【ガルパンSS】あずさ「わたしたちの、戦車道」 (119)

ガルパンの1年生が3年になった設定で書いとります。
なんで独自の解釈やら新キャラ、設定などを結構な量付けてます。
一応ちょこっとは調べてますが戦車は素人なんで設定などミスってたらすいません。
字の文ありです。
あと、ゆっくり投下になるかも。まずは完結目標で頑張ってみます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459100168



みほ「明日からは、あなたたちがあんこうチームです」




あの日から1年。今日で私も隊長の任を受け渡すことになる。

3年連続で、この舞台に立てているのは私たち大洗女子だけ。東富士演習場の雰囲気と熱気は、決勝戦ってことを実感させてくれる。

ペコ「今日はよろしくお願いいたしますね」

ペコちゃんはずいぶん風格が出てきた。ダージリンさんの後を継ぎ、2年間名門聖グロリア―ナを率いてきた、その経験と自負からかな。

私は、どうだったろう?


西住隊長に連れてきてもらった去年と、一昨年。

あずさ「こちらこそ、よろしくお願いします」

今年も、いっぱいみんなに助けられてきたけど。

この大会だけじゃなくて、大洗女子隊長の澤梓として戦う、3年間最後の試合だから思う。
優勝とか、3連覇とか。そういうことが欲しいんじゃなくて、ただこの相手に勝ちたい。
西住先輩が唯一勝つことのなかった、これまで1度も勝てていない聖グロを倒して、私の戦車道はこれだって、胸を張って引退したい。

一度目を閉じて、すぐに開ける。

草原の真ん中。審判団が脇に。ペコちゃんが前に。

みんなが、後ろに。

蝶野さんに目配せ。審判団と、私と、ペコちゃんが微かにうなずき合って。
蝶野「それでは、一同、礼!」

『『よろしくお願いします!!』』

よし。みんな、行こう!


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かりな「おはよーう!みんな、今年の選択必修なににしたー!」

朝の教室。かりなちゃんが小走りで私たち5人に駆け寄ってきた。

ゆうき「かりなちゃんおそーい。また夜更かし?」

「えへへ、またアニメ見てて」

照れた顔して頬をかくかりな。3年生になってもその天真爛漫さは相変わらず。
会話に応じているゆうきはおっとりした感じに加えて、落ち着きが出てきたように思える。2年間やった戦車道のおかげかな?

あや「かりなちゃん、変わらないねえ」

さき「・・・・・・」

あやが苦笑い。この2年で背が伸びたかな。あとは一番沙織先輩の影響受けてるのはアヤだと思うかも。
さきはあいかわらずぼんやり。また何か見つけたのかな?


あゆみ「それで、必修だっけ?それはもちろん」

あゆみが私に向かって確認をとるように目配せをしてくる。
去年の夏から、増えてきたな、こういうの。

嫌ってことはないけど、日々の生活から少しずつ積み重なっていく感じがする。
大洗女子戦車道隊長という、肩書への、実感。

あずさ「うん、戦車道だよ」

あゆみ「そういうこと。私も戦車道」

かりなちゃんに振り向きつつ答えるあゆみ。サンダースで一昨年同じく砲手を務めていたナオミさんに雰囲気が似てきた気がする。実力も当時砲手として高校戦車道界屈指の実力と言われたナオミさん級の評価を受けているみたい。

かりな「そっかぁー!まあそうだよね!わたしもまた戦車道にしたよ!」

ゆうき「わたしもー。ていうかー、一昨年の単位3倍認定で実はもう必修取らなくていいらしいんだけどねー」

あや「え゛っ!?そうなんだ、知らなかった・・・」

あゆみ「それにあずさは隊長だし、わたしらあんこうチームになったわけだから」

かりな「そうだよー!やる気満々だよ!」


で、そこではまだ次期隊長は未定ながら、隊長車にあんこうチームの名前を引き継ぐことも決まった。

私たち下級生も自分のチーム名に愛着はもちろんあったと思う。

でも、2年連続で決勝へ進出したことや、前年の大学選抜との一戦で戦車道強豪校としての地位を確立しつつあり、学校の存続も戦車道ありきで決まったことも考えればその大黒柱であるあんこうチームの名前は消せないと、角谷元会長や前生徒会長、また西住先輩や冷泉先輩達あんこうチームも共通の意見だった。

それに、私自身やっぱり憧れはあったな。高校最高のチーム、あんこうチームの名前にも。ジャケットの背中に背負う、あのマークにも。

うさぎさんとお別れしたのも寂しかったけど。新入生の子たちがうさぎチームとして、活躍してくれればいいなって思う。


あや「あ、そういえばやる気満々と言えばなんだけどさ」

ゆうき「なぁにー?」

あや「なんか今年の新入生に、私物の戦車持ち込みで越境入学した子がいるらしいの」

ゆうき「ほんとー?でもほんとにそうならすごいやる気だね」

あずさ「それに、去年も結局10両で戦い抜いたし、1両増えるだけで全然違うよね!」

かりな「うーん、楽しみになってきた!早く時間にならないかなー!」

かりなの言葉にみんなして口々に合槌をうちながら頷く。
そんなやり取りをしてたら始業のチャイムが鳴った。先生が教室に入ってきてクラスのみんなが席へと戻っていく。

自分の席に座りながら、みんながバタバタと動いていく、そんな場景を薄目でぼやっと見つつ、ほんと、戦車道の時間が待ち遠しいな、なんて考えていた。


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待っていた戦車道の時間がやってきた。
周りを見ればそれぞれのチームやグループで集合場所である倉庫前で時間を待ちながら雑談をしているみたい。かくいう私たちも6人で緩やかな円形を作って会話に興じてるんだけどね。

あや「いやー、思ったよりも少なそうだね」

あゆみ「正直、授業としてはかなり拘束時間長いしね。体力勝負なとこもあるし」

かりな「なんかさ、去年を思い出すよね!優勝もしたし、すっごーいいっぱいいるかと思ったら、あんまいないじゃん!ってなったよね」

ゆうき「でもー、去年のあれはビックリしたよね」

あゆみ「ああ、あれね」

あや「そうそう!どれ、1年生はどんなかなーって見てたら、なんか見たことある戦車が置いてあるんだけど!しかも中からありすちゃん出てきたんだけど!って」

あずさ「あれにはビックリしたよねぇ。西住先輩と戦車道やりたいっていうことで、大学休学してまできちゃうんだから」

あゆみ「でも、ありすちゃんがいなかったら去年の大会はヤバかったよね。準決勝とかさ」


そんな感じで盛り上がっていたら、わたしたちの傍に女の子が立っていた。見たことないし、1年生かな?背は私と同じくらいで明るめの髪をポニーテールで結んでいる。

はんな「あっ、あのっっ!わたし、古川はんなっていいます!えと、戦車道をとった新1年です!ずっと前からあずささんに憧れてました!良かったらサインくださいっ!!」

両目をギュッと瞑りつつ口早にそう言ってから、両手で冊子のようなものとサインペンを突き出してきた。

ゆうき「あー、これ、あずさちゃんがインタビュー受けたやつだー!」

言われてよく見れば確かに前に私がインタビュー受けた月刊戦車道だ!

【新西住流時代の幕開け、次代の旗手に迫る!】 とかいうタイトルで全国大会連覇後に新隊長として話をしたんだけど・・・。

隊長になって間もなかったし、雑誌のインタビューとか初めてで舞い上がって結構大きく出て話しちゃったからなぁ。中身読んだみんなに笑われたんだよねぇ。

それを思い出してるのか、さきを除いて今にも笑いそうな感じでコッチみてるし。

でも、新入生の子とはいえせっかく来てくれたんだし、ここは3年生らしくしっかり対応してあげないとね!


