みほ「笑ってはいけない西住流?」 (89)


まほ「みほ。お母様から連絡があった。近々、西住流戦車道の体験教室を開くそうだ」

みほ「お姉ちゃん……どういうこと?」

まほ「以前、大洗女子学園の存続をかけ、大学選抜チームと対戦しただろう? あのときの勝利はみほのおかげであることは間違いない」

みほ「そんな! お姉ちゃんがいなかったらどうなってたか……」

まほ「いや、事実だ。だがあれはみほの人望や、みほ自身の戦術による勝利であって、『西住流』の勝利ではない」

まほ「その一方で、あの戦いを見た人たちからの反響がすごくてな。みほのおかげで西住流のイメージが上がったことも事実。それがお母様……いや、西住流家元としては複雑な気分だったのだろう。私に話がきた」

まほ「一度、西住流を直々に指導する機会を設け、真の姿を広めるべきだ、と」

まほ「そこでだ。みほは、その西住流の体験教室に来てもらいたい」

みほ「ええっ!?」

まほ「みほは自分なりの戦車道を見つけたという。そのことについてはお母様も承知している」

みほ「う、うん」


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まほ「だが、家元という立場からは安易に容認できない。だから、せめてもう一度だけでも本来の西住流を体験させておきたいのだそうだ」

みほ「体験教室って、一般の人をたくさん集めるの……? ひとりじゃ不安だよ……」

まほ「いや、いったん模擬的に、少人数でやってみる。できるだけみほのことをよく知っている者を募る予定だ」

みほ「うん。そのほうがありがたいけど……」

まほ「来週寄港する先に、西住家所有の訓練場がある。そこで行うから、準備しておいてくれ」


――1週間後、某所バス停にて


みほ「お姉ちゃんには、ここで待っててねって言われたけど……」

ケイ「ハーイ! ミホ!」

ダージリン「おはようございます。みほさん」

エリカ「おはよう」

みほ「みなさん!」

ケイ「あのニシズミ・スタイルを学べるチャンス、みすみす逃すわけにはいかないわ!」

ダージリン「こんなことわざをご存知? 日の照っている間に干し草を作れ。やってきた好機は、活かさなければならないということよ」

エリカ「この経験、いずれ黒森峰を率いる者として、必ず役立てて見せるわ」

蝶野亜美「みんな、おはよう! よく来てくれたわ」

みほ「教官!」

亜美「私が指導官として、きょうの体験教室を任されたの」

エリカ「現役の自衛官でもある蝶野さん直々のご指導とあれば、気合いが入ります」

亜美「それではきょうの予定を説明するわね。みほさんは知っているけど、西住流には独自の理念に基づいた訓練があるの。それを模した内容として、あなたたちは西住流の門下生として、1日訓練を受けてもらうわ」

ダージリン「撃てば必中、守りは固く……」

ケイ「進む姿に乱れなし、というやつね」

亜美「今回は全員が戦車道経験者ということで、それに関する基本的なことは省略。いきなり中級以上のカリキュラムを対象にするから、覚悟してね」

エリカ「のぞむところです」

亜美「いい返事ね! それじゃ早速……といいたいけど、最初に確認しておきたいことがあるの」

亜美「家元のご指示でね。今回は知り合い同士ばかりでしょう? 厳しいかもしれないけど、過度に慣れ合わないようちょっと釘を刺しておく必要があるのよ」


みほ「どういうことですか?」

亜美「この体験教室の間は、絶対に笑ってはいけないということよ」

みほ「えっ」

ケイ「あっ」

エリカ「まさか」

ダージリン「(絶句)」


プップー プシュー


亜美「バスが着いたわ。それじゃ、これに乗った瞬間から訓練開始ね」


――移動中(バス内)


亜美「しばらくバス移動になるけど、我慢して頂戴」

4人『…………』

亜美「どーしたのよみんな。さっきの元気はどこへ行ったの?」

みほ「……」


ケイ「どういうことなの……」

エリカ「……絶対に西住流と関係ないのがやってくる……」

ダージリン「わたくし、いますぐ帰りたい……」


プップー プシュー


みほ「あ、ほかの生徒が乗ってきました」

カチューシャ「ノンナ、西住流が体験できるなんて楽しみね!」ザッ

ノンナ「そうですね。わたしもそう思います」ザッ

ケイ「あたしたちのほかにも参加者がいたのね」

ダージリン「ええ。だけど油断はできませんわ」

カチューシャ「プラウダの戦闘教義(ドクトリン)と西住流のスタイルって、相性ピッタリだと思うのよね」

ノンナ「西住流の研究は、今後のプラウダの成長に欠かせないものになるでしょう」

カチューシャ「そういうこと。ところでノンナ、このバスの料金っていくら?」

ノンナ「それほど遠くありませんから、140円でしょうね」

ノンナ「あ、でも同志カチューシャはこども料金の70円でいいですよ」

デデーン 全員 アウトー

アヒルさんチーム『根性ーーーーッッ!!!』ドタドタ

みほ「やっぱりーーっ!」

近藤「笑ったやつには根性注入だ! そーーれッ!!」

『そーーれッ!!』

みほ「うわあっ!」スパーン
ケイ「アオッ!」スパーン
エリカ「ぶぎっ!」スパーン
ダージリン「やああっ!」スパーン

ダダダ スッ スッ

ダージリン「そして何事もなかったかのように後ろの座席に……」

ケイ「棒に『西住流根性』って書いてあったわ……」

エリカ「何のちがいが……いや、考えちゃダメね」

カチューシャ「よくもカチューシャをぶじょくしたわね! ノンナといえどもただじゃおかないから!」

ノンナ「しかし……『ちびすけのカチューシャ』の異名を持つ身としては……」

カチューシャ「誰がそんな名前!『地吹雪のカチューシャ』でしょうが!!」


ノンナ「その二つ名は、誰も呼んでいません」

カチューシャ「えっ」

みほ「えっ?」

ケイ「ホワッツ!?」

エリカ「そうなの?」

ダージリン「初耳だわ」

ノンナ「せっかくなので、プラウダの同志が呼んでいる呼称をまとめてみました」スッ

『合法ロリ』

『ガリバー旅行記』

『勝手にスモールライト浴びた女』

『具のないピロシキ』

『カッちゃん』

『発育不良』

『女王アリ』

『こびとづかん』


『チキン・リトル』

『チビのツリ目』

『あのチビ』

『チビ』

『チ~ビ』

『もやしにも劣るチビ』

デデーン 全員 アウトー

みほ「ああっ!」スパーン
ケイ「んんッ!」スパーン
エリカ「ねっ!」スパーン
ダージリン「ふうッ!」スパーン

カチューシャ「もうやめて……」グスッ

ノンナ「ほかにも『侵略!ホタルイカ娘』や、子供のころから容姿が変わらないことから『ウラシマ効果』など……」

カチューシャ「うう……うええ~~……」メソメソ

ノンナ「あらあら、同志カチューシャ。公共の乗り物の中で騒いでは……」

カチューシャ「うわあ~~ん!! 全員しゅくせーしてやる~~~~っ!!」ビエーン


ノンナ「困りましたね。まわりの迷惑になるから、次で降りましょうか」


プップー プシュー


エリカ「真顔でなんちゅうことを……」

ダージリン「ノンナさんにあんな一面が……」

みほ「あ、入れ替わりで誰かが乗ってきました」

エルヴィン「ゆき~の進軍 氷を踏んで~♪」ザッ

優花里(パンチパーマ)「ど~れが河やら 道さえ知れず~う♪」ザッ

デデーン ケイ ダージリン アウトー

ケイ「わはははは!」スパーン
ダージリン「イッ!」スパーン

優花里(パンチパーマ)「エルヴィン殿の帽子、いつみても素敵です!」

エルヴィン「これかい? かのロンメル将軍のトレードマークを模したものさ」

優花里(パンチパーマ)「ポイントは、ドイツ軍帽のつばに、イギリス軍の防塵ゴーグルがかかっているところですね!」

エルヴィン「そうとも。敵から鹵獲(ろかく)したものをあえて身につけることで、彼の歴戦ぶりを示したわけだ」


優花里(パンチパーマ)「うらやましい! もっとよく見せてください!」

エルヴィン「もちろん。いま帽子を脱ぐからじっくり見てくれ」パサッ

エルヴィン(パンチパーマ)「ホラ」スッ

デデーン 全員 アウトー

みほ「うわあ!」スパーン
ケイ「もうっ!」スパーン
エリカ「ああっ!」スパーン
ダージリン「どうしてッ!」スパーン

エルヴィン(パンチパーマ)「おっ、そこにいるのは西住隊長じゃないか」

みほ「は、はい……」プルプル

エルヴィン(パンチパーマ)「この髪型、似合うかい? グデーリアンのお店で仕上げてもらったんだ」

優花里(パンチパーマ)「私もエルヴィン殿と、おそろいにしたんです!」

エルヴィン(パンチパーマ)「8500円だったぞ」

デデーン 全員 アウトー

みほ「高いっ!」スパーン
ケイ「高い!!」スパーン


エリカ「ムダな出費!」スパーン
ダージリン「アア!」スパーン
(※床屋のパンチパーマの料金はマジでそんな感じです)

