エルヴィン「私が隊長ですか!?」 (80)

*時系列はTVシリーズ終了~劇場版の間です。
*一応シリアス系
*エルヴィンメインのSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459433526

桃「ということで、今週末の練習試合の相手は聖グロリアーナだ」
あゆみ「えーまた練習試合?」
あや「優勝してから隔週レベルで練習試合してるよねー」
桂利奈「休みがほしいです!」
優季「新しく出来た彼氏に逃げられちゃいますぅ~」
桃「えぇい煩いぞお前ら!」
桃「我々は優勝したとは言え、いまだ実績の乏しい新興チームだ。確かに優勝したことで廃校は免れたが、次また同じ話が蒸し返されるとも分からない。そうならないように、大洗戦車道チームの実力を盤石にする必要があるのが分からないのか! 分かるよな、西住!」
みほ「え? う、うぅ~ん」
みほ「確かにその通りだと思いますけど、時にはやっぱり休息も・・・」
桃「何!? 隊長がそんなのでどうする!」
みほ「ひぇ!」

杏「まぁまぁかーしまぁ、副隊長が隊長に怒鳴るもんじゃないよ」
桃「すみません会長」
杏「でも西住ちゃんのいう通り、たまには休息が必要かもね。よーし! 分かった、もし今週末の練習試合に勝てたら、来週1週間は戦車道の放課後練習は無しってことで」
あゆみ「えー本当ですか!?」
桂利奈「溜まってたアニメを消化できるー!」
優季「彼氏とデートできるぅ♪」
桃(いいんですか会長、そんなことを言っても)
杏(まぁ、本当に勝てたらだけどね)
杏(もともと戦車道の強豪と言えば黒森峰、プラウダ、サンダース、聖グロリアーナの4校。そのうち負けてるのは聖グロリアーナ1校だからね)
杏(練習試合とはいえ、グロリアーナに勝てば強豪4校すべてに勝ったことになる。その実績は大洗を強豪足らしめるにはどうしても必要なのさ)
桃(餌、というわけですか。成程)
杏「その代わり今週は特別練習としていつもよりプラス1時間多くやるかんねー」
一同「えぇ~!!」
桃「文句を言うな! 文句を言うやつはシベリア行き25ルーブルだぁ!」
柚子「桃ちゃんそれ違う人のセリフだよ」
桃「桃ちゃん言うな!」
杏「それじゃ、練習いっちょ始めちゃおうかー!」

もうちょい行開けて文章を分けるのだ

sage忘れ失礼

――練習後

沙織「はぇ~ 流石に疲れるなぁ」
優花里「2時間戦車で走りっぱなしですからねぇ。もう日が完全に暮れてますよ」
華「狙いすぎて眼が疲れました」
麻子「眠い。もう寝るから誰か連れて帰ってくれ」
沙織「ちょっと麻子! こんなところで寝ないでよ!」
みほ「麻子さん、風邪ひきますよー」
エルヴィン「ちょっといいか、みほ」
みほ「あ、エルヴィンさん」
エルヴィン「今週末の練習試合の作戦について2,3聞きたいことがあるんだが」
みほ「分かりました。直ぐに行きます!」
みほ「あ、皆は先に帰っててね」
優花里「了解であります!」

>>4
ss投稿するの初めてなんですけど、普通にエンターで行間開ければいいんですかね?
それともhtml対応してるんでしょうか…

沙織「何か最近エルヴィンさんとみぽりん仲良いね」

優花里「仲がいいというより、お互いを理解しているというのが正しいかもしれませんね」

沙織「というと?」

優花里「エルヴィン殿は戦車道に関しては初心者ですが、元々はソウルネームにエルヴィン・ロンメル将軍の名を頂くほどですから戦車に関しては並々ならぬ知識を持っていま」

華「確かに、優花里さんとも仲がよろしいですしね」

優花里「はい! 私の戦車トークについていけるのは、エルヴィン殿と西住殿だけです!」

沙織「私はそれについていけなくてもいいかなー」

優花里「まぁそういうわけで、同じ分野に造詣が深いもの同士、ある程度波長が合うのは当然なのではないでしょうか」

あぁ、普通にエンターでいいんですねこれ

麻子「私もよくおりょうさんと操縦に関して話すぞ」

華「私もこの間左衛門佐さんやほかのチームの砲手を交えて、砲手会をやりました」

沙織「えーみんなそんなことやってるの!? じゃあ私も通信手会やろうかなぁ」

麻子「沙織の場合、ただの女子会になるだけだろ」

沙織「そ、そんなことないもん! アマチュア無線資格の取り方とかレクチャーできるんだから!」

麻子「それなら私の方が詳しいかもな」

沙織「もう! 麻子!」

>>8
読みやすくなった ありがとう
続きをたのみます

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エルヴィン「・・・成程、ここにチャーチルをおびき寄せるんだな」

みほ「えぇ、ですから必ずⅢ突かポルシェティーガーを生存させる必要があります」

エルヴィン「しかしそうなると相手がどのような編成で来るのかがカギになるな」

みほ「そうですね。チャーチルやマチルダのほかにも、グロリアーナは車輌を保有しているようですし」

エルヴィン「我々も車輌が多くなった分、あちらも数は増やしてくるだろうからな」

みほ「そうですね。後は出たとこ勝負、状況を判断して個別撃破、ですね」

エルヴィン「つまりは何時もの我々の戦いをしろ、ということか」

みほ「・・・それが出来るのは、皆さんの戦術理解度が高いお陰です」

みほ「特にエルヴィンさんには頼りにしっぱなしで」

エルヴィン「なにを言ってるんだ、みほ」

エルヴィン「みほが居なければ大洗は今頃廃艦が決定していた。私が頼られることなんてないじゃないか」

みほ「うぅん。私思うんです」

みほ「私が居なくても、きっと大洗は優勝していたんじゃないか、って」

エルヴィン「そうか、私はそうは思わないが・・・」

みほ「でもきっとその時は、エルヴィンさんが隊長ですね」

エルヴィン「わ、私か!?」

みほ「だって他に戦車が分かりそうなのって優花里さんしかいないけど、優香里さんは・・・」

エルヴィン「うーん、グデーリアンは戦車道が好きというより、戦車が好き、だからな」

みほ「となると、やっぱりエルヴィンさんしかいないですよ」

エルヴィン「むぅ・・・。ま、まぁこの話はここでお終いにしようじゃないか」

エルヴィン「みほも私も2年生だ。みほがいる間はみほが隊長をやるんだから、私が隊長をやることなんてないさ」

みほ「そうですか、それは残念です・・・ケホッケホッ」

エルヴィン「? どうした、風邪か?」

みほ「いぇ・・・ちょっと朝から喉の調子が」

エルヴィン「身体は大事にしないと。今週末は練習試合だからな」

みほ「ありがとうございます。今日はこれで失礼します。お疲れ様です」

エルヴィン「あぁ、助かったよみほ」

エルヴィン(・・・隊長、か)

