芳乃「かみさま」 (57)

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菜々「体力持つのは一時間」
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寺生まれのPさんとか微妙に幼いよしのんとかふじともとか茄子さんとかひじりんとかが出ます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457097186

モバP「破ぁ!!!」

モバP「……っと、これで大丈夫だろう」

トレーナー「あ、ありがとうございます!」

モバP「これが俺の仕事だからな」

芳乃「今日のはどういったものでしてー?」

モバP「なんてことないポルターガイストだ」

モバP「物を飛ばして、人を殺して、糧とする」

芳乃「ほー」

芳乃「普通でしてー」

モバP「ああ、普通だな」

モバP「……まあ、その霊ももういなくなったから大丈夫だ」

モバP「二人はレッスンそのまま続けてくれ」

芳乃「はいでしてー」

聖「……」

モバP「トレーナーさんもよろしく」

トレーナー「あ、はい」

モバP「じゃ」

トレーナー「……ふたりとも」

芳乃「でしてー」

聖「……」

トレーナー「ちょっと休憩してからレッスン始めますね……」

トレーナー「気持ちを落ち着けないと……私が教えられなそう……」

芳乃「ということで、休憩でしてー」

聖「……」

芳乃「むー……?」

聖「……」

芳乃「聖殿ー?」

芳乃「先ほどから黙ってどうしたのでしてー?」

聖「……」

芳乃「おねーちゃんに何でも相談してほしいのでしてー」

聖「……」

芳乃「……」

聖「……あの」

聖「やはり、すごいな……って」

芳乃「あの方の『破ぁ!!!』がでしてー?」

聖「はい……」

芳乃「あの方は寺生まれであるのでー」

聖「あ、はい、それは聞きました……」

芳乃「であるから、このようなことも茶飯事でありー」

聖「……それはよくわからないですけど」

芳乃「そういうものでしてー」

聖「プロデューサーさん……って」

聖「あんな風にいつも……霊を倒してるんですか……?」

芳乃「そうでしてー」

芳乃「霊に困らされている方々の前に現れては、あのように助けていましてー」

聖「プロデューサーのお仕事もしてるのに……」

芳乃「あの方は寺生まれであるためー」

聖「……?」

芳乃「寺生まれはすごいのでしてー、何でもできるのでしてー」

聖「えぇ……」

芳乃「それに、あの方はわたくしたちも、助けられましてー」

聖「芳乃お姉ちゃんも……?」

芳乃「でしてー」

芳乃「昔の話ではありますがー」

芳乃「わたくしもあの方に助けられましてー」

芳乃「縁あってこうしてアイドルをしているのでしてー」

聖「へぇ……」

聖「なんだか、すごい……」

芳乃「そうでしてー?」

聖「お話の中の人みたいで……」

芳乃(……そなたも助けられてるのですがー)

芳乃(こちらは口止めされているためー、話せないのでしてー)

