艦これ学園 (51)




桜が咲き始めの頃、私はある学園の前に立っていた


「ふぅ......」


大きいと他の方から聞いていたがまさかこれほどとは、な

見上げるほどの校舎を見てため息が出た

まさか自分がこんなところで働くことになるなんて思ってもいなかった

普通の先生として終わる予定だった、はずだった


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あいにく自分には『この子』たちが見えてしまっていた

私の頭の上に乗っているモノをむぎゅっと掴んで目の前に持ってくる

ソレは私の手の中でじたばたと暴れている


「あぁ、苦しかったか。すまんな」


握っている手の力を緩めるとソレは私の目の前で「あっかんべー」としてふよふよと私の頭の上に戻っていた



「...まいったな」

そう言って困ったように首へ手を当てる

「さて、そろそろ行かないとな」


私は覚悟を決めて学園の敷地に足を踏み入れた





「あぁ...なるほど...」

どうやら私は迷子になってしまったようだ



外から見ても広そうだとは思ったがまさかこれほどとは...

流石に一人では目的の場所にはたどり着けそうもなさそうだ

誰かに案内してもらうしかなさそうだが

そのとき、ちょうど目の前を通った少女に声をかける


「すまない、ちょっと聞きたい事あるんだが...」


少女はビクッとしてこちらを向く


「え......?」


知らない人に、しかも男に声をかけられたんだ

だれ?といいたそうな顔をしている

そういう反応になっても仕方ない。が、こちらも時間があるわけではない


「この学園の職員室を探しているんだが、どっちに行けばいい?」


こういう時は相手が混乱している今がチャンスなのだ


憲兵さんを呼ばれでもしたら最後だからな


「あ......あっちです」


少女は怯えた表情で指をさした


「あぁ、驚かせてしまってすまなかった。ありがとう」


スッと手で簡単な敬礼をしてその場を後にした




無事に職員室についた私は入ると同時にある彼女の目の前に座らされた


「まったく...時間に遅れていないからいいものの...」


やれやれといった様子で額に手を当てている目の前にいる彼女は私の先輩だ


「一歩間違えれば憲兵呼ばれて一発アウトだったんですよ!?」


そんなの言われなくても分かっている

だから余計なことは言わずにここの場所を聞いたんではなかろうか



「...はぁ、とりあえずこれがあなたが担任するクラスと場所になりますので名前と場所は憶えてくださいね」


彼女が私に数枚、いや数十枚の紙を渡す


「ちょっと待ってくれ」


「なんです?」


「一クラス分の枚数じゃないんだが」


「あぁ、そんなことですか」


「ちょっと待て、まさか...」


「ええ、その通りです」


彼女が薄くニッコリしたような気がした



「ああ、それとですね」


「まだ何かあるのか?」


「必要以上生徒と仲良くならないようにしてくださいね」


「生徒と教員だからか?」


「はい」


そして彼女はニッコリと笑う


「生徒以外でしたら別に構いませんからね? ...例えば私とか?」


「からかうのはやめろ」


そういいながら私は職員室を出た

彼女の顔を見れなかった




歩きながら先ほど彼女からもらった紙をパラパラと捲る


「覚えるのは至難だな...っとここが私が受け持つクラスか」


危うく自分のクラスを通り過ぎてしまうところだった

教室の中から少女たちの声が聞こえる


「....ここで待ってても何も変わらないか」


意を決してクラスの扉を開ける


「......」


さっきまで騒がしかった教室の中もすっかり聞こえなくなってしまった


声は聞こえなくなったがその代わり教室の中にいるほぼ全ての人の視線を感じる

教壇に立ち、教室を見渡す


(ふむ......みんな緊張しているな。無論私も緊張しているが)


「この度、この学園で働くことになった―――です」

「子供のころは父親の影響で『提督』とか『司令』とか『司令官』って呼ばれていた」

「ここでは私は先生だが、みんなの好きなように呼んでくれて構わない」


私がそう言うと教室の中の生徒が少しどよめきだしたような気がした



「何か質問はある人はいますか?」


どうにもこういうのは苦手で短く済ませてしまうのだが大丈夫だろうか...