あずさ「ありがとう、これから一緒に頑張ろうね。えーと、サインはここにすればいいかな?実はしたことないからうまくかけなかったらゴメンね?」

はんな「いえ!むしろ初めてのサインを頂けるなんてとっても光栄です!」

そっか、と合槌をうちつつとりあえず自分の名前を書いて渡す。
書いてみて気付いたけど多分 澤梓 という名前は書きやすい部類じゃないかな?2文字だし。

そうこうやり取りしたり、下らないことなど色々考えてるうちに開始時間となっていた。

じゃあ、時間だからとはんなちゃんに言ってからあやたちを促して6人で倉庫の前に立つ。

今年も生徒会のメンバーはいるけど、一昨年とは違い戦車道中の声掛けなどの運営指示は去年今年と隊長が任されているので、今は私たちがやっている。

あゆみ「集合」

あゆみの一言でみんなが集まってきて、2・3年生や、見たことない子でも所属してる場所のありそうな子はチームごとに並んでいく。

ただ、さっきのはんなちゃん含め何人かは脇でおろおろしていてちょっと可愛い。あとは副隊長であるありすちゃんもさっきまで別の子にサインねだられてたみたいだけど、集合がかかったので前へ。

みんな揃ったかな?


あずさ「じゃあ、これから戦車道をはじめます。去年までとってた人も、新しく入った子たちも、よろしくお願いします」

とあいさつの言葉を言うと口々にお願いしますなどの返事が返ってくる。

あずさ「で、今年の受講者数は・・・」

会長「44人だよ。うーん、ちょっと縁起良くない数字だねー」

と、確認事項を呟けば向かい合っている列の最前にいた今年の会長、黒田さんが答えてくれる。脇には副会長の岡田さん、書記の田中さんも控えている。

去年は一昨年のチームがメンバーの代替わりがありつつも全部残ったんだよね。今年もカバさんチームの方たちが卒業してしまった以外は残ってくれている。

あずさ「そっか、会長ありがとう。じゃあ10両に乗れるようにチーム分けしていこっか」

というと、1年生中心にみんながすこしずつざわつき始め、空いてるのは三突と四号ねー、とあやがフォロー入れてくれてる。


そんな中で、オドオドと手が上がってきた。見ると1年生の子だろうか、ゆうきやかりなくらいの背丈で、ほそめの体を縮こまるようにして前に立つ女の子の肩口からちょこんと顔を出しながら手を挙げている。

口元が見えず声量もないのでよくよく耳を澄ますと、ぁ、あの、と、か細い声で言っているみたい。

その子にありすちゃんも気付いてから、何やら得心している様子。もしかして知り合いかな?

ありす「あぁ」

あずさ「ありすちゃん知り合い?」

ありす「うん。玉田流の家元の子。一回会ったことがある」

おぉ、さすが頭脳も天才と言われるありすちゃん。1回あるだけの子を覚えてるなんて。
てゆーか、家元!?すごい、それならありすちゃんとか西住先輩クラスの選手かも!でも、手を挙げてるってことは何かあったのかな?

あずさ「えーっと、そこの子、お名前は?どうしたの?」


妙子「んん・・・?あれもしかして・・・?」

ありす「・・・Ⅰ号C型ね」

気が付いたありすちゃんやバレー部あひるさんチーム含めみんなが少し戸惑ってるみたい。

あややあゆみは渋っ、やら、ゆうきはレアーいと言っている。足は速いけどこれじゃあほとんどの戦車道の戦車は装甲を抜けないんじゃない?たしかに珠美ちゃんに道江ちゃんの2人で乗員に足りるけどさ。

そんなみんなの空気を察したのか、珠美ちゃん達が補足を入れてくれる。

たまみ「えと、うちは西住流や島田流みたいにあんまりお金がなくて・・・。あとは、速さと連携、偵察を重視するのがウチの流派なので・・・」

みちえ「そんなわけでー、何とか持ってこれたのがー、これなんですねー」

あずさ「なるほど、そうなんだ。でも、今まで10両だったところに1両増えるのは心強いしね!じゃあ、そのまま二人はⅠ号に乗ってくれる?慣れてるだろうし」

と、声を掛ければ、二人してはいと答えてくれた。

でも、偵察のできる足の速い車両はたしかに頼もしい新戦力になりそう。これまで準決勝や決勝も10両で戦ってきたしね。


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そこからは割とスムーズに決まっていった。

というのも、1年生で4人のグループと残ってた5人でグループを作ってもらい、それぞれ三突と四号にのってもらうことになって、人数と戦車がぴったり埋まったんだよね。

その他はほとんど変わりなしかな。私たちが去年からヤークトティーガーに、今年の新2年生の野球ファンの子たちが6人でM3に乗ってること以外は一昨年と変わりなし。

思い返すとヤークトはびっくりしたなぁ。一昨年、大学選抜に勝って学校が存続して、これからもさあ戦車道がんばるぞ!って思ってたら西住先輩の家から送られてくるんだもん。

西住先輩の弁ではお母さまから優勝校として恥じない戦いを出来るよう、とのことで送られてきたらしいけど。

でも、このヤークトのおかげで戦術の幅がグンと広がったみたいで、西住先輩は少し複雑な思いもあったみたいだけど、ずいぶんありがたがっていた。

それに、私たちも戦車道を始めるときに月刊戦車道をみて乗りたかった戦車だったし。乗せてもらえるときはM3と離れることになるとはいえ嬉しかったな。

とまあ、思い出に浸ったそんなところで、全車両チーム名と乗員が決定!


まず、隊長車のあんこうチームが私たち。戦車はヤークトティーガー。

次がありすちゃん率いる島田流くまさんチーム。戦車はセンチュリオン。多分フラッグ車はくまさんチームが多くなるかも。

実力未知数ながら家元に大きな期待。珠美ちゃん達玉田流、シマリスさんチーム。戦車はⅠ号戦車C型。

もう3年連続の受講。ベテラン揃いに新加入一人のバレー部のアヒルさんチーム。戦車は八九式中戦車。

対外や政治面は毎年頼りの黒田さんたち生徒会、カメさんチーム。戦車はヘッツァー。

今年も整備、運転技術に大きな期待。2年生中心の自動車部レオポンさんチーム。戦車はポルシェティーガー。

ポル代さん、ポト美さんの3年コンビがひっぱる風紀委員3人のカモさんチーム。戦車はルノーB1bis。

毎年1人仲間を連れてくる、アリクイさんチーム。今年も筋トレしてムキムキになるのかな?ももがーさんも3年目で運転技術はかなりのモノに。戦車は三式中戦車。

私はあんまり詳しくないけど・・・。みんながセリーグ野球ファンの2年生うなぎさんチーム。戦車はM3中戦車 リー。

新入生4人組で、経済に興味があるらしい?カバさんチーム。彼女たちもソウルネーム持ちみたい。戦車はIII号突撃砲F型。

最後が戦車道の大ファン4人と、なんと熊本から大洗で戦車道をやりたくてやってきた西住流門下で昔黒森峰にいた赤星さんの妹、さくらちゃんを加えた5人。チーム名は私たちを継いでうさぎさんチーム。使用戦車は、去年まで西住隊長たちあんこうチームの使用車両。IV号戦車D型。

以上の11組11車で今年は頑張っていくことになる。


使用戦車とチームも決定したので、それじゃあ、明日から朝練をしていくので遅れないようにしてくださいとみんなに伝え今日のところは解散にした。

正直に言えば、新西住流と言われる西住先輩の作戦傾向は各校だいぶ研究してきているみたいだし、使用戦車も台数も心許ない部分はある。

それでも、やらないといけない。戦車道名門として、名声を保っていかないと。

いつまた一昨年のようなことになるか分からない。だから、やらないと。

あゆみたち5人には先にかばんを取りに教室に戻ってもらい、一人ガレージをみて、もう一度気合を入れてから、背を向け教室に戻った。

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とりあえず今日はここまでで。
また書け次第投下します。

ひらがな表記だからアイマスのあずささんかと思ったわ
さわずさちゃん漢字じゃなかったっけ?