芳乃「むー……」

聖「ど、どうしたの……?」

芳乃「なんでもないのでしてー」

芳乃「……しかし、わたくしたちは慣れてしまいましたがー」

芳乃「確かに不思議な方でしてー」

聖「慣れるんだ……」

芳乃「ここでアイドルを続けていれば嫌でも慣れるかとー」

芳乃「特にあの方とともに行動をすればー、多数の霊を見ることができましてー」

聖「……」

聖「今まで霊とか……ホラーって怖かった……けど」

聖「……プロデューサーさんのおかげで……克服できそう」

芳乃「怖いものはすべてあの方がすべて吹き飛ばしてくれるのでしてー」

聖「はい……」

芳乃「……」

聖「……あの、芳乃お姉ちゃん」

芳乃「なんでしてー?」

聖「芳乃お姉ちゃんはどうやって助けられたんですか……?」

芳乃「わたくしでしてー?」

聖「ちょっと……気になって……」

芳乃「ふむむー」

トレーナー「……よし、もう大丈夫」

トレーナー「それじゃあ、二人ともー、続きをやりますよー」

芳乃「はいでしてー」

芳乃「……この話はまた後で、でしてー」

聖「あ、はい……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


芳乃「おわりましてー」

聖「終わりました……」

茄子「あ、二人ともお帰りなさーい♪」

聖「……茄子さんだけ?」

茄子「プロデューサーさんは朋ちゃんと一緒にお仕事ですよ」

芳乃「ほー」

芳乃「……む?」

茄子「どうしました?」

芳乃「両手で何を包んでるのでして?」

茄子「うふふ、実はここにくるときに可愛らしい虫を見つけまして」

芳乃「聖殿、今すぐ茄子殿から目を離したほうがいいのでしてー」

聖「え、えぇっ……?」

茄子「む、ひどいですよ、芳乃ちゃん」

茄子「この中にいるのは蝶々です、蝶々!」

芳乃「……本当でしてー?」

芳乃「実はゴキブリとか芋虫だったりとか――」

茄子「――芳乃ちゃんのその私の認識はなんとかならないのでしょうか……」

芳乃「日ごろの行いとトラウマのせいでしてー」

聖「……トラウマ持ってるんですか?」

芳乃「たまに血を見せびらかしにくるのでー」

茄子「もうしてませんよ」

芳乃「あと、たまに変なところで笑ってたりするのでー」

聖「この前……机の下に入って笑ってる茄子さんを見ました……」

茄子「あれは……」

茄子「……」

茄子「……狭いところが落ち着くのってなんででしょうね?」

芳乃「知るかでしてー」

茄子「っと、そうだ、ほら、蝶々ですよ蝶々」

聖「あ、本当……」

聖「かわいい……」

芳乃「本当でしてー」

芳乃「……疑ってごめんなさいでして」

茄子「いえいえー♪」

聖「でも、手を開いても飛ばないなんて……」

聖「……もしかして、怪我?」

茄子「たぶん私が幸運だからだと思いますー♪」

芳乃「……」

芳乃「……まあ、動かないのであれば、わたくしたちも眺めやすいのでしてー」

茄子「ふふふ、みんなハッピーですね♪」

芳乃「あ、そうでしてー」

芳乃「聖殿ー」

聖「?」

芳乃「先ほどの話の続きをするのでしてー」

聖「先ほど……あ……」

聖「芳乃お姉ちゃんの昔……?」

芳乃「でしてー」

聖「いいの……?」

芳乃「別にかまわないのでしてー」

茄子「芳乃ちゃんの小さいころの話ですか?」

芳乃「小さいころというよりはー」

芳乃「ほんの少し昔の話でしてー」

芳乃「わたくしがー、あの方と出会いアイドルとなった経緯をー」

茄子「へぇ……私も結構興味ありますね」

聖「一緒に聞きますか……?」

茄子「芳乃ちゃんさえよければ」

芳乃「わたくしは別にかまわないのですがー」

茄子「では、ご一緒させていただきますね」

茄子「……ポップコーンでも用意しましょうか」

芳乃「やっぱり却下でして」

茄子「冗談ですよ、ふふっ」

芳乃「しかし、話すのはかまわないのですがー」

芳乃「わたくしは助けられた後の記憶しかないのでー」

芳乃「ともかく、一部始終をきくのであれば、私に聞くよりは――」

朋「ただいまー」

芳乃「――朋殿にきくといいかとー」

朋「……何の話?」

芳乃「わたくしの話でしてー」

朋「芳乃ちゃんの?」

聖「芳乃お姉ちゃんがプロデューサーさんに助けられたときの話を聞こうとして……」

茄子「けど、芳乃ちゃんが助けられる前の話は知らないから一部始終を話せないって言うんですよね」

芳乃「ということで、朋殿に話してほしいのでしてー」

朋「なるほどねぇ」

芳乃「わたくしと出会う以前の話はできないためー」

芳乃「朋殿が話したほうがいいかとー」

朋「……わかったわ」

茄子「あら、そういえばプロデューサーさんは……?」

朋「いつもの人助けよ」

聖「本当にいっぱいやってるんだ……」

朋「それじゃ、話そうかしら」

朋「ええと、あれは今から――」

============================


モバP「……」

朋「……」

モバP「迷った」

朋「ふざけんじゃないわよ」

モバP「いや、ふざけてないんだ」

モバP「マジで迷ったんだ」

朋「なおさらふざけんじゃないわよ」

モバP「おかしいなぁ……道なりに進めばつくはずだったんだけど……」

朋「……ここ山道だし、どっかで道間違えたんじゃないの?」

モバP「まあ、迷うってことはそうだよな」

