理樹(今日は10時に起きた。休日だから助かったものの、いつもなら学校のこともあるし7時には起きるはずなんだけどいったい何で生活バランスが崩れたんだろう。昨日は鈴と初デートに行ったからその緊張が何かに関係したのかもしれない)
理樹「どっこいしょ……っと?」
理樹(ベッドから起き上がると全身に違和感が走った。動くたびビリリと痺れるような感覚だ。……筋肉痛になっている)
理樹「……………」
理樹(昨日の行動を振り返ってもそこまで激しい運動はしていなかったはずだ。電車に乗って街の定番スポットをぐるりと回っただけだし…まあ、そんな気にすることでもないけど)
理樹「……とにかく顔を洗おう」
洗面所
理樹「………っ!!」
理樹(今日はやけに変なことが多い。しかし、中でもこれは今までよりとびきり異常性が高く、また恐怖心も煽られた)
”誰も信用するな”
理樹(歯を磨いている途中で袖に水がかかってしまった時のことだった。ふと肩まで濡れた袖を捲ろうとすると自分の肘から手首の間にこんな文字が書かれてあったんだ)
理樹「な、な、な……」
理樹(いつの間に書かれていたんだろう。おそらくボールペンが使われていると思う。その荒々しい文字から緊迫した状況、または精神状態で綴ったに違いない)
理樹(ただひとつ分かることは、自分で書いた記憶は一切ないということだ)
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理樹(僕は恐ろしくなって石鹸を掴むと必死にその文字を消そうとした手でその文字が書かれている場所を何度も必死に擦っていると次第にインクがブレて薄くなっていき、終いには端から見られても自然なくらいまで落ち着いた)
理樹「ハァ…ハァ……」
「何やってるんだ?」
理樹「うわぁっ!?」
理樹(なんとか冷静になろうと思った矢先に声がした。慌てて飛び上がったがよく考えるとその声の持ち主は僕がよく知る人間だった)
恭介「おいおい、本当にどうしたんだ…」
理樹(恭介だ。まったく驚かせてくれる)
理樹「なんだ恭介か…急に話しかけてこないでよっ」
恭介「何事も話しかけなきゃ始まらない。それに鏡で俺の姿くらい見えたんじゃないか?」
理樹「ま、まあ…それも…そうだね」
理樹(腕のサインを消すのに必死でそこまで頭が回らなかった)
恭介「それにしても随分と遅い起床じゃないか。たまにはいいがそれが癖になって寝坊なんてやめてくれよ?」
理樹「いざとなったら真人に起こしてもらうよ」
理樹(とにかくこのことは他人に喋らないようにしよう。もう消しちゃった後だし変人と思われたら嫌だ)
理樹「ところで恭介はなんでここに?」
恭介「なに、朝飯で鈴にヒゲが伸びてるって注意されちまったもんでね」
理樹(そう言うと恭介は右隣の鏡の前に立ってポケットからカミソリと小型のシェービングクリームが入ったスプレー缶を取り出した)
理樹(時間も時間だったので食堂にはカップケーキや羊羹など朝から食べるには微妙なものばかりが残っていた。空腹にあまり甘い物は食べたくないけど、かと言ってなにも買わないわけにはいかない)
理樹(食堂はどうせがらんと空いてるし庭で日向ぼっこでもしながら食べよう。運よく西園さんがいたら話し相手にでもなってくれないだろうか)
……………………………………
来ヶ谷「身に覚えのない筋肉痛か。似たようなケースに神経痛などがある…が、普段の君を見ている限りそんな心配はないと思う」
来ヶ谷「他にもストレスで同じ症状が起きるらしいが1週間跨いでも同じ痛みが生じるなら病院で診てもらってもいいだろう。その時は私がよい医者を紹介してやる」
理樹(西園さんは居なかったけど代わりに来ヶ谷さんがベンチでコーヒーを啜っていた)
理樹「ありがとう。その時はまた相談するよ」
来ヶ谷「うむ、お姉さんに任せろ。……ところで理樹君。さっき鈴君からもし君を見かけたときにと伝言を預かっている」
理樹「鈴が?」
来ヶ谷「正午に屋上に来いとのことだ」
理樹「何の用だろう……」
来ヶ谷「さあな。とにかく確かに伝えたぞ」
理樹(何か用があるなら携帯を使えばいいのに。寝ているかと思って気を使ってくれたんだろうか)
理樹(それにしてもあの文字はいったい誰のいたずらなんだろう。寝てる間にあんな堂々と書けるわけないし……)
理樹(探偵小説の主人公なら手がかりを元に推理するんだろうけど僕の場合はそれ自体を消しちゃったから推測もなにもない。実害らしい実害はないしもうさっさと忘れることにしよう)
理樹(それより今は鈴からの呼び出しだ。身に覚えは全くないが関係あるとすれば昨日のデートだろうか)
理樹(お昼のランチ、映画の内容、モンプチのセール。どこを取っても鈴を不機嫌にさせる要素があったとは思えない。ちゃんと鈴も喜んでいてくれたように見えたし)
理樹(そんなことでうんうん唸っていると屋上に続く窓に着いた。1人で悩んで真相にたどり着くより本人に直接聞いた方が早そうだ)
理樹「よいしょっ……」
理樹(窓に止めてあるネジは既に外されてあった。よく今日まで先生に見つからないもんだ)
理樹(スタッと外に着地した。すると横から影が伸びているのに気付いた)
理樹「来たよ、鈴…」
理樹(振り向こうとした瞬間だった。その影の持ち主が僕の首を絞め上げ、更に抵抗出来ないようしゃがんで僕の体勢を崩した。確か…こういうの……チョーク…スリ……)
「…………………」
皆さんお待ちかね!謎のメッセージに戸惑いつつも鈴の呼び出しで屋上に来た理樹。しかしその先には恐ろしい罠が待ち受けていたのです!
次回「裏切りの来ヶ谷」
お休み(∵)
メメントのシーンに憧れたのは認める
明日になるとキッパリ言ったばかりなのに…スマン、ありゃ嘘だった
再開
……………………………………
理樹(最悪の気分で目覚めた。血脈が鼓動を刻むたびに頭がズキズキする。それからしばらくしてやっとのことで他のことに注意を向ける余裕が出てきた)
理樹「………………っ」
来ヶ谷「や、お目覚めかな?」
理樹(前から来ヶ谷さんの声がした)
理樹「ん……う……う、うー!?」
理樹(眼を開けると彼女がこっちを見つめていた。そして状況を説明してもらおうとすると色んなことを悟ってしまった。まず1つは口がテープかなにかで塞がれていること。もう1つは身体も縛られていること。最後は僕の制服を来ヶ谷さんが持っていることだ)
来ヶ谷「どうして?と、聞きたそうな顔をしているな。どうせ忘れてしまうんだから説明は無駄だ。しかし君だって訳も分からないまま、されるがままと言うのも納得がいくはずもあるまい」
理樹(そう言いながら来ヶ谷さんは僕のシャツのボタンを順に外していった。抵抗したいところだけど鉄柱に両手両足が完全に固定されてしまっている)
理樹「うー!!うーー!!」
来ヶ谷「かといって理樹君の置かれている状況が理屈に合うかと言われればそうでもないな。それもこれもみんな理樹君が可愛すぎるのが悪いんだ」
理樹(ジャイアニズムを匂わせながら順調に僕の服を剥いでいく来ヶ谷さん。前々から怪しい言動こそあったけどこんな直接的ないたずらをする人だったか!?)
