赤星小梅「エンドロールに私の名前がない」 (59)
※メタ発言多数注意 ドラマCD5のネタバレ要素あり
小梅「お二人とも、本日はお集まりいただきありがとうございます」
ルクリリ「……」
アリーナ「……」
ルクリリ「ねぇ」
小梅「はい?」
ルクリリ「この集まりってもしかして」
小梅「はい、単刀直入に申し上げます。私たちは『ガルパンライバル校 名前ついてるのに扱いが地味な人の会』です」
アリーナ「ああ…」
小梅「そういうわけで、三人で話し合って現状からの下剋上を図りたいと思います。まずはこちらの映像をご覧ください」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1464187624
PC『瞳閉じて~耳を澄ませば~♪』
ルクリリ「私たちが出ていた『劇場版ガールズ&パンツァー』のエンディング場面ね」
アリーナ「んだ。みなさんのご愛顧のおかげで超ロングラン大ヒット中ですよね」
小梅「はい。私も微力ながら素晴らしい作品に貢献できて嬉しいです。それはいいとしてよく見てください」ピッ(一時停止)
小梅「見てのとおり、エンドロールに私の名前がありません。お二人の名前はあるのにです」
アリーナ「」
ルクリリ「」
小梅「中の人が兼役だから省かれたのではないか? いいえ、そんなことは決してないでしょう」
小梅「他の兼役の声優さんはキャラごとにしっかり記載されています。もちろんルクリリさんもその一人です」
小梅「アリーナさんの中の人はボコショーの着ぐるみ役もなさっていたんですね。こういう発見ができるのも楽しいですよね」
小梅「なのに私は載ってない……ただただショックです。去年川に落ちたときよりも凹んだかもしれません」
ルクリリ(それネタにするのかよ)
小梅「ひどいです……今度は私がみほさんを助けるんだって意気込んでたのに、あっさり撃破された挙句こんな仕打ちまで…」
ルクリリ「なるほど。その愚痴を相談する相手として選ばれたのが、立場の近い私とこの子だったってわけね」
アリーナ「だども、赤星さんだってわだすとルクリリさんにはない見せ場や魅力があるんでねが?」
ルクリリ「確かに主人公に助けられた過去のある人間なんて、美味しいポジションだと思うけど」
小梅「ですがストーリーの上で、そのポジションが生かされたことは一切ありません」
小梅「みほさんの因縁の相手としては、やはり家族である西住隊長や家元、それにエリカさんには敵いませんからね」
小梅「劇場版では西住隊長やエリカさんそれぞれに見せ場があったのに対し、私は序盤で吹っ飛んだだけで終わりました」
ルクリリ「でも終盤まで生き残ったからって活躍できる保証もなかったんじゃない? 現に私がそうだったし」
アリーナ「んだ。カヂューシャ様みたいに、大活躍したのに一回観ただけじゃわかりにくい人だっていますし」
ルクリリ「そうそう。何度も劇場に足を運ぶ熱心なファンは観る度にいろんなキャラを見てくれてるものよ」
アリーナ「わだす知ってますよ。203高地で赤星さんや直下さんたちが真っ先にカヂューシャ様と打ち解けてくれてたこと」
小梅「はい。あのとき西住隊長とカチューシャさんの間がちょっと険悪だったので、私たちで場を和ませようと努めてました」
ルクリリ「そういうところもちゃんと見てくれてる人はいるんだから、自信持ちなさい」
ルクリリ「だいたいあんた、エンドロールに名前がないくらいで卑屈になってんじゃないっての」
ルクリリ「私なんかTV版から出てたのに名前出してもらったの最近よ。こちとら見せ場といえば立体駐車場で騙されたくらいだし」
ルクリリ「絡んだキャラも大洗の八九式の四人と知波単のチビスケだけで、聖グロの他の隊員と会話したシーンさえないんだから」
アリーナ「でも天丼ネタって美味しいんでねが?」
ルクリリ「東北の子なのに関西人みたいな発言だな」
小梅「発言といえば聖グロリアーナにおいてルクリリさんのその口調は十分な個性だと思いますけど」
ルクリリ「そうかもしれないけど……私の場合、聖グロの他の四人のキャラが立ちまくってるのが問題でね」
アリーナ「四人もキャラ濃い人がいたらわざわざ五人目をピンナップやグッズに入れたりしねぇですもんね…」
ルクリリ「そうそう。他校の名有りキャラはせいぜい三人程度なのに、聖グロとプラウダだけ五人分もグッズ出すのは変だし」
小梅「黒森峰は名有りキャラ三人ですが、グッズも公式絵も常に二人しかいないですよ」
小梅「私のグッズといえば、ブルーレイ特典のトランプくらいなものです」
ルクリリ「……なんかごめん」
小梅「グッズといえばアリーナさん、この三人の中でドラマCDにちゃんと出演しているのはあなただけですよね」
ルクリリ「そうだぞ。ドラマCDに何作も出て大洗にちゃんとパネルまである子が、なんでこの会にいるの?」
アリーナ「わだすにだってこごに呼ばれるだけの理由があるんだべ。今がらそれを説明します」
アリーナ「そんじゃ、お二人ともちょっとわだすと一緒に立ってけろ」
ルクリリ「? いいけど…」
小梅「その場に立つだけでいいの?」
アリーナ「んだ。ありがどうございます。そんじゃあ、座ってけろ」
アリーナ「……さて、どう思っただか?」
ルクリリ「どうって、何が?」
小梅「三人で丸テーブルを囲んだ状態のまま直立しただけでしたね。必然的に目線も合ったりなんかして」
ルクリリ「何も起きなかったけど、まさか変な儀式でもしてたとか?」
アリーナ「んね。なんもなくて当然なんです。しいて起きたことといえば、互いの目線が合ったことくらい…」
小梅・ルクリリ「「???」」
アリーナ「そうです。わだすはお二人と並んで立つと目線が合うんです」
ルクリリ「それの何がおかしいっていうの?」
小梅「目線が合うのは当たり前ですよね。私たち、だいたい同じくらいの背丈なんだから――あっ」
アリーナ「んだ。わだすの身長は160cmです。西住みほさんやダージリンさん、それにケイさんよりも高いんだべ」
小梅「そっか。アリーナさん、ファンのイラストではよくニーナさんと同じくらいの背丈か、少し高いくらいで描かれてるわ」
