【モバマス】工藤忍「ここにあるのはクラッカー」 (34)


忍「誰もいない事務所のなか」

忍「ここにあるのはクラッカー」

忍「そっちにあるのは書きかけのメッセージカード」

忍「机の上には中途半端な長さの紙の鎖に」

忍「冷蔵庫には……」パカー

忍「……ホールケーキ」

忍「きわめつけは」


『忍ちゃん!お誕生日おめでとう! (ビックリパーティ大作戦!)』


忍「横断幕」

忍「…………」

忍「…………」

忍「これサプライズなはずのやつだー!!」


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忍「うわー! うわー! 見ちゃった! 見ちゃったよ!」

忍「確かに今日はもっと遅くに事務所来るって言ったけど!」

忍「たまたま暇になったから早めに来ちゃっただけだど!」

忍「あああ、思い返せば昨日の穂乃香ちゃんなんかへんだった! へんだった!」

忍「電話口ですっごくどもってたもん。 明日は何時に来るんですかって何回も聞かれたもん!」

忍「うわー…… どーして気が付かなかったかなアタシ」


忍「別に自分の誕生日忘れてたわけじゃないけどね?」

忍「サプライズ計画してるんだなーって思いつけばさ! もうちょっと空気読んだのに!」

忍「わーびっくりー! みたいにハイテンションで喜んだのに!」

忍「実際いますっごくうれしいし!」

忍「なのに、なのに…… うわー……」

忍「うわー……」

忍「…………」

忍「……えへへ」


ワイワイガヤガヤ......
ユズチャン! ハヤクー!
マッテッテー!


忍「わ、わ! うそ! みんな帰ってきた!」

忍「ま、まずいまずい! どっか、どっか隠れるとこ…… そうだ!」


ガチャ!


あずき 「ただいまー! あれ? 電気ついてる?」

柚「うーん、でもだれもいないっぽいっ?」

穂乃香「……そうですね」キョロキョロ......

あずき「あ、さてはプロデューサーさん消し忘れたな?」

柚「あ! プロデューサーがちひろさんに怒られるやつだ!」

穂乃香「いつも怒られてますよねPさん……」

柚「そうかもっ!」


忍(……せ、せーふ!)

忍 (とっさに机の下かくれたけど、ばれてないよね?)

忍(うぅ、ここせまいなぁ…… キノコに少女マンガに毛糸と編み棒?)

忍(なんでこんなにぎゅうぎゅうなの……)

忍(なんとか脱出できるタイミングがあるといいんだけど……)


あずき「まぁプロデューサーさんのことはいいとして! パーティの準備、再開だよっ!」

柚「いえー!」

穂乃香「い、いえー……?」

柚「穂乃香チャン元気ないっ! もういっかい! いえー!」

あずき「もっと自然体で! イエー!」

穂乃香「い、いえー! どうでしょう……?」

あずき「うーん…… うむ、くるしゅうない!」

柚「あずキングのお許しが出たぞー! みなのものー! であえー! であえー!」

穂乃香「わ、わー!」


忍(いやいやなんかおかしいでしょ!)

忍(なんで、であえー! なの! それキングじゃなくてお殿様じゃん!)

忍(穂乃香ちゃんもノリで流されちゃうし! ツッコもうよ!)

忍(でも、あー……)

忍(なんか楽しそうでいいなぁ……)


穂乃香「つづきは部屋の飾りつけ、からでしょうか?」

あずき「あ、ちょっとまって!」

穂乃香「?」

あずき「先にね、プレゼントのかわいくラッピング大作戦! したいんだけど…… カバンから出してー、よっこいしょ!」


ドスンッ!!!


忍(!?)


あずき「ちょっとおっきいんだよねっ!」


忍(え?え?なに今の音?)

忍(ここからは見えないけど、すっごい音だった!)


柚「おーすごい! これどーしたの?」

あずき「ちょっとね♪ あ、ほら、こっちの方には……」

柚「わ!開いた! 入れるんだ!」


忍(ひらいた!? 入れる!?)

忍(なになになんなの? すごく気になる!)

穂乃香「そ、それは、まさか!」

あずき「あはは、さすが穂乃香ちゃんは食いつきが違う♪」

穂乃香「ああ、そんな……! まさか……!」


忍(穂乃香ちゃんが喜んでる? ってことは…… あっ……)
 

穂乃香「こんな大きな、ぴにゃこら太のキグルミ!」


忍(やっぱりかー……)


柚「うんうん、これはぜったい喜ぶ!」

あずき「でしょー♪間違いなく喜ぶよね!」


忍(うん、まぁ間違いなく喜ぶよね……)


穂乃香「ああ、これを忍ちゃんが着て…… あぁ……!」


忍(穂乃香ちゃんが)


柚あずき『うんうん』


柚「あ」


忍(ん? 今度はなに?)


