『ガルパンSS』 ミホコ (30)

ブゥゥゥゥゥゥン!

優花里「前方島影なし……そろそろ見えてくるはずなんですけどねぇ」

華「仕方がないとしか……Ⅳ号は元々海を移動するために造られたものでは
  ありませんから……M(マッハ)ヘリのようにはいきません」

沙織「まぁまぁ、北ウール大陸みたいな遠い場所じゃなくて良かったじゃん。
   数時間程度で行けるんだからまだまだマシな方だって。
   それよりみぽりん、バロン諸島まではあとどれくらいかかるの?」

みほ「地図を見るにもうすぐ近くまで来ているはずです……麻子さん。
   このままずっと直進でお願いします」

麻子「わかった……しかし、水上を走行するのはなかなか難しい」

沙織「そりゃそうでしょ。黒森峰や大学選抜チームとの試合でもこんな所走らなかったし。
   そも戦車で海を渡ったのって歴史上でも私たちが初めてじゃないの?
   って、つまり私は歴史上初めて戦車で海を渡った女子高生ってことになって、
   これを機に世の男性たちからモテモテに……やだもー!」クネクネ

麻子「また沙織の妄想が始まった……どんな猛獣が出るかも分からないのに
   こんな所でカロリーを使うな」

華「うふふ……そこはⅣ号を空も飛べるように改造して下さった自動車部の
  皆さんに感謝しませんと」

優花里「とはいえ冷泉殿でなければいきなり海上を走ることはできなかったと
    思いますけどね………あっ!西住殿見えてきました!
    バロン諸島最南端の島、ババリア島ですよっ!」

みほ「うん、何だか薄気味悪い……。
   でも、あの島にいるんですね。今回のターゲット……」

みほ「ガララワニが………」



第1話「最高級の、ワニ肉です!」



・ガールズ&パンツァーに某大人気グルメ漫画の要素で味付けしたSSです。
・キャラの性格の崩壊はないと思います。
・作者の駄文『みほ「そろそろ仕送りのお金が入ってるはずだよね……」』の
 世界観を踏襲しています、というか一応続編です。
・作者は納豆が好きです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459030511

~ 数日前 ~


あんこうズ「「「「 学園が廃校になるかもしれない(ですって)(でありますぅ)~~~!!!???」」」」

麻子「……むにゃ」zzz

杏「いやぁ~~……実は、そうなんだよねぇ」

桃「うぅ……せっかく苦労して廃校を免れたというのに……。
  今度こそもう駄目だよ柚子ちゃぁぁん………」メソメソ

柚子「桃ちゃん泣き止んで……でも、さすがに私も泣きそうかも……」

みほ「どうして……だって大学選抜チームにも勝って、今度こそ廃校は
   撤回されたって……!」

沙織「また文科省のメガネがちょっかい出してきたとか!?」

華「それは黙っているわけにはいきませんね……この上は私の暗殺術をもって、
  秘密裡に処理してしまえば……」

優花里「五十鈴殿、そう早まらずに…。しかし、どうしてまた廃校の危機に?
    西住殿のおっしゃる通り、我々は苦労の末に大学選抜チームを下して
    この学園艦に戻ってくることができたのです。
    一体どんな理由でまた廃校などと……」