優花里(パンチパーマ)「あっ、そろそろ目的地です」

エルヴィン(パンチパーマ)「じゃあお先に。われわれはここで降りるからな」


プップー プシュー


亜美「停車するのはここが最後だから、次が訓練場よ」

みほ「はあ……」

ダージリン「あ、また誰かが乗って……」

杏「いやっほー、西住ちゃんたち」ザッ

柚子「おはようございます」ザッ

桃「奇遇だな」ザッ

みほ「会長!」

ダージリン「みなさんも、西住流の訓練を?」

柚子「いえ。行き先は一緒ですが、今回は戦車道連盟の関係で呼ばれたんです」


桃「わが校の戦車道がもっと良くなるようにと、連盟にかけ合い、連名するためにやってきたのだ」

杏「お、いいね~座布団1枚!」


ピンポーン 河嶋 グッド!


桃「!?」

4人『!?!?』

磯辺「河嶋先輩を祝福だッ!」

河西「そーれっ♪」

近藤「そーれっ♪」

佐々木「それそれそーれっ♪」

桃「お、お前たち何を……ムグ……ウウッ!」ムギュー

桃「おいっ!ど、どこ触ってんんっ!……やっ、やぁ……」スリスリ

桃「ひあっ! あんっ! あぁ……やめてぇ……ちょくせつ、さわらないでぇ……」モミモミ

デデーン 西住 ケイ アウトー


みほ「うっ!」スパーン
ケイ「ちょっ!」スパーン

柚子「よかったね(?)桃ちゃん」

桃「ハァ、ハァ……桃ちゃんと……ゆーな……」グッタリ

エリカ「何やってんのよ……」

ダージリン「朝っぱらから見てはいけないものを見た気がしますわ……」

ケイ「のっけから先が思いやられる……」

エリカ「……?」(上を見る)

ケイ「どうしたの?」

エリカ「ねえ、あれって」


< △ △ △ △ >


ケイ「バスの吊り皮? それがどうしたの?」

エリカ「よく見てよほら」


< △ △ △ ▲ △ >



エリカ「中におにぎりがねじこまれてる……」

ケイ「ムハッハ!」

デデーン ケイ アウトー

ケイ「ウォッ!」スパーン


プップー プシュー


杏「んじゃまたね~」

柚子「訓練、頑張ってくださいね」ペコリ

亜美「さあ着いたわ。これから西住流の戦車道訓練を行うから、気合いを入れなさい!」


――応接室


亜美「まずは家元にご挨拶ね」スタスタ

みほ「いきなりお母さんと会うのか……緊張しちゃう」

コンコン ガチャ


亜美「失礼します。西住流戦車道体験教室の生徒4名を連れてまいりました」

しほ「みなさん。よく来てくれました。私が西住流戦車道の家元、西住しほです」

しほ「西住流は戦車の腕前のみならず、教養、作法、たたずまいなど、戦車を通じて良き女性となるための、日々の暮らしにも役立つ要素がたくさんあります」

しほ「1日という短さですが、ぜひ大事なことを学び、活かしてほしいと考えます」

4人『はいっ!!』

しほ「それでは早速、抜き打ちで始めます。蝶野一等陸尉」

亜美「はい」

ケイ「何を始めるの?」

亜美「西住流の戦術は、戦車のことをすべて頭に入れて、その性能・状況に合わせた迅速な対応を行うというもの。判断も素早くないといけないわ」

亜美「そこで、戦車についての知識をテストするから、答えてね。まずはケイさん」

ケイ「は、はいっ」

亜美「いわゆるシャーマンこと、M4中戦車の車体装甲は?」

ケイ「ええっと……前面51ミリ、側面38ミリから45ミリ、後方38.1ミリです」

亜美「大正解! 自分の学校の戦車だから簡単すぎたかしら」


ケイ「いえ、そんな……」

みほ(小さいころよくやったなあ……この訓練)

亜美「続いて、ダージリンさん。センチュリオンの主砲は何ポンドまで?」

ダージリン「はい。戦車道レギュレーションの範囲ならMk-Ⅰ型に絞られるため、17ポンドです」

亜美「満点の解答ね! それも即答とは素晴らしいわ! さすが聖グロリアーナの学年トップ!」

亜美「それじゃ、次は西住さん」

みほ「はい」

亜美「西住流戦車道家元、西住しほさんのスリーサイズは?」

デデーン 西住 アウトー

みほ「な゛っ!」スパーン

亜美「西住の娘なら、これくらい朝飯前よね」

みほ「ごめんなさい……わ、わかりません……」

亜美「あらそう? 残念。それじゃ、いまから答えを言うから覚えてね」

みほ「!?」


亜美「身長168センチ、体重61キロ」

亜美「スリーサイズは上から94・66・97よ」

デデーン 全員 アウトー

みほ「見栄を張りすぎ!」スパーン
ケイ「ダイナマイトね!」スパーン
エリカ「何でよっ!?」スパーン
ダージリン「うああっ!」スパーン

しほ「ムグッ」(唇を噛みしめる)

亜美「それじゃあ次は逸見さん。もう一度西住しほさんについての問題よ」

エリカ「え、ええ……」

亜美「知ってのとおり、しほさんには2人の子供がいるわね」

エリカ「はい」チラッ

みほ「?」

亜美「その2人が小さい頃『わたしたちはどうやって生まれてきたの?』と聞いたとき、しほさんは何と答えたでしょうか?」

しほ「ブッ!」

デデーン ケイ 逸見 アウトー


ケイ「何の話ッ!」スパーン
エリカ「戦車と関係なアアン!」スパーン

亜美「親なら誰もが通る、ちいさな試練といったところかしら。だけどそこは西住流!意外な言葉で切り抜けたそうよ」

エリカ「あ、愛情をたくさん受けて生まれてきた、でしょうか……」

亜美「残念、ちがうわ。せっかくだからこれはみんなで考えてみましょうか」

ダージリン「みほさん、覚えてます?」

みほ「いえ、もう……」

エリカ「無難にコウノトリとかキャベツ畑とかじゃないってことよね」

ケイ「ギブアップ。お手上げだわ」

亜美「さすがに難しかったかしら。答えは『夫と一緒に街を歩いていたとき、自販機でコーヒーを買おうとボタンを押したら、缶コーヒーの代わりにあなたたちが出てきた』よ」

デデーン 全員 アウトー

みほ「お母さーん!!」スパーン
ケイ「マジでwww」スパーン
エリカ「ひどいwww」スパーン
ダージリン「あんまりよオウン!」スパーン


しほ「…………ウフフッ」(目をそらす)

亜美「一度に2人出てきた計算になるわ。そのへんが西住流たるゆえんね」

エリカ「意味わかんない!」

亜美「さあ、ひとまずこれでテストは終了。みんな西住流を学ぶにふさわしい資質を備えていましたね、家元」

しほ「え、ええ……ゴホン! それではみなさん頑張って」

亜美「じゃ、移動しましょうか」スタスタ


――控え室


亜美「それぞれ机に名札があるから、それにしたがって座っててね。いったん休憩をはさむから、しばらく待機となるわ」

ガチャ バタン

ダージリン「ひどい情報ばかりでしたわ……」

逸見「家元のイメージが音をたてて崩れていく……」

みほ「お母さん……」

ケイ「ねえ。家元といえばあそこの壁」スッ



< 『西住流戦車道家元、西住しほ』 >


エリカ「名前と顔写真がかかってるのね」

ダージリン「あら、となりにもいくつか写真が」


< 『島田流戦車道家元、島田千代』 >


みほ「愛里寿ちゃんのお母さんって、こんな人なんだ」

ケイ「強かったわね。あの子」

エリカ「まだあるわ」


< 『五十鈴流華道家元、五十鈴百合』 >


みほ「華さんのお母さんも!?」

ダージリン「玄関にきれいなお花があったし、なにか家元同士での交流があるのかしらね?」

みほ「最後は……誰だろう」



< 『秋山流パンチパーマ道家元、秋山淳五郎』 >


デデーン 西住 ケイ ダージリン アウトー

みほ「あいっ!」スパーン
ケイ「どへっ!」スパーン
ダージリン「ま゛っ!」スパーン

エリカ「なんの流派なのよ!」

みほ「よく見たらこの部屋、ヘンなものばかり置いてあります……」

ダージリン「ということは当然……」

ケイ「引き出しの中にも何かが入っていることは間違いないわね。ミホ、どう?」

みほ「あ、わたしの引き出しに何かが……」ガラッ


<『XY(ゼクシィ) 19××年 ○月号』>


エリカ「古っ!! どーして昔の結婚情報雑誌なんかが置いてあるワケ!?」
(※昔はこういう表記だったらしいです)

みほ「いちおう、心当たりはありますが……古すぎますね……」

ダージリン「それにしても、ずいぶん表紙も日に焼けて……」


ケイ「ちょっと! ちょっと待ってよこの表紙!!」


< 『特集:戦車でつながる縁!! しほサン結婚おめでとう!!』 >


デデーン 全員 アウトー

みほ「うわッ!」スパーン
ケイ「アウチ!」スパーン
エリカ「きゃんっ!」スパーン
ダージリン「めええっ!」スパーン

ケイ「オーマイガ……体型がまったく変わってない……」ペラッ

ダージリン「ずいぶんたくさんの記事を組んでもらってるわ。西住流の家元ってやはりスゴイのね」ペラッ

みほ「若いころのお母さん……。ちょっとお姉ちゃんに似てる……」ペラッ

エリカ「見て。『わたしからあなたへのコーナー』ですって」ペラッ

ダージリン「妻が、新しい家族となった夫に対して望むこと、だそうよ」ペラッ

ケイ「西住家の家訓を守るべしとか、そういう厳しいものかしら?」ペラッ


< 『朝食は、必ず和食(ウインナーは可)』 >



デデーン 西住 ケイ アウトー

みほ「わふんっ!」スパーン
ケイ「かわいいwww」スパーン

みほ「ほかの引き出しには何かありましたか?」

ダージリン「いえ、とくに何も……」ガラッ

ケイ「あたしのとこにDVDが……」ガラッ

エリカ「それを見るのはちょっと待った方がいいわね。心の準備が……」

みほ「そうですね。すぐというわけには……でも、どちらもいつかは見ないといけないですから……」

コンコン ガチャ

亜美「みんな、外に出て頂戴。いよいよ西住流戦車道の実践訓練をはじめるわ!」


――練習場


亜美「今回のルールは西住流独自の練習メニュー『消耗戦』よ」

ケイ「ホワッツ?」

ダージリン「みほさんは経験が?」


みほ「小さい頃にやったことがあります。確かこれは長期戦を想定した練習で、基本的には同種同型の戦車で戦うんですが……」

みほ「試合開始の前に砲撃や走行を繰り返させて弾丸と燃料を消費し、ある程度故障させやすくしておくんです」

亜美「そう。これは、戦車そのものの腕前のほかに、整備の技術を比べるためね!」

エリカ「なるほど。いくら乗員が優秀でも、戦車自体の不備が撃破につながることは珍しくない」

ダージリン「それに、完全な状態でない戦車でも勝利をつかむための訓練にもなるわ。さすが西住流」

ケイ「おもしろいチャレンジだわ!」

亜美「ちょうどいいわ。試合の前に、あなたたちの戦車の整備主任を紹介するわね」

ホシノ「やあ」

みほ「ホシノさん!」

ホシノ「設備、いいものばかりだったよ。存分に腕をふるわせてもらった」

ホシノ「あたしだけじゃなく、自動車部のみんなで点検に点検を重ねたんだ。きっといい動きをするとおもう」

エリカ「彼女に太鼓判を押されたなら、説得力がちがうわね」

みほ「これは勝てるかも!」


まほ「それはどうかな」

みほ「お姉ちゃん!?」

エリカ「隊長!?」

まほ「消耗戦の相手は私だ。西住流の師範代として、よろしく頼む」

まほ「それから、こちらがわがチームの戦車整備主任」スッ

しほ(タンクトップ)「みなさん初めまして。整備担当のシホノです」

デデーン 全員 アウトー

みほ「れッ!」スパーン
ケイ「ワウッ!」スパーン
エリカ「ふぇっ!」スパーン
ダージリン「ごおっ!」スパーン

しほ(タンクトップ)「西住隊長、頑張ってくださいね」

まほ「ああ。シホノさんの整備なら安心して戦える」

エリカ(何なのよこのやりとり……)

みほ(ホシノさんと同じ格好……)

亜美「それでは各選手、乗り込んでください」



――戦車内


ケイ「試合の前に走りまわるって聞いたけど……?」

みほ「お互いが並走してコースを1周します。その間にいろいろな課題があり、相手より早くこれをクリアしないといけません」

みほ「なぜなら、課題をすべてクリアしないと相手に攻撃してはならないからです」

エリカ「思ってた以上に厳しいわね」

ダージリン「なるほど。この課題に手こずると消耗が激しくなり、不利になるというわけね。よく考えてある」

《 各戦車は、発進してください 》

ケイ「合図があったわ」

みほ「ダージリンさん、最初は慣らす感じで速度を上げつつ、相手とはこの戦車1台分くらいの距離を保ってください」

キュロキュロ…… ドッドッド……

ダージリン「第1地点のマークが見えたわ。……アレはなに? 看板があるけど」

<『車長はここから顔を出すこと』>

みほ「?」ヒョコッ


まほ「勝負だ。みほ」ヒョコッ

みほ「お姉ちゃん!」

まほ「どちらが先に課題をクリアできるかな?」

みほ「受けて立ちます!」

まほ「よく言った。いくぞ!」

みほ「はいっ!」

まほ「第1の課題は『パン食い競争』だ!!」

ケイ「!?」

エリカ「戦車関係ないじゃない!」

まほ「西住流に逃げるという選択肢はない! アレを見ろ!」バッ!

< ○⌒ ○⌒ ○⌒ プラーン >

ケイ「樹にパンがぶら下がってる……」

まほ「不安定な戦車の上で、はたしてパンをつかみ取ることができるか!?」ブロローン!

ダージリン「ここでスピードを上げた!?」

まほ「はムッ!」パクッ


みほ「くッ! 速い!」ドドド

みほ「それでもムグッ!」パクッ

ケイ「ミホも取った!」

みほ「まーひりんはんふひーほをあへへふらはい!」モグモグ
(※:ダージリンさん、スピードを上げてください!)

まほ「モグ……やるな、みほ。だが第2の課題『平均台』で一気に差をつける」ドドド

みほ「負けません!」ドドド

エリカ「いやいやコレってただの障害物競争じゃない!」

ケイ(ここの設備……かなり年季が入っているわ。もしかして、ミホが小さいころにやったっていう意味は……)

ダージリン(みほさんたちを戦車で遊ばせようとした家元のアイデアなんじゃ……?)


――数十分後


まほ「ハァ、ハァ……」

みほ「ハァ、ハァ……」

まほ「西住流直轄の戦車と互角に立ち回るとは……みほの整備係は良い仕事をする」


みほ「うん。ホシノさんや、自動車部のみんなのおかげだよ」

まほ「まさか、戦車でもなわとびを跳べたとはな……」

みほ「わたしも驚きでした」

エリカ「どーやったのよ……」

まほ「だがこれが最後の課題だ。あれを見ろ」

<  ●  >

みほ「くす玉!?」

まほ「特殊カーボン加工を施してある。あれに向かって砲撃をし、どちらが先に割るか勝負だ!」

みほ「ケイさん! エリカさん!」

エリカ「装填完了!」ガシャコン

ケイ「オーライ! ミホの期待、こたえてみせるわよ!」グッ

まほ「撃てーーッ!」

みほ「撃て!」

ドーーン!!

ドーーン!!


<  ★ パカッ! >

みほ「開いた!」

ケイ「あたしたちのほうが早かったわ!」

ダージリン「中から垂れ幕が出てきたわ! なんて書いてあるのかしら」

バサッ!!


<『 ☆ 全 員 ア ウ ト ☆ 』>


ケイ「なんでwww」

エリカ「理不尽すぎ!」

デデーン 全員 アウトー

アヒルさんチーム(八九式戦車)『根性ーーーーッッ!!』ドドドド

4人『!!??』

磯辺「戦車ごと根性だ! そーーれッ!」

『そーーーーれッ!!!!』ズドーン!!


みほ「うわぇう!」ズズーン!
ケイ「おおっ!」ズズーン!
エリカ「ええっ!」ズズーン!
ダージリン「ッ!!」ズズーン!

ズズ… プシュー!

みほ「ああっ! 履帯が切れた!」

シャキン シュパッ!

