エレン「格闘術の成績上げたい」アニ「…(私が教えてあげるよ!)」(110)

エレン「友達がいない」アニ「友達が欲しい」の後日談です。

前作のあらすじ…『アニはエレンと友達になった(と思い込んでいる)』

前作を読まなくてもそれほど問題ないと思います。



エレン「はぁ…」

アルミン「どうしたんだい、エレン?珍しくため息なんかついて」

ミカサ「っすぅぅぅっ!……エレン、駄目。ため息は幸せが逃げる。今、エレンのため息を私が吸った。これから返すから私の息を吸って」

エレン「ミカサ、ちょっと黙っててくれ」

ミカサ「わかった」

エレン「…このところ格闘術の成績が、伸び悩んでてな」

アニ「」ピクッ

アニ(格闘術の悩み?近くに座って聞いてみよう)コソコソ

アルミン「そうなんだ?エレンの成績は良い方だと思うけど」

エレン「あんなんで満足してちゃいけねぇんだ。もっと上を目指さなきゃ。だから夜の自由時間に、復習を兼ねて自主練しようと思ってな」

ミカサ「私が付き合ってあげようか?」

アニ(私もいますけど?)

エレン「あぁ、確かにお前は格闘術の成績もトップだけど、お前に教わるんじゃ意味ないんだよな」

ミカサ「何で?」

アニ(何で?)

エレン「いや、いつまでもお前に頼ってばかりじゃ駄目だし」

ミカサ「そんなこと気にしなくていい。私の力はエレンのためにある。ので、エレンのためになることなら、何でも喜んでする」

アニ(ミカサは自分の気持ちをはっきり言えてすごいな。私も見習おう)ウンウン

エレン「それだけじゃ駄目なんだよ。俺がお前に頼ってばかりじゃなくて、ミカサからも頼って欲しいし、守れるようにもなりたい」

ミカサ「え?それって…(プロポーズ?)」

エレン「あぁ、お前に頼らず、お前より強くなりたい(それで巨人たちを駆逐するんだ)」

ミカサ「(その暁には正式に結婚ということね)わかった。そういうことならば私は内縁の妻として見守る」

アルミン「ふふふ。良かったね、ミカサ」

エレン「(内縁の妻?)まぁいいや。ありがとな、わかってくれて。で、ミカサ以外の誰と自主練を一緒にやれば効率いいか、相談したくてさ」

アニ(ここに適役がいますよ~!)コホンッ

アルミン「そうかぁ、こればっかりは僕も力になれないからなぁ。誰がいいかな」

ミカサ「私の次に総合成績がいいのはライナー。当然、格闘術も成績が良い」

エレン「やっぱりライナーか」

アルミン「コニーもふざけなければ、動きも素早いし強いと思うなぁ」

ミカサ「あと、ジャンも最近エレンに対抗してか、成績を伸ばしてきている。背丈も近いから、いい訓練になると思う」

エレン「なるほどな、やっぱその辺りが有力か」


アルミン「あ!あとサボってることが多いから、成績自体はそれほど高くないけど、アニは?実力はNo.1って噂だけど」

アニ(こ、これは求められてるっ?ここはあの輪に入るのが正解?あぁ~、こういう時の模範対応は、この前読んだ『口下手なあなたも、これで友達ができる』には書いてなかったよぉ!)

エレン「あぁ、アニかぁ…」

アルミン「どうしたの?言葉を濁して」

エレン「あいつは…ちょっと声かけづらくてな(怖えから)」

アルミン「あぁ…なんとなくわかるよ(怖いもんね)」

アニ(ん?何で?)

アニ(何で声かけづらいんだろ?)

アニ(私とエレンは友達だよね?)

アニ(何か問題でもあるのかなぁ?)

アニ(……)

アニ(…あっ!わかった。)

アニ(エレンは友達である私に、自由時間を潰して欲しくないんだ!)

