さやか「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない」
さやか「あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」
杏子「お……おいさやか」
さやか「あたしって、ほんとバカ」ピシッ
パッ
まど神「さやかちゃん……」
さやか「!?」
さやか「ま、まどか!? 何であんたがここに……? 大体あんた、その恰好……」
まど神「うん……わたしも、魔法少女になったんだ」
さやか「うそ、あんたいつの間に……。まさか、あたしが『あんたが戦ってよ』なんて言っちゃったから……」
まど神「違うよさやかちゃん。これはわたしが自分で考えて出した答えだから」
まど神「それにね、この時間の『わたし』はまだキュゥべえと契約してないんだ」
さやか「ど、どういうこと?」
杏子「おいさやか!一体何一人で喋ってんだ?」
さやか「!?」
さやか(杏子には見えてない……?)
まど神「今のわたしは、さやかちゃんにしか見えないし声も聞こえないんだね」
さやか「そうなんだ?」
まど神「わたしの願いは全ての時間の全ての魔女を生まれる前にこの手で消し去ること」
まど神「希望を信じた魔法少女が最後まで笑顔でいられるために」
まど神「魔法少女が誰も呪わなくていいように、みんな私が受け止めてあげたい」
まど神「だから絶望に染まる前に、こうやって迎えに来ているんだよ」
さやか「……そっか。はは、まどからしい願い事だね。やっぱりまどかは……優しすぎるよ」
まど神「さやかちゃん……」
さやか「ありがとう、まどか。わざわざ迎えに来てくれて。さ、連れてってよ」
まど神「………………」
まど神「……どうしても、連れて行かなきゃ、ダメ、かな……」
さやか「まどか?」
まど神「どうしても、さやかちゃんがこの世界に絶望したまま連れて行かなきゃダメなのかな」
さやか「………………」
まど神「いろんな時間の魔法少女の最期を導く概念になってからこんな思いをするなんて考えもしなかったけど」
まど神「やっぱりさやかちゃんには絶望なんかに負けてほしくないかなって」
さやか「まどか……」
まど神「やっぱり大切な親友のさやかちゃんには希望を持ってずっと生きててくれたら、それはとっても嬉しいなって」
さやか「……そっか、ありがとう。まどかの気持ち、伝わったよ」
さやか「まどかはあたしなんかよりずっと辛い戦いの道を選んだんだもんね」
さやか「そんなの見せつけられたら……あたしもこんな所でへこたれてるわけにはいかないよね!」
杏子「……やか!おいさやか! しっかりしろ!」
さやか「……杏子……?」
杏子「ったくよ、気が触れたかと思っちまったよ」
さやか「……うん、あたしはもう大丈夫」
杏子「大丈夫ってアンタさっきまで……」
さやか「あんたには本当に手間かけさせちゃったね。ごめん」
さやか「でも今のあたしは、もう少しだけ希望を持って生きてみようって思えるようになれたから……もう心配ないよ」
杏子「……その言葉、信じていいんだな? ならコイツを今すぐ受け取るんだ」
コロン
さやか「……これは……」
杏子「アンタが倒した魔女が持っていたグリーフシードだ」
杏子「本当に生きてみようって言うんなら、アタシの目の前でコイツを使ってみろよ」
さやか「……ありがと」コツン
シュウゥゥゥ
杏子「ホント、面倒掛けさせやがってよ。まぁどういう心境の変化か知らねぇけど希望が見えたってんなら悪くないか」
さやか「……アンタの考え方は、やっぱりあたしには受け入れられない部分があるけどさ」
杏子「……まだそんな事をっ」ギリッ
さやか「あたしはね、世界で自分がたった一人ぼっちだと思ってた。あたし一人が誰も知らないところで苦しみ続けているって」
さやか「でもそうじゃないんだって、大事な親友に気付かされたんだ。同じように苦しんで、それでも戦い抜いてる人がいるって」
杏子「さやか……」
さやか「杏子もさ、あたしのことをずっと心配していてくれてたんだよね」
さやか「あたしが何もかも、自分のことすらも冷静に考えられなくなっていても」
さやか「別の部分に目が行っちゃって、あたしはそんなことにも気がつけなかったけど」
杏子「……そんなんじゃ、ねぇよ……」
さやか「ありがとう、杏子」
杏子「!? ……ふん、あばよ」ダッ
ほむら「佐倉杏子、美樹さやかは、もう……?」
杏子「一先ずは心配ないね。グリーフシードを使ってソウルジェムの汚れは取り除いたし、心の方も落ち着いたみたいだよ」
ほむら「何ですって!?」
杏子「へー、冷静だと思ってたアンタも意外な反応するんだな。まあついさっきあんなに拒絶されたばかりなんだ、仕方ないか」
ほむら「そう……(ここまでの状況に陥って、美樹さやかが魔女化しないなんて事、今まで……?)」
杏子「さて、アンタに一つ聞きたいことがある」
ほむら「何かしら?」
杏子「ソウルジェムに関する何かしらの秘密を知っているんだろ?」
ほむら「………………」
杏子「聞かせなよ。魔法が使えなくなるってだけじゃ済まないんだろ?コイツが濁り切ったらどうなるかをさ」
~真夜中の駅~
さやか「こっちのまどかとは、これでお別れだね」
まど神「えっ?」
さやか「あたしはもう大丈夫。まどかは他の魔法少女も迎えに行く仕事があるんだよね?」
まど神「わたしは他の子のところにも同時に存在してるから大丈夫だよ」
まど神「今ここにいるわたしはさやかちゃんを迎えに来ただけの存在なんだ」
さやか「ふーん、そうなんだ。じゃあこっちのまどかはこれからどうすんの?」
まど神「本当はわたしはただ魔法少女の絶望を受け止めるだけの概念なんだ」
まど神「でも……もしよかったらなんだけど、もう少しさやかちゃんと一緒に過ごしたいかなって」
さやか「……うん。まどかがよかったら、いいよ」
まど神「えへへ、嬉しいな。またさやかちゃんと一緒だね」
まど神「あ、わたしのことはみんなには内緒だよっ?」
さやか「………………」
~通学路~
仁美「おはようございます、まどかさん。今朝は顔色がよろしくなさそうですが」
まどか「おはよう仁美ちゃん。……うん、昨日は何だか眠れなくて」
仁美「そうでしたの……さやかさんは今日はお休みでしょうか?」
まどか「……わかんない」
仁美「後でお見舞いに行くべきでしょうか……でもちょっと、今はさやかさんとはお話しづらいんですが」
コソコソ
さやか「うぅ……いざ二人を前にすると話しかけ辛いなあ」
まど神「さやかちゃん……」
さやか「それにしても昨日のことは夢じゃなかったんだなあ。隣にまどかがいるのにあそこにもまどかがいるし」
さやか「それはまあいっか。問題は目の前の現実だよな、うーん」
さやか「……うん、ダメだ。今日は帰ろう。仁美とは何となく気まずいし、まどかには合わせる顔がない」
まど神「えっ」
まど神「さやかちゃん、学校休んだら絶対こっちのわたしがお見舞いに来ちゃうよ?」
さやか「あたしまどかにあんなにひどいこと言ったのにお見舞いに来るわけないよ」
まど神「そんなことないよ!」
さやか「ごめん今はちょっと何も考えたくない。少し休ませて」
――――――
――――
――
ピンポーン
まど神「さやかちゃん、さやかちゃん!」
さやか「んん……あたし、寝ちゃってたのか……」
ピンポーン
さやか「あれ? 誰か来たのかな」
まど神「………………」
さやか「今親もいないからな……。はいは~今出ますよ~、モニターはと」ポチットナ
まどか「さやかちゃん!?」
さやか「まどか……!?」
まどか「え、と……あの……ごm」
さやか「!!」プツッ
まどか「えっ……」
まど神「えっ……」
さやか「………………」
まど神「さやかちゃん!」
さやか(……まどかに謝罪なんて言わせたくない……悪いのはあたしなんだから……)
~♪ ~♪
まど神「さやかちゃん、着信来てるよ」
さやか(この音は……まどか……)
~♪ ~♪
まど神「………………」
さやか「………………」
~♪ ……
まど神「………………」
さやか「………………」バッ
カチカチカチカチ
~♪
まどか「!?」カチカチ
差出人:さやかちゃん
件名:ごめん
本文:
落ち着いたらこっちから連絡するから。
まどか「………………」
さやか「……さて、あたしも魔法少女の役割を果たさないとね」
まど神「さやかちゃん……」
さやか「まだまどかが近くにいるかもしれないし」
シュパアァァァァ!