《 訓練チーム戦車、擱座(かくざ)判定のため戦闘不能 !よって、師範代チームの勝利! 》

ケイ「え?」

ダージリン「……わたくし達、負けましたの?」

《 みんな、よくやったわ! 戻ってきていいわよー! 》

エリカ「ええ~~っ……」

みほ「あ、お姉ちゃん……」

まほ「くッ! 試合には勝ったが、勝負には負けた!」ダン!

ケイ「なんでくやしそうなのよ……」

ホシノ「惜しかったね、みんな。だが全力を尽くし、戦車本来のスペック以上の性能を引き出してくれていた。あたしは誇りに思う」


ダージリン「え、ええ……まあ……」

しほ(タンクトップ)「さあ、あとの修理は私たち整備班にまかせて、ゆっくり休んでくださいね」

デデーン 西住 逸見 アウトー

みほ「うう゛えっ!」スパーン
エリカ「いい゛っ!」スパーン


――控え室


みほ「はあ……」

ダージリン「疲れた……」

エリカ「結局は戦車で戦わなかったし……」

ケイ「なんだったのかしらシホノさんって」

みほ「ヌフッ」

デデーン 西住 アウトー

みほ「でっ!」スパーン

ケイ「ごめんwwwミホそんなつもりじゃエフフww」


デデーン ケイ アウトー

ケイ「ワ゛ッ!」スパーン

エリカ「何やってんの……」

コンコン ガチャ

アンチョビ「やあ来たぞ! ドゥーチェのおでましだ!」

ペパロニ「おーーっす!」

カルパッチョ「お久しぶりですね」

みほ「アンツィオ高校のみなさん!」

アンチョビ「こちらへどうぞ、先生」スッ

亜美「どうも。よろしくね」スタスタ

ケイ「ホワッツ? 教官が?」

エリカ「白いブラウスとロングスカートに着替えているわ」

ダージリン「まるでピアノの先生みたい」

みほ「教官、こんな服も持ってるんだ……」

カルパッチョ「西住流には、食事の作法も含まれているらしいですね」


アンチョビ「そこで、われわれの料理を用いてマナーの勉強をすることになった」

ペパロニ「パスタ用意するからちょっと待ってろよー!」

亜美「聞いてのとおりね? 西住流たるもの、無作法なふるまいは許されません」

亜美「よって、この昼食は単なる休憩とせず、西住流マナー講座の時間とします」

ダージリン「みほさん、あなたもお家でこんなことをしてたの?」

みほ「お箸のしつけはとくに厳しかった思い出が……」

ケイ「あたし、少し苦手かも……不安だわ」

ペパロニ「ハイどうもおまちどう! アンツィオ特製ナポリタンがあがったよ!」

亜美「では、パスタの食べ方をやってみましょう。カルパッチョさん」

カルパッチョ「はい」クルクル スッ

カルパッチョ「フォークに巻きつけて、ある程度まとまったら口に入れます」パクッ

亜美「よくできました。ここのポイントは、最初に巻くとき。フォークの端に2~3本だけ巻くのが大事です」

亜美「最初からたくさんのパスタを絡ませると、巻きつけたとき予想以上に大きくなりすぎて、口に入らなくなってしまいます」

亜美「ではみなさんも実践してみてください」


ケイ「へえ~~っ。勉強になったわ」クルクル スッ

エリカ「こんなコツがあったなんて」クルクル スッ

ダージリン「本当だわ。はじめは少なすぎるように感じるけど、最終的にちょうど良い大きさにおさまるのね」クルクル スッ

みほ「小さい頃に聞いたことがある……うん。思い出した」クルクル スッ

亜美「みなさんよくできました。では、悪い例はなんでしょうか? アンチョビさん」

アンチョビ「そりゃもちろんすすって食べることさ」

亜美「そのとおりです。では今から、私がそれを実践します。決して真似をしないで下さいね」

みほ「!?」
ケイ「!?」
エリカ「!?」
ダージリン「!?」
アンチョビ「!?」
カルパッチョ「!?」
ペパロニ「!?」

亜美「ズズッ ズーーーーッッ!!」

亜美「ズロロロロ!!! ズボッ!! ズルズルーーッ!!!」

デデーン 全員 アウトー


みほ「ああう!」スパーン
ケイ「ノンッ!」スパーン
エリカ「げえっ!」スパーン
ダージリン「きゃん!」スパーン

ダージリン「せっかくの白い服が台無しに……」

亜美「ズロロ! ズボボ! ズズビゴーーッ!! ……ふう。こんなことを、してはいけませんよ?」ニッコリ

ケイ(口のまわりが真っ赤……)

亜美「それでは次の講座です。準備をしてください」

ペパロニ「……は、はーい! 今度はアンツィオ名物の特製マルゲリータだぞー!」

亜美「ピザといえば、好みでタバスコをかける人がいますね。あなたたちはどう?」

ケイ「ウチじゃ、ピザといえばタバスコがつきものよ!」

アンチョビ「うちじゃ置いてないし、かける習慣はないなあ。タバスコはアメリカ生まれの調味料だからな」

みほ「へえ~」

亜美「食事のマナーとして、調味料は適量がエチケットです」


亜美「そう。たとえばこんな風にかけすぎるのはよくありません」ドバッ バッ!

4人『!?』

亜美「いくらそれが好きだからって、料理本来の味が分からなくなるまでかけるのは、食べ物に対して失礼だからです」パクッ

亜美「作ってくれたひとに感謝しグブフォ!! ゼエホッ! ゲホゲホッッ!!」

デデーン 全員 アウトー

みほ「ワア!」スパーン
ケイ「オオウッ!」スパーン
エリカ「シッ!」スパーン
ダージリン「ギェ!」スパーン

亜美「ゼェ…ゼェ…わかりましたね? ゲホ……そ、それではこれでマナー講座を終了するから、しばらく休憩とします……」ヨロヨロ

ガチャ バタン

アンチョビ「あー……じゃあわたしたちもこれで失礼するが……」

ペパロニ「あの人、大丈夫か?」

カルパッチョ「あとで、何か差し入れに行きましょうか……」

ガチャ バタン

みほ「教官のあんな姿、初めて見ました……」


ダージリン「そうね。いろんな意味で意外すぎたわ……」

ケイ「豪快な人だと思っていたけど、ここまでとは……」

エリカ「身体を張りすぎじゃない……。偉い人なんでしょ?」

みほ「ええ……。自衛隊の一等陸尉ですし、わたしたちが大学選抜チームと戦ったときは審判長をしてましたから……」

ケイ「少なくとも戦車道連盟の……ってアラ?」


 『財団法人 日本戦車道連盟』パッ


エリカ「ッ!? なに?」ビクッ

ダージリン「急にモニターの画面がつきましたわ」

 『大洗女子学園生徒会が案内する西住流戦車道』

みほ「生徒会が!?」

エリカ「一緒にバスに乗ってたのはこういうことだったのね」

 『柚子「戦車道においてもっとも由緒ある流派、西住流」』

 『柚子「その家元、西住しほさんは、日本戦車道連盟の役員という重要な職務にたずさわっています」』


ケイ「あらためて見ると、ミホのお母さんはやっぱりすごい人だわ」

 『柚子「戦車道連盟では、戦車道の普及と発展を目指すため、戦車に関する相談窓口を設け、さまざまな意見を取り入れています」』

 『柚子「今回取材に協力してくれるのは、そんな日本戦車道連盟の相談窓口担当、敏腕事務員の河嶋桃さんです」』

 『桃「……」キリッ』

デデーン 西住 ダージリン アウトー

みほ「河嶋さんっ!」スパーン
ダージリン「何でっ!」スパーン

プルルル プルルル

 『桃「はい、こちら日本戦車道連盟」ガチャ』

 『あのう……戦車のことでちょっとお伺いしたいんですが』

 『桃「は、はい……なんでしょう」』

 『娘が、タンカスロンに夢中になってるんです!』
 (※タンカスロン:戦車道連盟非公認の、豆戦車・軽戦車限定の野試合。漫画版「リボンの武者」ではこの競技でたたかう)

 『桃「タ、タンカ!? 娘さんがケガをしたんですか!?」』


エリカ「どーいう耳してんのよ」

ケイ「ムグッ」(唇を噛みしめる)

 『まだケガはしてないんです。でも、とにかくタンカスロンは危ないって聞いて……』

 『桃「は、はい! そうなんですね! タンカスロンは危ないですね!」』

 『相談したら、連盟公認のちゃんとした戦車道をやるのがよいといわれるんですが、私にはどうもわからなくて』

 『それで、戦車道とタンカスロンとの違いを教えてほしいんですが……』

 『桃「…………」』

エリカ「固まったわ」

ダージリン「目が泳いでますわ」

ケイ「知らないのね」

 『……あの、もしもし?』

 『桃「あ、は、はい! 違いですね! 確かに違いますね!」』

 『戦車道の選手と、タンカスロンの選手は、何が違うんですか?』

 『桃「せ、戦車道はふつうのひとが選手なんですが……」』


 『桃「タンカスロンは……その……せ、世間からタンカス扱いされているクズのような連中がやる競技で……」』

デデーン 全員 アウトー

みほ「ひどいウッ!」スパーン
ケイ「ひどすぎイッ!」スパーン
エリカ「ごまかすにしてももっとこうアア!」スパーン
ダージリン「そんなウオアッ!」スパーン

 『なんてことを言うんです! あんまりだわ!』

 『桃「あ、そ、そうでした。ごめ、ごめんなさい」アタフタ』

 『もういいです! それじゃ!』ガチャン!