あんま進んでないけど少しだけ再開します。

で、読み返したら>>13>>14の間1つ書き込み忘れ合ったんで差し込みます。申し訳ないです。

分かりやすいように前後2文重複させて差し込むので、よろしくお願いします。

おぉ、さすが頭脳も天才と言われるありすちゃん。1回あるだけの子を覚えてるなんて。
てゆーか、家元!?すごい、それならありすちゃんとか西住先輩クラスの選手かも!でも、手を挙げてるってことは何かあったのかな?

あずさ「えーっと、そこの子、お名前は?どうしたの?」

たまみ「わたし、玉田珠美といいます。実家が戦車乗りをやってまして。実家から私物の戦車持ってきました。なんで、一緒に入学した道江ちゃんと、乗りたいなぁって、思いまして・・・」

と、小さな声で言いながら隠れている女の子をゆび指した。なるほど、その子がみちえちゃんね。

周りでは今まで以上にざわつきが大きくなった。たしかにみんな西住先輩の活躍は知っての通りだし、お姉さんも高校時は指定強化選手、大学でも1年生から即選抜に抜擢されるなど西住流後継者として2人とも戦車道では知らぬ者がいない選手。
ありすちゃんに至っては元大学選抜隊長でその時には社会人チームを破るとかしちゃう最早日本代表のエースレベルの選手。

家元の選手と言えばこうした日本の宝と言える選手しか思い浮かばない。そんな中で今年も玉田流家元の子が来てくれたとなればすごい戦力だろうし、騒ぐのも無理ないよね。

しかも実家から戦車なんて!噂になってたのは珠美ちゃんで間違いなさそう。

あや「ねえねえ、その肝心の戦車は何持って来たの?やっぱりパーシングとかチャーチルとか?」

たまみ「そ、それは・・・」

といいながらグラウンド奥にそっと置いてある小さな戦車を指した。

妙子「んん・・・?あれもしかして・・・?」

ありす「・・・Ⅰ号C型ね」

以下から続きです。

>>21さんの疑問ですが、地の文の時は漢字、会話文の外と会話内ではひらがな表記ですると思います。すいませんがよろしくお願いします。


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必修が始まってはや1か月。1年生や初受講者に戦車の使い方を教えたり、隊列移動などの基礎的な練習をしつつ、各々課題を見つけては練習していたらあっという間に過ぎていた。

中でもうさぎさんチームとカバさんチームは分断されたときに各個撃破されないよう、ありすちゃんとのタイマンを中心に練習をしてもらった。

そのおかげか、まだまだ不安はあるけど十分試合に出れるレベルになったと思う。まぁ、1年生のころの私たちみたいな子がいないのもあると思うけどね。

特にジェンセンちゃん、トービンちゃん、ファーマちゃん、フレンチちゃんのカバさんチーム4人は金になる気がするんですよね、とニヤッと笑っていたのもあり凄く頑張っていたと思うし、十分な力が付いたように思う。お金パワー恐るべし!


逆にうさぎさんチームは、赤星さんの妹、さくらちゃんに対してはんなちゃん達4人がいろいろ聞いたりして頑張ってるのは分かるんだけど・・・。

どうも私だったりありすちゃんとの練習では舞い上がっちゃってる節があるみたいで、練習に集中できないときがあるのかな。練度の面から行くと、カバさんチームが1段上を行くカンジと私やかりな、あゆみたちの共通意見。

まぁ、私にサインねだってきちゃうはんなちゃんや、初日にありすちゃんにサインをねだっていた河内とまこちゃんがいるくらいだし仕方ないっていえば仕方ないと思うけどね。


そんな練習漬けの日々を送っていたある日、練習中ではあったけれど私とありすちゃんで生徒会室を訪れ、三役と相談を行っていた。

内容は、練習試合の相手について。

毎年この時期に練習試合をするのが通例になりつつあるけど、今では時期を問わず様々な学校から試合の申し込みが入るので、こちらから要請する必要もあまりなくなっていた。

それに、全国大会連覇中ということもあり、戦車道連盟の方からも積極的な試合参加がお願いされているみたい。

プロリーグのことや世界大会の開催に向けて、知名度や人気の向上へ一役買ってほしいってことだろうけど。

まあそれも無理ない範囲で受けていれば大丈夫だろうし、今回は時期もいいので一石二鳥とまではいかないけれどやって全く損もないので、どこと試合をしようかというのを相談に来たんだ。


会長「いらっしゃーい!まあ、座って座って?」

副会長「どうぞ、お茶です」

ありがとう、と言ってありすちゃんと二人ソファーに腰掛ける。

ありす「それで、練習試合の相手だけど」

書記「そうなんよ。来とるだけで、ホレ」

そういって書記の田中さんが持っていたメールをコピーした紙がバアッ、っと机の上に広げた。たしかにすごい数。20~30くらいありそう。


そこへお茶を人数分出し終えて腰を掛けた副会長も会話に加わってくる。

副会長「もうね、すごいんだよ?毎日1件くらいのペースで電話なりメールが来るんだから」

会長「それで、私たちもどうしようか迷っちゃってね。希望があれば隊長たちに聞こうと思って呼んだの」

あずさ「なるほどね。一応どんなチームがあるかメール、確認してもいい?」

そういって広げられた束を掴んで半分をありすちゃんに、もう半分を読んでいく。

うわ、強豪校から中堅校、聞いたことない学校までいっぱいだ!

聖グロ、黒森峰、プラウダ、アンツィオ、サンダース。
ボンブル、BC自由、知波単、継続、マジノ女子。
西呉王子、ベルウォール、ギルバート、竪琴。
etcetc…

その他諸々、すごいいっぱいの申し込みが来てる。


あずさ「どうしよっか。私としては、できれば強豪校とと試合して今現在の時点で全国のどのくらいのレベルにいるか確認しておきたいかなって思うんだけど」

ありす「私も賛成。1年生も強豪と試合して十分な試合ができれば自信になると思う」

会長「そうだね。それに、顔見知りも多いだろうからお互いやりやすいだろうしね」

書記「ほいなら、サンダースあたりはどうじゃろう?熱心にメールをくれるんじゃが」

あずさ「いいんじゃないかな。強豪だし、オーソドックスな作戦が多い印象だし、大会でも出てくる1対多数の場面の想定もできそう」

会長「それにグッドタイミング!たしか今ウチの学園艦も九州方面に向けて運行してたわよね。せっかくだし長崎で試合させてもらいましょう?」

副会長「そうだね。もし引き受けるなら早い方がいいけど、やっちゃう?」

あずさ「そうですね、じゃあサンダースと練習試合でお願いします」

書記「ほいで、形式はどうする?」

対戦校も決まり、トントンと話が進んでいく。手元に広げていたメールをありすちゃんのと一緒にまとめ、副会長に手渡した。


あずさ「そうか、それも決めないといけないね。私は全国に備えてフラッグ戦がいいと思うけど、みんなは?」

ありす「私も、フラッグ戦でいい」

会長「もう全国の抽選会も、もちろん大会も近いしね。二人の言うようにフラッグ戦にしちゃいましょうか」

書記である田中さんは議事録を書類にメモしていたが、それを聞くとさっと脇にメモ用紙を出して後で返信する際に必要な事項をまとめている。

すごい、今年の生徒会さんはみんな優秀そうだなあ。

書記「了解・・・。あとは、台数じゃのぉ。無制限にすりゃあ向こうは50でも60でも出せるが、どがにする?」

ありす「たしか決勝は20両まででしょう?じゃあ、20両出してもらいましょう?」

そう言ってからチラッ、とこっちを確認がてら見てくる。

確かに勝ちたいけれど、最終的な目標は全国制覇。それなら想定されうる不利な状況も体験しとかなきゃいけないよね。

それに私自身、まだ西住先輩みたいに不利な状況下での指揮に慣れてるわけじゃないし、出来ればやっておきたい。

そう思って、軽くうなずいた。


あずさ「私もその方がいいかな。決勝まで行けたら、やることになるし」

会長「じゃあ、決まり!私たちの方で日程とかやっておくから、二人は練習、先に戻っちゃっていいよ」

あずさ「オッケー。ありがとね、会長」

会長「いいって、いいって。お互い様だよ」

ありす「岡田も、お茶、ありがとう。おいしかった」

副会長「ううん、お粗末様」

書記「ほいじゃあ、練習の方、たのむわ」

そう言い合ってから席を立ち、ありすちゃんと二人で練習へと戻っていった。


翌日、生徒会のみんなから昨日の話し合いの正式発表を聞かされ、うさぎさんチームは有名校と会えるとこれまた喜んでおり、あんこうのみんなはやっぱヤバいよね、とかでも今年度の初戦だしがんばろー?とか言っていた。