アニ(もう、そんなこと気にする間柄じゃないのに…でもそこがエレンの良いところだよね)

アニ(でもその内、友達である私を頼りたくなる時がくるに違いない)

アニ(だからその時まで、エレンの意思を尊重して私は待とう)

アニ(……早くこないかなっ)ワクワク

エレン「よし、じゃあまずライナーを、次の格闘術訓練の日の夜に誘ってみようかな」

アルミン「うん、頑張ってねエレン」

ミカサ「あ、訓練開始の鐘がなった。エレン、アルミン、行こう」

アニ(まずはライナーに声かけるのか。…あ!エレンが私に声かけやすくなるように少しアピールしてみよう。名案名案)ウキウキ

~格闘術訓練~

ライナー「よし、今日は誰と組むかな。夜にエレンと自主練する約束してるから、昼は違う奴と組むか」

アニ「…ライナー、私と組もう」

ライナー「おっ、アニか。お前から誘ってくるとは珍しいな」

アニ「ちょっとね。…もう少しこっちの方でやるよ(エレンの近く!エレンの近く!)」チラッ

ライナー「あ~、エレンつながりか。で、どうだ?しっかりエレンと友達付き合いできてるか?」

アニ「まぁね。エレンは遠慮するタイプだし、私もミカサとアルミンのこと考えて、あんまり一緒にいすぎないようにはしてる」

ライナー「そ、そうか(エレンが遠慮するタイプ?真逆もいいとこだぞ?それにあんまり一緒にいないようにって、エレンとアニが一緒にいるとこなんて見たことないが…)」

アニ「まあいい、やろうよ。今日はちょっと手荒いよ(エレンにアピールするためだしね!)」

ライナー「ははは。おいおい、お手柔らかにな。怪我でもしたら、エレンとの夜の自主練も出来なくなっちまう」

アニ「(むぅ、エレンとの仲良しアピール?ちょっとヤキモチ妬いちゃうなぁ……よし、意地悪して、少し強めに)いくよ、ライナー!」バシーンッ

ライナー「うごっ!こ、これはアニ…やばいだろ…」バタッ

エレン「ラ、ライナー!大丈夫か?」

コニー「た、立てるか?うわっ!足が腫れてきてるぞ!ア、アニ、どんな蹴りかましたんだ?」

アニ「は?軽くだけど?こいつが弱いんじゃない?(こう言っておけば、エレンもますます私に声かけたくなるはず!)」

コニー「おいおい、マジかよ…」

エレン「お前すげぇな(容赦なさすぎて)」

アニ「ふん(エレンに褒められた!もうすぐ声かけてくれるかな?)」フンス

コニー「うわ、こんな目に合わせて得意気な顔してるぜ…マジで氷の女だな。ライナー、大丈夫か?医務室行くぞ」

アニ(もう、コニーったら!エレンの前で氷の女って言わないでよ!)チラリ

エレン(おい!コニー余計なこと言うなよ!すげぇ怖い顔で睨んでるぞ)

アニ(狙った訳じゃないけど、これでライナーは夜の自主練に付き合えないね。エレン、声かけてもいいよ!)

アニ(エレンから声をかけられないまま朝になってしまった)

アニ(あの後、声をかけやすいように夜も遅くまで食堂にいたけど、エレンは来なかった)

アニ(もしかしたら待ってるかもと思って、夜中何度か寮を抜け出して食堂に行ったけど、エレンの姿はなかった。そのせいでちょっと寝不足だ)フワァ

アニ(まだ遠慮してるみたいだなぁ)

エレン「コニー!今度さ、格闘術訓練があった日の夜、自主練付き合ってくれないか?」

アニ(あっ!エレンだ!)

コニー「別にいいけど、俺でいいのか?」

エレン「あぁ、コニーの動きは勉強になるしな!それにライナーがあんなだし…」

コニー「そうだよな、ありゃしばらくは無理しない方がいい。それにしてもアニの奴はなあ…」

アニ(次はコニーかぁ…う~ん、私に声かけてくれるまで、もう少し時間かかるのかなぁ?)チラッ

エレン「お、おいっ!コニーやめとけ。アニが見てる!」

コニー「マ、マジか、悪い!じゃ、じゃあな、エレン!」

エレン「あ、あぁ!今度よろしくな、コニー!」

アニ(あ!エレンが一人になった!話しかけるチャンスだ!)

