水木聖來「わんっわんっ♪」 (26)
水木聖來「たまには昔の話を」
水木聖來「そして、これからの話を」
の続きですが、モバPが水木聖來と交際中ってことさえ知ってれば前作を読む必要はないです。
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AM7:30 モバプロ内モバPマイルーム
ガチャリコ
ちひろ「……開いてる……ってことは……」
モバP(以下P)「ちひろさん、おはようございます」
ちひろ「おはようございます。やっぱりもう来てたんですね……ってあれ? 確か昨日って、一緒に会社を出ましたよね?」
P「はい」
ちひろ「良かった……また泊まりだったのかとちょっとひやっとしましたよ」
P「この間肇ちゃんのバースデーが終わって、今は差し迫った仕事もないですしね。家に帰ってしっかり休ませて頂きました」
ちひろ「しっかりって言っても、昨日会社を出たの11時回ってたし、今朝も私より早くに出てきてるんですが」
P「そこはほら、男女の体力の差と言いますか」
ちひろ「Pさんほどのバイタリティに溢れた男性、探してもなかなかいないと思いますよ……」
ちひろ「仕事も良いですけど、プライベートも大切にしてくださいね。聖來ちゃんとの時間、ちゃんと取れてますか?」
P「お互い忙しいので、あんまりまとまった時間は。とはいえ、折を見て時間をつくるようにはしてます」
ちひろ「大切にしてあげてくださいね。イヤですよ、別れて職場の空気がギスギスするの」
P「別……ちょっと、縁起でもないこと言わないでくださいよ」
ちひろ「あっ、そうそう、別れると言えばPさん、しゃちょ――」
ガチャリコ
水木聖來「おはよーございまーす!」
わんこ「ワフッ」
ちひろ「あっ、聖來ちゃんおはようございます。丁度良いところに」
P「わんこー!!!!」
ちひろ「」ビクッ
P「わんこー、わんこー、おはよーわんこー」ワシャワシャワシャ
わんこ「」
ちひろ(わんこくんが悟りきった目をしてる……って、言った側から聖來ちゃん無視で……!)
聖來「今日もPさんとわんこは仲良しだね!」ニコニコ
聖來「ってちひろさん? どうかしたの?」
ちひろ「……いえ……もう勝手にしてください……」
ちひろ「今日はわんこくんと一緒なんですね。今日って何かありましたっけ?」
聖來「ううん、アタシ明日休みだし、今日はわんことのんびり帰ろうかなって」
ちひろ「なるほど……ん?」
ちひろ(確か明日はPさんもお休みだったはず……)
ちひろ(……『わんこを連れてきた』のは、『わんこを家に置いていけない』理由があったから?)
ちひろ「…………」
ちひろ「聖來ちゃん、くれぐれもパパラッチには気をつけてくださいね」
聖來「え!? 何で分かったの!?」
ちひろ「そりゃ」
P「わんこーわん……あ、聖來さんおはようございます」
聖來「Pさんおはよー! 今日はいつもよりこっちの世界に戻ってくるの早かったね!」
ちひろ「……こいつら……」
P「はぁー、とりあえず欠乏しがちなわんこ分の補給は完了です」
ちひろ「相変わらずの犬キチですね……Pさんは犬飼わないんですか?」
聖來「!!!!!!」
P「いやぁ、もちろん飼えるなら飼いたいですけど、こんな仕事してますから。とてもじゃないけど構ってあげる時間作れないですしね」
ちひろ「構ってあげる、じゃなくて構ってもらう、の間違いじゃないですか?」
P「あ、そうでした。構って貰う時間作れそうにないですし」
ちひろ「ホントに訂正しちゃったよこの人」
聖來「…………」フルフル
P「? 聖來さん?」
ちひろ「聖來ちゃん? どうかしーー」
聖來「Pさん! ペットショップに行こう!」ガシッ
P「ふぁっ!?」
ちひろ「聖來ちゃん!?」
聖來「Pさんは大型犬が好きなんだっけ? だったらやっぱり賢いゴールデンかラブラドールかな! そういえばこの間近くのホームセンターのペットコーナーに凄く可愛い子がいたの! まだこんなにちっちゃいこなんだけどねーー」