杏「いやぁ~それがねぇ。大学選抜チームに勝って学園艦に戻ってきてから、
  祝勝パーティ開いたでしょ?」

みほ「ああ……私たちのためにわざわざ『転校』までしてきてくれた
   お姉ちゃん……その他の学校の戦車道チームの人達を招いて開きましたね」

沙織「楽しかったよねぇ!沢山の御馳走を用意してさ!
   水産科や農業科の生徒さんたちが食材を一杯調達してきてくれてさ!」

華「栄養科の方たちがそれらを調理して下さったんですよね。
  とても美味しかったです」

杏「そうそう、でもね……その調達してきた食材ってのが問題でねぇ……」ハァ

杏「例えば…あのパーティで出てきたサラダに、キャベツ入ってたでしょ?」

麻子「あぁ……確かアーモンドみたいな独特の味と食感がしたな。美味しかった……」ムクリ

沙織「あ、麻子起きたんだ。でも、それがどうかしたの?」

杏「あのキャベツ……『アーモンドキャベツ』っていうんだけどさ。
  一玉のお値段……なんと八千円なんだよねぇ」

みほ「は、八千円……!?キャベツ一玉が!?」

優花里「あのパーティではそのキャベツがたっぷり入ったサラダが大皿に盛りつけられて
    ましたから……」

杏「うん、あのキャベツだけで実は十万以上使ってたんだよねぇ」

麻子「マジか…………」ガクゼン

杏「それだけじゃないよ。色んな種類の握りずしが並べられた皿もあったと思うけど、 
  その中に蟹の身が乗っかったお寿司あったでしょ」

華「はい……私も食べましたが、普通の蟹よりも身がプリプリしていて甘くて、
  とても感動したのを覚えています」

杏「あれって『ルビークラブ』っていう超高級食材らしくてさ……。なんとそのお値段、
  一匹あたり二百万円」

沙織「ひぇえええええええええええ?????」

みほ「た、確かあのパーティでお寿司のお皿は十皿以上あったから……」

杏「栄養科の連中、他の料理にもそのルビークラブをふんだんに使ったみたいでさ。
  掛かったお値段は……三千万は下らないんだよね……」フゥ

桃「うわぁーーーーーーーーーーーーーーん!!!」ビービー

杏「他にも挙げだしたらキリがないんだけど……チョビ子。
  アンツィオの連中がノリと勢いでどこからか大量の食材を持ってきたじゃん?」

優花里「は、はい……私も食べた鉄板ナポリタン………ペパロニ殿が出店を一瞬でセッティングして、
    皆に振舞っておられましたが……それにも?」

杏「あの鉄板ナポリタンさぁ……上にトロトロの朝採りの卵のスクランブルエッグをかけるじゃん?
  その卵ってのがさ……『ニワトラ』っていう猛獣の卵らしくてさ、超高級食材らしいんだ。
  何でも巷では一個、数百億円の値が付くらしいんだよね………」

みほ「す……数百………億っ!??」クラッ…

桃「」ブクブクブク……

柚子「桃ちゃん目を覚ましてぇ!!」

沙織「桃ちゃん先輩、寝たら死ぬぞっ!」

桃「桃ちゃん先輩言うなっ!!ダンクスマッシュ喰らわせるぞっ!!」クワッ

麻子「あ、起きた」

杏「…コホン。まあ実際はそこまでの値はつかなかったみたいだけど……連中の高校貧乏だからさぁ。
  持ってきた食材の請求書、ウチの名前で切ってたんだよねぇ。
  その金額見てさ、思わず目の玉飛び出そうになったよ………」タハハ……

みほ「あの会長が力なく笑ってるの、初めて見ました……」

沙織「私なら卒倒してると思うから、やっぱり大した人だよね……」

優花里「ここまでくると、アンツィオが大洗を合法的に潰しにきたようにしか思えないであります……」

杏「連中に悪意は微塵もないんだよ……。ただ、あいつら食にかけては命かけてるところあるからさ。
  廃校を免れたって、それに自分たちも貢献したんだって……その熱はチョビ子たちのノリと勢いを
  暴走させるには十分だったんだって」

華「もはや金額の高い低いすら判別できないほど、興奮してらっしゃったというわけですか…。
  ただ私たちを労いたい一心で……」

沙織「だからってまた廃校寸前に逆戻りじゃ意味ないじゃん!!」

杏「そうなんだよねぇ~~~~~」ゲッソリ


柚子「正直その総額は学園予算を全てつぎ込んだとしても、到底返せない額なの…」

桃「というか、既に支払期日の迫っている領収書が山のようにあってな……」ブルブル…

みほ「そんな……何とかならないんですか!?せっかくここまで頑張ってきたのに…!
   こんなことで廃校だなんて……!私にできることなら何でもします!」

杏「西住ちゃんならそう言ってくれると思ってたよん」ニコッ

柚子「皆さん、お手元にある資料を見てください」

華「先ほどから気になっていたんですが……この1ページ目に写っている
  大きなワニ…さん、ですか?これは一体……」

桃「調べてみたところ、『ガララワニ』というワニらしい。
  物凄く獰猛だが、その肉は最高級のブランド和牛にも匹敵するほどの
  脂のノリと旨みがあるらしい」

沙織「えっと……それはいいんだけど……。
   会長?この物凄く獰猛なワニの資料なんか用意して……もしかして、だけど……」

杏「うん、捕まえてきて」アッサリ

優花里「い、いやいやいや!この資料によるとぶっとい鉄筋さえ割り箸みたいに
    へし折るって書いてあるんですけどっ!?私たちでこれを捕獲するんでありますか!?」

