優花里「学園艦では全てのものを利用しているんですよ」みほ「下水も?」 (91)

機関室

優花里「ここが機関室で艦を動かすだけじゃなく、艦内の電力も賄っているんですよ」

沙織「ここで電気作ってるんだぁ」

優花里「正確には制御しているんですけどね」

麻子「艦を動かす動力だけでは足りなくて色々試しているって聞いた」

みほ「色々って?」

麻子「推進力を利用した海水発電。甲板を利用した太陽光。冷却用空気取り入れ口に風力。海洋温度差発電とか」

沙織「あ、ゴミ焼却発電もあるよね」

華「道路の下に振動発電装置もあるって聞きました」

みほ「本当に色々やってるんだね」

優花里「学園艦では全てのものを利用しているんですよ」

みほ「下水も?」

優花里「え?」

みほ「下水も何かに利用してるのかな?」

優花里「下水、ですか。それは聞いたことがありませんが……」

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沙織「みぽりん、それ気になるの?」

みほ「え? うん……」

沙織「下水って、汚い水だよ。それを利用って」

麻子「だが、浄水していれば飲み水にはなるぞ」

華「肥料にもなっているかもしれませんね」

沙織「ちょ、ちょっと華!! 麻子!! 変なこといわないでよ!!」

優花里「これだけ色々と試していて下水をなんらかのエネルギーに変えていないというのは、確かに気になりますね」

みほ「黒森峰でも下水を利用しているっていう話は聞いたことがなかったな」

麻子「調べてみるか」

華「面白そうです」

沙織「えぇー。やめよー」

優花里「いいではないですか。学園艦のことを知るのは悪いことではないんですから」

沙織「だからって下水がどう利用されてるかなんて……」

みほ「下水処理施設ってどっちかな」

華「少しまってくださいね」

麻子「こっちだな」

沙織「ほんとにいくのぉ」

優花里「冷泉殿の言う通り、浄水化、つまりろ過されて何らかの形で再利用されている可能性はありますね」

華「やはり飲み水でしょうか」

優花里「水道水ぐらいにはなっていてもおかしくないかと」

麻子「海水を利用しているのは知っているが、下水も使っているか」

沙織「海水じゃない?」

みほ「黒森峰では海水だったけど……」

沙織「なら大洗も海水でしょ」

優花里「では、下水はどこにいっているのでしょうか」

沙織「そんなの海へ流してるんじゃないの」

麻子「汚染してどうする」

沙織「あ、そっか。生活排水だもんね」

華「ここみたいです」

みほ「下水処理室……。でも、関係者以外立ち入り禁止になってるね」

優花里「これでは見学できそうもありませんね」

麻子「ここだけやけに厳重だな」

沙織「間違って入っちゃったらヤバいんじゃない」

華「どのように危険なのでしょう」

沙織「嫌な臭いとか体についちゃいそうだし」

みほ「見れないってわかっちゃうと気になるよね」

優花里「なりますね。では、会長に頼んでみましょうか。会長ならどの施設にも出入りできる権限がありますから」

沙織「いや、ゆかりん。下水がどこに利用されてるか調べるだけでしょ。それこそ会長に訊けばいいじゃない」

優花里「おぉ、それもそうですね」

みほ「そうしよっか」

麻子「今なら生徒会室にいるだろう」

華「善は急げです。向かいましょう」

沙織「私としてはあんまり聞きたくないんだけどなぁ」

優花里「まぁまぁ、そうおっしゃらずに」

沙織「うーん……」

生徒会室

杏「下水の利用先?」

みほ「はい。下水がどうなってるのかなって思って」

杏「勉強熱心だねぇ。いやぁ、流石西住ちゃん」

みほ「あはは」

桃「知ってどうする」

優花里「知的好奇心を満たしたいだけですよぉ」

桃「……」

柚子「ど、どうします?」

杏「私の口から言うのは簡単だけどなぁ」

華「是非、教えてください」

沙織「秘密なら、秘密でいいですけど」

杏「ま、別に隠してるわけでもないしな。いいよー」

麻子「で、何に使われているんだ」

杏「色々だよ。まぁ、農業科がよく使ってる」

華「それはやはり肥料としてですか」

桃「そうなる」

華「全てを無駄にしないのですね」

桃「コンビニなどに並んでいる飲料水の9割は汚水からできているといってもいい」

沙織「えぇぇぇ!?」

優花里「9割もですか!?」

麻子「海水は使わないのか」

柚子「浄水所区画にあるのが海水をろ過した水なんだけど、あれは非常時用に溜めているものなの」

みほ「非常時というと」

杏「学園艦が航行不能になった場合、ライフラインを維持することが最優先になる。ま、そのときのための生活水だな」

優花里「では、普段我々が飲み水として使っているのは……」

杏「お風呂やトイレから届いた水だね」

沙織「うぇー……」

桃「言っておくが、お前たちが毎日入っている大浴場の水も元は汚水だ」

優花里「おぉぉ……そ、そうだったのですか……」

麻子「つまり毎日汚水のお風呂に入っていたわけか」

沙織「いわないでよー!!」

麻子「気にするな。あれはちゃんとした浄水だ」

沙織「そ、そうかもしれないけどぉ」

杏「口に入ったものがまた飲み水や食べ物に変わるんだから、いいじゃん」

沙織「よくなーい!!」

優花里「私、毎日……」

みほ「ん? どうかした?」

優花里「い、いえ!! なんでもありません!!」

華「どの学園艦も同じなのでしょうか」

桃「似たようなことはしているはずだ。だが、あまり一般生徒には知らせていないだろうがな」

柚子「武部さんみたいな反応をする人もいるからね」

沙織「そりゃしちゃうわよー」

みほ「でも、それだけならどうして立ち入り禁止なんですか? 厳重に鍵もかけてあったので特定の生徒しか入れないんですよね。そこまでしないといけないことでもあるんですか?」