P「あ、あの……」
聖來「――けど小型犬も可愛いよね、耳のふわふわしたパピヨンとか、セイラも大好きなんだけど、ああけどダメか、わんこはゴールデンだもんね、お嫁さんにするならやっぱり大型の子が良いかなぁ! けどそうするとーー」
P「ちひろさん!? なんだかわんこのお嫁さん探しをする話になってるんですけど!?」
ちひろ「あーもう、このバカップルは! 犬が絡むと揃って暴走特急になるんですから……!」
ちひろ「お二人とも、犬好きも大いに結構ですけど、もう少し周りを見てくださいね」
聖來(正座)「ごめんなさい……」
P(正座)「なんで僕まで……?」
ちひろ「……で?」
P「で?」
ちひろ「犬、飼わないんですか?」
P「うーん、飼いたいですけど、やっぱり無理ですよ。構う構わない以前に、家に帰れたり帰れなかったりしますし」
ちひろ「そもそもその生活を見直して欲しいんですけど……」
聖來「犬飼うようになったら、気を付けるようにならないかな……?」
P「と言っても、仕事量減らしてもスケジュール的にどうしても帰れない日もありますし」
聖來「じ、じゃあそういう日はアタシがPさんのウチに行ってお世話するよ!」
ちひろ「聖來ちゃん、いくらなんでもそれはちょっと、色んな意味で不用心ですよ」
聖來「うーん、じゃあ、普段はウチでお世話する、とか! で、Pさんが帰れそうな日はウチに寄って連れて帰れば良いよ!」
ちひろ「……それはもう」
P「僕の犬というより聖來さんちの犬ですよね」
吉岡沙紀「じゃあ、ウチの部署で飼うって言うのはどうっすか? 部署としてなら毎日誰かしらいますし、世話人には事欠かないっすよ」
望月聖「……お隣の……ペロちゃん、みたいに……」
ちひろ「ペロちゃんって、佐城雪美ちゃんのネコでしたっけ?」
藤原肇「はい。なんでも佐城さんのお宅ではネコを飼えないらしくて、部署で引き取ってお世話してるらしいですよ」
P「なるほどね、部署で飼うって手もあるのか……」
聖來「…………」
ちひろ「…………」
P「……あの、いつからいた?」
沙紀「そうっすねぇ、お二人がちひろさんに正座させられたところからっすかね」
聖「……おはよう、ございます……」
肇「ご挨拶はしたんですけど、聞こえていないようでしたので」
P「いやぁ、これはまた恥ずかしいところを見られちゃったな」タハハ
沙紀「今更感半端ないすね」
肇「……ですね」
聖來「あっ、ホントにもう皆来る時間だ。あとは比奈ちゃんだけかな?」
バタン
比奈「」バタリ
聖來「比奈ちゃん!?」
沙紀「まーた徹夜っすかね?」
比奈「あ……ス……スタ……」プルプル
ちひろ「はいはい、スタドリですね」
比奈「」ゴクゴク
比奈「ップハー、生き返ったッスよー」ペカー
聖「……凄い……顔色が……」
肇「一気に良くなりましたね……中身は一体なんなんでしょうか」
ちひろ「肇ちゃん、知らない方が良いことも、世の中にはあるのよ?」
聖來「じゃ、皆揃ったところで今日のスケジュールの確認しよっか」
P「そうですね。午前中は隣の会議室でミーティングです。4月から長く続いたバースデーライブの総括と、8月の公演内容を煮詰めて、あとは11月の公演のコンセプトなんかにも少し触れていきます」
沙紀「8月の公演もまだまだなのに、11月の話っすか」
P「最低限コンセプトなんかは決めておかないと、余所の部門にも飛び火しますからね」
P「で、午後からはダンスレッスンです。8月のステージがまたダンス重視の公演になるので、基礎体力を培う意味でもしっかりやってきてください」
比奈「ぐぇ」
肇「比奈さんが潰れた蛙のような悲鳴を」
P「この間のはしっとりとした和風のショーだったから良いじゃないですか」
比奈「いやぁ、それでもキツいものはキツいっスよ」
P「まぁそこはお仕事なんで割り切ってください。一日のスケジュールは以上になります。何か質問はありますか?」
シーン
聖來「よし、じゃあ今日も一日、頑張ろー!」
オーッ!