試合は来週の日曜日に、あのハウステンボスでイベントも兼ねてやるとのこと。

正直に言えば、今のところ順調にきていると思う。1年生も昔の私たちとは違いしっかりと実力もつけてるし、軽戦車が1両とはいえ増えた。一昨年に比べれば状況は格段にいいはず。

研究されても、やれるところを。西住先輩がいなくても、やれるところを、見せないと。

残りの細々とした注意や、集合時間などを話している書記さんの声が、明瞭さを失いながらも耳の奥に残るように聞こえ続けていた。


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短くてすいませんが、今日はここまでで。
試合描写に入りますが少し難航しているので、次回投稿までに時間頂くかもしれません。
なんとか頑張ります。
それでは、今日はこれで。おやすみなさい

「今年の生徒会さん」はみんな優秀そうだなあ。

ええと、以前の生徒会は...

戦車道じゃなくても偵察行為は重要
偵察に必要なスキルを新入生に一から仕込むのはとても大変。
故に、偵察行為を重視している流派の存在は、
戦車道界では大変貴重と思われる。

でも、西住や島田ほど資金力はない。
その資金力がない理由は何か?
流派の教えが西住や島田程魅力がないから門下生が少ないとか?

その理由を今後の展開で描写していただければって話なんだけど。
長文すまん。

偵察行為を重視してるってことは、
偵察妨害とか欺瞞工作も得意そうな印象はある。

安西さんが中学時代まで門下生だったらとか思った

いや、まずお前何様だよと
別に作者がどう話を展開しようと勝手だろ

>>42
まあ一昨年は約一名頑張り屋さんだけどポンコツ入ってる広報の方がいましたし、
昨年は優秀じゃなかった可能性もありますし、
差別化する意図は無く、何の気なしにそう言った可能性もありますし

お待たせ?しました。
なんとか練習試合に目途付いたんで、投下していきます。

その前に、また差し込み忘れがあったんで一ヶ所失礼します。

>>7に1文忘れがあったんでその分差し込みます。慣れてなくてすいません。


昨年、全国大会決勝前に西住先輩から大会終了を持っての隊長交代が提案された。もちろん授業の一環なので練習や親善試合には参加するとのことではあったけど。

で、そこではまだ次期隊長は未定ながら、隊長車にあんこうチームの名前を引き継ぐことも決まった。

私たち下級生も自分のチーム名に愛着はもちろんあったと思う。

でも、2年連続で決勝へ進出したことや、前年の大学選抜との一戦で戦車道強豪校としての地位を確立しつつあり、学校の存続も戦車道ありきで決まったことも考えればその大黒柱であるあんこうチームの名前は消せないと、角谷元会長や前生徒会長、また西住先輩や冷泉先輩達あんこうチームも共通の意見だった。

それに、私自身やっぱり憧れはあったな。高校最高のチーム、あんこうチームの名前にも。ジャケットの背中に背負う、あのマークにも。

うさぎさんとお別れしたのも寂しかったけど。新入生の子たちがうさぎチームとして、活躍してくれればいいなって思う。

あと、本文の前にいくらか頂いた質問だったり意見にお返事をば。
励ましや応援くれてる方、ありがとうございます。大したSSでもないですが色んなご意見や応援貰えてうれしいです。励みにして書けるだけ書いてみます。

>>42さん。>>48さんがフォローを入れて下さったのがほとんどそのまんまです。
イメージとしてはガルパン本編で生徒会が有能だったんで次がダメかなー、くらいの意図で書きました。多分ほとんど本編には出てこないと思う設定ですが、もしご気分害されたらすいません。

>>45さん。自分の中ではほとんどおっしゃる通りです。たしかお正月のバルト9の舞台挨拶であった家元が裕福とは分からないという設定を使ってみたくて書きました。
そのなかでじゃあ裕福でないのは恐らく門下生が少ないとかだろう。その理由はきっと古臭いと言われる戦車道の中でも見栄えが悪いものだろうってな感じで決めました。でも、この設定を存分に生かす予定はあまりないです、すいません。

では、最後に本文に入る前にお願いを。

まず、戦車とかミリタリーとかあんま詳しくないんで、細かく突っ込まれてもダメかもです。見逃してやってください。
次に、練習試合の会場をハウステンボスにしました。行ったことないんでリアルさが欠けてたらスイマセン。
とりあえず、公式HPのマップに地名があるんで、詳しく本文読みたい方は1回開いてくださると状景が少し分かるかもです。
http://www.huistenbosch.co.jp/guide/map/map.html

では、長くなってスイマセン。本文に入ります。



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練習試合当日。

長崎の地に降り立った私たち。聞けば長崎には来たことがない人も多く、みんなハウステンボスに来たことでテンションがうなぎ上りだった。

その中で、一人野球ファンが集まってできた2年生ウナギさんチームの車長、緒方恋(れん)ちゃんは、ここが今村大瀬良の育った地かぁー、と変な感慨にふけっている。
うーん、野球ファンは良くわからないなぁ。

かりな「おぉー、ここがハウステンボス!バラがいっぱいできれーい!」

あゆみ「すごいね、外国に来たみたい」

あや「たしか、オランダの街並みを再現してるんだよね」

ゆうき「私もぉ、こういう雰囲気最高の場所にカレと一緒に来たーい」

あや「いや、結局出来てないじゃん・・・!」

かりな「お店もけっこうあるんだねー。あ、あそこ美味しそう!ねえ、試合終わったら食べにいこー?」


集合場所であるパレスハウステンボスに向けてゆっくり戦車を走らせながら園内を見て回る。今日の試合のことが十分に告知されているのか時折、頑張れよー、などアウェーにもかかわらず温かい声を掛けてもらえる。

ありがたいことに個人のファンもいくらかいるようで、あんこうチームでは私やかりな、あゆみ。他にはバレー部の河西さん、佐々木さんが名前を多く呼んでもらっているみたい。
中でもありすちゃんは別格の声援だったけどね。

しばらく海の傍の並木道を戦車所帯でゆけば、右折したところで大きな洋館が見えてきた。集合場所のパレスハウステンボスだ。

揃えて戦車を止めてから、みんなして戦車から降りていく。


みお「おぉー!」

はんな「すごーい、大豪邸だ!」

とまこ「・・・いや、家じゃないかと」

さくら「もぉー、みんな試合前だよ?」

と、装填手である桜川みおちゃんの歓声を皮切りに1年生たちうさぎさんチームは一層の盛り上がり。
車長のさくらちゃんは諫めながらもやっぱりきょろきょろと周りを見回しどことなく楽しそう。