杏「……」

麻子「そうだな」

桃「考えてもみろ。あの場所が自由に出入りできるのは恐ろしいことだ」

華「恐ろしい、ですか?」

柚子「万が一、あの下水処理装置にイタズラをする人が現れたら……」

杏「過去にあったみたいだしなー」

桃「会長、その話は……」

みほ「な、何があったんですか……」

桃「これから話すことは他言するな。生徒会の資料には約30年前まであの下水処理室は常に開放されていた。船舶科の者がそこを行き来するためにな」

桃「ある日、船舶科の一人が何を思ったのか処理室の機能を全て停止させた」

みほ「停止って、そんなことしたら……」

杏「処理されずに流れていっちゃうな」

沙織「ど、どうなるの、それぇ」

麻子「普通に考えれば、蛇口をひねれば出てくるのは汚水だな」

沙織「もー!! やだー!!」

桃「記録では、その、そのまま出てきたところもあったそうだ」

華「想像しただけでアグレッシブな蛇口ですね」

沙織「想像しちゃだめー!!」

優花里「汚物がそのままでてきたのですか」

桃「あ、ああ……」

杏「怖いよな。蛇口からところてんみたいにぐにゅ~っと出てくるなんて」

沙織「わぁぁぁー!!!!」

麻子「沙織。おかしなことは考えるな」

沙織「いや!! 想像しちゃうじゃない!!!」

みほ「だから、今では厳重に施錠をしているんですか」

杏「そういうことだな」

麻子「機能を停止させた動機はわからないのか」

柚子「資料にもそこまでは載ってなくて」

桃「気にするだけ無駄だ。常人にはわかるはずもない」

沙織「わかりたくもないわよ!!!」

みほ「……」

桃「そういうことだ。あの処理室には近づくな」

沙織「はい!! わかりました!! 絶対に近づきません!!」

みほ「あ、あの」

杏「なぁに、西住ちゃん」

みほ「理由もなく、下水処理装置を停止させるなんてことは考えられません」

杏「まぁね」

みほ「その人にもきっと理由があったはずです。そうしなければいけなかった理由が」

杏「あったとは思うけど。もう調べようもないしな」

みほ「調べて、みませんか」

沙織「え!?」

優花里「西住殿、どうして……」

みほ「えっと、なんだか気になっちゃって」

華「わたくしもです。もし何か学園艦に危機が迫っていて、致し方なく下水処理装置を停止させたのだとしたら……」

みほ「うん。その人は学園艦のためにそうしたのかもしれない。それがなんだったのか、私は知りたいんです」

柚子「確かに気にならないといえば、嘘になっちゃうんだけど……」

沙織「気にはなるけど、わざわざ調べたいとはあんまり……」

優花里「私も知りたいです!! その女生徒にはどのような目的があったのか!! これは調べる価値がありますよぉ!!」

沙織「あるかなぁ!? ホントにあるかなぁ!?」

杏「んー……」

桃「どうしますか、会長」

杏「ま、調べてくれるっていうならありがたいかな。脈々と受け継がれていく学園艦の資料に書き加えたほうがいいことかもしれないしな」

桃「五十鈴が言っていたように学園艦の見えざる欠陥などがあるのなら、困りますが……」

柚子「そういう意味でも調べたほうがいいのかな」

桃「だが、もう30年前のことだ。今更調べたところでわかるか?」

みほ「それはやってみないことにはわかりません」

杏「ほいっ」ポイッ

みほ「わわっ」

杏「それが下水処理室のカギ。失くさないでよぉ。合鍵とかないから」

みほ「いいんですか?」

杏「うん。何かわかったら教えてよ」

下水処理室

沙織「ねえ、まだ間に合うから、やめない?」

麻子「別に帰ってもいいぞ」

華「そうですよ、沙織さん。無理してついてくることはありませんから」

沙織「うぅー……そうだけどぉ……」

優花里「武部殿も気になってはいるんですよね」

みほ「みんな。開けるよ」

優花里「はい。お願いします」

沙織「ガスマスクとかいらなかった!?」

みほ「……」ガチャッ

沙織「息! 息止めないと!!」

華「大丈夫ですわ。特別嫌な臭いはしません」

沙織「あれ、ホントだ……。もっと臭いのかと思ったのに」

優花里「中は広いですね。普通の処理施設と言った感じですが……」

麻子「いや、そうでもないようだな」

沙織「え? な、なにが?」

みほ「あそこ。水が溜まってる」

優花里「これは既に浄水化されていますね」

みほ「そのもう一つ前にもプールみたいなところがある」

華「少し濁っていますね」