麻子「これを捕まえて市場で売るっていうことか?」

杏「いんにゃ。これは正式の依頼……国際グルメ機関(IGO)からのね」

みほ「確か世界的にも有名な国際機関ですよね……何でそんなところがガララワニを欲しがるんですか?」

杏「何か近々大きなグルメパーティを開くらしくてさ…そのメインディッシュに使いたいんだって」

麻子「だがIGOならば専属の美食屋(びしょくや)をたくさん囲っているだろう…何故私たちが捕まえる必要が…?」

杏「いやぁ、それがね……実はIGOに所属する美食屋ではガララワニを捕えることができなかった
  らしくてさぁ」

桃「ガララワニの『捕獲レベル』……獲物を仕留める難度は『5』。そこらの美食屋では
  逆に返り討ちにあってしまうらしくてな」

杏「それでガララワニを仕留められる美食屋を高額の報酬で雇ったらしいんだけど……。
  何とその美食屋、せっかく仕留めた獲物を現地で食べちゃったらしいんだよねぇ」

みほ「た、食べた!?依頼された獲物をですか!?」

杏「私もIGOの人から聞いただけなんだけど、何でもガララワニにひっついてたヒルだけ
  持って帰ってきたらしいよ」

華「そ、それは随分……豪胆な方ですね」

優花里「豪胆というか……ただ食いしん坊なだけというか…」

柚子「それで慌ててIGOが各所にガララワニ捕獲の見積もり依頼を出して……会長が
   その依頼を勝ち取ったというわけです」

優花里「キロ単価20万……これは安いのか高いのか分かりませんね…」

杏「う~ん、ガララワニを食べちゃった美食屋が捕獲を引き受けた値段がこの丁度倍だから、
  プロの美食屋からしたら不相応な値段なのかもねぇ」

桃「いえ、会長がIGOの方と懇意にして下さっていたからこそ、他社と同額になったと情報を
  教えて頂けたんですし、会長はここ最近この依頼を勝ち取るために一睡もせずに
  動いてくださっていたじゃないですか!不相応な値段なんて誰も言いませんし言わせません!」

みほ「この書類には最低でも500キロの個体を捕獲って書いてありますよね。
   それが先方からの条件なんですか?」

杏「うん、その個体であれば一億で引き取ってくれるんだって」

麻子「差し迫って用意するべき金額は一億で大丈夫なのか?」

桃「一億あれば、とりあえず期日が迫った支払いはクリアできるんだ。
  それでも焼け石に水なのには違いないのだけどな……」

沙織「みぽりん、どう思う?このガララワニっていう猛獣、捕獲できると思う?」

みほ「う~ん、このデータを見る限り、お母さんやお姉ちゃんよりも遥かに弱そうだから、
   私たちであれば仕留められるとは思うんだけど……」

麻子「問題はどうやってガララワニが生息している島まで向かうか、だな」

華「バロン諸島……私たちのいる学園艦からかなりの距離があるみたいですね…。
  このまま学園艦で向かうのですか?」

柚子「ううん…この問題は一般生徒には全く知らせてないから、この艦で行くのは無理。
   もし情報が漏れでもしたら大パニックになるだろうし、ね」

杏「かといってサンダースのスーパーギャラクシーや黒森峰のヘリを借りるのもねぇ。
  どこから情報が漏れるか分かったもんじゃないし、大学選抜チームとの戦いで
  一杯借りを作ってるから、これ以上頼るのも気が引けるし」

優花里「というかバロン諸島の上空には怪鳥がうようよしてるって書いてありますから
    空からの上陸は難しいのでは?海から行こうにもバロン諸島の周りは
    バロンフェンスと呼ばれる岩礁が取り囲んでて、正しいルートを進まないと
    上陸できないみたいですし……」

桃「……その点は問題ない。実は数日前から自動車部に依頼を出していてな。
  貴様らの乗るⅣ号を、水上、水中、さらには飛行も可能になるよう改造してもらっている」

優花里「ちょっ!!何勝手に改造してるんでありますかっ!?
    ここ数日点検中とか言って戦車に乗せてくれなかったのはそういう理由があったからですか!?」ガタッ

柚子「ごめんね…でも外部になるべくこの情報を出さずに、しかも乗り物を借りるっていう手間を省くことも
   できてその賃料を払う必要もない方法っていったら、もう自前でそういった乗り物を用意するしかなかったの」