アニ(ででで、でも、な、何話そっ!?本には、時事ネタが良いって書いてあったけど…)

アニ(『最近の内地の食糧事情についてどう思う?』とかどうかな?一応時事ネタだし、真面目なところもアピールできる…)

アニ(あ、でも私自身、食糧事情について全然知らないや!危ない危ない、下手に知ったかぶりしちゃいけないってことも本に書いてあったんだ!)

アニ(となると、やっぱり格闘術に関してかなぁ…それがいいよね。でもどう切り出そう?)

アニ(…そうだ!『何かわかないこととか困ってることとかない?』って聞こう!それならなんとか答えられそうだし、もしかしたらそのまま夜の自主練一緒にやることになるかも…)

アニ(よし、そうと決まれば!……で、でもやっぱいざ話すとなると緊張するなぁ…うぅ、上手く話せるか心配だよぉ)

アニ(だ、だけど、私頑張る!よよよ、よし、いくぞ!アニ・レオンハート!)

アニ「ちょっと(よし!第一声、裏返らなかった)」

エレン「な、なんだよ(や、やばい、さっきの会話聞かれてたか?)」

アニ「あんたさ、私の蹴りについてどう思った?(何でも聞いてね?答えられることなら答えるよ!)」

エレン「あ、あぁそうだなぁ…(うわ~、やっぱ聞かれてたっぽい!文句言ってたと思われてんのか?コニー…恨むぞ…)」

アニ「どう思ったか聞いてるんだけど(体重移動の仕方とか、軸足の使い方とか、いくつかコツがあるんだよ)」

エレン「あ、あぁ、そうだな…相変わらず、す、すげぇ蹴りだよな(やべぇ、食いつき方怖え…)」

アニ「ふん(また褒めてくれた!嬉しいなぁ…)」

アニ(よ、よし…このままの勢いを借りて言うぞ~!言っちゃうぞ~!)

アニ「そうだ、今日の夜の自主れ アルミン「エレーン!」

エレン「アルミン!(助かったぜ、心の友よ!)」

アルミン「訓練行こうよ!あれ?アニ、どうしたの?あ、もしかしてエレンと話してたの邪魔しちゃったかな?」

エレン「い、いや!もう終わったとこだ!行こうぜアルミン」

アルミン「う、うん、じゃあね、アニ」

アニ「」

アニ(あ~、惜しかったなぁ。でもあそこまで話せるようになったのは大進歩だよね!これはもう少しで親友にランクアップかな!?)ナンテネッ

アニ(そういえば、エレンは次にコニーを誘ったんだよね?…よ~し、今日のこの調子で、次の格闘術訓練の時はコニーと組んでアピールしちゃお!)


~格闘術訓練~

コニー「今日は夜にエレンと自主練するし、ちゃんとやっとくか!さぁ、誰と組むかなぁ」

アニ「…コニー、私と組もう(なんかエレン以外には、わりと楽に話しかけられるようになってきたんだよね)」

コニー「げ!アニ…(この前のことで怒ってるのか?)」

エレン(うわぁ、コニー、アニに狙われてるな…頑張れよ)チラッ

アニ「何?(あ!エレンがこっちの様子うかがってる!これは大チャンスだ!)」

コニー「ほ、本当にやるのか?」

アニ「ほら、早くやるよ(エレンが見てる内に!)」

コニー「あぁ…もうどうでもいいや…」

アニ「いくよ!ふっ!」シャッ

コニー「っ!危ねぇ!……間一髪避けれた…」

アニ「やるね(コニーはさすが素早いな、下段蹴りを飛んでかわすなんて…)」

アニ(でも、あんまりコニーに手こずっちゃうと、エレンに認められないかも!それは嫌だぁ…うぅ、よし!ここは…)

ア二(下段を誘いにして…)スッ

コニー「くっ、また、っ!?…違っ」

アニ「フッ!(後ろ回し蹴りを)」グンッ

コニー「がはっっ!」ゴッ

アニ(こめかみに!)