 『桃「…………」ショボーン』

ダージリン「なんて悲しそうな顔を……」

ケイ「もっとデキるイメージがあったんだけど彼女」

みほ「よく、そう言われます……」

 プルルル プルルル

 『桃「はい、こちら日本戦車道連盟」ガチャ』

 『アスパラ「吾が輩はBC自由学園のアスパラガスざます」』


 『桃「えっ!? ビッチ自由学園!?」』

エリカ「だからアイツの耳おかしいでしょ!!」

デデーン 西住 逸見 アウトー

みほ「な゛ッ!」スパーン
エリカ「うぐッ!」スパーン
(※岡山の学園艦。アスパラガスは漫画版「リボンの武者」に登場)

 『アスパラ「B!C!ざます! まさか存じ上げないの?」』

 『桃「い、いえ……そんなこと……」』

 『アスパラ「なら言ってごらんなさい! わがBC自由学園のBCとは何の略ざます!?」』
 (※実際はフランスの都市「ヴィシー」を単にもじったもので、公式設定でも特に意味はありません)

 『桃「えっ!? びー……びーしー……」』

 『アスパラ「ほんとうにわかってるんでしょうね!?」』

 『桃「は、はい……び、びーしー、びじー……」』

エリカ「ロクなこと言わないのがもうわかるわ」

ダージリン「こんな言葉を知っている? 下手な言い訳はするくらいなら、しないほうがマシ」


ケイ「ジョージ・ワシントンね!」

 『桃「び、びーしー……びーし、びー……」』










 『桃「び、美人は、ちょっぴり……」』


デデーン 全員 アウトー

みほ「ぐッ!」スパーン
ケイ「しッ!」スパーン
エリカ「くっ!」スパーン
ダージリン「うごッ!」スパーン

 『アスパラ「ちょっぴりとは何ざます! たくさんいるざます!!」』

 『桃「す、すみません。間違えました。び、びー、しー、びーしー……」』











 『桃「び、ビッチのチャンピオン……」』


みほ「ブッ!」

ダージリン「ブフゥ!!」

エリカ「マジで言ってるの!!?」

ケイ「うわはははwww」

デデーン 全員 アウトー

みほ「ええッ!」スパーン
ケイ「ううッ!」スパーン
エリカ「よおっ!」スパーン
ダージリン「ふッ!」スパーン

 『アスパラ「ひどい屈辱ざます! 政治的に許されないわ!!」』ガチャン!

 『桃「…………」ショボーン』

ダージリン「だから何であんなに悲しそうな顔を……」

ケイ「残念だけど、彼女は電話番には向いてないわね」


みほ「ですよね……」

 『柚子「次は、戦車道の実践をみてみましょう。角谷さーん?」』

 『杏「はーい。こちらは、戦車道連盟所有の訓練所です」』パッ

みほ「あ、会長」

 ドーン! ドーン! ズズーン…

 『杏「一糸乱れぬ隊列に、正確無比な射撃! まさにこれぞ西住流ですね!」』

 『杏「では、選手のひとにお話を聞いてみましょう」』

 『杏「西住流の後継者にして、戦車道の国際強化選手、西住まほさんです」』

 『まほ「よろしくお願いします」』

 『杏「ところでまほさん。あなたにとって、西住流戦車道とは何でしょうか?」』

 『まほ「そうですね。その神髄は、大きく4つにまとめられると思います」

ケイ「おっ! 意外なところでいいこと聞けるかもね」

ダージリン「これは聞き逃せませんわ」

 『まほ「1つ。あきらめないこと」』

 『杏「はい」』


 『まほ「2つ。どんな状況でも逃げ出さないこと」』

 『杏「なるほど」』

 『まほ「3つ。エリカはアウトなこと」』

 『杏「確かに!」』

エリカ「えっ」

デデーン 逸見 3アウトー

エリカ「ウソ……」

デデーン 西住 ケイ ダージリン アウトー

みほ「うっ!」スパーン
ケイ「オウ!」スパーン
ダージリン「ああっ!」スパーン

エリカ「アッ! ウッ! たいちょウグウッ!!」ズパーン! ズパーン!! ズパーン!!!

 『まほ「そして4つ目。最も大事なことは、仲間との絆です」』

 『杏「どうもありがとうございました~!」』

ケイ(いいこと言ってるんだけど……)チラッ

エリカ「うっ……うぅ……」プルプル


ダージリン(逸見さんを見たら4つ目の言葉は全く入ってきませんでしたわ……)

 『まほ「なお、仲間との絆を確かめるには、続きを見てくれ」』

 『杏「別添のディスクを入れてね~」』

エリカ「?」

ケイ「あたしの机にあったDVDってこと?」ガラッ

ダージリン「ここで動画は止まっているし、そのようね」

みほ「じゃあ、再生してみます」ウイーン


 『 絆 ~ 先輩への手紙 ~ 』パッ


4人『!!??』

 『サンダース大学付属高校 ケイ様』

 『ケイ隊長へ。あたしが戦車道を始めてから、もう2年がたとうとしています』

 『おちこぼれだったあたしが、こうして副隊長になることができたのは隊長のおかげです』

ケイ「アリサ……?」

 
 『覚えていますか? 1年生のころ、あたしのせいで試合に負けるということがありました』

 『みんなに責められ、落ち込んでいたとき、隊長があたしに言ってくれた言葉があったんです』

 『いい? アリサ。最初のうちはそういうミスをするものなの。でも、あなたは良い資質をひとつ持っているわ。それはね、あなたなりに自分の判断を信じて戦いぬいたってこと。だから頑張ってね。って』

 『あたしは、何のとりえもない自分がイヤでしょうがないっておもっていたけど』

 『隊長は、あたしにもいいところがあるんだって教えてくれました』

 『それからすぐに変わることができたわけじゃないけど、隊長があたしに目をかけてくれるたびに、少しずつ、自分が好きになっていく気がしました』

 『いまではあたしにも後輩ができ、少しでも隊長みたいになれたらいいなとおもって接するよう心がけています』

 『いつも優しく見守ってくれている隊長』

 『ときどき厳しいときもあるけど、良いところをほめてくれる隊長』

 『戦車道そのものとは別の、もうひとつの理想。あこがれの隊長』

 『あのとき隊長が言ってくれたひとことが、あたしにとっての宝物です』

 『あたしがいまでもがんばれるのは、隊長のおかげ。だから、いまここで、あらためてあなたに感謝の気持ちを送ります』



 『大好きなケイ隊長へ サンダース大学付属高校戦車道副隊長 アリサ』


ケイ「……グスッ……もう、バカねいきなり……な、泣いちゃうじゃない……」ポロポロ

ダージリン「あら涙もろいのね。でも、ケイさんのそういうところが好きよ」

みほ「ケイさん、ほんとうにみなさんに慕われているんですね」ジーン


 『聖グロリアーナ女学院 ダージリン様』パッ


ダージリン「わたくしにも?」

 『親愛なるダージリン様へ』

 『わたしがダージリン様に声をかけられ、オレンジペコの名をいただいたのが、昨日のことのように思い起こされます』

 『聖グロリアーナに入学してすぐにダージリン様に出会い、いままで、いろんなことを教えていただきました』

 『その中でも、特に忘れられない出来事があります』

 『わたしはダージリン様にあこがれて、ダージリン様のようになりたいとおもい、ふるまいやしぐさを細かく見て、真似ようとしたことがありました。でも、髪型はうまくいかず、困っていました』


 『そのときダージリン様はにっこり笑ったかと思うと、わたしの髪の毛を編んで、同じ髪型にしてくれたあと、こう言いました』

 『これでおそろい。でもね、ペコはペコらしい生き方をしてくれたほうが、わたくし嬉しいわ』

 『こんな言葉をご存知かしら。誰かを崇拝しすぎると、自分の自由を失うことになるの』

 『あなたもいつか聖グロリアーナの隊長を継ぐかもしれないけど、そのときには、わたくしの真似でなく、あなたらしいままで、未来の後輩たちを導いてほしいの、と』

 『あの日から毎日、この髪型にととのえるたび、ダージリン様からなにか力をいただいている気がして、わたしはいつもあなたのことを思うようになりました』

 『すこしでも多くのことをダージリン様から学び、そして、ダージリン様がのぞむような『わたしらしい理想のわたし』になるため、これからも頑張っていきたいと思います』

 『ダージリン様 ほんとうにありがとうございます』

ダージリン「ペコ……わたくしもあなたが大好きよ……」グスッ

ケイ「なによ……アナタだって泣いてるじゃない……」グスッ

 『最後に、愛をこめて、ダージリン様にこの言葉を贈ります』













 『親愛なるダージリン様へ あなたのことが ファイアフライ』


デデーン ダージリン ファイアフライ

ダージリン「えっ」

~♪ジャンガジャンガジャンガジャンガ
~♪ジャンガジャンガジャンガジャンガ
(ナオミがファイアフライを駆るときのゴキゲンなBGM)

ガチャッ!