沙織「えぇ……?」

みほ「その次は更に透明度が低い……」

麻子「前に行けば行くほどろ過できていない水、か」

沙織「みたくなーい!!」

華「では、一番前の水は全世帯から直に流れてきた、汚水……」

沙織「やだもー!! きたなーい!!」

優花里「うーん。想像していたのよりは直視できますね」

麻子「ガラス越しでも臭ってきそうな色合いだな」

みほ「なんで見えるようになってるんだろう……。あ、浄水化がきちんとできているか肉眼でも確かめるためかな」

沙織「みぽりん、真剣に考えることかなぁ!?」

優花里「あの汚水が流れ着いているところを見てください。とても多くのブロックに分かれていていませんか?」

麻子「そこから一つのプールに一度溜められてろ過をしているのか」

みほ「多くの河川からダムに貯めてるみたい」

華「そんな印象を受けますね」

沙織「なんで流れ出るところがあんなにも分かれてるの?」

みほ「うーん……」

優花里「西住殿。これを見てください」

みほ「なにかあった?」

優花里「どうやらあのブロックは地域ごとに分かれているようですよ」

華「地域とは?」

優花里「つまりですね、全ての汚水が同じ排水管を使用しては詰まってしまいます。なので、排水先を別ブロックに細かく分けているのですよ」

麻子「で、最終的には巨大プールに合流させると」

優花里「そういうことですね」

みほ「細かく分かれてるんだ……」

優花里「学園艦も広いですからね。住居のトイレだけでなく公衆トイレなども合わせれば分ける必要があるのではないでしょうか」

沙織「なるほどねー。って、女の子が集まってする会話じゃないよね、これ」

優花里「あはは、ま、まぁ、そうですね」

みほ「……」

華「みほさん? 何か気になることでもあるのですか」

みほ「あ、うん。ブロックごとに分かれてるってことは、どこから流れてきた汚水なのか、わかっちゃうのかなって」

沙織「え!?」

麻子「まぁ、特定はできるだろうな」

沙織「で、できちゃうの!?」

優花里「0001と書かれたブロックはどうやら、大洗女子学園の生活排水を一手に受けているようですね」

華「まぁ……」

沙織「あ、あれに……私たちの……アレが……」

麻子「想像するな」

沙織「だ、だけど……」

優花里「こうすることで異常が見つかったときに対処はしやすいですよね。0588ブロックに流れ着く世帯を調べれば排水管が詰まっているのが一目でわかりますし」

麻子「艦内で排水管に異常が見つかれば惨事だからな。問題は早期発見できるほうがいいに決まっている」

華「ここで水道水などの制御もできるわけですか」

優花里「いえ、ここでできるのはあくまでも下水の処理ぐらいですね。生活水の流れそのものをコントロールすることはできないようですよ」

みほ「優花里さん。ブロックごとに流れを止めることってできるの」

優花里「はい。それは可能です。それも異常が発覚したときに必要な機能ですからね」

みほ「つまり、やろうと思えば……」

沙織「みぽりん?」

みほ「特定の場所から流れ着く汚水だけをここに貯めることができる」

優花里「え、ええ。そうですね」

みほ「そこに何かありそうな気がするけど……」

華「機能を停止させた動機、ですか」

みほ「うん」

麻子「すぐに思いつくのはトイレに大事なモノを落としてしまい、それをどうしても回収したかった」

優花里「ありそうですね」

みほ「汚水の海から探し出すことは不可能だと思う。この貯水槽だって底まで何メートルあるかわからないし」

華「落としたものを回収するなら機能を停止させる必要もないですよね」

優花里「あぁ、確かに……」

華「下水に何らかの毒物が投げ込まれて、その拡散を防ぐために、とかはどうでしょう。ドラマチックです」

沙織「でも、汚水が蛇口からでてきたんでしょ」

優花里「ここでは生活水の流れを制御できませんから」

華「そうでした……」

みほ「なんだろう……。全然、分からない」

沙織「分からなくてもいいと思うけど」

優花里「けど、これだけ立派なろ過装置があれば毒物が投げ込まれても、浄水になりそうですよね」

麻子「肥料にもするならある程度の毒素は抜くだろうしな」

沙織「あぅ……これから食べたり飲んだりするときは、色々想像しちゃうぅ……」

華「何を想像するのですか?」

沙織「だって、これがジュースのもとになってたり、野菜を大きくしたりしてるんだよ!?」