コニー「」フラッ バタッ

アニ(よし、クリーンヒット!こんなに綺麗に決まるの珍しい!エレン見ててくれたかな?)

コニー「」グッタリ

エレン「お、おい!コニー大丈夫か!?」

ジャン「やべぇぞ、白目剥いてる!」

エレン「おい、アニ…こりゃいくらなんでも…」

アニ「…?(ちょっと技が高度すぎたかな?確かに見た目が派手だから難しそうだけど、コツさえつかめば意外と簡単なんだけどな)」

ジャン「おいおい、アニ、とぼけてんじゃねぇぞ…。まぁいい、お喋りは後だ。とりあえずコニーを医務室に連れてくぞ!エレン、お前は足の方を持て。あんまり揺らすなよ」

エレン「あ、あぁ…」

アニ(でもあれだけ派手な技を見たら、エレンも興味深々になるよね、きっと。もしかしたら、とうとう今日の夜にでも声かけてくるかな)ドキドキ


アニ(エレンは来なかった…)

アニ(もしかしたら声かけるのをまだ迷ってるかと思って、男子寮の前を張ってたけど、結局来なかった)

アニ(やっぱり遠慮してるのかなぁ…それにしても眠いや、さすがに朝まで張り込みは辛いね)フアァァ

ジャン「おい、ようやくコニーが目を覚ましたらしいぞ」

エレン「そうか!良かった!でもこめかみに回し蹴りって…なんか後遺症とか残ってないのか?」

アニ(あ!エレンだ!)

ジャン「それがめちゃくちゃ綺麗にもらったもんだから、特に身体的に後に残るものはなかったみてぇだな。

エレン「そうか、なら良かった」

ジャン「ただ、訓練の前後の記憶はすっかり抜け落ちてるのに、金髪のチビを見ると異常に怯えるようになっちまった…」

エレン「マジか、だから見舞いに来たクリスタに怯えてたのか。後遺症が残らなかったのは良かったけど、不憫だな…治るといいけど」

ジャン「まぁ、無理もねぇ…。しかし、あの女の蹴り、信じられねぇ…」

アニ(ふふふ、私の技の話してるね)

エレン「(ア、アニだ!)ジャ、ジャン。や、やめとけ」チラッ

ジャン「っ!あ、あぁ、俺は戻るぞ、エレン。で、自主練は次の格闘術訓練の日の夜でいいんだよな?」

エレン「おう!ありがとな、ジャン」

ジャン「へっ、ミカサに頼まれたら断れねぇよ。じゃあな」

アニ(そろそろ声かかるかな?)ウキウキ

アニ(あ、またエレンが一人だ!よよよ、よし!こ、声をかけるチャンス。い、いくぞ~!)

アニ「ちょっと(よ、よし!だいぶ自然に声をかけられるようになった。たくさん話してきてるもんね)」

エレン「お、おう。アニ(やべぇ!また聞かれてたのか?)」

アニ「なんか私に言うことないの?(この前の後ろ回し蹴りのやり方とか聞いてね!あれ、意外と簡単なんだよっ)」

エレン「え?言うこと?(うわ~!怒ってる…これ、詫び入れろってことだよな?)」

アニ「は…まあいいや(もう、まだ遠慮してる~。あ、もしかしたらここじゃ話しづらいのかな?確かに人多いもんね。…よ、よし!)」

アニ「こ、ここじゃなんだしさ……ちょ、ちょっと食堂の裏行こうよ(誘っちゃったー!意外と大胆なことができるじゃん、アニちゃん!)」

エレン「え、え?(やべぇよやべぇよ…これ裏でボコボコにされるパターンじゃね?)」

アニ(あ、何で裏に行くかちゃんと言った方がいいか!)

アニ(これだけだと、変なこと意識させちゃうかもね、って変なことってなんだよぉ///)テレテレ

アニ(あ、あくまで、友達に技を教えてあげるだけなんだからねっ!よよよ、よし、いくぞ!)