ルクリリ「実際は20cmも高いのに……相方のイメージに引っ張られて、小さいと勘違いされがちなのか」
アリーナ「登場人物がいっぱいいるガルパンの中でわだすを選んで描いてくれる絵師さんには感謝しかねぇべ。だども…」
アリーナ「『KV-2のちびっ子コンビを描きました。二人共ちっちゃくて可愛いですよね』」
アリーナ「みたいなコメントがイラストに添えられてると、どったら顔していいかわがんねぇです」
小梅「興味を持ってくれたファンにさえ身長を覚えられていないなんて、確かに辛いですね」
ルクリリ「相方と並んでる画を見れば一目瞭然の事実なのに、劇中でそういうシーン意外とないからね」
小梅「それにドラマCDには画がつきません。聴いてる人は頭の中に身長140cm代のアリーナさんを思い浮かべて…」
ルクリリ「そうやって誤解されたままのイメージがどんどん膨らんでいくわけか」
アリーナ「あとさっき個性の話が出ましたけど、わだすの東北弁と力持ち設定はどっちもニーナと被ってます」
ルクリリ「そりゃ仕方ないでしょ。どっちもプラウダの生徒で、ポジションも同じ装填手なんだから。自分だけの特技とかないの?」
アリーナ「ドラマCDでパティシエの修業ばさせられたんでお菓子は作れます」
小梅「なるほど。ボーイッシュで怪力の子がお菓子作りが得意なのはギャップ萌えを狙えて良い感じですね」
ルクリリ「しかしギャップという意味では、小柄なのに怪力っていう相方の子の方がインパクト強いかな」
アリーナ「んだねはぁ……一度修行させられただけで料理キャラ名乗るのは無理があるだびょん…」
小梅「元気出して。私の個性なんて川に落ちたことだけなんだから」
ルクリリ「ねぇ赤星さん。思ったんだけどあんたのその川に落ちた過去、どう考えても他の人にはない武器じゃない?」
ルクリリ「実際みほさんに助けられたあんたが、劇場版で逆にみほさんを助けにきたってのはかなり燃える展開でしょ」
小梅「でもストーリー上ほぼスルーです。だけどそれも仕方ないことだと理解しています」
ルクリリ「どうしてよ」
小梅「私が川に落ちた件はガルパンにおける数少ないシリアス要素です」
小梅「でもそれを変に深く掘り下げすぎると、楽しい世界観が崩れかねない…」
小梅「特に黒森峰を去ったみほさんを責めたエリカさんや家元が悪人に見えてしまうような展開は避けなければいけません」
小梅「二次創作に登場するお二人の姿を見ても明らかなように、ファンのみなさんはそんなもの求めてないんです」
小梅「だから私は二人を守るためにも、この一歩引いた位置にいるしかないのかもしれません」
ルクリリ「でも目立ちたいんでしょ?」
小梅「別に他人を出し抜いてまで目立つ気なんてありません。だからせめて、みなさんと一緒にエンドロールに載りたかった…」
ルクリリ「赤星さん……辛いな。誰よ、こんな健気な子をクレジットからハブりやがった馬鹿は」
ルクリリ「一瞬しか映らない知波単のモブに適当な日本軍の名前つける前にやることあるだろうがって話よ」
小梅「やめてルクリリさん。乱暴口調キャラをいいことに他の人をdisったって、そこからは争いと悲しみしか生まれません」
アリーナ「よし! そんじゃあ赤星さん、今からわだすと一緒にかーべーたんに乗ってア○タス本社に殴り込むべ!」
ルクリリ「待て! 出番のある未来へのわずかな可能性を自ら撃ち砕くつもりか!」
ルクリリ「いい? どうせ乗り込むなら人気キャラのところに行くべきよ」
ルクリリ「そもそもこの3人だけでわちゃわちゃするSSなんて閲覧数伸びないし、きっとまとめサイトにも載らないわ」
小梅「そうですね。正直スレタイを見た人の大半は『赤星小梅って誰だよ。白坂じゃないのかよ』という反応だと思います」
アリーナ(とうとうメタ発言にも歯止めが利かなくなってきたべ)
ルクリリ「だが人気キャラが出演するなら話は変わる。読者も喜んでくれるし、そのキャラの人気の秘密を探ることもできるわ」
小梅「なるほど。閲覧数が増えれば、それだけ多くの方に私たちのことを知ってもらえますし」
ルクリリ「そうと決まれば出発しましょう。さあ、ここはドイツキャラのあんたの出番よ赤星さん」
小梅「え?」
アリーナ「ほら、ガルパンといえばあの台詞」
小梅「わ、私がみほさんのアレを? そんな、おこがましいです」
ルクリリ「いいから言いなさい。景気づけみたいなもんなんだから」
小梅「わかりました。では……」
小梅「パンツァー・フォー!」
――アンツィオ高校
ペパロニ「さぁ今日もアンツィオ名物の鉄板ナポリタン屋台、絶賛営業中だよー」
ルクリリ「こんにちは。とりあえず鉄板ナポリタン3つ作ってもらえる?」
アンチョビ「いらっしゃい――おや? 珍しいメンバーだな」
小梅「こんにちは。実は私たち、アンチョビさんの人気の秘密を探りにやってきたんです」
アリーナ「んだ。OVA発売以来、作中屈指の愛されキャラになったアンチョビさんからは学ぶこともたくさんありそうだべ」
アンチョビ「え、私って今そんなに人気あるのか? 確かに出番を求めていた初期の頃のことを思えば、感慨深いな」
ペパロニ「まあでも姐さんはこんなにかわいくて面白くて頼りがいがあるんスから、人気者になるのも当然っスよね」
アンチョビ「ちょっ、馬鹿! そういうことは人前で易々と口にするもんじゃない!///」
カルパッチョ「OVAが発売されて本当によかったです。おかげでドゥーチェの頑張りを多くのみなさんに知ってもらえましたから」
ルクリリ「確かにアンツィオOVAの存在はデカいわ。TV本編で描ききれなかった部分がしっかり補完されてたしね」
小梅「黒森峰OVAの製作を希望するファンの声も少なくないです。大概はエリみほの関係性を補完してくれという意見ですが…」
ルクリリ「まああんたが活躍するところを見たいっていう人はさすがに少数派かもしれないけど…」
小梅「それで、現状の私たちのことをより多くのファンのみなさんに知っていただくためには、どうすれば良いでしょうか」
アリーナ「ぜひアンチョビさんの経験者としての率直な意見を聞かせてけろ」