杏「秋山ちゃんたちが怒るのも無理はないと思ってる。
  だけど今は我慢してほしいんだ。この請求書を全てなくすことができたら、元の戦車道だけの
  Ⅳ号に戻すから……お願い」

沙織「そこまで言われたら……私たちはもう、何も言えないよね」

華「ええ……もうそれについて抗議している場合ではないのですから」

優花里「むぅ………皆さんがそうおっしゃるなら……私も我慢するであります……」ブスッ


麻子「一番近い支払の期日はいつ頃なんだ?それまでにⅣ号の改造は間に合うのか?」

桃「直近の支払期日は一週間後。戦車の方はあと二日…いや、三日はかかると思う。
  自動車部も不眠不休で改造に当たってくれているが、 
  あまりにカスタマイズ内容が高度だし、材料もすぐには入ってこなくてな」

華「空も飛べるというのは魅力的ですが…それだけの改造、かなりお金も掛かったのでは?」

杏「それは事前投資と思うしかないねぇ。今は苦しくなっても後々になってからのメリットは
  計り知れないんだから。…西住ちゃん、かなり無茶な事を言ってるのは承知の上なんだけど。
  今回君だけが頼りなんだ、君たちの規格外の力を見たことがあったから、この問題が
  発覚したあともすぐにこうして対策に乗り出すことができた」

みほ「会長……私とお姉ちゃんの戦いを……見て……」

杏「できれば戦車のカスタマイズが終わったら早々に出発してほしい。
  行き帰りの時間、捕獲に要する時間、IGOにガララワニを引き渡す時間。
  それらを総合して考えた場合、正直時間に余裕は全然ないから」

みほ「…カスタマイズしたⅣ号だったら、ここからバロン諸島までどれくらいで
   着くんですか?」

桃「半日もあれば到着できるはずだ」

みほ「……わかりました」フゥー

みほ「沙織さん、華さん、優花里さん、麻子さん。再び大洗に危機襲来です!
   私たちは何としても、今までの皆の頑張りを無駄にしないためにも、
   このピンチを乗り切らないといけません!
   ガララワニは、私たちがそれをクリアできるかの、試金石になるはずです!」

みほ「作戦名は、『わにわにぱにっく作戦』です!それでは……」

あんこうズ「「「「「 パンツァー・フォー!!!!! 」」」」」

~ 現在 ~


優花里「Wow wow wow 戦車を食え~♪」

華「Wow wow wow ミホコ~♪」

沙織「Wow wow wow ボコを食え~♪」

みほ「み、皆さん一応今から行くのは危険指定区域なんですから…そんなにリラックス
   しないで……。麻子さん、会長から貰ってるルート通りにバロンフェンスを抜けて下さい!」

麻子「わかった…少し揺れるから注意しろ……」


ブゥゥゥゥゥゥン!!


みほ「こんなに複雑な岩礁、予め会長たちが入島のルートを調べてくれて
   いなかったら抜けられなかったかも。
   こんなにしてもらったんだから、ちゃんとガララワニを捕獲しないと…あれ?」

フライデーモンキー「…………」

みほ(あれって…確かフライデーモンキー?
   一生を洞窟で暮らすっていう臆病なお猿さん…なんでこんな岩礁に?)


キキィーーー!

麻子「着いたぞ、ここがバロン諸島の入り口……鬼の口だ」

優花里「おぉ……まるで私たちを導くようにマングローブが
    左右にひしめいていますね…何だか地獄の入り口って感じです……」

華「えぇ……野生の世界特有の純粋な殺気がそこら中から浴びせられてきます。
  まるで戦場の中にいるかのような緊張感ですね…」ビリビリ

沙織「みぽりん、ここからはどうするの?」

みほ「麻子さん、このまま鬼の口を突っ切ってください。
   陸地に上陸したら陸戦モードに」

麻子「分かった」ブゥーーーン

~ バロン諸島 ~


華「ついに来ましたね……バロン諸島に」

麻子「ここからはモタモタしていられない…。残された時間は
   少ないのだから」

みほ「その通りです、皆さん気を引き締めてください。
   今回の目標は500キロ級のガララワニです。
   Ⅳ号はさらに強化された特殊カーボンのお蔭で核爆弾すら
   耐えられる仕様になりましたから、この中にいる限り
   怪我を負うことはありませんが……」