アニ「…あの後ろ回し蹴りのコツ、教え アルミン「エレーン!」

エレン「アルミン!(助かった~!)」

アルミン「教官が呼んでたよ!って、あれ?」

エレン「わ、悪いなアニ!アルミンが呼んでるからさ!」

アルミン「あ、エレン、アニと話してたんだ?また邪魔しちゃったかな?」

エレン「いいんだいいんだ!ま、またな!」

アニ「…」

アニ(あぁ~、惜しかったなぁ…)

アニ(でも『またね』だって!もう私とエレン、すっかり友達だね。うふふ)

アニ(エレンも実は声かけたくてしょうがないんじゃないかなぁ?)

アニ(でも次はジャンなんだね)

アニ(よし…これはもうちょっとだけアピールしておいた方がいいかな?)

アニ(もう!エレンは私にどれだけ苦労かけるのかなっ!)ウキウキ

~格闘術訓練~

ジャン「あぁ~、格闘術かったりぃなぁ…でもミカサにエレンの自主練付き合うの頼まれちまったからな、ちゃんとやらねぇとまずいよな。誰と組むか…」

アニ「ねぇ?」

ジャン「あ?(げっ!アニだ)」

アニ「わ、私と組まない(う、うわぁ、ジャン怖いよ~。乱暴なイメージがあるから、実は苦手なんだよね)」

ジャン「え?俺と?…はっ、嫌だね。好き好んで、なんでライナーとコニーみたいに潰されなきゃなんねぇんだ」

アニ「…(がーん!断られた…しかもなんかよくわからないけど、悪口言われた気がするし…あ、やばい泣きそう…)」プルプル

ジャン(や、やべぇ、ちょっと言いすぎたか?震えるほど怒ってやがる)

ジャン「(さっさとズラかるか)そ、そういうことだ、じゃあな、アニ」

ミカサ「あれ?ジャン、アニと組むの?」

ジャン「ミカサ!いや、そうじゃなくて…」

ミカサ「アニは強い。ので、とても良い訓練相手になると思う。だからジャン、頑張って強くなって(エレンのために)」

ジャン(っ!ミカサが俺にエールを!これは認めてくれたってことだよな?よ、よし、正直気は進まねぇが…)

ジャン「あ、あ~、アニ、悪かったな。やっぱ一緒にやろうぜ」

アニ(え?嫌われてない?あ~、良かった!嫌われてるんじゃないんだ!もうドキドキしたなぁ!)

アニ「ふん、覚悟しな(乙女を悲しませた罰だ!なんてねっ)」

ジャン「う、お、おう…(こ、これは
やべぇスイッチ入ってないか?)」

エレン(おいおい…ジャン、だ、大丈夫か?)

アニ(ちょうどエレンもこっちに注目してる!……ふふふ、今日はいつもとは一味違った技を見せるよ、エレン!)

ジャン(蹴りをもろに喰らったらやばい、蹴りをもろに喰らったらやばい…)

アニ(案の定、蹴り技を警戒してるね。ふふふ、私はそれだけじゃないよ)スッ

ジャン(下段きたか!)

アニ(と見せかけ、ボディに腰を落としての正拳突きっ!)ズンッ

ジャン「ごふぅっ!」

アニ(そして前屈みになったジャンへ、そのまま一連の流れで)

アニ(踵落とし!)ベコォッ

ジャン「がっ!」ドシャァ

アニ(どう、エレン?私は足技だけじゃないんだよ?)

ジャン「」

エレン「ジャーン!大丈夫か?ジャン?」

ジャン「」

エレン「へ、返事がない。うわっ、しかもこいつ吐いてるじゃねぇか!ボディにもろに喰らってたからな…」

アニ「…ああいう技もあるんだよ?(どどど、どうだったエレン?)」

エレン「あ、あぁ!?」

アニ「だから、足技だけじゃなくて、拳も得意なんだよね(だ、だからオールマイティにエレンに教えられるんだよ)」

エレン(この状況で何言ってんだこいつ?どういうことだ?)

エレン(ん?……も、もしかしてこいつ、俺に技を見せたかったのか?何のために?)