来ヶ谷「私は君を裏切らないよ。何故なら”それ”が誰の記憶にもないということはその世界で”それ”は起きていないということだからね。私は君を裏切っていない」
理樹(そう言いながら僕の身ぐるみをほとんど剥ぐと来ヶ谷さんの魔の手が僕を………)
理樹「ん……んんんーーーーっ!!!」
………………………………………………
…………………………
………
理樹「………ひぐっ……うぅ……」
理樹(汚された……今は手足は縛られていない。しかし逃げようという気力もなくなっている。男としての尊敬が横で悠々とコーヒーを啜っている女の子の手によって散らされるのは再起不能になるには充分な理由だったからだ)
来ヶ谷「男の子だろ?そう泣くなよ」
理樹(地面にうずくまっている僕の背中を優しくさする来ヶ谷さん)
理樹「い……い……いったいなんでこんな……」
来ヶ谷「……夢の中で夢と自覚してしまえば誰だって普段出来ないことをやってしまうはずだ」
理樹「なにを言って……」
来ヶ谷「『森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い』」
理樹「!!」
理樹(来ヶ谷さんの発した言葉で僕は強烈なデジャヴュを覚えた。そして思い出した。こういうことが過去何度も繰り返されてきたことを)
理樹「あ…あ…あ……」
来ヶ谷「ふふ…おやすみ」
理樹(今の詩を聞いてから僕のまぶたは急激に重くなっていって…………)
……………………………………………………
理樹(今日は10時に起きた。休日だから助かったものの、いつもなら学校のこともあるし7時には起きるはずなんだけどいったい何で生活バランスが崩れたんだろう。昨日は鈴と初デートに行ったからその緊張が何かに関係したのかもしれない)
理樹「どっこいしょ……っと?」
理樹(ベッドから起き上がると全身に違和感が走った。動くたびビリリと痺れるような感覚だ。……筋肉痛になっている)
理樹「……………」
理樹(昨日の行動を振り返ってもそこまで激しい運動はしていなかったはずだ。電車に乗って街の定番スポットをぐるりと回っただけだし…まあ、そんな気にすることでもないけど)
理樹「……とにかく顔を洗おう」
洗面所
理樹「ガラガラガラ……ぺっ」
恭介「ういっす」
理樹(恭介がやってきた)
恭介「随分と遅い起床じゃないか。たまにはいいがそれが癖になって寝坊なんてやめてくれよ?」
理樹「ははっ、いざとなったら真人に起こしてもらうよ」
恭介「それもそうだな」
理樹「ところで恭介はなんでここに?」
恭介「なに、朝飯で鈴にヒゲが伸びてるって注意されちまったもんでね」
理樹(そう言うと恭介は右隣の鏡の前に立ってポケットからカミソリと小型のシェービングクリームが入ったスプレー缶を取り出した)
理樹(時間も時間だったので食堂にはカップケーキや羊羹など朝から食べるには微妙なものばかりが残っていた。空腹にあまり甘い物は食べたくないけど、かと言ってなにも買わないわけにはいかない)
理樹(食堂はどうせがらんと空いてるし庭で日向ぼっこでもしながら食べよう。運よく西園さんがいたら話し相手にでもなってくれないだろうか)
……………………………………
西園「身に覚えのない筋肉痛……それはきっと筋肉痛と症状の似た別の病気ということもあるかもしれませんね」
理樹(予想通り西園さんがいた)
理樹「うーん…それは嫌だな」
西園「今は様子を見てもよろしいかと」
理樹「そうだね。ずっと痛みが取れないようなら保健室にでも行ってみるよ」
理樹(たまにはこんな感じでのんびりいるのも悪くない)
西園「直枝さん、いりますか?」
理樹(おもむろに西園さんが水筒のお茶を注いだ。なんだか色が濃い。言ってはなんだけどがまるで絵の具で混ぜたような…)
理樹「か、変わったお茶だね」
西園「はい。能美さんが親戚の方から送られたものをおすそ分けしてくれたんです。美味しいですよ?」
理樹「じゃあせっかくだし一杯だけ…」
理樹(匂いは______悪くない。これなら……)
西園「……………………」
理樹「ズズ………ん、これ結構美味し……ぐふぅっ!?」
理樹(舌に鋭い衝撃が走った)
理樹「がっ……グゥ……!」
西園「痺れ粉です。こうでもしないと直枝さんは大人しくしてくれそうにありませんでしたので」
理樹「あ……あんえ……」
理樹(ろれつが回らない。指やかかとが芝生に軽く触れるたびに電流を浴びたが如き衝撃が身体中を轟かせる)
西園「ふふふ………いや、せっかくの機会ですしほんの少しスケッチさせていだきますよ直枝さん」
理樹「……………………」
理樹(口を開かず涙だけ垂れ流した。なにか喋ろうとすればそれだけ痛みが増すのだ。そんな身体にした当の本人は裸の僕をじっくり眺めてくまなく写真を撮っていた)
西園「ナイスです……」
理樹(僕はナイスじゃない。どうしてこんな事を……)
西園「………………おっと…もうこんな時間ですか…」
理樹「……………?」
西園「直枝さん。また次の番が巡るまでお別れです」
西園「『森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い』」
理樹「!!」
理樹(西園さんの発した言葉で僕は強烈なデジャヴュを覚えた。そして思い出した。こういうことが過去何度も繰り返されてきたことを)
理樹「……………!!!!」
西園「声になっていませんよ。…それではさよなら」
理樹(僕はまた眠りについた)
理樹(今日は10時に起きた。休日だから助かったものの、いつもなら学校のこともあるし7時には起きるはずなんだけどいったい何で生活バランスが崩れたんだろう。昨日は鈴と初デートに行ったからその緊張が何かに関係したのかもしれない)
理樹「どっこいしょ……っと?」
理樹(ベッドから起き上がると全身に違和感が走った。動くたびビリリと痺れるような感覚だ。………どこかおかしい)
理樹「いつつ……」
理樹(筋肉痛やそういう類のものではない。もっと強烈な『何か』を喰らったような……)
理樹「……とにかく顔を洗おう」
理樹(問題にするほどの痛みでもない。ガンの兆候とかじゃない限りは)
洗面所
理樹「ガラガラガラ……ぺっ」
恭介「ういっす」
理樹(恭介がやってきた)
恭介「随分と遅い起床じゃないか。たまにはいいがそれが癖になって寝坊なんてやめてくれよ?」
理樹「ははっ、いざとなったら真人に起こしてもらうよ」
恭介「それもそうだな」
理樹「ところで恭介はなんでここに?」
恭介「なに、朝飯で鈴にヒゲが伸びてるって注意されちまったもんでね」
理樹(そう言うと恭介は右隣の鏡の前に立ってポケットからカミソリと小型のシェービングクリームが入ったスプレー缶を取り出した)
理樹(時間も時間だったので食堂にはカップケーキや羊羹など朝から食べるには微妙なものばかりが残っていた。なんだかここのところずっと品揃えが悪い気がする)
理樹(食堂はどうせがらんと空いてるし庭で日向ぼっこでもしながら食べよう。運よく西園さんがいたら話し相手にでもなってくれないだろうか)
……………………………………
葉留佳「へえ、そりゃ大変だ!保健室行く?私は暇だからついて行ってもいいよ」
理樹「本当?悪いね」
理樹(西園さんはいなかったけど葉留佳さんがいた)
葉留佳「ニヤリ」
理樹「?」
葉留佳「あっ、な、何でもないですヨー?」
理樹「あ、そう……」
理樹(いま、葉留佳さんが何か企んでいるように口角を曲げたような…)
保健室
理樹「失礼します………アレ?」
葉留佳「どしたの理樹君」
理樹「いや……誰もいないんだよ…この保健室」
葉留佳「………………」
理樹「………葉留佳さん?」
理樹(その時、保健室の扉が勢いよく開いた)
佳奈多「ふふ…もう逃げられないわよ……!」
ヴェルカ「ハッハッハッ!」
ストレルカ「ガルルルル……」
理樹「ええっ!?」
理樹(二木さんだ。心なしかヴェルカ達の目に光がないような…)
理樹「は、葉留佳さん…また何かやらかしたの!?」
葉留佳「ふっふっふっ……そう見える?」
理樹「見えるもなにも……」
佳奈多「さあ観念しなさい直枝!」
理樹「…………僕?」
葉留佳「そういう事なのだ!今回は佳奈多と葉留佳ではるかなコンビを組んだのだよ!フォッフォッフォー!」
理樹「いやいやいや!僕今回はなにもしてないよ!?」
佳奈多「ええそうね……むしろ今日は私がやらかす日だわ」
理樹「それってどういう…」
佳奈多「今回だけは何をしてもいいのよ!そう、『なにをしても』!」
葉留佳「と、言うわけで理樹君。とりあえず脱ごっか」
理樹「………………はい?」
理樹「か、佳奈多さんと葉留佳さんの奴隷になります……」
佳奈多「はい良く出来ました」
葉留佳「ご褒美にナデナデしてあげる~~」
理樹(状況を簡潔に説明すると半裸にされ、目隠しをされ、手錠をされ、正座させられている)
佳奈多「ワンって言いなさい」
理樹「えっ?」
佳奈多「聞こえなかったの?早く!」
理樹「わ、わん!」
佳奈多「ふふふ………じゃあ今度は首輪をつけましょうね」
葉留佳「あーそれはるちんもやりたい!やりたい!」
理樹(男子の中でも身長が低めとはいえこの2人に純粋な腕力で負けることはないだろう。しかし二木さんが連れてきたヴェルカ達が厄介すぎる。尻尾を振ってドアの前を陣取ってしまえば真人と謙吾の2人くらいでないと突破は難しいだろう)
理樹「い、いつまでこんな事を!」
佳奈多「犬が喋らない!……まあ、今の質問だけは特別に答えてあげるわ。私達が飽きるまでよ」
理樹「ぜ、絶望的じゃないか…」
葉留佳「こら理樹君!」
理樹「ク、クゥン……」
………………………………………………
……………………………
…
理樹「アヘぇ……佳奈多様…葉留佳様……もっと僕を蹴ってぇ…罵ってぇ……!」
佳奈多「……飽きたわ」
葉留佳「うん、そうだね」
佳奈多「じゃあそろそろ交代しましょうか」
葉留佳「それじゃ理樹君…」
佳奈多・葉留佳「「『森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い』」」
理樹「あへ…………」
…………………………………………………………
皆さんお待ちかね!何度も前の出来事を忘れては別のメンバーに襲われる直枝理樹!いったいなにがどうなっているのやら!果たして理樹の未来は如何に!?