モバP「……どうするか」

朋「来た道を引き返すのがいいんじゃない?」

モバP「より迷いそうだけど……まあ、このまま変な方向に歩くよりはいいか」

朋「はぁ……」

朋「せっかく歌えるって聞いてはりきってたのに……」

朋「……こんな山奥にある村でとは思わなかったけど」

モバP「俺も思わなかったよ」

モバP「……だが、この仕事請けようっていったのは朋だろ?」

朋「そうね」

朋「占ってみて、行くべきだって思ったのよ」

朋「……というか、いくべきって結果が出たわ」

モバP「……」

朋「それに、あたしの歌を聞きたいっていってくれたなら届けたいしね」

モバP「……そうか」

朋「……ま、聞かせるにはなんとかこの山道を越えていかなきゃいけないんだけど」

モバP「……」

朋「……」

朋「ねぇ、なんか来た時と道違うわよね」

モバP「だな、俺もそう思ってた」

モバP「……」

朋「……」

モバP「これさ、たぶんやっちまったよな」

朋「やっちゃったわね、もうここどこかわかんないわ」

モバP「……」

朋「……」

朋「ちょっと占っちゃいましょうか?」

モバP「……いいのか?」

朋「今更でしょ」

朋「ええっと……何で占おうか……」

朋「……」

朋「……いい具合に先が削れてる木があるわね」

朋「……」

朋「次進む道はどっち……っと」ポイッ

モバP「もはや占いでもなんでもないな」

朋「あたるんだからいいでしょ……ほら、あっちだって」

モバP「あっちか……」

朋「っし、じゃあいくわよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


朋「……ついたわ」

モバP「ついたな」

朋「あー……よかった……暗くなる前について」

朋「とりあえず早く宿に行きましょ、宿に」

モバP「だな……ええと……ああ、あっち、あっちが宿だ」

朋「……本当でしょうね?」

モバP「さすがに村の中では迷いはしないさ」

モバP「地図もあるし」

朋「ならいいけど……」

朋「……しかし本当に……言い方が悪いけど」

朋「村ね」

モバP「村だな」

朋「なんかもはや新鮮さすら感じるわ」

モバP「本当にひどい言い方だな」

朋「……そう感じちゃったんだもん」

モバP「……」

朋「……あ、神社とかもあるのね」

モバP「神社か……」

朋「ええ」

朋「……」

モバP「……何の神が居るんだろうな」

朋「……奉られてるだけだと思うけどね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


女の人「遠いところからはるばるようこそお越しくださいました」

モバP「いえいえ」

女の人「今お二人のお部屋に案内しますね」

モバP「お願いします」

女の人「……と、言いたいのですが」

朋「ん?」

女の人「こちらの手違いで一部屋しか確保できなくて」

朋「うぇっ!?」

女の人「……ご一緒の部屋でもよろしいでしょうか?」

朋「えっ、えぇ……」

朋「……ど、どうすんのよ?」

モバP「どうするといわれても……この村に宿はここしかないし」

モバP「仕方ないだろ?」

朋「う……うー……」

朋「うー……」

モバP「うなったって部屋は出ないぞ」

朋「わかってるわよ!」

モバP「……じゃあ、はい、その一部屋で大丈夫です」

女の人「かしこまりました、申し訳ございません」

女の人「今ご案内しますね」

女の人「こちらになります」

モバP「ありがとうございます」

朋「うー……」

モバP「……まだうなってるのか」

女の人「それでは、ここで一泊するにあたってひとつだけお願いがあります」

モバP「?」

女の人「……ここにくる途中、神社を見ましたか?」

モバP「ええ」

女の人「それなら話が早い」

女の人「その社の中を絶対に覗かないでくださいね」

モバP「……」

女の人「絶対に」

モバP「……言われなくても、そんな罰当たりなことできませんから」

女の人「それならよかったです」

女の人「それでは、ごゆっくり」

モバP「……」

朋「うー……」

モバP「お前はいつまでうなってるんだ」

朋「だって、あんたと二人きりの部屋でしょ?」

モバP「……まあ、そうだな」

朋「でしょ?」

朋「ちょっとくらいうなったっていいじゃないの」

モバP「……外で寝ようか?」

朋「そんなことさせられるわけないでしょ」

朋「別に、あんたがあたしに変なことするとかそんな心配はしてないわよ」

朋「あんたを信頼してるから」

モバP「……」

朋「ただ……あたしだって年頃の女の子だし」

朋「変な緊張くらいするわよ」

モバP「そっか」

朋「ええ」

モバP「……」

朋「……」

モバP「変なことはしないからな」

朋「そんな心配してないってば」

モバP「そうか……」

モバP「……」

モバP「ちょっと散歩するか?」

朋「……そうね」

朋「せっかくだから神社にでも行ってみましょうか」

モバP「ほー、ここが中に入るなといわれた神社かー」

朋「外見は普通ね、外見は」

モバP「……」

朋「……で、中はどう?」

モバP「見えないな」

朋「……」

モバP「……朋の言いたいことはわかってるよ」

モバP「中は……そうだな、実際に見てみないことにはなんともいえないが」

朋「が?」