左衛門佐「――ヘイヘイ、彼女!」

エルヴィン「! 左衛門佐か! 脅かすなよ」

おりょう「なんだか西住さんと良いムードだったから、そっとしといたんぜよ」

カエサル「随分と楽しそうだったじゃないか、エルヴィン」

エルヴィン「皆見てたのか・・・ 別に私はやましいことなんてしてないぞ」

左衛門佐「それはどうかな。最近は他校の幼馴染とずーっとメールしている終身独裁官もいるようだしな」

おりょう「ひなちゃん!」

カエサル「お前らひなちゃんを馬鹿にするな!」

左衛門佐「お、たかちゃんが怒ってしまった」

おりょう「妬けるぜよ」

カエサル「お前らなぁ~」

エルヴィン(・・・まぁ私はこれでいいのかもしれない)

エルヴィン(戦車道を取った時にはそういうことも考えはしたが、今はみほがいる)

エルヴィン(私はⅢ突の車長、それ以上でもそれ以下でもないさ)

エルヴィン「じゃあ私の用事も終わったから帰ろうか、たかちゃん」

カエサル「私はカエサルだ!」

――練習試合当日、早朝戦車倉庫にて

エルヴィン「おはようございまーす」

杏「お! おはよう松本ちゃーん」

エルヴィン「会長、そうでなくて私のことはエルヴィンと・・・」

エルヴィン「・・・しかし何か、倉庫内が騒がしいですね」

杏「あー、そのことなんだけどねぇ・・・」

杏「鈴木ちゃんと一緒に、ちょっと生徒会室来てくんない?」

エルヴィン「カエサルと? わかりました」

―ー生徒会室


エルヴィン「え!? みほが風邪でダウンですか!?」

杏「そうなんだよねぇ。今朝連絡が入ってさ」

カエサル「容態は?」

杏「あぁ別にそんな気にしなくて良いよ。普通の風邪みたいだから」

杏「どうやら本人は這ってでも行こうとしたらしいんだけど、そこは武部ちゃんが止めてくれてねー」

杏「ということで、今日は西住ちゃん不在での練習試合になるんだよ。いやーまいっちゃうね」

エルヴィン「そうですか・・・では今日の指揮は副隊長の桃先輩が?」

杏「いや、誰が指揮権を取るのかは西住ちゃんから伝言を預かっている」

杏「松本ちゃん、今日一日隊長をお願いできないかな」

エルヴィン「私がですか!?」

杏「そ。それが西住ちゃんから預かってきた伝言の内容なんだよ」

杏「大まかな作戦はエルヴィンちゃんも聞いてる通りだから問題ないっしょ?」

エルヴィン「いやしかし、敵の戦力だって前回とは違う可能性もありますし。あの作戦もチャーチルとマチルダⅡしか戦車が居ない想定でしょ?」

杏「まー他にもいたらそのときだよ」

杏「それに西住ちゃんのことだから、松本ちゃんを指名したのにはそれなりの訳があると思うなぁ」

エルヴィン「しかし・・・」

カエサル「私もそう思います」

エルヴィン「カエサル!?」

カエサル「別に桃先輩を批難しているわけではありませんが、西住さんが居ないこの場において、指揮権を委譲するにあたり最も適任なのはカエサルです」

杏「なら話は早いね」

杏「それにこれは相談じゃなくて決定事項だから。もう出ないと会場に遅刻しちゃうしね」

杏「じゃあそういうことで、よろしくね一日隊長さん」

エルヴィン「は、はぁ・・・」

――バスにて会場へ移動中

杏「ということで、今日の隊長は急きょ松本ちゃんにやってもらうことになったから」

あや「松本って誰?」

桂利奈「エルヴィン先輩のことだよ」

優季「私エルヴィン先輩と話したことないですぅ」

あゆみ「車長だけどリーダーじゃないからあんまりイメージ沸かないね」

桃「こら一年! 勝手に騒ぐな!」

杏「因みにあんこうチームの車長は武部ちゃんがやってね」

沙織「わ、分かりました!」

優花里「武部殿頑張ってください!」

華「期待してます」

麻子「zzz・・・」

梓「エルヴィンさんが隊長かぁ」

ナカジマ「確かに会議には出席してないから、あまり絡みがないっていうのは確かだね」

そど子「私同じクラスだけど、あんまり話したことは無いですね」

典子「何事も根性でいけます! 頑張りましょうエルヴィンさん!」

エルヴィン「あ、あぁ・・・ 頑張るよ」

エルヴィン(引っ込み思案なのが災いしたな)

エルヴィン(確かに対外的な折衝はカエサルに任せっぱなしだったから、各車長とのコミュニケーションが不足している)

エルヴィン(・・・本当はカエサルが隊長のほうがよかったんじゃないか)

エルヴィン(しかし・・・)チラッ

カエサル「・・・ん?なんだ、エルヴィン」

エルヴィン「いや・・・」

エルヴィン(先ほどの会話でカエサルは私が適任だと言ってくれた)

エルヴィン(期待には応えるしかない、か)

杏「じゃあ松本ちゃん、一言挨拶だけもらえるかな」

エルヴィン「は、はい」

エルヴィン「・・・あー、急きょ西住隊長の代役として1日隊長を務めることになったエル・・・いや松本・・・、エルヴィンだ」

エルヴィン「西住隊長のように上手く指示を出せるかは分からないが、極力努力する」

エルヴィン「今日一日よろしく頼む」
ワーパチパチパチ

杏「ということで、西住ちゃんが居ないけどみんな気を抜かないように」

ねこにゃー「ま、まぁ負けたら廃艦って訳じゃないからね」

ももがー「気楽にいくにょろー」

杏「あとこの間言い忘れてたんだけど、勝ったら来週練習無しだけど、負けたら来月の大洗秋祭りであんこう踊りを全員で披露してもらうから」
エーキイテナイデス! ワーワー!