沙織「弾を打ち込むわけにはいかないもんね…身が弾け飛んだら
   可食部が減っちゃうもん」

優花里「なるべくガララワニの原型を残したまま納品するには、
    やはり私たちで接近戦をするしかないということでありますが……っ!?」


バロンタイガー「」グルルルル………


沙織「こいつ………確か『バロンタイガー』だよね。
   捕獲レベルは…3。
   どうするのみぽりん。私たちなら仕留められる猛獣だけど…」

優花里「バロンタイガーは食用としては価値がありませんが…。
    毛皮や牙は装飾品として高値で取引されてるはずです」

華「どうしましょうみほさん、少しでも足しにするために
  タイガーさんも仕留めておきましょうか?」

みほ「…………ううん、お腹が空いてるのならともかく、
   毛皮や牙のためにこの仔の命を奪うのは……私は好きじゃないです。
   お母さんやお姉ちゃんからは、綺麗事をって怒られちゃうかもしれないけど…」

麻子「……いいんじゃないか?それが西住さんなのだから」

沙織「うんうんっ!私たちはみぽりんの指示に従うよ、何回も言ったじゃん!」(^_-)-☆

みほ「有難う……皆さん。そうと決まれば……」ガチャッ

バロンタイガー「」グワッ!!!

みほ「通してくださいねっ?」キャルン

バロンタイガー「」(´Å`)モキューン

優花里「おおっ!バロンタイガーがどっか行っちゃいましたよ!
    西住殿のお願いは猛獣でさえ拒めないってことですね!」

麻子「さしずめ食願っていうところか…。相手を威圧することなく
   戦意を失わせるとは…恐れいった」

みほ「あはは……そんなに凄いことじゃないと思うんですけど…。
   でも、バロンタイガーはバロン諸島の湿原の奥に住む猛獣のはず…。
   それが島の入り口付近にいるなんて……」

沙織「会長の前情報……やっぱり当たってたみたいだね、みぽりん」

みほ「うん……麻子さん、このまま進んでください。
   多分……そんなに時をおかずに、接触できるはずです……ガララワニと」キッ

~ 回想 ~


杏「西住ちゃん、今回のターゲットのことだけど…先に依頼されていた美食屋が
  仕留めたガララワニは…300年以上生きている寿命の延びたガララワニだったんだって」

みほ「300年……でも、それがどうしたんですか?」

杏「最新のIGOの研究データによると……300年以上生きているガララワニは
  その個体だけじゃなくて、どうやら複数個体いるらしいんだよね。
  そのせいでバロン諸島の生態系が狂って大変なことになってるんだって」

みほ「…もしかして、ガララワニって年齢とともに強さも変わってくるっていうことですか?」

杏「正確には食欲や獰猛さが比例して強くなるらしいんだ…。
  通常の500キロ個体のガララワニは平均寿命の150歳くらいらしいんだけど、
  恐らく西住ちゃんたちの出逢うであろうガララワニも…平均寿命を
  遥かに超えた個体である可能性は高いってこと」

みほ「会長………」

杏「お願いしてる立場でこんな事言うのも責任感ないって
  思われるだろうけど……」

杏「十分、気を付けて行ってね」


沙織「みぽりん、あんまり顔出さない方がいいよ。さっきからⅣ号に何か
   当たるような音がしてるから」

みほ「あっ、その理由はこれです。バロンヒル」つヒル

優花里「うぇっ!?や、やけに大きなヒルでありますなぁ。
    西住殿、素手で持って大丈夫ですか?」

みほ「うん、それは大丈夫。ちゃんとしっぽのほう持ってるから。
   これが木から落ちてきて、Ⅳ号の装甲にへばりついてるんですよ」

麻子「車内に入ってこなければどうでもいい……」

みほ「それは大丈夫だと思います。カスタマイズによって猛獣がまき散らす
   毒ガスをも遮断できる特殊フィルターで隙間を覆ってありますから。
   よほど力を掛けないとヒル程度じゃ入ってこれないです……あれ?