モバP「おそらく、中には霊的な何かがいるだろうな」

朋「神様?」

モバP「いや、それは違うと思うが……」

朋「……じゃあ、何かを封印してるのかしら?」

モバP「だから開けるなっていったのかもな」

モバP「……まあ、君子危うきに近寄らずという言葉がある」

モバP「ある、が」

モバP「少し、嫌な予感がする」

朋「……」

朋「あたしが中、見てみましょうか?」

モバP「いや、あんなにも開けるなって念を押されたんだ」

モバP「少なくとも日中に開けるわけにはいかないだろう」

朋「そうね」

朋「でも、あたしなら閉じたまま中を見れるから」

モバP「……中に何か入れましたって誰かに伝えて開けてもらうとかか?」

朋「そんなとんちみたいなことしないわよ」

朋「……とりあえず戻りましょ、道具は全部向こうにおいてきたから」

モバP「で、部屋まで戻ってきたわけだが」

朋「さ、占うわよー」

モバP「……ま、そうだよな」

朋「水晶玉使えば中の様子なんて簡単に見れるわよ」

モバP「……そうか」

朋「……」

朋「別に心配しなくても大丈夫よ」

朋「百発百中の占いなんて結構便利だし」

モバP「……」

朋「さ、じゃ占ってみようかしら」

朋「あの社の中にあるものはなにかな……?」

モバP「……しかし」

モバP「それもう占いじゃなくて透視みたいなもんだよな」

朋「全部当たったらそんなもんよ」

朋「占いは当たるも八卦当たらぬも八卦だからこそ、だし」

朋「あたしのやってるこれは占いとは言ってるけど、実際はそんなんじゃないもの」

朋「……っと、出たわ」

モバP「何が見えた?」

朋「ちょっと待って、薄暗くてよく見えなくて……」

朋「んー……」

朋「……」

モバP「……朋?」

朋「……あの中にはね」

朋「微動だにせず目を閉じて座ってる女の子の姿がいたわ」

モバP「女の子……?」

朋「ええ」

朋「ほかには何も……暗くて見えないだけかもしれない」

朋「とにかく、あたしが見えるのはその子だけよ」

モバP「……生きてるのか?」

朋「わかんない、動かないんだもの」

朋「ただ……なんていうのかしら」

朋「……ちょっと怖い感じ」

モバP「怖い?」

朋「きっと、人なんだろうけど」

朋「ほんとに人か怪しいような、そんな感じね」

モバP「……」

朋「……」

朋「……この子が何なのか調べる?」

モバP「いや、いい……大体予測はついた」

朋「予測?」

モバP「ああ」

モバP「中にいるその子は、きっと神になろうとしてる」

朋「神って……」

モバP「神をその身におろすんじゃなく、自分自身が神になるんだ」

朋「そんなことできるの?」

モバP「できる」

モバP「だからこそ、その子は神社の中に入って座してるわけだからな」

モバP「……俺が霊的なものを感じたのもその子が神になろうとしているからだ」

モバP「そして感じた嫌な予感……その正体もわかった」

モバP「一つは、その子が今にも人を完全に抜け出し、神になろうとしていること」

モバP「そしてもう一つは」

朋「……もう一つは?」

モバP「……おそらく、だが」

モバP「俺たちを供物とすることで、その子は完璧に神になるだろうということだ」

朋「……供物?」

モバP「言い換えると生贄だ」

朋「……え、私たちが生贄になるの?」

モバP「たぶんな」

モバP「きっと朋が呼ばれたのもそのためだろう」

朋「えぇ……」

モバP「部屋が一部屋になったのも、生贄として捕らえやすくするためじゃないか?」

朋「……」

朋「あたし生贄になるためだけに険しい山道をあるいてここまできたのね……」

モバP「そんなことにはさせないさ」

モバP「だから朋」

朋「何?」

モバP「夜逃げするぞ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


朋「……ねぇ、おなかすいた」

朋「あんなに美味しそうな夕飯だったのに一つも食べれないなんて……」

モバP「何が入ってるかわからないだろ?」

朋「そうだけど……」

朋「だからって、全部捨てちゃうなんて……」

モバP「何が入ってるかわからないだろ?」

朋「そうだけどぉ……」

朋「……持ってきたチョコでも食べよ」

モバP「あ、俺もくれ」

朋「ん」

モバP「サンキュ」

モバP「……さて」

モバP「あまり遅くまで待ちすぎるとおそらく向こうに先手を打たれる」

朋「じゃ、今から逃げるの?」

モバP「ああ」

朋「でも、受付の人とかたぶんまだ仕事してるわよ」

モバP「正面から出るわけないだろ」

朋「……え、じゃあ窓から?」

朋「ここ2階よ……?」

モバP「たかが2階だろ?」

モバP「さ、荷物を持ってくれ」

朋「えぇ……」

朋「用意はしたけど……」

朋「……あたしここから飛べっていわれても無理よ」

モバP「ああ、それは大丈夫だ」

モバP「荷物を前に抱えてくれ」

朋「?」

朋「こう?」

モバP「ああ」

モバP「じゃ、運ぶな」

朋「え――きゃっ!?」

モバP「よっし、じゃ、行くぞ」

朋「や、ちょ、お姫様抱っこ、って……!」

モバP「声は出さないようにしろよー」

朋「え、いや――っ!」

朋(……あたしを抱えたまま、プロデューサーは窓から飛び降りた)

朋(音もなく着地し、そのまま神社の方に走り去る)

朋(……寺生まれってすごい、改めてそう思った)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


モバP「……ふぅ」

モバP「なんとか誰にも見つからずに神社までこれたな」

朋「……そろそろおろしてよ」

モバP「ん、そうだな」

朋「……ふぅ」

朋「あー……なんか二重の意味で疲れたわ」

モバP「悪いな」

朋「いいわよ別に」

朋「……それにしても、夜の神社って怖いわね」

モバP「まあ、明かりもほとんどないからな」

朋「そうね……」

朋「……自分で見たのに言うのもなんだけど」

朋「ほんとにこの中に人はいるのかしら」

モバP「まあ入ってみればわかるだろ」

朋「それもそうね」

朋「……開くのかしら?」

モバP「鍵はかかってないようだし……いざとなれば壊せばいい」

朋「……」

モバP「それじゃ――お、簡単に開くな」

モバP「お邪魔します……っと」

朋「……真っ暗ね」

モバP「だな」

モバP「あ、入り口しめておけよ」

朋「もちろん」

朋「……あ、ライトつけるわね」

朋「えっと……スマホでいいかしら……はい」

モバP「ん、ありがとう」

モバP「……さて」

??「……」

朋「近づいてみても大丈夫かしら?」

モバP「俺が先行する」

朋「……」

モバP「……」

朋「どう?」

朋「あんたの予測どおり?」

モバP「ああ」

朋「そう」

??「……」

朋「もしもーし、ねぇ聞こえるー?」

??「……」

朋「……聞こえてないわね」

朋「それとも無視かしら?」

モバP「さあな」

モバP「だが、俺のやることは一つだ」

モバP「すぅ……」

モバP「破ぁ!!!」

朋「……」

モバP「……」

??「……」

??「……っ」

朋「……あ、目開けた」

??「――っ……――ぁ――あー――」

朋「ん、どしたの?」

モバP「声が出せないんじゃないか?」

??「こほん……あーあーあーでしてー」

??「失礼しましてー、声を出すのは久方ぶりであったためー」

芳乃「わたくし、依田の芳乃と申しましてー」

芳乃「そなたらはー?」

朋「あたしは朋、一応アイドルよ」

モバP「俺は寺生まれのプロデューサーだ」

芳乃「ほー、アイドルにプロデューサーでしてー」

芳乃「……それはなんでしてー?」

朋「え、知らないの?」

芳乃「わたくしは永らくここにいましてー」

芳乃「外のことは疎くー」

朋「永らくってどれくらい?」

芳乃「ふむむー……」

芳乃「……」

芳乃「12の時からここに入ってはおりますがー」

朋「今は何歳なの?」

芳乃「わかりませぬー」

朋「……なるほどね」

芳乃「ここで座して待てば、ばばさまに会えると聞きましてー」

芳乃「以後わたくしはここにいるのでしてー」

モバP「……」

朋「ずっと?」

芳乃「でしてー」

芳乃「日の光など永らく見ていないのでしてー」

朋「えぇ……大丈夫なの?」

芳乃「ばばさまに会えるのならばこれしき容易いことかとー」

モバP「そのばばさまっていうのは……?」

芳乃「わたくしのばばさまでしてー」

芳乃「ずっと昔に遠いところに行ってしまわれましてー」

芳乃「わたくしはー、ばばさまのことが好きでしたゆえー」

芳乃「会えるのであればー、いつまでも待つつもりでしてー」

朋「……」

モバP「……」

芳乃「お二人はどうしてここにー?」

朋「あー……そうね」

朋「さっき、この中に入っちゃだめって言われたのよ」

芳乃「……ならばどうしてここにー?」

朋「面白そうだからよ」

芳乃「……えぇー」

朋「ほら、押すなって言われたら押したくなるじゃない?」

朋「それと同じよ」

芳乃「……」

芳乃「しかし、なぜここに立ち寄ってはいけないと言われたのでしょー」

朋「ん、理由は知らないの?」

芳乃「わたくしはここで待てばいいといわれただけであるためー」

朋「そうなんだ……」

芳乃「……は、もしかしてばばさまに会うのが遅れるのではー?」

芳乃「むー、そうであったなら私はとても怒るのでしてー」

芳乃「ぷんぷんよしのんでしてー」

朋「ぷんぷんって……」

芳乃「ぷんぷん」

朋「ふふ、かわいいわね」

芳乃「本当でしてー?」

芳乃「ぷんぷんからにこにこよしのんでしてー」

芳乃「にこにこ」

朋「ふふっ」

モバP「……なぁ」

芳乃「ん、なんでしてー?」

モバP「本当に、自分がここにいる理由を知らないんだよな?」

芳乃「先ほども申しましたがー」

芳乃「わたくしはばばさまに会うためにここで待っているのでしてー」

モバP「そうか……」

モバP「なぁ、芳乃」

モバP「おそらくそれは嘘だ」

朋「!」

芳乃「嘘、でしてー?」

モバP「ああ」

モバP「ここで待っていてもお前の知るばばさまはこない」

モバP「それどころか、お前自身が遠いところに旅立ってしまう」

芳乃「ほー」

芳乃「どうしてそう言い切れるのでしてー?」

モバP「そうだな……芳乃」

モバP「立てるか?」

芳乃「……ふむー?」

芳乃「むむむー……」

芳乃「しばらく足を動かしていなかったゆえー」

芳乃「今しばらくお待ちいただければー」

モバP「立てないんだな」

芳乃「むー」

モバP「それと、質問だが、最近ご飯とか食べてるか?」

芳乃「……むー」

朋「え、食べてないの!?」

芳乃「あまりお腹も空かずー、食べるものもなかったためー」

モバP「だよな」

朋「よく生きてられるわね……」

芳乃「ほとんどここから動いていないためー、エネルギーを使っていないからかとー」

モバP「や、そんなことはないからな」

モバP「それはすべて芳乃が神になろうとしているのが……いや、していたのが原因だ」

芳乃「わたくしが神でしてー?」

モバP「ああ」

芳乃「ほー」

モバP「もう一歩手前だったからな、その体を捨てるのに」

モバP「だから、足も動かないし……きっと手も動かないだろ?」

芳乃「む」

モバP「肉体がいらないからお腹が減ることもない……というか、そういった感覚を感じない」

モバP「感覚が芳乃の体から抜けて行ってるからな」

モバP「そして、それでもなお死ぬことがないのは芳乃が人と神の境目に居るからだ」

朋「へぇ……」

朋「……よくわかんないわ」

モバP「……」

モバP「つまり、芳乃の魂が体から抜けてるから、体を動かせないし、体の異常を気にもしない」

モバP「で、死んでないし、体もいたって普通のままなのは神っていうのがすごいからだ」