そど子「あんこう踊り・・・」

ナカジマ「こりゃあ西住隊長が居ないからって、おちおち手を抜いても居られないね」

典子「何事も根性です! 根性があればあんこう踊りも踊れます!」

梓「踊りたくないんですってば!」

――練習試合会場


実況「いよいよ始まりました、大洗女子学園対聖グロリアーナ女学院親善試合」

実況「大洗女子学園は先日の全国戦車道大会にて、見事優勝を飾った今一番注目されている高校です」

実況「対する聖グロリアーナ学園ですが、なんと大洗女子学園とは全国大会前に一度試合を行ったことがある仲」

実況「その際は大洗女子学園を破ったのですが、実は大洗女子学園が土を付けたのはこの一敗のみ」

実況「ということで、今注目の大洗女子学園としては因縁の対決となります」

実況「おっと、各校選手が集まったようです。これより開会式が始まります」

澤ちゃん隊長モノはよくみるけど、エルヴィンは初めて見るパターンだな

――会場

蝶野「隊長、副隊長! 前へ!」

エルヴィン(緊張してきた・・・)

ダージリン「・・・あら、今日は隊長はみほさんじゃないのかしら」

桃「今日は西住は風邪でダウンだ」

ダージリン「それは残念。あとで風邪に聞くお茶をお持ちしますので、届けてくださるかしら?」

桃「親切痛み入る。有り難く頂戴しよう」

ダージリン「それはそうと・・・」

ダージリン「あまりお見かけしない顔ですね。たしか、Ⅲ突の車長さんでしたか?」

エルヴィン「エルヴィンです。今日はよろしくお願いいたします」

ダージリン「こちらこそ」

エルヴィンって誰?
検索しても小野大輔の人しか出てこない。画像プリーズ

ダージリン「隊長ということは、あなたもみほさんと同じように以前戦車道を?」

エルヴィン「いえ、戦車は今年に入ってからですよ」

ダージリン「そう・・・」

ダージリン(素人同士なら今日の隊長は、普通であれば副隊長の河島さんが行うはず)

ダージリン(何か策があるのかしら)

蝶野「一同、礼!」

蝶野「では両者持ち場について!」

>>21
エルヴィン大好きなので…

>>23
ttp://blog-imgs-42.fc2.com/c/l/9/cl902/erwin2.jpg
彼女です。カバさんチームの車長です

オレンジペコ「西住さん今日はお休みなんですね」

オレンジペコ「こういっては失礼かもしれませんが、西住さんのいない大洗は・・・」

ダージリン「あら、人間一人が居なくなった程度で負けるようでは、戦車道全国大会で優勝なんかできませんわ」

オレンジペコ「それはそうですけど」

ダージリン「それに、面白い人もいるようですし・・・」

オレンジペコ「? 面白い人?」

ダージリン「あちらも前回と同じ、というわけではないということです。しかしそれは私たちも同じ」

???「ダージリン様! 出撃はまだですの!?」

???「聖グロ一の俊足が走りたくてウズウズしているのでありますわよ!」

ダージリン「大洗の皆さんには申し訳ありませんが、勝つのは今回も私たちですわ」

桃「あちらの隊長は西住が居ないことで気を抜いているな」

桃「そこに勝機がある。松本、的確な指示を頼むぞ」

エルヴィン「はい、わかりました桃先輩」

エルヴィン(手を抜く・・・本当にそうだろうか)

エルヴィン(プラウダの隊長ならともかく、聖グロリアーナの隊長はそこまで甘くない気がするが)

カエサル「エルヴィン!」

おりょう「隊長殿のお戻りぜよ」

エルヴィン「あぁみんな、待たせたな」

左衛門佐「言われたとおり、Ⅲ突にフラッグを設置しておいたぞ」

おりょう「しかしⅢ突にフラッグとは。強みの車高の低さを殺しているようなものぜよ」

エルヴィン「まぁそうなのだが。しかし、元々はあんこうチームが付けるはずだったんだからな」

エルヴィン「あんこうチームは車長のみほが不在だから、流石に今日はフラッグ車を任せるわけにはいかないだろう」

カエサル「まぁ、あのチームが車長不在くらいでテンパりはしないと思うが」

エルヴィン「とにかく、私たちは事前の作戦に沿って行動するだけさ」

実況「おっと、全車両すべて準備を終えたようです」

実況「蝶野主審、今時計を見て・・・試合開始の鐘がなりました」

実況「大洗女子学園対聖グロリアーナ女学院親善試合、開始しました!」


エルヴィン「では事前の作戦通りに展開する」

エルヴィン「アヒルさんチームは先んじてグロリアーナの偵察、他車両は十分に警戒しつつC-1地点の森へ進軍する」

エルヴィン「パンツァーフォー!」

沙織「えっと、とりあえず前進!」

麻子「了解した」

華「沙織さん落ち着いて」

沙織「分かってるけどさー」

沙織「ねぇゆかりん、この作戦ってどうなの?」

優花里「今回の作戦は進軍する車両をC-1地点の森で待ち伏せ、グロリアーナの車輌が通ったところを確実に仕留めるものです」

優花里「両社が進軍するにあたって要所となるのがC-1地点、お互いのフィールドへ移動するには必ずここを通らなければなりません」

優花里「ここをいち早く抑えることで相手の自陣地への進軍を抑えることができる他、待ち伏せして砲撃することも可能になりますのでグっと有利になります」

優花里「位置としては我々のほうが近いので、ここは確実に押さえておきたいですね」

沙織「ふーん、じゃあ今回は私たちの方が有利なんだ」

優花里「あくまでも抑えられたなら、の話ですが」

優花里「それこそダージリン殿ならそんなことはお見通しでしょうし」

優花里「そのために89式を他の動向を探るために偵察に出しているのでしょう」

沙織「成程ね、やっぱり全然わからないや」

沙織「こんな作戦を思いつくなんて、みぽりんはやっぱり凄いんだねぇ」

優花里「戦術家としてはおそらく高校1なんじゃないでしょうか」

沙織「じゃあみぽりんの立てた戦術があるんだから、負けることはないよね! あんこう踊り踊らなくても大丈夫だよね!?」

優花里「まぁ絶望するには早いかと」

優花里(しかし戦術は戦況により変化させるものです)

優花里(エルヴィン殿、大丈夫でありましょうか)

エルヴィン(整列した時にいたメンバーの数を見ても、どうやら敵の車両は我々と同じく8両)

エルヴィン(内チャーチルが1両として、他7両はマチルダか、それともほかの車両が入っているのか)

エルヴィン(こうなると分かっていれば、グロリアーナの以前の試合を見れたのだが)

カエサル「エルヴィン、アヒルさんチームから通信が入っている」

カエサル「E地点に今だ敵の姿無し、だそうだ」

エルヴィン「そうか、ありがとう」

エルヴィン(まだ姿がないか、前進していればそろそろ通るエリアのはずだが)

エルヴィン(まさか開始地点から動いていないのか、それとももう過ぎてしまったのか?)