優花里「別に直に口へ入るわけじゃないですし」

沙織「でもでもぉ」

みほ「もしかして……いや……でも……ありえるかな……」

麻子「何か思いついたのか」

みほ「ううん……そんなことが……けど……」

沙織「どーしたの、みぽりん。何か分かったなら教えてよぉ」

みほ「こうして私たちの生活排水が肥料になっていたり、飲料水になっていたりすることはあまり知られてなかった」

華「ええ。そうですね」

みほ「それは、今も昔もあまり変わらなかったんじゃないかな」

優花里「小山殿も言っていましたね。武部殿のような反応をする生徒がいるからと」

みほ「そう。事実を知ってしまうと、どうしても意識しちゃうかもしれない」

沙織「しないほうがおかしいって」

みほ「もし、それが沙織さんとは真逆の方向に意識しちゃったら、どうかな」

沙織「真逆って?」

みほ「だから、その、汚いとか、思わない……」

沙織「へ?」

みほ「むしろ……あの……」モジモジ

沙織「なになに、どういうことー?」

優花里「ま、まさか!! 機能を停止させた生徒は……!!」

華「はい?」

麻子「よくわからない」

優花里「で、ですから、ここではどこから流れてきた汚水なのかは特定できるわけです」

優花里「特定の汚水だけを貯め、そしてろ過をせずにそのまま流す」

優花里「そして蛇口をひねれば、出てくるのは……」

麻子「特定の人物の汚水か」

沙織「やだもー!!!」

華「究極の再利用術というわけですか」

沙織「究極すぎよー!!」

みほ「食事も水分補給も一度に賄えるのがメリットだけど……」

沙織「いやいやいや!!! むりだって!! みぽりん!!」

優花里「サバイバルでは自分の尿をろ過して水分補給するといいますし」

沙織「やめてー!! ゆかりん、やめてー!!!」

みほ「ううん、そこまでする人がいるとは思えない。きっと考えすぎだよね」

みほ「……」ガチャンッ

麻子「結局、分からなかったな」

優花里「やはり30年も前のことですからね」

華「一体、何があったのでしょうか」

沙織「もー。いいってぇ。下水の話はおわりー」

みほ「あはは……。そうだね」

優花里「あの、西住殿」

みほ「なに?」

優花里「そのカギ、私から会長に返しておきましょうか」

みほ「え? あ、うん」

優花里「確かに、お預かりしました」

みほ「……」

沙織「ねえねえ、お風呂入らない?」

華「いいですね。再利用された浄水のお風呂に入りましょう」

沙織「そんな言い方しないでよー!!」

生徒会室

杏「そっか。わかんなかったか」

みほ「はい。可能性ならいくらでも考えられたんですけど」

杏「ま、仕方ないっか」

桃「分かるわけがないんだ。当事者はとっくに卒業しているからな」

麻子「それだけのことをしたのに卒業できたのか」

柚子「一応、事故ってことになってるから」

桃「そういうしかない。歴史ある大洗女子学園に奇行に走る輩がいては困るからな」

杏「イメージが悪くなっちゃうもんな」

沙織「これで終わりだよね。下水がどう利用されてるかもわかったしさ」

麻子「ああ、そうだな」

華「では、参りましょうか」

優花里「了解でぇす」

杏「……」

みほ「それでは、失礼します」

桃「む? おい、西ず――」

杏「かわしまぁ」

桃「は、はい?」

杏「いいよ」

桃「いや、しかし、あのカギは一本しかないものですから」

杏「いいんだ」

柚子「ど、どうしてですか」

杏「なんかあったってことだよ」

桃「なにがあったというのですか」

杏「さぁ。それは私たちが知らなくてもいいんじゃないかな」

桃「は、はぁ……」

杏「干し芋がうまーい」モグモグ

柚子「なんだろう……」

桃「さぁ……」

杏「はむっ」

通学路

沙織「しばらくは水も飲むのも控えようかな」

麻子「新しいダイエットか」

沙織「お! それ、いいんじゃない」

華「わたくしは全く気になりませんけど」

優花里「五十鈴殿は相変わらずでありますね」

華「優花里さんもではないですか?」

優花里「え、ええ。まぁ」

みほ「……」

沙織「みぽりん? どうしたの深刻そうな顔して」

みほ「あ、ううん。なんでも……」

沙織「そんなわけないじゃない。なんでもいってよ、ね?」

みほ「沙織さん」

沙織「なになに?」

みほ「お願いしたいことがあります」

夜 秋山宅 キッチン

優花里「……」

優花里(許してください……私はとても悪い子です……)