ナオミ「…………」スタスタ

ダージリン「あっ……ああ……イヤァ……」ガタガタガタ

みほ(あの長い棒「西住流17ポンド」って書かれてる……)

エリカ(だから何のちがいが……)

ダージリン「待って!! 待ってってば……ちょっと」ガシッ


ダージリン「あぁ……なんでよ、なんでよぉ……ペコ……」ブルブル

ダージリン「お願い、お願いお願いゆるして、いやよゆるしてゆるしウワアアアーーーーーッ!!!」バシーーーーン!!!!

ナオミ「フーーッ」

~♪ジャンガジャンガジャンガジャンガ
~♪ジャンガジャンガジャンガジャンガ
(ナオミがファイアフライを駆るときのゴキゲンなBGM)

スタスタ ガチャッ バタン

ダージリン「ひッ……ひぐ……ッ!」ビクビクッ

エリカ「膝からキレーに崩れ倒れたわね……」

みほ「い、いい話かとおもったのに……」

ケイ「ダージリンの涙の意味が変わったわ……」

デデーン 西住 ケイ 逸見 アウトー

みほ「あああっ!」スパーン
ケイ「わあっ!」スパーン
エリカ「もうっ!」スパーン

コンコン ガチャ

亜美「みんな大変よ! いま西住流の門下生が、よその生徒とケンカしてるって」


エリカ「ええっ!?」

ケイ「ホワッツ?」

亜美「それでね、その仲裁に行くから、みんな移動するわよ」スタスタ


――倉庫

ワーワー! ギャーギャー!

みほ「なんだか騒がしい……」

亜美「うわあ……はじまっちゃったみたいね。急ぎましょ」ガラッ

そど子「いい加減にしなさいよコラー!」
ゴモヨ「オラー!」
パゾ美「お、おらー!」

メグミ「なによ! やるっていうのー!?」
アズミ「なによー!」
ルミ「このー!」

ダージリン(大学選抜チームの中隊長たち…!?)

そど子「西住流のほうがすごいに決まってるのよ!」

メグミ「ふん! 島田流のほうがすぐれているわ!」

そど子「じゃあどっちがすごいか対決しようじゃない!」


ルミ「受けて立つわ! そうね……早食い対決なんてどう!?」

そど子「やってやるわよ! うちにはね、ものすごいスピードの持ち主がいるのよ!」

ローズヒップ「聖グロ一の俊足がここにいますわ!」バッ!

ホシノ「『大洗一速い女』の異名を持つあたしを忘れてもらっちゃ困るね」バッ!

エリカ「どっちも早食いとは関係ないじゃない」

ケイ「ウフフン」

デデーン ケイ ダージリン アウトー

ケイ「ぐッ!」スパーン
ダージリン「あおっ!」スパーン

アズミ「誰だっていいわ。日本戦車道ここにありと知らしめた島田流として、わたしが相手よ!」

まほ「ならばこちらも西住流として、私が……」

しほ(タンクトップ)「いえ、隊長が出るまでもなく、私に任せてください」ザッ!

デデーン 西住 逸見 アウトー

みほ「お母さウアッ!!」スパーン
エリカ「アア!」スパーン


まほ「シホノさん、頑張ってくれ!」

メグミ「じゃあルールを説明するわ! お互い用意したこの1本のバナナを、早く食べきった方が勝ちよ!」

メグミ「ただし! 食べる人は一切手を使わずに食べること! いいわね?」

4人『!?』

メグミ「よーい、スタート!!」

アズミ「はむ……ううん……皮が……」ペロッ

しほ(タンクトップ)「あむ……ん……うまく、むけない……」パクッ ムグムグ

みほ「ウグッ!!」(目をそらす)

まほ「…………」(全てを諦めた顔)

デデーン 西住 逸見 ダージリン アウトー

みほ「ヴェイ゛ッ!」スパーン
エリカ「キツイ!」スパーン
ダージリン「キツすぎ!」スパーン

アズミ「……」(モッチャモッチャ)

しほ(タンクトップ)「……」(モッチャモッチャ)

ダージリン「あ、食べる速度は普通なのね……」


エリカ「いやいやむしろ遅いわよ……なんで味わって食べてるの?」

アズミ「モグモグ…ゴクン。どーよ! 食べきったわ!」

しほ(タンクトップ)「モグ…。こっちも終わったわ!」

メグミ「フン、遅すぎ! 西住流なんて全っ然大したことないわね!!」

そど子「ハアッ!? そっちだってそうでしょ! じゃあ次の勝負で決着をつけるわ!」

まほ「ならば今度こそ西住流として、私が出よう」ザッ

そど子「パゾ美! アレを出しなさい!」

パゾ美「は、はいっ」スッ

そど子「風紀委員伝統のスナック菓子『おかっぱえびせん』で勝負よ!」バン!

そど子「いまからルールを説明するわ!」ザーーッ!

みほ(えびせんをお皿の上に全部あけた……?)

そど子「このえびせんを詰め込めるだけ口にくわえ、口の中をパンパンにし、その顔でにらめっこをする!」

そど子「そして、先に吹き出した方が負けっていうルールよ!」

まほ「えっ」


デデーン 全員 アウトー

みほ「あうっ!」スパーン
ケイ「なあっ!」スパーン
エリカ「もうっ!」スパーン
ダージリン「うぐう!」スパーン

ルミ「上等よ! やってやろうじゃない!」

エリカ「意味わかんない!」

そど子「じゃあいくわよ! まずは両者とも、このえびせんで口の中をパンパンにしてもらうわ」

パゾ美「とりあえず10本ずつ入れてみますね」グイッ

まほ「ムグッ」

ルミ「グッ」

そど子「ラクに入ったわね。次、もう5本!」

ゴモヨ「はいっ」グイッ

まほ「モゴッ」

ルミ「モブッ」

そど子「余裕がなくなってきたわね。ここからは口の端をひっぱりながら1本ずつ入れるわよ!」グイッ


まほ「フゴ、フゴフゴフゴ……」

ルミ「モガモガモガ……」

そど子「西住まほ、23本! ルミ、25本!」
(※実際に作者がやってみた結果の本数を参考にしています)

しほ(タンクトップ)「クッ……! 島田流のほうがややリードね」

ケイ「本数関係あるの?」プルプル

ダージリン「さあ。もう何も考えませんわ……」プルプル

みほ「お姉ちゃん、すごい顔……」プルプル

エリカ「隊長の口がカイロスみたいに……」プルプル

そど子「いい!? それじゃあいくわよ、にーらめっこしーましょッ!」

そど子「あっぷっぷっ!!」バッ!


(仕切り板を外す)


まほ「ゴバァ!!」(噴出)

ルミ「グブフォ!!」(噴出)


デデーン 全員 アウトー

みほ「ぎゃん!」スパーン
ケイ「そりゃそうだわオッ!」スパーン
エリカ「こうなることは分かってアウン!」スパーン
ダージリン「やああっ!!」スパーン

そど子「まさか互角に引き分けるとは……やるわね!」ガシッ(握手)

メグミ「そっちこそ、なかなかのもんじゃない!」ガシッ(握手)

亜美「ああよかった。仲直りしたみたいね。それじゃ、戻るわよ」スタスタ

みほ「ええ~~っ……」


――控え室(別室・大部屋)


みほ「はあ……」

エリカ「なにもかもおかしな1日だったわ……」

ケイ「もうダメ……」

ダージリン「もう……疲れてしまいましたわ」

みほ「うん……おやすみなさい……」

『…………』

『…………』

 >こんな言葉を知っている?