カエサル「あー、エルヴィン悩んでいるところ済まないんだが、アヒルさんチームが次の指示を待っている」

エルヴィン「え、あぁそうだな。そのまま偵察を続けてくれ、出来ればグロリアーナの開始地点のF地点まで進んでくれないか」

カエサル「分かった、伝えておく」

エルヴィン(・・・指示は今のでよかったのだろうか。あまり深いところまで偵察させても、危険度が増すだけではないか)

エルヴィン(いやしかし、敵の情報が知りたい。情報がなければ判断がつかない)

エルヴィン(・・・隊長とはこんなにも難しいのか。改めてみほの凄さを痛感するな)

左衛門佐「エルヴィン、あまり気を負うものではないぞ」

カエサル「今回の作戦は立地上私たち方が有利だ。それに、以前と違い戦車だってパワーアップしている」

おりょう「敵からしたらポルシェティーガーの居る我々は戦力的には驚異ぜよ」

エルヴィン「それもそうか」
エルヴィン(あまり気にしていても仕方がない、か)
カエサル「それにもう少しでC-1地点の森林地点に到達するしな」

左衛門佐「足場を固めて試合を有利に進め――」

DOOOOOOOOOOOOOOM!!

左衛門佐「って砲撃!?」

おりょう「一体どこから!?」

エルヴィン「皆無事か!?」

沙織『あんこうチーム問題ありません』

そど子『今外を見てるけど、Ⅲ突の横に着弾しただけよ。そんなことよりこの砲撃だけど、私の目が間違ってなかったらC-1地点からの攻撃よ』

エルヴィン「なんだと!?」

左衛門佐「ありえないだろ! 敵はチャーチルとマチルダだろ? 我々より先にC-1地点につけるはずがない」

そど子『といっても―― って第二射来ます!』

DOOOOOOOM!! DOOOOOOOOOOOM!!

エルヴィン「今度は2発同時か!?」

杏『こりゃどうやったかは知らないけど、既にC-1地点は陣取られていると思った方が良いのかもねぇ』

ナカジマ『一体どんなマジックを使ったんだグロリアーナは』

ねこにゃー『ど、どうするの隊長? 突っ込むの?』

エルヴィン(っく、陣取ってる相手に正面から突撃するのは愚策だ)

エルヴィン「いや、一旦引く。全車正面へ攻撃しつつ、右翼へ展開! B-4地点へ移動する」

梓『了解しました!』

そど子『了解!』

沙織『了解しました! ってわあー!』
DOOOOOOOM!

実況「なんとここで大洗のⅣ号戦車被弾!」

実況「白旗が上がっているのが見えます」


エルヴィン「あんこうチーム、大丈夫か!」

沙織『ごめんなさい、あんこうチーム被弾しました!』

麻子『久しぶりにやられた…』

華『今日はまだ一発も撃ってないのに…』

優花里『エルヴィン殿不甲斐なくて申し訳ありません!』

エルヴィン「いや皆無事ならいい。あとは我々に任せてくれ」

優花里『我々の分までお願いします!』

???「やりましたですのよ! あの西住流を打倒しましたわ!」

ダージリン『ローズヒップ、Ⅳ号を撃破したようね』

ローズヒップ「ダージリンさま! やりましたですのよ!」

ローズヒップ「あの西住流をグロリアーナのスピードスター・ローズヒップが打ち取ってやりましたわ」

ローズヒップ「西住流、恐れるに足らずですわ!」

ダージリン(この子、みほさんが今日いないことを知らないのかしら)

ダージリン(まぁ、せっかく喜んでるようですし、水は差さないでおこうかしら)

ダージリン(地形の不利は事前に分かっているわ。だからこそ、今回の編成は8輌の内4輌を足の速いクルセイダーにして要所を抑える計画)

ダージリン(まさかこうも見事にはまるとは思いませんでしたけれどね)

ダージリン「ローズヒップ、貴方は我々が付くまでそこを死守しなさい」

ローズヒップ『了解でありますわよ!』

ダージリン「ではチャーチル・マチルダ全車、前進」

ダージリン(ですがエルヴィンさん、まさかこれで終わるわけではないでしょう?)

エルヴィン「――他の車両はやられなかったか」

杏『いやーまさかあんこうチームがやられちゃうとはね』

梓『サンダース戦以来ですね』

そど子『どうするのよ! ウチのエースがやられて勝ち目はあるの!?』

ねこにゃー『も、もうダメかも…』

エルヴィン「みんな諦めるな!」

エルヴィン(しまったな。みほが居ないとはいえ、あんこうチームは我々にとってシンボルのようなもの)

エルヴィン(それが破られたというのは、戦力上より寧ろ隊のメンバーの心理上に大きな穴を空けてしまったようだ)

エルヴィン(何とかしないと、このままいいようにやられてしまう)

エルヴィン(早めに態勢を立て直さなければ)