朋「ざっくりね」

モバP「とにかく神がすごいから芳乃はまだ生きていられる」

モバP「たぶん、俺たちがここに入らなかったら、そのまま肉体を捨てて神になってただろう」

モバP「人としてのその体は芳乃が神になった途端に朽ち果てる」

芳乃「ほー」

芳乃「……スケールが大きくてついていけないのでしてー」

モバP「だが、本当のことだ」

芳乃「ほー、信じろとー?」

モバP「本当のことだからな」

芳乃「……たしかにー」

芳乃「以前起きていた記憶もまばらでありー」

芳乃「また、わたくしの体に異常があるのも事実でしてー」

芳乃「そなたの言うとおりわたくしは神へと変質しようとしていたのかもしれませぬー」

朋「……」

芳乃「しかし、神になればばばさまになれるというのであればー」

芳乃「わたくしは喜んで神となりましょー」

モバP「……」

芳乃「ばばさまは少し旅をしているだけでしてー」

芳乃「帰ってきたとき、わたくしとすぐ会えるように、と村の皆様は言いましてー」

芳乃「ゆえにわたくしはここで待つのでしてー」

芳乃「ばばさまをー」

モバP「……いつまで待つんだ」

芳乃「今日に来なければ明日にー」

芳乃「明日に来なければ明後日にー」

芳乃「明後日に来なければ明々後日にー」

芳乃「いつまで待っても来なくてもわたくしは待つのでしてー」

芳乃「その先に来る可能性もあるのでー」

モバP「……」

モバP「そのばばさまが故人でもか?」

芳乃「……」

芳乃「……」

芳乃「……」

芳乃「昔々の話ではありますがー」

芳乃「母様からばばさまは遠いところへ旅立ったと聞きましてー」

芳乃「その後、さまざまな場所を探し回っても見つからずー」

芳乃「以後ばばさまに会うことはなくー」

朋「それって……」

芳乃「……」

芳乃「やはり、ばばさまは死んでしまったのでしょうかー」

芳乃「いえ、死んでしまったのでしょー」

芳乃「わたくしも気づいてはいました、おそらくもうこの世にはいないとー」

モバP「……」

芳乃「……なれば」

芳乃「なれば、神となることこそばばさまに会える唯一の道なのではー?」

モバP「いや、それは違う」

芳乃「なぜでしてー?」

芳乃「同じ霊体ならば会うこともあるのではー?」

モバP「死んで幽霊となったものと神じゃ基本的に行き場所が違うからな」

モバP「仮に神となったとしても芳乃の場合はこの神社に縛られて、どこへ行くこともできないだろう」

モバP「もしも会えたとしても、そのときの芳乃が今の芳乃と同じものであるとは限らない」

芳乃「……なるほどー」

芳乃「……」

芳乃「ではわたくしは、もうばばさまには会えないのでしてー」

芳乃「会えないのでしてー……」

モバP「さっき、神となろうとした芳乃をこの世に引き戻した」

モバP「しばらくすれば、人間としての動きもできるようになるだろう」

モバP「どうする?」

芳乃「……どうするとはー?」

モバP「もう一度ここで待ち、今度こそ神になるか」

モバP「それとも、俺たちとともにここから逃げ、人間として生きるか」

芳乃「……」

朋「……ねぇ、あんた」

朋「外が騒がしくなってきたわよ」

モバP「……だな」

モバP「さあ、どうする?」

モバP「悪いが、猶予は与えられない」

モバP「今すぐ逃げないといけないからな」

モバP「だから、決めてくれ」

芳乃「……」

芳乃「名残惜しくはありますがー」

芳乃「ばばさまにあえないのであればー、ここに用はもうありませぬー」

芳乃「……」

芳乃「それに、わたくしは、まだわたくしを無くしたくはないためー」

芳乃「そなたらについていきましょー」

モバP「そうか」

モバP「ならよろしく」

朋「よろしくね」

芳乃「よろしくでしてー」

モバP「さて、だ」

モバP「どうやって逃げようか」

朋「たぶん、もう取り囲まれてるわよ、ここ」

モバP「だよな」

芳乃「しかしー、ここから逃げるのであればー、出口はそなたらが入ってきた入り口しかありませぬー」

朋「えー」

朋「……じゃあ突破するしかないの?」

モバP「ないだろうな」

朋「……」

朋「芳乃ちゃん、まだ動けないわよね?」

芳乃「がんばれば足を動かすことはできると思いますがー」

朋「がんばればじゃだめよ」

モバP「……なら俺が運ぶか」

朋「あんたの両腕がふさがるのはだめでしょ」

朋「あたしが運ぶわ……よい、しょっ……って軽っ!?」

芳乃「そうでしてー?」

朋「ええ、とても軽いわ」

モバP「……きっと芳乃が体を動かせるようになるくらいに体重も戻ってくるだろう」

モバP「さっきので芳乃を人側に引き戻したが」

朋「あ、さっきの『破ぁ!!!』ってそのためのだったのね」

モバP「ああ」

モバP「だが、今の芳乃はまだ人と神の境目に居るからな」

モバP「完全に人側に戻ったとき、体も元に戻る」

朋「ふーん……まあ、これなら大丈夫そう、走れるわ」

芳乃「ふむむー、お姫様抱っこと呼ばれるものをされるのははじめてでしてー」

朋「奇遇ね、あたしもさっき始めてされたわ」

芳乃「ほー」

朋「じゃ、あたしはプロデューサーの後ろに隠れるから」

モバP「ああ、そうしてくれ」

モバP「それじゃ、開けるぞー」

モバP「……やっぱり囲まれてるな」

朋「まあ、そうよね」

朋「鍬とか鋤まで持って武装しているわ」

女の人「ああ……ここにいらしたんですね」

朋「あ、受付の人」

女の人「あれほど中に入るなといったのに」

モバP「あれほど言われたら気になってしょうがなくなってな」

女の人「……それに」

芳乃「む?」

女の人「私たちの神様まで連れ出して」

朋「いや、この子は人間よ」

女の人「いいえ、彼女こそが神様です」

女の人「神様になる存在です」

女の人「そのために、私たちは生贄をささげてきたのですから」

モバP「……ああ、やっぱりか」

朋「……あー、どうしよ、これじゃ芳乃ちゃんの耳ふさげないわ」

芳乃「大丈夫でしてー」

芳乃「わたくしの話ならばー、わたくしこそが聞かねばー」

朋「芳乃ちゃん……」

モバP「今までも俺たちのように生贄をこの村に呼んでいたんだろう?」

女の人「ええ」

女の人「村を反映させるための神様を作るのに、村人を生贄にするわけないじゃないですか」

女の人「だから、たまにくる迷い人を生贄としたり……あるいは、私たちから生贄を呼びます」

朋「ちょうどあたしのようにってことね」

女の人「ええ」