ダージリン「!」ビクッ!

みほ「オレンジペコさんの声……」

エリカ「モノマネのクオリティが半端じゃないわ……」

 >こんな言葉を知っている?

ケイ「……ムグッ」(唇を噛みしめる)

エリカ「うう……」

 >こんな言葉を知っている? 「サザエさん」のアナゴさんの声優は、お寿司のアナゴが大嫌いなの

デデーン 全員 アウトー

みほ「んなっ!」スパーン
ケイ「ワオ!」スパーン
エリカ「うぎっ!」スパーン
ダージリン「もおっ!」スパーン

みほ「知りたくない情報がイヤでも頭に流れ込んできます……」
(※ちなみに本当です)


エリカ「なんなのよ……」

 >こんな言葉を知っている?

ケイ「……フフッ」

 >こんな言葉を知っている?

ケイ「もうダメ……フ フヒッ……」プルプル


 >こんな言葉を知っている? ダージリン様の手料理は、頭蓋骨にヒビが入るくらいマズいのよ


ケイ「ぶわっはっはっはっはっはっはっは!!!!」

デデーン 全員 アウトー

みほ「んっ!」スパーン
ケイ「アッハハ! アッ!」スパーン
エリカ「うっ!」スパーン
ダージリン「ああうっ!」スパーン


 >こんな言葉を知っている? ダージリン様の実家の机の引き出しには爆竹がぎっしり詰まっているの


ケイ「あっひゃひゃひゃ!!! うっひゃっひゃっひゃっ!!!!」バシバシ

デデーン 全員 アウトー

みほ「ケイさんもうアウッ!」スパーン


ケイ「お腹とお尻が痛いイイイッ!」スパーン
エリカ「アンタ笑い過ぎオウッ!」スパーン
ダージリン「ペコああっ!」スパーン

ケイ「ば、爆竹て……」プルプル

エリカ「もうたくさんよ……」

ダージリン「お願い寝かせて……」

ケイ「その歳でやんちゃにも程があるでしょフフ……」プルプル

みほ「……」

ケイ「ウフフwwwこんな爆竹を知っている?www」

デデーン 全員 アウトー

みほ「ちょっともうーっ!!」スパーン
ケイ「ごめんwwwでもwww」スパーン
エリカ「卑怯よアンタ!」スパーン
ダージリン「自分から笑わせるのは反則アア!」スパーン

『…………』

『………』

『……』

『…』



――翌日

みほ「ああ……」

ケイ「サイテーの目覚めだわ……」

エリカ「アンタ自分のせいじゃない……」

ダージリン「ペコ……」

コンコン ガチャ

亜美「みんなおはよう……ってアラ? 眠れていないようね」

みほ「は、はい……」グッタリ

亜美「大丈夫? そんな状態で、特別講師による講義がちゃんと頭に入るかしら」

エリカ「特別講師?」

亜美「そう。腕前バツグンの戦車乗り。家元も一目置くすごい人よ」

ダージリン「そんな人がいるんですね」

亜美「それじゃ、支度が出来たら集合だから、よろしくね」



――講堂


ザワザワ ガヤガヤ

亜美「ここに座ってね」

みほ「うわあ……すごい人」

エリカ「西住流の門下生って、こんなにいるのね」

ケイ「見たことある人たちもちらほらいるわ」

まほ「それでは、講演『西住流とは何か』を開催します」

まほ「今回は、特別講師を招いてのことですので、拍手でお迎えください」

パチパチ パチパチ

みほ「どんな人なんだろう……」パチパチ

ケイ「きっとすごい選手なんだわ」パチパチ

ダージリン「いえ、どこかのチームの名監督かもしれませんわ」パチパチ

エリカ「家元も一目置くだなんて……よほどのお方ね」パチパチ

まほ「それでは、どうぞ」 















蝶野正洋『ガアアッ!! デエエエエィム!!!』

~♪デデデデーデケデケデー
~♪デデデデーデケデケデー
(あのテーマ曲)

みほ「」
ケイ「」
エリカ「」
ダージリン「」

みほ「どうしてあの人がここに!??」

亜美「わたしの兄は戦車乗りの天才で、特にあの重戦車マウスの扱いに関しては家元以上ではとうたわれる存在なの。(大嘘)それで、島田流でありながらも西住流の特別講師として、家元直々にお声がかかったのよ」(超大嘘)

ダージリン「マジですの……」

蝶野「西住流ってえのは……前進あるのみ、強さが第一の流派」

蝶野「鉄の掟、鋼の心という……」

蝶野「だがそれをわかってねえ奴ばっかりだ!!!」

蝶野「鋼の心で、絶対に笑ってはいけないという鉄の掟を守りぬく!」

蝶野「西住流門下生たるもの、それが筋ってモンだ!! そうだろう!!?」

蝶野「なのに、笑うことに何の抵抗もないなんて許されねえ!!」


蝶野「そこでだ! いまから笑った数を確かめる!!」

蝶野「いままでに最も多く笑い、最も多くの罰を受けた軟弱者には……」

蝶野「……オレが直々に制裁を加える」ギリッ

みほ「」ガタガタ
ケイ「」プルプル
エリカ「」ビクビク
ダージリン「」ガチガチ

蝶野「アヒルさんチーム集合だオラア!」

『ハーーーイッ!!』ゾロゾロ

蝶野「まず近藤! お前の担当はどうだ!?」

妙子「はいっ! 逸見エリカさんは29回です!」

蝶野「わかった! 次……あ、あけびちゃん」

佐々木「ダージリンさんはファイアフライを含め、合計27回です!」

蝶野「ありがとう! 次、河西!」

忍「ケイさんの回数は、30回でした!」

蝶野「よし! 最後にキャプテン、どうだった!」


みほ(お願い、お願い……)ブルブル












磯辺「西住隊長、32回の根性でした!」

蝶野「みほは壇上に上がれオラア!!」ガシッ!

みほ「イヤアアアアッッ!!」ズルズル

蝶野「早く来い」

みほ「う……うぅ……なんでわたしが……」グスッ

蝶野「笑っちゃダメなのに笑い過ぎるのがいけねえんだろ」

みほ「そんなこと言ったって……」ビクビク

蝶野「それじゃ、いくぞ」グッ

みほ「えっ」サーッ

蝶野「制裁だって言ったろ」

みほ「お、お願いします! それだけは! それだけはやめてください!」

みほ「ごめんなさい! ごめんなさい!! もう絶対笑いませんから!!」

蝶野「ん? いま絶対に笑わないって言ったな?」

みほ「は、はい!! だから許して……」

蝶野「よし。お前にチャンスをやろう。実はいまからあんこう踊りが始まる」

蝶野「それが踊り終わるまでに一度も笑わなければ、免除だ」


みほ「えっ! ええっ!!?」パアア

蝶野「やるか?」

みほ「は、はい! やらせてください!!」

蝶野「 絶 対 に 笑 う な よ ? 」

みほ「はい! はい!! もちろん!!」ブンブン

ダージリン(誰が踊るのかしら……)

ケイ(家元が踊るか……さらに裏をかいて島田流も巻き込んでやってくるか……)

エリカ(いずれにせよ、恐ろしい事態には変わりないわ……)

蝶野「よし! 話はきまった」

蝶野「それでは早速」ヌギヌギ

蝶野(黒あんこうスーツ)「踊りを開始する!!」バサッ!

みほ「ムグゥ!!!」バッ!

3人(とっさに口を覆った……!)

みほ(笑っちゃダメ、笑っちゃダメ……)ガクガクプルプル




~♪アアアンアン アアアンアン

~♪アアアン アアアン アンアンアン


蝶野(黒あんこうスーツ)「あ~の子会いたや あっらなみ越えて~♪」ヒョコヒョコ

蝶野(黒あんこうスーツ)「頭のあかりは あ~いの証~♪」ヒョコヒョコ

ケイ「ウッヒャヒャヒャwwwアッヒャヒャwwwヒーwwwムヒーwww」

ダージリン「みwwwみほさんの周りをぐるぐるとwwww」

エリカ「ごめんwwwみほwwwみほ耐えてwww」

亜美「なによあのステップwwwwww」

(※すでに笑っていますが、引き続きお楽しみ下さい)

蝶野(黒あんこうスーツ)「燃やして♪ こがして♪」

蝶野(黒あんこうスーツ)「ゆぅ~~~らゆらぁ~~~♪」(みほににじり寄る)

みほ「~~~~ッッ!!!」ジタバタ

蝶野(黒あんこうスーツ)「燃やして♪ こがして♪」

蝶野(黒あんこうスーツ)「ゆぅ~~~らゆらぁ~~~♪」(みほににじり寄る)

みほ「~~~~ッッ!!! ~~~~ッッ!!!!!」ジタバタジタバタ

蝶野(黒あんこうスーツ)「こっち来て アンアン♪」バッ!


