卯月「家出してきました」 (28)

アニメ版アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
時期的には24話と25話の間です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460473936

卯月「家出してきました」

武内P「……はい?」

卯月「ですから、家出してきたんです。ですから、泊めてください!」

武内P「……」

武内P(落ち着いて、状況を整理しよう)
武内P(冬の舞踏会を控えたこの寒い日、珍しく早めに部屋に戻れた)
武内P(そうしたら、玄関の前に島村さんが居た……)

武内P「……その段階で意味がわかりません」

卯月「あの、どうしたんですか?」

武内P「すみません、いくつかご質問をよろしいですか?」

卯月「はいっ!」

武内P「まず、家出してきたと言いましたが、それは事実ですか?」

卯月「もちろんですっ!」

武内P「そんなに力強く答えなくて結構です。ですが、いい笑顔です」

卯月「ありがとうございますっ!」

武内P「次に、なぜ家出をしたのですか?」

卯月「……それは……」

武内P「……」

卯月「言わないと、駄目ですか?」

武内P「言わなければ無理にでも家に送り返します」

武内P(とは言ったものの……気の毒ですが、言ったとしても家に帰ってもらいましょう)

卯月「その……アイドル」

武内P「アイドル?」

卯月「ママに……アイドル、辞めろって言われたんです」

武内P「!?」

卯月「プ、プロデューサー!?」

武内P「まだ小さくともこの星は確かに輝いている、その輝きを消してしまうのはまだ早い。弱い輝きも、無ではないのです!」

卯月「落ち着いてください、詩人みたいになってますよ!」

武内P「失礼しました……」

卯月「あの、ママにアイドル辞めろって言われて……それで、家出して来ちゃったんです」

武内P「……よほど急いでいたのですね、制服のまま来るとは……」

卯月「あはは……くしゅっ」

武内P(……まだ寒い季節だ、泊める泊めないを決断するにしても、寒空の下は厳しいか……)

武内P「とにかく、中に入ってください」

卯月「あ、ありがとうございますっ!」

武内P「……ところで、何故、私のマンションの場所が分かったのですか?」

卯月「教えてもらったんです」

武内P「いったい、誰に?」

卯月「都ちゃんです! 秋頃に仲良くなったんですよ!」

武内P「はあ……」

―――
―――室内

卯月「うわあ、ここがプロデューサーさんのお部屋なんですね」

武内P「何分、男の一人暮らしです。むさ苦しいところをお見せしてすみません」

卯月「そんな、私の部屋よりよっぽど片付いてます」

武内P「……」

武内P(さて……どうしたものか)
武内P(まずは島村さんの家族に連絡を取らなければ)
武内P(つぎに、彼女をどうするか……まさか泊める訳にもいかない)
武内P(ちひろさん……いや、プロジェクトの誰かの家に送るにしても、連絡する必要がある)
武内P(そうなると、彼女に聞かれているのは良くない)

武内P「島村さん!」

卯月「は、はい!」

武内P「お風呂に、入りませんか?」

卯月「……………………………………………………………………………………はい?」

武内P「寒空の下に長い間居たのですから、身体が冷えているでしょう。まずは、暖まってください」

卯月「そそそ、そうですよね!」

武内P「着替えは私のシャツを使ってください、いいですね! じっくり暖まってください!」

武内P「けっして!」

武内P「あせって!」

武内P「すぐに出てこないように!」

卯月「は、はい!」

―――

武内P「さて……まずは島村さんのご家族に……」

――プルルルルル
――プルルルルル
ガッシャ

卯月ママ「はい、島村です」

武内P「夜分遅くに失礼します――」

――事情を説明――

卯月ママ「そうですか……卯月が申し訳ありません」

武内P「はい、それで――」

卯月ママ「今晩は、そちらに泊まるんですよね?」

武内P「は?」

卯月ママ「すみません、あれで頑固なところがあるので、言い出したら聞かないですよね。このお詫びは、後日必ずいたします」

武内P「あ、あの!」

卯月ママ「それでは、よろしくお願いします」

武内P「話を聞いてください!」

――ガチャ
――ツーツーツー

武内P「……訳が、分かりません」

武内P「落ち着こう……この時間に島村さんを家に泊められそうな人は……」

武内P「そうだ、渋谷さん!」

――プルルルルル
――プルルルルル
ガッシャ

武内P「渋谷さん!」

凛「プロデューサー、こんな時間にどうしたの?」

武内P「実は――」

――事情を説明――

凛「ふーん、そうなんだ……卯月が、ふーん、そうなんだ、ふーん」

武内P「あの、渋谷さん?」

凛「あ、ちょっと出かけてくる……」

凛「え、止めないでよ……危ない?」

凛「なんでハナコまで……」

凛「っ!? 呼んでる……大いなる空の世界で、団長たちが助けを求めてる」

――ガチャ
――ツーツーツー

武内P「……」

武内P(いったい、何が)

卯月「プロデューサーさん?」

武内P「!?」

卯月「お風呂いただきました。ありがとうございます」

武内P「そそそ、その格好は?」

卯月「あ、えっと、言われたとおりにシャツを着替えにしたんですけど、何か変ですか?」

武内P「い、いえ……」

武内P「そ、その……何と言うか、無防備な姿を見るのは久しぶりなので、驚いてしまって」

卯月「えっと、そんなことありましたっけ?」

武内P「はい、前に風邪で休まれたときに……」

卯月「あっ……未央ちゃんの……」

武内P「そ、そうです! これから、本田さんのお宅に行きませんか?」

卯月「え、こんな遅くに迷惑ですよ」

武内P「いえ。それに、卯月さんが泊まるのなら、男の一人部屋よりもそちらの方が」

卯月「えっと、それは……無理です……」

武内P「どうしてですか?」

卯月「その……今、これ一枚しか着てないんです」

武内P「……一枚?」

武内P「一枚ということは、その、し、下着は……」

卯月「ありません……」

武内P「……」

卯月「あの、下着の替えがなかったんです」

武内P「……アタシポンコツアンドロイドですか?」

卯月「脱いじゃってません!!」

武内P「……寒空の元、下着も着けていないシャツ一枚の少女を連れ出す」

卯月「犯罪ですねっ!」

武内P「……仕方ありません、今日だけですよ」

卯月「ありがとうございます!」

―――

卯月「それにしても……」

武内P「どうしました?」

卯月「あんまり、物を置いてないんですね」

武内P「元々、あまり物を持つ人間ではないので」

卯月「はあ~~私なんか、そんなの必要ないのにって、ママからしょっちゅう怒られてます」

武内P「それだけ、島村さんが多趣味だと言う事でしょう」

卯月「堪え性がないだけかもしれないです」

武内P「そんなことはありません。あなたの強さは、私が保証します」

卯月「そう、ですか?」

武内P「……」

卯月「……」

武内P「……」

卯月「……」

武内P「……」

卯月「……」

武内P「あのっ」

卯月「あのっ」

武内P「そちらからどうぞ」

卯月「あ、ありがとうございます」

卯月「その、家出してきた理由……なんですけど」

武内P「アイドルを辞めるか、ですね」

卯月「はい……実は、ママ、12月までのこと、すごい心配してて」

武内P「……養成所で数ヶ月、ひたすらレッスンを繰り返していた時ですね」

卯月「その間、家でもずっと笑顔になれなくて……それで、心配してたみたいなんです」

武内P「……」

卯月「それに、私、あんまり身体も丈夫じゃなくて」

卯月「未央ちゃんの時も、一番大事な時に倒れちゃって」

卯月「それだけじゃなくて、昔からなんです……養成所の時も、いざオーディションの直前で倒れちゃったり、それで心配をかけて」

卯月「それで、実は今日は、レッスンの途中でへばっちゃって……トレーナーさんから、ママに連絡がいったみたいなんです」

武内P「それは……」

卯月「心配ないって言っても、聞いてくれなくて……それで、ケンカになっちゃって」

武内P「……」

卯月「……」

武内P「島村さん、明日になったら、もう一度ご家族と話し合ってください」

卯月「……でも」

武内P「大丈夫です。ずっと島村さんの夢を応援してくれた家族なのですから」

卯月「……」

武内P「安部さんを、知っていますね」

卯月「はい、菜々ちゃんですよね」

武内P「彼女が346カフェで働いている理由を、知っていますか?」

卯月「えっと、お金が足りないから」

武内P「ええ。彼女はシンデレラプロジェクトの皆さんとは違い、金銭的に困窮しています」

武内P「それは、ご家族からの支援を受けられないからです」

卯月「あ……」

武内P「島村さん。あなたが万全にアイドルとして活動できるのも、その前の養成所に通えていたのも、あなたを応援する家族の支援があってこそです」

武内P「ですから、必ず、話し合ってください」

卯月「……はい」

武内P「さあ、今日はもう寝ましょう」

―――

武内P(翌朝、島村さんは元気に家へと帰っていった)

武内P(きっと、彼女ならば大丈夫だろう……)

―――
―――346プロ

常務「待ったいたぞ」

武内P「……あの、何か?」

常務「アイドルを部屋に泊めたそうだな」

武内P「!? 何故、それを」

常務「渋谷君からの報告だ」

武内P「な、何故渋谷さんから!?」

常務「彼女もクローネの一員だ。連絡手段くらい用意しているに決まっているだろう」

常務「さあ、弁解を聞こう。今西と千川も待っているぞ」

武内P「……はあ……」

――終わり

以上です。短いですが、失礼しました。
お付き合いいただき、ありがとうございます。

申し訳ないです。呼称ミスがありました。
誤:ちひろさん
正:千川さん

失礼しました。

過去作……古いのでよければ

楓「なんだろう…ワクワクしてます」
楓「なんだろう…ワクワクしてます」 - SSまとめ速報
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