響「臙脂色と浅葱色の研究」 (15)

※オリジナルキャラ、オリジナル設定アリ
※タイトルの元ネタと内容はあまり関係ありません
※ゆっくり、気まぐれ更新

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459748542

わたしが初めてその娘と会ったのは、アイドルとしてデビューするよりも前のことだった。

事務所のオーディションを受けて、入所通知を受け取って、ワクワクドキドキで初めて事務所に向かっていた、あの気持ちは忘れられない。
沖縄を離れて東京に来て、まだ右も左も電車の乗り方もわからない頃だったから、内心ものすごく不安だったけど、それでもやっぱり、これから先に輝かしい、キラキラとした日々が拓けていると思うと、不安も帳消しになる、そんな天秤が不安定に揺れるような気分は、あのとき以外そうそう味わったことはない。

そんな気分だったから、その娘と会ったときのことをまざまざと思い出せるのだろう。

こういう話し方をすると、まるでわたしとその娘が初対面したのは事務所でだったかのように思われるかもしれないけど、実際のところはそうじゃない。
わたしとその娘とは、その少し前に出会ったのだ。

恥ずかしい話、わたしは初出社の日、完全に迷子になってしまった。
それもこれも、東京の駅がやけに迷路みたいになっているのが悪いのだ。
東口に行くために西口の反対方向へ進むのは当然の話で、そこには東南口があるなんて、誰が思うのだろう。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom