村上春樹風まえがき (15)
このSSを読む前に気をつけてもらいたいことがある。
読んで損、更新遅め、誤字多し。なんてね。
山場はないし『おち』もない。感動もなければ救いもない――あるのは入り口と出口だけだ。
不幸にもこのスレッドを開いてしまった君は、静かに首を振り、なにひとつとして得るものもないまま閉じることになるだろう。空っぽの冷蔵庫と同じだ。
君は砂嵐のような激しい空腹感を抱えながら昨日と変わらない日常へと戻っていく。ひょっとしたらそのことで僕に怒りを覚えるかもしれない。
でもそれは僕のせいじゃない。君のせいでもない。
荒らしのせいでもないし、ローカルルールのせいでもないし、非実在青少年を規制する都条例のせいでもないし、山羊のように眠る国会議員たちのせいでもない。
それは結局のところ――程度の差こそあれ――SSという暗い影にこびりついた宿命なのだ。
完璧なSSなどといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。
これは一般論だ。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460629973
予め言っておく。
ごく控えめに言って、このSSは見るに耐えないものだ――つまらない、と僕は思う。
弁解するつもりはない。少くともこのスレッドに書かれたSSは現在の僕におけるベストだ。つけ加えることは何もない。
それでも僕はこんな風にも考えている。うまくいけばずっと先に、何年か何十年か先に、もっとましなスレッドが立てられるかもしれない、と。
まあいい。僕はこれから誠心誠意SSを書く。そしてそのことで君に徹頭徹尾嫌われる。
無理もない。読み辛く、プロットは煩雑であり、文体も稚拙だ。
それでも僕はスレッドを立てないわけにはいかなかった。ちょうど川の水が海へと流れるのを止められないように。
言ってしまえばこのスレッドは、僕にとってのレーゾン・デートゥルである。
世の中にはそういう種類のスレッドというものが確かに存在しているのだ。
何故立てたかなんて考えちゃいけない。
意味なんてことは考えちゃいけない。
意味なんてもともとないんだ。
すべてが読み終わったあと――あるいは読むまでもなく――やはり君は僕に怒りをぶつけたくなったとする。
良いニュースがある。
このスレッドは誹謗中傷対策されている。どうだい、すごいだろ? 指が折れるまでどんどん誹謗中傷してくれ。
僕がこのSSを書いたのは昨日の3時過ぎだった。
僕は喫茶店でコーヒーを飲みながらこれを書いて、夕方書き終るとブラウザを開き、スレッド一覧を眺めてみたんだ。
SS速報VIPには実にたくさんのスレッドがあった。あるものは実験的な短編集だし、あるものはスケールの大きな感動長編だ。
あるものは二次創作だし、オリジナルのもあれば、その中間もある。実にいろんな人がそれぞれに面白いSSを書いてるんだ、と僕は思った。
そんな風に感じたのは初めてだった。そう思うとね、急に涙が出てきた。泣いたのは本当に久し振りだった。
でもね、いいかい、自分のSSがつまらなくて泣いたわけじゃないんだ。僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。
僕は・SSが・好きだ。
それでは次のスレッド。
(このSSは平成二十八年四月十四日に『SS速報VIP』に書きおろしされたものです)
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