しばらく沈黙が流れてた

すると一人の生徒が恐る恐る手を挙げた


「あぁ...えっと、潮さん、かな?」


先ほど貰った書類をちらっと見てから手の上げた生徒の名前を呼ぶ


「ひゃい!」


肩をビクンとさせてこちらを申し訳なさそうに見る


名前を知っていたことが驚きなのだろうか

返事をするときに舌を噛んでしまったのか頬を赤くして目はどこか違うところに向いてしまっている


「あ、あの...提督」


それでも頑張って何かを伝えようとしているのだからしっかり聞かなければ


「なんだい?」


「て、提督がしたようにみんな自己紹介でも、と思ったのですが...」


そう言って視線を下に向けてしまった

あぁ...私が初対面である彼女の名前を知っていたから、もしかして全員の名前も知っているのではないか、と勘違いしてしまったようだ

これは悪いことをしてしまったな


私は帽子を深く被って申し訳なさそうに頭を少し下げる


「そうだな、私も今日来たばかりで右も左もわからないんだ」

「みんなのことを少しでも知りたいから自己紹介してもらってもいいかな?」


そう言ってチラッと先ほど手を挙げてくれた生徒を見ると安心したのか、胸に手を当ててホッとしていた

その仕草がなんだか面白くて小さく頬を緩ませた

さて、これから生徒たちの怒涛の自己紹介が始まる

私は手元にあった書類をそっと裏返す

...しっかり覚えないとな




自己紹介も終わり、生徒たちに休み時間だと伝えて自分の席に着く

机の上にある資料に目を通していると目の前に誰か立ってるような気配を感じた

顔を上げるとそこには先ほどの手を挙げた女生徒——潮——の姿があった


潮「あの、提督...」


提督「なんだい?」


潮「なぜあたしの名前分かったんですか?」


提督「なぜって......」


みんな小さい生徒だと思ってたのにそんなのがついてたら嫌でもわかる

思ってたことが顔に出ていたのか、それとも目線がそっちを向いていたのかわからないが

潮が胸を両手で隠し目尻には涙を滲ませてこちらを必死に睨んでいた

そして一言、


潮「提督のえっち......///」


抜群の破壊力だった。まったく駆逐艦は最高だぜ!



一旦これで終わります
二週間以内に来れたらいいな、なんて思いながら


安価はなし
潮優遇できなくなるんで

ここの提督は指揮統率能力はそんなに高くない設定
理由は霞

ではまた




「明日は遠足に行く日だから各人、お弁当を忘れるなよ?」


「「「はーい」」」


私の言葉にクラスの生徒が一斉に声を上げる。

その声を聞いて元気だなぁ、としみじみ思う。

そうだ、遠足といえばこれは言わなければ、な。


「ちなみにおやつは500円までな」


「「「ええー」」」


これには否定的なようだ。


ま、この返事も想定の範囲内。

きっと頭の中は明日の遠足のことでいっぱいなのだろう。


「みんな気を付けて帰るんだぞ」



私のその言葉を聞いて生徒たちは明日のことを相談しながら少しずつ教室からいなくなった。

誰もいない教室で一人、後日の資料作成に勤しむのが日課になってきたところだ。

カタカタとキーボードを操作していく。


「ふぅ...」


一息ついて休憩でもしようかと思って顔を上げる。




潮「ひゃっ...」


なにやら聞き覚えのある声が廊下から聞こえた。

そちらに目をやると、そこには頭だけこちらに出している潮の姿が見えた。


「どうかしたか? 忘れ物か?」


潮「えっと......忘れ物というかその...」


なにやら煮え切らない返事。



とりあえず何か言うまで待ってみることにする。


潮「...提督がこの時間までいつもお仕事してますから」


その言葉を聞いて外を見るといつの間にか日が落ちて夕暮れになっていた。

自分でも気づかないほど長い時間集中していたようだ。


潮「あの、明日は遠足の日ですから...」


もしかしてこの潮は私のことを心配してきたのだろうか


「ああ、もうそんな時間なのか...」


弄り掛けの作業を一旦保存してノートパソコンを閉じて時計を見る。

少し前に下校時刻を過ぎていたようだ。


このまま学園内に生徒を残したままでここをから出るわけにはいかないからな。

なんて自分の中で言い訳しながら椅子から立ち上がって潮の前まで歩く。


「潮、ありがとな」


潮の頭に手を乗っけようとした手を伸ばした。が、潮はぎゅっと目を強く閉じて怯えたように震えていた。ような気がした。

手持無沙汰になってしまった手を自分の頭に添える。


潮「え...」


来たるべき頭への衝撃がいつまでも来ないことに驚いたのか、潮は恐る恐る目を開く。


「さ、早く帰ろうか」


潮「......はいっ、提督」





教室の戸締りをして外で待っていた潮と廊下を歩く。

艦娘は寮制だ。

もちろん、その寮も学園の敷地内にある。

さて、ただこうして歩いているだけというのも味気ない。


「ところで、潮」


潮「は、はい!」


元気よく返事をする潮。


よく見ると少し緊張しているような気がするが。


「明日の遠足、楽しみだな」

潮「はいっ!」


いやいや、なんなんだこの問いかたは。

まるで私のほうが緊張しているかのような。

そうだよ!女の子と一緒に帰るなんてイベントなんか学生時代一度もなかったからな!