でも、さくらちゃんの言う通り、試合前なんだ。


練習試合とはいえ、負けられない。
今日の試合については、月刊戦車道などの取材も入ると聞いている。

頑張ら、ないと。作戦も立ててある。しっかりとミーティングもした。
大丈夫、大丈夫・・・。

目を閉じて、頭の中にグルグルとまわるいろんな考えを、浮かんでは否定し、浮かんでは否定していた。

すると、突然肩口をトントンとつつかれた。

考えていたことが一気に霧散し、ビクッ、として左右を見回せば、さきが私の向こう正面を指している。

見ればいつの間にやらサンダース大付属の校章が付いている輸送車から見覚えのある顔が降りてきた。手を挙げながらこちらに向かって歩いてくる。


サンダース大付属の主将、3年生のサラさんだ。昨年主将のアリサさんの後を継いだ方で、ケイさんを彷彿とさせるような明るい方。その脇には今年の副将の2人が控えている。

こちらにもいつのまにか会長が隣に立っていた。うーん、抜け目ないなあ。

サラさんとは昨年の全国大会や小さな大会、練習試合含めてお会いすることがあったんだよね。まあどの強豪校とも、ではあるんだけど。

こうしたなじみをふと思いいるたびに、ああ大洗も戦車強豪校、と言われているんだろうなと思うことが多い。

サラ「ヤッホー、あずさ!久しぶり」

あずさ「サラさん、お久しぶり。元気でした?」

握手を求められたので私と会長、2人とも手を交えてからそう聞くと、うん、元気元気!と力こぶを作って答えてくれた。

いつも元気で、彼女からはパワーをもらえるような気になるのでライバルとはいえこうした交友を深める機会は個人的にも嬉しいな。


サラ「そういえば、ありがとね、試合引き受けてくれて!大洗のみんなと試合ができるって、ウチの子みんな張り切っちゃって」

会長「ううん、ウチもそろそろ試合したいねってあずさちゃんと話してたし、丁度九州も近かったから。それより、こちらこそ返事がギリギリになっちゃってごめんなさいね」

サラ「全然オーケイ!こんないい人たちのお相手なら、前日の申し込みだってオッケーしちゃうわよ」

と、軽口を交えつつ3人でいくらか世間話をしてから、じゃあ今日はお互い頑張りましょう、と再度握手をしてサラさんはサンダースの戦車が控える駐車場付近へと輸送車で戻っていった。


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試合開始直前、最後のミーティングを私たちは行っていた。

あずさ「それじゃあ、最終確認をします。今回のハウステンボスは、水路が多く離れ小島が連なったような形状なので恐らく1対1で各個撃破を狙う私たちにやりやすい地形と思います」

と言えば、みんな手元のマップを見てふんふん、と頷いている。

あずさ「まず、展望台タワー前の2つの橋にレオポンさんチームとカバさんチームの三突、その横を私たちあんこうチームが張ります。裏側の小橋を落としてから、タワーを背にしてタワー方面に来た敵をたたきましょう」

1度頭に入れている作戦なのでみんなも確認がとりやすいみたいで、経済好きのカバさんチーム車長ファーマちゃんはオーケーボスと言い、自動車部レオポンさんチームの車長、タカハラさんもリョーカイ、とサムズアップ。

かりなが今日はあんまり出番なさそうだなー、と言ってる以外はあんこうチームの面々も大丈夫そう。


あずさ「次いでタワー左側にアートガーデンとして土地が開けていますがそこからの大量の戦車流入は防ぎたいです。なのでたまみちゃんたちシマリスさんチームと、アヒルさんチームで先行。右に折れてアムステルダムシティ方面への誘導を願います。」

アヒルさんチームは元気よく、シマリスさんチームはか細い声とのんびりした声で各々了承の返事。

あずさ「さらにかもさん、アリクイさん、うなぎさんの3両は先行2両を追い、交戦しつつ右へ折れ、こちら側に来ようとする後続車を追撃させるようしてください」

私が指示を出しては、さらに続けていく。

あずさ「うさぎさんチームはアムステルダムシティをスリラーシティ方面へ直行して待機。誘導されてきた戦車を狙ってください。難しいけど、頑張ってね!」

私が激励の言葉をかけるとはんなちゃんがはいぃ!と大きな返事。他のみんなも緊張でガチガチ、ってことはなさそうで一安心。

あずさ「カメさんチームはヘッツァーでタワー左側アートガーデンを遊撃。できる限り交戦は避け、その車両をアムステルダムシティ方面へ流してください。その後、誘導各車は連絡を密にし、敵車両を分断できるよう各ジャンクションを折れ、敵をタワー前に引きずり出すように逃げてください。」

会長がはーい!と言った後、誘導車に指定されたチームのみんなもはい、と返してくれた。この辺も事前の打ち合わせ通りだし大丈夫そうかな。


あずさ「最後に、フラッグ車のありすちゃん達くまさんチームは序盤はパレスハウステンボスに待機。戦車がお互い減ったところで敵フラッグ車を1対1で叩いて下さい。ただし、序盤にも何車かそちらに行く可能性もあるので奇襲含めて注意をお願いします」

ありす「うん。3両までなら私たちだけで問題なく倒せる」

あずさ「ではさきいか作戦、みなさん頑張っていきましょう!」

ありすちゃんの言葉に頼もしい、と言って笑った後に作戦名を言うと一同から微妙な空気を感じ取った。いい作戦名だと思うんだけどなぁ。

でも、そのあとの掛け声に合わせてみんながおー!と声を出してくれ、戦車に乗り込んでいった。

指示の確認を終わってふう、と軽く一息ついてから、ゆうきにお疲れー、と肩を叩かれながら私も戦車に乗り込んでいった。

その様子を上空からでも審判団が見ていたのか、乗り込むなり、数分もたたずに試合開始!と大きなアナウンスが鳴り響いた。

さあ、頑張ろう――――!


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試合開始の合図とともに門を抜け、ありすちゃん達くまさんチームを残し10両で並木道を進んでいく。

まずあんこうチームが右へ折れ待機場所へ。その後みんなで橋を渡った後、先行5両がアートガーデン、庭園の小道を川沿いに走っていった。

ヘッツァーに裏の小橋を壊してもらい、タワー裏の広場で待機してもらう。アートガーデンは2本道が並行して走っている。

で、どちらかのを抜けてくる車両がいたなら待機している私たちあんこうチームの正面かその広場通るので、そこで叩くか一度組入ったアムステルダムシティ方面に誘導して、叩きやすくして、叩く。

そのための準備、タワー正面の2本の橋にレオポンさんチームとカバさんチームがスタンバイ完了。


私たちもタワー横スロープを登り切ったあたりに待機。間もなく、IV号うさぎさんチーム、通信手の堀美都(ほり みと)ちゃんから連絡が入った。

みと「こちらあんこうチーム、待機完了です!」

ゆうき「りょーかーい。敵が来ても、慌てずにね」

みと「はい、了解です!」

これで問題なく陣はひけた。しかし安心するまもなく、先行組から連絡が入る。

たまみ「こちらシマリスチーム、敵シャーマンを発見。発砲後、右折し誘導に入ります」

普段のオドオドとした様子とは打って変わって、明瞭な報告をしてくれる。それを皮切りに、次々と報告が入る。最初に来たのはバレー部あひるさんチーム、新入生で通信手となっている谷田木綿(たにだ ゆう)ちゃんからの連絡。


ゆう「先行車、3台のシャーマンを連れて直進。アヒルチームで後続との間に入ります」

ポル代「かもチーム、アヒルチームとの間に3両挟み追走します」

浜絵「うなぎチーム、さらにかもチームとの間3両を入れて追いかけます!」

あすにゃん「えと、アリクイチーム3両から砲撃を受けてます。右方向への展開が難しいので後方へ戻りますぅ」

あずさ「全車了解。アリクイさんチーム、砲撃を受けないように蛇行しつつ後退。あんこうの前に敵を釣り出してください」

あすにゃん「はぃー」

ドン、ドン!と、発砲音が近づいてくるのが聞こえてくる。


あずさ「あゆみ、初撃で決めて。かりな、3両来るから初弾後後退、タワーに隠れて。装填後に様子見て前進ね」

あゆみ「任せて」

かりな「あいあーい!」

あすにゃん「到着しますぅ」

あずさ「・・・今!」

ドン!という轟音の後、白旗が上がった。同時に後退する。

上手くいってよかった。あと2両!