優花里(だけど……だけど……あの話を聞いてしまった以上は……)

優花里(こ、この蛇口をひ、ひねれば……ひねれば……)

優花里「えい!!」キュッ

優花里「……あれ? おかしいですね」キュッキュッ

「出ないよ」

優花里「え……!?」

みほ「……」

優花里「に、にしずみ、どの……」

みほ「ごめんなさい。こんな夜更けに」

優花里「ど、どうしたんですか? び、びっくりするではないですか」

みほ「優花里さん。自分が何をしようとしているのか、理解していますか」

優花里「うっ……な、なにが、でしょうか……」

みほ「あのとき、私の言おうとしたことを10まで理解していたのは優花里さんだけでした」

優花里「……」

みほ「そして下水の利用法を聞いたとき、沙織さんと同じぐらい動揺していたのは、優花里さんでした。きっと、強く意識していたんですよね」

優花里「な、なにを言っているのですか。意識はしてしまいますよ」

みほ「沙織さんとは真逆の意識をしてしまった」

優花里「ち、違います」

みほ「誰の汚水をそこから出そうとしたのかはわかりません。けど、優花里さん。こんなことしないでください」

優花里「わ、私はただ、水を飲みに……」

みほ「……」

ピリリリ……ピリリ……

優花里「西住殿、お電話が……」

みほ「はい」ピッ

沙織『もしもし!? みぽりん!? なにこれ!! 蛇口からなんかぐにゅ~って出てきたんだけど!!! これ!! もしかしてアレ!? やだもー!!! ああぁぁぁ!!!』