ミカサ「エレン、話してる暇はない。ジャンを医務室へ運びましょう」

エレン「あ、あぁ(よくわかんねぇ奴だな…あ、そういえば内容はともあれ、なんか最近よく話しかけてくるな…それも関係があるのか?)」

アニ(ジャン、ちょっとやりすぎちゃったかな?でも今まで以上に、いいアピールが出来たよ!ありがとね、ジャン)ウインクッ

エレン(…何なんだろう。俺にはアニの考えてることがわからねぇ)

エレン(同期を傷つけたり、あんな態度ばっかとってるのに、それだけじゃない何か…違和感を感じる)

エレン(もやもやするな。どうしよう…)

エレン(あ~!考えるの苦手なんだよっ!)

エレン(……)

エレン(……アルミンに相談しよ)

エレン「アルミン、ちょっと相談があるんだが」

アルミン「どうしたんだい、エレン?珍しいね」

エレン「なんか最近、俺が自主練を一緒にやろうと思った奴が、次々にアニに潰されてくんだよな…」

アルミン「あぁ、そういえばアニに医務室行きにされた人は、みんなエレンが約束してた人だね」

エレン「そうなんだよ。考えすぎかもしれないんだが、もしかしたらアニは俺の訓練の邪魔をしたいのかな?(あるいは…)」

エレン(万が一…万が一だが、もしかしたら…俺と一緒に訓練したいのか?)

アルミン「なるほどね、う~む…」

エレン(あとよく思い出してみたら、あいつが話しかけてくる時は、決まっていつも俺が一人の時だ。言葉遣いはきついが……もしかしたら俺と話したかったのか?)


アルミン「…わかったよ、エレン。もしかして、アニはエレンのこと…」

エレン「?」

アルミン「恨んでるんじゃないかな?」

エレン「えぇ!何でだよ?(やっぱそっちなのか!?あいつの言動は、俺に対する怒りからなのか…)」

アルミン「何か覚えはない?正直言わせてもらうと、エレンは鈍感で空気読めないところがあるからね。何か知らない内にアニを怒らせた可能性はあるんじゃないかな?」

エレン「言ってくれるなぁ、アルミン」

アルミン「親友だからね、正直に言わせてもらったよ」

エレン「それもそうか…。だけど、アニになんかしたかなぁ…」

エレン「……あ!結構前だけど、対人格闘術の訓練の時、ライナーと一緒に、サボってるアニにちょっかい出したことがあったな」

アルミン「それだ!」

エレン「えぇ~、それくらいで怒るかぁ?」

アルミン「怒るポイントなんて人それぞれだからね。人それぞれ考えは違うんだ。そういう人の気持ちの機微もわかるようにならないとダメだよ、エレン」

エレン「そうだよな、気をつけるよアルミン。あ、あと最近、コニーとかジャンと、アニのこと話してるのを聞かれたことかあったな。悪口ってわけじゃなかったんだけど…」

アルミン「あぁ、それもあるだろうね。仮に悪口じゃなくても自分のことコソコソ話されるのは気分良くないよ」

エレン「アルミンがそう言うならそうなんだろうな(やっぱ俺は嫌われてるのか…アルミンは鋭いから、それが正解なんだろうな)」

アルミン「まぁ、確信は持てないけどね、十中八九そうだと僕は思うよ」

エレン「そうか…そう言われたら、そんな気がしてきたな…やっぱ謝った方が良いか?」

アルミン「う~ん、正直難しいところだね。エレンに対してだけ、直接的な態度に出てきてないところをみると、エレンへの怒りは更に強いのかもしれない」

エレン「マジかよ、そんな怒ってるのか…」

アルミン「だから、ちょっと様子を見よう。下手に動くと危険だ。もしかしたら、そろそろ向こうからコンタクトを取ってくるかもしれない。もし謝るならその時の方が効果的だと思う」チラッ

エレン「そうか…わかったぜ、アルミン」チラッ

アニ(あ、エレンがこっち見た!…そろそろ声かけてくるかな?)ワクワク

アニ(でもやっぱり遠慮が先行して、声かけるのを躊躇してるかも…)

アニ(しょうがない!ここは私が一肌脱ぎますか。全く、エレンは女の子にここまでさせて困るなぁ)

アニ(…でもどうやってきっかけ作ろうかなぁ?)