聖來「けど……Pさんち犬飼えないのか-、残念」
沙紀「まぁ、Pさんもいつぶっ倒れてもおかしくないハードな生活送ってるっすからね」
比奈「Pさんが引っ越す前ならアタシがお世話に行けたんスけどね」
肇「比奈さん、Pさんのお隣さんだったんでしたっけ?」
比奈「そうそう。飲まず食わずで漫画描いてて、アパートの廊下でぶっ倒れたところを介抱してもらったのが縁の始まりっス」
聖「……比奈さん……」
聖來「Pさんもだけど、比奈ちゃんの生活も心配だよ……」
比奈「けど担当アイドルと一つ屋根の下なんて、って言って引っ越しちゃったんスよね」
P「それはそうでしょう。曲がりなりにもアイドルだし、痛くない腹を探られるのは愉快じゃないですし」
沙紀「ほほーう、聞きましたか肇ちゃん」クックッ
肇「ええ。アイドルとお付き合いしてる男性のものとは思えない、真っ当なお言葉です」クスクス
P「……なんのこったよ」
比奈「とぼけちゃってー。どうせ新しいアパートに聖來さん連れ込んでるくせにー」ヒューヒュー
P「さぁ、なんのことやら」
聖來(……! そうだ!)
P「? 聖來さん、会議室行きますよ?」
聖來「あ、うん! 今行くよ!」
PM17:30 モバプロ内モバPマイルーム
オツカレーッス オツカレサマデシター
聖來「Pさん、アタシも帰るね」
わんこ「ワフッワフッ」
P「ああ、はい、お疲れ様でした」
聖來「…………」
P「…………」
聖來「ん」
P「え? ……あ、そうか。はい」
聖來「うん! じゃあまた後でね!」
P「はい。ってなんか楽しそうですね」
聖來「ふふっ、それは後のお楽しみ!」
わんこ「ワフッ」
チヒロサンモオツカレサマデス ハイ、オツカレサマデス
ちひろ「で、今のはなんですか?」
P「ウチの鍵です。流石に合い鍵は渡してないので」
ちひろ「なるほど。って、もう隠す気もないんですね……」
P「流石に学生組の前では自重しますよ。けど今は、事情を知ってるちひろさんしかいませんし」
ちひろ「幸せそうなお二人に水を差すのは気が引けますけど、もう少しこっそりやった方がいいと思いますよ。仮にもアイドルとプロデューサーの関係なんですし、ちょっとした気の緩みがアイドル生命を絶つこともありますから」
P「う……それもそうですね」
ちひろ「まぁ、聖來ちゃんもいい大人ですし、Pさんが聖來ちゃんを泣かせるような真似しなければ、モバプロからは特に口出しするつもりはないんですけど」
P「……アイドルに手を出した僕が言うのもなんですけど、モバプロってそういうとこ割と緩いですよね」
ちひろ「もちろん未成年に手を出してたら口出しはしますけど、成人してる男女の色恋に首を突っ込むのは野暮ですからね」
ちひろ「余所の男性アイドルに手を出されて賠償問題とか、芸能界のいろはを知らない一般男性と付き合われてトラブル起こされることを思えば、社内恋愛を推奨したいぐらいらしいですよ、社長は。その方が教育も管理もしやすいって」
ちひろ「あっ、そうそう、朝言いそびれましたけど、その社長から伝言です」
P「社長から!?」
ちひろ「はい。『最後までバレなかった先人を何人か紹介するから、バレないように交際する秘訣を教授して貰いなさい』だそうです」
P「……なんかもう……ほんとにアレですね!」
PM20:00 モバP宅 玄関前
P「ふぅ、なんか色々疲れたなぁ」
P「……社長の言ってたこと、聖來さんにも伝えないとな」
ガチャリ
P「ただいまー」
ワンッ
P「おー、わんこー、ただい」
聖來「Pさんお帰りなさい! わんっ!」
P「――ま?」
聖來(犬耳ON)「わんっ!」
P「―――――――――――――――――――――」ドサッ
聖來「……? わんっ!」
P「―――――――――――――――――――――わ」
聖來「わふ?」
P「わんこだあああああああ!」ガバッ
聖來「!?」
P「わんこー、わんこー」ギュウウゥゥゥゥゥ
聖來「え!? ちょ!? Pさん!!?」カァァァァァ