次回「一発逆転!逆襲の理樹」
…………………………………………………………………………
『森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い』
……………………………………………………………………………
「「森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い」」
……………………………………………………………………………
「「「森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い」」」
理樹「うああああああああああーーーーーーっっ!!!!」
理樹「はぁっ……はぁっ……!!」
理樹「い、今のは…………」
理樹(ベッドから降りてようやく今のが夢だったという事が分かった。……とてつもない悪夢を見た気がする…何故かもう忘れてしまった)
理樹「10時…か」
理樹(休日だから助かったものの、いつもなら学校のこともあるし7時には起きるはずなんだけどいったい何で生活バランスが崩れたんだろう。昨日は鈴と初デートに行ったからその緊張が何かに関係したのかもしれない)
理樹「くっ……!」
理樹(ベッドから起き上がると全身に激痛が走った。特にあまり大声で言えないようなところが猛烈な違和感を起こしている)
理樹「ぐふぅ…ッ」
理樹(昨日の行動を振り返ってもそこまで激しい運動はしていなかったはずだ。寝ている間に24時間マラソンでもしたのか僕は)
理樹「……と、とにかく顔を洗おう」
理樹(痛む臀部を押さえつつ洗面所に向かった)
洗面所
理樹「………っ!!」
理樹(今日はやけに変なことが多い。しかし、中でもこれは今までよりとびきり異常性が高く、また恐怖心も煽られた)
”誰も信用するな”
理樹(歯を磨いている途中で袖に水がかかってしまった時のことだった。ふと肩まで濡れた袖を捲ろうとすると自分の肘から手首の間にこんな文字が書かれてあったんだ)
理樹「なんだ……これ……」
理樹「……………………あ」
理樹(断片的に思い出した。僕が昨日と思っていた鈴とのデートと、僕が起きた今日の朝の間に”思い出すような何か”があったことを)
理樹(この世界はどこかおかしい。具体的には何も言えないけどこのまま手をこまねいている場合じゃない事だけは分かった)
ダダダッ
理樹(その時、出口の方から誰かが向かってくる音がした)
理樹「だ…誰だ!そこにいるのは!」
恭介「俺だ!ハァ…ハァ…!」
理樹「恭介!」
恭介「よかった…ここにいたのか理樹…!いいか、よく聞いてくれ。ここは何かがおかしい…言葉では言い表せられないがとにかく、なにかが…!」
理樹(恭介の焦りようは尋常じゃなかった。そして彼もまた僕と同じ状態にあることが分かった。そう考えると強力な仲間を見つけたようで少し安心した)
理樹(僕も恭介にそのことを言いたくて堪らなかったけどそれより密室に近い場所に居続けることが何よりも怖かったので今はこれだけ言った)
理樹「分かった!逃げよう!」
図書室
理樹(図書室は人がいっぱいいた。それだけで心に余裕が湧いてきた。誰だって家の中にオバケが出てきたら一番逃げたい場所は人の多いスーパーマーケットじゃないだろうか?僕はそうだ)
恭介「……ここも安全かと言われるとまったく保証出来ない。それどころか周りの人間全員がいつ敵に豹変しようが不自然ではない」
理樹(敵とはいっても僕らと対を成す存在がなんなのかはまったく思い出せない。ただ、断定的に敵である事だけは分かっていた)
理樹「……恐怖は未知であるから成り立つ物だ。暗闇やトンネルが怖いと感じるのはその先に何があるのか分からないからだ…今回のそれは恐るべき対象すら認知出来ずにいる…!ただ、『感覚』だけがその存在を知っている!」
恭介「俺の立てた仮説はこうだ。おぼろげながらも覚えているということはこれから起こることは以前も起きたということだ…つまり繰り返されているってことだ!恐らくそれは違和感を感じなければこれからも同じことが起こる!」
理樹「そうすると…必ず今から何かが起きるのは間違いないってこと…?」
恭介「ああ…それが1分後…あるいは次の日…いつになるかは分からない。ただ、それらの最後には必ず俺たちの記憶が消されている。こんな芸当が出来るってことは…」
理樹「……また、誰かが世界を作ったんだね?」
恭介「………………」
理樹(恭介は半ばうな垂れるように頷いた)
恭介「理樹はこれが3度目か」
理樹「あまり慣れたくないね…」
恭介「だが解決のための定石は知っているはずだ」
理樹(世界はいつだって誰かの願いで作られている。少なくとも今まではそうだった)
理樹「だけど繰り返してるっていうんならここの支配人は失敗を繰り返しているのかな」
恭介「どうだろうな…ただ、その願いが尽きないだけかもしれない。人間の欲というのは底がないからな」
理樹「これからどうするのさ。ただ何かが来るのを黙って待ってるつもり?」
恭介「ああ、その通りだ」
理樹「えっ?」
恭介「正体が不明な分、待つよりほか相手を確かめる術はない」
理樹「そんな!」
恭介「ただ!」
恭介「…ただ、黙って待つわけじゃない。今回ばかりはいつものやられてばかりじゃないって所を見せてやるんだ」
理樹「………?」
裏庭
理樹「はぁ……」
理樹(恭介の作戦は単純なものだった。恭介自身はどこか僕の姿が見れる場所に姿を隠し、僕はあえて普段通りの生活を送り敵を待つ。完全なる囮捜査だ)
理樹(僕が囮役になるのは必然だけどこうしている今にも恭介が見ていると思うと色んな意味で緊張する)
恭介『いいか?どんな怪しい事を誘われても絶対に全力で引っかかれ!だがしかし誰も信用はするな』
理樹(誰からもだと恭介もそのうちの1人になるけどそんなことはどうでもよかった。ただ囮とはいえホイホイついていってリンチに合うような事だけはごめんだ)
……………………………………
理樹(しばらく裏庭の木陰で涼んでいると西園さんがいかにもピクニックに行くって感じのバスケットを持ってやってきた)
西園「直枝さんですか。偶然ですね」
理樹「あ…うん、西園さん。こんにちは」
西園「…どうかしましたか?」
理樹「えっ、な、なにが!?」
西園「今日は凄く動揺しています…」
理樹「は、ははは…全然そんなことないよ」
西園「そう…ですか」
理樹「うんうん!」
西園「なら直枝さん…」
理樹「うん?」
西園「いりますか?」
理樹(西園さんがバスケットから水筒を取り出した)
コポポポポ…
理樹(なんだか色が濃い。言ってはなんだけどがまるで絵の具で混ぜたような…)
理樹「か、変わったお茶だね」
西園「はい。能美さんが親戚の方から送られたものをおすそ分けしてくれたんです。美味しいですよ?」
理樹(ぶっちゃけ怪しすぎる。いや、こんな状況だったからこそ疑えたのかもしれない)
理樹「じゃあせっかくだし一杯だけ…」
理樹(かといってここで断る方が怪しいしなにより恭介との作戦もある。これで出てこなかったら恨むよ恭介!)