アニ(……)

アニ(…ライナーに相談しよ)

アニ「ライナー、ちょっといい?」

ライナー「おぉ、アニか。どうした?」

アニ「とりあえず、足は大丈夫?」

ライナー「ははは、『とりあえず』か。あぁ、もう大丈夫だ。俺の身体は頑丈に出来てるしな。だが、コニーとジャンにはちゃんと謝っとけよ?」

アニ「うん…」

ライナー「まぁいい。なんだ?何か相談があってきたんだろ?」

アニ「あのさ、協力して欲しいことがあってね」

ライナー「ほほぅ、さてはまたエレンのことか?」

アニ「」コクリ

ライナー「そうかそうか、お前も頑張るなぁ(ここまで頑張ってるんだから、あとはその方向さえ間違えなきゃいいんだが…)」

アニ「別に(は、恥ずかしい~!頑張ってるって思われると恥ずかしい~///)」

ライナー「で、どうするんだ?俺は何をすればいい?」

アニ「う~ん、正直まだ具体的には考えてないんだけど…」

ライナー「とりあえず話してみろよ。細かいところは一緒に考えてやる」

アニ「ありがと」

アニ「まずね、ライナーがエレンを自主練に誘う。ただこの時、あんまり親しくしすぎないように。あくまで訓練。そうしないと私のインパクトがなくなるからね。訓練を始めてしばらくしたら、ライナーは一旦、その場を離れる。用事を思い出した、とか言えばいいよ。それから……」ペラペラ

ライナー「お、おう(あれ?デジャヴ?)」

アニ「って感じなんだけど、どうかな?さすがに適当すぎる?」

ライナー「完璧」

~夜の自主練~

エレン「ライナー、ありがとな。怪我明けなのに自主練付き合ってくれて」

ライナー「いいさ。俺もセーブしながらの訓練で身体なまってたしな(さて、アニはどこに?)」チラッ

アニ(ライナーここだよ)フリフリ

ライナー(ぶっ!あいつ気になるからって近くにいすぎだろ!しかもチラチラ見えてるし、気づかれるぞ!)

ライナー「(仕方ない…)エレン、もう少しあっちでやろう。あっちの方が足場がいい」

エレン「あぁ、そうだな」

ライナー「ほらほら、そうと決まれば急ぐぞ」

エレン「そんな慌てなくてもいいだろ」

ライナー(よし、なんとか気づかれなかったみたいだな。アニ、感謝しろよ)

アニ(もう!ライナーったら、せっかく近くにいたのに離れたらエレンの様子がわからないじゃん)プンプンッ

ライナー「あ!しまった…教官に頼まれてた用事を思い出した」

エレン「え、教官の用事?大丈夫なのかよ?」

ライナー「いや…ちょっとマズイな。悪い、エレン。自主練する前に片付けてくる」

エレン「俺も手伝おうか?」

ライナー「あぁ、いいいい。すぐ終わる用事だから、悪いが一人で始めててくれ。すぐ戻る」

エレン「そうか、じゃあ先にやってるな。早く戻ってこいよ?」

ライナー「あぁ、すまんな。すぐ戻ってくる(よし、アニ。後は上手くやれよ)」

アニ(うわぁ~、ヤブ蚊がぁ!早く~、ライナー!…あ、ライナーが離れた)

アニ(……よよよ、よし!行くぞ。ここで決めなきゃ!勇気を出すんだ!アニ・レオンハート!)

エレン「しかし、ライナー遅ぇなぁ。何やってんだ?」

アニ(…ふ~、落ち着け落ち着け!あと3数えたら出るぞ。いち、に、さん…)

アニ(あぁ、ちょっと待ってちょっと待って!なんか喉が変な感じだから今だと声が出ないかも…もう一回だけ、落ち着こう)

ライナー(アニが心配で、残ってしまったが…あいつ何やってるんだ?早く行けよ。どんだけ躊躇してんだ)コソコソ

アニ(あぁ~、もうダメだ!踏ん切りつかない!……もういいや!もうとりあえず出ちゃおう!)ガサッ

ライナー(お!とうとう行ったな!)

