男 「信じようと、信じまいと―」(34)

・ホラー系(グロ系?)
・構想は出来てるけど書き溜めは頭の中に途中まで
・確実に駄文

それでもいいという方は見ていってやって下さい

男 「肝試しねぇ」

友 「そそ」

楽しげに笑う友の顔を見て俺は辟易した。

こいつが何か言い出して、ろくなことがあった試しがない。

男 「何処で何をするんだ?」

友 「町外れの洋館だよ、知ってるだろ?」

町外れの洋館。

俺達が住む町では割りと有名なホラースポットであり、俺達学生の間ではよく話題になる。

曰く、無人の筈の洋館には夜な夜な女性の幽霊が現れる。

曰く、地下からは狂った獣の遠吠えのような低い音が聞こえる。

曰く、バスルームの鏡には血にまみれた洋館の主が写る。

曰く、そこに立ち入って生きて帰ってきた者はいない。

等々と、様々な噂で溢れ返っている。


ちょっと飯食います。

聞いてみれば、どれも月並みな噂話。

生きて帰ってきた者がいないのに何故内部の詳しい情報まで話に挙がっているのかと突っ込みたくなるところではあるが、それは飽くまで単なる噂。

都市伝説に尾ひれがついてしまうのは世の常である。

友 「何をやるって訳でもないって。ちょいと夜中に探索に行こうってだけだよ」

男 「アホらし」

ハァと溜め息を吐く。

友 「お前はこういうのに否定的だもんな」

男 「別に信じていないわけじゃないさ」

男 「いたら面白いとは思うがな。いたとしても俺が生涯で関わることは無いさ」

友 「冷めてるのか冷めてないのかよく分かんない奴だな… まぁ行くってことだよな?」

男 「どうしてそうなる。 どんだけ事実の改竄が行われたんだよ」

友 「委員長も来るってよ」

男 「」ピクッ

友 「『男君、怖いよぉ…』」

男 「ぐぬぬ…」

―夕方―

友 「とうちゃーく!」

委員長 「結構遠いんですね…」

女 「ふいんきもそれっぽいしね」

チャラ男 「雰囲気だぜ女」

女 「うるさいわねー」

ワイワイガヤガヤ

男 「騙された…」

友がうまく取り持ってやると言ってくれたから乗ったというのに、何故かもう二人オマケがついていた。

チャラ男 「なんだよ男、ビビってんのか?」

男 「黙れよヘタレ」

チャラ男 「はぁ!? 別ビビってねーしぃ!!」

女 「ビビってるって言ってるようなものよチャラ男」

男 「ヘタレと言われてビビってることを否定するなんておかしなヘタレだな」

チャラ男 「ヘタレじゃねーって!」

委員長 「くすっ…」

友 「ヘタレはほっといてルール説明と行こうや」

じゃーんと言って右手に握りしめた四本の割り箸をチャラ男に突きつけた。

友 「選びな!」

チャラ男 「お、おう…」

友 「女ちゃんも」

女 「はいはいっと」

2人が引いた割り箸は至って普通の割り箸だった。

友 「ありゃ、もう決まっちまったな。これ班を決める籤引きだったんだよ」

友は残った二本をポケットに仕舞う。

チャラ男 「そーゆーの先に言えよー」

友 「結果は変わんねぇって」

友は此方に小さくウインクをした。

本来ならゲロる真似でもしてやるところだが、今回ばかりは感謝させて貰うしかない。

おそらく、割り箸は全てまっさらな状態だったのだろう。

小賢しい知恵が回る奴だ。

友 「まぁ肝試しなわけだが、特に何を取ってこいとかはねぇよ。一周ぐるっと回るだけ」

委員長 「友君は行かないんですか?」

友 「俺はここで連絡役。困った時はすぐに携帯にかけてくれ」

チャラ男 「なんだよお前がビビってるじゃんか! 代われよ!」

友 「いいけどこの辺野犬やら猪やらでるぜ?」

チャラ男 「うっ…」

友 「お前動物苦手だろ? ほれ、懐中電灯」

友が投げ渡した懐中電灯をたどたどしくチャラ男が受けとる。

チャラ男 「くぅ…」