西園「……………………」
理樹(ええい、ままよ!)
理樹「ズズ………ん、これ結構美味し……ぐふぅっ!?」
理樹(舌に鋭い衝撃が走った)
理樹「がっ……グゥ……!」
………………………………………
…………………
…
理樹「ううん……」
西園「お目覚めですか?」
理樹「むにゃ………ん?うわ!」
西園「前回は痺れさせてもなお必死の抵抗をされたのでこれからは単純ですが眠らせてから…ということで」
理樹「なんだよこれ!なんで縛られてるのさ!」
理樹(腕と足が完全に縛られていた。足の方に至っては両足同士を縛るんでなくM字になるよう固定されていた)
西園「それでは直枝さん、失礼して…」
恭介「待ちな!」
西園「!」
理樹(と、ここで打ち合わせ通り恭介がやってきた。なかなかギリギリのところでやってくるな…)
恭介「おっと変な考えは起こすなよ西園。そのまま木の方へ手をついて大人しく立っているんだ」
西園「…………どうして恭介さんが…」
恭介「さてどうしてかね………っと立てるか理樹?」
理樹(拘束されていたロープが解かれるとやっとこさ体が自由になった)
恭介「さ、これで西園が全ての元凶だと分かったところで…」
理樹「尋問だね」
理樹(逆襲の始まりだ)
多分もう続きは描かないと思う
好きな作品だから何年も書いてきたけど今月から環境も変わるしな…
結構やってきたが途中で投げ出すようですまねえ
適当なところで悪いが今まで見てくれてありがとな!暇があったらまた建てる
イェーーイ!エイプリルフールでしたーー!!!!
まだまだ情熱は消えねえ!てことで再開!!!
理樹(さっきはああ言って息巻いていたけど今の僕らは完全にこう着状態へ陥っていた)
恭介「くそっ……卑怯だぞ西園!」
理樹「見損なったよ…西園さん…君がそういう手を使ってくるなんて」
西園「ふふっ……こうなってしまえばなり振り構っていられませんよ。特に今回ばかりは」
ちょっと前
恭介「さあ、そんな姿勢のままで悪いが答えてもらおうか?俺たちにいったい何が起こっているのかを」
理樹(西園さんは先ほど恭介が指示した通り木の幹に手をついて立ち尽くした)
西園「嫌だと言ったら?」
恭介「なあ西園…俺だってなるべく手荒な真似はしたくないんだ。正直に答えてくれれば…」
西園「ふっ……うふふふ……」
理樹「な、なんだ!?」
西園「いえ…本当にそういう台詞を言う人がいるのかと思うとつい。………して、恭介さん達は出来るんですか?」
恭介「なに?」
西園「お二人は私に乱暴出来るんですか?」
恭介・理樹「「!!」」
理樹(この発言が痛かった。まさか開き直られるとは思えなかったのだ)
恭介「は、はっはっは!バカなことを言うなよ西園くん。俺たちだってその気になればあんな事やこんな事だって出来るんだからな!なー理樹!?」
理樹(僕に振らないで!)
理樹「そ、そうだよ!仮にも今の僕らは非情な復讐者!西園さんの口を割らせるくらい……」
西園「では…やってみてください」
理樹(西園さんが余裕の顔でこちらに振り向いた)
理樹「き、恭介…」
恭介「わ…分かってるよ……」
恭介「今更許してくれって言ったって遅いんだからな!あ…いや、今ならまだギリギリ許してやらん事も……」
西園「………………」
理樹(西園さんは無言だった)
恭介「くそう……な、なら………!」
理樹(ジリジリと近づく恭介。はたから見たら最高に不審者だった)
恭介「……………………」
西園「……………………」
ドンッ
理樹(西園さんをビビらせようとまずは彼女の顔のすぐ隣に勢いよく掌底をかました。巷で話題の壁ナントカって奴だろう。いいぞ恭介!)
恭介「…………西園…お前を殺す」
デデン!
西園「………………」
理樹(伸ばした腕は下ろさずそのまま脅し言葉を言った。少し過激な気がしないでもなかったけどそれでも西園さんは無言だった)
恭介「………しっぺするぞ?」
西園「どうぞ」
理樹(西園さんは恭介の最終通告にも屈しなかった。これには恭介も覚悟を決めなくてはならない)
恭介「お、お前がいいって言ったんだからな……行くぞ……やるからな!?」
西園「………………」
理樹(まったくの無反応。恭介はそれを確認するととうとう手を振りかぶった)
恭介「う、うぉおおおおおおおおお!!!」
シュッ
理樹「うわっ!」
………ピタリ
恭介「……………………」
理樹「へっ?」
理樹(今まさに西園の頬へ衝撃がぶつかるかというところで恭介の手が止まった。まったく触れていない)
恭介「理樹…………………」
理樹「な、なに?」
恭介「………お前がやってくれ…」
理樹「いやいやいやいや!!」
恭介「お、俺は嫌だ!汚れ役なんかしたかねえ!」
理樹「恭介がやるって言ったんでしょ!?最後まで責任とってよ!!」
恭介「俺だっていつも完璧な訳じゃないやい!」
理樹「ええー……」
理樹(子供のように駄々をこねられてしまった)
西園「そろそろ帰ってもいいですか?
恭介「だ、ダメだ!……理樹、お前が口を割れ。方法は問わない」
理樹「もう……」
理樹(かといって僕にも西園さんに…というか女の子自体に暴力を振れる気がしない。ここは別の手でいかなければ…………ハッ!そうだ!)
