モバP(以下P)「おいおいどうした。そんな車に轢かれる猫のような叫び声をあげて」
みく「Pチャンかにゃ……申し訳ないけど今みくは負けがかさんで虫の居所が悪いんだにゃ。ちょっかい出すなら他の子にしてほしいにゃ」
モバP「おいおい、一体なにしてんだお前? アイドルが博打で逮捕なんかごめんだぞ俺は」
みく「お金はかけてないからダイジョウブにゃ。かけてるのは、そう、女としてのプライド……ってとこかにゃ」
モバP「はあ? いいから何やっているのかくらい教えてくれよ」
みく「しょうがないにゃあ……。これにゃ」
モバP「……花札ぁ?」
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これは、最近徐々に人気が出てきてテレビへの露出も増えたけれど、何故かバラエティ路線に行っているような気がしてならないアイドル前川みくと、
魚嫌いの猫キャラはどう考えてもおかしいから、最近みくが昼寝をしているときに耳元で「みくは魚が大好物……みくは魚が大好物……」と囁き続けているプロデューサーが一生懸命花札を攻略する物語である!
序章 全く勝てんのにゃ!
モバP「なぁんだ、花札かぁ。てっきり麻雀とかチンチロリンとか限定じゃんけんかと思っちまったぜ」
みく「なんで徐々に危ない賭けにシフトしていくのにゃ。ほら、気がすんだらさっさとどっかにいくにゃ」シッシッ
モバP「おいおいなんだよつれないな。で? どれだけ負けこんでるんだ? 直前のヤツでいいから教えてみ」
みく「…………文」
モバP「ん?」
みく「102文差で巴チャンに負けたにゃ……。最初の一月目で二文みくがとって、そっから先は全部巴チャンにゃ……」
モバP「Oh……」
P「ま、まぁそんなときもあるさ。そんな大差で負けるのはほんとに稀で……」
みく「それは昨日も一昨日も七十文差以上で負けたみくへの嫌味かなにか?」
P「……すまん」
みく「別にいいにゃ。みくが弱いのはみくが一番よくわかっているにゃ。それじゃあみくは仮眠室でふて寝してくるからPチャンはお仕事がんばってにゃあ」
P「花札はもういいのか?」
みく「みくにはそっちの才能がないことはもうわかったにゃ。たぶんもう一生やらないと思うよ? それじゃあおやすみ~」バタン
P「あっ、おい! ……行っちまった」
P「ったく、なーにがもう一生やらない、だ。あんな涙目になるくらい負けず嫌いのくせに……」
P「しょうがねえ! 男モバPここらでいっちょ一肌脱いでやりますか!!」
P「あ、その前に囁きにいかないと……。今度成果確認のために寿司屋にでも連れてってやろうかね……」コソコソ
みく「ふぁぁ~~、結構寝てしまったにゃあ……って、んん?」
鳳凰の被り物をしたP「おう、おはようみく。ささ、さっそく講義を始めるから席につけ」
みく「……いや、まったく状況が呑み込めんにゃ。とうとう頭がぶっ壊れたのかにゃ? 清良さん呼ぶ?」
P「失礼な奴だな、わざわざ鈴帆から借りてきたんだぞ。なにごともまずは形からってな」
みく「それはいいけどいったい何をするつもりなのにゃあ。言っておくけどみくはもう花札はやらないよ」
P「まあまあ、そいつはこの『ネコでもわかる花札講座』を受講してからにしておくれよ。こいつを学べばそう簡単には負けが込むことはないはずだぜ」
みく「うっそくさいにゃあ……」
P「俺が今まで嘘をついたことがあったか?」
みく「むしろ嘘しかつかれたことがないような気がするにゃあ」
P「……ま、まぁそれはおいといて。だまされたと思って、な? 今なら全部受講するだけで特別なプレゼントも用意してあるんだ」
みく「……Pチャンがそこまで言うならやってやるにゃ。それでまた今度負けが込んだら二度と朝日を拝めないようにしてやるにゃ」
P(こ、このひややかな目……間違いねぇ、コイツ『マジ』だ……)
第一章 逃げることを覚えろ!