女 「ここまで来てヘタレないでよ。男なら覚悟決めなさい」

チャラ男 「…わーったよ」

チャラ男は懐中電灯がきちんと点灯すること、予備の電池を持ったことを確認してから女とともに門の前に立つ。

近くから見る洋館の姿は巨大で、おどろおどろしい。

沈みかけた大きな夕日の光を浴び、黒とオレンジのグラデーションを持ったゴシック風の建築物は見る者全てを怖じ気づかせる圧倒的な存在感を放っていた。

女 「行くよ、チャラ男!」

チャラ男 「お、おう…任せろ…」

ゴクリと唾を飲むチャラ男。

そんな奴に誰が任せたがるのか、いたら見てみたいものだ。

委員長 「頑張ってくださいねー」フリフリ

委員長は小さくなってゆく2人の背中に手を振り続ける。

男 「俺らはどのタイミングで行けばいいんだ?」

友 「ほんとは2人が帰ってきてから…って言いたいんだが、10分くらい開ければいいでしょ」

男 「りょーかい」

いきなり手持ち無沙汰になった俺は大きく欠伸をする。

委員長 「頑張りましょうね、男君!」

男 「任せとけ」

―洋館―

チャラ男 「うっわ…」

女 「雰囲気あるわねー」

閑散としたエントランス。

ガラスの破片が飛び散り、所々剥がれた壁紙からはくすんだ古い木材が覗く。

壁に掛けられた油絵の肖像画は少し見るだけでも埃が被っていることが分かるほどだった。

チャラ男 「覚えたのな」

女 「私は成長する女でゲスよ」

2人の声は静かなエントランスによく響く。

チャラ男 「ど、どうするよ?」

女 「取り合えず一階から回ってみましょうか」

無造作に散らされた瓦礫の山。

歩くには少し不自由である。

そんな中を進んで行く一点の光。

女 「なんか感じたりする?」

チャラ男 「え、なんか感じたの?」

女 「感じないわよ。男の言葉を借りるなら所詮噂は噂、でしょ」

チャラ男 「うー、でもさみぃよなぁ」

女 「どっかに隙間でもあるのかしらね」

屋内だが、ふと風を感じることがある。

中身がこれなら穴ぐらい開いていても不思議では無いのだが。

長い廊下がただひたすら続く。

鬱蒼とした茂みに隠れていて知らなかったが、この洋館はかなりの豪邸だったらしい。

チャラ男 「お…?」

小さな光が壁にぶつかる。

チャラ男 「扉だ…」

女 「見れば分かるわよ」

少し大きめの、両開きの木の扉が現れる。

扉の上には何かプレートが掛けてあるが文字を読み取ることはできない。

女 「開けるわよ」

チャラ男 「まっまっまっまっ、待って待って待って!」

女 「はぁ?」

風呂入ってきます

チャラ男 「ほら、よくあんじゃん。開けた瞬間中から死体が雪崩れ込んで来るとかバケモンが待ち構えてるとか…」

女 「ゲームのやり過ぎよ。少なくとも大量の死体なんかがいたら問題になってるでしょ」

チャラ男 「バケモンがいたら?」

女 「運の尽き」

チャラ男 「ヤダー!!」

女 「覚悟を決めなさい、ヘタレ」

女は勢いよく扉を開いた。

女 「ほら、なんともない」

チャラ男 「ほんとだ…」

開けた視界には死体も化け物もいない。

あるのは綺麗に整えられた食卓と整然と並べられた幾つもの椅子。

純白のクロスの上には同じく純白の食器。

チャラ男 「あれ…」

チャラ男はすぐに違和感を感じる。

今まで通ってきた道と比べるまでもなく、綺麗過ぎるのだ。

女 「食堂かしら、綺麗ね」

女も同じく、違和感を感じていたらしい。

女 「蝋燭も残ってる、まだ少し温かいわ…」

蝋燭立てに残った蝋燭を摘まむ。

女 「おかしいわね…」

違和感を残したまま、食堂での時間は過ぎていく。

男 「さて、俺らもそろそろ行くか?」

委員長 「そうですね」

友 「頑張れよ、お二人さん」

委員長 「期待はしないでくださいね」

