早苗「P君が倒れた?」 (60)

友紀「うん、病院に搬送されたんだって。早苗さん来るまで大騒ぎだったんだから」

早苗「本当なの? いくら働いてもドリンク1本で回復する不死身のプロデューサーと呼ばれたP君が、入院?」

友紀「ガチだよ。今はちひろさん合わせた数人が病院に行ってる」

早苗「……事件ね」

友紀「へ?」

早苗「これは単なる事態じゃない。事件よ」

友紀「ま、まさか」

早苗「真実を隠した汚れを一掃させるわよ友紀ちゃん」





早苗「掃除屋の名にかけて!」

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 ………
  …


早苗「それじゃ、詳しい状況を教えてくれる?」

友紀「いえっさー。事件が発覚したのは本日未明。自宅の玄関で倒れているところをまゆちゃんが発見して救急車を呼んだそうです」

早苗「なんでまゆちゃんが」

友紀「押し入れに忍び込んでたら何かが倒れる音がしたらしく、外に出て確認したらプロデューサーが倒れてたそうです」

早苗「まゆちゃんは後で独房行きね。その時自宅には?」

友紀「風呂場に輝子ちゃん、玄関前にダンボールに入った犬がいたみたいですよー」

早苗「なるほど。まゆちゃんの言うことを信じるなら容疑者は2名ってわけね」

友紀「あ、ちなみに台所には響子ちゃんが作ったシチューが鍋に入ったまま置かれてて、問い詰めたところ媚薬入りでした。本人も自宅近くに潜伏して効果が出る時間になれば乗り込むつもりだったと」

