P「伊織のおでこが広くなっているって!?」 (16)

いおりん誕生日おめでとう!

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伊織「ちょっと! 声が大きいのよ、バカ!」

P「いや、だって、突然でビックリしたし・・・。それに、全然そんなことないんじゃないか?」

伊織「・・・」スッ

P「!? ・・・カツラかぶってたのか」

伊織「ええ。これじゃあまともにアイドル活動できないから、しょうがなく・・・」

P「・・・何か嫌なことあったのか? それともこの仕事がいやだったりとか」

伊織「そんなことないでしょ! 私はアイドルであることに誇りを持ってるし、楽しんでやってるわ!」

P「そうか、それならいいんだが、でもいきなりどうして」

伊織「それが私にもわかんないのよ」

P「家の人には言ったか?」

伊織「恥ずかしくて言えるわけないでしょ」

P「じゃあ何で俺には」

伊織「それは・・・何だっていいでしょ! どうにかしなさい!」

P「・・・病院とか?」

伊織「私アイドルなのよ? こんなんになってるってマスコミにばれたら・・・」

P「大丈夫だ、社長の伝手で口の堅いところは知ってる。・・・が、やっぱり家の人には言っておこうか。水瀬家なら口が堅く、優秀な医者を知っているかもしれないし」

伊織「嫌よ! 家の力には頼りたくない!」

P「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。下手すればアイドル活動もできなくなるぞ」

伊織「・・・わかった」

P「・・・俺は、ずっとお前の味方だからな」

伊織「! ・・・当たり前でしょ」

~~

P「それで、伊織はどうなんですか? どこがおかしいんですか?」

医者「・・・これは、おそらく病気ですね。世界でも稀な病気なので、断言はできませんが、恐らくその可能性が高いですね」

P「何という病気なのですか?」

医者「毛根転移症というものです」

伊織「毛根てん・・・どんな病気なのよ」

医者「この病気は名前の通り、毛根が移動してしまう病気です。つまり伊織さんの髪の量が減っている訳ではなく、今回のケースであれば毛根が後ろに移動しているため、おでこの面積が広くなり、はげているように見えているということです」

