『人類最初の嘘』 (14)

『運命の果実、それは空色の星にある』

シュルシュルとうねる、しなやかな縦縞模様の蛇は含みのある笑みをたたえて男の耳元に囁いた
股間を葉っぱ一枚で隠した全裸の男は驚きもせず、ぶっきらぼうに蛇を払った
気を悪くした蛇は悔しげにシャーッと唸り、鋭い牙を見せつけて威嚇した
しかし股間を葉っぱ一枚で隠した全裸の男はそっけなく手を振り、『地の底に還れ』と促す

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『全裸のクセに生意気だ!!』

そう吐き捨てた蛇は苛立ちながらも男の居た天高く聳える大樹の木陰を後にし、茂みを抜けた先にある彩り豊かな花畑へと身を這わせた

『運命の果実、それは空色の星にある』

蛇は先ほどと同様に女の耳元に囁いた
股間を葉っぱ一枚で隠した全裸の女は蛇を一瞥したが、あえて何も言わずに花を摘むのを再開する

先ほどの事もあってか、とても不機嫌だった蛇は女を睨み付けた
しかし女は知らんぷりを決め込み、花の冠を組み上げる作業に勤しむ

その態度にもっと腹を立てた蛇は意地の悪い笑みを浮かべ、からかうような口調で尋ねてみせた

『そんなに花を集めてどうする?』

女は無視して色とりどりの花を繊細に茎へと繋いでいく
それでも性根の腐りきった蛇はさらに言葉に毒を染み込ませて皮肉ってみせた

『葉っぱではなく、花で股間を隠すのか?』

女はピクッと身震いし、微かな動揺を見せたが作業を続ける

『毛むくじゃらの密林に花を飾ってもみっともないだけだ?』

女はビキッと額に青筋を浮かべながらも小刻みに震えた両手の指先に全神経を集中させた

『ワキ毛ボーボー。ケツも剛毛。鼻毛もちょっと出ているな?恥を知れ?』

女の動きが完全に停止する
それを見た蛇は勝利を確信し、長細い体をくねくねとうねらせてケタケタと笑いだした

数々の暴言を浴びせられながらも平静を保っていた女は我慢ならず、白目を剥いて歯をギシギシと食いしばりながら蛇をキッと睨み付ける
そんな彼女の豹変も露知らず、蛇は花の蜜を啜る蝶の群れをペロリとたいらげながら勝利の余韻に浸っていた

のんきに食事を楽しむ蛇の様子にとうとう怒り狂った女は、すかさず尾に手を伸ばした
ギュッと尾を握られ、あっけなく宙ぶらりんにされてしまった蛇はあまりの驚きに硬直し、口をパクパクとさせた

『密林かどうか自分の目で確かめてごらんあそばせ!』

興奮した女は股間に張り付けていた葉っぱを破り捨て、蛇の胴体を両手で掴んで己の陰部にぎゅうぎゅう押し付けた
蛇は混乱しながらも必死に抵抗したが自分より大きな体と力に敵わず、ずっぽりと陰部に全身が収まってしまった

股間に蛇一匹を隠した全裸の女は勝利に歓喜する
最高潮に達した喜びを余すことなく知らしめるべく胸を張って天を仰ぎ、ウホウホとけたたましい雄叫びをあげた

その時、女はある異変に気付いた
痛みと共に走るとんでもないエクスタシー
バクバクと脈打つ鼓動
血を伝って全身に流れ、走り去る情熱的なパトス
女は直感的に男のいる木陰へと駆けていった

股間に蛇一匹を秘めた全裸の女は股間を葉っぱ一枚で隠した全裸の男に事情を事細かに分かりやすく説明する
もちろん男はすべてを理解し、納得した

女は自ずと陰部に手を突っ込みヌラヌラと湿った蛇の死骸を抜き去った
それを地面にバスンと叩き付ける
一連の動作を瞬きもせずに見ていた男はもちろんすべてに欲情し、興奮した

ありのままの女は顔を赤らめながら上目遣いで男におちんぽを要求した
男の剛直はたまらず天を目指して一心不乱に駆け上がる
股間に張り付けた葉っぱはいともたやすく突き破られ、やがて灰となってそよ風に連れ去られた

それから時は経ち、ありのままの男女の間には60億もの生命が誕生していた
かわいい我が子たちを眺めに天上で愛を交わす男女は、ふと蛇の言葉を思い出す

天上に昇って初めて見知った自分たちの楽園は、まさに空色の星
大地を覆うように増え続け、脈々と受け継がれる生命の息吹き、それこそが運命の果実だったのだと気付かされる

『子供たちは私達の事を蛇に騙されて禁断の果実を食べてしまった欲深な愚か者だと信じてる』

『でも真実はそうじゃない。僕達は運命の果実を実らせた』

『ではなぜ初めの子に嘘を教えたの?』

ありのままの男は穏やかに頬笑んで、ありのままの女の瞳をジッと見据える

『それはね……』

『おまんこに蛇ぶちこんでイった君に興奮して子を作りまくったなんて言える訳がないじゃないか』

『それもそう。なら愚か者の方がいいわね』

『人類、最初の嘘。これは僕と君だけの秘密だよ』

『もちろんよ』

健やかな青空にふんわりと浮かび上がる雲の揺りかごに身を横たえたありのままの二人は心地のよい陽射しを惜しみなく浴びる

『愛してるわ。アダム。もう一回しましょ』

『もちろんだとも。イブ。君が望むなら何度でも』

『自分がしたいだけでしょう?』

『お互い様さ』

『それもそう。だって……』

『『気持ちいんだもん』』

そしてまた重なり合ったのだった

fin.....

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