アンコウマーク「」ドクドク……

みほ(アンコウのマークから血が……?
   ううん、そんなわけないよね。きっとバロンヒルが吸い付いて
   塗装が剥がれただけだよね)

みほ「……あれ?麻子さん、どうしたんですか?
   こんなところで止まって」

麻子「………あそこの茂み、何かいる」


ヘビガエル「」ヒョコ


優花里「あれは…『ヘビガエル』。捕獲レベル1のカエルですね。
    あんな見た目でもその肉はとても美味しいらしいです」

華「まぁ、それはいいですね!もうすぐ夜になりますし、そろそろ
  夕飯を探さないとと思ってたところです!」

みほ「うん、今日の夕飯はこの子にしましょう。
   そうと決まれば……ヘビガエルさん」

ヘビガエル「?」

みほ「貴方を食べさせてくださいねっ?」キラッ

ヘビガエル「」ブチッ!!

ヘビガエル「」

沙織「ふぇ~、舌を噛み切って死んじゃったよ……。
   みぽりんのお願い、恐ろしいねぇ……」

麻子「まあ、そのおかげで労せずして獲物が手に入ったんだ。
   レーダーによるとこの先に開けた場所があるみたいだから、
   そこでキャンプするか」

みほ「そうですね、ガララワニは夜行性ですから…。
   ではそこで食事をとって、今日は早めに休みましょう……よいしょ」つヘビガエル

沙織「美味しそうだねぇ。早速お米炊いて、こいつは丸焼きにして
   食べちゃおう!」

麻子「お~、丸焼き……楽しみ」ゴクッ

みほ「あ、麻子さん。そんなに飛ばさないでぇ~~~!」

ヘビガエル「」パチパチ……

沙織「ん~~~っ、ヘビガエル美味し~~~っ!
   脂がこんなに滴ってるのに少しもくどくない!
   肉の味は淡泊なのに、噛めば噛むほど味が出てくる~!」モグモグ

華「はい、納豆ご飯にとても良く合います!」ガッガッ

麻子「…ごっくん。おかわり」スッ

沙織「はいはい、ご飯は大盛りで…納豆はパック?わらづと?大粒?小粒?」

麻子「わらづとの小粒で。ネギと卵入れて」

沙織「はいはい、からしもたっぷりとね」

優花里「西住殿……会長の話によるとガララワニは自身の口の中に飼っているバロンヒルを
    ばら撒いて、獲物の血の匂いを辿って捕食するって聞きましたけど…。
    私たち戦車の中にいるからガララワニも気付きにくいんじゃないですか?」ナットウモグモグ

みほ「う~ん、でも戦車の音を響かせてるし……ここに来るまでにⅣ号の装甲がヒルで覆われて
   しまっていますし、まず見つかってると考えていいと思います……あ、納豆ご飯大盛りで。
   プレーンで大丈夫です」スッ

沙織「はいはい、ちょっと待ってね~~…………っ!
   みぽりん………」

みほ「はい、気づいてます。皆さん、一旦食事の手を止めて下さい。
   後ろの沼……何か、出てきます!」

沼蛇「ギャーーーーーーーーーーーーーース!!!!!」ザバァッ

華「この生物は……!」

麻子「確か……捕獲レベル5の『沼蛇』。強さよりも沼の中での発見の難しさから
   捕獲レベルが高めに設定されているやつだったはずだが……」

沙織「うん……何か様子がおかしいよね」

沼蛇「」ズゥーーーーン

沼蛇「」

優花里「に、西住殿……。この沼蛇、体の中ほどを食いちぎられてますよ。
    しかもこの傷口の大きさ………」


ズゥン!


みほ「うん、この大きさは資料にあった500キロ級を遥かに超えるサイズ……」



ズゥン!!



みほ「本当は明日の朝に本格的に捕獲に入りたかったけど……先手を打たれてたみたいです……そうですよね?」



ズズゥンッ!!!