ナカジマ『それはそうと、グロリアーナはどうやってあそこまで来たんだろうな』

そど子『知らないわよ。私たちの倍の速度で走ったんじゃないの?』

エルヴィン「いや、マチルダもチャーチルも我々とそんなに差がある訳じゃ――」

エルヴィン「――そうか、あれは本隊じゃなかったのか」

典子『あーこちら偵察のアヒルチーム』

典子『F地点に到達。チャーチルとマチルダが綺麗に隊列を組んでいるのが見えるぞ』

梓『え? でもさっき森の中に居たんじゃ…』

エルヴィン「磯部さん、数を教えてもらってもいいか」

典子『あぁ…チャーチル1輌と、マチルダⅡが3輌だな』

エルヴィン「成程! からくりが分かったぞ」

エルヴィン「あの森の中に居たのは巡航戦車のクルセイダーだ」

カエサル「最高速度60キロのあれか?」

左衛門佐「あれの火力は2ポンド砲だから、Ⅳ号の装甲は貫けんぞ」

エルヴィン「いや6ポンド砲搭載のモデルもあるから、おそらくそちらを使っているのだろう」

カエサル「しかし正体が分かったところでどうする。敵に制圧されているのは変わりがないのであろう?」

左衛門佐「だがこのままじっとしていれば、チャーチルとマチルダが加わって相手の防御陣形が完成してしまう」

おりょう「守備に入ったグロリアーナは手強いぜよ」

エルヴィン(確かに。我々が勝とうと思ったら、本隊が合流する前にクルセイダーを叩く必要がある)

エルヴィン(どうする。ポルシェティーガーを盾にして強引に突破するか? いや、仮にも6ポンド砲搭載車だ。変なところに当たって撃破されでもしたらそれこそ目も当てられない)

杏『しかし、随分と深い森だねぇ。双眼鏡で覗いても全く中が見えないよ』

ナカジマ『殆ど手入れしてない森だから、木も草も生え放題だろうな』

エルヴィン(深い森…、中が見えない…、生え放題…)

エルヴィン(そうか、もしかしたらこれならイケるかもしれない)

エルヴィン「よし皆聞いてくれ、今から作戦を伝える!」

ローズヒップ「・・・暇ですわね」

操縦手「ダージリン様が着くまではこの場を死守、ですからね」

ローズヒップ「ダージリン様はああ仰いましたけど、あんこうチーム不在の大洗なんて、きっと気の抜けたコーラのようなものですわ」

ローズヒップ「そのまま攻め入った方が良かったのではないかしら」

操縦手「もしかしたらそうかもしれませんねぇ。でもダージリン様は冷静ですからね」

ローズヒップ「はぁ、まだダージリン様はこないのかしら」

DOOOOOOOOM!!

ローズヒップ「砲撃!? 何処からですの!?」

クルセイダーB『分かりません!』

DOOOM!! DOOOM!!

ローズヒップ(森林地帯で位置把握が難しいですわ)

ローズヒップ(しかしこの砲撃は、私たちの位置を特定しているとは思えません)

ローズヒップ(威嚇? それともおびき出しているつもりですの?)

クルセイダーC『ひぇ! これってもしかしてポルシェティーガーの88mm砲!?』

クルセイダーD『当たったら一撃で走行不能になっちゃうよ~!』

ローズヒップ「落ち着きなさい! まず何処から攻撃を受けているのか確認!」

クルセイダーC『森が深すぎてどこから攻撃を受けているのかなんてわかりませんよ!』

クルセイダーD『もしかしてもうすぐ傍に来てるんじゃないですか?』

ローズヒップ「そんな筈ありません! これは明らかに私たちを森から誘い出す罠ですわ」

ローズヒップ「その証明に、先ほどから私たちのそばには全く着弾していません」

ローズヒップ「焦らずダージリン様を待つのが私たちの使命でしてよ!」

DOOOOM! DOOOOM!

クルセイダーB『ひぇ! 車輌の直ぐ後ろに着弾しました!』

ローズヒップ「偶然ですわ! 落ち着きなさいあなたたち!」

クルセイダーC『ロ、ローズヒップ様!』

ローズヒップ「なんですの!?」

クルセイダーC『後方から敵車輌出現しました!』

ローズヒップ「なんですって!?」

クルセイダーB『真後ろから攻撃を受けています…機銃の音も聞こえます!』

クルセイダーD『やっぱり後ろに!? ここはもうダメです! 的になるくらいなら外に出ましょう!』

ローズヒップ「いえですが、ダージリン様はここを死守しろと…」

クルセイダーB『やられちゃったら元も子もありません!』

ローズヒップ(何ですの何ですの何ですの!)

ローズヒップ(この要所さえ押さえたら敵の進行は防げるはず)

ローズヒップ(回り込めなくはないですが、あの位置から後ろへ回り込むには相当時間がかかる)

ローズヒップ(こんな短期間に回り込めるはずがありません!)

ローズヒップ(しかし…)

DADADADADADADADA!!

ローズヒップ「機銃掃射!?」

操縦手「ローズヒップ様! 後方から機銃掃射を受けています!」

ローズヒップ「ま、まさか!」

ローズヒップ(砲撃ならともかく、機銃が遠方から届くはずがありません!)

ローズヒップ(大洗、どんな魔法を使ったかわかりませんが、本当に後方から迫ってきているのでは!?)

ローズヒップ「……分かりました! いったん外に出ますわよ!」

クルセイダーB『了解です!』

クルセイダーC『全速力で逃げ出します!』

クルセイダーD『ラジャーですわ!』

ローズヒップ(まぁいいですわ。広い場所に出た方が、足の速いクルセイダーにとっては好都合)

ローズヒップ(取り囲んで一網打尽にして差し上げますわ!)

クルセイダーB『森を抜けます!』

クルセイダーC『やったー外だ―!』

クルセイダーD『逃げ切りましたわー!』

DOOOOM!! DOOOOOMM!!



実況「おーっと! 聖グロリアーナのクルセイダー、森から出てきたところを大洗女子学園のM3とルノーB1に仕留められました! 大洗同時に2輌を撃破!」



ローズヒップ「な、こちらにも大洗が!?」

クルセイダーB『ど、どうして! 大洗は後ろから来てるんじゃ…!』

そど子『カモチーム、クルセイダー1輌撃破しました』

梓『同じくウサギチームも撃破!』

桃『何故だー! なぜ当たらない!?』

柚子『桃ちゃんここで外すー?』

エルヴィン「よし、そのまま他の車両も撃破してくれ!」

エルヴィン「引き続きカバ・レオポン・アリクイチームは丘から支援射撃を行う!」

ナカジマ『了解!』

ねこにゃー『が、頑張るぞー』

エルヴィン(よし、今度は上手くいきそうだ)