アンチョビ「率直な意見と言ってもなぁ……う~ん」
アンチョビ「とりあえずパスタを茹でてから考えてもいいか?」
ルクリリ「は?」
ペパロニ「そうっスよ。細かいことなんて気にしなくてもいいんじゃないっスかね」
ペパロニ「私やカルパッチョだってTV本編にまったく出られなかったんだし、気楽に今後の出番を待てばいいんスよ」
カルパッチョ「OVA発売までは、私たちもそうやってドゥーチェを励ましてきましたし」
アンチョビ「よーし。では客人を盛大にもてなすぞ。鉄板ナポリタンだけじゃ物足りない。全員で豪華ランチの準備にかかれー!」
ペパロニ「了解っス!」
アンチョビ「そういうわけだから、三人ともじっくり楽しんでくれ。ワッハッハッハ」
小梅「えぇ……」
アリーナ「どうしよう。アドバイスはもらえそうにねぇです」
ルクリリ「仕方ない。ほどほどのところでおいとまして、次のターゲットのところに向かいましょう。私が案内するわ」
――聖グロリアーナ女学院
ローズヒップ「お紅茶の時間ですわー!」ダダダダ…
ルクリリ「見つけた。今日も今日とてリミッター外して爆走してる」
小梅「追加登場キャラの中でもローズヒップさんの個性は群を抜いていますよね」
アリーナ「ダージリンさんたち三人で成立してた輪の中にも、違和感なく溶け込んでるべ」
ルクリリ「あの立ち回り方を参考にするのも難しいとは思うけど……とにかく観察を続けてみましょう」
ローズヒップ「お紅茶美味しいですわー!」ゴクゴクバシャバシャ
ダージリン「ローズヒップ、零してるわよ」
アッサム「ほら、スコーンにそんなにがっついてはいけないっていつも言っているでしょう」
オレンジペコ「でも喜んでいただけたようで嬉しいです」
アリーナ「なるほど。違和感ゼロだべ」
小梅「もはやこの輪にローズヒップさんがいない状況の方が物足りないくらいです」
ルクリリ「ダージリン様は、今までいなかったタイプのローズヒップが聖グロに新しい風をもたらしてくれることを期待してるの」
アリーナ「だどもルクリリさんだって従来の聖グロにはいなかったタイプなんでねぇが?」
ルクリリ「だから私も意外とダージリン様に気に入られてるのかもしれないわ。直接言われたことないけど」
アリーナ「そういや劇場版のルクリリさん、キューポラの枠に肘ついて紅茶飲んでるのをダージリンさんにばっちり見られてたべ」
小梅「ルクリリさんの素行もダージリンさんの中では想定内ってことですね。案外あの輪に入ってもすんなり馴染めそうです」
ルクリリ「だけどダージリン様の前だとさすがにちゃんとしなきゃいけないから、口調の荒さっていう私の数少ない個性が死ぬわ」
小梅「そこが一つ課題ですね。でも口調の荒い人が頑張ってちゃんとしようとしてる姿は面白いかもしれません」
ローズヒップ「お紅茶を飲み終わったので遊びに行きますわー!」ダッ
アッサム「お待ちなさいローズヒップ――ああ、行ってしまったわ」
ルクリリ(まったく……相変わらずせわしない子だな)
ダージリン「さて、話は聞かせてもらったわルクリリ。姿をお見せなさい」
ルクリリ「げっ、ダージリン様! なぜ!?」
小梅(嘘でしょ。離れた茂みに隠れて小声で話してたのに、ばれてたなんて)
アリーナ(地獄耳すぎる。おっかねぇ…)
ダージリン「ローズヒップが帰ってしまったから一緒にお茶でもいかがかしら。ちょうどあなたとお喋りしたかったところなの」
ダージリン「そちらのお二人もペコの淹れるお茶を味わいながら、ぜひルクリリの勇姿をご覧になってくださいな」
アリーナ「なんかよくわがんねけど、これってチャンスなんでねが?」
小梅「頑張ってルクリリさん。ここで結果を残して職人さんの目に留まれば、二次創作での出番が増えるかもしれませんよ」
ルクリリ「ぐ……わかった。ちょっと行ってくるわ」
オレンジペコ「赤星さんとアリーナさんは私がご案内しますね。こちらへどうぞ」
小梅「ありがとうございます」
アリーナ「こったらごと今までなかったから緊張するなぁ」
ルクリリ「……」ゴク
オレンジペコ「お味はいかがですか」
ルクリリ「相変わらず見事ね。一気に飲み干すなんてもったいないくらい」
アッサム「でもローズヒップはいつも一気飲み……困ったものです」
ダージリン「それはそれとしてイギリスのこんな諺を知ってる? どんな雲にも銀の裏地がついている」
アッサム「英語に戻すとEvery cloud has a silver lining.ですね」
オレンジペコ「立ちこめる雲は地上へ降り注ぐ光を閉ざしますが、その雲の裏側は太陽の光で銀色に輝いている…」
オレンジペコ「したがって、どんな困難な状況にだって良い面があることを意味します」
ダージリン「そのとおり。苦しいときこそ前向きに物事を捉える視野を持つことが重要よ」
ダージリン「今のあなた方にぴったりの言葉じゃないかしら。ね、ルクリリ?」
ルクリリ「ええ。胸に刻んでおきます」
ダージリン「ちなみにこの諺では輝く雲を銀色と表現しているけど、日本では太陽の光を色で喩えるとき、大抵赤を使うわよね」
ダージリン「面白いことに、日本の子供と欧米の子供にクレヨンで太陽の絵を描かせると、それぞれ使う色が違うそうよ」ペラペラ
アリーナ「話が長ぐなってきたの」
小梅「ええ。いただいた紅茶も全部飲んでしまったわ」
アリーナ「ダージリンさんっていつもこったら感じなんですかね」
小梅「オレンジペコさんとアッサムさんは慣れているみたいだけど…」
ルクリリ「zzz…」
小梅「ルクリリさんは退屈したのか寝てしまったようね。案の定テーブルに肘をついた姿勢で…」
アリーナ「そういやルクリリさん、劇場版のエンディングでもダージリンさんが喋ってる傍らで立ったまま寝てたな」
アッサム「ちょっとルクリリ、起きなさい…」ボソ
ルクリリ「ムニャ……はっ、失礼しました」
小梅「そしてアッサムさんはここでもケア役を務めるようです」
ダージリン「ププッ……前回より寝るまでの時間が1分28秒延びたわ。大健闘よルクリリ」
アッサム「ダージリン、やっぱりあなたこうなることを見越してあんなに長々と薀蓄を…」
小梅「どうやらダージリンさんは普段からルクリリさんの反応をお茶目に観察して遊んでいるようですね」
小梅「ドラマCDではローズヒップさん相手にも同じようなことをしていたし、案外誰に対してもそんな感じなのかも…」
アリーナ「すべてはダージリンさんの掌の上ってことだじゃ」
ダージリン「お疲れ様ルクリリ。お役に立てたかしら」
ルクリリ「はい。ありがとうございました…」
小梅「オレンジペコさん、お紅茶ありがとうございました。美味しかったです」
オレンジペコ「こちらこそ今日はお会いできて嬉しかったです。ぜひまたお越しになってくださいね」
ダージリン「お茶会にいらっしゃれば、このダージリンがお二人の個性を存分に引き出して差し上げますわ」
ルクリリ「でも最終的に美味しいところを持っていくのはダージリン様のような…」
アリーナ「で、このまま次のターゲットの所さ向かうんですか」
小梅「ルクリリさん、ちょっと心折れてません?」
ルクリリ「このくらい平気よ……ダージリン様の攻撃に耐えられない奴は聖グロではやっていけないからね」
アリーナ「さっきから思ってたんだども、聖グロの人が『聖グロ』って略して言うのアリなんですか?」
ルクリリ「さあ。私とローズヒップ限定でアリなんじゃないの?」
――知波単学園
アリーナ「次のターゲットは西さんだじゃ」
小梅「ええ。西さんはその人当たりの良さと天然ボケを活かし、天然ジゴロキャラとして二次創作界隈で人気上昇中です」
ルクリリ「公式アンソロやらぶらぶ作戦でも、その特性を存分に発揮しているわ」
小梅「あと知波単のみなさんは名有りキャラが多いので、この機会にざっくりと紹介しておきましょう」
西「よし。そろそろおやつの時間にしよう! 総員、食堂に突撃!」
福田・玉田・細見「「「突撃ーー!」」」
池田・名倉・寺本・浜田「「「突撃ーー!」」」
久保田・高島・寺島・篠川「「「突撃ーー!」」」
ルクリリ「なんだか台詞の表記にちょっと格差が見えるような」
小梅「はい。おそらくこの分類が妥当かと思います。順番に見ていきましょう」
小梅「まず福田さん、玉田さん、細見さんの三人はいわゆる主力キャラです。戦車道大作戦やドラマCDにも出演していますからね」
小梅「ただ劇中での活躍具合の影響もあり、福田さんと、玉田さん細見さんの間には扱いに多少の格差がみられます」
小梅「あと玉田さんはキャラデザの都合上、後述の池田さんと間違われがちです。一度公式にも間違われました」
ルクリリ「チハでパーシング2輌撃破なんて離れ業をやってのけたのに、なんだか不憫ね」
小梅「続いて池田さん、名倉さん、寺本さん、浜田さん。この方々は私たちと同じような位置のキャラといえるでしょう」
アリーナ「池田さんと名倉さんは車長。寺本さんは細見車の通信手だべ。みんな大学選抜戦に出場してます」
小梅「浜田さんはエキシビジョン戦のみの出場ですが、知波単勢がチハに乗って集合している公式絵にいたのでこの位置です」
小梅「ちなみに、ネット上で有名な『大学選抜戦撃破シーンまとめ画像』において名倉さんだとされている人物は浜田さんです」
アリーナ「これの影響で間違えて覚えてる人多いんでねぇかな」
ルクリリ「さっきは思わずdisるような発言しちゃったけど同情するわ。このSS読んでる人はいい機会だしちゃんと覚えてあげてね」
アリーナ「最後は久保田さん、高島さん、寺島さん、篠川さんですね」
小梅「私が言うのもあんまりですが、この方々はいわゆる『モブだけど名前がある人』です」
ルクリリ「うちのニルギリやルフナ様、それにバニラやクランベリーもこの位置と言えそうね」
小梅「その中で容姿が判明しているのはニルギリさんだけですね。ただニルギリさんは台詞がないので担当声優さんは不明です」
アリーナ「だども久保田さんたちの場合、一瞬だったけど全員顔出ししてたし喋ってもいましたね」
ルクリリ「それゆえエンディングのクレジットにもちゃんと担当の声優さんの名前が出ていたわ」
小梅「私は載ってませんでしたけどね」
ルクリリ「あと知波単勢ってせっかく名前が判明してる人が多いのに、みんな突撃大好きなこと以外はよくわからない気が…」
小梅「その辺りが間違えて覚えられてしまう一因なのかもしれません」
アリーナ「玉田さんと細見さんは戦車道大作戦に登場したことで、それぞれの細かい性格がちょっとだけわかってきたべ」
小梅「見た目もそうですが、玉田さんがどちらかというと体育会系で、細見さんがおしゃれな方という認識でいいと思います」
小梅「あと戦車道には西住流や島田流の他に、玉田流という流派が存在することが明らかになっているので、」
小梅「玉田さんがこの玉田流の後継者なのではないか、と考察するファンの方もいらっしゃるようです」
ルクリリ「で、全ライバル校の中で最も名有りキャラが多いこのチームをまとめるのが西さんね」
小梅「西さんは知波単勢の中では唯一細部まで設定が明らかになっている人物でもあります」
アリーナ「早い段階から登場が発表されていたキャラクターですしね」
ルクリリ「えーと、東京都港区出身で身長は158cm。趣味はバイクで、愛車にウラヌスと名付けて可愛がっていると…」
小梅「元ネタとなった人物を参考にした設定がいくつかあるのも西さんの特徴です。元ネタのウラヌスはバイクではなく馬ですが」
アリーナ「どうも実家がかなりのお金持ちっぽいのは確かみたいだべ」
ルクリリ「なるほど。知波単勢は元ネタの人物からある意味無限にネタを拾えるのね」
小梅「元ネタに倣っていえば、福田さんは大阪出身で得意科目は国語だったりするのでしょうか」
アリーナ「あの口調も方言を隠すためだったりしたらめんこいべな」
ルクリリ「この際だしあんたも本名を『二葉亭有菜』とかいうことにしちゃえば?」
アリーナ「お断りだじゃ」
西「全員揃ったな。よし! いたーだきーます!!」
知波単勢「「いたーだきーます!!!」」
西「どうだ福田、美味いか?」
福田「はい! 口の中に果実の優しい甘味と香りが広がって……感無量であります!」ウルウル
