男「神待ち掲示板、かぁ」少女「……」 (219)
7月終わり
ー大学ー
友「なあ、男。お前は本物の男になったか?」
男「会って早々何だその質問。僕は魔法使い、いや、賢者すら目指してるのにそんなことするはずなかろう。というか顔見てから言え。僕の顔だとそれは不可能だ」
友「そんなお前が考えを変えるであろうサイトを見つけてやった。家に帰ったら絶対にやれ」
男「断固拒否する。どうせ出会い系サイトだろう? 安心要素ゼロだ」
友「俺はもう本物の男になったぜ。それを使って」
男「左様ですか。僕はやらない」
友「まあまあ、騙されて一度やってみろよ。きっと気に入るぜ」
男「騙されたと思ってじゃない時点で不安なんだが………」
ー男の家ー
男「………」カタカタ
男「………」ポンッ
男「ああ、分かった。 神待ち掲示板、か」
男「ここは安全です。料金かかりません。きっといい出会いがあるでしょう」
男「へぇ、こんなに馬鹿な娘どもがるんだな。
『何でもしますから泊めてください』
『○○までオーケーです』
『お金払います。体でも可能です』
男「親御さん泣いてるぞお前ら………ん?」
『助けて』
男「助けて………? 他はアッチ系しか書いてないのに。あ、希望住所この辺じゃないか」
男「………」
男「助けてやるかな。決して手は出さない。これだけは誓って」
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ー最寄駅ー
少女「………」キョロキョロ
男「えーと、少女さん?」
少女「! ………はい」
少女(なんでマスクとサングラス?)
男「連絡取った男です。家はこちらですので来てください」
少女「………」コク
ー男の家ー
男「はい、ではまず少女さんに質問があります」
少女「何でしょうか?」
男「君はなんであんなサイトを使って助けを求めたの?」
少女「………家の、事情」
男「なるほどね。で、夏休みの間ここにいたいと」
少女「………」コク
男「君は僕に何かされる、と考えなかったのかな?」
少女「………仕方、ないです」
男「まあ、そんな考えだろうとは思ったよ」
少女(そう、あんな家にいるくらいなら、知らない男にヤられる方が、マシ)
男「よし。少女さんにここでの生活で僕が提供するもの、君に提供してもらうものを挙げるね」
少女(………来ちゃった)
男「まず僕からは住む場所、食事、あとは必要なものを買うこと、くらいかな?」
少女「………」コク
男「で、君には部屋の掃除、僕の話し相手、そして」
男「勉強」
少女「………え?」
少女「あの、勉強って、え?」
男「そのまんま。今度高校の勉強の難易度教えてよ。参考書買ってくるからさ」
少女「で、でも」
男「高校の夏休みは長いけど短い。家出するのはいいけど勉強しないと行きたいとこいけないよ? あと教師希望だから教えてれて丁度いいしさ」
少女「あの、そうじゃなくて、私の体を………」
男「僕はそういうの希望しない人です。まあサングラスとマスクしてるから怪しさしかないと思うけどさ」
少女「なんで、そんなものを?」
男「見るに堪えない顔だからね。漫画とか小説だとこういうの取るとイケメンでしたパターンがあるけど、それは本の中だけ。実際は本当に見てて気分悪くなるだろうから」
少女「は、はぁ」
男「さて。ルールを決めよう。君がここにいる間は僕の寝室を使ってくれ。机もあるしコンセントもある。不自由はしないよ」
少女「男さん、は?」
男「リビングのソファで十分。体調崩されると困るからね。病院にも連れて行き辛いし」
少女「は、はい」
男「あと念のためのスタンガンいる? 僕はそういうのしないって宣言したけど不安でしょ?」
少女「い、いえ! 大丈夫です!」
男「おおう。オーケー」
少女(いい人、なのかな?)
男(全く。娘の家でに気づかないとかどんだけ馬鹿な親なんだよ)
男「で、後は洗濯物とお風呂のことかな」
男「僕は基本的に8時にバイトに出てって20時に帰ってくるっていう生活をしてるんだ。 ここまではいい?」
少女「はい」
男「それで、僕がバイトに行ってる間に君には洗濯物のお風呂を済ませておいてほしいんだ」
少女「わかりました」
男「お風呂は、そうだな………19時45分にはもうリビングにいるくらいでお願い。鉢合わせになる可能性も0に近いけど念のため、ね」
少女「………」
男「洗濯物は寝室に干して。外とかリビングだと僕に見えるからね。それは困るでしょ?」
少女「は、はい………」
男「ぐらいかな。うん、今日は掃除も何もしなくていいよ。疲れてるだろうから寝ててもいいし」
少女「え、えっと、その」
男「まあ戸惑うのも無理はないけどさ。とりあえず僕は夏休みの間、君に居場所を提供する。君はここで生活する。それだけだよ」
少女(本当に、いい人。私のこと、考えてくれてる)
男「よし。バイト行ってきます」
少女 「あ、あの」
男「?」
少女「いって、らっしゃいです」
男「………」
男(破壊力半端ない。理性先生、お仕事してください)
ーバイト先ー
男「………」セッセッ
先輩(なんか張り切ってるな)
男「あ、お疲れ様です」
先輩「おつー。君は相変わらずのマスクとサングラスだね」
男「先輩を不快にしたくないですからね」
先輩「信用してくれよ。私は君の顔なんかで判断しないよ?」
男「そういう人なのは分かってるんですけどね。不快になるかならないかは別問題なのて」
先輩「奥ゆかしいというか、謙虚というか………あ、そういえばいつもより頑張ってたみたいだけどどうした?」
男「同居人が出来たので少しだけ頑張らないといけないんですよね。貯金で足りるとは思いますが一応」
先輩「同居人? 女か!」
男「ですね。でも泊まる場所と食事提供してるだけなので特に何もないですよ」
先輩「いやいや、男は狼になる可能性もある。犯罪だけはするなよ?」
男「その場合は理性が止めてけれますよ。今までの経験上、ですが」
先輩「二重人格なのか? 初耳だが」
男「というか、うーん。説明しにくいですけど二重人格ではないですね。全然表には出てきませんし」
先輩「なら君の朗報を待ってるよ」
男「悲報だけお届けできるように努力します」
ー男の家ー
男「ただいま」
男(とまあ、今までは誰もいなかったからこの返事が返ってくることもなかったけど)
少女「お、おかえり、なさい」
男「うん、やっぱり頑張った甲斐があった」
少女「?」
男「ご飯にしようか。作るから待ってて」
少女「あ、あの。作って、みました」
男「なん、だと?」
男「ご馳走様! 本当に美味しい!」
少女「お粗末様、です。ありがとうございます」
男「僕お風呂入るから少女はもう寝室にいて。明日から勉強するから今日は英気を養って」
少女「英気って、こういう時に使うんですか?」
男「明日から戦いになるんだ。間違ってはいないさ」
少女「そうですね。では、おやすみなさい」
男「うん、おやすみ」
男(んー、買う参考書は割と難しめにしとくかな。はっ、得意教科苦手科目聞くの忘れてた)
男(まあ、また明日、でいっかなー)
男(………寝るときと風呂入るときは外すけど、やっぱり俺の顔、酷えわ。少女には見せられん)
男「あーっ、気分悪くなってきた。寝るときもつけて寝よう。少女に見られたら一大事だ」
こんな感じでほのぼの系なのを書いていきます
あまり荒まないように頑張ります
>>5と>>6の間
少女「あまり、上手ではないかもしれませんが、居候なのに、掃除と勉強と話し相手だけでは、足りないと思って」
男「僕が食べていいの、これ?」
少女「は、はい!」
男「………ありがとう。いただきます」
男(泣きそうになってしまった。誰かの手料理を食べれるなんて、いつ以来だろう? しかも可愛い女の子の手料理)
男「あ、マスク外すから後ろにいて。顔見られないようにしないといけないから」
少女「わ、私気にしません、よ?」
男「不快になるかならないかは別問題。ね?」
少女「はい………」
男(マスク外して、と)
少女「あ、あの。お味は、どうですか?」
男「………美味い! これからもお願いしていいかって聴きたくなるくらいに美味しい!」
少女「よ、よかった………」ホッ
ー食事中ー
男「家の事情とかは聞かないけど、高校の学力くらいは教えてもらうよ。それが条件だからね」
少女「はい。私の高校は進学校、なので県で2桁に入るくらいの学力です」
男「凄いじゃないか。微分・積分、あとは極座標とかもやるの?」
少女「はい。東大に進学する人もいるくらいなので頭はいい方だと思います」
男「少女さんも?」
少女「さんは、いらないです。学年では真ん中より少し上でした」
男「オーケー。明日買ってくるからそれを基準にして改めて教えてよ」
少女「はい!」ニコッ
少女(こんなにも、私のことを考えてくれる人なんて、今まで、いなかった)
男(全く。料理ができて可愛いのに、なんであんなとこに助けを求めたんだ? 家が悪いのか? まあ、ここで少しでも安らげればいいんだけどな)
男「んっ………」
少女「あの、朝、です」
男「おおっ!?」
少女「」ビクッ
男「起こしてくれたの?」
少女「私の方が早かったので」
男「5時っ! 早起きだね! ありがとう!」
少女「朝ご飯作りますね」
男「うん」
男(でも、今時の高校生って5時起床できるのか? アラームも何もなしで。携帯はあるみたいだけどアラーム鳴ったって感じなかったしな)
男「少女」
少女「はい?」
男(エプロンなんてあったっけ? いや、ご馳走様です)
男「じゃなくて、5時起きって普通か?」
少女「じゃなくて………? あの、そこは聞かないで貰えると、ありがたい、です」
男「そっか。ごめんな」
少女「い、いえ! 話せるようになったら、話します、ので」
男「ん、そうしよっか」
ー朝ごはんー
男「手料理、やっぱりいいね!」
少女「あ、ありがとうございます!」
男「あ、そこにあるパソコンでネット使えるから使ってもいいよ。掃除とかしっかりやってくれるなら、だけど」
少女「い、いいんです、か?」
男「やることやった人にはきちんとその報酬がないとね。携帯だけだと暇になるだろうからいいよ」
少女「………ありがとう!」パアァァッ
男(輝いて見える。こんな僕でも、笑顔に出来るなら許可してよかったよ)
男「そうそう。苦手科目と得意科目のこと聞きたかったんだよね。教えてくれない?」
少女「えっと、現代国語と古文、漢文、英語と地理、世界史、化学は出来ます。でも、生物と数学全般が分からなくて………」
男「凄いね。なら生物と数学買ってくるよ」
少女「はいっ」
男「あ、時間だ。バイト行ってきます」
少女「いって、らっしゃい」ニコッ
男(いつもの1.3倍頑張れそう)
ーバイト先ー
男「少し調子に乗りすぎた感はあったけど、なんか一瞬で今日の分終わったな」
先輩「絶好調だね。同居人ためにそこまで出来るっていうのは凄いよ」
男「まあ、今現時点で生命線なの僕ですからね」
先輩「女の子のことで困ったことがあるなら私に相談しなよ。君には言いにくいことでも女同士なら話せるかもしれない」
男「あ、そうですね。甘えさせていただきます」
店長「おー、男君。いい働きっぷりだね」
男「うす」
店長「時給上げたいんだけど、もう少し待ってくれ。今上に交渉してるんだ」
男「?」
店長「正社員よりも仕事のできるアルバイトで入ってる男君。正式に迎え入れるかもしれないっ、てね」チラッ
先輩 メソラシッ
男(まさかの就活しなくてもいい可能性が)
店長「マスクとサングラスが問題にならないほどの能力だからね。9割がたオーケー貰えるはずだよ」
男「ありがとうございます」
店長「それが決まったら離さないためにも時給上げるからね。頑張って」
男「うす」
先輩「いいなあ、君は。私なんか頑張っても認められないし」
男「もう少しやる気出せば代わりますよ。というか、先輩と僕と同じように誰かのために働いたらどうですか?」
先輩「私は私のために働く!」
男「それだから認められないんすよ」
先輩「なにぃーっ!?」
ー本屋ー
男「んー、数学はチャートでいいかな。生物は暗記と演習だからこれ買ってって」
男「まあ、これくらいかな? 後は少女次第だ」
ー男の家ー
男「ただいま」
テテテッ
少女「おかえりなさい」
男「いい匂いする。作ってくれてありがとうね」
少女「いいえ。全然です。こちらこそありがとうございます、です」
男「あ、そうそう。これでバイト先の先輩さんに必要な物品とか教えといて」
少女「?」
男「デリカシー無いとか言われてもいいからいうけど、生理とかそういうの。必要になるでしょ?」
少女「! はい。お借りします」
男「ん。ご飯、いただきます」
少女「どうぞです!」ポチポチ
男(ガラケーが使えるとは。やるな、こやつ)
少女「♪」(久しぶりに触ったな、これ♪)
少女「も、もしもし」
先輩『誰だい?』
少女「男さんの家で、居候してる、少女と言います」
先輩『ああ、君が。私は先輩だよ。相談ごとかい?』
少女「えっと、その、生理用品を、買ってほしいなぁって、思ってて」
先輩『やっぱりね。男君は今まで異性とのおつきあいしたこと無いからそういう配慮に欠けるんだよ』
少女「で、でも、いい人、です」
先輩『それは100も承知の事だよ。まあ、君が男君を変えてやってくれ。今、一番それが出来る可能性があるのが君だ』
少女「え?」
先輩『バイトでの張り切りようが凄いんだよ、あの子。今までも凄かったけど、それとは比べものにならないことになっててね』
少女「………」
先輩『今まで貯金だー、将来のためだーって言ってたのに同居人、つまり少女のためにって言ったんだよ?』
少女「!」
先輩『まあ、無理はしない程度にね。マスクとサングラスを外させたら花丸満点だけれど、あまり急ぎすぎてもいけないからね』
少女「はいっ!」
先輩(大丈夫かな)
先輩『じゃ、買っとくね。明日男君に渡してもらってくれ』
少女「ありがとうございます」
先輩『いやいや。また電話してくれ」
少女「はいっ!」
先輩『じゃあね』
少女「ありがとうございました!」
プツッ
少女「………ありがとう、ございます。男さん、先輩さん」
男「ご馳走様」
少女「お粗末様です」
男「さて、勉強しよっか」
少女「はい………」
男「あ、やっぱり、嫌?」
少女「苦手科目やるのはどうしても、という感じです………」
男「苦手科目を得意科目に変えてあげるよ。任せて」
少女「………はい!」
男「生物は暗記と演習だからあまり教えられることないけどね。数学ならどれでも教えられるよ。Ⅰ、A、Ⅱ、B、Ⅲのどれが一番厳しい?」
少女「ⅡとBが難しいです」
男「ん、わかった」
ー勉強開始ー
男「数列は?」
少女「ここまでなら」
男「ならここからチェックしてある問題をやってくよ。してない問題は大凡試験には出されないような特殊なのばっかりだから」
少女「はい。あ、初めの方から分かります」
男「基礎は出来てるんだ。後は応用かな。待ってて」
〜〜〜
少女「………凄いです。学校なんかよりも、全然分かりやすかった」
男「僕も少女がここまで一瞬で理解出来るとは思ってなかった」
少女「あ、私のこと低く見てませんか?」
男「いやいや。今日明日だけで数列終わりそうな勢いなんだよ?」
少女「男さんの教え方が上手だからです」
男「ありがとうね。とりあえずここまでにしようか」
少女「はい!」
男「僕はお風呂入ってくるね」
少女「ふわっ………はいっ」
男「眠そうだね。もう寝てていいよ」
少女「そうさせて、もらいます」
男「おやすみ、少女」
少女「おやすみなさい………」
ー寝室ー
少女「Zzz………」
携帯 ヴーヴー
少女 ビクッ
少女「………」
着信 母
少女「………」
少女「………」
携帯 ヴー…
少女「………」
少女「もう、切っておこう、かな………」
少女「あっ、でも、男さんの、連絡先、聞きたいしな………」
少女「………」ウロウロ
少女「………」
少女「………」ソローッ
男「Zzz………」
少女「………」
ー翌日ー
男「さすがに二日連続で起こされるのは申し訳ないので先に起きたけど」
少女「Zzz………」
男「どうして隣にいるのかな? 危うく夢かと思ってベランダから飛び降りかけたんだけど」
少女「………はっ!」
男「おはよう。どうしたの?」
少女「おはよう、ございます。その、えっと、言い訳させてもらっても?」
男「どうぞどうぞ」
少女「あ、悪夢を見て、それで、眠れなくなって。それで、男さんの、隣ならって、思って………」
男「僕だから問題ないけど他の男たちにそれやると危ないよ?」
少女「分かってます。男さんだから、安心できるって、思ったんです」
男「嬉しいといえば嬉しいんだけどね。朝ご飯お願い出来る?」
少女「は、はいっ!」
男(実家だとそんなことも出来なかったんだろうな。というか、悪夢を見ること自体そんなにあることじゃないだろうに)
少女(望まれて何かをするって、こんなに楽しいんだ。知らなかった、な)
本日はここまで
平和に幸せに生活してるのを書くのは楽しいですね
1はバイトしたことないのでそこはツッコミなしでお願いします
ー朝食後ー
少女「お、男さん!」
男「どうしたの?」
少女「男さんの、連絡先を、教えて欲しいなって、思って」
男「ああ、教えてなかったっけ。それもそうだね。はい」
少女「あ、ありがとうございます!」
男(なんか、犬みたいにすごい尻尾振ってるのが見えた気がする。可愛いなぁ)
