――以上でドラフトを終了します。
パワプロ「…俺、呼ばれなかった」
高校生の俺は甲子園優勝までいった。でも俺はプロ野球選手になれなかった
とあるマネージャーM「え、ドラフトに指名されなかったの? 別れましょ」
オマケに彼女に振られた
三年間苦楽を共にし、俺と違ってドラフト指名された仲間はみんな口々に言った。
「先にプロで待ってる」
と。
だから努力した。大学にも行けた。けど結局大学リーグは初戦敗退、黒星連発。
当然そんな奴がドラフト指名されるわけが無く。俺の大学野球は終了した。
大学を卒業した俺は実家に戻り、両親が経営している喫茶店を継いだ。
そして高校時代の仲間がプロ入りしてから、八年が経っていた。
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パワプロ「よっほっ、よし」
フライパンを器用に動かし、中でガーリックと一緒に焼けた肉を皿に乗っける。
そしてゆでた野菜を載せてカウンターにトンと乗せた。
パワプロ「はいよ。ステーキ定食」
バイトプロ(バイプロ)「ういっす」
バイプロがステーキ定食を客に持っていくのを見ながら、ふーっと息を吐きだした。
※すまぬ、台本形式は書きづらいから台本形跡じゃないやり慣れてるやり方で行く。
あと十分そこらすればお昼のピークも完全に過ぎるだろう。一時間前は客がごった返して満席だったテーブルは現在はちらほらと空きが出来ている。
「皿洗いでもするか」
腕まくりをして辛苦に溜まっている食器を片付け始めた。量はそこそこあるが、慣れた今ならそんなに時間はかからない。
慣れたもんだなーと考えながらスポンジに洗剤を付けて洗い始めた。
お昼のピークも過ぎ、手持ちぶたさになる。時刻は二時過ぎ。ある意味一番暇な時間だ。
こうなると彼は店の新聞ラックからスポーツ新聞を引っ張り出して読むのがいつものこと。
「結婚かぁ」
記事には『十坂(親切高校)、卒業と同時に入籍』という見出しが載っていた。
「俺には縁が無いなぁ…」
というより、彼は高校時代の一件で少々女性恐怖症な毛があったりする。本当に軽度なものだが。
「まぁ、母ちゃんも父ちゃんも孫が欲しいとは言ってないし、別にいいだろうしな」
のんびり屋の気がある両親を思い浮かべ、別にいいだろうと何となしに考えてしまうあたり、自分もあの両親の子だなぁと思わず苦笑した。
「おーい、店長いるか?」
声を掛けられ、顔を上げる。そこには中肉中背の男…八百屋のご主人がいた。
「これは八百屋の。どうかしました?」
「あぁ、済まんがピンチヒッター頼めるか? うちのチームのピッチャー、また夫婦げんかして来ないんだよ」
困った表情をする八百屋に、あららと肩を竦めた。
「いいですよ。それじゃあ先に行っててください」
にこりと笑って立ち上がり、新聞を新聞ラックに戻す。
「プロには行けなかったけど…」
野球はどこでもできる。
完
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