さやか「窓から失礼しますよっと」
まど神「………………」
使い魔「ティロティロティロティロティロティロ」
さやか「逃がすか!」ジャキン!
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
ザンッ!
使い魔「」
さやか「……ふう」
杏子「相変わらずだなさやかは」
さやか「あんた……」
まど神「あ、杏子ちゃんだ」
さやか「またあたしが使い魔を倒すのを止めに来たの?」
まど神「ちょっとさやかちゃん!」
杏子「そう早合点するなよ」
さやか「?」
杏子「アンタが使い魔まで狩り続けるにしろアタシと張り合うにしろ、今のままじゃ無謀だね」
さやか「何が言いたいのよ」
杏子「教えてやるよ。効率的な戦い方ってのを」
さやか「なんであたしにそんなこと……」
杏子「生き抜くって決めたんだろ? 一度は絶望しかけたこの世界をさ」
杏子「無駄にソウルジェムを濁らせていちゃ、そいつは到底ムリな話だからね」
さやか「……どういうつもりよ」
杏子「……さやかを見てると、思い出すんだよ」
さやか「……?」
まど神「………………」
杏子「アタシも……今はこんなだけどさ、やっぱり正義の魔法少女ってのに憧れてたんだ」
さやか「………………」
杏子「前に言ったことと逆になるけどさ、アタシはそんな風に思い続けられなかったけど、さやかはそれを守ろうとしてる」
杏子「敵わないなあって、思っちゃったのさ」
さやか「杏子……」
杏子「でもさ、知ってると思うけどさ、この世界そういう奴ほど早死にするんだ。まあ当然なんだけどね」
さやか(……マミさん……)
杏子「そんなんだから、アタシは……アンタにはそうなって欲しくないから。きちんとした強さを手に入れて欲しいんだ」
杏子「アタシの生き方は変えられないけど、かつてのアタシの思いを、さやかに託したい」
杏子「……なんてな! 自分じゃ出来ない面倒をアンタに押し付けてるだけなんだけどね」
さやか「……そっか、じゃああたしも頑張って強くならないとね」
さやか「今のあんたの生き方を後悔させるほどにバッチリ強い正義の魔法少女になっちゃいますよ!」
杏子「へっ……言ってくれるね」
さやか「というわけで、よろしく」スッ
ガサッ
杏子「食うかい?」
さやか「それは無理」
杏子「ちっ」
~魔女の結界内~
杏子「さっそく近場で魔女の結界が見つかってちょうどよかったな」
魔女「ウェヒヒウェヒヒウェヒヒウェヒヒウェヒヒウェヒヒ」
ワラワラ……
さやか「使い魔があんなに……」
杏子「アンタもアタシも近接戦特化の魔法が中心だ。全部を落とすなんて考えなくていい」
杏子「近づく奴を確実に仕留めるんだ」ザンッ!
さやか「わかった!」バシュッ!
杏子「前みたいに痛みを消して被害を省みず無理矢理攻撃する戦法は却下だ。回復も考えると魔力の消耗が激しい」
杏子「相手の攻撃を見切るんだ。初めてアタシの槍を受け止めたようにな」ガキイィン!
さやか「はっ!」ガァン!
杏子「今だ!一気に懐に潜り込め!」
さやか「てえぇぇぇりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」ゴオッ!
