モバP「居心地の悪い事務所」 (51)
モバP「……」カタカタ
ちひろ「……」カタカタ
モバP「……こっちの分終わったんで外回り行ってきます」
ちひろ「分かりました」
モバP「(この事務所に来て1年が経った、最初は事務所に男1人、
そして仕事相手は現役アイドルと期待に胸を躍らせたものだが現実はそう甘くはなかった)」
モバP「(さっきも事務員の千川さんとの会話も事務的な物ばかり、というかこれまでもそれ以外の会話をしたことが無い。
入社したての頃打ち解けようと雑談話を振った事があるがうるさいので静かにして下さいと睨まれた)」
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???「あっ…」
モバP「ん?ああ渋谷か、レッスン終わったのか?」
凛「ん」
モバP「そうか、お疲れ様。それで明日の予定だが」
凛「明日は撮影が入ってるんでしょ、知ってる。じゃあ私事務所行くから」
モバP「あ、ああ…」
モバP「(アイドルとの会話は何時もこんな感じだ、10秒足らずで終わる。
そして絶対に下の名前で呼んではいけない。昔勇気を出して一度だけ呼んだことがあるがとても不快そうな顔をされたのを覚えている。それ以来トラウマだ)」
モバP「(取りあえずテレビ局に着いた)」
モバP「あの~すいません346プロのPという者なんですが」
テレビ局の人「はあ、それでなにか」
モバP「はい、えーとですね。ウチの子で誰か使って頂けないかと思って…」
テレビ局の人「あーなるほどね、はいはい。346プロさんね、うん覚えておくよ」
モバP「ありがとうございます!絶対に期待に沿う様にさせるので!」ペコペコ
モバP「(アイドルの為に仕事を取って来るのもプロデューサーの仕事だ。いくらアイドルや事務員と親密じゃなくても仕事はしっかりしなければならない。
しかし、テレビやラジオ、雑誌の仕事を幾ら取ってきたとしても事務所の誰も俺を褒めたり評価などしてくれないのだ)」
モバP「(そろそろ鷺沢を迎えに行く時間か)」
モバP「すまない、少し待たせた鷺沢」
文香「いえ…」
モバP「じゃあ車に乗ってくれ事務所に乗せてくから」
モバP「(仕事終わりのアイドルをそのまま自宅まで送るなんて事は一切ありえない。きっとしよう者なら警察を呼ばれて有る事無い事言われるのだろう)」
モバP「…」
文香「…」
モバP「(移動中は勿論会話なんて無い。気まずい空気が漂うがみんなそんなの気にせずに思い思いのことをしている。例えばこの鷺沢はずっと読書をしたまま、
永遠と視線を下に向けたままである。俺と目を合わせた事は一度も無い、そもそも俺の顔をまともに見られた事すら無い気がする)」
モバP「戻りましたー」ガチャ
文香「…」
ちひろ「お帰りなさい文香ちゃん」
文香「はい、ただいま帰りました」
ちひろ「今日のお仕事はどうでした?」
文香「まあまあだったと、思います…」
モバP「(アイドルを優しく迎える事務員、それに応えるアイドル。無視される俺。もう慣れてしまっている自分がとても惨めで悲しかった)」
モバP「(業務も終わり家に帰ると明かりも付いていない暗い部屋が出迎えてくれる。アイドルが自宅で帰りを待ってくれる様な夢のシチュエーションは絶対に起こらない)」
モバP「(冷蔵庫の中から買い溜めてあるビールを出して、買って来たコンビニ弁当と一緒に頂く。いつも通りの、一人ぼっちの夕飯だ)」
モバP「今日も疲れたな~…」
モバP「(スマホを取り出して新着のメールを確認するも全部広告メールだった。勿論アイドルからのメールなんて来た事無いし、そもそもメアドを教えてもらった事もない。
事務所関係で唯一知っているのは千川さんぐらいなものだが、送られて来る内容は仕事の物と外回りの帰りにコンビニ寄ってくれと頼まれるぐらいだ)」
モバP「明日は今日より少しだけ、ほんの少しだけで良い。アイドル達と会話してみたいなぁ」
モバP「(言ってて悲しくなって来た。寝よう)」
モバP「おはようございます」ガチャ
ちひろ「おはようございますプロデューサー、今日は昨日ほど無さそうです」
モバP「そうですか、分かりました」
モバP「……」カタカタ
ちひろ「……」カタカタ
モバP「(ああ、今日もいつも通り、居心地の悪い1日が始まる)」
終わり
ごめんダレたわ
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