典子『で、私たちはどうしたらいいの?』

エルヴィン「アヒルさんチームも後ろから攻撃を続行してくれ」

典子『了解した! 皆今日は走り回ってばかりだが、根性で頑張ってくれ!』

アヒルさんチーム『了解しました!』

エルヴィン「やれやれ、間に合ってくれて本当に良かった」

カエサル「まさか偵察に出ていた89式を戻すとは、考えたな」

エルヴィン「あぁ。あの森は相当深くて視界が効かない」

エルヴィン「遠距離からの砲撃でも相手にとってはどこから撃たれているのか分かり辛い。戦車なんかに乗ってたら尚更だ。それに加えて、本物の攻撃を加えれば…」

カエサル「敵はそれを全てだと思ってしまう。我々の嘘の砲撃に、89式からの本当の攻撃を加えることで、あたかも大洗の全車両が後ろから来ていると錯覚させたのか」

左衛門佐「そのために機銃まで撃たせたのか」

エルヴィン「機銃は弾をばらまく分、方向性を見せやすいからな」

おりょう「成程、まるで垓下の戦いぜよ」

カエサル「しかし、これでクルセイダーは何とかなりそうだな」


ローズヒップ「何ですのこれは、大洗は後ろにいるはずでは――」

クルセイダーB『そんな、挟撃されてるなんて――』

DOOOOOOOM!



実況「おっと! 引き続きM3が1輌クルセイダーを撃破!」



あや「あゆみスゴーい!」

梓「ウサギチーム、もう一輌撃破しました!」

桂利奈「よっしゃー!」

優季「巡航戦車キラ~♪」

あや「あ、最後のクルセイダーが走り出したよ!」

桂利奈「カモさんに向かっていくよ?」

梓「やらせない! ここで全車両撃破するよ!」

優季「でもはや~い」

梓「桂利奈! ついていける!?」

桂利奈「あいあいーっ!」


ローズヒップ「こうなったら1両でも多くの車両を道連れにしますわよ!」

操縦手「任せてください!」

砲手「やってやります!」



そど子「何よあの戦車! 自動車みたいに早いじゃない!」

ゴモヨ「60キロくらい出てます~」

パゾ美「こっちに真っすぐ向かってきますぅ」

そど子「なによ! 重量ならこっちの方があるんだから!」

そど子「返り討ちにしてやるわよ!」

ローズヒップ「B1の後ろに回りますわ!」

操縦手「了解です!」


そど子「正面、クルセイダーに向けて! 撃てー!」
DOOOOM!


操縦手「今だあああああああああ」

ローズヒップ「必殺! 縦列駐車ドリフトですわ!!」


そど子「!? 砲撃を交わして、側面に回り込んだ!?」


ローズヒップ「今ですわ!」

砲手「了解!」

DOOOM!

実況「おっと! ここで最後に残ったクルセイダーがBIを撃破!」


ローズヒップ「まだですわ! 次、ヘッツァー!」

操縦手「りょうかいしま――」
DOOOOM!


実況「しかしながらM3に仕留められました。これでM3、本日3両目の撃破になります!」


そど子『カモさんチームやられました! 申し訳ありません』

エルヴィン「いや、皆無事ならいい」

カエサル「最後にしてやられたな」

左衛門佐「だがこちらは1輌の損失、あちらは4輌だ」

おりょう「しかも森を奪い返せたぜよ」

梓『すいません、カモさんチームをやられちゃいました』

エルヴィン「いや十分だ。それではアヒル・カメチームと一緒にC-1地点へ移動してくれ」

梓『了解しまし―― キャア!』
DOOOOOM! DOOOOOM!


実況「おーっとここでまさか、トリプルスコアを上げたM3とヘッツァーから白旗が上がった!」

実況「この攻撃を仕掛けたのは――」


ダージリン「ローズヒップさん、出すぎましたね」


実況「チャーチルだ! 加えてマチルダⅡ! ここでグロリアーナの主力が登場しました!」

エルヴィン「っち! ここまで来たというのに!」

典子『こちらアヒルチーム! どうする、このままチャーチルに攻撃を加えるか?』

エルヴィン「いや、一度こちらに戻ってきてくれ」

典子『了解! 丘陵地帯まで後退する! 皆根性だ!』

ナカジマ『私たちはどうする?』

エルヴィン「89式を待ちつつ、このままチャーチルに砲撃を加える。Ⅲ突とポルシェティーガーの88mmならこの距離からでも抜ける」

ナカジマ『了解!』

ねこにゃー『ぼ、僕らも撃ち続けるよ!』

エルヴィン「森に入る前にフラッグ車を抜くぞ!」

ねこにゃー『りょうか――』
DOOOOOOOOMM!

ねこにゃー『うわぁぁぁ!』

エルヴィン「何!? 砲撃!」

ナカジマ『アリクイがやられたよ! あれは―― マチルダⅡ!?』

スズキ『右側面からマチルダⅡが2輌! 全速力でこっちに向かってるよ!』

エルヴィン「何だって… 戦力を分散させていたのか!?」


ダージリン「あれだけ丘陵地から撃ち込んでいれば、そこに居ますと伝えているようなものですわ」

オレンジペコ「マチルダⅡの主砲でも、側面からならⅢ突を抜けます」


ナカジマ『右側からと下から―― とてもじゃないが2輌だけじゃ対応できないぞ』

エルヴィン「仕方がない、ここは一時退却!」

エルヴィン「アヒルチーム、レオポンチームはⅢ突に続いてA-2地点まで後退!」

典子『了解しました!』

ナカジマ『了解! ――でもその前に…!』


DOOOOOOM!