早苗「……他には?」

友紀「事務所から帰る際に愛梨ちゃんが手作りのシュークリームを渡したらしいんですが帰宅した時には持ってなかったみたいです。無論媚薬入りです」

早苗「あれだけ掃除したのに効果が無いと泣けるわね」

友紀「まったくもって」

友紀「他にも帰宅前に智絵里ちゃんの煎れたお茶とか色々ありますけどどうします?」

早苗「聞くだけ無駄な気がしてきたわ。とりあえず現場に行こっか」

友紀「仕事はー?」

早苗「あたしは夕方からだけど。友紀ちゃんは?」

友紀「あたしは今日レッスンだけだからねー。サボっても問題ないっしょ」

早苗「数日後、マストレさんの特製ジュースを無理やり飲まされる友紀ちゃんの姿が」

友紀「リアルに怖いからやめてくんないかな」

早苗「冗談だって。きらりちゃんもいるなら呼んできて」

友紀「りょーかい!」

 
 ………
  …


P宅前


早苗「そういやP君は外傷とかはなかったの?」

友紀「なかったっぽいよー。そんなのあったら本物の掃除屋(国家権力)が出てきてるだろうし」

早苗「なら何かを服用した可能性が高い……か。体内の洗浄は医者に任せるとして、あたしたちは証拠を洗い出しましょう」

きらり「がんばるにぃ☆」

友紀「じゃあ最初の容疑者だけど」





凛「がるるる……」

ハナコ「くぅーん……」

早苗「うんまあ分かってた」

きらり「前も見た光景だゆ」

早苗「自分の飼い犬を使ってまで同情心を誘おうとするとは……」

きらり「感服できるレベルだにぃ」

友紀「見習いたくはないけどね」

凛「なに? 私忙しいんだけど」

早苗「P君なら病院よ?」

凛「知ってる。でもここでいいの。私は飼い主の帰宅を待つ忠犬だから」

友紀「人としての尊厳をいともたやすく捨てよった」

きらり「今更だゆ」

早苗「そっか。じゃあ聞くけど夜中に何があったの? 事の次第によっちゃあ掃き取るよ」

凛「……夜は」

 
 ………
  …


P「なにしてんだ。ハナコまで連れて」

凛「私気付いたんだ。プロデューサーの家に入るのは簡単だって」

P「さらっと恐ろしいこと言うなよ……」

凛「でも駄目なの。プロデューサーに招き入れられたいの」

P「……で?」

凛「……私のご主人様になってくれないかな?」

ハナコ「くぅーん……」

P「そんな性癖は持ち合わしてない。ほら、タクシー呼んでやるから早く帰りなさい」

凛「拾ってくれるまでここにいる。ね、ハナコ」

ハナコ「うぅーん……」

P「勘弁してくれよ……」

 
 ………
  …


凛「で、結局断られて今に至るわけ。ふふ、プロデューサーも恥ずかしがりなんだから……」

友紀「そう受け取ったか」

早苗「そのポジティブさを違うとこで発揮して欲しいんだけどねぇ。なにか気付いたりしなかった?」

凛「夜だから確信はないけど、ちょっと顔色悪かったかな。あと腕を掴んだ時脈が早かった。そりゃそうだよね。可愛い犬2匹がすり寄ってくるんだもんね。ふふふ……」

早苗「うん。ありがとう、話は伝わった」





早苗「きらりちゃん、掃除開始」

きらり「きらりんぱわー☆」


マケナイ、ワタシハァ! クゥーン…

早苗「さて、次は中ね」ガチャ

友紀「荒れてる形跡はないですねー」

早苗「台所は例のシチューが鍋に入ったままか。他は特になさそうね」

友紀「今のところまゆちゃんの情報は正しいみたいですね。じゃあ2人目にいきますか」

きらり「浴室だにぃ?」

早苗「そ。ついでに菌の繁殖も防ぎましょうか」ガチャ





輝子「フヒ……」

友紀「なん……だと……?」

きらり「きのこないゆー?」

早苗「さすがに学習したか」

輝子「フヒ……も、もうトモダチは掃除させない……」

こういうSSのときのアイドルたちって自分本位で相手の気持ちなんか一切考えてないよね
余計早苗さんたち応援したくなる

早苗「まあ今日はその掃除しにきたわけじゃないしね。じゃあ輝子ちゃん、夜中の様子教えてくれる?」

輝子「と、特になにも……。な、なにか音がしてからしばらくしたらまゆが入ってきただけ……フヒ……」

早苗「ずっとこの中にいたの?」

輝子「フヒ……。と、トモダチの供養をしにきただけだったから……」

友紀「きのこの供養ってなんだろう」

きらり「美味しく食べる以外ないゆ」

輝子「ノオオォォ! ノットイイィートッ!」

早苗「うるさい」

輝子「あ……スイマセン……」

なんでここのアイドルはキチガイなんだろう

早苗「うん。話は分かった。でもね輝子ちゃん?」

輝子「ふ、フヒ?」

早苗「ならなんでまだここにいるのかな? 供養がそんなに長くかかるわけでもないでしょ?」

輝子「そ、それは……ここで寝てただけで……」

早苗「布団もなにもないこの浴室で? P君もいないんだしベッドも空いてるのに?」

輝子「フヒ……」

早苗「ツメが甘いの。貴女がここにいるのは他の箇所から注意を逸らしたいため


輝子「……」

早苗「で、その他の箇所っていうのは……友紀ちゃん」

友紀「ん?」

早苗「台所の下の戸棚開けてきて」

輝子「!」

>>17>>19
いやもう本当にすいません…。

早苗「輝子ちゃんは素直な子ね。きのこってワードが出ただけで視線が同じ方向に向いてるのよ。しかも心配そうな目で。気付いてた?」

友紀「いやまったく」

早苗「もう少し着眼点を鍛える必要があるわね。ずっと台所の方を向いてたのよ。でも台所の見える場所にはシチューしかない。で、見えなくてある程度スペースのある唯一の箇所は」

きらり「ここしかないにぃ」パカッ





ワラワラワラワラワラワラ


友紀「上下左右から生えてる……」

きらり「お掃除だゆ☆」ブチブチ



ノオオォォォオマイフレエエェェエエンズッ!