みほ「生活水の制御を船舶科の人に頼んでやってもらいました。今頃、沙織さんのキッチンは地獄絵図になっていると思います」

優花里「……」

みほ「優花里さん、どうして……どうしてこんな……」

優花里「30年前、生徒が下水処理の全機能を停止させた動機、私はすぐに分かってしまいました」

みほ「……」

優花里「きっと、その生徒にもいたんだと思います。私と同じように、憧れる人が」

みほ「憧れる人のをそうやって飲むの?」

優花里「できることなら匂いだって嗅ぎたいし、ずっと隣にいたいぐらいなんです。でも、そんなことはできない」

優花里「感情が日に日に抑えられなくなって……どうにかなってしまいそうで……」

みほ「優花里さん……」

優花里「すみません……西住殿……」

みほ「もしかして、私のを……?」

優花里「は、い……」

みほ「そこまで私のことを想ってくれていたんだ」

優花里「だ、だって、西住殿は私の中ではヒーローで……」

みほ「沙織さん、聞こえる? 今、出てきてるのは私の汚水みたい」

沙織『え? そーなの? なーんだ、みぽりんのか。みぽりんのなら、いっか。いや!! 知らない人のよりはマシだけどよくないわよー!!!」

優花里「うぅ……すみません……わたしは……とりかえしのつかないことを……」

みほ「優花里さん。顔をあげて」

優花里「にし、ずみどの……もう、いやですよね……こんな気持ち悪い子と……一緒にいるなんて……」

みほ「確かに隠れてこういうことをされるのはショックだけど、でも、それでも、優花里さんは私の大切な友達だから」

優花里「え……しかし……」

みほ「私もね、優花里さんの気持ちはわかるよ」

優花里「へ……そ、それは……」

みほ「どうして私もあんな推測ができたのか。それは……」

優花里「西住殿も、実行しようとしたことが……」

みほ「それはないけど。よくお母さんに言われていたから」

優花里「なにをでしょう」


しほ『まほに近づきたければ、まほの垢でも煎じて飲みなさい。戦車に乗る乙女は皆、そうしているのよ』


みほ「戦車道で好きな人や目指している人のモノを口にしたくなるのは皆そうだってお母さんは言ってた。だからお姉ちゃんも……」

沙織『もしもーし! みぽりん!! これどーしよー!! なんかもう部屋中がみぽりんで満たされてる気がするんだけどー!!』

優花里「まほさんも私と同じことをしていたのですか?」

みほ「流石にここまではしなかったけど、よく私の飲みかけのジュースとかは飲んでたかな」

優花里「う、うらやましい……」

みほ「優花里さんも、それぐらいで我慢できる?」

優花里「あ……」

みほ「こんなことしたら、優花里さんのお母さんもお父さんも悲しむよ。それに、どれだけの人に迷惑がかかるか」

優花里「はい……そう、ですよね……」

みほ「もし、私のが欲しくなったら言って。こんな下水の利用はダメだよ」

優花里「はい……ごめんなさい……」

みほ「うん。気にしてないよ」

優花里「西住殿……にしずみどのぉ……」

みほ「大丈夫。大丈夫だよ」

優花里「うぅぅ……」ギュッ

みほ「沙織さんのところにいこっか」

優花里「はい」

沙織の部屋

みほ「うっ……」

優花里「これが、西住殿の臭い、ですか」

沙織「あーん!! みぽりんのだと思えば多少は我慢できるけど、もうやだー!!」

みほ「ごめんなさい、沙織さん。まさか、ここまでなんて思わなくて」

沙織「私もだよぉ。多少汚い水が出てくるだけだと思ったのに。まさか、こんな丸ごとでてくるなんて……」

優花里「武部殿!! 本当に申し訳ありません!! 私の所為でこんなことになってしまって!!」

沙織「べつにいいけどぉ。もうここにはすめなーい!!」

みほ「しばらく、私の部屋で寝泊まりする?」

沙織「いいの?」

みほ「だって、こんなことになったのは私の所為だから」

沙織「じゃあ、お世話してもらおっかな」

優花里「本当にすみません!! 武部殿ぉ!!」

沙織「いや、もういいから。ゆかりん。でも、もうこんなことしちゃダメだからね」

優花里「はい。絶対にしません。ここに誓います」

翌日 生徒会室

みほ「――以上が30年前の真相だと私は考えます」

杏「……」

桃「ふざけるな!! こんな……!! こんな常軌を逸した生徒がいてたまるか……!!」

優花里「……」

桃「お前たちもそう思わなかったのか!?」

沙織「え、えーと」

華「あくまでもみほさんの推測です」

麻子「これが事実だとは思わない。現実に汚水を直に飲もうとする人間がいるとは、思いたくもない」

優花里「うぅ……」

柚子(秋山さん、どうしたんだろう。元気がないような……)

