ベジータ「門を曲がった拍子に首を折られるのがそんなに珍しいか?地球人……」 (20)

西暦2599年
火星のテラフォーミング計画は大詰めを迎え一面の緑となる----

その最終段階として、温暖化に利用した「ゴキブリ」の駆除を目的とした宇宙船が火星に到着した。

「全員いるな!配置につけ! これより大気成分を調べる間ゴキブリ駆除剤『マーズレッドPRO』を拡散‼三時間後に下船する」

宇宙船バグズ2号の艦長D.K.ディビス(アメリカ)が手際よく指示を出す。

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そして三時間後……

「よし、みんな!早速だが清掃作業に入って貰う‼小吉と奈々緒は北!ティンとマリアは東!ウッドと一郎は南!デジャスとジャイナは西!他の者は艦内作業だ‼まずは三十分で戻ってこい!」

船外に集結したクルーを前にD.K.ディビスは矢継ぎ早に指示を飛ばした。

……だがその指示はほどなく撤退命令へと変化した。

『ゴキブリ』が予想以上の進化を遂げていたのだ。

人型へと進化を遂げていた『ゴキブリ』は強く素早かった。

不幸にもゴキブリに遭遇した秋田奈々緒(日本)はあっさりと首の骨を折られ小町小吉(日本)達によってバグズ2号に帰還することとなってしまったのだ。

「まさかあんな人型で…すごく…素早くて…秋田さんだって……あ、あんなに…簡単に…」

クルーのマリア(ロシア)が艦長であるD.K.ディビスに不安を精一杯に訴えた。

そして小吉が奈々緒の亡骸に寄り添い泣いているのを確認するとさらに続ける。

「これ以上はもう……地球へ引き返しましょう‼艦長……」

マリアのそれは進言というよりは悲痛な叫びであった。

「門を曲がった拍子に首を折られるのがそんなに珍しいか?地球人……」

それを嘲るように吐き捨てる人物が一人いた。大口出資者であるカプセルコーポレーションが送り込んだクルー、ベジータ(惑星ベジータ)である。

「何が言いてぇ……」

ベジータの言い草が気に入らなかったのか小吉がベジータに詰め寄るが、ベジータは意に介さない様子で続ける。

「動けないってだけで仲間に殺される民族もあるんだ」

ベジータはそう言って奈々緒の亡骸に近づいた。

「悟飯がリクームに首を折られた時はカカロットのヤロウはこうしてたな」

ベジータはそう言いながら、奈々緒の口を開く。

「おい!何をしてやがる!」

小吉は殺意の籠った怒声を飛ばすがベジータは気にした様子もなく、奈々緒の口に何かを押し込んだ。

殴り飛ばさんと小吉がベジータの肩に手を置くが、その動きはすぐに止まった。

「ごほっ……ごほっ……」

死んでいると思われていた奈々緒が咳き込んだのだ!

「な、奈々緒‼」

「戦闘力が完全には消えてなかったからな……」

奈々緒に抱きつく小吉を見るベジータはさも当然といった感じであった。

「あとは俺がやる。『ゴキブリ』ならばファイナルフラッシュに弱いはずだ」

ベジータはブルマの家に出た『ゴキブリ』を退治した時のことを思い出し不敵に笑った。

「待て‼ 俺も……」

「一人でいい……。地球人について来られても足手まといなだけだ」

ついて行こうするティン(タイ)を制止するとベジータは一人出て行った。

「……いいんですか、艦長?」

トシオ・ブライト(イギリス)が不安気にD.K.ディビスに確認をとる。

「……ああ。戦闘はベジータが一番馴れてるはずだ」

D.K.ディビスは続ける。

「ベジータは戦闘民族の王子だった男だ」

「!!」

驚いたトシオ・ブライトだったがすぐに我に返り質問を出した。

「戦闘民族ってなんですか?」

「よくわからないが、子供の頃から戦い続けてたらしい。手術ベースも不明だがカプセルコーポレーションによれば……いかなる地球の生物よりも強いという話だ」

「そんな馬鹿な話が……」

「真偽のほどはわからないが、家にいても働かないし、ゴキブリ以上に食い物を荒らすから宇宙で役立てて欲しいとカプセルコーポレーションの社長が直々にNASAに申し立てたという噂だ」

「あの…ちょっと、いいですか?」

話し込む二人に回復したばかりの奈々緒が声をかけた。

「カプセルコーポレーションがあるなら、ホイポイカプセルでなんでも持ち込めたんじゃ……」

「……」

「……」

船内の一同は聞こえないふりをした。

「なんだ、あれは……」

当のベジータはといえば、ピラミッド状の建造物を発見していた。

そして次の瞬間、背後に気配を感じる。

「フン……」

そして漏れる笑い。

「サイヤ人」

ベジータの出自となるこの戦闘民族は-----

“出力1700万ゼノ以上のブルーツ波を目で受ける”と“しっぽ”この二つの効果で大猿へと変身する。

だが、そんなことをしなくともベジータが本気でエネルギー波を放てば最早地球もただでは済まない。

太陽系が消し飛ぶほどのエネルギーが発生する。

そのベジータが背後の「ゴキブリ」に対してビッグバンアタックを放った。

----が、しかし

「害虫の王」死なず

-----一般に火や熱湯に弱いとされるゴキブリでだが、如何なる環境にも容易く適応してこそのゴキブリである。

現に韓国ではブウが地球を破壊しても死なないゴキブリが発見されている。

-----などということはなく、ゴキブリが消し飛んだ。

「あそこに集まってやがるな」

ベジータはピラミッドに狙いを定めると掌にエネルギーを集中させる。

「ファイナルフラーッシュ‼」

ベジータの叫びとともに放たれた一条の光がピラミッドを消滅させた。

「なんだ…あれは⁉」

バグズ2号ではD.K.ディビスが狼狽していた。

ベジータの帰還を待っていたら、突然にキノコ雲が発生したのだ。

「爆弾なのか⁉」

クルーも驚いたのか、船内がざわめく。

「……‼艦長……‼何者かが来てます…‼もう…すぐそこまで‼」

それに追い打ちをかける様にレーダーを監視していたトシオ・ブライトが声を張り上げた。

「……まさか‼」

D.K.ディビスがレーダーを確認しようとすると、今度は小吉が声をあげる。

「ベジータだ!ベジータが帰ってきたぞ!」

外を見て歓喜の涙を流す小吉の視線の先には、ゴキブリの足を頬張るベジータがバグズ2号に向かって歩いていた。

船内には喜びの歓声が溢れかえった。

エピローグ

無事に地球に帰還したバグズ2号であったが、テラフォーミングには失敗した。

ベジータが巻き起こした砂埃によって、太陽の光が遮られ、火星は再び寒冷化したのだ。

「サイヤ人って生産活動には向いてないのかしら」

報告書に目を通したブルマが、重力室に向かうベジータに呟く。

「どうかしたか?」

「別に~。ちょっとでも期待したアタシがバカなだけだから」

そして溜息をつくブルマ。「そうか」とだけ言ってトレーニングに向かうベジータ。

ベジータが火星から持ち込んだウィルスを消滅させるためにドラゴンボールを集めるのはもう少しだけ先の話である。



チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

カクヨムで認められてる作品の二次を書いてもほとんど読んで貰えないっていう愚痴。

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