森と死神の鎌 (38)

次は~次は~青物横丁~青物横丁~

午後11時10分、車内には2人の男しか乗っていなかった。

1人は25歳程の頭髪は黒でツーブロックにエアブラスト、髭を少し生やした男。
もう1人はサングラスをかけ、髭を生やし、髪はオールバックの大柄な男、歳は30後半に見られる。

「ふ~、呑んだ呑んだ。
やっぱ焼肉はうめぇよな~、
お前もそう思うよな!」

「米が進みますよね、アレでかい。」

「まぁでも毎日はやだけどなー。」

「毎日食い続ける奴は
どっか頭おかしいと思いますよ(笑)」


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「ん、こっちに誰かくんぞ。」

オールバックの男が指差す、その先には6人程の黒服の男達がいた。

「残念なお知らせが、」

「えぇ~、嘘でしょ~。」
「俺オフなんだよ、やめてくれよ。」キリッ

キメ顔で言う。

「織田裕二?」

「よくわかったなww
1話のね、ラスト。
はい、茶番終わり!」
「俺ちょっとアルコール抜いてくる。」


そう言うとオールバックは
懐のオートマティックを抜き出し、こめかみに当てた。

「2分待ってろ。」

こめかみに当てたまま引き金をひく、
男の頭から血が流れそのまま床に倒れる。


それとほぼ同時に黒服が同じ号車に入ってくる。

エアブラストの男は立ち上がり
腰に手を当てる。

「あ、オフだから”長いの”ない!」

しまったという顔をエアブラストがする。
すると黒服が手から
サブマシンガンを出して撃ち始める。

「ばかああああ」

叫びながら男は座席の角に隠れる。


「あーあ、こんなんだったら
”龍崎さん”に酒飲ませるんじゃなかった!」

そう言いながら男は脛から
折りたたみナイフを取り出し、
器用にサブマシンガンの男へ投げる。

「べっ」

サブマシンガンの男の額に
ナイフが深く突き刺さり、倒れる。

「インファイトだ、このやろっ」

エアブラストはそう言いながら、
角から飛び出し、
両手にナイフを握ったまま黒服に突撃する。

黒服らは男へ攻撃するが当たらない。


「目で追いすぎなんだよ、
もっと”色”で見んだよっ」

「アアッ!」

男は2人の黒服の太ももにナイフを刺し、
さらに2つのナイフを取り出す。

取り出したナイフで他の黒服の目を斬る。

太ももに刺さったナイフを抜き、
そのまま流れるような動作で他の黒服の顔面に突き刺す。

あっという間に男の周りには血みどろの死体が転がっていた。


「あれ、終わっちゃった?」

龍崎と呼ばれた男は起き上がり、言った。
先程までのアルコールにより顔の赤みは取れていた。

「遅いっすよ、先輩。」

「処理班に連絡しといてください。」

「何、やっぱ吸血鬼?」

エアブラストはため息をつきながらうなづき
座席に座った。

第1話「不死身じゃない」

午前8時10分、株式会社フォレスト

龍崎は廊下を歩いていた。
首を鳴らしながら肩を回して。

「おはよう。山本から聞いたよ、
電車で”黒服”に襲われたんだって。」

黒髪で帽子を被った女が声をかける。
龍崎と較べると女性にしてはかなり大きい。


「ああ、酒入っててな、車じゃなかった。」

目を細め、思い出すように言う。

「で、酔い覚ますのに
死んだら終わってたと。」

「参っちゃうぜ、ったくよー。」

顔を歪ませ、ため息をつく。

「偵察隊が帰ってきたそうだ。」

女は言いながらエレベーターのボタンを押す。


「成果は?」

「A区のデータベースを見てきたそうだ。
そこに計画書があったらしい。」

エレベーターに入る。

「テロか。場所は?」

「ボストン、ワシントンD.C、マイアミ、
ニューヨーク、北京、モスクワ、カザン、
サンクトペテルブルク、ミュンヘン、
ベルリン、ケルンそれから…」

「全世界全域か」

「ああ、資本も共産関係ない。
しかも時期は未定ときた。」

「名前はー「カタストロフィ」


「カタストロフィと書いてあった。」

ドアが開くのを龍崎は止める。

「首謀者は?」

「ジーン=ブレイドらしい。」

「やはりそうか、野郎ぐらいしか
こんなの考えたって
実行しようと思わねえ。」


龍崎と女はエレベーターを出る。

「信憑性はかなり高いわ、
犠牲が大きすぎたもの。」

「何人死んだ?」

「8人「嘘だろ⁉︎」

「送り込んだの”Ninja”10人だろ。」

「武田と島しか残らなかったそうよ。」

「幹部か?」

「狐火に遭遇してまず2人、
ひるんだところを4人殺されて2人が瀕死、
撤退途中で殉死。」


「部隊は再編か。」

「そうそうあなたの仕事、来たわよ。」

「ハントか?」

「ドラッカー3人、捕縛してくること。
報酬は全員捕縛が条件で400万、
あなたのところには250万入るわ。」

「捕縛?」

「依頼主の娘さんが対象に
ドラッグで殺されたらしいの。
それもレイプでむりやり。」

「娘の仇をこの手でってことか。」


「……哀しいけど気持ちはわかるわ。」

「もし涼子に何かあったら俺はためらいなく
ソイツを死んだほうが
マシなほど痛めつけて[ピーーー]つもりだ。」

「私もよ。」


「おはようございます。
龍崎さん、少し技術課に行ってきます。」

「おう、どうして?」

「昨日のナイフ取り替えてもらおうと思って。
あと、”長いの”の
携帯版作ってもらってたんです。」

「桐山によろしく言っておいてくれ。」

「わかりました。」


「で、部長。
期限は?」

「一週間以内でとのことよ。」

「目撃は?」

「TっていうクラブとM駅周辺。
これ、写真。」

「若造じゃねえか。」

「吸血鬼の可能性もないわけじゃないけど、
心配いらないわよね、不死身だから。」

「不死身じゃないって
[ピーーー]る回数決まってるから。」

女は手を振って自分の席に向かう。


「外出るか。」


M駅前

「ふー、こんなどこにでもいる顔見つけられるかなぁ。」

たばこを吹かしながら、自信なさそうに辺りを見回す。

辺りが暗くなった頃Tというクラブにも行ったがその日、龍崎がドラッカーを見つけることはなかった。


その日の夜。

「はぁ、思ったより難しい案件かもしれんな。
明日情報屋に頼みに行こう。」

prrr!

「はい、龍崎です。」

ワンコールで電話にでる。
すると、電話から幼い少女の声が
聞こえてくる。

「もしもし、
わたしはあおかわりょうこです。」

「なんだ涼子か。」


「パパぁ!」

「おう、どうした。」

「あのね、さらいしゅうに
わたしとママといっしょに
ゆうえんちにつれていってほしいの。」

「それはラピッドランドかな?それとも
むつごろうパークかな?」

「むつごろう?じゃなくて
ラピッドランドにいきたいの!」


「ははは、そうかぁ。
再来週はパパは暇だからかっこいい車で
連れてってあげよう。」

「ありがとう、パパ。
あ、ママかわりたいって
それじゃかわるね。」


「もしもし、京ちゃん?」

「部長、じゃなくて泪か。
涼子どうしてる?最近。」

「ちょっと公私混同は避けてよね(笑)
うん、幼稚園でも元気にしてるわ。」

「そっか。再来週楽しみにしてるって
涼子に伝えといてあげてくれ。」

「わかったわ。それじゃまた明日。」

「ああ、おやすみ。」

プツッと電話が切れる。
龍崎の顔は父親の顔であった。

ここまで、
また来るゾ。

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