ザシュッ
杏子「こいつグリーフシード持ってたぜ。ほらよ」
さやか「あたしはいいよ」
杏子「さやか、アンタ」
さやか「また会えるんでしょ? 次はあたしがもらうから」
杏子「! そうか、そうだな。じゃあ……またな!」ヒュン
さやか「うん」
まど神「よかった。さやかちゃんまたケンカするかと思っちゃった」
さやか「まあそういう可能性もあったけどね」
まど神「もう……お願いだからもう無茶しないで」
ザッ
さやか「……あれは」
さやか「転校生……」
まど神「ほむらちゃん……」
ほむら「意外にも無事だったようね。まどかにあなたの破滅を見せることにならなくて安心したわ」
さやか「あんた……」
ほむら「私の用はそれだけよ。これからもまどかを巻き込むようなことがないように願うわ」
さやか「……あんたってさ、どうしてそんなにまどかに執着するんだ?」
まど神「………………」
ほむら「その質問に答える必要はないわ」
さやか「……あんたは相変わらず得体が知れないけどさ、まどかのことになると本心が見え隠れするんだよね」
ほむら「………………」
さやか「一つだけ、疑問があるんだ。ううん、答えは分かる気がするけど、これだけはあんたの言葉で聞きたい」
ほむら「……何よ」
さやか「あんた……ほむらはさ、まどかのために行動してる。それは間違いない?」
ほむら「……ええ、そうね。あなたやまどかにはどう映っているかは分からないけど、少なくとも私はそのつもり」
さやか「そっか、それを聞いて安心したよ。……じゃあさ、まどかが自分の意志でどんな選択をしてもそれを応援できる?」
ほむら「!?」
まど神「!!」
ほむら(繰り返した時間の中で、まどかは何度も自分の意志で魔法少女になった。私は――)
ほむら(違うわ。あれはキュゥべえに騙されているだけ。そうよ、まどかだってそう言ってくれた)
ほむら(キュゥべえに騙されたわたしを助けてあげて──と)
ほむら(……でも……)
ほむら「……それについても答える必要なんてないわ」
さやか「そっか。残念」
まど神「ほむらちゃん……」
さやか「前にまどかが言ってたんだけどさ。ほむらが転校してきた日」
さやか「世界の終わりの様な場所で、たった一人で巨大な怪物に挑むほむらが出てきた夢の話」
ほむら「……!?」
さやか「最初その話を聞いた時は大笑いしちゃったけどね」
さやか「ほむらはさ、ほんの数週間前に見滝原に転校してきたばかりの人のはず」
さやか「なのに、すごい長い間まどかのことを見てきたような雰囲気がする」
ほむら「………………」
さやか「あたしの知らないまどかの時間を共有しているような、そんな感じ」
ほむら「……何の根拠のない戯言ね」
さやか「正直そうだったらいいなって思うよ。でも、ほむらが誰よりも何もかもを知っている様子からしても、ね」
ほむら「そうでなきゃ、あの全てを諦めた目なんてできない」
ほむら「……っ」
さやか「でもいいんだ。ほむらがまどかの味方だって聞けたから、それで十分」
さやか「言えない理由があるんだよね? だったら今はいいよ」
ほむら「……誰も、未来を信じない。誰も、私の言葉を受け入れられないっ……!」
さやか「ほむら?」
ほむら「……何でもないわ。他に用がないなら失礼するわ」
さやか「もう一つ聞きたいのは、穢れを溜めたソウルジェムに関する秘密」
ほむら「!?」
さやか「ほむらは前に言ったよね。あたしが破滅するくらいならいっそこの手で殺すって」
ほむら「………………」
さやか「穢れを限界まで溜め込んだソウルジェムがどうなるか、知ってるんだよね」
~~~
杏子「なるほどね。にわかには信じられないけど」
ほむら「そうでしょうね。今までに信じてもらったことは皆無よ」
杏子「まあ、これでアンタがさやかを殺そうとしたのも合点がいったよ」
杏子「あのまま事態が進んで、さやかに付いてたあの友達が知ったとしたら目も当てられないだろうね」
ガシッ
ほむら「……まどかを巻き込まないで」
杏子「……へぇ。どうにも人間らしくない奴だと思ってたが、そのまどかって子が関わるとそんな事ないんだな」パシッ
ほむら「くっ……」
杏子「でも安心したよ。キュゥべえと違って人間らしい感情を持ってるって分かったし、ひとまずアンタのことは信じてやるよ」
~~~
ほむら「魔法少女の最期……限界まで穢れを溜め込んだソウルジェムはグリーフシードになり、魔女を生み出す」
ほむら「これが魔法少女についての最後の秘密。いきなりあなたに信じてもらうのは難しいでしょうけど、事実よ」
さやか「……やっぱり、まどかは――」チラ
まど神「………………」
ほむら「?」
さやか「ううん、こっちの話。さっきの話、信じるよ。他の話もいつか聞けたらって思うな」
さやか「引き止めてごめん。じゃっ、あたし戻るから」
タッタッ
ほむら「………………」
ほむら(この時間軸の彼女達は何かが違う……? いえ、いつもと違うのは私なの……?)
トボトボ
さやか「まどか……」
まど神「ほむらちゃんには、絶対内緒にしてね」
さやか「こっちのまどかはさ、全部知ってるんだよね」
さやか「あたしたちがどうなるかも、全部」
まど神「………………」
さやか「安心して、こっちから何もかも聞くつもりはないよ」
まど神「……ごめんね、さやかちゃん」
さやか「まどかが謝る必要なんて何もないよ。そこは人や魔法少女が絶対踏み込んじゃいけない領域だと思う」
さやか「あとは……ほむらかあ」
さやか「ほむらは……絶対にまどかを巻き込まない、魔法少女にしたくないって考えてるんだろうな」
さやか「……本当言うとさ、今のあたしも、まどかが契約するって言ったら力づくで止めるかもしれない」
さやか「魔法少女になるってことがどういうことか、よく分かったから」
さやか「ほむらにはああ言ったけど、あたしだってまどかの選択を受け入れられるかな?って、思っちゃうんだ」
さやか「あたしはそんな存在になったことないけど、多分、死ぬよりも、魔法少女になるよりも苦しい選択」
さやか「あのまどかにそんな選択を強いるのが本当にいいのかなって……」
さやか(……そういやまどかが契約しなかったら、今横にいるまどかはどうなるんだろ?)
まど神「………………」
さやか「さて、今日はもう遅いし……ってあれは!?」
さやか「まどか、あんたこんな時間まで」
まどか「さやかちゃん!」ダッ
ギュッ
まどか「ごめんね……ほんとにごめんね。わたし、さやかちゃんのこと、全然分かってあげられてなかった……」
さやか「まどか……」
まどか「いつも、いつもさやかちゃんに先に謝らせて、わたしはいっつも自分のことばっかり……」
さやか「ううん、あたしこそごめん。本当は今回こそあたしが先に謝らなくちゃいけないのに……」
さやか「あたし、まどかにいっぱい、酷い事言った……それこそ救いようのないくらい」
さやか「あたしってほんとバカだから、大切な友達にこんなことさせて……」
まどか「ううん、わたしが、わたしが――」
さやか「まどか、少しは落ち着いた?」
まどか「……うん。ありがとうさやかちゃん」
まどか「……じゃあ、夜も遅いからわたし――」