少女「終わりました」
男「ん。じゃ、行ってきます」
少女「行ってらっしゃい」
少女「………そういえば、男さん、お昼ご飯、どうしてるんだろう? 私は、大丈夫だけど」
少女「………」
少女「………」カタカタッ
ーバイト先ー
男「よっ、と」
先輩「それっ」
男「あ、お疲れ様です。僕と同じ時間に終わるなんて珍しいですね」
先輩「気のせいか最近君の言葉に棘が出てきた気がするよ。私だってやればこれくらいできるんだ。それから、ほら、これ」
男「少女のですよね? ありがとうございます」
先輩「お礼は今度少女さんと君と私の3人で食事に行く、というので手を打って貰おうか。お代は私と君の割り勘でね」
男「いいですよ。今週末でいいですか?」
先輩「いいよ。場所は少女さんに任せる、と伝えてくれ」
男「了解です」
ー男の家・午前ー
少女「………うん、これなら、出来そう」
少女「………? ここ辺りの、住所?」ポンッ
【強盗傷害、窃盗、器物破損等の容疑で〜】
少女「この辺りにも、いるんだ」
少女「男さん、大丈夫、かな………?」
少女「あっ、やることやらないと」パタンッ
少女「まずは掃除機をかけて」
少女「窓拭きして」
少女「上拭き」
少女「お風呂掃除して」
少女「自分の洗濯物畳んで」
少女「男さんの、は………乾いてない」
少女「あ、お昼ご飯。何食べようかな」
ー男の家・午後ー
少女「ん、これなら、男さんにも、食べてもらえる、かも」
少女「あ、昨日の復習しないと。折角分かったんだから」
少女「………」カリカリ
少女「………」カリカリ
少女「………」カリカ…
少女「………Zzz」
少女「………っ! やっぱり、1人だと集中できない、な……… あっ、ご飯つくろ」
ー男の家ー
男「ただいま、少女」
少女「おかえりなさい。ご飯、出来てます」
男「うん、ありがとうね。それと、今週末に先輩と少女、僕の3人でご飯食べに行くことになったから。よろしくね」
少女「え、えぇっ? 私も、ですか?」
男「うん。これ、先輩からのやつね。それのお礼として、だってさ」
少女「で、でも、私、お金………」
男「今、君は、僕の、同居人。一時的とはいえ僕がここの主人なの。だから、お金のことは僕に任せて。いい?」
少女「………なら、甘えさせて、もらいます、ね?」
男「ん、素直でよろしい。あとどの店かを決めるのも少女なんだけど、希望決めといてね」
少女「………! なら、ファっ」
少女「ファミ、ファミリー、レストラン、が、いい、です………」
男「いいけど、どうしてそんな自信なさげにするの?」
少女「こういうときに、あそこを選んでいいのかなって、思って………」
男「少女に選択権があるんだからいいんだよ。先輩もそういうの気にしない人だから大丈夫。というか、ここ数日一緒に過ごしてわかるでしょ? 先輩とも電話で話したし」
少女「は、はい」
男「なら気にしない。行きたいとこに行きたいって自信を持ってはっきりと言うんだ。僕は理由がない限り理不尽に否定するような真似はしないからさ」
少女「っ、はいっ!」
男「ん。ご飯、いただきます」
少女「どう、ぞ」ウルッ
男(こんなことで泣くほど、かぁ。一体どれだけ環境が酷かったのか想像することも難しいな………)
ー夕食後ー
男「よし。今日は昨日の復習してからベクトルやろうか」
少女「復習はだいたい終わってます」
男「なんだって?」
少女「ただ、途中でウトウトしちゃったので、全部は出来なかったんですけど………」
男「後はどこが終わってないの?」
少女「ここです」ペラッ
男「ああ、最後の応用だけなんだ。ならすぐに終わらせられるね。やっぱり少女は凄いよ」
少女「そ、そんなこと」
男「自分から自分の時間を使って復習しようなんて、なかなかできるものじゃないからね。うん、尊敬する」
少女「あ、ありがとう、ござい、ます」
男「よし、始めようか」
少女「はい! お願いします、男先生!」
男「! ん、任せて」
〜〜〜
少女「ベクトルって、思ったよりも、簡単なんですね」
男「その言葉を聞いたら全体の受験生の半分が発狂するだろうね」
少女「えっ?」
男「ベクトルを理解せずに例題の暗記で挑んで痛い目見る人結構いるからさ」
少女「なんというか、実際にやったことあるみたいな、口振りですね」
男「そ、そんなことないよ。うん」
少女 ジトー
男「さー、今日は終わり。お疲れ様、少女」メソラシ
少女「いえ、ありがとうございました。男さん」クスッ
ー翌朝ー
トントンッ
ジューッ
~♪
男(………懐かしい、音と、匂い。それに、鼻歌?)
男 ムクリ
少女「あ、おはよう、ございます」
男「少女? えっ、まだ5時前だよ。どうしたの?」
少女「その、男さんに、お弁当渡せらたらなって、思って」
男(もうこの子専業主婦になれるよ。もちろん僕のようなやつの、じゃないけど)
男「確かにいつもは向こうで何か買ったりしてたけども。少女の負担は大丈夫なの?」
少女「全然平気です。むしろ、こんなことでお役に立てるのなら、それだけで幸せなので」ニコッ
男「僕みたいなのにはもったいない言葉だね。でも、ありがたくいただくよ」
少女「はいっ!」
男「なら、僕はゆっくりさせて貰おうか」ヴーッヴーッ
男「こんな朝早くに……… 少女、少し電話してくるね」
少女「はい」
ーベランダー
ピッ
友『よっ。例のサイトを使ってみた感想はどうだ?」
男「ん、小型犬みたいな子を1人保護した」
友『保護って……… どうせ違うんだろ。しっかり』
男「そういうのはしねえっての」
友『あーあ、アレでも変わらないのか。お前のその理念というか、生き方というか、固定観念は……」
男「悪口言うだけならきるぞ」
友『待て待て待て。お前のとこの女の子はいつまで滞在するんだ?』
男「は? いきなりなんだよ」
友『いいから、教えろよな』
男「来週一杯はいると思う。夏休みの間中って言ってたから」
友『それなら今度の休みに俺と俺の彼女と一緒にどっかに行かねえか?』
男「んー、いいといえばいいけども。どうした?」
友『ただ自慢したいだけ』
男「あっそ。今週末は無理だから来週末な」
少女「あ、終わりました、か?」
男「うん。来週末も予定勝手に作っちゃったけど付き合ってくれるかな?」
少女「は、はい。何をするんですか?」
男「僕の友人とその彼女さん、それに僕と少女の4人でどこかに出かけるってさ。ま、場所については向こう任せでいいから気にしなくていいよ」
少女「はい」
男「ご飯いただきます」
少女「どうぞ」
男「………そういえばさ」
少女「?」
男「僕が食べてる間、不快になるから一緒に食べるのはダメって言ってるから少女は朝ごはん食べれないんだよね?」
少女「あっ、その、それは、大丈夫、です」
男「いやー、さすがに申し訳なさがな………」
男(少女はいい子だし、大丈夫、なのか?)
男「約束事を守れるなら、一緒に食べよう?」
少女「! 守ります!」
男「僕の隣に座って、僕の方を見ないで食べること。いい?」
少女「はいっ!」
男「ん、ならどうぞ」スッ
少女「失礼します」ストンッ
男(これだとテーブルの大きさが丁度いい感じになるな。大きめの買っといてよかった)
少女「いただきます」
少女(誰かと、それも、私のことを考えてくれる人と一緒にご飯を食べるのは、本当に、美味しい、な……)ポロポロッ
男「えっ、えっ、ちょっ、少女!?」
少女「?」
男「なんで泣いてるの? 僕が悪い? もしかして調子に乗った提案だった? ごめん、本当にごめん」ワタワタ
少女「あ、あの、えっ、泣いて? 男、さん、待っ、なんで………」ポロポロッ
男「ああ、とりあえず、ティッシュ! それから、ハンカチ! あとは、目薬、違う、えっと」
少女「だ、大丈夫ですから、落ち着いて、下さ、い」
男「いや、僕が原因でしょ? 今までも顔が原因で女の子泣かせたことあるからそれと同」
少女「ち、違いますっ!」
少女「その、これは、う、嬉しく、て」
男「嬉しい?」
少女「一緒に、話しながら、楽しく、朝ごはん食べられるのが………」
男「僕なんかと?」
少女「………」コクッ
男「お、おおう。それは分からなかった。ごめんね、取り乱した」
少女「わ、私の方が、問題なので、大丈夫、です」
男「んー。とりあえず食べようか。冷めちゃう」
少女「そ、そうしましょう、か」
一旦中断します
ー朝食後ー
男「少女」
少女「は、はい」
男「さっきのことは深くは聞かないけど、僕の顔が原因じゃないんだよね?」
少女「違いますっ」
男「うん、わかった。しつこくてごめんね。不安になってさ」
少女「不安?」
男「僕の過去のことでちょこーっと、ね。気にしないで」
少女「………はい」
男「そう暗くならないで。ほら、えーと、あれだ、こう……… どうしよう」
少女「男さんもどうしていいか分からなくて、困ってるじゃないですか」クスクス
男「あ、笑ってくれた」
少女「?」
男「うん、少女は笑っててよ。それだけで、僕の働くための原動力になるから」
少女「………」
男「………黙らないで下さいすごい恥ずかしくなってくるんですよこういうの。これは、なんというか、家にいる人のために、頑張れるっていう風に言ったのであってーーー
(あー疲れた……… あ゙? なんだ、その目。俺に何しろってんだ)
(おなか、すいた)
(はぁぁ!? 逆に俺に作れよ! お前の分作ってどうすんだよ!)
(ねえ、夕飯はどこにあるの?)
(つくれなかった。なにもわか)(ふざけないで! 私は疲れて帰ってきてるの! それなのに、それなのに!!)
(なんで自分勝手なやつのために働かないといけねえんだよ)
(親のために何もやらない子なのね)
(生まれてきやがって、この屑が)
(さっさと消えてくれないかしら)
ーーーう女。少女?」
少女「っ!!」ギリッ
男「少女! そんなに強く握ったら手怪我する!」
少女「男、さん」
男「どうした? また僕何かした? ごめん。本当にデリカシーの欠片もなくて1ミリの気遣いも出来なくて人のためにならなくて」
少女「そんなことないっ!」
男「!」
少女「男さん、そんなに自分を、卑下しないで。私は、ここに来て、もう十分に、安らげてるの。男さんの、おかげでね。だから、お願い。もっと、自分を、大事に、して?」
男「………」
少女「勝手で、ごめんなさい。でも、本当に、そう思ってる、から」ポロポロ
『助けてやるかな。決して手は出さない。これだけは誓って』
男(手は、出さない。だから、僕がかけられるのは、言葉だけ、だ)
男(少女は僕の本質を見ようとしてくれている。本当にいい子だ。だからこそ、僕がしてあげられるのは、これからの手助けだけ。でも、言ってることを受け入れないことには始まらない、か)
男「………分かった。なるべく、だけどこれから自分を卑下していくのはやめるようにするよ」
少女 グスンッ
男「ああ、それから、ね。えーと、そうだ! 少女の誕生日! いつなの? よければ教えてよ」
少女「………8月、18日、です」ヒック
男「ええと、その日は土曜か。いいや、その日はバイト休んでどこかに連れてくよ。好きなところ決めておいて。ああ、何かお願いしてばっかりだ。でもこうする以外どうしたら………」
少女「誕生日」クシクシ
男「へ?」
少女「男さんの、誕生日、は?」
男「僕のは8月19日だけど」
少女「私の方は、いいから。19日。その日に、どこかに、連れてって。私の夏休み、8月一杯、あるから」
男(まあ、確かに今週、来週は埋まってて僕の誕生日は日曜だから都合いいと言えばいいけど)
男「希望とかある?」
少女 フルフル
男「んー、なら考えとくよ。それでいい?」
少女 コクッ
男「よしオーケー。時間も時間だから行ってくるね」
少女「………」
男「………無理そうなら今日は寝ててもいいから、ね?」
少女「ううん、やる………行って、らっしゃい」テフリフリ
男 テフリカエシ
男(自分を卑下しないで、か。10年近く続けてきたことだからなー。やめられるかな? いや、やめないと、な。少女を泣かせるわけにも、いかない)
ー男の家ー
少女(やること、終わった、けど………)
少女「少しのフラッシュバックで、あんなに取り乱しちゃうなんて」
少女「どうしよう。男さんに、迷惑、かけちゃった」
少女「………でも」
(この屑が)
(消えてくれないかしら)
『君に居場所を提供する。君はここで生活をする』
『理由がない限り理不尽に否定するような真似はしないからさ』
少女「男さんの、かけてくれた言葉。それだけで、大丈夫に、なれそう」
少女「誕生日も、今までは、嫌な日だったのに」
少女「今は、待ち遠しいと、思える」
少女「えへへっ、やっぱり、男さんは、いい人です」
少女「8月19日、何か、ないかな」
少女「………」カタカタッ
少女「………」ポンッ
少女「あっ、これっ」
少女「………覚えて、おこうかな」
少女「あっ、昨日の復習しないと」
〜〜〜
少女「時間も時間だから一旦切り上げよ。お風呂に入って」
少女「洗濯物回して」
少女「晩御飯作って」
少女「少し時間残ったな。あと少し、終わらせよう」
少女「………」カリカリ
〜〜〜
男「ただいま」
シーン
男「少女ー?」
男「もしかして、倒れて………!」タタタッ
男「少っ」
少女「Zzz………」
男「………寝てるだけ? よかったぁぁぁ………」
男「でもここで寝るのはよくないだろ。あ、でも朝の件で疲れたかもな………」
男「てことは、僕のせい………」
男「………起こすためだ。これは手を出すのではない。少女、起きて」トントン
少女「んぅ、あと、少し………」
男「ご飯食べられないよ」
少女「ごは、んっ!!」ガバッ
男「お、おお。おはよう」
少女「あ、お、男、さん。おはよう、ございます」
男「お腹減ったし、食べよう?」
少女「は、はいっ」
ー食事・勉強終了ー
男「うん、今日も今日とて少女は凄い。これなら夏休みの間に数学全部カバーできそうだ」
少女「男さん」
男「どうした?」
少女「その、誕生日の、ことなんですけど」
男「うん」
少女「やっぱり、私が決めても、いいですか?」
男「あ、そのこと。いいよ」
少女「そ、その場合、期限は、何時までに?」
男「予約が必要でなければ直前でも大丈夫」
少女「よかった……… ありがとうございます」
男「どうかした、っていうのは聞いてもいい?」
少女「それは……… 先輩さんと相談したいことなので、少し待ってて下さいませんか?」
男「そっか。うんわかった。待ってるね」
本日分は以上です
はじめにほのぼの系と言ったな
あれは嘘だ
訳→はじめにほのぼの系と言いましたが物語の都合上これから先ほのぼのしない部分が出てきます。はじめに書いたことと異なってしまいますがどうかよろしくお願いします
ー数日後・バイト先ー
先輩「男君よ。明日がなんの日か分かっているかい?」
男「僕と少女が先輩に奢ってもらえる日です」
先輩「わ り か ん だ」
男「冗談ですよ。場所は前伝えた通りに僕の家の近くのファミレスです」
先輩「でも少女さんがそんなところを選ぶなんてね。彼女は高校生だろう?」
男「高校2年ですね(多分)」
先輩「ふーむ。余計な詮索は当日本人に聞くしかあるまい」
男「あ、その素振り見せた瞬間に少女連れて帰りますね」
先輩「!?」
男「少女が自分から話すまでは深くは聞かない………これは僕が勝手に決めたルールです。先輩もそれに則って下さい」
先輩「………仕方ない。そんなに真剣に話されたら乗るしかないじゃないか」
男「ありがとうございます。じゃ、着いたら連絡下さい」
先輩「ああ」
先輩(勝手な推測だが、家族単位や大人数でどこかに行ったことがない、ということか? そうでもなければこういう時に行きたいとは言わないだろう。ただ節約家なだけなのかもしれない、が……… 言動にも気を付けなければなるまい。くぅ、二人の関係とか、いろいろとからかってやりたいのにそれが出来とは……… 辛いな)
ー男の家ー
男「………」
少女「うーん、なんでここで2θが……… あっ、そういえば、明日ですよね」ソワソワ
男「うん。あ、そこは半角の公式ね」
少女「なるほど。それから……… えへへ、何食べようなぁ」ワクワク
男「うん、目の前の勉強に集中……… 出来るわけないね」
少女「あっ、ご、ごめんなさい」
男「いいよ。少女、この時間をファミレスのメニューをネットで調べて考えるのに当てて。その間にお風呂済ませてくる」
少女「はっ、はい!」
男(ファミレス、か。僕も行くのマスクとサングラスつけるようになる前、以来だな。不審者とか言って通報されないことを祈ろう。結構切実に………)
ー翌日ー
少女「〜♪」
男「ご機嫌だね」
少女「だって、今まで行けなかったところなんですよ? それに、やっぱり大人数で食べるのって、楽しいと思うんです」
男(………先輩には一応言っといたけど、保険として僕が踏み込んでおくかな)
男「やっぱり、行ったことないんだ?」
少女「………そう、です。実家では、そういうのは、無かったです、から」
男「なら来週の俺の友人と会った日にも食べに行かないとな」
少女「………!」コクコク
携帯 ヴーッ ヴーッ
男「お、先輩は着いたみたいだ。僕たちも出ようか」
少女「はいっ!」
4
ーファミレスー
先輩「やぁ、男君。それから、少女さんかな?」
先輩(なんだ、至って可愛らしい普通の子じゃないか。男君はこの子から一体何の影響を受けているのだ?)