あすにゃん「残り2両の、うち1両を連れてヘッツァー側に行ってますぅー」

会長「リョーカイだよ!えいこ、準備!」

書記「了解じゃあ!」

会長「・・・撃破!やったぁ!」

あずさ「アリクイさんチーム、再度前進して発砲お願いします。気を引いて、その隙に私たちで仕留めます」

ももがー「了解ぞなー」

何発か撃ってきたがこちらの予想通りタワーに阻まれ私たちまで届かない。
アリクイさんチーム通信手のあすにゃんさんが、発砲・・・、コッチ、向いたすぅ。と言うと同時に前進して急停車。その間にあずさが仕留めた。さすがだな。


これで11対17。しかし息つく間もなく次の報告が入り続ける。
日本一広いテーマパークといえど、戦車道をやるにはやや手狭だしね。

たまみ「シマリス、大通りを抜けてまもなくタワーシティ前です。右、左、どちらに行きましょうか?」

左にはポルシェティーガーの待機する地点と、奥にはありすちゃん。
あまり多くは行かせたくないけど、最悪途中で折り返してもらえば大丈夫かな?

それに、今年の大洗の核は間違いなくありすちゃん。3両くらいなら、撃破してもらわないと大会ではきっとマズイことになる。

あずさ「先頭シマリスさんのみ左折、残りは右折で願います。レオポンさん、3両の最後尾を狙ってください。ありすちゃん、最大3両までならそちらに向かわせます。危険ですが、なんとか落としてください」

ありす「こちらくまチーム、了解」

その他からもインカムから返事が聞こえ、シマリスさんチームが通りを抜けて肉眼でも・・・見えた!


シマリスさんチームの左折後、3両が右に。後続アヒルさんチームが右折、敵後続は・・・右折!よし!

あずさ「シマリスさん、奥のパレスまで直進。くまさんに敵を引き渡して下さい」

右折した車両たちはそのまま対岸の川沿いをもといた地点に向け走っていく。大洗の3両を、サンダースがそれぞれに3両つける形。

そこへ向けまず三突が最後尾を砲撃するも・・・外す。ついで車体を転換したあんこうから同じく最後尾へ砲撃。・・・入った!撃破3両目。さすがに砲手として屈指の実力と言われるあゆみ。至近での静止射撃ならほとんど外さない。

その間にもまた報告が入る。レオポンさんチームが左折した車両のうち1両を撃破。2両を引き連れてくまさんチームの待つパレスハウステンボスへシマリスさんが向かってるらしい。

こちら側は形変わって先頭アヒルさんチームはそのまま、台数が1-3-1-3-1-2の形で2周目に入っていく。そろそろ敵も動いてくるころかな。


あずさ「誘導車は2周目に入ってください。うさぎさんチーム、誘導車からの連絡を聞き、砲撃出来たら打っちゃってください」

はい!と言う、みとちゃんの元気な声が聞こえる。

さらにシマリスさんチームがくまさんチームのもとへ到着。2両を撃破したとの報告が入った。

これで11対14。この調子でいければ・・・!

あずさ「シマリスさん、くまさんは場所が割れています。まだ見えない5両に注意して、森を抜け大外を回ってアドベンチャーパーク方面へ展開してください。アリクイさん、カメさんはアートガーデンから敵始発点の駐車場、フラワーロード周りの索敵を願います」

と言ったところで、別の声が流れてきた。1年生、うさぎさんチームだけど。なんかちょっと変・・・!?

さくら「こちらうさぎチーム。やりました!1両撃h・・・ああっ!!?」

ゆうき「どうしたの?うさぎさんチーム、応答を・・・!?」


ポル代「こちらカモチーム、走行不能、撃破されました・・・」

浜絵「うなぎチーム、同じく走行不能です・・・!」

あや「えぇっ、なに、どうしたの!?」

ゆうき「みんな、落ち着いて?どなたか報告を」

みと「こちらうさぎチーム、敵シャーマンを1両撃破したものの、先頭のアヒルさんのすぐ後続を倒してしまって、後ろが詰まって止まってしまい、追われていた各車がやられちゃってます・・・!すいません!」

さくら「っ・・・!アヒルさんチームを追っていた残りの後続2両、こちらに来ま・・・キャアァっ!」

みと「すいません、うさぎチーム、走行不能です・・・!」


しまった・・・!確かに撃っていいとは言ったけど絶対最後尾だと指示をしてない・・・!1年生だし、初の実戦。もっと細かく指示すべきだった・・・!

これで1両撃破したものの、3両やられて8対13。

でも、まだ、負けてない。切り替えなきゃ。

あずさ「みんな、落ち着いて!大丈夫、このペースなら、勝てます。カバさん、レオポンさんは前進し橋を渡って残り7両と交戦しましょう。私たちがアートガーデン側から入って挟み撃ちしま・・・っ!?」

またしても失敗に気付く。スロープ下には、さっきの・・・!

かりな「だめっ!スロープ下、撃破した2両が邪魔で進めない!」


私の指示を聞くや否や動きだし、もう三突、レオポンは橋を渡りきり交戦準備に入ってる。それなら・・・。

あずさ「かりな、カバさんのいたウチら寄りの橋から渡って、左折。そのあと右折で回り込もう」

かりな「あいっ!」

かりなに指示すると、すぐに移動してくれる。

しかしそこへまた情報が入ってくる。生徒会チームからだ。

会長「こちらカメ、フラワーロードの風車付近に4両発見。現在対岸にいます。フラッグ車もいるよおぉぉぉ!?」


瞬間、ゴーンッ、という轟音。これは・・・。

副会長「ゴメーン、やられちゃったぁ・・・」

書記「でも、フラッグ車はまだ動く気配はまだなさそうじゃ」

あずさ「カメさんチーム、ありがとうございます!大丈夫ですか?」

大丈夫ー、と3人の声が聞こえるので一安心。残りの7両に合流されると厄介かも。ここはありすちゃんに任せる、か。

あずさ「では、残っているくまさん、シマリスさん、アリクイさんでフラワーロードを目指してください。こちらで残り7両を引き付けておきます。負担掛けるけど、ありすちゃん、お願いね!」

ありす「任せて」

頼もしい。不利ではあるけど、シマリスさんを囮にしつつアリクイさんが支援すれば十分戦えるはず。


指示をしているうちに、回り込んだ位置へ到達したんだけど・・・。正面に敵車両と、何かが2つ横たわってる・・・!

あそこ、まさか!

フレンチ「こちらカバ、3方向から囲まれた・・・。1両は仕留めたが致命傷、走行不能だ」

トービン「シット!こんな下振れリスク、想定外だ!」

3方向・・・。3両?じゃあ、もしかして・・・!

あずさ「レオポンさん、状況を!すぐに!!」


タカハラ「こちら、レオポン、正面からあひるさんとごっつんこしちって、あひるさんはそのまま撃たれてKO。2両と対峙してたら、脇から2両来て・・・っ。1両はこっちも撃破したんだけど。ゴメン、もう持たないか・・・っっも!」

間もなく、自動車部4人のごめんねーの声が聞こえてきた。

優勢火力、ドクトリン・・・!
物量と火力で優位な状況をつくる、サンダースの、十八番だ・・・。

でも、呆けてる暇はない。

あゆみが、梓ぁ!と声をあげてくる。こちらもあゆみの意図を組み、今!と声を出す。

瞬間、轟音と共に正面の1両から白旗が上がった。引き付けないといけないのは、残り、4両・・・!