P「それで、伊織は治るんでしょうか?」

医者「具体的な治療法は未だ確立されておりません。放っておけば治りますが、今回は時間が半年ほどかかると思います」

P「・・・ウィッグでだましだましやってくしかないか」

伊織「嫌よ! 偽りの自分を見せるなんて、ファンの人に申し訳ないじゃない・・・」

医者「いや、正直そんなこと言ってられません。この病気は一周して治るものなので」

P「それのどこが?」

医者「一周するということは、首の後ろ側を通り、背中を通り、順に臀部、股間、腹部、胸部、もう一度首、今度は前を通り、治る直前に顔を通るのです」

医者「顔に髪を生やしながらは生活できませんし、そもそも最初の首のあたりからうっとおしいでしょうから、基本的にはその時点で剃ってしまいます」

医者「ウィッグをつけるというならそれで毛穴を隠せばいいです。その後は服で隠せるのでいいのですが、問題は顔に毛根が移った時です」

伊織「!? まさか・・・」

医者「そのとき、恐らく伊織さんの顔には毛穴がたくさんあるでしょうから、そのときはどうしてもアイドル活動を休んでもらう必要があります」

医者「また、それだけ長い髪に戻すのは、一度剃った後はかなりの時間を要します」

医者「今までのようにアイドルをできるようになるころには、大分時間がたっていると思います」

伊織「そん・・・な・・・」

~~

P「・・・とりあえず水瀬社長には僕から言っておきますので」

新堂「申し訳ございません」

P「いえ。あんなことをいきなり言われたら、そりゃあ一人になりたくもなりますよ」

新堂「・・・伊織お嬢様をよろしくお願いします」

P「できる限りのことはします」

~~

P「取りあえず活動は休止するということで」

水瀬父「まあ、それが妥当ですかね」

P「ええ。やがては人前に出ることすら難しくなりますから、今から休止する旨を伝え、最後にライブを・・・」

ガチャリ

伊織「ちょっと、当事者抜きで何勝手なこと話してんのよ」

P「・・・伊織」

水瀬父「とは言っても、これが現実的な案じゃないのか? 偽りの姿でファンの前に出たくないんだろう?」

伊織「・・・背に腹は代えられないわ。ウィッグで誤魔化すしかないわね」

P「・・・いつまでだ? さすがに顔が毛穴だらけになったら無理だろ?」

伊織「だから・・・できるところまで。病気の進行具合は毛穴の位置でわかるわ。・・・胸の辺りがデッドラインかしら」

水瀬父「とは言ってもどこかで着替えることになったら誰かに見られるかもしれない。ダンス中ならウィッグが取れる可能性もなくはないだろう?」

伊織「そこはうまくやるわ。・・・この休止が終わっても、私は依然のようには人気が出ないと思うし」

P「そんなことはないだろ」

伊織「あるわよ。人気なんて所詮はみずもの。長い間休止してたらファンの関心は他の娘に移っちゃう」

P「・・・」

伊織「あんた言ったわよね。この伊織ちゃんを絶対トップアイドルにするって。私の夢、叶えてくれるって」

P「ああ」

伊織「だから、その夢、叶えさせてよ」

P「伊織・・・」

水瀬父「・・・結局、今後の活動についてはどうするのかね?」

P「・・・伊織さんがやれるとこまでやらせてみようと思います」

水瀬父「そうか。今更口を出す気はない。好きにするといい」

P「! ありがとうございます!」

~~

そこから伊織は快進撃を続けた。

レッスンにも今まで以上に真剣に望み、ダンスも歌もメキメキ上達していった。

そしてこの間のフェスでジュピターを破り、Aランクアイドルの称号を得て、名実共にトップアイドルになることができた。

しかし、今では既に毛根は腹部から胸部へと推移しようとしていた。

P「おめでとう伊織! これでトップだ!」

伊織「・・・ええ」

P「どうした? 浮かない顔だな」

伊織「・・・私、もうアイドル辞めるわ」

P「! ・・・そうか、もう」

伊織「それだけじゃないわ。もう私はファンの人を騙したくない」

P「・・・だましてるわけじゃないさ。ファンの人はお前の上辺だけを見て好きでいてくれるわけじゃない」

伊織「でも、私が真実の姿でいるわけじゃない。もう、私は辛いの」

P「・・・そうか。わかった、引退ライブの通知をしてくる」

伊織「・・・ありがと」

P「なに、やりたくない奴にやらせるのはよくないし、お前の夢は達成されたしな」

伊織「・・・」

P「・・・今までお疲れ。じゃあ、俺、行くとこあるから」

伊織「うん・・・」

ガチャン

P「・・・悔しいよな。夢が達成してこれからってときに。でも俺には引退ライブを開催するくらいしかできない。クソッ!」ガンッ

~~

P「今日が最後のライブだ。気合入れてけよ」

伊織「当たり前じゃない! 最後の私の姿を、本当の姿をファンのみんなに見せてくるわ!」

P「! ああ、楽しみにしてるぞ!」

伊織「ねえ」

P「ん?」

伊織「あんたはずっと私の味方なんでしょ?」

P「・・・前に言ったことか。もちろん! 例え全世界がお前の敵でも俺はお前の味方だよ」ニヤリ

伊織「! アンタ、ばかじゃないの?」

P「ええ~。決め台詞だったんだけどな」

伊織「締まらない顔で言われても意味ないわよ。・・・でも、おかげで踏ん切りがつきそうだわ」

スタッフ「水瀬さん、そろそろステージ開けます」

伊織「は~い! じゃあ、そろそろ行くから」

P「・・・行って来い!」バシッ

伊織「っ! うん!」

~~

伊織「皆~元気~?」

私がステージに立った瞬間、会場が一体となる。

私はこの感覚が好きだった。

最初は自分が支配しているところが、今は私をアイドルとして認めてくれていると感じるから。

でも、今私たちがこの人たちに見せているのは偽りの姿。ファンの人は私を信じてくれているのに、だ。

伊織「一曲目は、ロイヤルストレートフラッシュ!」

歌も、ダンスも本物なのに、私の姿だけは偽物。

本当にそれでいいんだろうか?

私の引退ライブということで今日は今までとは比べ物にならないほど大きな会場で、今まで以上に衆目にさらされている。

期待と羨望と憧憬。

苦しい、辛い、解放されたい。

罪悪感に苛まれながらも私が得たトップアイドルの称号は本当に価値のあるものなのだろうか?