小梅「どうやらおやつはドロップで、配分は一人あたり1粒みたいですね」
ルクリリ「なんてスカンピンなおやつなの……知波単ってお嬢様学校じゃなかったっけ?」
アリーナ「だどもみんな生き生きしてて、とっても楽しそうだじゃ」
ルクリリ「こうやってキャラに縛られた生活をするのも娯楽の一環なのか…? イギリスかぶれの私が言うのもなんだけど」
小梅「私ももっとドイツ感出していった方がいいのかな」
アリーナ「……あんれ? お二人とも、ちょっと窓の外を見てけろ」
ルクリリ「どうしたの。ん? 戦車が1輌、校庭を走っていく……車種はチハ新砲塔か」
小梅「おかしいですね。戦車道チームの方は、みんなこの食堂でおやつを召し上がってるはずなのに」
アリーナ「これはまさか…」
アキ「もう、ミカったらまた勝手に他校の車庫に侵入してこんなことを…」
ミカ「侵入したんじゃない。風に誘われたのさ」ポロロン
ミッコ「でも戦車を快く貸してくれるなんて知波単のみんなは良い人たちだね」
アリーナ「あ、やっぱり継続の人たちだったべ」
ルクリリ「期せずして人気キャラたちに遭遇したな」
小梅「継続の戦車鹵獲ネタは劇場版公開当初から囁かれていましたが、ドラマCDでいよいよ公式ネタとして解禁されました」
ルクリリ「この人たちは発言も行動も劇中での活躍もすべてがぶっ飛んでるから、人気爆発も当然ってところか」
アリーナ「どうします? 戦車が盗まれたこと、知波単の人たちに伝えたほうがいいんでねが?」
小梅「せっかくだし私たちと境遇の似ている池田さんたちを呼んで、みんなで追いかけるのはどうでしょう」
ルクリリ「いいんじゃない? このタイミングで会のメンバーを増やすわけね」
池田「待てーー!」
名倉「我が知波単学園を冒涜する卑劣な行為! 断じて許さん!」
浜田「突撃してその腐った性根を叩き直してやる!」
アリーナ「寺本さん、こいつらは戦車泥棒の常習犯だべ。しっかり決定的瞬間を収めてけろ」
寺本「了解であります!」カシャッカシャッ
ルクリリ「で、流れのままにチハ2輌で追いかけて学園艦から陸地に入ったわけだけど、あいつらどこに行くつもりなんだろう」
小梅「今回盗まれたチハは彼女たちの本命ではないでしょうね。おそらく目的地までの足として利用するだけかと」
ルクリリ「なるほど。その気になればいつだってT-34を盗み放題の奴らが、わざわざチハを狙うなんて変だしね」
アリーナ「ルクリリさん今軽くプラウダのことさdisっただか?」
池田「あと我らが勇敢なる鉄獅子のこともさらりと侮蔑なさりましたね?」
ルクリリ「うるさいわね。知波単は車輌スペックで劣るから、敵の弱点を近距離から正確に撃ち抜く腕が鍵になるわけでしょ」
ルクリリ「ハ号でも冷却パイプを狙い撃てばマチルダを倒すことだってできる。あなたたちの技量は、私が痛いほど知ってるわ」
池田「ルクリリ殿…」
名倉「しかしチハを盗むことが直接の目的でないなら、もしや今から本命の戦車を盗みに向かうのではありませんか?」
小梅「そうですね。少なくともこのまま自分たちの学園艦に帰る可能性は低いと思います」
アリーナ「わだすらに追いかけられてるのに途中の森でキャンプするわけにもいがねぇだろうし」
ルクリリ「となると向かう先はプラウダの学園艦?」
アリーナ「んね。うちの学園艦は今青森だべ。ただでさえ遠い上にこの道だとさらに遠回りになります」
浜田「すると他の強豪校でしょうか。近場で真っ先に思い当たるのは聖グロですが…」
小梅「……違う。この方向はまさか」
寺本「どうされましたか?」
小梅「おそらく相手の目的地は黒森峰の学園艦です。うちは現在茨城に寄港中なので、ちょうどこの道の先にいます」
ルクリリ「あの黒森峰まで標的にするとは……本当にぶっ飛んだ連中ね」
池田「なんてことだ。やはりここは突撃玉砕あるのみ!」
ルクリリ「バカ! 相手はあんたらの戦車に乗ってるんだぞ。少しは躊躇しろ」
小梅「とにかく目的地までしつこく追って黒森峰側と協力して包囲しましょう。チームのみんなには私が連絡しますから」
――黒森峰女学園
名無し黒森峰隊員A「こちらA車、包囲完了しました」
名無し黒森峰隊員B「B車、右に同じです。対象の車輌は完全に停止しています」
名無し黒森峰隊員C「C車、こちらも対象車輌の停止を確認。乗員はまだ出てきません」
直下履帯子「やい戦車泥棒ども! 大人しく姿を見せて投降しなさい!」
池田「おや、心なしか表記が珍妙な気がします」
小梅「名前の公表されているキャラが少ないとこうした事態になります。黒森峰がSSに登場するとき陥りがちな現象です」
ルクリリ「もったいないなぁ。特に直下さんは正式名さえあればすぐにでも私たちの会に入れるくらいにはキャラ立ってるのに」
アリーナ「大学選抜戦に出た大洗連合30輌の車長の中で、正式名がないのは直下さんだけだべ」
ルクリリ「非公式の愛称がファンの間で定着しすぎるのも困りものね。私も未だに『後田さん』って呼ばれることあるし」
アリーナ「直下さんの場合、正式な名前が発表されたとしてもそのまま直下さんって呼ばれ続けそうだびょん」
直下履帯子「ちょっと! 全部聞こえてるんだけど!」プンスカ
小梅「それにしても継続の人たちなかなか出てきませんね」
脇にヘッツァーがいるぞ子「クソッ。こうなったら直接乗り込んで文句言ってやる」
ルクリリ(あんまりすぎる非公式名の人来ちゃった)
名倉「そういえば西住隊長のお姿が見当たりませんが、どうされたのでありますか?」
直下履帯子「隊長なら現在みほさんと大洗を観光中です。ちなみに副隊長も休暇でいません」
寺本「それに加えて赤星殿も我々と共に行動していたとなると…」
浜田「当然この危機にも氏名未公表の方々のみで対処することになりますね」
脇にヘッツァーがいるぞ子「コラァ泥棒どもめ! 出てこいッ!」ガチャ
チハ新砲塔「」シーン
脇にヘッツァーがいるぞ子「いない!?……どこにもいないぞ!」
直下履帯子「そんなバカな!」
脇にヘッツァーがいるぞ子「げっ、よく見たらこれ底がくり抜かれてる!」
池田・名倉・寺本・浜田「「えええーーっ!?」」