女の人「行方不明か、熊に襲われたことにすればたとえ誰が来ても納得されて帰りますから」

朋「えぇ……」

モバP「まあ、自然の脅威っていうのは怖いからな」

芳乃「ねーねー、そなたらー」

芳乃「わたくしはいつまで待っていればばばさまに会えるのでしてー?」

女の人「……」

女の人「待っていればいつか来ますよ」

芳乃「ほー」

芳乃「わたくしが神になっても、来てくれるのでしてー?」

女の人「ええ、きっといずれ」

芳乃「ふむー」

芳乃「具体的な時間はわからないのでしてー」

女の人「……」

芳乃「この社にこもって、ばばさまのことをずっと考えていましてー」

芳乃「次はいつ会えるか、会ったら何を話そうかなどー」

芳乃「……しかし、もう待つのは疲れてしまいましてー」

芳乃「なので、わたくしから会いに行くことに決めましてー」

女の人「つまり、ここから出て行くと?」

芳乃「……でしてー」

女の人「……」

女の人「それは許せませんね」

朋「うわっ、みんな武器構え始めた」

女の人「生贄が生きている必要はなく」

女の人「神様もいずれ肉体は必要としなくなります」

モバP「……朋、芳乃、目をつぶれ」ボソッ

朋「えっ?」

モバP「いいから」

朋「う、うん」

芳乃「むー」

女の人「神様が生きていれば、あとはどうなってもいいです」

女の人「みなさん、あの人たちを――」

モバP「破ぁ!!!」

女の人「――っ!」

女の人「急に光――目がくらんで――っ!?」

モバP「よし、逃げるぞ朋、芳乃!」

朋「え、あ、うんっ!」

朋「でも、どっちに……?」

モバP「この村の入り口と言いたいが……まあ、間違いなく対策されているだろう」

モバP「だからこっちだ!」

朋「こっちって……山……道なんてないけど……!?」

モバP「早くしないと連中の目が戻るぞ!」

朋「あ……わ、わかった!」

朋「はぁ……はぁ……あー、もう、これどっちに向かって走ってるのかしら」

モバP「さあな……だが、だいぶ村から離れただろう」

モバP「今は夜……こんな暗い中で山に入るなんて自殺もんだ」

モバP「やつらももう追ってはこないはず」

朋「……あたしたち今自殺してるのね」

モバP「他殺されて生贄になるよりはましだろ」

朋「っと……芳乃ちゃん、大丈夫?」

芳乃「おー……」

朋「……芳乃ちゃん?」

芳乃「とてもワンダフルでしてー」

芳乃「こんな経験なかなかできないのでしてー」

芳乃「わくわくがとまらないのでしてー」

朋「大丈夫そうね」

モバP「……そろそろ変わろうか?」

朋「ん、芳乃ちゃん?」

モバP「ああ」

モバP「軽いとはいえ人一人抱えて走ってたんだ、疲れたろ?」

朋「……まあ、そうね」

芳乃「そのまえにー、わたくしの足で立てるかどうか確かめてみてもー?」

芳乃「少なくとも足は少しは動かせるようになっていましてー」

朋「ああ、そうね……さっきよりは重くなってきているし」

芳乃「女子に重いは禁句かとー」

朋「あ、ごめんごめん」

朋「じゃ、おろすわよ?」

芳乃「でしてー」

朋「よいしょっと」

芳乃「……おー」

芳乃「久方ぶりの感覚……地に足をつけて立つとはこのようなものだったのでしてー」

モバP「……歩けるか?」

芳乃「ふむー」

芳乃「それはまだ難しいそうでしてー」

モバP「そっか」

モバP「じゃあ、今度は俺がおぶるな」

芳乃「了解でしてー」

モバP「よいしょっ」

芳乃「おー」

芳乃「先ほどより視線が高いのでしてー」

朋「そりゃそうね」

朋「で、じゃあ次はどっちに進むの?」

モバP「……そうだなぁ」

朋「占いましょうか?」

芳乃「ねーねー、そなたらー」

モバP「ん?」

芳乃「そなたらはどこに帰ろうとしているのでしてー」

朋「……家?」

芳乃「そういうことではなくー」

モバP「……ああ」

モバP「俺たち、さっきの村へ向かう山道に入るところの近くに車を置いてきたんだ」

モバP「だから、そこに帰ろうと思ってる」

モバP「思ってる、が……」

芳乃「ふむむー、ならばわたくしに任せるのでしてー」

朋「芳乃ちゃん……?」

芳乃「わたくしの力で、そなたらが失くした道を探して見せましょー」

朋「できるの!?」

芳乃「失せ物探しが得意であったわたくしではありますためー」

朋「いや、失せ物なんてレベルじゃないと思うけど……」

芳乃「それでも、今の私にならできる気がしましてー」

芳乃「むむむー……」

芳乃「……あっちでしてー」

モバP「……じゃあ、あっちに歩いてみるか」

芳乃「次はこっちでしてー」

モバP「了解」

朋「……本当につくのかしら」

芳乃「む、わたくしを信じられないのでしてー?」

芳乃「ぷんぷんでしてー」

朋「いや……まあ、ねぇ」

芳乃「しかし、本当にわかるのでしてー」

芳乃「おそらくもう少ししたら目的地に到着するかとー」

朋「そうなの?」

芳乃「でしてー」

モバP「……まあ、信じて大丈夫だろう」

モバP「おそらく、これも後遺症みたいなもんだ、朋と同じような」

朋「あたしと……つまり、芳乃ちゃんがなろうとしてた神としての能力の一つってこと?」

モバP「そうなるな」

朋「へぇ……」

芳乃「む……朋殿もそういったお力がー?」

朋「まあ、そうね」

朋「占いの結果がはずれることがないわ」

芳乃「ほー」

芳乃「ならば私も占ってみてほしいのでしてー」

朋「帰ったらね……さすがに歩きながら占う気にはなれないわ」

芳乃「わーい、でしてー」

芳乃「あ、あっちでしてー」

モバP「了解」

朋「……」

モバP「……」

芳乃「……ねーねー、そなたー」

モバP「ん?」

芳乃「わたくしの贄となってしまった方々は、どのようにして贄となってしまわれたのでしょー?」

朋「……」

モバP「やつらに呼ばれて、殺されて……ではないよな」

芳乃「その後、どのように私の糧となったのか、でしてー」

朋「……」

モバP「……」

モバP「悪いが、それは俺にもわからん」

芳乃「そうでしてー」

モバP「ああ」

芳乃「……」

芳乃「……いかなる理由であれー、わたくしは幾人もの命を奪ってしまったのでしてー」

朋「いや、芳乃ちゃん自身がやったわけじゃ――」

芳乃「――それでも、わたくしのために死んでしまったことには変わりませぬー」

朋「……」

芳乃「……なれば」

芳乃「なれば、わたくしは、彼らのためにも」

芳乃「これからを強く生きねばー」

モバP「……」

モバP「……ついたな」

朋「ほんとだ、見覚えのある車……!」