早苗「でも最有力の2人は消えたわね」

友紀「そうなの?」ブチブチ

早苗「2人とも嘘はついてないから。目を見ればある程度分かるし」

きらり「早苗さん本物の刑事みたーい☆」ブチブチ

早苗「やめてよー。もう現役じゃないし交通課だったし」

友紀「配属先間違ってたんじゃない?」ブチブチ

早苗「あたしは交通課で良かったと思うけどね。騒音掃除とか白バイで追い掛けてて楽しかったし」

友紀「なにその恐怖」ブチブチ

きらり「きらりでも逃げたくなるにぃ」キュッキュッ

早苗「失礼なこと言わないの。ほら、次いくわよ」

友紀「はーい」

早苗「居間はこれといってなにもないわね」

きらり「押し入れもリボンとロウソクがあるだけだゆー」

友紀「窓も締まってるね」

早苗「ならやっぱりまゆちゃんが犯人? でもあの子がP君に直接なにかするわけは……」ブツブツ

友紀「たいちょー。もう直接プロデューサーに確認した方がいいんじゃないですか? 直に目を覚ますでしょうし」

きらり「そうだにぃ。もうここ捜しても人形しか見つからなかったゆー?」プチッ

ウサコ「やめ――」

早苗「なにか、なにか見落としてる気がするのよ。埃まみれの常識に捕らわれて見えてないなにかが……」

友紀「愛梨ちゃんのシュークリームじゃないの?」

早苗「P君が怪しげなものを食べないのは知ってるでしょ。たぶん誰かにあげたんじゃない?」

友紀「魔が差した可能性もあるけどね。あたしもお腹空いてきちゃった。なにかないかなー……え?」ガチャ

きらり「Pちゃんの日記見つけたにぃ! ……にょ?」

早苗「な、なにこれ……」





友紀「冷蔵庫いっぱいのもやし……?」

友紀「なにこれ。プロデューサーってうっうーちゃんリスペクトしてたの?」

早苗「そんな話は聞いてないけど……。きらりちゃん、ちょっとその日記見せて」

きらり「にょわ」



7月15日
大量にかき氷を買ってお金がない。給料日まで先が長いのにどうしよう……。諦めて響子の手料理を食べるべきか……。

7月16日
スーパーに行ったらもやしが安売りしてた。迷わず購入。胡椒で炒めたら美味い! さすが有名なアイドルを虜にしただけはある。

早苗「この頃からあるのね……」

7月27日
もう10日ももやししか食べてないのか……。いや、諦めるな。給料日は明日だ!

7月29日
ハワイでのライブが決まったもやし。もやしが楽しそうで何よりだ。
ちひろさんに勧められるままLPドリンクを買ったら給料の半分が溶けた。だが悔いはない。

7月30日
アーニャとみくと夕美が新しいもやしが欲しいと言ってきた。任せろ。俺が調達してきてやる。

7月31日
衣装調達で給料がほとんど尽きた。だが俺にはもやしがある。もやし万歳!

8月1日
もやし万歳もやし万歳もやし万歳もやしドリンクもやしもやしもやし万歳もやしもやしドリンクもやしもやしもやしもやしもやしもやしもやし。


早苗「」
友紀「」
きらり「」

早苗「そういえば最近お昼はぶつぶつ言いながらもやし食べてたわね……」

友紀「あたしにも笑いながらおやつにどうだってもやし出してきたことあったね……」

きらり「きのこ以上の幻覚作用があるのかもしれないにぃ……」

早苗「……あたしたちは何も見なかった。いいわね?」

友紀「らじゃー……」

きらり「分かったにぃ……」


プルルル


早苗「ごめん。はいはい、あいちゃん? あ、今P君の病院にいるんだ。P君どう? 元気そう――え?」





早苗「栄養失調……?」





これは掃除してもいいのか。
それはPの仕事を奪うことにもなるかもしれないのに。
だが負けるな早苗一同!
Pの生活を守るためにも!





ちひろ「早くドリンク飲んで走らんかい。うちが待っとるで」

P「うう……ともえぇ……」

ちひろ「ふふ」

早苗「掃除屋でーす」ガチャ

ちひろ「!?」



おわり

うん、ミスった。
これはミスった。
この題材じゃ掃除屋が生かせなかったんだ、ごめんよ…。
あと実体験じゃないからね?
ホントダヨー?


長い時間お付き合いありがとうございました!

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