脇にヘッツァーがいるぞ子「どうやらこの穴から脱出して、真下のマンホールから学園艦のどこかに逃げ込んだみたいだ」
直下履帯子「不覚だ……完璧に包囲したつもりだったのに、まさかマンホールの真上に停車させてたなんて」ガックリ
小梅「ごめんなさい知波単のみなさん。こちらの不手際で大事な戦車をこんな姿にさせてしまって…」
池田「ぐぬぬ……だが見事な技術だ。あの短時間で大掛かりな道具も用いず、こんなにきれいな円型でくり抜くなんて」
直下履帯子「壊れた戦車はこちらですぐに修理しますので…」
浜田「いえそんなお気になさらず」
寺本「そうですよ。元はといえば我々が呑気におやつを食べていた隙に盗難されたのが原因ですし」
名倉「これくらいうちの親のポケットマネーでなんとかなりますよ」
ルクリリ「ここへ来て急にお嬢様設定を発揮しないでよ。しかも普通にカタカナ語喋ってるし」
寺本「せっかくだし記念に写メ撮ってSNSに載せちゃおう。スマホ最新のに機種変しておいてよかったー」ピロリーン
浜田「なんか疲れちゃったし帰りどうしようかな。爺やにメールしてヘリで迎えにきてもらおっかな」
池田「だったらうちのクルーザーを呼ぼうか? せっかくだし和洋中のシェフも乗せてみんなでディナーしましょう」
アリーナ「やめてけろードロップ一粒を愛おしげに味わっていた頃のみなさんに戻ってけろー」
直下履帯子「とにかくみんなで手分けして逃亡者を探しましょう。まだ学園艦のどこかに隠れているはずだから」
脇にヘッツァーがいるぞ子「知波単のみなさんは私と一緒に車庫の探索をお願いします。赤星はそっちのお二人を案内してくれ」
小梅「了解です。私たちは校舎の中を見てきます」
ルクリリ「校舎の中を調べるっていったって、アテはあるの?」
アリーナ「継続の人たちは戦車だけでなく、食べ物も普通に盗みます。まず調べるべきは食堂や家庭科室だべ」
小梅「あら? 今日は授業ないはずなのに、家庭科室に明かりがついてる」
ルクリリ「いきなり怪しいな。二人とも、戦闘準備はいい?」
アリーナ「もちろんだじゃ。腕が鳴るべ」
小梅「とりあえず縛る物は持ってきました」
ルクリリ「よし。カウントゼロで開けるぞ。3、2、1…」
ガラッ
ハンバーグ「」ジュー
エリカ「モグモグ……んぐっ!?」
小梅「え、エリカさん!? どうして??」
アリーナ「確か逸見さんは休暇だからいないって直下さんが言ってたべ」
ルクリリ「それがなんでこんなところで一人でハンバーグ食べてるわけ?」
エリカ「な、何よ。休日をどこでどんな風に過ごそうが私の勝手でしょ」
小梅「あ、そっか。ハンバーグを炭火で豪快に焼けるキッチンなんて、普通の家にはありませんからね」
アリーナ「だからわざわざ学校の家庭科室を借りたんだなぁ。大好物をじっくり味わうために…」
ルクリリ「すごい。燻製の本格的な設備もあるんだ。中にできたてのソーセージがいっぱい……さすがドイツ風学校ね」
エリカ「ちょっとあんたたち出ていってくれない? せっかくの優雅な休日が台無しじゃない」
アリーナ「思えば逸見さんのハンバーグ好き設定って、ガルパン最大のギャップ萌え要素かもしれねぇべ」
ルクリリ「確かに。言わばヤンキーが見知らぬお年寄りの荷物持ってあげたり捨て猫保護したりすると好感度上がるアレよ」
エリカ「出てけえええええ!!!」
小梅「申し訳ありませんが、私たちはここを離れるわけにはいきません」
エリカ「なんでよ」
ルクリリ「そうよね。成り行き上泥棒探しをする羽目になってたけど、本来の目的は人気キャラに会って絡むことだったし」
アリーナ「逸見さんといえば、今ガルパンファンの中で最もアツいキャラと言っても過言でねぇお方だじゃ」
小梅「エリカさんが登場すると読者のみなさんが喜び、結果このSSの閲覧数も伸びて私たちの存在をより広くアピールできます」
ルクリリ「いわゆるwin-winの関係ってやつよ」
エリカ「優雅な休日を邪魔されてる私のwin要素がどこにも見当たらないんだけど」
小梅「というわけなのでエリカさん、頑張って読者のみなさんが喜ぶようなことをしてください。さあ早く」
エリカ「ねぇ赤星……あんたこんなに人の話聞かない子だったっけ?」
アリーナ「何もしねぇっていうなら逸見さん、ちょっとわだすと並んで立ってけろ」グイッ
エリカ「ちょ、力強っ」
アリーナ「ほら逸見さんの身長は159cm、わだすより1cm低いべ!」
エリカ「だからなんだっていうのよ!」
エリカ「とにかく私は今ハンバーグを食べてて忙しいから、あんたたちに構ってる暇なんてないのよ」
ルクリリ「聞き捨てならないな。私たちはハンバーグより下ってわけか」
エリカ「仕方ないでしょ。あんたたちが登場するSSよりも私がハンバーグネタでいじられてるSSの方が本数多いくらいだし」
小梅「エリカさんばっかりずるいです。本編ではみほさんと仲良くしてるシーンなんてまったくないのにSSではいつもペアだし」
小梅「私だってせめてファンのみなさんの創作の中でくらいみほさんと仲良くお茶したり各地を観光したりしてみたいです…」メソメソ
アリーナ「あー泣いちゃったべ! 同級生泣かすなんて逸見さんひでえじゃ」
ルクリリ「今までもそうやってみほさんを散々口撃して傷つけてきたんでしょ。最低ね」
小梅「ダメです二人とも、エリカさんを責めないであげてください。不器用なだけで本当は優しい人なんです…」メソメソ
エリカ「え、ちょっと待って何この空気……」
アリーナ「どうにかしてぇなら何か面白いことしてけろ」
ルクリリ「そうよ。まほさんを崇拝しすぎてドン引きされるとか、ハンバーグ以外にも色々と持ちネタあるでしょ」
小梅「さあ早く」ケロリ
エリカ「嘘泣きじゃないの!」
エリカ「もういいわ……お代わり用に焼いてたハンバーグ分けてあげるから大人しく食べててくれる?」
アリーナ「お? はぐらかそうたってそうはいがねぇべ」
小梅「それに、お代わり用のハンバーグなんてどちらにあるんですか?」
エリカ「見てわからないの? この網の上に――って」
エリカ「嘘っ……ない! 私の食べかけのハンバーグもお皿ごとなくなってる!」