ギュッ
さやか「……これはあたしのわがまま。だけど、今だけはまどかにそばにいて欲しい」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「今夜、うちにお泊りしない? もちろん、無理にとは言わないけど……」
~美樹ハウス~
まどか「さやかちゃん、ママが泊まってっていいって!」
さやか「よかった、こんなに体冷やさせちゃってそのまま帰したら申し訳ないもん」
まどか「えへへ、さやかちゃんとお泊りなんて、久しぶりだなー」
さやか「そうだね、時間が時間だからお風呂に入って寝るくらいしか出来ないけどね」
まどか「さやかちゃんがいてくれるならそれで十分だよ」
さやか「にひひっ、ありがと」
さやか「まどか、お風呂沸いたから先入ってて」
まどか「わたしさやかちゃんと一緒に入る!」
さやか「いやあ……大丈夫、すぐ行くから。どうせ二人一緒に体洗えないし」
まどか「わたしさやかちゃんが来てくれるまで待ってるから」
さやか「だーいじょうぶだって。心配性だなあまどかは。あたしを信じてくれないの?」
まどか「絶対だよ! 本当の本当に絶対だよ!」
ガチャッ
さやか「………………」
さやか「……本当に、まどかはいつまでたってもまどかだよ」
さやか「可愛くて、優しくて、いつまでたっても守ってあげたくなっちゃう」
まど神「………………」
さやか チラッ
さやか「そんなまどかを、あたしたち魔法少女がこんな目にあわせちゃうなんて……」
まど神「それは違うよ、さやかちゃん」
さやか「………………」
まど神「わたしはみんなが大好きだから、みんなに希望を持ったままでいてもらいたいから、このわたしになったの」
まど神「だから、酷い目に遭ったとも思わないし、わたし自身絶望することなんてない」
さやか「多分、まどかのそれは本心で、これっぽっちも嘘なんてついてるなんてことはないんだと思う」
さやか「まどかが辛いとも思ってないというのも、もしかしたら本当かもしれない」
さやか「だけどさ、やっぱりあたしは辛いよ。大事な親友がそんなことになってるって」
さやか「……あたし、まどかに言おうと思う。絶対に魔法少女になっちゃいけないって」
まど神「さやかちゃん!」
さやか「あんた一人こんな目にあわせてあたしたちが生きてるなんて、許せない」
まど神「………………」
さやか「まどかがここにいるってことは多分無理なんだろうとは思うけど」
さやか「それでもあたしは、何もせずに諦めたくない」
さやか「……あんまりまどかを待たせても悪いから風呂入りに行くかな」ガチャッ
まどか「………………」
さやか「」
まどか「……さ、さやかちゃんがいつまでたっても来ないから、わたし……」
さやか「ああもう!」
ギュッ
まどか「さやか……ちゃん?」
さやか「さっきまで散々外で待ってた挙句にまたこんなところで待ってて!」
さやか「家の中だってそんなにあったかいわけじゃないんだよ! 風邪引いたらどうするんだよ……さっ、行こ?」
まどか「……! うん、さやかちゃん!」
~バスルーム~
さやか「まどかとお風呂なんて十年ぶりくらいかなー」
まどか「やだなあさやかちゃん、わたしたち出会ってからまだ3年ちょっとしか経ってないでしょ」
さやか「へへっ、そうだっけ。まあいいや、早く体洗って湯船に浸かろう?」
ゴシゴシ
さやか「はい終わり! お湯流すよ」ザパーン
まどか「ありがとうさやかちゃん。今度はわたしが洗ってあげるね」
ゴシゴシ
さやか(何か落ち着くなあ……こんな気分になったのって、すっごい久しぶりな気分)
まどか「どう? さやかちゃん」
さやか「うん気持ちいいよ。ありがとう、まどか」
まどか「えへへ……」ザパーン
チャポン
さやか「あ゛あ゛~いいお湯~」
まどか「さやかちゃん何だかおじさんみたいだよ……」
さやか「なんだとー? そんなこと言う奴はこうだー!」バシャッ
まどか「きゃっ? やったなさやかちゃん!バシャッ
さやか「なっ? まどかめけしからん!」バシャバシャ
まどか「きゃあぁぁっ!」
キャッキャッ
~さやルーム~
まどさや グデー
まどか「すっかりのぼせちゃったね……」
さやか「まどかのせいだよ……」
まどか「ひどーいさやかちゃん……」
まどさや「………………」グデー
さやか「じゃあ、そろそろ寝よっか……。あたしは布団敷いて寝るからさ、まどかはベッドに……」
ギュッ
まどか「さやかちゃん……一緒に、寝よ?」
さやか「まどか?」
まどか「わたし、さやかちゃんを元に戻すためにキュゥべえと契約しようと思ってたんだけど」
まどか「さやかちゃんが無事だって分かってから、急に怖くなっちゃったの」
まどか「わたしは臆病で、卑怯で、さやかちゃんに何もしてあげられないけど」
まどか「さやかちゃんの幸せも分からないし、こうやって一緒についてあげるくらいしか、できないけど」
まどか「それでもわたしは、さやかちゃんと一緒にいたいから。自分勝手な考えなのは、分かってる」
さやか「まどか……」
ギュッ
まどか「さやか、ちゃん……」
さやか「ごめん、あたし馬鹿なこと言ってた。まどかは今のまどかのままでいるのが一番だよ」
さやか「臆病でも、誰かのために優しくなれる。そんなまどかのままでいてくれたら」
まどか「えへへ、さやかちゃん、ほむらちゃんみたいなこと言うんだね」
さやか(!? そっか、ほむらもまどかを魔法少女にしたくないはず。これはもしかしたら……)
まどか「? どうしたのさやかちゃん?」
さやか「ううんなんでもない。体が冷えるから早くベッドに入ろっか」
まどか「そうだね」ゴソゴソ
さやか「ねーまどか、その……ちょっと聞きにくいんだけどさ」
まどか「どうしたのさやかちゃん?」
さやか「最近のいろんなこと抜きにしてさ、まどかって今、魔法少女になりたい?」
まどか「……わかんない。わたし、どうしたらいいのか……」
さやか「迷ってるならさ。あたしは、まどかに魔法少女になって欲しくないな」
まどか「さやか、ちゃん?」
さやか「まどかは優しすぎて、誰かのために頑張ろうとするからさ。魔法少女に向いてないと思うんだ」
まどか(そういえば……)
まどか『さやかちゃんは、思い込みが激しくて、すぐ人と喧嘩しちゃったり……』
まどか『でもね、すごくいい子なの。優しくて勇気があって、誰かのためと思ったら頑張りすぎちゃうけど』
ほむら『……魔法少女としては致命的ね。度を越した優しさは甘さに繋がる』
ほむら『それにどんな献身にも見返りなんてない。それを弁えていなければ、魔法少女は務まらない』
まどか(ほむらちゃんも、さやかちゃんと同じことを……)
さやか「まどかはさ、今のままでいてくれたほうが、あたしも嬉しいしさ」
まどか「うん……」
まどか(……でもそれって、さやかちゃんたちに助けられっぱなしに……)
まどか(本当に、それでいいのかな……)
予想以上に長くなって書ききれなかったのでここまで
明日の夜中には完走したいがどうなるか
~朝、通学路~
まどか「おはよう、仁美ちゃん」
仁美「おはようございます、まどかさん。今日はさやかさん、どうなんでしょうか」