あずき「どーしたの?」

柚「これ! ろーそくがたらないっ!」

あずき「え!?」

柚「ほらこれ…… これじゃ10本たりない……」

穂乃香「本当ですね…… ケーキ屋さんが間違えてしまったんでしょうか……」


忍(うーん、そっかぁ…… 仕方ないけど、ろうそくが年の数じゃないのはちょっとさびしいかなぁ)


あずき「うーん、やっぱりまた買いにかなきゃダメかなぁ……」

穂乃香「でも、それじゃあ忍ちゃんが来るまでに間に合わないかも……」


忍(…………)


柚「……あ!」

あずき「どうしたの?」

柚「この引き出し開けたら、ろうそく入ってた!」

あずき「え、うそ! ……あ」

穂乃香「ほ、本当ですか? ……あ」

柚「ほら! “時子サンの”ろーそく!」


忍(!?)


穂乃香「で、でもこれ真っ赤ですね……」

柚「お誕生日っぽい!」

あずき「すっごく太いね」

柚「これで10本分ってこと!」

穂乃香「て、“低温で溶けます”……?」

柚「あぶなくない!」

柚「うん、これで大丈夫だね!」


忍(いやダメでしょ)


あずき穂乃香『……うん!』


忍(ダメでしょ!!)


忍(時子さんのってそれ、あれだから!)

忍(ぜったい用途違うから!)

忍(そもそもなんで事務所にもってきてるの!)

忍(……まさか事務所で夜な夜な…… あんなことやこんなこと…… いやいやいや……!)

忍(とにかくそれはだめだって! アタシどんな顔して吹き消せばいいのかわかんないよ!  わかんないよ!)

忍(ああ!いますぐ飛び出て止めに入りたい……! でも、でも…… もう!


柚「うーん、手ごわいなぁ……」

穂乃香「ゆ、柚ちゃん?」

柚「んー? ……にへー♪」

あずき「あ、麗奈ちゃんの特大クラッカーだっ! 借りちゃおっか♪」


忍(やめて!)


柚「ぶりゅんひるでてるてるぼうずに、太陽神すずほ人形だって! つるして飾っとく?」


忍(なんで!?)


あずき「一発芸プレゼント大作戦! いまからテーブルクロス引きの練習しようかなっ?」


忍(いまから!?)


柚「ところで今日ってだれの誕生日なんだっけ?」


忍(アタシ!)


穂乃香「あわわ……」


柚「ほら、穂乃香チャンもなんかやってみよ?」

あずき「勢いが大事大作戦!」

穂乃香「そんなこと言っても……」

柚「うーん、なら……」

穂乃香「?」

柚「穂乃香チャンさ、忍チャンのこと、どぉおもってる?」

穂乃香「え?」


忍(え……?)


穂乃香「どうってそんな……」キョロキョロ......

柚「ほら、普段面と向かって言えないこともさ、今がチャンス今がチャンス!」


柚「それとも、忍ちゃんのこと、実はキライ?」

穂乃香「そ、そんなことないです!」

柚「お♪」

穂乃香「忍ちゃんは真面目で、努力家でかわいくて、すごく尊敬してるんです」

柚「えへへ、知ってる♪ そういうところカッコイイしカワイイ!」

穂乃香「はい! でも、それだけじゃなくって…… その、大事なお友達で、お話とかしていなくても一緒にいるだけで楽しくて、幸せで、ずっとずっと近くにいたくて……」

柚「わかる! なんか安心する! わーってくっついて、ぐてーってしてるとすっごい気持ちいい! しょうがないなぁって顔するんだよねっ!」

穂乃香「本当はもっとお返ししなきゃっていつも思ってるんです…… いつももらってばっかりで…… だから今日は、すこしでも喜んでもらえたらなと、思います」

柚「だよねだよね! プレゼントもいっぱい考えたし、ケーキもおいしいの選んだし!」

穂乃香「ふふふ、そうですね♪」

柚「へへー♪」


忍(……なんで、いきなり、もう!)

忍(あぁ、だめだ…… 恥ずかしさとうれしさと、それだけじゃない、なんだろう…… なんだろう……?)

