご期待ください。




終り

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以上です。

まゆメインで書いたのは初めてだったのですが
丁寧口調女性口調と入り混じる口調がとても難しかった……。
普通に書けてる方々、本当にすごいです。


幸子の活躍する過去作

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トリはその都度適当につけてます。

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今更ですが訂正箇所がありました

>>97
幸子「そうです。何でも、『美味しいきゃびあとふぉあぐらのお礼です』とのことで、今回色々と協力してくれています」

幸子「そうです。何でも、『美味しいふかひれのお礼です』とのことで、今回色々と協力してくれています」

まゆ「そう意味じゃなくて」

まゆ「そういう意味じゃなくて」


お見苦しい所を失礼しました
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