男「ハァ~……」
友「どうした?」
男「実はさ、仕事でとんでもないヘマしちまった……」
友「ヘマって、どんな?」
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男「詳しい説明は省くけど、数千万円レベルの損害が出るかもしれねえ……」
友「数千万……か」
男「ハァ~……どうしよう」
男「とりあえず今日は遅く残っててもしょうがないからってことで帰してもらえたけど」
男「明日から俺、どうなっちまうんだろう」
男「きっとメチャクチャ怒られて、呆れられて、いびられて……」
男「今から胃がキリキリしてしょうがねえよ」
友(うーむ、なんとか励ましてあげたい……)
友「気にすんな!」
男「!」
友「ミスしたって、なにも死ぬわけじゃないんだ!」
男「そ、そうだよな! 死ぬわけじゃないもんな!」
友「そうさ!」
男「ああ……なんだか気が楽になってきた!」
友「……」
男「……」
友「……なわけないよなぁ」
男「だなぁ……」
男「そりゃ死ぬよりはマシかもしれないけど、辛いもんは辛いって」
友「死ぬわけじゃないしいいじゃん、で立ち直れたら苦労はないよなぁ」
友「だったら……お前の悩みと宇宙の広さを比較してみようぜ!」
男「宇宙?」
友「そう、宇宙を思い浮かべるんだ! 広い広い宇宙を!」
友「宇宙の広さに比べれば、お前の悩みなんかちっぽけなもんじゃないか!」
男「そ、そうだよな!」
友「そうさ!」
男「よっしゃ、なんだかリラックスできてきた!」
友「……」
男「……」
友「……なわけないよなぁ」
男「だなぁ……」
男「どんなに宇宙が広かろうと、キツイもんはキツイって」
友「この理屈が通るなら、逆に楽しいことも楽しくなくなっちゃうもんなぁ」
友「なら……オレなんて数億のヘマやらかしたよ!」
男「数億!?」
友「なのに、こうして元気でやってる!」
友「それに比べたら、数千万なんてどうってことないさ!」
男「そ、そうだよな!」
友「そうさ!」
男「へへ、俺の悩みなんて大したことないもんに思えてきたぜ!」
友「……」
男「……」
男「ウソだろ?」
友「……ああ、ウソついた」
男「分かってたよ……ウソだって」
友「そりゃバレるよな」
友「仮にホントだとしても、オレがヘマしたことがお前の救いにはならないもんなぁ」
友「ごめんな……」
男「なぁに、平気さ」
男「ありがとよ、色々励まそうとしてくれて嬉しかったぜ」
男「さすがにバックれるわけにはいかないし、当たって砕けろだ」
友「おう、その意気だ!」
男「んじゃな」スタスタ
友「またな」
男「……ハァ~……」スタスタ…
友「……」
友(結局、上手く励ましてやることはできなかったなぁ……)
友(まあ、もしオレが100点満点の励ましをしてやれたところで)
友(あいつのヘマが解決しない限り、真に心が晴れることはないし……仕方ないことさ)
友(しっかし、数千万か……結構シャレにならんよな)
友(あいつどうなるんだろうなぁ)
友(クビかなぁ……)
男『お~う、クビになっちゃったよ……』
男『今日からハローワーク通いが始まるぜ……』
友(――なーんてことになるのかなぁ)
友(あるいは――)
男『“会社の地下に溜まってるヘドロを素手ですくい取り課”に異動になったぜ』
男『今日も素手でヘドロをすくい取るだけの簡単な仕事が始まるぜ……』
友(わけ分からん部署に左遷させられたりして……)
友(うーむ、これはキツイ)
友(それとも――)
でかいおばさん『損害を肩代わりしてあげたから、あなたの体はあちしのものよ』
男『た、助けてくれぇぇぇっ!』
友(こんなことになっちゃうかも……)
友(いやいや、もっとシンプルに――)
上司『そなたの罪、極刑である!』ザシュッ
男『ぐわあぁぁぁぁぁっ!』
友(ひいい……クビどころか、首がボトリと……!)
友(あああ……こんなことなら、もっと親身になって励ましてやるべきだった)
友(今からメールでも送るか?)
友(いや……かえって追い詰めちゃうかもしれないし……)
友(こういう時って、どうするのが正解なんだ! 分からん! 分からねぇよ……!)
友(ああ……くそ! 胃が痛くなってきやがった!)
数日後――
男「いやー、よかったよかった!」
男「今回の件、俺だけのせいじゃないって分かったし、上司や先輩も協力してくれて……」
男「ここ数日はマジで大変だったけど、どうにかなったよ!」
男「嫌なことが終わった時のこの感覚って、ホントたまらないよな!」
友「ちょうど今、オレもその感覚を味わってるところさ……」
友(ま、人生なんてのは、ある意味この感覚を味わうためにやってるってとこあるよな)
おわり
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