蝶野(黒あんこうスーツ)「逃げないで アンアン♪」バッ!

蝶野(黒あんこうスーツ)「波に揺られて アン♪アン♪アン♪」クネクネ


~♪ デッデデー デッデデー デーデーデン!


みほ「ハァ……ハァ……」プルプル

蝶野(黒あんこうスーツ)「……」

蝶野(黒あんこうスーツ)「…………」スタスタ

みほ「お、終わり? 終わったの……?」

デデーン ケイ 逸見 ダージリン アウトー

ケイ「がッ!」スパーン
エリカ「むう!」スパーン
ダージリン「んんなっ!」スパーン

バン!

しほ「よく頑張りましたね、みほ」スタスタ

みほ「お母さん……!?」

しほ「つらかったでしょう。でも、もう大丈夫よ」ギュッ


みほ「あっ……!」ギュッ

しほ「西住流の真髄、それはどんなことがあってもあきらめない強い心。確かに見せてもらいました」

しほ「実は、もしもみほが笑ったら、私がかばうつもりでいました」

みほ「えっ!?」

しほ「いままで母親らしいこと、なんにもできてなかったものね。娘の危機にかけつけるくらいのことはできなくちゃ母親失格だもの」

しほ「でも、違ったわ。みほは私の知らない間に、私が思っていたよりずっと立派になったのね」

しほ「全国大会も、大学選抜チーム戦も、がんばったね。よくやったわ」ナデナデ

みほ「おかあ、さ……」ポロポロ

ケイ「よかったわ~ッ! ウウゥ~~~~ッッ!!」ボロボロ

エリカ「なんでアンタのほうが号泣してるのよ……!」ポロポロ

ダージリン「みなさん、グスッ……泣き虫ね……」ポロポロ

しほ「さあ、最後の西住流戦車道訓練は、この私、西住しほが直々に教えます」

みほ「ええっ!?」


エリカ「家元ご本人による特別指導とは……」

しほ「そこで、西住流の極意を伝えるために、今回はさらに特別な講師を招きました。この方です」


~♪デーン テケテッテー デーンデーンデーン

~♪やってやる やってやる や~ってやるぜ
~♪い~やな ア~イツを ボコボコに~♪


ボコ「おいらボコだぜ!」ヒョコッ

みほ「わああっ!」パアァ
ケイ「あっ」
エリカ「あっ」
ダージリン「あっ」

ボコ「相手が西住流だろうと島田流だろうと、オイラには関係ないぜ~!」シュッシュッ

しほ「よくぞ言いました。それでこそボコというもの」ガシッ

ボコ「オ、オイラをつかんで何しようってんだ!?」ジタバタ

蝶野「……」スタスタ

愛里寿「……」スタスタ

みほ「あ、蝶野さんが着替えて……って愛里寿ちゃん!?」


しほ「西住流と島田流のちがいを実際に目で見てもらう貴重な機会のため、彼女も招待しました。それではどうぞ」

蝶野「これが島田流の極意だオラア!」バチーーーーン!!!

ボコ「グワーーーーッ!!!」ドンガラガッシャーーン!!

みほ「うわあ~~~~っ!」キラキラ
愛里寿「わああ~~~~っ!」キラキラ

ボコ「オ゛……オ゛オ゛……」ピクピク

蝶野「立てオラア!」ガシッ! グイッ!

ダージリン(ボコを後ろからはがいじめに……)

ケイ(なんちゅう光景なのかしら……)

しほ「見てのとおり、島田流は必殺の一撃を当てることで、一気呵成に勝負を決めるということがわかります」

みほ「うんうん!」キラキラ
愛里寿「うんうん!」キラキラ

エリカ(いままで、こんなうれしそうな顔したみほを知らないわ……)

しほ「対して、わが西住流は反撃を許さぬ疾風怒濤の攻勢をかける!」

しほ「撃てば必中!」ドゴオ!


しほ「守りは固く!」ドゴオ!

しほ「進む姿に乱れなし!」ドゴオ!

ボコ「オ゛ッ!? ヴォッ!? アブォ!!!」ビクッ!ビクビクッ!!

愛里寿「がんばれー! がんばれー!」

みほ「がんばれー! ボコ、がんばれー!!」

エリカ(なんで無邪気に応援できるのよ……)

ダージリン(大の大人が、無抵抗の着ぐるみをマジ殴りしてますわ……)

ケイ(流派以前に教育に悪過ぎじゃ……)

しほ「鉄の掟!」ドゴオ!

しほ「鋼の心!」ドゴオ!

しほ「これがッ!」ドゴオ!

しほ「これが西住流よ!!」ドゴオ!

ボコ「」ドサッ

ボコ「」

ボコ「」

ダージリン「ピクリとも動きませんわ……」

エリカ「無理もないわ。猛ビンタに加え家元の執拗な腹パンを何度も……」

ケイ「(無言で十字を切る)」スッ スッ

蝶野「ガッ! デエエイム!!」デーーン!


――絶対に笑ってはいけない西住流戦車道1日体験教室 終了



最終訓練結果(アヒルさんチームにお尻をシバかれた数)

・ケイ 31回(担当:河西忍)

・逸見エリカ 30回(担当:近藤妙子)
(うちトリプルアタックを含む)

・ダージリン 28回(担当:佐々木あけび)
(うちナオミのファイアフライ1発を含む)

・西住みほ 32回(担当:磯辺典子)

――EDテーマ「piece of youth ~Nishizumi ver~」
唄:アンチョビ&カルパッチョ&ペパロニ
演奏:クラーラ(バラライカ)&ミカ(カンテレ)


~♪ひと~み閉じて~ 耳をすま~せば聞こ~える~ まだ少し おさ~ない声~

~♪他愛も~ない しほのネタで 何時間でも 笑ってい~られたね~

~♪うろた~える桃の電話も 後輩の手紙も

~♪あいまいで確かな~ 日々~をつな~ぐ~ 大切なピース



~♪あ~のころの 僕らは~まだ~ 謎の対決に笑い~

~♪新しい 何かを 探してたんだね

~♪な~ぐられた 弱~いボコも ふいに踊った 蝶野さんも

~♪その ひとつひとつが~ ほら! 僕らの「今」を作ってる~~♪



みほ「こうして、1日体験教室は終了となりました」

みほ「実は、後日ほんとうに開催した体験教室では参加希望者が大勢現れ、大成功を収めたそうです」

みほ「ただ、その理由は、意図せぬ方向で盛り上がった評判のせいらしく……」

みほ「あのときボコを叩きのめしたお母さんの姿がネットに流れ『これが真の西住流か』『ボコを見る目が変わった』『殴る姿にキレがある』などと、そっち方面の反響がすさまじかったようです」

みほ「そのためアレを望む声が大きく、体験教室のたびにフィナーレとしてお母さんがボコをめった打ちにするショーが行われ、なぜかそれが大人気の名物になってしまいました」

みほ「『真の西住流を広めるつもりだったのに、最近の私はボコ狩りのエキスパートとして世間に認識されつつある。こんなハズじゃなかった』とお母さんは嘆いていますが、その実、ストレス解消になっているのでまんざらでもないようです」

みほ「その話を聞いた島田流の家元さん、つまり愛里寿ちゃんのお母さんも対抗心を燃やし、ボコミュージアム内のショーに島田流の動き(?)を取り入れ始めたそうです」

みほ「そのせいか、最近こんな新商品が」スッ


< ボコぬいぐるみ島田流Ver > ←顔面を覆うクソデカいビンタの跡


みほ「実は、ボコを呼んだのはお姉ちゃんの提案だったそうです」

みほ「わたしがボコが好きだから、ボコの前でなら笑顔を見せられるかもしれない。そういう理由で、お母さんに笑顔のわたしを見せたかったのだと、あとで聞きました」

みほ「いろんなことがあったけど、わたし、お母さんのことをよく知ることができて、この訓練を受けて良かったとおもいました」

みほ「それに、愛里寿ちゃんともまた会えたし……」

プルルル プルルル

みほ「あっ、愛里寿ちゃん? 実はね、渡したいものが……」ゴソゴソ


< ボコぬいぐるみ西住流Ver > ←お腹の真ん中にクソデカい青アザ


おしまい

これで物語はおしまいです
劇場版BD&DVD発売おめでとうございます

前作↓
みほ「プロ戦車道1日訓練?」

タイトルは別物っぽいですが、笑ってはいけないガルパンSSのファーストシーズンです

そのおまけ↓
みほ「未公開シーン?」

もよろしくお願いします

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