芳乃「どやぁでしてー」

朋「すごいわ、芳乃ちゃん!」

芳乃「どやぁどやぁでしてー」

朋「あー……なんとか逃げ出せたのね……」

モバP「ああ、後は帰るだけだ」

朋「もう……安心しきったら疲れもどっとくるし、お腹も空いてくるし」

朋「というか結局あたし夕飯食べてないじゃない……あー」

芳乃「……む」

芳乃「わたくしもお腹が空いてきたのでしてー」

朋「あら、順調に戻り始めてきてるわね」

朋「チョコ食べる?」

芳乃「わーいでしてー」

モバP「……じゃ、帰ったらとりあえず飯食うか」

芳乃「わーいわーいでしてー」

朋「何食べるの?」

モバP「……ついたら決める」

朋「じゃ、何食べたいか考えとくわ」

モバP「ん」

モバP「じゃ、二人とも、車に乗り込んでくれ」

朋「はーい」

芳乃「でしてー」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


芳乃「といった、経緯でわたくしはかの者に助けられましてー」

茄子「へぇ……」

聖「ほ、本当にすごかった……」

聖「芳乃お姉ちゃん……神様だったの……?」

芳乃「結局なりきれなかったのでしてー」

芳乃「ゆえにわたくしはただの人であるのでしてー」

朋「失せ物探しが異常に得意なね」

茄子「しかし、4年も前の話なんですね」

芳乃「違うのでしてー」

朋「そんなに前じゃなかったはずよ……少なくとも1年も前じゃないなかったはず」

聖「え……でも、芳乃お姉ちゃん……12のころから社にいたって……」

芳乃「あのあと……教えていただいたのですがー」

芳乃「どうやら、わたくしは4年ほどあの社にいたそうでしてー」

聖「4年……!?」

茄子「よく生きてましたね……」

朋「人と神の境目にいたからっていってたわよ、プロデューサーは」

朋「なんでも、その境目に足を踏み入れたときから肉体が成長も朽ちることもなくなったから、長い年月生きていられた、っていってたわ」

芳乃「神補正ってすごいのでして」

聖「……つまり、芳乃お姉ちゃんの体は……12の頃からほとんど成長してないってこと……?」

芳乃「……まあ、おそらくー」

聖「……だから、わたしと身長が同じくらいなんだ……」

芳乃「む……」

聖「ふふ……聖お姉ちゃんって呼んでも……いいんですよ……?」

芳乃「むー!」

芳乃「たしかに聖殿のほうがスタイルもいいのでしてー」

芳乃「しかしわたくしのほうが年齢は上でしてー!」

聖「ふふっ」

芳乃「むー!」

朋「……」

茄子「……どうしたんですか、朋ちゃん?」

朋「いや、ちょっと流れ弾が……」

茄子「……ちなみに、その後どうしてアイドルに?」

芳乃「かの者に誘われましてー」

芳乃「かの者がわたくしを必要としているならば、とー」

芳乃「それに……いずれ、どこかにいるばばさまも見てくれるかもしれないと言われればー」

芳乃「やらないわけにはいかないのでしてー」

芳乃「その場所が、空より上だったとしても、ばばさまが見てくれるのであればー」

芳乃「というのが最初の動機でしてー」

茄子「……そうですか」

聖「届いてるといいですね……」

朋「きっと届いてるわよ」

朋「いつも、あんなに楽しそうにアイドルしてるんだから」

芳乃「だとしたら、わたくしはとてもうれしいのでしてー」

芳乃「それに、朋殿の占いもー」

朋「へ、あたしの?」

芳乃「あの後、朋殿にわたくしの今後はどうなるかを占ってもらったのでしてー」

朋「……あー、やったわね」

朋「あまりやりたくなかったけど」

茄子「どうしてですか?」

朋「だって、百発百中なんだもの」

朋「変な未来が出たら嫌じゃない」

茄子「ああ……」

芳乃「ですが、その未来は素敵なものでしてー」

芳乃「わたくしと、朋殿と、あと3人……計5人でステージで踊る未来でしてー」

聖「もしかして、そこに……私たちも……?」

朋「いや、ずっと前だし……芳乃ちゃんはともかく、他は……覚えてないわ」

朋「だけど、もしかしたらそうかもしれないわね」

茄子「ということは後一人仲間が増えるかもなんですね♪」

朋「まあ……そうなるわね」

芳乃「……そして、その未来を語る朋殿はとてもうれしそうでしてー」

朋「え、そうだった?」

芳乃「顔がとろけきっていましてー」

朋「そんなに!?」

芳乃「冗談でして」

朋「……」

芳乃「しかし、本当にうれしそうだったのは事実でしてー」

芳乃「……わたくしがステージで踊ることで、朋殿がそんなにも喜んでもらえるならばー」

芳乃「そういった動機もありましてー」

朋「……なんか、恥ずかしいわね」

芳乃「朋殿のおかげでしてー、朋殿がいなければ今の私は居ないのでしてー」

朋「わざとらしいわよ」

芳乃「ばれましてー」

朋「ふふっ」

茄子「……そういえば、朋ちゃん」

朋「ん?」

茄子「朋ちゃんはどういった経緯でプロデューサーさんに助けられて、アイドルになったんですか?」

聖「あ……私も、気になります……」

芳乃「わたくしもでしてー」

芳乃「一回も教えてもらってないのでしてー」

朋「あー、あたし……あたしかぁ」

朋「……そうね、前に機会があったら教えるっていったし」

朋「いいわよ」

朋「でも、あたしの……ってなると、さらに昔の話もしないとなのよね」

茄子「さらに昔ですか?」

朋「ええ」

朋「助けられたのは最近だけど」

朋「あたし、もっと前からプロデューサーとは知り合ってるのよね」

芳乃「なんと」

聖「幼馴染みだったんですか……?」

朋「ええ、昔ちょっとだけ奈良に住んでたことがあったんだけど」

朋「その時からの幼馴染みなのよ、あたしと、プロデューサーと……」

朋「あと一人、歌鈴っていう子の三人で、ずっと遊んでたの」

朋「……で、あたしの話の一部始終を話すには、そのもっと昔の話もしないとなのよ」

朋「だから、そのもっと昔から話すわ」

朋「……プロデューサーもまだ帰ってこなそうだしね」






おしまい

寺生まれのPさんとか、神様になれなかったよしのんとか、占いが万能でかわいいふじともとか、茄子さんとか、ひじりんとか書きたかった。

基本行き当たりばったりで書いてる結果書くたびに長くなるこのシリーズですが、たぶん後2回で終わります

誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。

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