かりなぁ!と、声をあげれば、あいあいあいー!と、意図を組んでくれる。大通りに向かい、その後右折し大通りへ進入。正面を見れば、その4両が揃ってる。

4両中2両の至近弾を、かりなが躱してくれた。装填が終わり、初撃、命中。


この距離のヤークトティーガーの1撃。白旗があがる。

インカムから、情報。残りの3両でフラワーロードへ突入準備が完了。許可を出す。

次発装填までが、長い。

敵の初撃は残り2発・・・、まずい、もらった!?

ゴーンと痺れる車内。あゆみが次発を何とか撃つも、外れる。

次の1発。そして、さらに2発。とうとう、白旗が、あがった。


私たちの脇を通り行くシャーマンを目に、ごめんなさい、あんこうやられました。3両そっちへ行った!と叫ぶ。

ありすちゃんが了解、というのが聞こえた。

そのまま車内にいても仕方ないので外へ出ると、みんなも出てきた。みんなで手をつなぎ、祈る。

そして数分が経ち、アナウンスが流れてきた。



サンダース大付属の、勝利、と―――。




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今日は、とりあえずここまでで。
私事になりますが、明日からだいぶ忙しくなるので投稿頻度がガクッと減るかもです。ご了承ください。

では、おやすみなさい。

ちょいとだけ書けたんでまた投下するです。
あと、>>72の最初の最初の行、 3両が右に。 は左です。スイマセン



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最後、4両のうちフラッグ車を除く3両をありすちゃんたちは撃破。しかし、こちらからかけつけた3両がありすちゃんを囲み、それらを倒している隙を狙い最後の最後まで姿を見せなかったファイアフライがセンチュリオンを対岸の入場ゲート脇から狙い、あたってしまったという。

悔しくて、呆然としてしまって。

試合後にサラさんと会話したような気もするが、あまり内容を覚えていない。
たしか、全国でもいい試合云々だった気がする。

その後は、サンダースの皆さんのお誘いを断り、さらにはあんこうのみんなの誘いまで断って、一人園内の海辺のベンチに座ってた。

反省や自責が、浮かんで、浮かんで。

喧騒を背に、ずっと海をボヤっ、と眺めていた。


どれくらい時間がたったのか。気が付くと、隣に。

に、西住先輩!?

みほ「こんにちは、あずさちゃん」

あずさ「こ、こんにちは。どうしてここに!?」

みほ「実家に用事があって。ありすちゃんとメールしてたら、今日の試合のこと、教えてくれたの。それより、ひどいよ、あずさちゃん。20分も隣にいたのに気付かないなんて?」

あずさ「ご、ごめんなさい・・・」

まあ、確かに西住流は自家用ヘリくらい普通に持ってそうだから、帰省もあまり苦じゃないのかも。
あと、ちょっと顔を膨らませる先輩、なんか可愛いな・・・。


しかし、やはり話題はそこへいってしまう。

みほ「試合、見てたよ?惜しかったね」

あるいは、一番見てもらいたくなかった人に、見られていた。それを実感させる内容へ。

あずさ「いえ、全然・・・。私、判断、ミスしてばかりで・・・。なんで倒した後のことを考えてなかったとか・・・。ポルシェティーガーと三突、合流、させればよかったとか・・・。敵の作戦、何かなとか、もっと、考えればとか・・・」

恥ずかしくて、悔しくて。
話していて、自然と涙がこぼれてきた。


あずさ「ファイアフライ、なんで見えないんだろうって・・・。報告の段階で、1両足りないって・・・っ!しっかり、1年の子にも、指示っ!出しとけば、とがっ・・・!!」

うんうんと、そっと抱き寄せられる。
涙があふれてきて、とまらない。

勝てた試合なのに。こんなんじゃあ、新西住流とか、いわれちゃ、いけないのに。

みほ「うん・・・。そうだね。でも、今気が付けたから良かったんだよ」

涙が止まらない私を、なおも抱きしめながら続けてくれる。
海風が少し肌寒い中、人肌で温まっていく感覚。


みほ「大洗に来て、最初はね、私は相手のことを見るばっかりだった。それで、ダージリンさんにも負けちゃったしね」

あはは、と苦笑いする先輩。
話を、嗚咽を漏らしながら聞く。

みほ「でもね、少しずつみんなのことが分かるようになって。そしたら、どうすればいいかな、こうしたら面白いかも、とか思いつくようになれたんだ。だから、今日みたいな作戦をいきなりできたんだから、あずさちゃんはすごいなぁ、って」

はい、はい、と。
私は泣きながら頷くことしかできない。

みほ「だからね、今度は周りを見てみたらどうかな。きっと、ちょっと、背負いすぎてるんだよ」

少しおどけながら、回していた手を今度は肩にやり、軽く揉んでくれる。


そういえば、考えすぎて自分の中に入っちゃってることが、多くあったかもしれない。

周りを良く見て、そこから考えを広げていく。
そういうのが、隊長になってからできてなかったのかも。

みほ「無理して私にならなくてもいいの。今は昔と違って、良い戦車も増えてきたんだし。だから、相手によってはあずさちゃん、ありすちゃんとレオポンさんで強く当たっていくのもいいかもね」

少しずつ落ち着いてきて、考えられるようになる。
西住先輩の話で、たくさんのことに、気付かされる。


みほ「わたしね、大洗に行けて本当に良かった。戦車道って、楽しいなって思えて。大洗だけじゃない。みんなと一緒にやれて、ほんとにほんとによかったなって。だから、あんまり無理しないで、戦車道を楽しんでくれたら嬉しいな」

そうだ・・・。
一昨年も、去年も、試合が終わった後、隊長たちやみんなが、お互いの健闘をたたえあっていた。

だからこそ、大学選抜とのあの試合。
いろんな学校から、本当に多くのみんなが駆け付けてくれて。そうじゃないと、絶対に勝てなかった。

あんなに手強かったライバルたちが、すごく頼もしかった。
あの時敵だったありすちゃんは、今、最高の仲間になってる。

相手を認め、試合を楽しむ。
それだけの、ゆとりを持てなきゃいけないって。
そう、伝えてくれてる気がする。


あずさ「せんぱい。ありがとう、ございます」

嗚咽も少しおさまり、落ち着いた心持ちで答える。

試合の後、サラさんにも悪いこと、しちゃったな。

みほ「ううん。あずさちゃんが、少しでも楽になれたなら良かった」

にっこりとほほ笑む先輩。

ああ、叶わないなぁ・・・。

いつか、追いつけるのかな。


その後、少し世間話をした。
大学の授業の事、戦車道の事。最近の大洗のこと、新入生の事。

聞けば、私を探しに来るときにうさぎさんチームのみおちゃんに会ったそうで、サインを求められたという。
さらに、側にいた美都ちゃんにはお姉さんのまほさんのサインをもらってきてくれないかと頼まれたとのことで、今度郵送するから渡してあげて、と言われた。

OGとはいえ少し遠慮が無いんじゃないかとは思ったが、これも彼女たちなりに戦車道を楽しんでる、ってことなのかな。


しばらく会話に興じていると、遠くではんなちゃんの隊長ー!という声が聞こえた。
振り返れば、サンダースの輸送車に乗ったうさぎさんチームとあんこうチームのみんな、サラさんがいた。

でも、今は私が、隊長だから。
目の前の先輩に、追いつかなくちゃ。

あずさ「じゃあ、そろそろ行きます」

みほ「うん。頑張ってね」

私もこの後、ありすちゃんとボコショップに行くのと笑う西住先輩に、ぺこりとお辞儀をして、心の中でもう一度感謝を述べてから、みんなのもとに駆け寄っていった。


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すいません、今日はここまでで。

1週間ぶりです。
遅くなりましたが、少しだけ書けたんで投下します。



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某日、第65回戦車道全国高校生大会の抽選会にやってきた私たち。

流石に連覇中ということもあって取材の数など注目度は高いみたい。
ここでも他校の子や戦車道ファンの人にサインをねだられることがあったけど、さすがに段々と慣れてきた。