理樹「そうだ恭介!くすぐりなんてどうかな!」
恭介「くすぐり?」
理樹「確かくすぐりは昔拷問としても有効だって話を来ヶ谷さんから聞いたことがあった!これなら気を病まなくて済む!」
恭介「成る程そりゃいい!よっしゃ、いけ理樹!」
理樹(西園さんはこんな起死回生の方法を聞かされても動じなかった。まるで懐に切り札が仕込まれているかのような…)
理樹「よ、ようし……」
理樹(今度は僕が西園さんに近づく番だった。木に背中を預けた西園さんに慎重に手を接近させる)
理樹「はぁ……はぁ……」
西園「……………………」
恭介「ごくり………」
理樹(触れなければ何も始まらない。一瞬躊躇したがとうとう西園さんの横っ腹を掴んだ。すると西園さんはポツリと呟いた)
西園「………………変態」
理樹「う、うわぁあ!!ごめんなさい!ごめんなさい!」
恭介「待て待て待て理樹!」
理樹「だって恭介!こんな犯罪者じみたこと僕には出来ない!!そもそも女の子に慣れてないのに!」
恭介「バカ言えお前には鈴がいるだろ!」
理樹「それはまた別だよ!!」
西園「もう帰りますね」
恭介・理樹「「それはダメ!」」
現在
理樹(そんなこんなで今はいかに西園さんを傷付けず情報を吐かせるか模索しているところだ。2人揃ってこういう所はヘタレなのが悔しい)
恭介「じゃあ西園。これならどうだ?もし喋ってくれたらこれから毎朝のデザートにゼリーを付けてやる」
西園「どうでもいいです」
恭介「これもダメか……」
理樹「それは流石にないよ恭介…」
恭介「じゃあ理樹がなんか言ってみろよ」
理樹「うーん……喋ってくれるなら何でも言うこと一回だけ聞くとか?」
西園「何でもですね?なら『このことは喋らない』なんてどうでしょう」
理樹「へ、屁理屈を!」
「君らはいったい何をやっているんだ?」
理樹「えっ?」
恭介「来ヶ谷か」
来ヶ谷「面白そうなことをしているな。私も混ぜてくれよ」
理樹(これは強力な助っ人が来たかもしれない)
恭介「おお良いところに!なあ来ヶ谷、一つ頼みがあるんだが…」
来ヶ谷「その前に何故君らが寄ってたかって美魚君に立ち塞がっているのかを説明してくれないか?」
恭介「あ、ああ!そうだったな…!実は来ヶ谷…お前には到底信じられない事だろうが落ち着いて聞いてくれ」
恭介「この世界は……西園が作ったんだ!!」
理樹「嘘じゃないんだよ来ヶ谷さん…!現に西園さんが僕を襲ったし!」
来ヶ谷「な、なんだってー」
理樹(予想通り来ヶ谷さんにとっても衝撃的だったようだ。こんな狼狽えた姿は僕も初めて見る)
…………………………………………
………………………
…
来ヶ谷「なるほど。そういう訳だったのか」
理樹「来ヶ谷さん…代わりにといっちゃなんだけどどうにか西園さんに事情を話させてもらえやしないかな?」
来ヶ谷「ふむ…そうだな」
理樹(それからなにか物思いにふける顔をしたかと思えば突然懐から太い髭剃りのようなものを恭介の首に当てた)
恭介「なっ!」
理樹(そこでやっと気付いた。来ヶ谷さんもまた仲間の1人なんだと)
ビリッ
恭介「ガッ…………」
理樹(途端に糸が切れた人形の如くそのままの体勢で地面に突っ伏した)
理樹「あ…あああ……」
来ヶ谷「やれやれ…42週目でイレギュラー発生か」
西園「すいません来ヶ谷さん。お二人は何かの拍子に前回の記憶をおぼろげながらも覚えていたようです」
来ヶ谷「いや、君の責任ではない。それに私の助けを待っていたのは賢明だった。どれ、次もまたこんな事が起こるようならじっくり調査するとしよう」
西園「はい」
理樹「な、なんなんだ…いったいどうしてこんな事を!」
理樹(僕の問いにはまるで答えちゃくれない)
来ヶ谷「君を次の世界に招待するには意識を切り離すか、君が極限状態の時にとある合言葉を言うしかない。『森は美しく暗く深い。だが約束を果たし、眠りにつくまでに道はまだ遠い』それではまた、だ」
理樹「あ……う………………」
理樹(せっかくここまで来たのに……くそう………く……っ)
…………………………………………………
………………………………
……
理樹(今日は10時に起きた。休日だから助かったものの、いつもなら学校のこともあるし7時には起きるはずなんだけどいったい何で生活バランスが崩れたんだろう。昨日は鈴と初デートに行ったからその緊張が何かに関係したのかもしれない)
理樹「どっこいしょっと…」
コンコン
理樹「ん?」
「俺だ!入るぞ」
理樹(恭介の声だった)
真人「なんだよ理樹。まだ寝てたのか?」
理樹(扉からは恭介と真人が入ってきた)
理樹「2人ともどうしたのさ?」
真人「それが俺もランニングしてる最中にいきなり呼び出されて何にも聞かされてねえんだ」
恭介「それに関しては後で話す。それより今は行動だ!理樹、早く着替えろ」
理樹(口振りから察するに恭介はもの凄くあせっていた。自分の台詞を言い終えないうちに靴下や携帯など僕がここから出る際に必要なものをぽいぽい渡してくる。本当に急いでいるらしい)
理樹「またいきなり旅に出ようなんて言わないでよ?」
恭介「そんなんじゃない」
理樹「じゃあ夜逃げ?」
恭介「今は朝だ」
理樹「駆け落ち?」
恭介「バカ言え!」
理樹「じゃあなにさ?」
恭介「逃げるんだよ!」
理樹(恭介の手をじっくり見ると震えていた)
ガタンガタン…
恭介「ふう………」
理樹(恭介は電車に乗るまで必要最低限のことしか喋らなかった。これまで質問をしても生返事ばかりだった)
真人「なあ、そろそろなんで俺達が引っ張りまわされてるのか教えてくれたっていいんじゃねえか?)
理樹「まったくだよ!なんか今日の恭介怖いよ…」
恭介「そうだな…ここまで来れば大丈夫だろう。なんで俺たちが全力で学校から遠ざかっているのかをな」
理樹(すると恭介は自分の制服の袖をまくって僕らに見せた)
真人「なんじゃそりゃ?」
理樹「!」
理樹(恭介の露わになった腕には『ここはおかしい くるがやとにしぞのにきをつけろ』と震える字で書かれていた。それを見て僕は”また”思い出した)
理樹「き、恭介……!!」
恭介「思い出したか!なら説明は真人だけで充分だな」
真人「は?」
……………………………………
…………………
…
真人「…………つーことは来ヶ谷と西園が理樹を狙ってるってことかぁ!?」
理樹「ピックアップするところそこなの!?」
真人「えっ、なにが?」
理樹「いや、ほら、ここが普通じゃないって所とか…」
真人「恭介と理樹がそう言うんなら本当のことなんだろ?それに俺もその話を聞いてて薄々そんな感じはしたんだ。今日は起きてからヤケにデジャヴって奴が起きたからな」
恭介「ま、そういう訳でいざという時のためにお前の筋肉が必要だって訳だ。思い出せたと言っても一つ前の出来事だけだ。俺たち2人でも事件の全体像は見渡せない」
理樹「西園さんが黒幕かと思ったら来ヶ谷さんも…これじゃあ敵が何人いるか分からないもんね」
恭介「俺がこれを発見して理樹のところに行くまでに真人を掴まえられてラッキーだったぜ」
真人「ん?そういえば俺もその黒幕の1人って考えはなかったのか?」
恭介「真人に裏切るだけの脳があればそれこそ最初から破滅だろ」
理樹(その言葉には不思議な説得力があった)
ちょこまかとした更新ですまん
明日はきっとちゃんと描く(エイプリルフールって時間制限あったのかよ…)
理樹(終点の駅の中にある小さなカフェで作戦を練った)
恭介「………言わなくても分かるだろうが、こちらは今の所圧倒的に不利だ。前回、助けに来てくれたかと思った来ヶ谷が騙し討ちをしてきたように誰が敵か分からない」
真人「来ヶ谷1人だけなら何とかなるんだけどな…」
理樹(これ以上あの2人に味方する人がいてほしくはないけど可能性としては捨て切れなかった)
恭介「だが俺たちにも有利な点はある。それは今こうしているように基本行動はこちらから仕掛けられるということだ」
理樹「確かにそうかもね。元はと言えば僕らが罠を仕掛けようとしたからあんな事になったんだし」
恭介「それにさっき敵が分からないと言ったがある程度なら絞ることが出来る。来ヶ谷、西園、理樹。この3人に共通することは?」
理樹「……あっ、そっか!」
理樹(いつもそのメンバーで遊んでいるから気付かなかったけど3人ともリトルバスターズだ。ましてやあの2人と僕のことで手を組むとしたらそれは他のメンバーくらいじゃないと不自然だ!いや、たまたま気の合う人と出会っている可能性もあるけど…)
恭介「リトルバスターズの他にも笹瀬川や二木、それにあの寮長も候補としては挙げられんことはないがここは置いておこう」
真人「あー……つまり何が言いたいんだ?」
理樹(真人が言う)
恭介「メンバーひとりひとりに奇襲をかけよう。作戦名ははリトルバスターズバスターズだ!」
理樹「長っ!」
学校
校門
恭介「いいか?もしここが奴らの作った世界なら生徒は全員NPCのようなものでその目は監視カメラになっているかもしれない。ここは慎重に動くぞ。分かってるな真人?」
真人「なんで俺だけなんだよっ」
……………………………………………………
剣道部
部室
謙吾「む?なんだ、お前達がこんな所に来るなんて珍しいな」
恭介「ああ。まあ、その、混み合った話があってな。理樹」
理樹「う、うん」
理樹(それは僕に部室の鍵を締めろという合図だった)
謙吾「……なんのつもりだ」
理樹(謙吾は防具を静かに置き、何気ない仕草で竹刀が置いてあるであろうロッカーに近付こうとした______が、真人が先回りしてその行く手を阻んだ。今、謙吾は僕ら3人に囲まれている状況だ)
恭介「なに、すぐに済むさ」
謙吾「…………………」
恭介「まず3人に囲まれて勝てる見込みがないことは分かるな?」
謙吾「分からないな。追い詰められた鼠は時として十二分の力を発揮する」
恭介「それはどうかな」
理樹(緊張した空気だった。一歩でも誰かの足が動けば一気に爆発するような状況だ。あの真人も沈黙を守っている)
謙吾「なにが望みだ?」
恭介「簡単なことだ。お前は理樹との友情に誓ってやましい事は何もないと言えばいい」
謙吾「なに、理樹にやましい事だと?ある訳がない!」
恭介「本当か?」
謙吾「本当だとも!」
理樹(僕の目線だと謙吾の言葉に嘘はなさそうだった。恭介は…?)