少女「は、はじめまして」
少女(大人の女性って感じが、すごい人だなぁ……… 私も、なれるかな)
男「お疲れ様です。入りましょうか」
先輩「それはやっぱり外さないんだね」
男「マスク&サングラスですか?」
先輩「そうだよ。ねぇ、少女?」
少女「男さんには、男さんの事情がありますから」
先輩「な、なんていい子なんだ」
男「普段から取れ取れ言ってる先輩とは大違いですね」
先輩「だって、気になるじゃないか?」
男「そういうところが………」
少女「は、入りましょう!」
ー店内ー
「いらっしゃいませ。3名様でよろしいでしょうか?」
男「あー………」
少女「………」
先輩「………ああ。それで頼む」
「かしこまりました。では御席にご案内致します」
男(て、手馴れてる)
少女(先輩さん、すごいなぁ)
先輩(少女さんはともかく男君もかい? 対応に困ってる二人の様子可愛かったけど)
「ご注文が決まりましたらお呼び下さい」
先輩「ありがとう」
「では失礼します」
男「さすが先輩。人生経験豊富だとこういう時に有利ですね」
先輩「あのなぁ。これくら、い」
『余計な詮索は当日本人に聞くしかあるまい』
『あ、その素振り見せた瞬間に少女連れて帰りますね』
先輩(………普通じゃなかったかもしれなきのが、少女さん。ある意味詮索と判断されてしまうかもしれないな。言葉にするのは控えるべきか)
先輩「大人としては普通だ。君は大学生なんだから、もう少し常識を知りなさい」
男「痛いところを……… でもこの装備だとどこに行っても」
「お客様」
男「………こんな風になるんですよ」
「サングラスとマスクを併用していると周りのお客様に不審がられる可能性があります。せめて店内ではサングラスは外して頂きたい、と思うのですが」
先輩「それは、どうしてもか?」
「申し訳ありません。どうしても、となります」
少女「な、なら、ここ、出ますか?」
男「………いや、その必要はないよ、少女」
先輩(………君は、少女のためなら、どこまで優しくなるつもりなんだ? 今まで何をしても、外そうとしなかったサングラスを外すなんて)
男「と、言いましても心の準備がありますので御手洗でしばらく待機してきますね。注文は、そうだな。少女、任せた」
少女「え、えっ?」
男「食べたいのを二つ選んで半分ずつにすればよりお得だろ?」
先輩「む、なら私の分も選んでいいぞ。3等分しようじゃないか」
少女「は、はいっ。ありがとうございます!」
男「んじゃ、ちょっと失礼しますね」
先輩「行ってら〜」
少女「………」パラッ
ー洗面所ー
男「あー、どうするかな。ここも人来るから早くしないといけない。でもなぁ、取るのは………」
男「取らないと周りからの視線に晒されるし取っても二人に見られる。はっ、ならいっそ出て行くというのも」
男「………ダメだよな。せっかく少女が選んだ店なんだ。途中退室は認められない」
男「………」カチャッ
男「あー。あー、あー………」
男「二人とも、何も言わない、はずだ、きっと、大丈夫」
男「さて、行くか」
ーテーブルー
少女「………選べました」
先輩「なら注文しようか。そのボタン押して」
少女「これ、ですか?」ピッ
ピンポーン
少女「?」
「ご注文承ります」
先輩「さ、どうぞ」
少女「あっ、えっと、このーーー
ーーー、でお願い、します」
先輩「すみません、あとドリンクバーも3つお願いします」
「かしこまりました。では、もうしばらくお待ちくださいませ」
少女「はぁ」
先輩「なかなかセンスいい注文するね」
少女「へっ?」
先輩「バランスがいいなって思ってね。3等分するって聞いた時から考えてたのかな?」
少女「………やっぱり、普段の食事と、同じようにしないとって、思いました」
先輩「普段? ということは君がご飯や弁当を作ってるのかい?」
少女「はいっ。男さんに、美味しいって言ってもらえました」ニコッ
先輩「なんと、まぁ、こんな可愛い子に作ってもらって……… 」
先輩(今度絶対仕事場でからかってやる。愛妻弁当ですかーっ、てね)
少女「あっ、男さん、いないし、先輩さん」
先輩「ん?」
少女「な、なんだか悪戯っ子みたいな顔してますよ?」
先輩「気ーのせい気のせい。どうしたの?」
少女「そ、相談事なんですけども」
先輩「ほうほう」
少女「8月19日が、男さんの誕生日で」
先輩「そうなんだ」
少女「8月18日が私の誕生日なんです。それで、19日が日曜日だから、その日に、私と男さんで出掛けるんです」
先輩「へ〜〜〜」
少女「それで、調べたら、19日にこの辺りでお祭りがあるみたいで」
先輩「あ、確かにあるね。それに行きたいんだ」
少女 コクッ
先輩「なら着物探さないとね。どこにしまったっけ」
少女「えっ! それ、あ、嬉しいです、でも違うんです」
先輩「違うのか」
少女「男さんは、そういうの、喜んでくれる人かなって、相談、でした」
先輩(健気っ! 真剣っ! 可愛いっっ!!)ダンッ
少女 ビクッ
先輩「ああ、すまない。喜ぶと思うよ。私から着物も貸すことにしよう。それならどうだ?」
少女「で、でも、汚しちゃったら」
先輩「そんな心配ないさ。君の性格と、男君のことを考えたら汚すなんてことにはならないだろう」
少女「………ありがとう、ございます」
先輩(うん、この子はからかうんじゃないな。愛でよう、めいいっぱい)
男「戻りました」
先輩「おっ。おかえり」
少女「おかえりなさい」
男「なんの話で盛り上がってたんですか?」
先輩「秘密の話さ」
少女「ヒ、ヒミツです!」
男「そう。ならいいんですけど」
先輩(さて、肝心の男の顔、は、………右目辺り全体に火、傷かな? マスクの下まで続いてるようだが………)
少女(左目、周りにいろんな切り傷が……… それも、たくさん………)
男「顔のことは気にしないで下さい。でも、食欲なくなりそうなら、それは言ってくださいね。すぐに席立ちますんで」
先輩「ん、別に気にならないさ。言っただろう? 顔のなんか気にしないって」
少女「私もですよ? 男さんは、男さんです」
男「………ありがとうございます、先輩。ありがとうな、少女」
男(二人とも、いい人なのは分かっていた。こうなることも。でも、マスクは、外せない)
先輩「食べる時にマスクはどうするんだ、男君?」
男「マスクの下から食べますよ。さすがにこれ外したらレッドカード一発KO退場ですからね」
先輩「そらだと汚れないか?」
男「替えなら持ってきてます。心配無用ですよ」
少女「な、並んで食べる、のは?」
男「さすがに無理があると思うよ。2人掛けのテーブル2つを合わせてるものだから、厳しいと思う」
少女「そ、そうです、か」シュン
男「まあ、家では、ちゃんと外すからさ」
先輩「待て。聞き捨てならないこと聞いてしまったぞ私は」
男「はい?」
先輩「家では食べるときにマスクを外すのか?」
男「バイト先でも外してますよ」
先輩「並んで、と少女は言っていた。なら少女と一緒に食べてるのだろう?」
男「そうですよ」
先輩「私と食べることは拒むじゃないか。なのにマスクを外して一緒に食べてるのか?」
男「ええ」
先輩「………分かった。よく考えるとここは人の目もたくさんある。外さないほうがいい、と判断したならそうしたほうがいいのだろう」
男「いや、先輩の前じゃ絶対外しませんよ」
先輩「何故だ!?」
男「なんというか………嫌なんです」
先輩「少女さん。彼がいじめて来るのだがどうしたいい?」
少女「えっと、もっと真剣になる?」
先輩「少女さんからも男君と同じこと言われた!?」
「失礼します。こちら、ご注文されたものになります。それから、お客様」
先輩「なんだい?」
「店内ではお静かにお願い致します」
先輩「………もう、いいよ。ふん、だ」
ー食後ー
少女「………」
男「どうした? まだ足りない?」
少女「あ、いえ、美味しいなって思って」
男「いや、僕としては少女の料理に旗が上がるな」
先輩「そんなに美味しいんだ、少女さんの料理は」
少女「い、いえ。そんなこと、ありません。ただ、やっぱり、みんなで話しながら、食べるのが、一番だなって、改めて思いました」
男「………うん、そうだね。また来よっか」
少女「はいっ!」
男「今度こそ先輩が奢ってくれるだろうからね」
先輩「そうだな、少女と私の二人のときならそうしようじゃないか」
男「よし、少女。先輩のことバンバン誘ってあげろ」
少女「え、なら、またお願いします」ペコッ
先輩「お願いされるよ」
男「さ、て。出ますか」
少女「はい」
先輩「私も用事があるのでそうしてもらえるとありがたいよ」
男「合コンですか?」
先輩「私の魅力がわかる人はなかなかいないのでね。合コンなんかで見つかるとは思えないよ」
少女「合コン………」
先輩「いや、少女さん? 違うよ? 違うからね?」
ーファミレス・外ー
少女「ご馳走様でした」
男「ありがとうございました、先輩」
先輩「いやいや、なかなか貴重な体験だったよ。いろいろと、ね」
男「そうですか」
先輩「うん……… 男君、少女さんから目を離したらダメだよ?」
男「もとよりそのつもりはないですよ。家で預かってるって立場なんで」
少女「………」
先輩「そうじゃなくてね。まあ、いい。その内気付くだろうから」
男「?」
先輩「ではな。男君はまた明日。少女さんはまた今度、ね」
男「ええ、さようなら」
少女「ま、またお願いします!」
先輩(なんだかんだ、君は人からの思いに鈍い。いい点でもあるが、悪い点でもある。対して少女さんも自分の思いに自覚がない、とでもいうのかな? 面倒な二人が組み合わさった。どうなるか見物して、偶にちょっかいかけてやろう)
本日分はここまでです
ー帰り道ー
男「少女」
少女「はい?」
男「丁度いいし買い物して帰ろうか。必要分の買い物とか、食材とか」
少女「し、したいです、したいです! 私が荷物持ちます!」
男「うん、全部は持たせないよ。半分ずつで持とうね」
少女「あ、あと、買ってほしい物が、あるんですけど………」
男「なんだい?」
少女「お、お弁当の、ための、料理本を………」
男「それってもしかしなくても僕のため?」
少女「………」コクッ
少女「もちろん、だ、だめなら、いいですよっ!」
男「いや、そうじゃなくてね。買おうか、うん」
男(こんなやつのためにそこまでしてくれるなんて……… いい子だな、本当)
ー食品店ー
男「おぉー、カゴにいつもの倍近い食材が」
少女「ご、ごめんなさい」
男「ううん、感動してるだけだよ。何を謝ってるのか分からないけど大丈夫だよ?」
少女「は、はい」
ー百貨店ー
少女「掃除用品を、少し、買いたいです」
男「そうだね、あまりストックも無かった気がするし、買おうか」
ー本屋ー
少女「………」パラッ
少女(………をハート型にして、お弁当に乗っけることで彩りと愛情っ! いやいや、愛情って、ううん。感謝とか、そういうので、いこう、うん)
男「決まった?」
少女「ひゃいっ!」
男「大丈夫?」
少女「だ、だいじょうぶ、です」
ー買い物後ー
男「たくさん買ったね」
少女「はい、でも、楽しかったです」
男「本も買えたからね。よかったよ」
少女「明日から、作りますね?」
男「うん、お願い」
少女(あの、ハート型のは、そのうち、ということで……… 明日はなしで行こう、かな)
ー男の家ー
男「ただいま」
少女「今、帰りました」
男「ただいまじゃないの?」
少女「あっ、た、ただいま、です………」
男「うん、おかえり。少女」
少女「っ、おかえり、なさい。男、さん」ウルッ
少女(な、泣いちゃ、ダメだ。また、男さんに、迷惑、かけちゃう)
男(なんかまた涙目に……… ただいま、じゃなくて、帰りました、って言ってたけどその辺り原因か? おっ、今のは卑下しないで考えれたな)
男「とりあえず冷蔵庫に食材だけしまっちゃうから、少女はお風呂に入ってきて」
少女「わ、私がしまいます」
男「んー、長くなってもいいから、ね? 今日はゆっくりして、疲れを落としてきて」
少女「は、はい。ありがとうございます」
男「あ、ついでに少女の分だけで洗濯機回して。それの回収が終わってから入るから」
少女「分かりました」
ーーー
少女「上がり、ました」
男「はーい」
少女「あ、その、洗濯物も、回収しましたから、入れます」
男「ん、ありがとう。入るね」
少女「はい」
ー風呂・勉強後ー
男「お疲れさん、少女」
少女「………」
男「少女?」
少女「………Zzz」カクンッ
男「へっ?」ポスッ
男「待った少女ストップそういうのは予告してからやるべきじゃないか、いや予告してもやるべきじゃない断じて僕に対しては………」
男「………落ち着け。少女、起きて、少女」
少女「Zz………?」
男「ほら、ベッドまで頑張って」
少女「………」クシクシ
男「ね?」
少女「………うん、おやすみ」テクテク
男「おやすみ、少女」
ー翌朝ー
男「少女」
少女「はい?」
男「ちょっと座って」
少女 ストン
男「ほんのちょっとだけ大事な話をします」
少女「………?」
男「あ、でも特に少女が何かするとかじゃなくてね。少し僕から提供するものを増やそうと思って」
少女「私は十分、満足してますよ?」
男「ううん、それとはある意味でも別はい、これ」カサッ チャリッ
少女「五千円札と、鍵?」
男「このアパートの向かい側にコンビニがあるでしょ? 今はまだ大丈夫だけど、これからまた必要なものも出てくるだろうから」
少女「で、でも」
男「ここ一週間一緒にいたから分かることだけど、僕は君のことを信用したから。その信頼の証として、遠慮しないで受け取って」
少女「………ありがとう、ございます」
男「ああ、それでもあんまり遠くには行かないでね。最近、この辺に柄の良くない人たちが出没してるみたいだから」
少女(あっ、そういえばお弁当のこと調べてる時に、ニュースに出てるの少しだけ見た気がする)
男「僕は平気だけど少女だけだと少し不安が出てくるから。明るいうちに買い物は済ませておいてね」
少女「はいっ」
男「今日はこれくらい、かな」
少女「あ、あの! 男さんの好きな料理を、教えて下さい。貰ってばかりじゃ、申し訳なくて……… 何かでお返し、したいです」
男「ん、なら……… 今日の夕飯に肉じゃがをお願い出来るかな?」
少女「はいっ! あ、あと、えっと」
男「あと?」
少女「家の中だけなら、サングラスを外してても、いいんじゃないかなっ、て思います。私も、男さんのこと、信頼してるっていう、証明に………」
男「………」
少女「や、やっぱり、難しい、ですよね。ごめんなさい、忘れて、ください」
男「そうだね、今日、帰ってきてからそれはやるようにするよ。家ではリラックスしてたいからね」
少女「えっ?」
男「少女のことを信用してるからこそ、家の中では外すんだからね?」
少女「あっ、あ、ありがとうございます!」
男「ははっ、感謝するのはこっちだよ。じゃ、行ってきます」
少女「い、いってらっしゃい!」
少女(あっ、肉じゃが……… 砂糖とミリンが足りない。昨日、買うの忘れてたな。本に夢中になってたから、かな)
少女(買いに行こう。まだ午前中だから、大丈夫)
ガチャッ
ー外ー
少女(一人で外に出るのは、やっぱり少し、違う)
少女「早く、戻ろう」
ーコンビニー
少女(………どこにでも、いるんだな。ああいう、少し残念な、人たち)
少女(はやく、入ろう)
女店員「いらっしゃいませー」
少女(砂糖と、ミリン。くらい、かな?)