チームのみんなは後方の席に着き、隊長であるくじを引く役の私は最前列へ。
普段から連絡を取り合う他の学校の子たちとあいさつを交わしながら開会を待つことしばし。偉い人のあいさつで開会した。

くじを引く順番は、昨年優勝校の引く、一番最初。初めて上る壇上に試合とは違う緊張感を感じる。

引いたクジは・・・7番!ラッキーセブンで縁起が良さそうかな。


引き終わり、ざわめきの残る会場内を歩きチームのみんなが陣取る席へ。
私のために一番通路側の席が空いており、そこに腰を掛ける。

かりなやあやがお疲れー、と声を掛けてきたので、うん、もうグッタリと冗談を言うと、もう、と笑いながら突っ込んでくれる。

しばらくして、全チームの抽選が終了。

ただ、クジ番号とは違ってあまりラッキーとは言えないかな。

初戦は、強豪のプラウダとになっちゃった。
昨年は隊長とエースのカチューシャちゃんとノンナさんが卒業したこともあり屈辱の2回戦敗退。

昨年に引き続き隊長を務めるニーナちゃんは、汚名を雪ごうと猛練習を課してるという話だし、所有戦車は高校戦車道界でも有数の台数と屈指のレベル。

まだ台数に差の出ない初戦で当たったことは僥倖と言えなくもないが、苦戦は必至かも。


他にも準決勝では2年連続で決勝を戦っている黒森峰。
決勝では先の練習試合で敗北したサンダースや、ペコちゃんの率いる優勝候補の一角、聖グロのどちらかが予想される。

ただ、簡単に勝てる相手なんてそうはいないし、私たちは私たちにやれることをやるだけ。

抽選会終了後に、ニーナちゃんによろしくねと挨拶をしてから、会場前でチームみんなで円陣を組み、えいえいおー、と勝ち鬨をあげて学園艦に戻った。


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トーナメント表と、それに伴い初戦の対戦相手も決まったが、ここまで忘れていた問題が噴出した。

現在、大洗女子のチーム数と保有車両数はどちらも11。
しかし、1回戦・2回戦の出場可能車両は10両。

つまり、どこか1チームが試合に出ないか、チームを解体し乗員の足りてない戦車に乗り込んでもらうことになる。

それを協議すべく、お昼休みを利用し各チームのリーダーと生徒会三役、あんこうチームの全員が揃い次戦に向けてのミーティングを兼ねて生徒会室に集合していた。


副会長「それで、どうしよっかー」

書記「難しいのぉ。戦車道が大洗で復活して初めてのケースじゃけぇ」

会長「たしかこの前試合したサンダースとかは、1軍2軍3軍って分かれてるんだよねえ。ウチにはそういうの無かったからねぇ」

うーんと悩む会長を筆頭とした生徒会の面々。誰か何か言わなければ進まないと思ったのか、ありすちゃんが顔をあげ考えを述べ始める。

ありす「私は、練度の低いチームを解体して乗員に足りてないところに入れるべきだと思う」

すると、堰を切ったように意見が飛び交い始める。
ありすちゃんのこういうとこ、すごいな。年下だからとか言い難いとか、そんなの関係なく今必要なことが見えてて、その通りにしてる、そんな気がする。

ももがー「でも、かわいそうぞなー・・・」

妙子「でもでも、スポーツにもそういうのはよくあるよ!」


喧々囂々、みんながみんないろいろな意見を言っている。
私としても、ありすちゃんの言うこの方向性が1番分かりやすいし、加えてチームを解体しても試合に出場はできる。

考えを巡らせながら、周りの大声に紛れ込ませ小声で横に座るあゆみの意見を窺う。

あずさ「あゆみ、どう思う?」

あゆみ「私はこれがベターな選択じゃないかと思うよ。試合にはみんな出れるし、解体する理由も明白。しかも、より練度の高いチームの動きを見ることで個々人がレベルアップできると思うし、各車の人手不足も解消される。1両減らすという条件下では、一石三鳥、四鳥まであると思う」

あゆみがうまくまとめてくれた。同意見で、私もこの方向への自信が持てる。

あずさ「そうだね、私も同感」

固まって座っていたあんこうの他の面々もうんうん、と頷いている。

会長とありすちゃんに目配せすれば、大声の響く中でも私の動向を見ていたらしく、2人も軽く頷く。

意見は、決まった。


あずさ「みんな、聞いて」

すこし低めの声を意識し、落ち着いた声を張った。

あずさ「ありすちゃんのいう案で、行こうと思う」

何人かいた異論派も、もう決まったかと気を新たに真剣な顔もちで聞いてくれる。

会長「それで、どこを解体するの」

この方向の、肝。
どこを解体するか。


しかし、以前ありすちゃんとも話した通りだし、この前の練習試合を見ても感じている。
・・・恐らく、私だけでなく。本人たちも。

あずさ「・・・うさぎさんチームの各員を乗員の足りないチームに配備。火力を考え4号にはあひるさんに乗ってもらい、89式を今回は出しません」

話し合いが始まってからずっと俯いていた、うさぎチームの車長、さくらちゃんに向かって言う。

あずさ「午後の練習の際に配備先は伝えます。このことは練習前のミーティングで・・・」

さくら「わかりました!チームのみんなには伝えておきます!1回戦、頑張りましょうね!」

言葉を言い切る前に、笑顔でさくらちゃんは割って入ってそう言った。

少しみんなもほっとしたのか、決めるべきことも決まりそのまま穏やかな雰囲気でみんなは解散していった。


私と生徒会の三人、ありすちゃんは配備先を決めるのであんこうの他のみんなには先に教室に帰ってもらい、私もそのことを決めてから帰る途中だった。

ふとガレージの方を見ると、何人か集まっているようでそれが気になり校庭側の方へ足をやると、そこにいたのはうさぎチームの面々だった。

しかし、みんな目には涙を浮かべ、さくらちゃんに至っては嗚咽が止まっていない。

会議でずっと俯いていたのは、上級生に囲まれていたからだけじゃない。
きっと、気付いてたんだ。こうなるんじゃないかって。

だから、何も言えなかった。
勝つためには仕方ないと分かりつつ、それでも自分たちで出れない悔しさ。

そんなものを押し殺してたんだと思う。

最後に笑って答えたのも、チームの雰囲気を慮ってのことだろうな。


そんな光景をみて、なんと言っていいか分からず、それでも脇から出て声を掛けようとしたら、後ろから肩に手をやられた。

ビクッとして振り返ると、バレー部あひるさんの面々。肩に手を置いていたのは忍ちゃん。

あけびちゃんが首を横に振りつつ、妙子ちゃんが向こうに聞こえないように言う。

妙子「さっきも言ったけどね、スポーツではよくあることなの」

忍「レギュラーになれなかった、悔しさ。中学ではよく見かける光景だった」

木綿「でも、こういう時、勝者が声を掛けちゃだめなんです」

あけび「きっと、これをバネに強くなってくれるよ」

そう言われ、頷いてからそっとバレー部のみんなと一緒に下がっていった。


勝っていけば、準決勝からはうさぎさんとして出てもらえる。
そこでは、きっと活躍してくれる。

ごめんね、と思いつつ。必ず勝って、活躍の舞台を用意する。

なじみの、あのうさぎが飛び跳ねるのを、私も見たいから。

そう思った後、バレー部のみんなにありがとう、と一言言ってから午後の始業が近づいていることを指し示す時計を見やり、足早にみんなの待つ教室へと帰った。


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すいません、今日はここまでで。
あとは私事ですが、仕事が忙しいのと資格試験が迫ってるんで週1回~3週に1回くらいのゆったりとした投下になると思います。のんびりですいません。
内容は、次から全国大会に入る予定です。
それでは、今日はこの辺で。おやすみなさい。

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