恭介「……………よし!分かった。お前を信じよう」
理樹「ほっ……」
真人「ふぅー!なにんも起こらなくて助かったぜ!」
恭介「よし、次に行こう」
謙吾「待て待て!さっきから何の話をしてるんだお前らは!」
恭介「ああ、それもそうだな。それじゃお前にも教えておこう」
……………………………………………
…………………………
…
恭介「………と言うわけだ。信じられないとは思うが」
謙吾「……………っ!!」
理樹(当然のリアクションだった。謙吾からしてみればいつも通り練習に励んでいた所、突然ここは夢の中だと言われたようなものなのだから)
謙吾「あ……そ…そんな……!」
恭介「だが心配はいらない。今からしらみ潰しにしていくからな。謙吾が敵じゃないと知った今、実質敵は女ばかりだという事になる。それならもう一度不意打ちされないよう気を付ければいいだけの話さ」
真人「じゃ、次行きますか」
恭介「そうだな。じゃ、また後で」
謙吾「あ、ああ………」
理樹(謙吾はまだ動揺していた。あれでは状況を飲み込むまで時間がかかるだろう。落ち着いてきたら協力を頼んでみるのもいいかもしれない)
謙吾「……………………」
…………………………………………
恭介「むっ…あの後ろ姿は…」
理樹(物陰に隠れながら行動していると恭介が誰かを見つけたようだ)
ごみ捨て場
クド「わふー?皆さんお揃いでどうかしたんですか?」
理樹(クドだった。たったさっきゴミを捨てる目的を果たしたって感じだ)
恭介「能美。悪いがお前にはちょっと嫌がるようなことをしてしまうかもしれない」
クド「い、嫌がること…ですか?」
恭介(恭介の合図でまたもやクドを囲む態勢になった)
恭介「先に言っておくが大声出して助けを呼ぼうとしても無駄だぜ?ここはひと通りが特に少ないからな」
理樹「ご、ごめんねクド…大人しくすればすぐ終わるから……」
クド「い、いったいなにが始まるんですかー!?」
恭介「大丈夫だ、痛くしない。お前が抵抗しなかったらそれだけ早く済む…」
理樹(言い終わると真人がクドの両腕を抵抗出来ないようにがっちりホールドした)
クド「わ、わふー!?」
10分後
クド「あ……うぁ……」
理樹(クドはぐったりと地面に倒れこんでしまった。立ち上がる気力もなさそうだ)
真人「う……ちょっとやり過ぎたかもしれねえな…」
理樹「本当だよ!一歩間違えて意識でも失ったらどうするつもりなのさ!」
恭介「でも理樹だって賛成したろ?逆にこれの他に方法が思いついたか?」
理樹「いや、だからって…」
恭介「どうせリセットされたら能美の記憶もあやふやになる。ちょっとくらいならバレねえって」
理樹(まるで何時ぞやの手段を選ばない恭介である)
…………………………………
数十分前
理樹「そういえば女の子達に真偽はどうやって確かめるの?西園さんの時は散々だったじゃない」
恭介「俺も色々考えたんだが真人の力を借りようと思う」
真人「俺か?」
恭介「ああ。真人ほどのスタミナとデカさだからこそ出来る芸当だ。ただ、逆にやり過ぎるとせがまれたりするかもしれないけどな……」
理樹「な、何それ!?」
真人「もったいぶってないで言ってくれよ」
恭介「ああ。その名案というのは……」
理樹(恭介が考え出した案というのは対象の脇を掴んで遠心力に任せてぐるぐる回転させるアレだった。親子がたまに遊びでやるような物だがこれが案外ずっとやられるとしんどい)
理樹(ましてや今回は全力のスピードで回転させるんだからずっと止めないでいるとそのうち吐き気を催すこともあるかもしれない。だけど確かにこれなら肉体的にも精神的にも傷つけずに拷問出来る。少なくともコショコショよりセクハラではないはずだ)
恭介「さあ辛いとは思うが答えてもらおう!なあ能美、お前は来ヶ谷や西園と通じていたりしないか?」
クド「わ、わふぅ……?来ヶ谷さんと美魚さんがどうかなされたんですか?」
理樹(まだ目をグルグルさせながらも答えるクド。彼女もまた危惧していた存在ではなかったらしい)
恭介「知らないならいいんだ。最近理樹が色々あってさ!いや、悪かったな」
クド「は、はあ……」
理樹「………………」
理樹(もし、全てが解決したらお詫びにジュースでも奢ろう……)
屋上
恭介「どっこい正一っと……」
鈴「………ん?」
小毬「どうしたの鈴ちゃん?……あっ、理樹君だ。それに恭介さんと真人君もっ」
理樹(屋上に来ると今度は2人がいた。鈴とは最後にデートしたあの日が懐かしく感じる)
理樹「ねえ恭介…鈴と小毬さんにも聞くの?」
恭介「それなんだが……」
小毬「あっ、そうだ!貰い物だけど皆さん飴玉一つどうですかっ?」
真人「やったー!欲しい欲しい!」
鈴「子供かっ!」
恭介「……怪しいと思うか?」
理樹「もうこの2人は候補から外してもいいと思うな」
恭介「だよな…ま、でも、一応話だけ聞いておこう。なにか情報を掴めるかもしれない」
小毬「ほえ。ゆいちゃん達の怪しいところ?」
鈴「くるがやはいつも怪しい」
理樹「そ、そうかもしれないけど普段と違ったこととかないかな?たとえば変なこと言ってたとか…」
鈴「うーん……」
小毬「ごめんなさい。ちょっと分からないかな…」
小毬「……あっ、でもゆいちゃんと言えば今日の朝みんなで集まってたよ~!女子寮で立ち話してたよぉ」
理樹(みんなで…集まっていた…!?)
恭介「本当か!それは誰と誰と誰だ!?」
小毬「ええっとぉ……確か、ゆいちゃんとー美魚ちゃんとーはるちゃんとかなちゃん」
恭介「かなちゃん?」
理樹「二木さんのことだよ」
真人「ってことは…!」
恭介「…………そういう事だろうな」
理樹(その4人こそが今回の事件の核となる存在なのは明らかだった)
皆さんお待ちかね!黒幕の正体が判明し、いよいよ本陣に乗り込む理樹達!だがしかし、それは全て巧妙に仕掛けられた罠だったのです!果たして3人の運命やいかに!