まどか「昨日さやかちゃんちに行ってきたけど、元気だったよ。今日は来るはずなんだけどなあ」
仁美「そうでしたの、それは何よりですわ。ただ昨日も申しましたけど、わたくし気まずい思いをしそうで……」
まどか「さやかちゃんなら大丈夫だよ仁美ちゃん。いつもどおりで問題ないよ」
仁美「だとよろしいのですが。……あら?」
タッタッタッ
さやか「おはよう! まどか、仁美!」
仁美「どうやらよさそうですわね」ボソボソ
まどか「もー、だから言ったのに」
まどか「おはよー!」
仁美「おはようございます、さやかさん。お体はもう大丈夫ですの?」
さやか「うん、心配かけちゃってごめん。さあ行こう!」
まどか「さやかちゃん、一旦家に帰ったわたしより遅いってどういうことなの?」
さやか「え、えーと、まあいろいろと……」
仁美「まどかさん、昨日はさやかさんの家にお泊りに行ってらしたのですか?」
まどか「あ、ええと……うん」
仁美「それはもしかして、あの日以上に接近して2人で熱い一夜を共にして……」
仁美「女の子同士でそこまで、それはもう口にも出せませんのよ~!」タッタッタッ
まどか「相変わらずだね仁美ちゃん……」
さやか「そうだね……」
まどか「それでさやかちゃん、いろいろ大丈夫なの、かな……?」
さやか「……うん! あたしはもう大丈夫。当面の目標も出来たしね!」
さやか(まどかを魔法少女にしないっていうね)
まどか(よかった……さやかちゃん、元気になってくれて……)
さやか「あのさまどか、悪いけど今日の放課後ちょっと用事があるから先帰っててくれる?」
まどか「えっ? うん」
さやか(あとはほむらを捕まえないと……)
~放課後~
ほむら「……それで、話というのは?」
さやか「ほむらはまどかのために動くと見込んで、協力して欲しいことがあるんだ」
ほむら「貴女から私にそんな提案を持ち出すなんて意外ね。一体何の協力を求めるというの?」
さやか「まどかが魔法少女になるのを阻止して欲しいんだ。少なくともまどかが成人になるくらいまでは」
ほむら「どういうことかしら?」
さやか「詳しくは言えないけど、まどかが契約しちゃったら、あたしたちは多分死ぬまでまどかに会えなくなる」
ほむら「……?」
さやか「何のことか分からなくてもいい。信じなくてもいいから、お願い。協力して、まどかのために!」
ほむら(美樹さやか……この子は本当に、誰かのために真っ直ぐで……)
ほむら(全てを私一人で行うと決めていたのに、決意が揺らぎそう)
ほむら「……私がこれほどに周りに対して素直なら、もう少しやりようがあったかしら」ボソッ
さやか「えっ?」
ほむら「何でもないわ、美樹さやか。もとより私の望みもそこにある」
さやか「じゃあ……!」
ほむら「私からも、一つ貴女に協力を要請するわ。まどかを魔法少女にしないことの必須条件をクリアする為に」
~ほむホーム~
さやか「はじめて来たけど、何て言うか……生活感がない部屋だよね」
ほむら「そこに私の目的はないからよ。もう一人客が来ることになってるから少し待ちましょう」
さやか「もう一人って……」
ガラッ
杏子「おーいほむら! お湯貸してくれ!」
さやか「杏子!?」
杏子「おーさやかもいたのか、てことはコイツにも手伝わせるつもりか」
ほむら「ええ、打てる手は何でも打っておいた方がいいのよ。猫の手も借りたいとはよく言ったものね」
杏子「違いねぇな」
さやか「何か知らないけど酷い言われよう……。で、どういうこと?」
さやか「ワルプルギスの夜……?」
ほむら「ええ。杏子には話したけど、こいつがあと一週間足らずで見滝原に現れる」
ほむら「一般人には自然災害と認識され、何千人もの犠牲者を生み出しかねない超弩級の魔女よ」
杏子「ソイツを倒すために、アタシたちは手を組んでたってわけさ」ズルズル
さやか「そんな奴が……でもどうしてほむらはそんなことが分かるのさ?」
ほむら「統計よ」
杏子「コイツ前にもそうやって言って、全然話を聞かせやがらねぇ」ズルズル
杏子「一緒に戦おうってんならもうちょっとそのあたり聞かせてもらっていいんじゃない?」ゴクゴク
カラン
ほむら「………………」
さやか『何のことか分からなくてもいい。信じなくてもいいから、お願い。協力して、まどかのために!』
ほむら『……私がこれほどに素直なら、もう少しやりようがあったかしら』
ほむら「そうね……私の能力、私の正体、そして私の目的を話す時が来たのかも知れないわね」
qb「それは非常に興味深い話だね、暁美ほむら」
さやか「キュゥべえ!」
杏子「どの面下げてきやがったテメェ!」ジャキン
qb「やれやれ、せっかく君たちにとって、いやほむらにとって重要かもしれない話を持ってきたのに」
さやか「……重要な話?」
ほむら「御託はいいわ、さっさと話しなさい」
qb「確認させてもらうと、暁美ほむら。君の正体は時間遡行者、能力は時間操作。間違いないね?」
ほむら「……だとしたら何よ」
qb「やっぱり。君の攻撃のパターンからして薄々感づいてはいたけどね」
qb「そして君の目的は鹿目まどか。これは正しいかい?」
ほむら「貴方に言う必要はないわ」
qb「それは正解と受け取らせてもらうよ、ほむら」
qb「これで、どうして鹿目まどかが強力な魔法少女の素質を備えていたのか、一つの仮説を立てることができた」
ほむら「……聞かせなさい」
qb「魔法少女としての潜在力は、背負い込んだ因果の量で決まってくる」
qb「平凡な人生を与えられたまどかに、あれほどの因果の糸が集中するのは不可解だった」
qb「恐らく君の目的は鹿目まどかの安否。それだけを目的として、君は難度も時間を巻き戻したのだろう」
qb「さて――君が同じ時間を繰り返す毎に、まどかは強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい」
ほむら「………………」
qb「やっぱりね。君は鹿目まどかの存在を中心軸にして、幾つもの並行世界を束ねてしまったんだ」
qb「その結果、君が繰り返してきた時間の中で循環した因果の全てが、鹿目まどかに繋がってしまった」
qb「お手柄だよほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」
さやか(まどかが強力な魔法少女になるってそう言うわけだったんだ……)チラッ
まど神「………………」
さやか(ほむらにはまどかの願いを知っていてもらいたいけど、口止めされてるし……)
さやか(これで契約阻止できなかったら、ほむらが責任感じそうだし、やっぱり黙っていよ)
ほむら「……話は終わりかしら? だったら今すぐ消えなさい」ジャキッ
qb「やれやれ。無駄に個体数を減らされても困るから、引き下がるとしようか」トコトコ
杏子「逃がしちまって大丈夫かよ?」
さやか「もしキュゥべえをやっつけたら、魔法少女は増えなくなるのかな?」
ほむら「あれを殺したところで、何の解決にもならないわ。まどかの契約を阻止することはできない」
杏子「それにしてもアンタも他人のために願ったクチだったとはね」