P「可愛いなぁわんこー、わんこー」ワシャワシャワシャ
聖來「待ってPさん! ちょっと心の準備が……!」グググ
P「わんこー、せーらわんこー、わん」
わんこ「ワンッ!」ドーン
P「ぐふっ」
聖來「わんこナイスタックル!」
聖來「Pさん、セクハラだよ」
P「いや、こういう反応期待されてるのかなって思って」
聖來「期待……も、しなかったわけじゃないけど……そっ、それでももう少し雰囲気を」
P「」ワシャワシャワシャ
聖來「きゃっ!? ちょ、ちょっとPさん!?」
P「いやぁ、せーらわんこは可愛いなぁと思って」ワシャワシャ
聖來「……うー……」
P(照れて大人しくなるのも可愛い)
P「で、急にどうしたんですか、犬耳なんて付けて」
聖來「あ、うん。今朝、犬飼えないって言ってたでしょ?」
P「あー、そういえばそう言う話しましたね」
聖來「でしょ? だから、セイラがわんこになればいいかなって」
P「なる、ほ、ど……?」
聖來(犬耳)「ほらPさん、わんこだよ! 忙しくてもお世話のいらないわんこ!」
P「…………」
聖來「それどころかちょっとしたお世話ならこっちがしちゃうし、あ、けどあんまり構ってくれないと、ちょっと拗ねちゃうかも」
P「あーもう、いちいち可愛いなぁ」ワシャワシャ
聖來「わふっ♪」
PM20:00 モバP宅リビング
聖來「――で、なんで膝の上に座らせられてるの?」
聖來(膝の上って言うか、あすなろ抱きというか。なんていうんだろこの体勢)
P「んー? いやだって、今の聖來さんはわんこなんでしょ?」
P「夢だったんですよね。犬を飼ったら、思いっきりだっこするの」
聖來「っ……そう言われたら、無碍には出来ない、ケド」
聖來(この体勢……色々、ヤバいかも)ドキドキ
P「どうかしました?」
聖來「っPさん、耳元で囁くの、ダメだってば」
P「んー?」クスクス
聖來「分かっててやってるでしょ……もう」
聖來「Pさん、セイラわんこの抱き心地はどう?」
P「んー」ギュゥゥ
聖來「きゃん♪」
P「……聖來さん、ちゃんとご飯食べてます? なんか細過ぎて心配になってくるんですけど」
聖來「えぇ!? むしろアタシがPさんの食生活を心配してるんだけど……」
聖來「……Pさんは、ぽっちゃりしてる方が好き?」
P「んー。ぽっちゃりした聖來さんがいないと比べられませんね」
聖來「それってどういうこと?」
P「聖來さんならきっと、どっちでも魅力的だってことです」
聖來「ふふっ、なにそれ」
P「わんこ的にはどうです? この体勢、辛くないですか?」
聖來「うーん」
聖來「……アタシ達さ、身長差あるじゃない?」
P「? まぁ、そうですね。聖來さんは小柄ですし、僕はのっぽですし」
聖來「でしょ? だからこれまでは、キスしづらいなーとか、ちょっと思ったりしてたんだけど」
聖來「……これ、ちょっとヤバいかも」
P「ヤバい?」
聖來「なんていうのかな、こう、Pさんの腕の中にすっぽり収まってる感じ?」
聖來「……幸せ過ぎて、気を付けてないと顔が弛んじゃう」ニヘラ
P「……あーもう、ホント可愛いなぁ!」ギュウ
聖來「えへへ♪」
聖來「あ、けど」
P「ん?」
聖來「お尻に固いのが当たってるのは、ちょっと気になるかな」
P「……ふ、不可抗力です」
聖來「……ふふっ、Pさん?」
聖來「セイラわんこに、発情しちゃった?」スリスリ
P「っ……聖來さん、お尻をこすりつけてくるのは……」
聖來「ん?」スリスリ
P「……このっ」ドサッ
聖來「きゃんっ」
P「ご主人様をたぶらかす悪いわんこには、おしおきが必要ですね」
聖來「わふっ♪ わんっわんっ」
聖來「わんっ♥」
糸冬
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意味なんか必要ねぇんだよ!
お付き合い頂きありがとうございました。
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