少女(………)
少女(一周したけど、特に無いみたい)
少女「これ、お願いします」
女店員(わぁ、可愛い子。こんな子近くにいたっけ?)
女店員「はーい………合計231円になりまーす」
少女「お願い、します」
女店員「5千円からお預かりしまーす。4769円のお返しでーす……… ねぇ、ちょっといい?」
少女 ビクッ
女店員(反応まで可愛いわね)
女店員「あ、ごめんね。この店の前の人たち、見た目以上に面倒な人達みたいだから見向きもしないほうがいいよ。入るときに見てたみたいだけどね」
少女「あっ、そのっ、ありがとう、ございます」ペコッ
女店員「いいのよ。気を付けてね」ヒラヒラ
少女 ペコリ
少女(ビックリした……… でも、忠告には、従うように、しよう、かな)タタタッ
不良「………」
DQN「どーした?」
不良「なんでもねー」
ーバイト先ー
先輩「そろそろお昼休憩にしようか」
男「そうですね」
先輩「ところでそのお弁当」
男「少女作のですよ」
先輩「見せてくれないか?」
男「ちょっかい出したいだけですよね。高校生ですか?」
先輩「そんなに若く見えるならもっとやろうかな」
男「じゃ、いつも通り僕は行きますね」
先輩「待って待って! 悪かったから!」
男「そう思ってるのは分かってました。はい、どうぞ」
先輩「私のことを分かってくれるみたいでなにより。どれどれ………」
『ご飯部分に海苔で「ファイト」の文字』
先輩「………毎回こんな感じなんだね。微笑ましい」
男「いや、昨日までもっと普通だったんですけどね」
先輩「そのうちバリエーションも増えるだろう。色々とね」
男「そうですね、勉強してるみたいですし」
先輩「あんまり詳しくなさそうな生活だったらしいからね」
男「詮索は無しです。余分な推測も勿論やめてあげて下さい。少女は少女でネット使ったりして頑張ってますから」
先輩「愛妻弁当になるのも時間の問題か………」ボソッ
男「何か言いました?」
先輩「いや、これからも見せてくれると嬉しいって話さ」
男「まあ、それくらいなら構いませんけど」
先輩「ついでに一緒に食べてくれたら」
男「それは無理です。では、失礼します」
先輩「………まだ無理か。ま、そのうち、ね?」
少ないですが本日分は以上です
ー男の家ー
少女「………もうすぐ、19時、だけど」
ザーッ
少女「………夕立」
少女「男さん、傘、持ってってない、よね」
携帯 ヴーヴー
少女「!」
着信 男
少女「はいっ!」
男『もしもし、僕だけど。傘持ってくるの忘れちゃったから、駅まで持ってきてくれないかな?』
少女「もちろんです!」
男『危ないのにごめんね?』
少女「いいえ! 大丈夫です!」
男『じゃあ、お願いします』
少女「はいっ!」
プツッ
少女「用意、しないと」
携帯 ヴーヴー
少女「?」ピッ
『なんだよ、出るじゃねえか。おい、屑。どこにい』ブツッ
少女「………」
通話終了 父
少女「………」
ー外ー
ガチャン
少女(折角、男さんと、初めて電話したのに、な)
少女(………耳に、あの声方が、残ってる)
少女(ううん、とりあえず、忘れよう)バサッ
ザーッ
少女(前の、ファミレスから真っ直ぐ行けば、駅だから)
パシャッ パシャッ
少女(………?)
少女(後ろに、誰か、いる?)
少女(………多分、いない。うん)
パシャッ パシャッ
少女(………あと、5分もしないうちに、着くけど)
パシャッ… パシャッ
少女(止まったのに、足音が、もう一つ余分に聞こえた)
少女 クルッ
少女「………誰、ですか?」
「………」
ザーッ
少女「………ついて、こないで」
「………」
少女「………」クルッ
パシャッ…
「………!」
「………!!」
パシャパシャッ
少女「また、誰か、いたのかな? ………とりあえず男さん、迎えに行かないと」
ー駅ー
男「あっ、少女。ありがとうね。今日、財布忘れちゃっててさ。チャージ分もギリギリで買えなかったんだ)
少女「大丈夫です。むしろ、こういう時は、呼んでくださいね」
男「うん、そうさせてもらうよ。ところで、傘は?」
少女「えっ、ここにあります、けど」
男「1本?」
少女「?」
男「………一緒に入って帰るの?」
少女「そのつもり、でした」
男「うん、そうか。次からは2本持ってこような」
少女「?」
ザーッ
男「2本持ってくる方がいい理由分かった?」
少女「分からないです」
男「そうか、分からないか………」
少女「あっ、男さん」
男「ん?」
少女「さっき、誰かにつけられてたみたいだったんですけど」
男「………えっ?」
少女「その、ついてこないでくださいって言ったら、いなくなったので、大丈夫だったのですが、一応報告をと」
男「そいつの特徴は?」
少女「雨で、暗かったので、分からないです」
男「そう、か」
少女「もし、何かあっても、私は大丈夫ですよ? それに、ただの、居候、です、し………」
少女(あ、自分で言って悲しくなってきたな……… 私は、男さんのとこに、居候してるだけ………)
男「少女に何かあると、僕が大丈夫じゃないかもしれないんだよね」
少女「えっ?」
男「何か危なそうだったら、すぐに教えて。これも約束して?」
少女「は、はいっ!」
男(仮に、少女に手を出されたら、僕は『僕』でいられるだろうか………?)
ー男の家ー
男「ただいま」
少女「かえっ、ただいまです」
男「よく出来ました」
少女「えへへっ、ありがとうございます」
男「僕も外すとしようかな」カチャッ
少女(覚えて、くれてた)
少女「あっ、男さん」
男「どうした?」
少女「夕ご飯、まだ作ってません………」
男「そっか。じゃ、一緒に作るかな」
少女「っ、一緒、に……… 怒らないん、ですね」
男「うん。怒りなんてしないよ。あ、足手纏いにはならないようにするからね
少女「そんなこと、思いませんよ!」
少女(男さんは、やっぱり優しい、な)
ーキッチンー
少女(こうして男さんと、一緒に料理してると夫婦みたい………)
男「少女の手際はいいね。一人暮らしの僕もびっくりなくらいに」
少女「な、慣れてます、から」
ーテーブルー
少女(こうして、並んで食べてるだけでも、ご飯は美味しいし、幸せだなって、思える)
少女(………向こうでは、こんなこと、無かった)
男「少女」
少女「ひゃいっ!?」
男「どうしたの?」
少女「な、なんでもないですよ。男さんこそ、どうしましたか?」
男「ああ、ただね。こうしていると平和で幸せだなって思ってさ。突然だけどありがとうって言いたくなったんだ」
男(本当に久々だな。こうして、安らぎながら生活するのって)
少女「………わ、私も。幸せだなって、思ってますよ?」
男「そっか。ならよかった」
男(こんな気持ちにしてくれる少女に何かあったら。『二回目』がおこってしまったら、僕は本当にコワレルことになるだろう。そうでなくても………)
男「夏休み一杯だけども。改めてその間、よろしくね。少女」
少女(………そう、夏休みの間だけなんだ。男さんのとこにいられるのは、その短い期間だけ。それが過ぎたら、あの空間にもどらないと、いけない。でも、今は。思い出さないで、男さんに、甘えてようかな?)
少女「はい、よろしくお願いしますね」
ーコンビニ・昼ー
女店員「店員くーん。こんな唐突に降り始めた雨の日に誰か来ると思う?」
店員「ビニール傘目的の人でもくるんじゃないんですかね?」
女店員「それもそっかー。あ、そういえば店前のバカな人達もいないみたいだね。ざまーみろ」
店員「雨が降り始めてもまだいたらびっくりですよね」
女店員「本当にね、あ、お客さん」
「「いらっしゃいませー」」
ーコンビニ・夕方ー
女店員「くっ、こんな日にシフトを入れるんじゃ無かった。まだ雨が止まないなんて」
女店員「店員君ももうシフト終わっちゃったしな。私は深夜までやるんだよ、付き合ってよね全く………」
女店員(それに………)
不審者「………」パラッ
女店員(なーんか私のセンサーがあいつ通報したほうがいいよって言い続けてるんだよね。何待ちなの? 傘も自前のがあるのに、なんでここにいるの?)
女店員(………あっ、あの子。へー、やっぱり近くに住んでたんだ。駅に行くのかな?)
不審者「………」キュッキュッ ギィッ
女店員(えっ、なんで今出て行くの? あの子目的? 嘘っ、どうしよう………)
女店員「あ、もしもし。店員くん? いま、不審者が駅に向かってったんだ。この時期なのに真っ黒な長袖長ズボンの男。可愛い女の子追ってってるみたいだから、一応警戒して。え? 寝かせろって? いまはダメ!」
女店員「くぅ、この時間私一人しかいないっていうのが辛いわ………!」
ーコンビニ・夜ー
女店員「店員くんから、逃がしたけどあの子に手を出される前になんとかなったって聞いたからよかったけど」
少女「ーーー」
男「ーーー」
女店員「なんだ、ちゃんと彼氏みたいな人いるじゃないの。しかもちゃっかり相合傘してるし……… 嫉ましくはないけど少し見てて不快になるわ………」
女店員「ま、今日も今日とて平和でした、と。これでいいかな?」
ー食事・風呂・勉強後ー
少女「そういえば、男さん」
男「はい、男さんです」
少女「なんですかその反応」クスッ
少女「男さんって、頼めば何かしてくらるじゃないですか?」
男「まあ、たいていのことならね。出来る限り希望に沿うようにしてるつもりだし」
少女「なら………」
少女「私の、頭を撫でて、いただけませんか?」
男「何を言い出すかと思えば。まあ普通なら叶えてあげれたんだけど」
男「それは出来ないんだ、ごめんね」
少女「な、なんでですか………?」
男「少女を助けるときに決めたことなんだ。
『手は出さない』
これは僕が最低限絶対に守るべきルールで、何があっても破ることはない規則」
少女「が、頑張ったねっていうくらいで、いいので」
男「僕は自分を律することに結構自信があるけど、そういうこと言われるとさすがに少しだけ揺らぐから。ストップ」
少女「………」
男「ごめんね。これだけは、譲れないんだ」
男(そんなことをして、困るのは少女だから。将来出来るであろう彼氏からやってもらいな?)
少女「………(今は)諦めますね」
男「うん、そうしてくれると助かるな。さ、もう寝よう」
少女「はい、おやすみなさい。男さん」
男「うん、おやすみ。少女」
男(そんなに、親から撫でられるようなことですら、されずに育ったのか……… 撫でてあげるくらいなら、よかったのか? いや、そういうところからずるずるとダメな方に落ちていくんだ。ダメだ。ダメ)
少女(男さんに、撫でてもらえば、嫌なことも忘れられるかなって思ったけど。やっぱり、ダメだったな)
ー朝ー
男「行ってきます」
少女「あ、その」
男「ん?」
少女「男さんからが、ダメなら、私から………」ナデナデ
男「………」
少女「♪」
男「………ごめん、限界。行ってきます」ダッ
ーコンビニ前ー
DQN「でよー」ケタケタ
不良「そうか」
不審者「おい」
DQN「! おっさん、久々だな」
不良「用件は?」
不審者「次の獲物だ。動くぞ」
DQN「確かに! そろそろ『持ち金』少なくなってきてたんだだよねー!」
不良「それもそうだな。それで獲物は?」
不審者「向かいのアパートの住人だ。男一人で暮らしていたが、最近女が出来たらしい。それでも何も変わらないように生活しているからには持ってはいるだろう」
不良「不特定で襲うよりもよっぽどマシだな」
DQN「向かいのアパート……… もしかしなくてもかわいい女の子?」
不審者「普通よりかは整った顔立ちだ」
DQN「キターッ。その子もらっていい?」
不審者「………身代金で奪うのはリスクが高すぎる」
DQN「その子にいろいろ持ってこさせりゃいいでしょ! はい決まり!」
不良「おい、あまり勝手に決めるな」
DQN「大丈夫大丈夫! なんとかなるって!」
不審者「………仕方ない。今回だけだぞ」
不良「………ちっ」
不審者「決行は土曜か日曜だ。それまで大人しくていろ」
DQN「へーいへい。あー、楽しみだなぁ」
不良「了解」
ー男の家・午前ー
少女「………いつも通り、やることおしまい」
少女「男さんの頭、もう少し撫でたかったな………」
少女(………出来れば、私の頭を撫でて……… 抱き締めて……… 頑張ったね、て………)
少女「私は何を考えてるんだろう………」
少女「男さんが、そんなことしないって、言ったのに。あるはず、ないのに」
少女「でも、もし、そうだったら、いいのにな」
少女「ううん、今は目の前の復習を、頑張ろう」
ー男の家・午後ー
少女「………Zzz」
少女「………っ」
少女「やっぱり、1人だと寝ちゃうな」
少女「男さんと勉強してると、目が覚めてるのに」
少女「夕ご飯作って、また、勉強しよう」
少女「少しでも、男さんと、お話ししてたいから………」
本日分はここまでです
臨時5連休で書ききるつもりが、明日になっても終わる気配がないです………
ー男の家ー
男「ただいま」
少女「おかえりなさい」
男(………いつの間にか、このやり取りも普通にしてるな。常識的な家族なら、これが普通なのか)
少女(ただいま、と、おかえりなさい、の二つは恐怖が始まる合図じゃないって、ここに来て、すごい実感してる。男さんだから、なのかな………?)
男「今日の晩御飯は?」
少女「豚の生姜焼きです。いつもより頑張りました!」
男「ならいつも以上に味わって食べないとね」
少女「よろしくお願いしますね」クスッ
男(こんな風に気兼ねなく話し合えるっていうのはいいものだな。 ………それも、少女の夏休みが終わるまで、なのか)
少女「男さん」
男「ん?」
少女「………いいえ、何でもないです」
男「………」ウズッ
男(い、いかん。一瞬小動物に見えて撫でそうになってしまった。自重自重………)
ー男の家ー
男「ただいま」
少女「おかえりなさい」
男(………いつの間にか、このやり取りも普通にしてるな。常識的な家族なら、これが普通なのか)
少女(ただいま、と、おかえりなさい、の二つは恐怖が始まる合図じゃないって、ここに来て、すごい実感してる。男さんだから、なのかな………?)