杏子「さしずめ願いの失敗トリオってところか?」
ほむら「私は失敗したつもりはないわ」
さやか「そこはあたしもほむらと同感だね」
杏子「ちぇ、何だよお前ら……」
ほむら「本題に戻るわ。ワルプルギスの夜の特性・進路・攻撃とこちらの行動についてだけど……」
さやか「~~~」
杏子「~~~」
ほむら「~~~」
ほむら「ふう、今日はこんなところね。あと1度だけ、現場の下見も兼ねて集まって貰うわ」
杏子「はいよ。差し当たりグリーフシードを集めてりゃいいわけだな」
バタン
さやか「じゃああたしも当面は街の見回りだね。じゃあね、ほむら」ガタッ
ほむら「貴女は少し待ちなさい。美樹さやか」
さやか「?」
ほむら「前に貴女はこう言ったわね」
ほむら「私が長い間まどかのことを見てきたような雰囲気がする」
ほむら「貴女の知らないまどかの時間を共有しているような、そんな感じだって」
さやか「……うん」
ほむら「どの時間軸でも貴女の鋭さには敬服するわ、美樹さやか」
ほむら「私はまどかとも、貴女とも、他の魔法少女とも繰り返し出会ってきた」
ほむら「そして何度も、まどかたちが死ぬのを見届けてきた」
さやか「!?」
ほむら「一部の例外を除けば、まどかの死因はワルプルギスとの戦い」
ほむら「強力な魔法少女になるようになってからは、ワルプルギス撃退後の魔女化」
ほむら「つまり、前に言ったまどかを魔法少女にしないための必須条件とは私たちでのワルプルギスの撃破」
ほむら「今回の集まりはそのための戦力と作戦の確認よ。美樹さやか、それを覚えていて頂戴」
さやか「……ほむらはさ」
ほむら「何かしら」
さやか「杏子に声をかけたのも、あたしに協力を頼んだのも、全てまどかを救うためなんだよね」
ほむら「その通りよ」
さやか「その繰り返しの期間に、マミさんとの出会いも入ってるの?」
ほむら「……ええ」
さやか「時間を繰り返して何でも知っているのに戦力を集めるのは、一人ではワルプルギスに勝てないから」
ほむら「………………」
さやか「そんなあんたが、ベテランのマミさんと対立し、見殺しにしたのは何で?」
さやか「本当に、ほむらはマミさんを見殺しにしたの? わけ分かんない!」
ほむら「……結果的に私が巴マミを救えず、それを仕方ないとしたのは事実よ」
さやか「……何でだよ。何でなんだよ。あんたの力なら、こんなことになる前に何とかできなかったのかよ!」
ほむら「私だって巴さんを助けたかったわよ!!」
さやか「!?」
ほむら「私に戦い方を教えてくれたのは、ベテラン魔法少女の巴マミ」
ほむら「学校でも魔法少女としても私は彼女の後輩で、とてもお世話になった。できるなら彼女も助けてあげたい」
ほむら「助けてあげたいのは彼女だけじゃない、私は貴女が死ぬところも何度も見てきたわ」
さやか「……!」
ほむら「だけど、時間を繰り返すたびに誰とも言葉が、心が通じなくなる」
ほむら「もう私には、他の全てを切り捨ててもまどかを護るしか道は残っていないのよ!」
さやか「………………」
ほむら「はぁ、はぁ、はあ……下らないお喋りをしたわね。話はこれでお終いよ、帰って頂戴」
ギュッ
ほむら「……!?」
さやか「辛かったんだね、苦しかったんだね。ずっと一人で戦ってて」
ほむら「美樹……さやか、貴女何を……」
さやか「誰にも話せず、誰にも理解されず、それでも一人で戦い続けることしかできない」
さやか「あたしも、ちょっと前までそうだって思ってたから、よく分かるよ」
ほむら「美樹……さ……」
さやか「でもね、どこかに絶対、自分を見てくれている人がいる。今ならあたしもついててあげるから」
ほむら「美樹……さん、美樹さん……うああぁあぁぁあぁああぁあ!!」
~~~
ほむら「……見苦しい姿を見せたわね、美樹さやか」
さやか「いつでもこのさやかちゃんが胸を貸してあげますからねー!」
ほむら「ふん。……考えておくわ」
~~~
さやか「とは言ったものの……隣にこのまどかがいるのを見ると、守りきれる気がしないよな……」
まど神「大丈夫だよ」
さやか「えっ?」
まど神「わたしはあらゆる時間、あったかもしれない時間にも存在してるんだ」
まど神「この世界、この時間軸においてわたしが契約して今のわたしになるかどうかは、何とも言えないの」
さやか「あたしたちのいるこの世界ではまどかを守れるかもしれない、でもいつかどこかのまどかが契約しちゃうかもってか」
さやか「別の時空を含む全てのまどかをあたしたちが救うって言うのは、結局無理なのかな……」
まど神「さやかちゃん……それは……」
さやか「でもいいよ、単なる自己満足になっても。今のまどかはあたしたちが守る。絶対に」
~スーパーセル襲来~
さやか「じゃ、行ってくるから」
ほむら「まどか、あなたは絶対に来てはダメ。大丈夫よ、あなたは必ず私が守る」
まどか「うん……」
さやか「心配性だなあまどかは。ほむらにはあたしがついてるってのに、そんなに気になるわけ?」
ほむら「貴女かいるから不安がっているじゃない」
さかや「なにおう!?」
まどか「えへへ……頑張って、ほむらちゃん、さやかちゃん」
ビュウゥゥウゥゥゥウウゥゥ……
杏子「やっと来たかい」モグモグ
ほむら「待たせたかしら」
杏子「そうじゃねーけどさ。へえ……何かが来そうな気配がガンガンするね」
ほむら「間違いないわ。ワルプルギスの夜は、間もなく現れる」
さやか「ほむら、ほむらの過去についてはまどかに話したの?」
ほむら「いいえ。決着がついてからゆっくりお茶でも飲みながら話せばいいわ」
さやか「ははっ。尚更勝たないとな!」
杏子「お喋りはここまでだ。来るぞ!」
5
4
ほむら(必ず……ここで決着をつける!)
2
1
>>76の前にこれが入ります。すみません
さやか「とうとうワルプルギスの夜との戦いかあ……」
まど神「さやかちゃん……」
さやか「話に聞いたとおり強大な魔女だったら、もしかしたらまどかの仕事ができちゃうかもね」
まど神「そんな!」
さやか「もちろんあたしにそんなつもりはないけどさ、こればっかりはね」
さやか「ほむらが何度やり直しても勝てない相手ってのに、どこまであたしの力が通用するかわからないけど」
さやか「いざという時はよろしくね、まどか」
まど神「さやかちゃん……がんばって……」
ゴゴゴゴゴゴ……
ほむら「事前に決めた作戦の通り、まず私が持てる全火力でワルプルギスを攻撃する」
ほむら「巻き添えを避けるために最初は近づかないで。これで撃破出来るならそれでよし」
ほむら「万一討ち漏らしたら貴女達が直接攻撃して頂戴。攻撃力の大半を失った私は使い魔の排除に回るわ」
さやか「オッケー、まずはお手並み拝見か」
カチッ
ドドドドドオォン! ドゴォン! ドゴォーン!
杏子「とんでもねぇな……あんだけの火力で仕留められないってあり得るのか?」
バシュウゥーーーッ!
さやか「ミサイルとか……もう何でもありか。軍隊でも相手にしてるみたい」
ドッゴオォォォーーーーーーン!!
シュタッ
杏子「……どうなんだ」
さやか「やったの……かな」
ほむら「………………」
ドォン!
杏子「危ねぇ!」ガキイィン!