麻子「だが、西住さんの推測は当たっていると私も思っている」

杏「その根拠は?」

麻子「この学園艦では全てのモノを利用し、それを動力に変える取り組みをしている」

桃「そうしなければこの巨大艦船の動力を賄えないからな」

麻子「推進力を利用した海水発電。甲板を利用した太陽光。冷却用空気取り入れ口に風力。海洋温度差発電」

麻子「それから振動発電装置。そしてゴミ焼却発電」

桃「冷泉。何が言いたい」

麻子「ゴミすらも電気に変える技術があるこの学園艦で、何故下水だけが発電に使われていないのか」

杏「……」

みほ「……」

柚子「それは飲み水が必要になるからじゃあ……」

麻子「飲料用にするのなら海水があれば十分のはず。汚水を使う必要性はない」

桃「海水をろ過したものは非常用だといったはずだ」

麻子「常用しない理由としてはあまりに薄い。一度に大量の海水を浄水化させることができるのだから、常時使用していても問題はないはず」

桃「だ、だが」

杏「農業科は有効活用してるけどね」

麻子「肥料としてだろう。何故、そこから飲料にするのか分からない」

杏「と、いうと」

麻子「下水こそ水力発電に使うべきじゃないのか。あれだけの面積を使った処理施設があるなら、発電施設にすることもできるはずだ。わざわざ汚水を浄化させる理由はなんだ」

沙織「確かに」

華「そういえば水力発電はありませんね」

沙織「あんなでっかいプールがあるならそれもできそうだけど」

杏「冷泉ちゃんが西住ちゃんの推測を支持する理由が、それってわけだ」

麻子「会長なら下水の利用方法が何故、今の形に収まっているのか知っているんじゃないのか」

杏「……」

桃「そんなことまで会長が知っているわけないだろう」

柚子「そうだよぉ」

麻子「脈々と受け継がれている資料にも書いてはいないか」

優花里「そんなこと言っていましたね」

みほ「まさか……」

麻子「見せてほしい」

杏「拒否したら?」

麻子「貴方は認めたことになる」

桃「冷泉!! そこまでにしろ!! そんなことは何一つ書かれていない!!」

杏「戦後間もなくこの学園艦は造られた」

桃「会長!!」

杏「無論、この学園艦も過去の設計図と規約の下に造られた、歴とした学園艦だ」

みほ「規約……」

杏「第一に動力の確保。つまりエネルギー資源の有効活用。勿論、技術は進んで冷泉ちゃんが色々なモノが動力として活用されている」

杏「ただ学園艦を造船する上で守らなければいけないことが山ほどある。自治権がどーのこーのとか、政府の許可がどーのこーのとか」

杏「そんな中にこう言った文言が存在する。エネルギー資源有効活用、第一項。市民から出る汚水は飲料として使用し、また処理施設の設置を義務付ける」

杏「学園艦は学生に自治させるだけあって、約束事を一つでも守れなきゃ運行はできないことになってる」

みほ「つまり、下水処理施設がなければ、学園艦は……」

杏「潰される」

麻子「何故、下水だけそんなことに」

杏「歴史上、初めての学園艦は女子校だったそうだよ」

華「はい?」

杏「今では殆どの学校が海の上だけど、最初学園艦はぜーんぶ女子校だったんだ」

優花里「確か戦後からですよね。共学ができたのって」

みほ「まさか……!」

華「なんですか?」

みほ「でも、そんな……」

沙織「みぽりん、どういうことなの?」

優花里「分かってしまった気がします……」

麻子「女子校と下水処理施設になんの関係がある」

桃「……」

柚子「それは……」

杏「私財を投げ打って学園艦を作った人物が定めたルール」

みほ「その人の目的は……」

杏「歴史上の人物、偉人と呼ばれる人、天才と呼ばれた人。偉業や功績を称えられ、世界の発展に貢献した人たちの中にもいるんだよね」

華「なにがいらっしゃるのでしょう」

杏「汚水を直に飲みたいと考える人が」

沙織「えぇぇぇぇ!? でも、それ、女子校って……!! えぇぇぇぇ!?」

桃「常人には絶対に理解できないことだと言っただろ。決して考えるな」

麻子「そこまでして飲みたいものなのか」

沙織「私にきかないでよー!!」

麻子「誰にきけばいい」

沙織「それは……そんなの知らないっ!」

優花里(武部殿……)

杏「まぁ、何年かに一人ぐらいはそういう子もいるだろうから、あの部屋は常に施錠しないとねっていう話になった」

みほ「けど30年前は施錠されてはいなかった」

杏「それまでは一人としてそんなことをする生徒はいなかったからね。この大洗には」

沙織(30年ぶりだったんだ。ゆかりん)