男「今日の晩御飯は?」
少女「豚の生姜焼きです。いつもより頑張りました!」
男「ならいつも以上に味わって食べないとね」
少女「よろしくお願いしますね」クスッ
男(こんな風に気兼ねなく話し合えるっていうのはいいものだな。 ………それも、少女の夏休みが終わるまで、なのか)
少女「男さん」
男「ん?」
少女「………いいえ、何でもないです」
男「………」ウズッ
男(い、いかん。一瞬小動物に見えて撫でそうになってしまった。自重自重………)
ー勉強後ー
男「これは、どう考えても少女の学校が悪い」
少女「急にどうしたんですか?」
男「この吸収速度で数学が苦手っていうのはおかしいと僕は思うんだよね。これなら誰が教えても苦手科目になるはずがないんだけど………」
少女「………男さんの実力、ということはねいんですか?」
男「ならいいんだけどね」
少女(………数学の教官が、あいつに似てるから、なんて理由は、話せないよね。はぁ、ごめんなさい。男さん………)
少女「わ、私はきっと褒められると伸びる子なんですよ。学校ではなかなか褒められないから、もともと苦手な数学ができないっていうことかもしれません」
少女(少しだけですけど、嘘つきますね。私の家庭の事情に、男さんは巻き込めませんから)
男「ならもっと褒めないとね」
少女『頭なでなでしながらだと効果アップしたりするかもしれません、よ?』
少女(なんて言えたらなぁ………)
男「明日からそのことも考えておくね。そうか、少女は褒めたら伸びるのか………」
男(なら料理も褒めればもっと美味しくなったり………?)
ー翌日・バイト先ー
先輩「さあ、男君よ」
男「お弁当ですね。はい、どうぞ」パカッ
先輩「今日のも今日とて美味しそうだ、な……… だ、だが貰うわけにはいくまい。うん、今日は諦めてやる」
男「これから先毎日諦めていただけると助かります」
男「」
男(なぜハート型の野菜が散りばめられてるんだ……… 海苔すらも………)
先輩「あ、これだけは言っておかなくては私の気がすまない」
男「なんですか。嫌な予感はしますが聞くだけ聞きます」
先輩「ならお言葉に甘えよう……… 愛妻弁当なら私に見せることなく食べきらんかこの阿呆がぁ!!!」
男「あんたが見せろって言ったんだろあんたが」
先輩「私が独り身なのをいいことに……… いつか私にも良い人ができたらそういうのを作って職場に持って行かせてやる」
男「そんな人が出来るといいですね」
先輩「絶対にギャフンと言わせてやる」
男「それ時代遅れですよ」
先輩「ああ言えばこう言う………!」
ー男の家ー
男「ただいま、少女?」
少女「おかえりなさい。どうしましたか?」
男「今日のお弁当だけどね」
少女「はい」
男「なんであんなにハートがたくさんだったの?」
少女「ありがとうっていう感謝の気持ちをこめて作りましたから」
男「………そっか。ありがとうね」
少女「はいっ」
男(そうだ、僕に向けた愛情表現のわけがない。でも一瞬だけ期待した僕がいる。最近理性先生が仕事をしてくれてない気がするな………)
少女(よ、よかったぁ。ずっと考えてた言い訳、噛まずに言えたっ)
ヴーッ ヴーッ
男「ん? 先輩から?」
ピッ
先輩『こんばんは、男君。突然だが少女さんに変わってくれないか?』
男「了解です。少女、先輩から電話」
少女「へ?」
ー屋上ー
先輩『なるほど。アレは君なりの感謝の気持ちだったのか』
少女「はい」
先輩『………本当に、感謝の気持ちだけ、かな?』
少女「っ」
先輩『それが聞けただけでも電話した甲斐があったというものだよ』
少女「で、でも、居候の身で、男さんにこんな気持ちを持っているなんて………」
ガタッ
少女「?」
ニャーッ
少女(あ、猫さん。可愛いなぁ)
先輩『どうしたの?』
少女「あっ、物音とがしたと思ったら、猫、でした」
先輩『なるほど。で、さっきのはなにか問題でも?』
少女「だって、今も迷惑をかけて、ばかりですし………」
先輩『男君が聞いたらきっと嘆くだろう。君がそんな風に思ってたなんて、ってね』
少女「えっ?」
先輩『男君は君にいろんなものを貰っているんだよ。それこそ、一生モノの何かを貰ってても不思議じゃない』
少女「私は、何も………」
先輩『君が気づくまで私は何も言わないよ。でも、君はギブアンドテイクをしっかりとしている。だから、気にやむ必要はないないと思うよ。以上、先輩からの助言でした』
少女「あっ、えっ、と」
少女「………ありがとうございます、先輩さん」
先輩『どういたしましてだよ。それじゃ、おやすみ』
少女「おやすみなさいです」
不良「………」
ー男の家ー
男「ずいぶん長かったね。大丈夫だった?」
少女「はっ、はいっ!」
男「ならいいんだ。さ、食べよう?」
少女「そ、そうですね」
ー数日後ー
男「明後日だね」
少女「男さんの友人とその彼女さんと一緒にお出かけする日ですか?」
男「うん。友がウザいかもしれないけどそこは我慢してくれると助かるな」
少女「う、ウザい………」
男「あいつにとってようやく出来た彼女だからな。この上なく自慢してくると思う。それに耐えるのが無理そうなら言ってくれ」
少女「でも、惚気話って聞いてて幸せになれますよ?」
男「ああ、少女はそちら側だったのか………」
少女「そちら側って………」クスクス
男「僕はそっちじゃないんだ。どう頑張ってもそっちには行けない」
男(この顔を変えない限りは、ね。まあわざわざ整形するつもりもないから絶対にそっちには行かないけど)
少女 「………」
少女(い、一瞬、男さんの頭を抱き締めて何か言おうとしちゃった。何考えてるだろう、私………)
男「さてと。今日はもう寝ようか。ちょっと疲れたから」
少女「はい、おやすみなさい」
男「うん、おやすみ」
ー翌日ー
男「………明日で少女がここにきて二週間だよね?」
少女「そうですね」
男「そうだな。うん、今日はケーキでも買って、早く帰ってきて一緒にご飯作って、お祝いしようか?」
少女「っ! ほんとですか?」
男「うん。僕の料理も食べれることには食べれるっていうのを少女に教えたい。じゃないと一人暮らしなのに情けない奴にしか見えないから」
少女「そんなこと思いませんよ! でも、楽しみにしてますね?」
男「うん。じゃ、行ってきます」
少女「はいっ! 行ってらっしゃい、男さん!」
バタンッ
私は、忘れていた。
少女「………お祝いしてくれる。なんでもない、ただの区切りなのに。男さん………」
本当に満たされて、幸せで、なんの不満もない生活を送っていたから。
少女「えへへっ、なんだかにやけちゃうな。うん、はやくやること終わらせよう」
飽和状態でいたはずの幸せは、ある日を境に、突然はちきれて、落下する。
ガチャッ
もう、味わいたくないと思っていたあの感覚。
少女「ドアの開く音……… 忘れ物ですが、男さ」
それが、今、目の前に。
DQN「どーも! それと、ごめんね?」バチッ
ーーー
ガチッッ
男「ごめん、少女。定期忘れ、た」
そこに少女の姿はなく。
男「………どうして」
代わりに金品が目的だったのか、荒らされた跡と。
男「なんで?」
綺麗な文字で少しの文章が綴られた一枚の手紙と携帯電話。
男「………通帳やキャッシュカードを僕が持っていたから? 高価なものを何も置いていなかったから?」
『通帳とキャッシュカードを持って廃棄工場まで来るように。指示は携帯で出す。素直に従わない場合、どうなるかは分かってるいるな? これを見たならすぐに履歴の一番上に電話をかけろ』
男「少女を連れて行く必要はないだろうがぁっ!!!」
手紙には、そう書かれていた。
男「………」ピッピッ
…プルルル ピッ
男「………通帳とキャッシュカードの二つだな」
『ああ、すぐに来い』
男「少女に手を出すな」
『お前次第だ』
男「………」
『電話は切るな。そのまま通話状態にしてポケットにでも入れておけ』
男「………分かったよ」
男(………向こうの音が聞こえなくなった。消音設定にしたな)
ー廃棄工場ー
DQN「想定よりも早い電話だったな」
不良「予定よりも11時間早い」
不審者「だが問題はない。今のところは、だがな」
DQN「で? で? で? いつこの子とヤッていいの?」
少女「………」
不良「とりあえず口、手足は縛っておけ」
DQN「つまりまだと。ちぇーっ」
不審者「それにしてもこいつが居候だと知らなければ危なかったな」
不良「偶々コレが外で携帯で話してるのを聞いた」
DQN「役に立つねー、不良は。俺も役に立ったけどね!」
不審者「仕方なく人質の作戦を取ったがどうなるかわからん。今のところ通報等はしていないようだがな」
不良「そうか。俺は出入り口で見張っている。何かあれば知らせるから動けるようにはしておけ」
DQN「もしかして、不良君」
不良「なんだ?」
DQN「この子が起きて、なおかつ男が近くにいる状況を作ろうとしてくれてるの? くぅーっ、この背徳感いいねぇ!」ケタケタ
不良「………」
DQN「嘘嘘! そう睨まないでよ。俺が勝手に思ってただけだからさ。来たら教えてよ」
不審者「俺も近くに隠れて待機している」
不良「ああ、分かった」
本日分は以上です
初めの二重投稿は電波状況の関係です
すみません
男(………少女は、ただの居候。だからここまで取り乱す必要なんて無いのに)
男(偶々神待ち掲示板で見つけて、何となくで会ってみて、気がつくとそこにいるのが当たり前になっていて)
男(………分からない。僕の中での少女の立ち位置が)
男(でも、取り敢えず。無事に助けないことには、この疑問は解消しようが、ない)
ー廃棄工場・入口ー
男「………少女を攫ったのは、お前か」
不良「俺じゃあない。連れの方だ」
男「コンビニ前でいつも一緒にいるやつか? まあいいや。少女を返せ」
不良「ああ、勿論。先に渡すものを渡してからな」
男「これだろ。早くしろ」
不良「確かに受け取った。だが………」ガスッ
男「がっ………」ガクンッ
不審者「予定よりも早すぎるんでな。少し寝てろ」
男「な、んで」
不良「………まあ、口封じのために仕込みをな」
不審者「俺もあんまり乗り気じゃ無いがあいつがな」
男「なに、を」
不審者「あの娘を使ってお前たち2人を黙らせる手段をとることにした」
不良「仕方ないと思って諦めろ」
男「少女に手を、出すな」フラフラ
不良「ならDQNを止める必要がある。ああ、そういえば電話をしていなかったな」ピッ
男「………?」
不審者「趣味が悪いな、あいつも」
不良「………ああ、来たぞ。そっちも手筈通りやれ」
男「少女に、なにを」
不審者「ただのハメ撮りだ」
男「はっ?」
不良「だから、それを使って口外できないようにするとさっきから言ってるだろう?」
男「………」
不良「終わるまで暫く寝ていろ」
不審者「そうだな」ブンッ
男「………」ガスッ
不審者「………?」
不良「手加減をしてるのか? 倒れてないぞ?」
男「………この程度のこと」
不審者「いや、人が倒れる程度の力を込めたぞ」
男「少女に、なにをするって? ふざけるのも大概にしておけ。それとも……… ああ、そうか、お前ら」
「そんなに、僕に……… だね」
不良・不審者 ゾッ
男「なら、マスクもサングラスもいらないな」スッ
不良(目に、火傷と切り傷………)
不審者(マスクの下は………全部、火傷)
男「死ぬ気で後悔しろ」
不審者「寝ていろ!」ブンッ・・
男「鉄パイプなんかで手加減されたところで、死にはしない。痛いだけだ」ガンッ
不良「っらぁ!!!」
男「殴られても、死なない。[ピーーー]なら、金属バットとかで全力でやらないと」
男「ね?」ドスッ
不審者「ああああっ、目がぁぁぁぁあっ!!!」
不良「めっ、目潰し………」
男「急所をねらえよ。そうじゃないと僕は倒れない」
不良「ひっ」
男「それが出来ないなら、こんなことをするな」メキッ
不良「ああああああああああっ!!!」ゴロゴロ
男「ただの金蹴りなのにな。それが出来ないから、お前らがそうなる」
ーーー
不良「がぁぁぁっ!!!」バキンッ
不審者「も、もう、やめ……… あああああっ!!!」メギッ
男「………少女は、どこに、いる?」
不良「はーっ、はーっ」ガクガク
不審者「ひっ、ひいぃぃぃぃ」ブルブル
男「使えない……… この中だな?」
不良「そ、そそそそうです」
男「わかった。続きは後からだ。そこを動くなよ?」
不良・不審者「………」パタッ
男(まあ、両手足の関節を破壊されて、動こうにも動けないだろうけど)
ー廃棄工場・内部ー
男「………部屋らしいところは、ここだけか?」
男「少女!」バンッ
DQN「あ?」
少女「………っ!」ジタバタ
男「………」
そこにはほぼ裸で拘束された少女に全裸の男が覆いかぶさるところだった
男「………」
その光景を見た瞬間
男「………あ」
一瞬で感情の許容量を超えたのを感じた
DQN「はあ? なんで入ってきてんの? ふざけてるのか不良と不審者」
男「………」
フラフラとした足取りで少女のもとで歩いて行く
DQN「近づくなぁっ!」
殴られても蹴られても痛みがない
男「………」
そのまま縄を解いて自分が着ていた服を少女にかける
少女「男っ、さん」
男「端に行って、待ってて」
DQN「無視、するなぁぁぁぁっ!」
男「………」スーハー
男「それ以上、『私』の前で口を開かないで下さい」
DQN「なにいっ」ガシッ
男「口を、開かないで下さい」メキメキ
DQN「あががががガガガッ!!!」(顔顔顔顔!!!)バタバタ
男「私が出る時点でもうあなたは極刑です。死なないだけありがたいと思って下さい」ガンッ・・
DQN「っっっ!!!」(床に、叩きつけっ)
ーーー
DQN「………も、やめ」
男「………」スッ
DQN「ひっ」
少女「男さんっ!」
男「少女さん。どうしましたか?」
少女「もう、いいです。私は、大丈夫、です。だから」
男「震えてますよ。怖かったんですよね? それ以上の恐怖と痛みを、与えないことには………」
少女「〜っ!!!」グイッ
男「………え?」
男(なぜ、私は少女に頭を抱えられてるのでしょうか)
少女「男さん、おかしいですよ? 僕じゃなくて私って言ったり、優しいのにこんなことをしたり」ギューッ
男「………」
少女「私は、本当に大丈夫です。それよりも、男さんがそれ以上酷いことをしてるのを見る方が、辛いです」
男(………)
男「………うん、分かったよ、少女。もう大丈夫」
男「だから、離して。この状況なかなか危ない」
少女「………?」
少女「………」
少女「………っ!」パッ
男(半裸の女の子に頭を抱かれる男性ってどう見ても警察行きだよな。それに、なんか柔らかかったし……… 危ない………)
少女「ごっ、ごめんなさい」
男「ううん、大丈夫。それよりも、服は………」チラッ
DQN ビクッ
男「あいつとか外のやつのを僕が着て、少女には僕のを着てもらうかな」
少女「私が男さんのを?」
男「あいつらのを少女に触れさせるのは、嫌だ」
少女「〜〜〜っ!」
男(こんなに嫌がってるし、これで正解だろう。たぶん。というか、僕のわがままなんだけどね)
少女(どうして、こう、ああっ、嬉し恥ずかしいっ)
ーーー