忍(あぁだめだなぁ……)

忍(ちょっと泣きそうになってる…… 泣いたら音でばれちゃうかなぁ…… えへへ)


あずき「…………」

あずき「……ず、ずるい!」

柚穂乃香『え?』

あずき「ふたりだけずるい! あずきも、忍ちゃんに聞かせちゃおう大作戦! やりたい!」


忍(ん?)


穂乃香「あ、あずきちゃん、だめです!」

柚「あ、まずいかも……」


忍(んんっ?)


穂乃香「それじゃあ、忍ちゃんにばれちゃいます!」

あずき「あ、そっか! 忍ちゃんにこっそり聞かせちゃおう大作戦だ!」

穂乃香「だから!」

柚「……あちゃー」

忍「…………えーっと」ッス......

穂乃香「あ……」

あずき「わっ」

忍「どういうことか、聞かせてもらおっかな?みんな?」

――――――――



忍「――つまり、みんなはアタシが事務所にいること、最初から知ってたいた、と」

穂乃香「はい……」

柚「その、帰ってきたとき、事務所に入ってく忍チャン見つけて……」

あずき「それで、びっくり大作戦は変更だねって……」

忍「それで、もしアタシが隠れてたら、なにするって?」

柚「忍チャンびっくりさせて、飛び出させたひとが勝ちってゲーム……」

あずき「新、びっくり大作戦……」

忍「大作戦はいいから」

あずき「はい……」


穂乃香「ごめんなさい、その、だますようになってしまって……」

忍「まぁ、それはおいといてとりあえず確認から……」

忍「それで、ロウソクが足らないって?」

柚「ウソ。 ちゃんと年齢分あるってー。 時子さんのロウソクはほんとにあるけどねっ」

忍「それはあるんだ…… じゃあ、ぴにゃこら太のキグルミは?」

あずき「あれはスタジオから借りてきたやつ。 ちゃんとしたプレゼントは別だよっ」

穂乃香「え!? ウソだったんですか?」

忍「穂乃香ちゃん落ち着いて」

穂乃香「はい……」

忍「そんなあからさまに落ち込まなくても…… それで……」

忍「特性クラッカー、てるてる坊主、一発芸に、誰の誕生日かわからない、までは?」

柚「全部」

あずき「うそです」

穂乃香「…………」

忍「ふーん」


忍「そっかそっか、じゃあさ、あとは……」

忍「最後の、その…… 聞かせちゃおう大作戦? は?」

穂乃香「それは全部本当です!」

柚「うん! 本音しか言ってないよ!」

あずき「忍ちゃん大好き!」

忍「あ、いやうん…… ありがと……」

穂乃香「…………」

あずき「…………」

柚「…………」

忍「…………」

忍「ああ、もう! 調子狂うなぁ!」

忍「……では! この工藤忍をドキドキさせた罪について、穂乃香ちゃん、柚ちゃん、あずきちゃんに対して裁きを言い渡します!」

あずき「ははー!」

柚「へへー!」

穂乃香「は、はい!」

忍「判決! 誕生日パーティの準備に、アタシも参加させること!」

『え?』


穂乃香「そ、それでいいんですか?」

あずき「で、でも忍チャンの誕生日……」

忍「旅行とパーティは準備が一番楽しいの! その一番に今日の主役を参加させないとは何事か!」

柚「えー……」

忍「文句ある?」

柚「ないっ!」

忍「よろしい! ……それに」

あずき「それに?」

忍「……みんなが楽しそうなのに、ひとりで隠れてるの、ちょっとだけさびしかったから……」

穂乃香「……ふふふ」

忍「ちょっと笑わないでよ!」

穂乃香「あ、ごめんなさい、おもわず ……ふふ」

忍「もー ……あはは」


あずき「よーし! それじゃあみんなで誕生日大作戦! あずきは飾りつけするよっ!」

柚「アタシはメッセージカード書かなきゃ! 忍ちゃんは見ちゃダメ!」

穂乃香「あ、あたしは…… ぴにゃこら太の練習します!」

柚「それ着たいだけでしょ!」

穂乃香「……あ、その……」

忍「ふふふ…… ……ねぇみんな!」

柚「ん?」

あずき「なーにー?」

穂乃香「はい?」


忍「アタシもみんなのこと大好き!だよ!」


おわり!


忍ちゃんはぴば!そんな話
ぎりぎり今日のうちに間に合ってよかったです
ではでは

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