みほ「ガララワニさんっ!!」クルッ



ガララワニ「」グルルルル………


華「ついに姿を見せましたね……物凄く固そうな皮膚。
  私の武器がはたして通るかどうか……」

優花里「ものすっごいサイズですねぇ。少なくとも800キロくらいありそうですよ」

麻子「随分興奮しているな……目の前に獲物がいるから、か?」

沙織「私たちを食べる気満々みたいだね……みぽりんどうする?
   全員で取り囲んでボコ殴りすればよさそうなレベルみたいだけど…」

みほ「……いえ、あんまり殴りすぎると肉が潰れて味が劣化する可能性があります。
   皆さんはⅣ号に戻ってください。私が、相手をさせていただきます」

沙織「…いいの?多分ここまで気性が荒いやつにはみぽりんのお願いも効かないかも
   しれないよ?」

みほ「話し合いでどうにかなるとは最初から思っていませんから。
   今回は初めてのハントで、絶対に失敗できないんです。
   獲物の価格が下がる要素は、1%でも下げておきたい……!」

華「……わかりました、みほさん。貴女を信じます」シュッ

優花里「危なくなったらすぐに駆けつけますから!頑張って下さいね、西住殿っ!」ドンッ!

麻子「……しっかりやれ。私も、西住さんを信じてるから……」シュバッ

沙織「皆に全部言われちゃったけど……みぽりん!私もみぽりんのこと信じてるから、 
   サクッと終わらせちゃってねっ!」ダッ

みほ「皆さん、有難う………。さぁ、ガララワニさん。
   300年もの間、バロン諸島の王者として君臨してきた貴方を。
   今日、この場所、この時間に仕留めさせていただきます。
   私の……西住流の………いえ。西住みほとしての『力』でっ!!」

みほ「ぬぁっ!!!」ボボンッ!!! メキメキメキ!!!


ガララワニ「っ!」ブワッ




ナレーション「西住みほが戦闘態勢に入った瞬間、バロン諸島に生きる生物たちは一斉に島を離れる。
       それはその戦闘に自分たちが巻き込まれるのを恐れたのもあるが……。
       世界的に大人気である西住みほの筋骨隆々の姿を見たくないという本能から
       きた部分が大きい」

ナレーション「ガララワニの逃走を止めたもの……。
       それは300年もの間命の危機に相対したことがなかった……ことではなく、
       彼が同性にしか性的興奮を覚えない変態だったからだ」

ナレーション「ここ最近、バロン諸島のガララワニの平均寿命が伸びている理由もそれであり、
       他の常識的な性感情を持つガララワニたちからは彼らの存在は忌避されている。
       なぜならただでさえ繁殖能力が低いガララワニという種族にとって、
       変態である彼らはそれに貢献する気が一切なく、ただ食べて、精力をつけて、
       同性の雄を襲うだけの暴れん坊だからである」

ナレーション「なのでガララワニたちにとっても、長寿の変態をハントしてくれる美食屋は、
       さしずめ救世主のような存在なのであった」

今日は遅いので終わります。
明日の夜、気力が残ってたら続きを書かせていただきます。
…待って下さる人がいるかは、知りませんが。


みほ「私のこの姿を見ても逃げ出さない生物を見たのはいつ以来でしょうか。
   沙織さんやお姉ちゃんを除けば、お母さんとエレナさん以来でしょうか…。
   そんなバロン諸島の王者である貴方に敬意を表して…私も見せてあげます」スッ…

みほ「私の……私だけの、『武器』を……!」グワッ!!

ガララワニ「!!」

沙織「うわっ……ガララワニが一瞬で臨戦態勢になったよ。
   Ⅳ号の中にいる私たちでも身震いが止まらないもんね……!」

華「しかし……みほさんの『武器』とは一体何なのでしょうか?
  やはりあの巨大化を活かした肉弾戦でしょうか?」

優花里「私たちとの戦いでも殴る、蹴る以外の技は使っていなかったように
    思いますが……でも、西住殿の手の形……あれは空手の
    『熊手』や『虎爪』のように見えますが……」

麻子「西住流古武術は日本だけでなく世界のあらゆる武術の達人を
   結婚相手として迎え入れ、進化し続けてきた『最古』にして『最新』の
   古武術……空手の型を取り入れていたとしても何らおかしくはないが…」

優花里「あっ!!ガララワニが西住殿に突進していきましたよっ!!」

沙織「みぽりんっ!!」

みほ「コォオオオオオオ………………」

みほ「ボコフォーーーーーーーーーーーーーーーク!!!!!」ズドォォォ!!!

ガララワニ「」ゴフッ

みほ「ボコナイーーーーーーーーーーーーーーーーフッ!!!!!」ズバンッ!!!

ガララワニ「」ズゥウウウウン……

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