みほ「会長は30年前の真相を知っていたんですか」

杏「ううん。昨日、知った」

みほ「え?」

桃「そうだったんですか!?」

柚子「昨日の話は知った直後だったんですか!?」

杏「カギが返ってこなかったからな。ま、それで資料と照らし合わせれば見えてくる」

優花里「あ……あの……これ……」

杏「ありがと。これホント一つしかないからなぁ」

優花里「す、すみません……」

杏「いいよ。そういうときもあるって」

華「優花里さん?」

麻子「昨日、何かあったのか」

沙織「な、なにもないよ、ねー?」

みほ「う、うん!」

麻子「……」

桃「私はてっきり会長が資料から真相を見つけたのだと思ったのですが」

杏「西住ちゃんたちのおかげだよー。あの下水処理室はもっと厳重にしないとな。役員以外の指紋じゃ開かないようにするかぁ」

柚子「そ、そこまでしないといけませんか!?」

杏「だって、そうでもしておかないと万が一、シャワーのノズルからところてんみたいに……」

沙織「いやぁぁぁ!!!」

桃「そ、そういうことは言わないでください!!!」

麻子「少しいいか?」

みほ「なにかな?」

麻子「そのカギは今まで秋山さんが持っていたみたいだが、昨日返さなかったのか」

優花里「は、はい……色々と……事情がありまして……」

麻子「昨日、最後に下水処理室に入ってからこの時間まで秋山さんはカギを持っていた」

華「そうなりますね」

麻子「いや。それから誰もあの部屋には入っていないのか、と思って」

みほ「……!」

杏「西住ちゃん」

みほ「は、はい……」

杏「昨日の夜は、どこでなにしてたの」

みほ「き、昨日は、えっと、沙織さんを部屋に呼んで……一緒に寝て……一緒に登校して……」

杏「どこにもよらず、ここに来た」

みほ「……」

沙織「あれ? なんかおかしくない?」

杏「河嶋。水道の制御は?」

桃「は? 確か、一時断水するとの胸が船舶科からありました。実際、0800時まで浄水所区画から生活水を使用していました」

柚子「そうだったんだ。朝は知らないうちに非常用のほうを使ってたんだね」

杏「今現在は?」

桃「正常に戻してあるはずです」

杏「まいったねぇ」

柚子「なにがですか?」

みほ「……」

優花里「あ、あ、あの……西住殿……」

みほ「……もう、間に合わない」

沙織「え……」

華「よくわからないのですが」

柚子「会長、説明してくださいよぉ」

杏「水道水の使用を禁止しなきゃな」

沙織「み、みんなをとめなきゃ!!」

>>68
桃「は? 確か、一時断水するとの胸が船舶科からありました。実際、0800時まで浄水所区画から生活水を使用していました」

桃「は? 確か、一時断水するとの旨が船舶科からありました。実際、0800時まで浄水所区画から生活水を使用していました」

グラウンド

典子「朝練しゅーりょー」

妙子「やっぱり、早朝のバレーボールは気持ちがいいですね、キャプテン」

典子「ああ!! 朝も昼も夜もバレーボールだ!!」

あけび「これだけ毎日やっていればみんなもバレーがしたくなるはず!!」

忍「うん。まだ誰も声をかけてくれないけど」

典子「まだまだ私たちの根性が足りていないだけなんだ。もっともっと頑張らないと」

妙子「はい! そうですね!!」

あけび「まけないぞー」

忍「それはそうと喉が渇きましたね」

典子「練習のあとはグラウンドの水道水を飲むのが常識だ」

忍「キャプテン。蛇口に口をつけないようにしてくださいね。不潔ですから」

典子「日本の水道水は綺麗だって、テレビで言ってたから大丈夫だ!!」グイッ

ドバッ

典子「……」

トイレ

あゆみ「昨日のドラマみた?」

優希「みたみたぁ。ちょっと面白そうだよねぇ」

あや「あれは化けると思う」

梓「へぇ、そんなによかったの?」

あゆみ「えー? あれ見てないの!?」

優希「梓は今、戦車のこと以外あんまり興味ないもんねぇ」

梓「そ、そんなことないって」

あや「桂利奈ちゃんは見た?」

桂利奈「昨日は借りてきたアニメをずっとみてたー」

あや「そっかー」

紗希「……」

あゆみ「おっ。そろそろ授業はじまっちゃう」

優希「まってぇ、手、あら――」


ドバッ

倉庫

みどり子「自動車部のみなさん、今から戦車の洗車?」

ナカジマ「ええ。どうしてもレオポンだけ磨いておきたくて」

ホシノ「これが終わったらすぐに教室にいくから」

みどり子「熱心ね」

スズキ「大事な仲間をいつでも綺麗な状態にしておきたいですから」

ツチヤ「ちなみにカモさんチームのは早朝にピッカピカにしたよ」

みどり子「それで見逃してほしいって思ってないでしょうね?」

ナカジマ「実は、少しだけ」

みどり子「はぁ。遅刻しても知らないわよ」

ナカジマ「ありがとう、園さん。では、レオポンに噴射!!」

ホシノ「オッケー!! エンジン、全開!!」グイッ

ドバッ

みどり子「え……なにこれ……くさい……」

ナカジマ「こ、れって……」

生徒会室

『キャー!!!』

『いやぁー!!!』

杏「緊急ほーそー。今、出てるのは西住ちゃんのだから、気にしなくておっけーだよー」

みほ「や、やめてください!!」

沙織「そういう問題じゃないってー!!」

華「みほさんのモノ、というだけで多少は見る目が変わるかもしれません」

桃「いや、変わるわけないだろう!!!」

典子『のんじゃったー!!』

妙子『キャプテーン!!』

優花里「外から阿鼻叫喚が……」

柚子「どうしよう……どうしたら……」

優希『手がよごれちゃったぁ……』

梓『大丈夫!! 西住先輩のだから!!』

あゆみ『なにいってんの!?』

杏「とにかく、使用する水を下水処理室のものから浄水所のものに切り替えるように通達」

桃「はっ!!」

杏「武部ちゃんのモノっていったほうがよかった?」

沙織「やめて!! それだけはいわないで!!!」

麻子「なるようにしかならないな」

優花里「わたしの……わたしの所為で……こんな惨事に……うぅぅ……」

みほ「優花里さん」

優花里「西住殿……」

みほ「カギを返すことを忘れてた私も同罪だよ」

優花里「西住どの……にしずみどのぉ!!」ギュッ

みほ「ごめんね、優花里さん」

優花里「うぅぅ……もう、こんな過ちは……絶対に……」

みほ「うん……そうだね……」

ナカジマ『西住さんのだったんだ。これでこすればレオポン、強くなるのかな』

ホシノ『燃料にしたほうがいいんじゃない? 速くなりそう』

翌日 黒森峰女学園

エリカ「大洗女子学園が新聞の記事になっていました。酷い内容ですが」

まほ「……」ペラッ

エリカ「下水処理装置の不具合で水道から汚物が流れ出たそうです」

まほ「……」

エリカ「こちらの週刊誌ではその汚物が誰のものか特定したとありました。イニシャルは、M.N。二年生のものだと」

まほ「みほ、にしずみ。か」

エリカ「週刊誌のものですから信憑性なんてありませんが」

まほ「お母様は言っていた。戦車に乗る乙女は皆、敬愛する者の垢を飲めと」

まほ「だから、私はいつもみほの飲みかけのモノ、食べかけのモノ、吐き出したモノを口にしていた」

エリカ「え……それは比喩表現ではなくて、ホントに……?」

まほ「そして私がそうするとみほはとても嬉しそうに微笑んでいた。今でもはっきりその光景を覚えている」

まほ「だから、きっとみほは今も笑顔でいる。そんな気がする」

エリカ(これが西住流……。とても真似なんて……。いや、そういえば学園艦には下水処理施設があったはず。そこなら隊長のモノも流れついている……。そうよ、それしかないわ……!!)


おしまい。

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