ゴホン、当時通っていた学校が男子校だったので仕方なかった。そう、仕方なかった。


潮「...提督?」


コテン、と首をかしげながら潮がこちらを見る。


「あ、あぁ......すまない、ちょっと考え事を」

潮「あ.....すみません」


申し訳なさそうにシュンとなってしまう潮の姿が少し面白くてふっ、と笑う。

そしてますます申し訳なさそうに体を縮めていく潮。


「すまない。ちょっと面白くてつい」

潮「あぅ...」

「あぁ、そうだ。今日はあんまり夜更かしするなよ?」

潮「?」

「他の子から結構聞いてたりするんだ」


「第七駆逐隊の子たちっていっつも夜まで騒いでるってな」

潮「え、あ...ちがっ」


潮は両手をブンブンと横に振る。

......眼福だけど目に毒だ。


「と言っても騒いでるのは漣だろ?」

潮「.........えへへ」

「眠れなくて明日遅刻なんてことだけはゴメンだぞ」



「っと、ここか」

喋りながら歩いていたらいつの間にか寮の門の前にたどり着いていた。

誰かと喋りながらだと本当に時間が立つのが早いな。


潮「はい、提督。また明日です」

「ああ、また明日な」


私は手を振って潮を見送った。

潮もペコリと頭を下げて寮の中へ消えていった。


「さて、私も明日の準備でもしようかな」


忘れ物なんてしたらなんて言われることやら。

帰路に向かう足は、なんだかいつもより軽いような気がした。





「じゃあこのへんでお昼にしようか」


「「「「「はーいっ!」」」」」


移動間のバスの中でも元気だったというのに...。


「あまり遠くに行くなよー?」


私の声が聞こえているのか分からないが、各人場所を見つけてブルーシートを広げてる。

一度辺りを見渡してみる。

そこまで遠くに行ってる子はいないみたいだ。



さて、私も適当な場所に腰を下ろして食事にしようか。

どこにしようか、辺りを見回していると私の近くに潮の姿があった。


「ん? どうかしたのか?」


潮「提督は...お昼はどちらで...?」


「いや別に決まってはいないけど...」


潮「......えっと、それなら...その」



「あぁ、もしかして気を使わせてしまったか...?」


潮「あぅ...」


どうやら図星のようだ。

困ったように視線が泳ぎ、あたふたとしまくっている。

こんなに困られると悪いことをした気になってしまうな。


「あー...そういえば一緒に食べる相手がいないなー...」


我ながらこれにはひどい演技だと思う。

大根役者も顔を真っ赤にして逃げ出すレベルだ。


しかし先に慌てていた潮にはそんなことは関係なかったみたいだ。


潮「で、では...一緒にお昼を...」


「うん、食べようか」


潮「はいっ! お供いたしますっ」


ニコッと微笑む潮の表情に見惚れて息を飲んだ。

そして確信した。

目の前にいるのは、天使だと。





「へぇ、そのお弁当は潮が作ったのか」


潮「えへへ...」


褒められて照れくさそうに頬をかく潮。


潮「でも......ほかの子も大体作ってますから」 


などと謙遜しているが、私が作ってきた――冷凍食材満載の――弁当と見比べるとどう見ても潮が作ってきたお弁当のほうが美味しそうである。

そして私のは弁当というべき代物だが、潮のものはお弁当と言うべきほどかわいく出来上がっている。

これが女子力ってやつか。


いやまぁ大人の私がかわいいお弁当を作るのはいささか抵抗があるわけだが。

なんて心の中で言い訳をしながら潮のお弁当を見る。

見れば見るほど美味しそうである。


潮「あ、あの...」


気が付けば潮の箸の動きが止まってしまっていた。


「ああ、すまない。じろじろ見てたら食べにくいよな」


さて、さっさと自分の弁当を食べてしまわないとな。

そう思って弁当に入れていたタコさんウィンナーを箸で摘まんで口元に持っていった。




その時だった――。


潮「あ...あーん...//」


目をぎゅっと閉じて顔を真っ赤にしながら卵焼きをこちらに差し向けてきた。

あまりのことに思考は停止した。


「あ...」


無残にもタコさんウィンナーは草の上に落ちていった。





潮「あ、あの...腕が....//」


「あぁ...じゃあ...」


気が付いたら意志とは関係なく、潮が差し出してくれたそれを口にいれていた。

なんというか、言葉にできないほど美味しかった。

一口ごとに美味しさが増すというかなんというか。


潮「ど...どうですか?///」


「ああ、とってもおいしいよ」


潮「...よ、よかった...です///」


そう言って潮は安心したように胸に手を当てて息を吐いた。


こんなに料理が美味しいのならきっと――、


「うん、潮はいいお嫁さんになるな」


あ、声に出すつもりはなかったのに。


潮「およっ...わたっ、ていと...お嫁、さん......はうっ///」


さっきよりも顔を真っ赤にしたと思うと、きゅぅ、と小さな悲鳴みたいな声をあげてパタンと倒れてしまった。

私は倒れてしまった潮を背負って休憩所に運ぶ。

背中に伝わるやわらかい感触を気にしないように。

私はゆっくりと潮を運ぶのだった。



【次回予告】


さてさてやってきました夏休み前のテストですよ!

このテストで赤点とった人はご主人様とワンツーマンで補習だそうです。

さくっと赤点回避してみんなで夏休みを謳歌しちゃいましょ~。

え!? あの優秀な潮ちゃんが赤点!?

何か色んな思惑ありそうですね...。

   次回、「潮、本当は悪い子ですから」



では二週間後くらいにまた

あきつ丸いなくてE5に必要ってどこのサイトも書いてあるから大型したら大敗北
え?E1? 甲でやったから周回めんどくs(
皆さんも私の分も頑張ってください、私はE3でU411と401掘りでイベ終える予定です

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