実況「大洗チームポルシェティーガー、逃げながらもマチルダⅡを1輌撃破!」

実況「これでグロリアーナはチャーチル1輌にマチルダⅡ2輌。対する大洗はポルシェティーガー、Ⅲ号突撃砲、89式中戦車。数は互角ですが、果たして両者これからどう動くのか!」

エルヴィン(・・・クルセイダーを何とかしたと思ったら、時間を置かずに大本命の登場か)

エルヴィン(流石聖グロリアーナ、流石ダージリンさんといったところか)

カエサル「イギリス、クルセイダー、撤退戦――」

おりょう「まるで北アフリカ戦線ぜよ」

カエサル「これでサンダース付属がやってきたら洒落にならないな」

左衛門佐「北アフリカ戦線は最終的にはドイツが敗北したんだぞ。縁起でもない話はやめないか」

おりょう「だがこのままでは我々はジリ貧ぜよ」

おりょう「エルヴィン、何か策はあるぜよ?」

エルヴィン「・・・」

エルヴィン(味方車輌は3輌、しかも89式の砲は近距離でもマチルダの装甲を抜けないから、実質2輌)

エルヴィン(砲は強いが、足の遅いポルシェティーガーと、砲塔の無いⅢ突)

エルヴィン「どうする・・・どう戦う?」

カエサル「心の声が漏れてるぞ、エルヴィン」

左衛門佐「やれやれ、ようやく私たちの戦いらしくなってきたな」

おりょう「いつもギリギリまで削られて、最後の最後で勝つのが大洗流ぜよ」

エルヴィン「確かに、今までもそうだったな」

エルヴィン「しかし決定的に違うのは、今回はみほが居ないということだ」

エルヴィン「この逆境を打破できる作戦は――」

カエサル「全く、何を言い出すのか聞いてあきれるな」

左衛門佐「作戦なら皆で考えればいい」

エルヴィン「しかし、皆だって戦車道は初めてだろ?」

おりょう「そりゃそうぜよ」

エルヴィン「相手は戦車道強豪校聖グロリアーナだぞ。そんな簡単に出し抜くことなんて――」

おりょう「エルヴィン、ここに誰が居ると思っているぜよ」

エルヴィン「誰って――」

カエサル「ローマ最強の知略家」

左衛門佐「豊臣最後の切り札」

おりょう「幕末動乱の獅子、そして――」

カエサル「砂漠のキツネ、エルヴィン・ロンメル」

カエサル「この4人が揃って、勝てない戦などある筈がない」

カエサル「そうだろ? エルヴィン」

エルヴィン「お前たち――」

エルヴィン(…そうだな、私は大ばか者だ)

エルヴィン(どうやらみほが居ないことに一番恐怖していたのは私だったようだ)

エルヴィン「あぁ、この4人が居て勝てない戦など無い」

エルヴィン「皆頼む、私に力を貸してくれ」

カエサル「そいつが聞きたかった」

左衛門佐「ならば私に一計がある」

おりょう「実は私にも」

カエサル「おいおい、最初に言うのは私だぞ」

・・・
・・

ダージリン(大洗はA地点に逃げ込みましたか)

オレンジペコ「さっきの丘陵地帯と打って変わって、山岳地帯に入りましたね」

アッサム「道も狭くなってきましたわ」

ダージリン「相手はⅢ突、車高を生かして待ち伏せしていると考えた方がよろしいでしょうね」

ダージリン「それに相手にはまだポルシェティーガーもいることですし」

アッサム「…しかし、手間取りましたね」

ダージリン「あらアッサムさん、データ通りではなかったかしら?」

アッサム「現状の戦力において、西住みほが居ないとした時の私たちの勝率は82%。そして残存車輌が3輌以下になる可能性は16%」

アッサム「あの2年生、エルヴィンさんでしょうか。思ったよりもやりますわ」

ダージリン「そうね、大洗を優勝に導いたのは確かにみほさんがいたからこそ」

ダージリン「ですが、一人の活躍だけで優勝できるほど、戦車道は甘くはありませんよ」

オレンジペコ「…大洗の主力は殆ど2年生なんですよね」

オレンジペコ「ダージリン様やアッサム様が抜けた後に大洗と闘うのが、恐ろしくなってきました」

ダージリン「あら、それは心配することはないわ」

ダージリン「確かに大洗は優勝校ですが、今回も勝つのは私たちですわ」

ダージリン「そして、これからも」

DOOOOOOOOOOMM!


ダージリン「噂をすれば・・・」

マチルダⅡA『南西の方向から砲撃! Ⅲ突です!』

オレンジペコ「やっぱり待ち伏せしてましたね」

マチルダⅡA『後退していきます』

ダージリン「追撃」

オレンジペコ「マチルダⅡ各車、チャーチルに続いてⅢ突を追撃してください!」

マチルダⅡA&B『了解!』

カエサル「食いついてきたぞ!」

エルヴィン「よし、そのままA-2地点まで敵を誘い込むぞ」

左衛門佐「どんどん撃ってきてるぜよ」

カエサル「おりょう! もっとジグザグに進め!」

おりょう「これが限界ぜよ!」

左衛門佐「Ⅲ突が回転砲塔ならせめて迎え撃てたものを…!」


実況「ここで大洗のフラッグ車を、聖グロリアーナが追う形となりました!」

実況「追うグロリアーナと、逃げる大洗!」

実況「試合は最終局面へと移ろうとしています!」

アッサム「Ⅲ突の運転手、良い動きをしますね。中々的を絞らせません」

オレンジペコ「でも3対1ならいずれは当たりますよ」

ダージリン「そうね、でも…」

ダージリン(他の2輌は何処へ行ったのかしら)

ダージリン(待ち伏せ、そしてⅢ突が囮、と考えるのが妥当ね)

ダージリン(ですがこの状況がチャンスであることは変わりありません)

ダージリン「毒を食らわば皿まで」

ダージリン「全車、Ⅲ突を何としてでも仕留めなさい」

マチルダⅡA&B『了解です!』

オレンジペコ「Ⅲ突は…山道へ向かっているようですね」

アッサム「A-2地点の山道なら私も見ています」

アッサム「山の斜面にそって整備された道ですわ。左は谷、右は斜面。一度入れば転回することも不可能」

アッサム「そこにさえ入れば、目を瞑ってでも当てられますわ」

マチルダⅡA『Ⅲ突山道へ入ります! 私たちも続いて―キャア!』
DOOOOOOOOOM!