キャハハハハハ キャハハハハハ……
ほむら「ありがとう、杏子……」
さやか「あんだけやって、効いてるのかさっぱり分かんないくらいだなんて……」
杏子「もう後には引けないよ! 行くぞさやか! ほむらは援護を頼む!」ダッ
バヒュゥン!
キャハハハハハッ!
さやか「すごい数の使い魔だね……」
杏子「あたしは使い魔なんかに興味ないんだから、ほむら頼むよ」
ほむら「任せて、貴女達はワルプルギスに集中すればいい」ズダダダダン!
バシュッ バシュッ!
杏子「近づくととんでもない大きさだな……どこ狙えばいいのか分かりゃしない」
さやか「こんにゃろ!」ガキイィン!
さやか「……っ、これ効いてるの!?」
ガキン! ガキイィィィィン!!
さやか「何よこれ……まるで手応えを感じない……」
杏子「ちっきしょう……こうなったら最大出力だ!」
ブオォン!
さやか「なんなのこのバカでっかい槍!?」
杏子「魔力をかなり食うから使いたくなかったけど……これがあたしの奥のt
ほむら「危ない! 杏子! さやか!!」
さやか「!? ビルが……」
ズドゴオォォォォォォンンンンッ!!
まど神「さやかちゃああぁぁぁぁぁん!!」
~避難所~
ザアァァァァ……
qb「みんなが心配かい、まどか」
まどか「みんなで力を合わせれば、大丈夫だよね……?」
qb「それを否定したとして、君は僕の言葉を信じるかい? 今更言葉にして説くまでもない」
qb「その目で見届けてあげるといい。ワルプルギスの夜を前にして、彼女達がどこまで戦えるかを」
qb「暁美ほむらはまたしても敗れ、何度やり直してもワルプルギスに勝てないと悟った瞬間」
qb「彼女の希望は絶望となり、ソウルジェムはグリーフシードとなるだろう」
まどか(……、私が、行かなきゃ……!)ダッ
ガシッ
詢子「どこ行こうってんだ? オイ」
まどか「ママ……」
まどか「わたし……友達を助けに行かないと」
詢子「消防署に任せろ。素人が動くな」
まどか「わたしじゃないとダメなの!」
パシッ
詢子「テメェ一人のための命じゃねぇんだ! あのなぁ、そういう勝手やらかして周りがどれだけ……」
まどか「分かってる。わたしにもよく分かる」
詢子「まどか……」
まどか「わたしもママやパパのこと大好きだから。大切にしてもらってるから、自分を粗末にしちゃいけないのも分かる」
まどか「だから違うの。みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから」
まどか「その為にも、わたし今すぐ行かなきゃいけない所があるの!」
詢子「理由は説明できねぇってか。なら、アタシも連れて行け」
まどか「本当はついてきて欲しい。一人じゃ心細いし、ママは頼りになるし」
まどか「でもダメなの。これはわたしにしかできないことだから。だからママは、パパやタツヤの傍にいてあげて」
詢子「絶対に下手打ったりしないな? 誰かの嘘に踊らされてねぇな?」
まどか「うん、大丈夫だよ」
詢子「………………」
ポスッ
まどか「!?」
詢子 グッ b
まどか「ありがとう、ママ」
詢子(しっかりなまどか。アンタはいつでもどこに居ても、アタシの娘だよ)
ガラガラ……ズズーン……
さやか「ほむら! しっかり!」
杏子「ほむらアンタ、アタシたちをかばって……」
ほむら「……満足に戦えない者が傷ついたほうが合理的と思っただけよ」
ほむら「まだ戦いは終わっていないわ。さあ、行って頂戴」
杏子「……行くぞさやか、コイツの思いを無駄にすんな」ダッ!
さやか「う、うん」バヒュッ!
ほむら(さっきの攻撃で完全に砂時計が尽きたみたいね……もう貴女達に賭けるしかない)
さやか「うぐぁっ!」
杏子「さやかぁ! ちっ……一旦引くよ!」
さやか「く……そったれ……」
杏子(回復が追いついていない……さやかも限界が近いかもな)
杏子「……って、アタシも人の事言えないじゃん」ガクッ
杏子「このままじゃ、アタシたちみんな……」
さやか「負けない……負ける、もんか……。あたしたちが負けたら、みんなが、まどかが――」
杏子「……少し聞いていいか、さやか」
さやか「杏子? こんな時に!?」
杏子「さやか、この戦いに生き残ったら……まだ希望を失わずに他人のために戦うつもりか?」
さやか「……もちろん! 何か問題でも?」
杏子「魔法少女としては、問題大アリだけどな」
さやか「なっ!?」
杏子「それでも、さやかはそれでいいと思ってる。精々頑張るんだな、アタシの分まで」
さやか「はっ? あんた何を――」
ゴスッ
杏子「さやかはそこで休んでな。コイツはアタシが引き受ける」
さやか「きょう……こ……」ガクッ
杏子「全く……シロウトでまだまだだったけど、その分教え甲斐はあったよな」
杏子「……マミさんから見たアタシも、こんな感じだったのかな」
杏子「……まあこれからの世の中、さやかみたいな魔法少女が普通になった方がいいんだろうな」
杏子(マミさん……今だけでいいから……。不出来な弟子に、力を貸してくれ……!)ビュッ
ほむら「杏子……まさか、貴女……!」
カッ!
ドッゴオォォォォォーーーーーーン……
さやか「きょお、こぉ……」ペタン
さやか「嘘……だよね、杏子……」
……ハハハハ
ほむら「……!?」
キャハハハハハ! キャハハハハハ!!
ほむら「そんな……」
さやか「杏子が……命をかけたってのに……」
ほむら「……どうして……」
ほむら「……何度やっても、あいつに勝てないっ……!」
さやか「ほむら! しっかり!」
ほむら(……そうだ、またやり直せば……)スッ
ほむら(……でも、繰り返せば、それだけまどかの因果が増える……)
ほむら(……私のやってきたことって、結局……)カタン
ほむら(……まどか、ごめん……私、貴女との約束、守れなかった……)
パッ
まど神「ほむらちゃん……」
ほむら「!?」
ほむら「まどか……貴女、その姿は……」
さやか「えっ、まどか……?」
まど神「あ、久し振り! この時間のお仕事?」
まど神2「うん、ほむらちゃんが限界みたいで……導きに来ちゃったけどどうしよう」
さやか「あたしには見えないけど……まさかほむら、今目の前に魔法少女のまどかが見えてない?」
ほむら「ええ……これは一体……。ねえまどか、どういうことなの!? まさかもう契約を……」
まど神2「ほむらちゃん……わたしが説明してもいいんだけど、本人に聞いた方がいいと思う」
ほむら「本……人……?」
「もういいんだよ、ほむらちゃん」
さやほむ「まどかっ!?」
さやか「まどか……どうしてあんた、こんなところに……」
qb「僕が案内してあげたんだ。それが彼女の意志だったからね」
さやか「キュゥべえ……」
ほむら「まどか、まさか……」
まどか「ほむらちゃん、ごめんね。私、魔法少女になる」
ほむら「そんな! 私は今まで、何のために……」
まどか「ごめん、本当にごめん。これまでずっと、たくさんの時間でほむらちゃんに守られてきたから、今の私があるんだと思う」
ほむら「!?」
ほむら「どうして!? 今のまどかには私の事話してないはずなのに……」
qb「僕が説明してあげたんだ。嘘を教えるわけには行かないから、前もってほむらに確認してもらったけどね」
ほむら(あの時の……!)
qb「おかげでまどかをここに連れてくることができた」
さやか「キュゥべえ、あんた何て事……」
qb「おあつらえ向きに君たちの敗北も間近だ。それともこの時間軸も無為にして、まどかに更なる因果を背負わせるかい?」
ほむら「インキュ……ベーター……」
qb「まあ、どちらでも僕は歓迎するよ。判断の猶予はあまりないだろうから、悔いのない選択をするんだね」
さやか「キュゥウゥウウゥゥゥウゥウゥべえぇえぇぇえぇぇっっっ!!」ダッ
ザシュッ!
qb「」
さやか「はぁ、はぁ、はあ……」
ほむら「……無駄よ、美樹さやか……アレはあいつ一匹じゃない。いずれ奴はここに来るわ」
ほむら「どうあがいても、私達にまどかは守れない……」
まど神2「大丈夫だよ、ほむらちゃん」
ほむら「まどか……やめて……」
まど神2「絶対に、今日までのほむらちゃんを無駄にしたりしないから」
ほむら「まどか……」
まど神「そろそろお別れだね」
さやか「まどか……ごめん。あたし……まどかを守れなかった……」
まど神「ううん、そんなことないよ」
まど神「わたしね、この今のわたしになってから、意識が世界に溶け込みそうになるの」
まど神「今までのわたしも何もかもなくなってしまいそうになるんだ」
まど神「だけどさやかちゃんがいてくれたから、わたしは今まで通りのわたしでいられる」
まど神「さやかちゃんは、立派にわたしを守ってくれたんだよ」
さやか「うぅ……まどかぁ……」
まどかx3「だからこそ、信じて欲しい。わたしの答え、わたしの願いを」
qb「待たせたかな」ヒョコッ
qb「まったく、個体を潰されるのはもったいないから勘弁して欲しいんだけどね」ムシャムシャ キュップイ
qb「では改めて、鹿目まどか。君はその魂を代価に何を願う?」
qb「因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みだろうと叶えられるだろう」
まどか「本当……だね? わたしは……」
ほむら「まどか……」
さやか「まどかぁ……」
まどか「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を……この手で!」
カッ!!
──────
────
──
世界は新たな法則に従って改変された。
それは前の世界と変わらずに人類が、魔法少女が、インキュベーターが存在する世界。
変わったところといえば、魔法少女が魔女にならないため、魔女は存在しなくなったこと。
変わらぬ人の世の呪いは世界を歪ませ、魔獣という新たな脅威を生み出したこと。
そして、一人の少女の記録が、記憶が、存在が掻き消されたこと――。
グゥオァァァァァァッッ!
杏子「へっ、まあこんなもんだな」
マミ「佐倉さん、コンビネーションも板についてきたわね。一人の期間が結構あったから心配だったけど」
さやか「マミさんは誰にでも合わせられるからすごいですね!」
杏子「それアタシがじゃじゃ馬みてーじゃねーかよ、さやか」
ワイワイ
ほむら「……まどか……」
マミ「暁美さん? まどかって……」
杏子「……誰だよ」
さやか「………………」
マミ「じゃあ暁美さん、美樹さん、私たちはこっちだから」
さやか「杏子はまたマミさんのところですか」
杏子「いーじゃねーかよ、どうせ他人のために動いてんだろ?」
さやか「杏子のはただの寄生じゃない」
杏子「るせーな、そのうちさやかの所にも行くから覚悟しろよ」
マミ「あら寂しいわ、佐倉さんは私を捨ててしまうのね」
3人「あはははははは」
ほむら「………………」
テクテク
ほむら「………………」
さやか「……ほむら、元気ないね」
ほむら「……そんなことないわ」
さやか「……さっき口に出した『まどか』ってさ」
ほむら「……あなたに話しても仕方のないことよ」
さやか「ちょうどほむらの着けてるような、赤いリボンの似合う桃色の髪の女の子だよね」
ほむら「!?」
さやか「本当はあたしの嫁になるはずだったんだけどね」
ほむら「美樹さやか、貴女……」
さやか「みんな忘れちゃったと思った? 残念、さやかちゃんはバッチリ憶えてますよ!」
さやか「まどかと過ごした日々も、まどかに救われたことも、全部――」
ほむら「………………」
さやか「そりゃ心残りはあるけど、今ならよく分かる」
さやか「ああ、これがまどかの望んだ世界なんだなーって」
さやか「そう思うとさ、この世界も大事にしたいと思うわけですよ」
さやか「恭介の演奏も聴けるしね! なーんて」
ほむら「ふふっ。貴女と意見が合うなんて思いもしなかったわ」
さやか「あれ? ほむらも恭介の演奏聴きたいの?」
ほむら「そっちじゃないわ。でも……折角だから貴女と一緒に聴かせて貰おうかしら」
さやか「ほえー意外。まあいいや、今度ちょっと都合聞いてみるね」
さやか「ん? さっき一緒に聞かせて貰うって……」
ほむら「言葉のあやよ」
さやか「ははーん、またほむらはあたしに胸を貸してもらいたいのかな?」
ほむら「ふざけないで! 大体そんな記憶も残ってるなんて!」
さやか「泣きたいときはいつでも貸してあげるよ? あの時みたいに美樹さんって呼んでもいいけどさやかって呼んでも──」
ほむら「やめなさい!」
ほむら(そう、私は憶えてる。決して、忘れたりはしない)
ほむら(それに、私は一人じゃない)
さやか「何だか元気が出てきたぞ! 見てろよまどか! この世界はあたしたちがガンガン守っちゃいますからね!」
ほむら(一人では潰されそうな宇宙の真実の重みも、二人なら支えられる。そんな気がする)
さやか「あたしたちの戦いはこれからだ!」
ほむら「ふふっ。精々負け戦にならないように頼むわ、さやか」
さやか「えっ? ほむら今……」
ほむら「何でもないわ。行きましょう、さやか」
さやか「……うんっ!」
ほむら(だから私達は、戦い続ける)
さやか「あたしって、ほんとバカ」まど神「さやかちゃん……」
完
おわったー
vipで書いてた時はどうせスレ落ちるし終わったあとグダグダ書くけどここでは割愛
ここまで読んでくれた方に感謝
ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
さやかちゃんメインにまどさやからほむさやへの自然な流れが美しい
まさに真っ直ぐなさやかちゃんが堪能できる掌品