男「うん、これでいいかな」
少女「………」クンクン
男「あ、ごめんね。汚れてたり、臭かったりするかもしれないけど………」
少女「あ、いえ、全然で大丈夫です」
少女(むしろ、いい匂いというか)
男「そう? よかった………」
男「さて。こいつを運び出さないとね」
DQN「………」
男「よっ、と。あたた」
少女「男さん、傷だらけです………」
男「ちょっとだけ無茶したからかな。まあ大丈夫」
男(骨折したりしてるだけだからね。治る治る)
男「それよりも、少女。これで通報して」
少女「あ、はいっ!」
DQN「………ねっ!」ボッ・・
男「あっ、つっっっ!!!」バッ
少女「お、男さん!?」
DQN「ふざけるな。警察? 捕まって、たまるか。俺は、まだ遊び足りねえんだ」カチッ
少女「ライター………」
DQN「お前らまとめて焼け[ピーーー]!」バッ
ボオッ
DQN「あばよっ、ぎゃはははははっ!!」タタタッ
少女「あっ、火が……… でも、まだ通れる」
少女「男さん!」
男「………」
少女「今なら、まだ行けます! 男さん!」
男「あ、うん……… ごめん、少女。僕、無理だ」
少女「なっ、なんで……… あっ」
少女(顔の、火傷………)
男「もう見えてるから言うけど、僕は大規模な火が怖くてね。ちょっと、これは飛越せないし、通れない、かな………」
男「だから、少女。先に行って、消防車も呼んでおいて。僕はここで待ってるから」
少女「それじゃあ間に合いませんよ! ここはただでさえ燃えるものが多いのにっ!」
男「大丈夫、大丈夫だから」
少女「………少し前の私なら、その言葉を信じてました。でと、今は違います」
少女「私も、ここで待ちます」
男「何言って、るんだ?」
少女「男さんが大丈夫なら、私も大丈夫なんですよね?」
男「っ」
少女「男さんも一緒に行くなら、私も行きます」
男「………」
少女「一度は助けられた命ですから。私は男さんと一緒にいますよ」
男「………うん、それなら、行こうか」
少女「はいっ!」
男「まだ火の勢いも強くない。うん、大丈夫」
男(少女もいるんだ。ここにいたら、危ない。行くしかないんだ)
ー廃棄工場・入口ー
男「っはぁ」
少女「熱かったですね」
男「本当にね……… あれ、不良と不審者の姿がない」
男(逃げた、のか? 逃げられるような状態じゃなかったはずなんだけど………)
少女「………はい、お願いします。男さん。消防の方にも連絡終わりました」
男「ありがとう、少、女………」フラッ
少女「男さん?」
男「ちょっと疲れたみたい。座って待ってよう」
少女「そうですね」ストン
男「………」
少女「………」
男「………さっきの、気になる?」
少女「えっ?」
男「僕が自分を私って言ってたり、火が怖かったりしたこと」
少女「気にならない、というのは嘘になります。でも、無理に聞きたいとも思いません」
男「そうだよね。でも、少女には聞いてもらいたいかな」
男「警察と消防が来るまでの暇つぶしとでも思ってて」
ー男・12歳ー
男「ただいまー。お母さーん、友達来てるでしょ? どこに、い」
男母「………」
友男「………」
強盗「あ? まだガキがいたのか」ギシギシ
友女「………ぁ」
その一瞬は、理解が追いつかなかった。
男「………ああ」
でも、理解した瞬間。
男「〜〜〜〜〜」
僕は、近くにあった花瓶を持って強盗に殴りかかっていた。
強盗「ガキがっ!」
分かっていたことだけどすぐに押さえつけられたよ。
強盗「そこでくたばっておけ」
もちろん、普通の小学校の僕じゃ大人に敵わない。僕は、全身を打ち付けて立てなくなったんだ。
それでも友女に対しての強盗の行為は続く。僕の視線の先にはもう動かないお母さんと友人。
男「………」
怒りで気が狂いそうだったよ。大切な友人を殺され、凌辱され、大切な家族を殺されて………
実際狂ったのかもしれない。だからかな。僕の中で理性が形を成したんだ。
そのままだと多分僕は精神が持たなかった。だから、理性が前面に押し出てきた。崩壊を止めるために『僕』は『私』になったんだ。
男「………」フラフラ
強盗「まだ立つのか」
理性は色んなものを抑えるためにあるのは分かるよね? 逆に言えば、何かを外すことも出来る。
男「………」グンッ
人間は普段30パーセントの力しか使えないっていうのは知ってるよね? 理性はそれを外したんだ。そして、近くにあった花瓶の欠片を使って………
強盗「はやっ」ザクッ
強盗「………ぁぁ」
強盗を、殺した。
後は警察に連絡して、事後処理をしてもらったんだ。
『私』はあくまで『僕』の怒りが許容量を超えた時に出てくる存在で二重人格とかじゃないんだ。だからその時に何をやったのかも全部覚えてる。
これが『私』が出来た理由。
ちなみに友男とお母さんは死亡。友女は自殺したよ。
火傷と切り傷はもっと簡単でね。
襲撃の現場にいなくて生き残った父親が狂ったんだ。
男父「お前のっ! お前の、せいでっ!」
当然、僕が家に着いた時には終わっていたことだっていうのはお父さんも理解してたと思うよ。
でも、結果として僕は強盗を殺せた。もっと早く、なんとかしていれば。そんな考えが頭から離れなかったんだと思う。
男「………ごめん、なさい」
ずっとされるがままに殴られ続けた。僕が悪い、僕のせいだ、僕が何とか出来ていれば。
そんな責め苦がしばらく続いた。
殴られて平気なの風に見えたのも、ここでたくさんいろんなことをされたから。
それで、そんなことが続くうちにこの切り傷は出来たんだ。
僕の目はお母さんそっくりだから、なおのこと一層狙われた。片方が無事なら目は見えるから、僕は左目を犠牲にして生活してた。
ー男・14歳ー
男「………ただいま」
男父「………」
この頃には当たり前のようなやり取りすら出来なくなっていた。
お父さんも僕も、お互いにお互いを無視していた。
それで、僕が眠りについてすぐ。
右目から口にかけて何かが押し付けられるような感覚と焦げ臭い匂いがしたんだ。
男「っ、火、事………」
すぐに押し付ける感覚は痛みに変わった。近くにあった本棚の側面が剥がれて僕に倒れてきてたんだ。
それは燃えていた。僕はそれを剥がしたんだ。焼けてくっついたせいかなかなか剥がれなくて、こんな火傷の跡が残ったんだ。
火事の原因はお父さんが自殺を図ったから。僕も巻き込むつもりだったらしい。
結果として、お父さんは死亡。僕は死なずにこの傷だけが残った。
これのせいで、僕は大きな火が怖くなった。ちなみに、さっき僕が残るって言ったのはこれのせいね。
………さてと、僕の過去は、傷の原因はこれくらいかな。
ー廃棄工場・入口ー
男「………これで、『私』と僕の怪我のことはおしまい。少女と友女が少し重なったから、出てこないはずの『私』が出てきたっていうのもあるけどね」
少女「………」
男「あー、ごめんね。聞いてて気分のいい話じゃないとは思ったけど、少女には話しとかないといけないなって思ったからさ」
少女「………あの」
男「うん」
少女「………わ、私も」
ピーポー
男「ああ、先に警察とかが来たみたいだね」
少女「まっ、また後で、お話ししますね」
男「分かった」
男(でも、まあ多分)
「大丈夫ですか?」
少女「私よりも、男さんが………」
男(治療、拘束が終わったところで少女とは………ね)
本日分は以上です
休暇明けで忙しくなりはじめるせいで投下ペースが最低限に低下します
よろしくお願いします
ー救急車内ー
救急隊員 ビクビク
男(………しまった、マスクとサングラスどっかやったままだ)
救急隊員「え、えーと」
男「痛いですけど大丈夫です。僕のことはお気になさらず」
救急隊員「なら、せめてこれだけでも」
男「マスク……… ありがとうございます」
救急隊員「このくらいなら出来ますから。あっ、あとあの女の子は警察が保護してますのでご安心を」
男「わかりましっ………!!」ズキッ
男(さすがに怪我が大きいせいで、痛みが………)
男(………うん、少女のことは、後から、考え………)
救急隊員「………さすがに気絶するよな。全身殴られ蹴られ、金属製のモノで殴打されて、火傷すら負ってるのに。ここまで意識が持っていた方がおかしかったんだ」
救急隊員「………でも、ここまでしてあの女の子を助けた、っていうのは、凄いよな」
ー警察車両内ー
少女「………男、さん」
婦警「もう大丈夫だよ。あの男も、あなたをこんな目に合わせたやつもいないから」
少女「男さんは」
婦警「?」
少女「私を、助けてくれたんです。そんな風に、言わないで」
婦警「そう、ごめんね」
少女「いつ、会えますか?」
婦警「あの男性に? そうねぇ……… まだわからないからそのうちね」
少女「そう、ですか」
婦警(助けてくれたから補正でもかかってるんでしょう。顔にあんな傷を負ったやつに会わせるわけにはいかないわ)
少女(私の事情も、話したかったのにな。それで、隠し事なんて無くなってから、一緒に………)
ー翌日ー
男「確かに酷い怪我だろうとは思ったけどさ」
男「目が覚めたら包帯でグルグルに巻かれて身動き一つ取れないってどうなの?」
警官「頭部から首にかけて強い衝撃を受けたんですよね? それが原因で脊椎の方に異常が出たらしいんですよ。ついでに折れてる箇所全部固定したらそうなったみたいです」
男「分かってますって。で、お話は?」
警官「あの子についてです。分かってるでしょう?」
男「少女のこと、ですよね。僕は何を話せばいいんでしょうか?」
警官「何から何まで全部、ですよ。あの子の話を聞く限り、あなたが悪者だという証言は一つもない。だけど」
男「未成年の女子を家に連れ込んでいたのが原因、ですよね」
警官「惚ける人じゃなくてよかったです」
男「そうですね。一つだけお願いしたいことがあります」
警官「無理なことは無理と言いますよ」
男「少女に伝言をお願いしたいんです。一言ですが、問題と思われるのであれば伝えていただかなくても大丈夫です」
警官「判断は後からします。どうぞ」
男「ーーー」
警官「………それなら大丈夫ですね。では聴取の方を始めます」
男「ありがとうございます。お願いします」
警官「まず、少女さんと出会った経緯から………」
ー警察署ー
婦警「ごめんね、まだ解放出来なくて」
少女「いい、です」
婦警「あなたを酷い目に合わせた3人はもう逮捕されたわ。特徴からしてあの近辺で強盗や窃盗をしていた3人組だったのよね」
少女「そう、ですか」
婦警「………暇だとは思うけど私の話以外聞かせてあげられないのよね。何か知りたいこととかある?」
少女「男さんの、安否と、それから、お話がしたい、です」
婦警「んー、それも難しいのよ。あの人もあなたを誘拐したっていう罪が出てきてる可能性があって」
少女「誘拐なんかじゃ! ないです!」ダンッ・・
婦警「………そう。でも、あなたがそう言っても、法律ではそうなるのよ。だからね?」
少女「………」
少女(男さん、ごめんなさい……… 私なんかの、せいで………)
婦警「それにあんな怖い顔した人なんて、きっとロクでもないわよ? 早めに離れられてよかったのよ、きっと」
少女(………この人は、絶対。信用、しない。顔で判断する? ふざけるのも大概にしてほしい)
婦警「あ、あら? そんなに怖い顔しちゃうと可愛い顔が台無しだよ?」
少女(………絶対に、許さない)ゴゴゴッ
婦警「ご、ごめんなさい。許して、ね? ね? ね??」
ー病室ー
男「………以上です」
警官「分かりました。少女さんの話と合わせてみても不審な点もありません」
男「嘘は言ってませんからね」
警官「それを確認するためにこれをしたんですから。でも、男さんは少女さんを未成年と知っていながら家に連れて帰った。このことだけは変わりませんよ」
男「そうですね。分かってます」
男(やっぱり、もう会うのは無理だな。ごめんな、少女。でも、こんなやつと離れられてよかったと言えば、よかったんだよ、な)
少女『いって、らっしゃい』ニコッ
男(そうだよ。こんな近くにいるだけで周りから敬遠され続けるやつなんかより、よっぽどいい人と巡り会えるさ)
少女『はい! お願いします、男先生!』
男(だって、少女は料理もできるし)
少女『その、男さんに、お弁当を渡せたらなって、思って』
男(頭の回転も速いし)
少女『男さんの教え方が上手だからです』
男(何気に寂しがりやで、可愛い………)
少女『男さん……… いいえ、なんでもないです』
男(あー。思い出すの辛っ。こんなに人を信用して、自分を晒せた人いなかったからな)
警官「大丈夫、ですか?」
男「?」
警官「いや、すごく辛くて悲しそうな顔をされてたので」
男(………そう、見えたのか。いや、そう思ったらダメだ。少女とは、もうお別れなんだ。僕は、忘れないと。僕が、忘れないと、いけないんだ)
男「いいえ、怪我をした経緯を思い出してしまったので」
警官「………そうですか。では、私はこれで失礼します」
男「お疲れ様です」
ー警察署ー
婦警「でね、その友人が『後輩くんつかって可愛い子助けたんだよ! すごくない?』って自慢してくるんだけどさ」
警官「失礼。婦警、そんなに話してても少女さんが困るだけだぞ?」
婦警「あらら、警官じゃない。そんなことないわよ。で?」
警官「少女さん、男さんから伝言を預かってきました」
少女「………!」
男『もう会えないけど、少女なら強く生きられる。辛くなったら先輩でも頼って、自分に負けないで』
警官「………だそうだ」
少女「もう会えないって、何でですか?」
婦警「さすがに犯罪者とその被害者を会わせるわけにはいかないのよ」
少女「犯、罪?」
警官「未成年者略取誘拐罪、だったかな。そんな罪に問われるんだよ」
少女「そんなっ」
婦警「まあ少女さんの言い分があるから逮捕ってことにはならないだろうけど何らかの処罰はあるでしょうね」
警官「少女さんに接触を図らない、とかかな」
婦警「ま、あんな男は諦めてもっといい人探しましょう? ね? 可愛いしまだ高校生なんだから」
警官「それと少女さんの親御さんがもうすぐ迎えに来るそうだ」
少女「っ」
婦警「久々の再会ですもの。きっと心配してられるわ。これを機に、家出なんてやめるのよ?」
警官「今回は大丈夫だったが、初めから酷い目に遭っていた可能性もある。婦警の言ってることは正しいから、気をつけるようにね」
少女(いやっ、いやっ!!!)
少女(戻りたく、ないっ!!!)
ーーー
少女「………」
婦警「少女さーん? 迎えが来たよー?」
少女「………いや、です」
婦警「でも、戻らないといけないんだよ。親と顔をあわせるのが気まずいのは分かるけど」
警官「………何か、事情があるのかい?」
少女「………」
警官「まあ話せないならそれでもいいよ。でも、力になれるかもしれない」
婦警「ちょっと、何勝手に人の親にケチつけてるの? 名誉毀損とか言われても知らないわよ」
少女「………男さんの、方が。家族、と思えた」
警官「………なるほど、ね。でも、君はまだ自分で自身のことを決定できない。だから、戻るしかないんだ」
婦警「何がなるほどよ。ほら、少女さん?」
少女(………つよく、いきる。むずかしいけど、つづけてれば、あえるかな?)