マチルダⅡA『89式です! 89式に体当たりされました!』


典子「根性だ! 作戦通り山道へのマチルダⅡの侵入を防ぐぞ!」

一同「おぉぉぉぉ!」



ダージリン「マチルダⅡBはAの援護に回りなさい」

マチルダⅡB『了解しました!』

ダージリン「私たちはⅢ突を追います」

アッサム「確実に仕留めます」

ダージリン(さぁ、貴方の作戦に乗ってあげますわ、砂漠の狐さん)

左衛門佐「チャーチル、追ってきたぞ!」

カエサル「アヒルさんチームは目的を果たしたか!」

おりょう「あとは私たちが頑張る番ぜよ」

エルヴィン「頼むぞおりょう! ヴィットマン級の運転だ!」

カエサル「チャリオットを操るローマ兵だ!」

左衛門佐「いや、松風を駆る前田慶次であろう」

一同「それだ!」


アッサム「細い道ですが、カーブが多くて狙いが定まりませんわ」

オレンジペコ「それに足元―― 昨日の雨で随分とぬかるんでいます」

オレンジペコ「滑って転落しないように気を付けないと」

ダージリン(このような狭い道では大きな車体のチャーチルは不利)

ダージリン(このぬかるんだ道での砲撃は車体のバランスを崩して転落する可能性がある)

ダージリン(偶然か、そこまで考えて誘い込んでいるのか)

オレンジペコ「アッサム様、あと10秒で直線に入ります」

アッサム「そこで決めますわ…!」


左衛門佐「ポイントまであと7秒ぜよ!」

カエサル「持たせろおりょう!」

おりょう「任せるぜよ!」

エルヴィン(頼むぞレオポンチーム!)


オレンジペコ「5!」


カエサル「4!」


アッサム「3!」


おりょう「2!」


ダージリン「1」


エルヴィン「ゼロ! 崖を下れ!」

おりょう「一ノ谷の逆落としぜよ!!!」


アッサム「Ⅲ突が視界から消えた!?」

オレンジペコ「崖下り!? そんな無茶な! 落ちたら即行動不能ですよ!」

ダージリン(自殺行為!? いえ、まさか――)

ダージリン「アッサム! 前を!?」

アッサム「な!? ポルシェティーガー!」


ナカジマ「流石にこの距離なら外さないよ」

ナカジマ「ホシノ! 撃てー!」


ダージリン「アッサム!」

アッサム「撃ちます!」



DOOOOOOOOOOOOMMMM!!!!




・・
・・・


実況「試合終了! 勝者は――」



――月曜日

みほ「皆さん土曜日は本当にすみませんでした!」

沙織「みぽりん! 風邪治ったの!?」

みほ「お陰様で…、当日に倒れちゃうなんて隊長失格です…」

華「いえ、大事にならなくて本当によかったです」

みほ「でも皆に迷惑かけちゃって…」

優花里「こういうのも何ですが、逆に私たちの弱点が見えて有意義な試合でした」

麻子「久々に撃破されてしまったからな」

沙織「みぽりんが居ないとダメだよー。もっと練習しないと!」

華「今日から特訓です!」


みほ「それで… グロリアーナとの結果は?」


杏「お、西住ちゃーん!」

みほ「会長! 今回は本当に…」

杏「いやーいいっていいって、風邪ならしゃーないしねぇー」

杏「あと、はいこれ。西住ちゃんにプレゼント」

みほ「えっと、これは…」


みほ「…」


みほ「…あんこう踊りの、服ですよね」

杏「まー風邪で休んだとはいえ、西住ちゃんもチームの一員だからねぇー」

杏「じゃ、来月の秋祭りまでちゃんと練習しといてねー」

みほ「負けちゃったんですね」

優花里「残念ながら」

沙織「でも凄かったんだよ!」

沙織「エルヴィンさん達が、ダージリンさんの乗るチャーチルを山道の一本道に誘い込んでね」

優花里「直線になったところで、Ⅲ突が源氏の逆落としの如く崖方向へ転回」

華「待機していたポルシェティーガーが真正面のチャーチルを撃ったところまでは良かったんですけど…」

みほ「けど?」

麻子「ポルシェティーガーの砲撃が僅かに逸れて、中破扱いで白旗が上がらなかった」

優花里「チャーチルは車体が大きいので、砲撃をまともに受けても駆動系が無事で動けるケースが多々ありますから」

優花里「そして、その間に崖下りをしたⅢ突が横転して行動不能」

優花里「寸でのところで勝利を逃してしまいました」

みほ「な、なんだか凄い戦いだったんだね」

沙織「そうそう。エルヴィンさんたち無茶しすぎだよね。まぁ怪我がなかったから良かったけど」

みほ「そういえば、エルヴィンさんは?」

優花里「さっき戦車倉庫に居ましたよ」

優花里「きっと今頃お茶してるんじゃないですかね」

みほ「お茶?」

-----------------戦車倉庫

おりょう「さ、お茶が沸いたぜよ」

カエサル「こら、紅茶は70度で入れるのが一番美味しいのだ。沸騰させてどうする」

おりょう「普段緑茶しか入れないから勝手が分からないぜよ」

左衛門佐「どうせ味の違いなんて私たちには分からんだろう」

カエサル「いや、こういうのは形式というかだなぁ」

エルヴィン「まぁいいじゃないか」

エルヴィン「私たちには私たちの楽しみ方がある」

カエサル「しかし折角貰ったティーカップなのだから――」

おりょう「たかちゃんは厳しいぜよ」

カエサル「たかちゃん言うな!」

左衛門佐「煩いぞお前ら! 紅茶くらいゆっくり飲ませろ!」


----------------グロリアーナ

オレンジペコ「同じ学校に、二度もティーカップを送るのは初めてですね」

アッサム「それだけ気に入ったのかしら、あのⅢ突の車長が」

ローズヒップ「オレンジペコ! この間の試合で、あんこうチームの車両に西住みほが乗ってなかったというのはマジですの!?」

オレンジペコ「ローズヒップさん… 今頃お知りになったのですか?」

ローズヒップ「風邪で休んでたって、それでは私が浮かれていたのが馬鹿みたいですわ」

ローズヒップ「西住みほ… 次会った時は必ず撃破して見せますわ!」

ローズヒップ「クルセイダー隊! 特訓ですわよ!」

隊員「了解ですわ!」

オレンジペコ「そういえばダージリン様、あのメッセージカードに何を書いたんですか?」

ダージリン「あのメッセージカード? あぁ、それはですね――」





For foxes of the desert.
-砂漠のキツネたちへ-



END

これにて完結です。
エルヴィンとガルパンが好きすぎて、初めてSSを書いてみました。
戦車戦をどう書いていいのか難しく、短くなってしまったのが心残りです。

今後もあんこうチーム以外にフューチャーした作品を書いていきたいと思います。
ではこれにて。

乙乙。短いながらも面白い戦車戦だったぜ

とても良かった

おつおつ
面白かったよ

乙です
熱い試合だった!

乙、初めてでこれはすごい

乙! 進撃とのクロスだと勘違いしたのはナイショだ

乙!

乙、戦車戦良かった

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