男 「期待しとけよ」

友 「期待はしとくし、しないでおくよ」

委員長 「?」

男 「さ、いこいこ」

変にボロが出る前にこの場を離れなければ。

委員長 「いってきますね」

友 「いったっさーい」

委員長と共に門をくぐる。

日はとっぷりと落ちてしまい、洋館は夜の闇に溶け込んでいる。

委員長 「不気味ですねぇ…」

男 「まぁまぁっしょ」

特に気にかけず、扉に手をかける。

―洋館―

委員長 「静かですねぇ」

静かではない廃墟があるのだろうか。

男 「チャラ男達はどこに行ったのかね?」

委員長 「普通なら一階から回るんじゃないですか?」

男 「じゃあ二階からだな」

委員長 「いっちゃいましょう」

赤い絨毯がひたれた階段は踏みしめる度にぎしぎしと頼りなさげな音をあげる。

男 「足下気を付けな」

委員長 「ありがとうございます」

二階は一階に比べて綺麗だった。

あまり床は散らかっていない。

委員長 「なんだか寒くありません?」

男 「そうか?」

特に寒いとは思わない。

寒気がする、という意味であろうか?

男 「ほれ」

着ていたコートを脱ぎ、肩にかけてやる。

委員長 「あ…」

男 「臭かったらごめんな」

委員長 「そんなことありませんよ…」

委員長はコートを綺麗に着込んでしまった。

二階には幾つかの部屋か点在していた。

男 「片っ端から開けてく?」

委員長 「ゆっくりお願いしますね…」

委員長は男の後ろに隠れる。

やはり少し怖いらしい。

男 「開けるぞ…」

赤茶けた木製の扉を開く。

ここは主の寝室か、キングサイズのどでかいベッドが中央に据えられている。

マットからは綿がはみだし、幾つかスプリングが飛び出している。

委員長 「なにもありませんね…」

男 「あぁ…」

そう大きくはない部屋を見渡す。

ベッドと化粧台以外は目立ったものは無い。

委員長 「化粧台にも特に何も無いです」

かつての住人の忘れ物か、ちらほらと化粧品が残っているだけだ。

男 「ベッドの下は…」

その場にしゃがみ、ベッドの下の空間を覗きこむ。

男 「ん…?」

委員長 「どうかしました?」

男 「なんかある…」

手を伸ばし、箱のようなそれを引きずり出した。

隠れていた溝鼠が数匹、貧相な鳴き声をあげて壁の隙間へと逃げて行く。

委員長 「なんでしょうか…」

男 「日記、かな…?」

擦りきれた表紙にはかすれかけた『diary』の文字。

ページを捲ると一ページ目には筆記体で誰かの名前が書いてあった。

委員長 「この家の主の…?」

男 「かもな。読んでみるぞ」

他人の日記を読むのは憚られるが、好奇心の方が勝ってしまった。

読んでもらえてるのかな?

◯月×日

『妻に勧められ、日記を書くことになった』

『元来筆無精な私が続けられるわけが無いと断ったのだが、何か思ったことを思った時に書けばいいということでついつい日記を受け取ってしまった』

『できる限り頑張りたいとは思うが、続かないかも知れない。妻には笑われるだろうか?』

男 「主の日記みたいだな」

委員長 「よく英語読めますね」

男 「意訳だから大体でいいんだよ。続けよう」

◯月△日

『日記としては初めての文章になる』

『今日は息子と娘が私に料理を振る舞ってくれた。味はまだまだだが、どんな高級食材を用いてシェフが調理をしたものよりも価値のあるものだった』

『塩と砂糖を間違えていたが黙っておいた』

×月△日

『息子が友人に怪我をさせたらしい』

『相手がからかった為に掴みかかったらしいが、息子はよく覚えていないという』

『一体どうしてしまったのか、温厚な息子が他人に怪我をさせるなんて…』

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