警官「無理強いするな」
少女「………行き、ます」
婦警「うん、その意気その意気! 頑張って!」
少女(男さんとの、生活だけが、心の支え、かぁ)
少女(わたし、頑張ります。だから、男さんも………)
お久しぶりです
本日分は以上です
次の投稿はゴールデンウィークになりますかね………
書いてる本人が辛くなってきました
特に男が少女のことを思い出すあたり
感情移入のしすぎには注意ですね
ー病室ー
友「ヒーロー気取りで大怪我したやつはどこのどいつだー?」
男「冷やかしなら帰れ」
友「まあまあ、俺の『彼女』を紹介させろよ」
男「ああ、そんな話もあったな」
友「女ー、入ってもいいよー」
女「お、お邪魔します………」
男「許可してないんだが?」
女「すっ、すみません………」
友「女は小心なんだからそんな怖い顔するなよ」
男「もともと怖い顔だって知ってるだろう」
友「とまあこんな感じで怖いようですげえ優しいから安心してよ、ね?」
女「………」ジーッ
男(無理無理、こんないかにも女の子ー、って感じの未成年者が僕の顔を見て差別しないわけがない。今だって友の後ろに隠れてるのに)
女「………そう、ですね。怖いっていう、感じはしません」
男「………え?」
男「この顔の怪我を見ても大丈夫なのか?」
友「女は人を顔で判断するような子じゃねーんだよ」
女「自分のことを、厭わない、優しい人………?」
男「自分のことしか考えない自己中心的なやつに訂正することを強く推奨する」
女「………いいえ、そんな感じがします」
男「根拠は?」
女「人よりも、酷い扱いを受けた人は、その痛みを知って、どうするかで2通りに別れます」
女「人に酷いことを出来ない人と、それを他の人にもしようとする人。あなたは、それの前者のような気がします」
友「な?」
男「ドヤ顔されてもウザいだけだ」
女「友君と、一緒です」
男「こいつは、まぁ、そうだな。優しいっちゃ優しいな」
友「ベッドの中でも優しいよな?」
女「はいっ。私が眠るまで、隣にいてくれて、頭を撫でたり、手を繋いだりしてくれるんです」
男「………友?」
友「本当の男と書いて紳士と読むんだ。知らなかったか?」
男「知るわけねえだろうが」
女「男さんにも、私と同じような子が、いるんですよね?」
男「………いた、が正しいな」
女「その子は、今どこに?」
友「そういや見てないな。いたってことは、もう親の元に戻ったのか?」
男「戻されたが正しいかな。僕は僕で未成年者の誘拐に関する罪に問われるみたいだし」
友「うーわー、犯罪者だ」
男「お前も同類だ」
女「友君は、優しいんですよ?」
男「未成年者は自分で自分に関することを決定できない。だから親の管轄外の場所で勝手に連れ出したり家に泊めたりしたらアウト」
友「おぉ、なら俺もバレたら即アウト?」
女「そっ、そんなことさせませんよ」
男「そういうこった。女、さんはその辺りを注意してあげて」
友「………で、その子は大丈夫なのか?」
男「どうかな。僕は出来る限りのことはしたし、警察の方でもなんとかしてくれるだろ」
女「連絡、とかは」
男「その辺も厳しくなると思うよ。客観的に見れば犯罪者とその被害者って立ち位置だから」
男(先輩の連絡先も知ってるだろうし大丈夫だろう。偶に様子を聞いたり………ダメか。やめとこう)
友「そうか。ま、元気出せよ?」
男「………全く。友、僕の目標を忘れたのか?」
友「覚えてるさ。でも、その子がいるときに電話したお前の声と今のお前とだと違いがありすぎてな」
男「気のせいだ」
女「………少し、落ち込んでるような」
男「気のせいだ」
友「………」
男「気のせいだ」
友「なんも言ってねーぞ」
男「………」
友「こりゃ重症だ。なんとかするしかないな」
女「わ、私も手伝います、よ?」
友「もー、女はいい子だなー!」ナデナデ
女「ふわっ、あ、ありがとうございます」
男「ラブコメするなら帰れ」
友「で、全治何ヶ月?」
男「2ヶ月だそうだが5日で治す」
友「人間やめてるだけあるな」
男「僕がこんな怪我で5日間入院するとかマジで情けないからな」
友「全身の骨折れてヒビ入ってる人間の言うことじゃねえ」
男「分かってることをいうな」
女「あの」
男「ん?」
女「その、女の子との約束、みたいなものはしてなかったんですか?」
男「………来週の日曜日にどこかに行くっていうのは決めてたな」
女「そう、ですか。分かりました、ありがとうございます」
友「んじゃ行くわ。元気出してさっさと退院しろよー」
男「言われなくとも」
女「ま、またよろしくお願い、します」
男「友に変なことされたら叩いていいからな」
友「んなことするか!」
ー病院前ー
友「元気そうでよかった」
女「そうですね」
友「可愛い彼女も紹介出来たしな!」
女「かっ、かわっ………」
友「おう。ところで………女はなんであんなこと聞いたんだ?」
女「約束のこと、ですか?」
友「ん」
女「私も、友君と約束してますから。それで、もし離れることになっても、絶対にその約束は果たしたいって、思いますし、そのためなら、どんなことでもします」
友「………」
女「だから、きっと男さんとその女の子も、大丈夫だなって、思ったんです」
友「………そうだな。まあ何があってもお前は離さないけどな」ギューッ
女「こ、ここ、外っ」
友「嫌か?」
女「い、嫌じゃ………ないです………あっ、でも、友君だから嫌じゃないっていうだけですよ!」
友(なにこの小動物可愛いもだと愛でよう)
ー病院ー
看護婦「………で、多忙のアタシにその人のことを見てろって?」
『いや、ただ退院したら連絡が欲しいだけ。お願いできる?』
看護婦「しっかたないわね。このアタシに任せておきなさい」
『ありがとう』
看護婦「………ふん。お礼なら直接会ってしなさいよ」
『分かった、そのうちね?』
看護婦「そのうちが長引いてこうなってるんでしょうがー!」
『うん、じゃあね』プツッ
看護婦「逃げたなぁ………会ったらどうしてやろうか………?」
ブーブーブー
看護婦「あぁ!?」
『言い忘れてたけど、くれぐれも彼の顔の酷い火傷で判断しないように』
看護婦「あんたのアタシに対する扱いも酷いんだけどなぁ!?」
『ごめんね、愛してるよ』プツッ
看護婦「なっ。このっ!!!」
看護婦「………ふっ、不意打ち、とか………卑怯だろーが………」
ー病室ー
看護婦「男さん、体温計りますね」
男「どうぞ」
看護婦(確かに火傷は酷いけど中身は全然いいやつなんだな。特に暴れることも文句もない)
看護婦「………はい、終わりました」
男「ありがとうございます、お疲れ様です」
看護婦「では安静にお願いします」
男「何かあれば呼びますから大丈夫ですよ」
看護婦(逆にしっかりしすぎてて怖いくらいだな)
ー半日経過ー
看護婦「いっっっかいも男ってやつから呼ばれないんだけどどうなってんのー?」
看護婦「負担が減るのはいいけど………」
看護婦「大丈夫なのか………?」
ー病室ー
看護婦「男さーん?」
男「はい」
看護婦「あのー、大丈夫ですか?」
男「何がです?」
看護婦「私も何っていうのは分からないですけど、色々と」
男「特に問題なしです」
看護婦「ならいいですけど。何かあれば呼んでくださいね」
男「了解です」
看護婦(どーなってんだ?)
ー6日後ー
看護婦「で、なんでもう治ってるんですか………」
男「予定より1日遅かったが、まあ想定内」
看護婦「人の話を聞いてください」
男「あ、すみません。慣れてるからってところですかね。それではお世話になりました」
看護婦「あなたの担当になってたのに世話をした記憶が一切ないんですけど。トイレとかどうしてたんですか?」
男「夜中にこっそりと抜け出して」
看護婦「あの怪我で!?」
男「固定してるの元に戻すのが面倒でしたよ」
看護婦「もう嫌………食事は?」
男「流動食なんてなんとでもなります」
看護婦「なんてやつだ」
男「あ、素の言葉遣いでてますよ。それでは失礼します」
看護婦「なっ、くっそー………はぁ、連絡しよ」ピッピッ
看護婦「ああ、そうだよ。あのたっくましい患者さんは完治して出てったよ」
『はやくないかい?』
看護婦「はやすぎんだよ! で?」
『うん、ありがとうね。こっちも行動に移るよ』
看護婦「行動ってなんだよ。アタシとのデートか?」
『それとは別。それに付き合って長いから、そっちはそろそろ新しいことしようかなって思ってる』
看護婦「期待しときますよーっと」
『うん、それじゃ』
看護婦「ああ、またな」
ー男の家ー
男「はー、ようやく帰ってこれた」
男「………ただいまー」
男「………」
男「あー、分かってたけど、返事ないよな」
男「今日は土曜、か。バイト先には連絡してあるし明後日からバリバリ働きますか」
男「明日は何しようかな、っ」
男「少女との、約束の日、か」
男「結局少女がどこに行きたいとか全く聞いてないからわからないな」
男「………明日は体慣らしの意味で筋トレでもするか」
ヴーッ ヴーッ
男「先輩?」ピッ
先輩『退院おめでとう』
男「どうも、先輩も仕事お疲れ様です」
先輩『明日の予定は空いているよな?』
男「それは、そうですけど」
先輩『明日の19時に商店街近くの神社に来るように』
男「なんでですか?」
先輩『目上のいうことは黙って聞きなさい』
男「はぁ。暇だったんでいいですよ」
先輩『あ、お金はたくさん持ってきなよ。使うことになるかもしれないから』
男「先輩には何も奢りませんよ」
先輩『その答えは分かってた。まあ、お願いするよ』
男「仕方ないのでお願いされます」
先輩『では、私もまだ休憩してるだけで仕事が終わってないのでな』
男「サボらず働いてください」
先輩『辛辣っ!』
男「お疲れ様です。失礼します」
先輩『ああ』
男「………一体なんだっていうんだ?」
ー翌日・神社前ー
男「騒がしい。祭りだったのか」
男「………19時30分。まだか?」
先輩「お待たせ」
男「遅いで」
少女「お久しぶりです。男さん」
先輩「いやぁ、着物の着付けなんて久方ぶりだったんで時間がかかって仕方なかったよ」
男「しょっ、少女」
少女「似合って、ますか?」
男「………」
先輩「おい、そこで固まるな。少女さんが困るだろう?」
男「………似合ってる、よ」
少女「あっ、ありがとう、ございます」
先輩「うんうん、この祭りは最後に花火が上がって終わりだから、それまで2人で楽しんできなさい」
男「いや、そんな時間まで少女は無理では?」
先輩「詳細は後後。だけど大丈夫とだけ言っておこう」
少女「男さん」
男「は、はいっ」
少女「いつも通りで大丈夫ですよ」クスクス
男「ああ、それも、そうだよな」
少女「私との今日の約束、覚えてますか?」
男「もちろん」
少女「この祭りに、2人で行くことだったんです。だから、時間なんて言わないで、一緒にいて下さい」
男「………うん、分かったよ。ごめんね」
少女「謝らないで下さい。そっ、それから」
先輩「はやく言うんだ」
男「何をですか?」
少女「おっ、男。今日の、この時、だけ、敬語、無くし、すから」
少女「私のこと、ちゃんと、見て………?」
男「」
先輩「帰ってこい」ズドッ
男「ぐっ!?」
男「そうだね。ど、努力する、よ」
本日分は以上です
GW中にもう一回投稿します
それで完結、するかもしれないし>>1の執筆次第ではしないかもしれない………
先輩「では私は御暇しようかな」
男「今日ばかりは逃しません」
先輩「少女との約束の詳細を思い出してみてくれ」
男「夏祭りを、2人で………あっ」
先輩「ということだ。終わり次第連絡をしてくれれば少女さんを迎えに来るから」
男「分かりました」
先輩「ホテルに連れ込んだりしないように」
男「し・ま・せ・ん」
先輩「あっはっはっ! 大丈夫だとは思うが今ここに少女さんがいるのは本来ありえないことだからね」
少女「だから、あまり目立たないように、ですよね?」
先輩「うん、色んな人に迷惑がかかることになる。男君はそういうの嫌いだろう?」
男「大嫌いです。なので、善処はします」
先輩「よろしい。あ、それと」
男「他にまだ?」
先輩「少女に触れる、というくらいでは問題にならないからな。覚えておくように」
少女「………っ!」
先輩「それではな」
男「………さて」
男「行くか?」
少女「はい、じゃなくて、そうだ、ね………」
男「そこで恥ずかしがるなよ、こっちまで恥ずかしくなる………」
ー商店街ー
男「へぇ、変わってないな」
少女「男は、来たことあるの?」
男「小学生の平和な頃にな。あの時は親が財布握っててやりたいこと出来なかったけど」
少女「私は、初めて、なんだ」
男「………あぁ、そうか。なら今日のは楽しまないとな」
少女「男、がいればどこでも、楽しいって、思えるよ」
男「嬉しいんけど………」
男(そういうのは僕じゃない人に向けて………ああ、またマイナス思考に走る。考えるべきは)
男「………いや、ありがとうね。僕も少女といられれば、それでいいって思えるよ」
少女「………うん! ほら、はやく行こ?」
男(さっきの言葉は、僕の本心、だと思う。そのまま口にするなんて機会は無かったから確証は持てないけど、多分。少女は、僕にとって、大切な人なんだ)
ー金魚すくいー
少女「あっ、破れちゃった………」
男「………」
少女(熱中しすぎて気付いてない………)
男「だっ、くっそ!」
少女(………でも、悔しがってるの、なんか可愛い)
ー綿菓子ー
男「やっぱり甘いな」ハムッ
少女「そう、だね」ハムハム
男「やっぱり少女も甘い系統のもの好きなの?」
少女「やっぱりって?」
男「女は甘党って言うだろ?」
少女「そういう、ものなの、かな。でも、確かに美味しいとは、思ってま、るよ」
男「………無理に敬語無くさなくてもいいんじゃない?」
少女「ううん、今日だけは、頑張るって決めたから」
男「そっか」
ーイカ焼きー
少女「………美味しい」
男「でも丸ごとを頼むとお腹が膨れるっていう副作用があるんだよな」
少女「そっか、他の屋台のが、食べられなくなるんで、だね」
男「そゆこと」
ー射的ー
少女「狙ったのに、曲がる」
男「そういうものなんだよ」
少女「男は、当たるのに?」
男「偶然だよ」
少女「………そのぬいぐるみ」
男「ちゃんとあげるから」
少女「約束、ね?」
男「………もちろん」
ーかき氷ー
少女「初めて食べる」
男「そうか、一気に食うとアイスとかと一緒で頭痛くなるから気を付けて………」
少女「っ、痛い………!」キーン
男「言わんこっちゃない。そんなに急いで食べるから」
少女「うぅ………」
男「………大丈夫か?」
少女「いたい………」
男「だいぶ歩いたし、少し休むか」
少女「うん………」
ー休憩ー
男「………治った?」
少女「マシになった………」
男(こういう時ってどうすればいいんだっけ? ああ、全く気にしたことないから方法知らないな)
少女「でも、まだ、痛いの」
男「だよな。表情からしてそんな感じが見て取れる」
少女「多分、この1週間の、心労もあると思う」
男「そうか、うん?」
少女「労って」
男「お疲れ様」
少女「っ、こう、してっ!」グイッ
男「なっ!」
少女「わかっ、た………?」
男「撫でろと」
少女「そう」
男(………今日ばかりは、先輩にも言われてるから、な。うん)ナデナデ
少女「んっ………」
男(………本来、少女とはもう会えずにこれから生活していくはずだった。なのに今日、少女は約束を果たすためにここにきてくれた。そのことに対して、僕は)ナデナデ
少女「ねぇ、男」
男「はいはい」
少女「その、ごめんね?」
男「え、なんで謝るの?」
少女「お金のこととか、今日、時間取っちゃったこととか」
男「ああ、全然。むしろ………」
少女「………むしろ?」
男(………何言おうとしてるんだろう。舞い上がりすぎだ。少し頭を冷やそう)
男「少女、そのかき氷もらうね」ヒョイッ
少女「えっ」
ガリガリッ!