ルクリリ「ちょっと、ここに入ってたソーセージも全部なくなってるんだけど」
小梅「そんな……一体いつの間に」
ルクリリ「まさか私たちが茶番やってる間に、侵入者が――」
アリーナ「見てけろ、家庭科準備室に通じるドアが開いてるべ!」
――家庭科準備室
ミカ「炭火焼きと燻製には、人生に大切なすべてのことが詰まっているんだよ」ガツガツ
小梅「やっぱりあなたでしたか」
ルクリリ「かっこいいこと言ってるつもりだろうけど、食べ物にがっついてる時点で台無しだからな」
エリカ「どうしてくれるのよ! そのソーセージを先生に献上するのを条件に家庭科室の使用を許可してもらったのに!」
ミカ「そんな交換条件に意味があるとは思えない」ムシャムシャ
小梅「ミカさん、この学園艦の出入り口は既に封鎖されています。もう逃げ場はありません。投降してください」
エリカ「哲学的な言葉でこちらを動揺させようとしても無駄よ。観念しなさい。ていうかいつまで食べてるのよ」
ミカ「食事……それは人生に欠かせない行為だ」バクバク
アリーナ「もはや哲学でもなんでもねぇな」
ミカ「果たして君たちは本当に私を包囲したといえるのかな」モグモグ
エリカ「はぁ?」
ミカ「ミッコ、左」
エリカ「なっ、もう一人隠れてたの?」キョロキョロ
小梅「一体どこに…」キョロキョロ
ルクリリ「後ろか?」
アリーナ「それだけはねぇべ」
ミカ「Tulta」ガラッ ピョーン
ルクリリ「しまった、ブラフか!」
アリーナ「窓から逃げたべ! 赤星さん、すぐに他のみなさんに連絡してけろ!」
小梅「こちら赤星。対象一名が家庭科準備室の窓から飛び降りました。現在、中庭を北方向に逃走中――」
小梅「武器は所持していませんが、食料が盗まれました。他二名の所在は不明です」
脇にヘッツァーがいるぞ子『こちら脇ガイル。了解した。付近にいるのですぐ確保に向かう』
ルクリリ「公式さん、頼むからこの人にも名前つけてあげて…」
アリーナ「そういや脇ガイルさんと知波単のみなさんは車庫を調べていたような」
エリカ「まさかアイツ、全員で飛び出して車庫を空けたりしてないでしょうね?」
Ⅲ突G型「」ブーン
脇にヘッツァーがいるぞ子「待てえええええええ!!!!」
池田・名倉・寺本・浜田「「待てえええええええ!!!!」」
エリカ「あのバカああああああああああ!!」ジタバタ
ミッコ「戦車を快く貸してくれるなんて黒森峰のみんなは良い人たちだね」
アキ「うぅ……なんでこんなことに」
ミカ「ハンバーグとソーセージには、人生に大切なことと肉汁がたっぷり詰まっているんだよ」ガツガツ
アリーナ「あのⅢ突、もうすぐここの真下を通過するべ」
ルクリリ「まずい。継続トリオのスキルとⅢ突の火力が合わされば、出入り口の包囲網を突破されかねない」
エリカ「くっ……私もティーガーⅡで応戦したいところだけど、今から車庫に行ってたら間に合わないわ」
小梅「私が行きます!」バッ …シュタッ!
エリカ「ちょっ、赤星!!」
ルクリリ「そんな、この高さから走行する戦車に飛び乗ったなんて…」
小梅「これくらい平気です。これでも私、戦車道で鍛えられてますからね」
小梅「確かにこのⅢ突は試合にほとんど出ない車輌だし、いっそ継続さんで活用していただいた方が幸せなのかもしれません」
小梅「だけど……この子はそれでも私たち黒森峰の大切な仲間です。今度は私が、必ず仲間を守ってみせます」
エリカ「小梅……」
ガチャ
小梅「さあミカさん、シャッハマットです。無意味な鬼ごっこは終わりにしましょう」
ミカ「物事はなるようにしかならないからね。風向きが変わったというなら、私もそれに身を任せるだけさ」
小梅「意味がわかりませんが、とにかく戦車の盗難なんて行為を許すわけにはいきません。投降してください」
キキーッ ピタ…
小梅「きゃっ……止まった?」
アキ「ミッコ?」
ミッコ「ダメじゃないかミカ。貸してもらえたって聞いたから運転してたのに、泥棒ならあたしは協力しないよ」
ミカ「泥棒じゃない。このⅢ突が私に語りかけてきたのさ」
ミッコ「いつもそう言ってるけど、まさかこれまでも毎回ただ盗んできただけだったのか?」
小梅「まさかミッコさん、今まで気づいてなかったんですか? 今日だってずっと追いかけられて泥棒呼ばわりされてたのに」
アキ「そうなんです。純真な子なんで…」
ミッコ「どうしてくれるんだよ。こんな悪いことしてたらフィンランドにいるサンタさんがプレゼントくれなくなるじゃないか!」
小梅(ミッコさんって……天使だったんですね)
小梅「黒森峰としては、この車輌さえ返していただければ無罪放免としたいのですが……そうも簡単に事は運ばないでしょう」
小梅「知波単のみなさんも被害に遭いましたし、その上普段からプラウダでやりたい放題らしいじゃないですか」
アキ「ごめんなさい! ミカは見てのとおり、持ち物を盗むことでしか他人とコミュニケーションを取れないクズなんです!」
ミカ「私はただ風の気まぐれに身を委ねているだけさ」モグモグ
アキ「ほんと後できつく叱っておくんで…」
小梅(なんか憐れに思えてきた…)
小梅「まあ知波単のみなさんは壊れた戦車をポケットマネーで修理するとおっしゃっているので、きっと許してくれるでしょう」
小梅「問題は普段から色んなものを盗まれているというプラウダのみなさんです」
アキ「私たちが悪いのはわかってるんですけど、いかんせんうちは貧乏学校で…」
アキ「ミカが戦車を盗むのも、私たちチームを憂うあまりの行動だと思うんです」
アキ「ミカはこんなだけど、学校や戦車道チームのことをちゃんと考えてくれたりもするんです」
アキ「執拗にプラウダを狙うのだって、きっとプラウダの人たちと仲良くしたい気持ちの表れで…」
小梅「アキさん……しかしプラウダの人たちはそれで許してくれるでしょうか…」
エリカ「小梅のやつ、一人で大丈夫かしら…」
アリーナ「あっ、出てきたべ」
小梅「アリーナさん、ちょっと相談したいのだけど」
アリーナ「なんだべ?」
小梅「カチューシャさんに連絡を取ってもらえないかしら。私が間に入って、示談交渉の場を取り持ちたいの」