こんな思いを抱えてまで頑張った意味はあるのだろうか?

最後まで迷っていた。

下手をすれば水瀬家、765プロの信用をどん底まで落としかねない。

でも、さっき決めた。

私が辛い時は黙ってオレンジジュースをくれて、心が折れそうなときは近くにいてくれて抱きしめてくれた、一人の男。

漫画のキャラでも最近は言いそうにない臭い言葉、でも私が一番欲しかった言葉。

この私が信頼してあげるんだから、私に一生尽くしなさいよね。

じゃないと、承知しないんだから。

じゃないと・・・。

休憩を挟みつつ、曲を予定通りに完遂。

しかし未だ鳴りやまぬコールを背に、私はプロデューサーに一言。

伊織「最後の雄姿、見ててよね」

P「・・・ああ」

ゆっくりとステージ脇から中央へ。

私の姿を認めると、ファンの歓声は一際大きくなり、持続する。

伊織「みんなに聞いてほしいことがあるの」

マイクを通し放たれた言葉に、観衆は一瞬で静まり返る。

伊織「私、みんなを騙してるの」

ザワザワと波紋のようにざわめきが広がる。

私を見る目が軽蔑の眼差しに変わると思うと、足が震える。

でも彼は言った、ファンの人は私の見た目でなく、中身を好きでいてくれていると。

その言葉を、信じたい!

バサッとカツラをとる。

伊織「私、毛根転移症なの」

再び辺りがシーンとする。

先ほどとは違い、絶句といった表現が適切だろうか?

伊織「私の頭の毛根が少しずつ動いていく病気で、最初は後ろにいって、そこから背中から今はお腹の上の方にあるわ」

伊織「もうすぐ顔のところに移るの。それが終わると頭に戻るらしいんだけど、確証はないわ」

伊織「顔に毛穴がある状態でアイドルはできないから引退することに決めたわ。でも、最後まで嘘をつくのは嫌だった!」

伊織「ごめんなさい」

私は頭を下げた。

好きだったアイドルに実は髪がなく、そんな頭を見せられたファンの気持ちはどんなものなのかしら?

罵声やヤジが飛んでくるのではないかと恐怖していた。

怖かった。でもこれが私なりのけじめ。

どんな言葉でも甘んじて受け入れよう。

でも、私に飛んでくる言葉は優しいものばかりだった。

中には涙を流して私に感情移入している人もいた。

それを見て、聞いて、私も涙を流していた。

最後の一曲だけ、私は真の姿で歌って踊った。

泣きながらで、髪もない散々な姿だったけど、最近で一番楽しかった。

~~

P「・・・お疲れ」

伊織「・・・本当、疲れたわ。でも」

伊織「やっぱりアイドルは、最高ね」

P「・・・ああ!」




以上でこのSSは終了となります。
楽しんでくれた方がいれば幸いです。

オチがないぞ

股間のあたりに毛根が移動した頃のいおりんを見たいのですが……

>>11 超絶シリアスなこの話に落ちは要らんと思ったけど >>14 のおかげで思いついたので一つ





伊織「やっと頭の方に毛根が戻ったわ・・・」

P「後は髪が伸びるをまつだけだな」

伊織「それが大変なんだけどね・・・。取りあえず剃らなくても良くなるのは助かるわ」

~~

伊織「プロデューサー、これを見て」バサッ

P「・・・何か縮れてない?」

伊織「一回剃ると髪質変わるって噂があったけど本当だったのね・・・」

P「いや、これは・・・陰毛が転移してきたんじゃ?」

伊織「あんた何馬鹿な・・・っ! でも・・・んもおおおおお最悪! 意味わかんない!」

P「・・・いんもおおおおお最悪、意味わかんない。なんちゃって」(小声)

伊織「あんたあほなこと言ってないでどうにかしなさい!」グスッ

P「大丈夫だよ伊織」ギュッ

伊織「ふえっ?」

P「俺は頭に陰毛生えた伊織でも愛せるから」

伊織「プロデューサー・・・」キュンッ

そして二人は結婚した。
恐らく幸せな家庭を築いていくのだろう。

本当の本当におしまい。


結局シリアス路線になってしまい申し訳ない。

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