男(いっっっっっ!!!)キーン
男「っ、はぁ」
少女「あっ、えっ、男?」
男「セーフ」
男(少しは頭が冷えた)
少女「それ」
男「ん?」
少女「私の、食べかけ………」
男「あ」
少女「………」
男(全く冷静じゃなかった。というか、つまり、それって、間接………」
少女「ーーー!!!」
男「あー、声に出るし、僕の行動おかしいし、やばい。ごめんな、少女。新しいの買って」
少女「いっ、いい」
男「?」
少女「その、それ、で、いいから………」
男「………いやいや、さすがにマズイでしょ」
少女「いいのっ」
男「あっ、はい」
少女(ああああ言っちゃった間接キスとかしちゃったよどうしようどうしようどうし)
男(………どうしよう)
少女(よう………落ち着こう、私。男さんもきっと意識してない。あっ、なんか悲しいな………ふふっ、でも、やっぱり)
男・少女(ただただ平和で楽しいのが、とても幸せに感じる)
若干の寝落ちを挟みながらの投稿でした
GW中にこれだけしか書けずに、終わらせられない遅筆の>>1ですがもうすぐ終わりにまで漕ぎ着きます。多分………
ーたこ焼き屋ー
友「友人の青春を見る事はなんと楽しいことが」
女「少女ちゃん、可愛いです」
友「お前も負けず劣らずだからな?」グイッ
女「あっ」
友「少女ちゃんは少女ちゃんだが、俺の中では女が一番だ」ナデナデ
女「〜〜〜っ!!!」
友「どうした?」
女「………」スリスリ
友「頭擦り付けても何も出ないぞ」
女「………あんなこと言う友君は、私のものです。その、これから先、ずっと………」
友「おう」
女「だから、えっと………マーキング?」
友「お前は子犬か! ちくちょう、可愛いなぁ!」ナデナデギューッ ナデナデ
女「はうっ、もっと、髪の毛を梳るみたいにして………でも、これもいいかも………」ウットリ
屋台の兄ちゃん「なぁ、店の前でそれはやめてくれ。他のお客さんも来れないし、手元にある串がそっちに飛んでいきそうになるからよ。てか、刺して欲しいのか、あぁ?」
ー休憩場所ー
男「そろそろ次の屋台行こうか」
少女「はいっ」
男「と、言いつつも………」
ワイワイ ガヤガヤ
男「一気に人が増えたな………」
少女「そう、だね。このままだと一緒に行動しにくいかも?」チラッ
男(今日限り、今日限りだ。少女は他の奴とは違う。大丈夫………)
男「………」
少女「………」
男「………っ」
少女「………」ジーッ
男「………っ、てっ」
少女「………」
男「………手、繋いでっ、くれません、か?」スッ
少女「………」クスッ
少女「喜んで」ギュッ
3
ーベビーカステラー
少女「おいしいよ、おとこ」
男「わかってる。わかってるから、あーんするのやめなさい」
少女「こんなにあって食べきれないから」
男「理由になってなっ」モゴッ
少女「おいしい?」
男「………」
男「………おいしいよ、うん」
ー水風船ー
男「ちょっと細工して………」
少女「えいっ」ブチッ
男「よっ」クイッ
少女「あっ………」
男「ほっ」クイッ
少女「え?」
男「それっ」クイッ
少女「………」
男「よいしょっ、と」
屋台の爺「その辺でやめといてもらえるとありがたいんだけどねぇ」
男「あ、すみません。少女」
少女「な、なに?」
男「好きな色選んで」
少女「………赤で」
男「はい、どうぞ。残りは返しますね」
屋台の爺「どうも」
少女「ありがとうね」
男「いいよ、少女が喜んでくれるならこれくらい、ね?」
4
ーチョコバナナー
少女「………」ハムッ
男「………」メソラシ
少女「男、どうしたの?」
男「なんでもない………口にチョコついてるよ」
少女「あっ、ほんとだ。ありがとう」
男「どういたしまして」
ー輪投げー
男「よっ、と」
少女「………やっ!」
男「残念」
少女「あっ、引っかかった」
オヤジ「嬢ちゃんなかなかうまいじゃないか。ほれっ」
少女「えっと、これって………ペアリング………」
男「………」
少女「………あの、男?」
男「………はやく」
少女「え?」
男「はやく渡しなさい」
少女「………! どうぞっ!」
男(こんなことで喜ぶって、少女………幸せ感じるレベルが低くないかな? あ、でも、いや、うーん………)
少女(男とお揃い………♪)
ージャガバターー
少女「おいひいけど」
男「熱いよな。それにこの大きさなら家で作ったほうが安上がりだ」
少女「………また、男の家で料理したいな」
男「あー。そのうち、な?」
少女「………うん、絶対だよ?」
5 真
ーたこ焼きー
少女「なんか………」
男「ベタついてるな」
少女「自分で作ったほうが美味しいよね」
男「そうだね、帰りに買ってこうかな………」
少女「ねえ」
男「ん?」
少女「………私も一緒につくりたい、な?」
男「一緒に、か………これも、そのうち、だな」
ー神社前ー
男(………出店から離れてるだけあって、ここは人いないな。休憩には丁度いいか)
男「少女、休憩しよっか」
少女「はい、あっ」ガッ
男「おっと」グイッ
少女「あ、えっ、あ、ぅ」
男「だいじょ、ぶ………」
少女(抱きしめ、られてる………)
男(待て落ち着けストップ冷静になれこの状況からどうするべきか最適解はそうだとりあえず今を楽しもうじゃないかって何考えてるんだぁぁぁぁぁぁぁ
6
ー1分後ー
少女(………動かない)
少女「お、男?」
男「」
少女「あっ、放心してる………えっと、先輩さんから習ったのを、実践………」
男「」
少女「………して、いいのかな? 迷惑じゃ、ないかな?」
男「」
少女「男、嫌だったら、ごめんね?」ギュッ ナデナデ
男(………圧迫感? 頭にも、何かが)
男「………?」
少女「………」ナデナデ
男「………!!!!??」
少女(やっぱり、恥ずかしい………)ギューッ
男(なんで少女がこんなに近くにおかしくないか戻ってこい現実さらば夢目を覚ませ)
少女「………男」
男「なんでありましょうか」
少女「………戻った?」
男(胸に顔うずめながら話されてる時点でまた飛びそうなんですけど)
男「戻った、から、とりあえず、離れ、ようか」
少女「ん」スッ
男「アリガトウネ、ショウジョ」
少女「ど、どういたし、まして………」
少女(………先輩さんの方法のうち恥ずかしくない方とったのに、うぅ、顔が熱い………)
男「アッチノ、イシダンニ、スワロウカ」
少女「………うん」
男(これはユメこんなに心地いいのはユメに違いないそうきっともうすぐ目が覚めてまたあの日常が………日常、が………?)
少女「あっ、男」
男「ハイ?」
少女「カタコトになってる。直して」
男「アー、あー、んんっ、OK。直ったヨ」
少女「そんなに嫌だった………?」
男「全然嫌じゃないけども」(まあ、その、ね………?)
少女「そっ、か」
男(おい、本音と建前が逆になったぞ、誰のせいだ? ………動揺しすぎだ、ニュートラルに戻そう。戻せるかな、いや、戻さないと………)
ー神社・社前ー
男(で、なぜ隣1センチの距離にいるのかな、少女は)
少女「………もうすぐ、終わっちゃうね」
男「………確かに、時間的にもそろそろだな」
少女「私は、楽しかったよ。久しぶりに男と一緒に、浴衣着て、夏祭りに来れて、笑いあえたこと」
男(………今までは、僕に必要以上に近づこうとする人間に対しては、嘘を並べてでも相手に嫌われようとしてきた。でも、今回は。今回だけは)
男「僕も、楽しかったし、嬉しかった。少女と一緒に、夏祭りに来れたこと」
少女「………うん」
男「………少女がいなくなって、退院してから家に帰ってさ。正直………寂しかった」
少女「私も、家に帰って、また、あの生活になって………男の、暖かさが、恋しかった」
男「少女のためになるようなこと、何も出来なかったけどね」
少女「そんなこと、ないよ?」
男「ははっ、ありがとう。でも、まだ何も出来てないって思いしかないんだ」
少女「私も、男に何も出来なかった」
男「でも、少女が来てから僕は変われた」
少女「わ、私も、男に拾われてなかったら、きっと………」
………
ー茂みー
友「さあ、いざ来てみたら始まってました男とその女の子………少女ちゃんとの対話」
女「盗み聞きですけど、私もこういうの好きなので何も言いません」
友「だよなー、それにしても男があんなに楽しそうに会話してるの久ッッッッッしぶりに見た」
女「少女ちゃんの方もとても楽しそう。時折見せる笑顔がとてもグッドです」
友「女の方が可愛いし綺麗だけどなー」グイッ
女「っ、もう………仕返しです」ギュッ
友「くっ、やるな………じゃない、男たちの方に意識向けないと」
女「あっ、そうでした………」
先輩「その通りだ。少女さんを抜きにした場合、彼のこんな姿を見れるのは一生に一度とかそのくらいだろう」
友「あ、先輩さん」
女「どうも」
先輩「ああ、君ら2人もこれのための協力、感謝するよ。本当に助かった」
友「いやいや、男のデレるのが見れるなら安いもんですよ」
女「少女さんが、一番近くにいられますからね」
先輩「ああ、少女さんは男君の心の支えとして、男君は少女さんの心の拠り所として。一方通行ではなくちゃんと双方に気持ちが通っているからこんな光景が見られるんだ」
友「で、男狙いの先輩は置いてけぼりと」
先輩「ぐっ」
女「先輩さんにもきっといい人が出来ますよ、きっと」
先輩「ぐぐっ、そんな言葉に、私は、ま、負けない………もん………ぐすん」
甘味成分注意って書くの忘れました
でもいいですよね?
そんな少しのミスくらいなら、許して………下さい………
終わりが近づいては遠のいていく
まだもう少しお付き合いください
あっ
文の上の数字は気にしないでください
ー神社・社前ー
男「ああ、そんなこともあったね」
少女「それで………」
ヒュルルル ドンッ
男「………花火」
少女「………上がっちゃった、ね」
男「そうだなぁ」
男(すごい長い時間、話していたはずなのにな………)
少女(早かったなぁ。ほんとうに、一瞬。そう思えるくらいに………)
男「………先輩に、連絡しないとね」
少女「………」
男「………」
少女「………ねぇ」
男「どうした?」
少女(言わなきゃ。今日、言えなかったら、ずっと後悔、する)
少女(でも………)
男「少女?」
少女「男っ」
男「うん」
少女「あの、今日別れたら、長いこと会えなくなると、思う」
男「………っ」
男(落ち着け。何を言われても、絶対に、揺らぐな)
少女「こんなこと、言ったら。男が困るのは、分かってる」
少女「でも、言わないと……… 今日、ここで、言わないと」
男(予想は出来る。でも、僕の答えは決まってる。大丈夫、僕は………)
少女「私はね、男。人のことを優先して考えて、自分のことを後回しにして」
男(それは、ただの自己満足だ。他人のためなんかじゃ、ない)
少女「無愛想で、迷惑しかかけられなくて、自分のことなんかどうでもいいと思ってた私を助けてくれた」
男(僕はそんな大層なことはしていない。傍から見れば女子高生を家に連れ込んだ大学生だ)
少女「家で無理やり作らされてた料理を、美味しいって。私のことをすごいって褒めてくれた」
少女「出会って1カ月もしない私なんかのために、大きな怪我をしてまで私を救ってくれた」
少女「私は、そんな男のことが」
男「………」
少女「好き」
男(………この怪我を負ってから。言われることは今後ない、ずっとそう思っていた言葉をくれた。それだけで、僕は………)
男「少女、僕は
少女「でも、男としては、困るよね。こういうの」
男「………え?」
少女「だから、少し違った言い方するね」
男(ちょ。えっ? どういうこと?)
少女「いつか私が、男と釣り合うだけの人間になって戻ってくる。だから、それまで待ってて」
男(………こんなの、予想してない)
少女「もちろん、これは私からの勝手なお願い。男がもっといい女の人見つけたら、そこまでで、私のことは忘れて」
男「なっ、そんなやついるわけ………」
少女「出てきたら、の話だよ。ね?」ニコッ
男(………そんな。そんな人、少女しかいねえっての。あ、先輩もか)
少女「うん、言えた。ね、最後に指切りしよっか」
男「なら、僕からも一つ」
少女「あ、私の方にも同じような約束取り付けようとしても却下するから」
男(読まれてる)
少女「偶然出会えた人に、私が勝手に自分の希望を押し付けてるだけ。だから、男は気にしないでいいよ?」
男「………少女」
少女「なに?」
男「はぁ………いいや、なんでもない。約束、了解したよ」
ー茂みー
友「さてさて少女ちゃんの告白シーン」
女「普通にキュンキュンしました」
先輩「さっさと答えて早く連絡よこしたまえ、男君」
友「若干やけになりつつ不貞腐れてる年長者が隣にいるのが非常に気になります」
女「大人気ないです。先に告白しないのが悪いんですよ」
先輩「知ってるよ。でも、私では出来なかったことを少女さんはやってのけたんだ。長々と時間かけても出来なかったことを」
友「後悔先に立たず。諦めて鑑賞しましょうよ」
女「です。見ててホワホワしますよ?」
先輩「………どちらにせよ、もう時間切れだ。こちらから連絡しなくてはならない」ピッ
友「………無粋だなぁ」
女「でも、約束、ですよ?」
友「まあ、そうっちゃそうなんだどさ」
ヴーッ
男「先輩?」
少女「あっ、時間………」
男「終わってから向かっても遅くないと思うんだけどな」
先輩『もしもし、いい雰囲気のところすまないが時間切れだ』
男「時間切れ?」
少女「………」
先輩『君たちにしてあげられる最大限のことはした。今すぐに神社前へ来るように』
男「というかなんでそうなってるって知ってるんですか」
先輩『あとから説明する』
男「先輩? あ、切られた」
6
ー神社前ー
男「………なぜあなたがここに?」
少女「………」
警官「どうもお久しぶりです」
男「警告をしに来たんですか?」
警官「本来なら強制的に一緒に来てもらうってことになるんですけどね。今回は違いますよ」
男「?」
警官「さて、少女さん。帰りましょうか」
男「なっ」
先輩「止めるのはダメだからな、男君」
男「先輩………ということは、少女が来れたのは」
先輩「私と警官、友君と友彼さんのおかげだ」
警官「というわけです。本来ならこんな事をしたらアウトですけど、少女さんと男さんの境遇があまりにも………」
男「………なんですか?」
警官「あー。いえ、何でもないです」
男「なら最後に、少女に一言いいですか?」
警官「どうぞ」
男「少女」
少女「はい」
本日分はここまでです
完結まであと一回ですかね
今週、というか明日には完結させます
それでは(限界で倒れそうなんで)おやすみなさい
男「ずっと待ってる。だから、絶対に戻ってきてよ」
少女「………っ!」
警官「………さて、おしまいだよ。親御さんの元へ戻ろうか」
先輩「男君は私と帰ろうか」
男「なんでですか」
警官「任せたよ」
男「任せられたくないです」
警官「では失礼するよ」
先輩「さて、帰るよ」グイッ
男「了解です。引っ張らなくても大丈夫ですよ」
ー帰り道・少女ー
少女「今日は本当に、ありがとうございました」
警官「うん、どういたしまして」
少女「もし、警官さんが男と会わせてくれなかったら、私はきっと壊れてた」
警官「一度拠り所を得ると、なくなったときに辛いからね」
少女「………」
警官「どうかしたかい?」
少女「警官さんも、私たちと同じような経験が、あったんですか?」
警官「………そう、だね。うん、ご想像に任せるよ」ヴーヴーヴー
警官「ん? ああ」ピッ
少女(………職務に反してまで、こんな事をしてくれたんだからあるんだろうけど。なんだろう、すごく気になる)
警官「もしもし、うん。ごめんよ、また今度、ね?」
ー帰り道・男ー
先輩「あーあ、とうとう男君にも彼女が出来たか」
男「僕もこうなるなんて思ってませんでした」
先輩「家出少女が集まるサイトに登録した時点でそんな下心があったという証拠だろう」
男「ああ、あれは………」
先輩「あれは?」
男「半分は興味本位ですね」
先輩「………」
男「そんな目で見られても、事実ですから」
先輩「ならもう半分は?」
男「………何かに惹かれて?」
先輩「なぜ疑問系なんだ」
男「いや、なんだったっけなって思って」
先輩「自分のことだろう、覚えていないはずがない」
男「きっと殴られたショックで忘れたんですよ」
先輩「………仕方ない、そういうことにしておいてやる」
男(まさか、本当に僕の考えを変えてくれるサイトなんてあるわけないって否定してやるなんていう強がりというのは恥ずかしくて言えない)
ー男の家ー
男「帰りました」
先輩「ただいまだ」
男「でてけ」
先輩「いや待て。これだけ渡してから出してくれ」
男「手紙?」
先輩「少女さんからだ。上手くいったら渡すように言われてたモノだが、中身は私も見てないんだ。まあ、きっと君を完璧におとすための文章でも書かれているんだろう」
男「そんな言葉、ないですよ」
男(もう、あの『好き』って言葉だけで十分おちてるってのに)
先輩「まあでも、一応見せてくれよ」
男「嫌ですよ」
先輩「ケチが。なら今見て、その反応を見せてくれ」
男「僕がリアクションするはずがないでしょう。まあ、見ますけど」カサッ
先輩「何が書いてあったんだ?」
男「………」
先輩「なあ、男くん? シカトはないと思うんだ」
男「………あー」
先輩「で?」
そこに書いてあったのはほんの一言と名前。
男「やばい。明日から無敵だ」
こんな気分は初めてだった。
先輩「何が書いてあったんだって」
男「教えません。少女が来たら聞くといいですよ」
そう、それまではこれは僕だけの秘密にしようと思った。
先輩「くっ、すごい、読みたい………!」
男「諦めてください」
【また、必ず会いましょうね。あなたの少女より】
男「さて、明日からまたバイト頑張りましょう」
先輩「ふふん、私も少しは働けるようになったんだからな」
男「期待はしません」
先輩「………見てるといいさ」
次に少女が来るまでに、僕も少女に見合うくらいの人間になっておこう。
僕は、そう自分に誓った。
ーendー
期間だけにすれば長々と続いたこのスレもおしまいです。
このあとは男と少女の後日談か警官と看護婦の前日談を書きたいなぁって思ってます。
まぁ、それを書くのは結構先になりそうなんで気長にお待ちください。
待ってる間随分前に書いた駄作でも読んでいただければなーって思ったりするんですけど、過去スレ貼ってもいいですかね………?
眠気が限界なので明日以降に決めようと思います
おやすみなさい………
このSSまとめへのコメント
え、なにこれすごく面白いんだけど
どうかハッピーエンドでありますように…
更新頑張って下さいこの後の展開に期待しています