P「まず一番大切なことはこれだな。これはあらゆる場面で応用が利く」
みく「逃げることぉ? なに、勝負するなってこと?」
P「大ざっぱにいえばそういうことだな。場を流す効果と相手を牽制できる効果があるからぜひ覚えておきたいところだ」
みく「ん~? 流すのは分かるけど牽制ってどういうことにゃ?」
P「よし、そこから分かりやすく説明していこうか」
P「逃げに使えるのは大体【種】か【短】か【カス】ってところだな。【カス】は十枚そろえる必要があるが、狙ってやれば割とすぐ集まるから問題はない」
みく「でも所詮一文二文にゃ。みくとしては【月見で一杯】や【花見で一杯】なんかで一発当ててやりたいにゃ」
P「もちろん勝つためにはそういうプレイも必要だ。しかし攻めてばかりじゃ勝てないのもまた事実」
P「例えば最初の手札がどうしようもないくらい悪かったときなんかは速攻でカス集めに回って流した方がいいよな?」
みく「それはそうにゃ。さっさと終わらせて次に期待した方が建設的だにゃ。で? 牽制ってどうことにゃ?」
P「このカス集めは相手の大きな役を作らせるのをある程度防ぐことができるんだよ」
前川:出来役 【短】
持ち札 【菊に杯】
場: 【芒に月】 【桜に幕】
P「今みくは【短】が出来上がったところだ。手札には【芒のカス】も【桜のカス】もないけれど、少し粘ればどちらか一杯くらいはできそうなところだ。さて、みくはどうする?」
みく「こいこいに決まってるにゃ。こんなおいしい場面をわざわざ取り逃がす方がどうかしてるにゃ」
P「確かにここだけ見たら俺もみくに同感だ。だけどもし、相手がこんな持ち札だったらどうする?」
モバP:出来役 なし
持ち札 【藤に時鳥】【柳に燕】【萩に猪】【菖蒲に八橋】
みく「にゃあ……これは……」
P「相手はあと一枚で【種】が出来上がるという状態だ。ここで迂闊にこいこいをしてしまうと相手が先に上がってしまうかもしれない」
みく「心当たりがありすぎるにゃあ……。せっかく大物ができそうだったのにカス上がりされた時の腹立たしさときたら……にゃぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」ガリガリガリ
P「【種】や【短】はほかの役と違って文数が少ないから軽視されやすい。わずか二枚で役のできる【菊に杯】のほうがお手軽そうだが、こいつはみんなほしがるから取りにくいんだ。だから逃げるのに使えるのは【種】【短】【カス】の三つというわけさ」
第二章 カスも積もれば山となる!
P「さて、先ほどの章で【カス】たちのポテンシャルが分かったところで次にいこう」
P「この章のポイントはズバリ! 『【短】【種】【カス】ができたらなるだけこいこいしろ!』ということだな」
みく「んん? さっきと言っていることがちがうにゃあ。集めるのは守るためでしょ? なんでわざわざこいこいなんてしなきゃならんのにゃ」
P「チッチッチ、甘いなみくにゃんクン。かな子の作るケーキよりも甘いぞ」
みく(ウッゼェ……)
P「まあ戸惑うのも分かる。これは別に狙ってたわけじゃないけど集まってしまった場合の行動だな。もちろん相手の持ち札や場にもよるが……こいこいしても別にかまわん。ボーナスステージと捉えるのが一番近しいかもな」
みく「ぼーなすすてーじぃ? 詳しく教えるにゃ、Pチャン」
P「よしきた」
P「【カス】【種】【短】は一度揃ったらそのあと一枚くるごとに一文追加されてあがりかこいこいかを選べるのはわかるな? そういう意味でボーナスステージなんだ。なんてったって一枚ごとに一文追加なんて相当おいしいからな。なるだけここで稼ぐのもいいし、相手が焦って安い手で上がっても所詮一文二文だからな。ダメージもそんなにない」
みく「なるほどにゃあ。それに相手が途中から【種】とかを集めだしたら結局相手は役ができなくなるしにゃ」
P「その通り、なかなかいいセンスしてるじゃないか、みく。もっとも相手が【菊に杯】とか【三光】にあと一枚みたいなときに無理して集めに行かなくてもいいからな? あくまでもボーナスステージでとってもとらなくてもいいって感じで気楽に捉えてくれていい」
みく「わかったにゃ! なんか一杯あって邪魔だと思っていた札たちが輝いて見えてきたにゃあ」
P「どんな札にも役目はちゃんとあるからな。まさにちりも積もれば山となる……、こつこつと積み重ねた物はしっかりと自分に返ってくるんだぞ」
みく「まるでいつものレッスンみたいだにゃ。アイドルと花札って意外と似ているのかもね?」
P「はは確かにそうかもな。よし、守りの基礎はだいたいこんな感じだ! 次は攻めの基本を教えていくぞ!」
みく「はいにゃ!」
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