エレン「おっ、遅ぇぞ、ライ……ア、アニ!?」

アニ「…(エエエ、エレン、来たよ!夜に二人っきりで会うって、なんか、ド、ドキドキするねっ!)」

エレン「あ、あぁ、アニか。なんだよ、ビックリしたぜ(と、とうとう、直接的な行動に出たのか!?)」

アニ「ふん…こんな時間に何してるの?(実は知ってるけどね!一応、礼儀として知らない振りしてみるアニちゃんなのだ)」

エレン「お、おう。さっきまでライナーと対人格闘術の自主練をしてたんだ。ライナーはちょっと用事があって今はいないけどな(ライナー!早く戻ってきてくれ!)」

アニ「は…あんたが?(そうだよ、エレン、訓練成績悪くないのに自主練までするなんて、ホントすごいよ!)」

ライナー(おいおい、なんだよその態度!めちゃくちゃ感じ悪いじゃないか…エレンのプライドも考えてやれよ?)

エレン「なんだよ、俺みたいな奴が努力しても仕方ないってか?」

アニ「別にそうは言ってないさ(むしろ逆だよ!その調子なら今期一位だって狙えるよ)」

エレン「まぁ、お前みたいに強い奴には、俺の苦労なんかわかんないだろうけどさ」

アニ「…どうだろうね(わかる!わかるよ、エレン。強くなるって大変だよね!苦労するよね!)」

エレン「も、もういいだろ?俺はライナーくるまで素振りを続けるからよ(そ、その前に謝った方がいいのか?くそっ、どうすりゃいいんだ、アルミン!)」

アニ「…(こ、ここだ!ここで言うんだ!よよよ、よし…いくぞ!頑張れアニ・レオンハート!)」

アニ「…わ、私が訓練つけてやろうか?(言えたー!言えたよ…すごいじゃん、アニちゃん!)」

エレン「え、え?アニが?(う、うわーきたよー!訓練にかこつけて、俺のことボコボコにする気だ)」

アニ「……(ふふふ。エレン、さては遠慮と嬉しさの狭間で葛藤してるな?もう!いいんだよ、遠慮しなくて)」

エレン「い、いやなんか悪いし(ど、どうにかして避けられないのか?)」

ライナー(お、おいおい!俺の角度からだとお前の顔が見えないが、どんな顔してるんだ?エレンが心底怯えた顔してるぞ!お前の計画は順調なのか?)

アニ「遠慮しなくていいって(やっぱまだ気にしてる。しょしょしょっ、しょうがないっ。ここは私がもう一押ししよう!)」

アニ「……私が…やりたいからやるんだし(きゃー!言っちゃった!こんなことまで私に言わせて、まったくエレンったら。笑顔はサービスだぞ!)」ニヤリッ

エレン(や、殺りたいから殺る!?しかもあの邪悪な笑みは…本気で殺る気だ!うがぁ、これはやばい!マジでやばい!)

エレン(……ここで謝ろう!どうすりゃいいか、もうまったくわからねぇけど、とにかくもう謝るしかない)

アニ「?」

エレン「か、勘弁してくれよ、アニ…」

ライナー(何故か謝ったー!いじめられっ子が、いじめに耐えかねて腹の底から絞り出すように謝ったー!)

アニ「…(え、私の自由時間を潰すことをここまで気に病んでる…本当にエレンは友達思いだ)」キュン

ライナー(あぁ…俺はもうこれ以上見てられん…行こう。アニ…お前のこの先の人生に、わずかなコミュニケーション能力が授かることを祈る)

エレン「(謝ったけど、何の反応もないぞ!ど、どうすりゃいいんだ?)」ガタガタガタ

アニ「だから遠慮しなくていいって(そんな優しいエレンのために全力で指導するねっ!)」

バキッグルンッドガッ ウワーッ

おわり

以上になります。

ちなみにアルミンは悪気一切ないので、許してあげてください。

コメントくれた方、読んでくれた方、ありがとうございました。

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