小梅「知波単のみなさんも戦車の修理代を請求しないとおっしゃってるし、私たちもⅢ突を守ることができた今――」
小梅「継続の方々が謝罪しなければならない相手は、プラウダのみなさんだけです」
ルクリリ「謝罪するったって、あのカチューシャさんやノンナさんが許してくれるとは思えないけど」
アリーナ「あーそれなら大丈夫です。今日中に交渉すればきっと許してくれるはずだべ。今なら二人ともめちゃくちゃ機嫌良いんで」
ルクリリ「え、そうなんだ。珍しいこともあるものね」
エリカ「話がトントン拍子で進んでるところ悪いけど、私のハンバーグのこともたまには思い出してくれる?」
アリーナ「実は今日カヂューシャ隊長がおねしょしたんです。それを見つけたノンナ副隊長は朝から超ご機嫌で…」
アリーナ「隊長が起きる前に副隊長がシーツを自室に回収し寝巻も交換したんで、隊長は自分がおねしょしたことさえ知りません」
アリーナ「ちなみに濡れた布団本体はさすがに誤魔化せねぇんで、たまたま運悪く寝坊してたニーナのものとすり替えられ…」
アリーナ「結果おねしょしたのはニーナってことになり、隊長は朝からニーナをドヤ顔で励ましたりして機嫌が良いというわけだべ」
ルクリリ「狂ってやがる…」
小梅「なるほど。ではすぐにでも交渉を始めましょう。アキさん、心配しなくても大丈夫そうですよ」
アキ「よかった……赤星さん、どうもありがとう」
エリカ「だから私のハンバーグ返せって言ってんのよ! プラウダのバカ二人が許しても私は絶対許さないんだから!」
池田「ハンバーグならうちのシェフに言って作らせましょうか? ちょうどA5ランク黒毛和牛も用意させていますし」
エリカ「へ?」
池田「ほら、あそこにいるクルーザーに乗っているので」
エリカ「な、なら先生が要求していた本場ドイツの製法で作られたソーセージも……?」
池田「問題ありません。注文さえすればご用意できますよ」
エリカ「神風吹いた! BANZAI!!」
カチューシャ『戦車盗難の件? いいのいいの。カチューシャは心が広いから、たとえ同志がおねしょしたって咎めたりしないわ』
ノンナ『Да…もはや細かいことなど構いません。今日という一日がこれほどにも素晴らしい――それで十分ではないでしょうか』
カチューシャ『さすがノンナ。良いこと言うじゃない♪』
アキ「なんか知らないけど助かった…」
小梅「これで目下の問題はすべて解決しました。一件落着ですね」
池田「お疲れ様でした。せっかくですし赤星殿やみなさんもぜひうちの船にいらっしゃってください。歓迎しますよ」
小梅「池田さん……そうですね。ではお言葉に甘えて…」
ルクリリ「ミカさんや逸見さんとも絡んだし、人気キャラと会う旅ももう十分よね」
アリーナ「んだ。この機会にみなさんで親睦を深めると良いっきゃ」
エリカ「A5ランク和牛ハンバーグ……A5ランク和牛ハンバーグ……」
ミカ「それじゃあ私たちもクルーザーにお呼ばれして夕食といこうか」
ミッコ「まだ食べる気かよ。ていうか少しは反省してよ」
――池田家クルーザー
チントンシャン チントンシャン
ルクリリ「クルーザーって聞いたから勝手に洋風なイメージ持ってたけど、中身は屋形船だったのね」
アリーナ「お琴の生演奏を聞きながら畳の上でいただく夕食……イメージが保たれたのか保たれてねぇんだか…」
エリカ「いずれにせよハンバーグが美味しいから文句はないわ」モグモグ
池田「さて、藪から棒で恐縮ですが……宴会といえばやはり余興が肝心であります」
名倉「実は我々には、最近鍛錬を続けている取って置きの余興があるのです」
寺本「こう見えても知波単学園は、他校の良き戦術を積極的に取り入れようと日々議論を重ねているのであります」
浜田「そんな我々が、全国優勝を果たした大洗女子学園の強さにあやかるべく取り入れたのがこの余興――」
小梅「まさか…」
池田・名倉・寺本・浜田「「「あんこう踊りであります!!」」」ジャーン
ルクリリ「相変わらず努力の方向性がおかしい連中ね…」
ルクリリ「ねえ考えたくないんだけど、もしかしてこれ私たちも一緒に踊らされる流れ?」
エリカ「は!? そんなの断固阻止よ」
小梅「いいですね。私も踊ります。アピールの旅を締めくくる意味でも、みんなで踊って盛大に目立ちましょう」
ルクリリ・エリカ「「えっ」」
アリーナ「わだすも踊るべ! みなさんと横一列に並べば、わだすの正確な身長や体格をアピールできますから」
小梅「さあルクリリさん、こんなチャンス滅多にないですよ。みんなで一緒に踊れば怖くありませんって」
ルクリリ「嫌だ! ネットのあちこちにあんこうスーツコラが貼られるのはダージリン様だけで十分よ!」
小梅「エリカさんも遠慮しないで。あなたが踊れば読者のみなさんは大喜び間違いなしです」
エリカ「だだだダメダメ、私ハンバーグ食べるのに忙しいから」
アリーナ「ちょっと一緒に踊るだけでねぇが。いいがら来てけろ」グイグイッ
ルクリリ・エリカ「「だからあんた力強いって!」」ズルズル
ミカ「ああ あんあん♪ ああ あんあん♪」ポロロン ポロロン
アキ・ミッコ(ミカ、この曲弾けたんだ…)
池田「おおっ、赤星殿なかなか筋がよろしいですね」
小梅「ええ。以前みほさんが踊っている動画を観て、密かに練習していたので」
名倉「本日の赤星殿の勇姿、私もしかと目に焼き付けました」
浜田「ええ。仲間を守るために窓から飛び出したときの勇ましさと力強い眼差し……まさしく戦う乙女のお姿でした」
寺本「我が学園の新聞の一面にぜひ掲載させていただきたいです!」
アリーナ「ほら大丈夫。たとえエンドロールに名前がなくたって、赤星さんは立派なガルパンファミリーの一員だべ!」
小梅「みなさん……はい!」
ルクリリ「クソッなんで私がこんな目に……おい人気キャラ、なんか上手いこと言って締めなさい」
エリカ「炒めて煮込んでほっかほかって、これ実はハンバーグの歌じゃないの?」
おわり
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