次回「絶体絶命!恭介、究極の選択」
理樹(僕らは女子寮に向かった。自分達の身を隠す理由が無くなったからだ)
真人「やっぱ堂々と戦うってのは気持ちがいいねぇ~」
恭介「敵の影が白昼に晒された今、もう不意打ちという戦法は俺たちに効かない。俺や真人の筋パワーを持ってすればどれだけ来ヶ谷達が力を合わせようと負けまい!」
理樹(思わぬ収穫にみんな心が躍っている。こうなってしまえばぶっちゃけ全部真人だけでいい気がする)
理樹「でもさ、これから来ヶ谷さん達にはなんて言うの?いくらこうして布陣を整えていてもまたリセットされたら全部忘れちゃうし…」
恭介「リセットには俺たちをほぼ意識不能にするという条件があった。あとは奴らに真人の必殺ローリングぐるぐるを泣いて謝るまで続ければいい」
理樹「そんな名前があったんだ…」
真人「てかよぉ、他の連中もよく分からねえけど風紀委員長様まで理樹を襲うってどういう事だ?そこまで2人が喋ってた記憶がねえんだが」
理樹「ううん…確かにその通りだね。二木さん自身とは割と接点もあったけどあんな事するような人には…」
恭介「ま、人には隠れた想いというものが存在するって事だ。今回はあまり隠れてほしくなかったけどな…」
理樹(恭介が意味深なことを呟いてるうちに女子寮の前に着いた)
恭介「それにしても変だな…」
理樹「なにが?」
恭介「いや、いつもならこの辺は警備がうるさくてなかなか入れない所なんだが今日はやけに人がいない」
理樹「まあ現実とは違って意識を持ってるのは来ヶ谷さん達だけだから…」
恭介「NCPに監視をさせるという手もあったはずだ」
真人「いいんじゃねえの?そんな考え過ぎるよりさっさと突入しちまえば。きっと俺達を攻撃する事ばかり考えていて自分達を守る事なんざ考えてなかったんだろ」
恭介「ふむ…行くしかないのは確かだな。そんじゃ気を引き締めろよお前ら」
理樹「うん!」
真人「おう!」
恭介「とある情報筋によると来ヶ谷の部屋はこの先にある旧寮の部屋だそうだ」
理樹(人が少ないとはいえズカズカと正面から行けば簡単に捕まる。こそこそと非常階段から来ヶ谷さんのいる部屋へ向かった)
来ヶ谷部屋
恭介「さて…覚悟はいいな?」
理樹(恭介が僕らの方を振り返る)
理樹「ごくり………」
真人「いつでもいいぜ」
恭介「よぅし……トゥワッ!!!!」
理樹(真人と恭介が同時に勢いよくドアにタックルした)
バンッ
恭介「お、おわぁ!?」
真人「なぁっ!?」
ドッシャーン
理樹(金具が壊れて開くかと思われた扉だったが、そもそも鍵が閉められておらず逆に真人と恭介は勢いよく部屋にずっこける形となった)
恭介「いてて……なんだよ開いてるのかよ…」
真人「って………おろ?来ヶ谷いなくね?」
理樹「あっ、本当だ!」
理樹(ベッドと机だけであとは本がいくつか積まれているだけの質素な部屋にはその住んでいる本人さえもいなかった)
恭介「留守だったか…拍子抜けだぜ」
理樹「どうする?出直そうか?」
恭介「いや、ここで待ち伏せをしよう。どうせ事件のボスはあいつだ。ここでやっつければ他の連中も諦めがつくってもんよ」
真人「『私は勇敢な男達に屈しました。ごめんなさい』って感じのプレートを持たせて他の奴らに送りつけてみよう」
理樹「それ本当にやったら後で後ろから刺されそうだね」
理樹(そんなことを話していると廊下から足音が聞こえた。…………きっと来ヶ谷さんだ)
恭介「むっ…この音は!よし隠れろお前ら!」
理樹(僕はベッドの下に、恭介はベッドの後ろの隙間に、真人は毛布の中に隠れた)
ドタドタ…
理樹「………?」
理樹(近づくにつれそれは普通の足音じゃない事が分かった。複数の足……複数の人間がこちらに向かってきていた)
キィ………
来ヶ谷「そこにいるのは分かっている。隠れん坊はやめて大人しく出て来い」
理樹(来ヶ谷さんの声だった)
恭介「ちっ………」
真人「ふあぁ……」
理樹「むぅ……」
理樹(こう言われてはすごすごと出て行くしかない)
恭介「だが、何故俺たちがここにいるのかって理由は分かっているよな来ヶ谷?」
理樹「そうだ!こっちには真人がいる。もう勘弁したほうがいいよ」
来ヶ谷「それはどうかな?」
葉留佳「にっひっひ~!さっさとやっちゃいましょうよ姉御!」
佳奈多「たった3人で勝てる訳ないでしょ?」
西園「勘弁するのは直枝さん達のほうかと」
理樹(小毬さんの言っていた4人だった。しかし何故だ?確かに人数はあちらのほうが多いとはいえ戦力的にはこちらのほうが有利なはずなのに)
真人「ふっ、俺達も見くびられたようだな…よっしゃあ!そういう事ならみんなまとめて筋肉ランドに招待してやるぜ!」
恭介「待て、様子がおかしい!」
来ヶ谷「ふふふ……私とてなんの用意もせず君らを倒そうとは思っていないよ」
「……………………」
恭介「ま、まさか…お前は……!!」
理樹(来ヶ谷さん達の後ろから大きな身体の人物が現れた。それはあり得ない登場だった)
謙吾「……………すまないな皆」
真人「け、謙吾!お前!!」
理樹(謙吾はさっき、確かに『違う』と言った。あの眼が嘘をついてるとは思えない。10年近く連れ添った仲間だ。ちょっとでもおかしい挙動があれば僕らのうち3人の誰かが見破るはずだ)
恭介「馬鹿な……何故お前が………はっ!ま、まさか来ヶ谷!」
来ヶ谷「察したな?勘のいい恭介氏は早速気が付いたようだ」
理樹「ど、どういうこと!?」
恭介「道理で話を聞いた後、謙吾の様子がおかしかった訳だ…謙吾は他の奴らとは違って『後から』仲間になったんだ!」
真人「後からだと?」
恭介「そうだ。きっと謙吾は何周かしているうちに理樹が襲われている場面に出会って他の連中にそそのかされたんだろう。そして後天的に来ヶ谷の仲間になったという訳だ。もちろん記憶は繰り返されてしまったら無くなる。だが、一度記憶が呼び覚まされてしまったら……」
来ヶ谷「我々の方に寝返るという訳だ。こういう事を想定してな」
謙吾「すまん……だが、一度犯してしまってお前らと共に戦おうなど虫が良すぎる。それに俺は一度味わってしまったんだ…理樹の……理樹の…………いや、言うまい」
理樹「ちょっと待って!僕のなにを味わったの!?」
真人「おいおい…これじゃ楽勝って訳にはいかないんじゃねえか?」
来ヶ谷「そう!このままガチンコ勝負となれば勝敗がどちらの手に委ねられるか分からない!だが、私達は『いつも』ここで勝ってきた」
恭介「…………なんだと?」
来ヶ谷「私はギャンブルはあまりしない主義だ。勝負はより確実なものにしたい。…分かっていると思うがこちらの関心は理樹君”だけ”だ」
恭介「まさか……俺と真人のどちらかが裏切るとでも思っているのか?」
来ヶ谷「ズバリその通りだ。まあ…真人君が少年を裏切ることは万に一つもないだろう。だが、君はどうかね?たとえ筋肉馬鹿といえども謙吾君と私でなら無力化する方法はいくつもある。もはや勝ちは揺るぎないものとなるだろう」
恭介「ぬかせ!そんなことありえる訳が無いだろ!!」
来ヶ谷「それはどうかな?」
恭介「なに?」
来ヶ谷「果たして君は本当に理樹君を『これまで』裏切らなかったと言えるのかな?」
恭介「……!?」
人は皆、己自身が震えたつがごとき怪物を飼っている
怪物をむき出しにする種族は、地下の煉獄へと追いやった。
地の底に人が作りし煉獄で、彼は生まれた。
誰よりも己の内なる怪物を、彼は憎悪し、彼は愛した。
地上は冥府。人という種と、人という種の築いた世界の黄昏。
そして彼は再び、彼が生まれた地下の煉獄へと戻る。そここそが、彼の生きる世界。
煉獄こそが、人なる種族が最後にいるべき世界。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
来ヶ谷「実を言うとこれとほぼ同じ場面があったのだよ…そう、あれは確か何周目だったか……まあいい。君達にとってはこれが初めての反撃なんだろうが私達にとっては『ああ、またか』って感じなのさ」
恭介「なん……だと……?」
理樹(来ヶ谷さんの言っていることはつまり、ループされた日の中で前にも同じように反撃を思いついた僕らがいたという事だ)
来ヶ谷「その時、君は後ろに控える理樹君と、横で肩を並べる真人君に対し君はなんて言ったと思う?」
来ヶ谷「『すまない』……だ」
恭介「う…嘘を吐くなーー!!」
来ヶ谷「はははっ!私の言葉をどう受け取ってもらっても構わない。しかし私には分かるんだよ。君が今にもこちらへ近づいてくるのがね」
理樹「恭介!」
恭介「分かってる、安心しろ!こんな言葉に惑わされるほど俺はヤワじゃない」
来ヶ谷「ほう、その威勢がいつまで続くかな?」
真人「へっ!そもそも恭介が理樹を襲ってなんの得があるってんだ?」
来ヶ谷「得だって?それは恭介氏自身が一番分かってるんじゃないかな。君も一度は想像したはずだ。理樹君を独り占めしてあんな事やこんな事が出来たらどれだけ素晴らしいだろう。一度でいいからあのすべすべの肌やサラサラした髪を意のままに弄ってみたい………なんてね」
恭介「………………っ!!」
理樹(いま、一瞬恭介が唾を飲み込む音が聞こえた気がした)
理樹「気をしっかり持って恭介!」
恭介「あ、ああ!」
来ヶ谷「実際君はそうした。一度裏切ったんだ。今更なんの引け目があるだろう!毒を食らわば皿までだ。さあ…無理やり耳を塞いだところで君が守るべき男の友情、幼馴染の絆はとっくに消えているのだよ。謙吾君しかり」
謙吾「そうだ!お前もこっち側に来てくれないと俺の立場が無くなるだろ!」
理樹(謙吾の叫びは特に悲痛なものだった)
恭介「ば、馬鹿な……俺が理樹を裏切るだと……!」
来ヶ谷「さあ…こっちへ来るんだ…なに、1時間後にはなんでこんなことで悩んでいたのか分からなくなるよ」
恭介「俺は……俺は…!」
理樹「恭介!僕は信じてるから!」
来ヶ谷「君はこちらに歩いてくるだけでいい。あとは私達だけでなんとかしよう」
恭介「………………………………」
理樹(恭介が目を瞑った。そして小声でなにかボソボソを喋ったかと思うとクルリとこちらを向いた)
真人「…………っ」
理樹(真人が僕の後ろに身構える)
恭介「理樹……………」
理樹「恭介…!」
恭介「……………ごめんな」
理樹「!」
真人「ば、馬鹿野郎!!」
理樹「う、嘘だよね……?」
来ヶ谷「当たり前の結果だ」
理樹(恭介はそれ以上なにも言わず来ヶ谷さんたちの中に入っていった。もうどんな表情でいるのかも分からない)
来ヶ谷「さあやろうか…どこまで食い下がれるかな?」
真人「ちっくしょおおおおおおお!!」
理樹(真人は1人で闘った。僕が加勢に出ようとすると怪我をさせたくないと下がるよう強い口調で言った)
理樹(しかし流石の真人でも謙吾に来ヶ谷さんまで加わった2人に勝ち目がないのは最初から分かっていた)
理樹(ダメージは与えるものの疲労はどんどん溜まっていって終いには肩で息をするようになっていた)
真人「ぜぇ……ぜぇ……!」
謙吾「はぁ…はぁ……追い詰められてもまだこれ程の力が残っているのか…!」
真人「へっ…へへ……当然だぜ。お前の拳には迷いがある!そんななまっちょろい技で誰が倒れるかってんだ!」
来ヶ谷「強がりはよせ。君はもう立っているのがやっとの状態のはずだ。大人しく倒れておけ…命あっての物種だろう?」
真人「ぐっ……………」
理樹(もはや絶望しかなかった。あとは僕を調理する前の消化試合でしかなかった。葉留佳さんと二木さんと西園さんの3人はもう僕を次にどうしてやろうかと話し合っている。恭介……本当に君って人はそこまでいってしまったのか?)
理樹「恭介!!」
恭介「……………………」
理樹(遠くにいる彼を呼びかける声は思ったより大声になってしまったようで全員が僕に関心を寄せた)
理樹「僕、恭介が一度裏切ったぐらいじゃなんとも思わないよ!謙吾だってそうさ!あの一番辛かった日々、毎日塞ぎ込んでいた日々。そんな僕の前に君達が現れてくれた!もう一度あの時を思い出して!」
謙吾「理樹……………」
恭介「…………………」
恭介「ふっ……そうだな」
恭介「そういえば忘れかけていたぜ。今はお前がリトルバスターズのリーダーだってことをなぁ!!」
来ヶ谷「なにっ!」
真人「それでこそ恭介だぜ!!」
謙吾「お、俺もやっぱり…」
恭介「オラオラー!いくぞ真人!」
真人「おうよっ!!」
ガシッ
謙吾「あっ、ちょっと待て!俺も今改心しかけて…」
真人「筋肉旋風拳!!」
謙吾「グァァァアアアア!!」
理樹(綺麗な瞳になりかけた謙吾がやられた!)
恭介「残る脅威は来ヶ谷ただ1人。やれるか真人?」
真人「フッ…筋肉さんを見くびるなよ…?」
葉留佳「か、佳奈多!ヴェルカとストレルカを!」
佳奈多「いいえ…もう間に合わないわ…」
西園「………これで…良かったのかもしれません…」
来ヶ谷「クッ…一手…誤ったか!」
真人「そんじゃいかせてもらうぜぇ!?」
理樹(数分後。そこには目が回りまくったみんながあちらこちらに倒れていた)
恭介「さあ俺たちを元に戻してもらおうか?」
理樹「待って恭介!」
恭介「ん?どうした。今度はお前が来ヶ谷達に仕返しでもしたいのか」
来ヶ谷「……初めに手を出したのはこちらだ。それくらいの覚悟はある…」
理樹「そんなんじゃないよ。ただ、この世界での出来事は全部忘れておきたいんだ」
恭介「全員の記憶を消してくれってことか?」
理樹「うん…きっと来ヶ谷さん達も魔が差しただけなんだ。だから今回のことは水に流して明日からはちゃんといつも通りの生活に戻したい」
真人「理樹…お前……」
来ヶ谷「……うむ…相変わらず甘いな理樹君は……ま、そこが魅力でもあるんだが」
理樹「来ヶ谷さん…」
来ヶ谷「分かったよ。でもその前に一つ言っておきたいことがある。ほんの些細なことさ」
理樹「?」
来ヶ谷「恭介氏は一度も君を裏切ってないよ。あれはその場で言ってみた思いつきってやつさ」
理樹「えっ……!」
恭介「ははは!そりゃ一本取られたな。ちょっと信じちまったぜ」
来ヶ谷「やっとバカなことをしたと気付いたよ。たとえ今から立場が逆転したところでもう繰り返すこともあるまい。それでは帰ろうか…本当の『明日』へ……」
………………………………………………………………
…………………………………………
…
理樹「……………ふあぁ…」
理樹(上で僅かにベッドの軋む音が聞こえる。真人が寝ているということは今日はかなり早く起きたか真人が朝の筋トレを寝坊したってことだ)
理樹「んん………」
理樹(寝ぼけ眼を擦って無理やり毛布から這い出た。日の光がカーテンから漏れ出て時計に降り注いでいた。光が反射していてよく見えない)
理樹「どっこいしょ……っと?」
理樹(ベッドから起き上がると全身に違和感が走った。動くたびビリリと痺れるような感覚だ。……筋肉痛になっている)
理樹「……………」
理樹(昨日の行動を振り返ってもそこまで激しい運動はしていなかったはずだ。電車に乗って街の定番スポットをぐるりと回っただけだし…まあ、そんな気にすることでもないけど)
理樹「……とにかく顔を洗おう」
理樹(部屋から出る前に目覚まし時計の方を見て時間を確認した)
理樹「なんだ。まだ6時か」
終わり(∵)
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