江風「ンなろーっ!」ズガン!
PT「キャハッ!」スカッ
江風「こんのぉぉっ!」ズガンズガン!
PT「キャハハハッ!」スカッスカッ
江風「キィィ―――――ッ!」イライライラ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456393491
ズガンズガンズガン!
江風「ハァ……ハァ……」
PT「キャハ!キャハハ!」ピョンピョン
江風(な、なんだってンだ……砲撃が全然当たりやしないじゃないか……)
江風(ここが“陸”の上だからってか?)
江風(いや、関係ないねぇ……江風の腕の問題だろ……)
江風(なんだか、悲しくなってきたぜ)ハァ…
江風(無人島に流れ着いちまったら)
江風(隣にこいつがいたなンてねぇ……)
江風(残りの弾は……一発かい)
江風「もぉ……やめたァ……」ハァ
PT「?」
江風(なんでか知らねぇけど……)
江風(こいつ、さっきから襲ってこねぇンだよなぁ)
江風(いつでも海に戻れるからかい?)
江風(対して、江風は艤装が砲を残して半壊……海の上にも何故か浮けねぇ)
江風(……生かすも殺すも、もはやこいつ次第ってか……)
江風(気にいらないねぇ……元はと言えば)
江風(コロネハイカラ沖でこいつらが奇襲して来やがったせいで……)グッ
PT「キャハハ……キャハハ……」
江風「…………」
江風(今に見てな……)
江風(残り一発の弾、隙を見て必ず当ててやっからな……)
江風(ここでくたばる前に、せめて艦娘としての役割は必ず果たすぜ!)
江風(タイミングは……)チラ
PT「キャハハ!キャハハハ……!」ピョンピョン
江風(こいつが何かに満足して、海に戻ろうとした時だな)
江風(それまでは根気勝負だ)
江風(この一発をしくじったら、それで終わりだかンな……)
江風「……ところで」
PT「キャハハ……」ピョン!ピョン!
江風「……一体、こいつは何してやがンだ?」
PT「…………」ジィー…
江風「何を見て……ヤシの木?」
江風「はっは~ン、あんた……あのヤシの実が欲しいンだ?」
PT「キャハ!」コクリ
江風「ナルホドねぇ……ヤシの実かぁ……」
江風「まぁ頑張りなっ」クルッ
PT「…………」
江風(キヒヒ……ま、あいつの身長や手足じゃ)
江風(絶対届きやしないだろーけどなっ)ニタニタ
江風「…………」
PT「キャ、キャハッ」ピョン!ピョン!
江風「がんばれがんばれー(棒)」
PT「ギギ……」ガシッ…
PT「ギギー!」ズザァー
江風「…………」ニタニタ
江風「…………!」グゥー…
江風「…………チッ」
江風「こんのぉ!!」ガシッ
江風「ぐににに……!」ガシッ…ガシッ…
江風「んにゃー!!」ズサァー!
PT「キャハハ!キャハ!」
江風「痛ったたた……ンなろー!」
江風「にしても、ヤシの木ってのはこんなに滑るものなのかい」
江風「こいつぁ、骨が折れるねぇ……」
江風「!」
江風「ちょいと失礼~」ヒョイ
PT「?」
江風「あんた、体軽いじゃン?」
江風「江風が上まで投げてやるから、あれを取ってきてくれよ」
PT「!」コクッ
江風「よし、決まりだねぇ!」
江風「ンじゃ……行ってきなァ!!」ブンッ!
PT「キャハハハ!」ビューーーーン!
すこしぬけます
すみません
ボトッ!
PT「キャハ!キャハ!」ピョン!ピョン!
江風「よっしゃあ!でかしたぜ!」
江風「ンじゃ、このヤシの実は江風がもらっていくねぇ~」ヒョイ
PT「ギッ!?」ガーン
江風(キシシッ、ざまーみろっ)
江風(しっかし……これ、どうやって開けてやろうかねぇ……)
江風(とりあえず、石にぶつけてみっかな)
江風「コレ、かったいなー!」コンコン
PT「…………」ジーッ
江風「このっこのっ」ゴンッ!ゴンッ!
ゴ、ピューーーーン!
江風「あぁッ!!」
江風(しまった!手ェから抜けて飛んで行っちまった!!)
ピューーーーーー……
パシッ
PT「キャハ!キャハ!」
江風「チックショ―――ッ!!」
PT「キャハッ!」ガンッガンッ
パカッ
PT「キャハハッ!」ピョン!ピョンッ!
江風(マジかよ……開けやがったぜ……)ガクッ
江風「…………」グーギュルルル…
江風(だめだ……)
江風(これじゃ、あいつが海に戻る前にこっちがくたばっちまうよ……)ズーン
PT「…………」ジーッ
テクテク
PT「……ギッ」
江風「……あぁン?」
PT「ギ!」スッ
江風「え……」
江風「まさかその半分……江風に?」
PT「キャハ!」コクッ
江風「っ!……だ、だめだ!」
江風「さっき、江風はあんたからそいつを奪おうとしたんだよ!?」
江風「受け取っちまったら、そいつぁとんだ赤っ恥だッ!!」
江風「あんたの情けなんかいらないよッ!」
江風「さっさとどっか行きな!」
PT「…………」
PT「キャハ!」スッ
江風(こいつ、まだ……ッ!)
江風「…………」
江風「……ハァーっ」ポリポリ
江風「……んっ」グイッ
江風「ぷへーっ!」
江風「これ、あんま美味いもンじゃないねぇ」フフッ
PT「キャハ!」ゴクゴク
江風(美味そうに飲みやがるなちくしょー……)
江風「……ン?」
プゥ―――――ン…
江風(……蚊か)
江風「うっとおしいなぁ」ブン
プゥ―――――ン……
江風「まったく……」
江風「あれ、アイツはっ?」キョロキョロ
PT「ギー……」グデ
江風(砂浜の上で寝転がってやがる)
江風(……心なしか、苦しそうだな)
江風(無理もない……11月って言っても常夏の南国だかンな、ココ)
江風(こりゃあ、江風がトドメを刺すまでもない……か)チラ
PT「ギー……」
江風「…………」
江風(勘違いすンなよ……)サッ
江風(日本人は義理堅い民族だ……)サッ
江風(そ、それに……江風だってこの中に入るため……)
江風(だから、そこらの葉っぱで“ひさし”を作ってるンだ)
江風「……ゴホン」
江風「…………入りなよ」ボソッ
PT「キャハっ!」
江風「へへっ、我ながらなかなかの出来だねぇ」
江風「……感謝しろよ?」
PT「キャハハ!」コクッ
江風(こいつ……)
江風(さっきから、なンなんだ?)
江風(何故か敵意は感じねーし)
江風(かと言って、海に戻ろうともしねー)
江風「なぁ……」
江風「あんたたちは……なんで江風たち、人間を襲う?」
PT「ギ?」
江風「なんか、理由あンだろ?」
江風(人類史上初の深海棲艦とのコミュニケーションかもな、コレ)
PT「……」
江風「……ま、聞いてもムダか……」
PT「コワイ」
江風「……あン?」
PT「陸ノニンゲン、コワイ」
江風「……なンだいそりゃ」
江風(そんな理由で……こっちが攻撃されてちゃ、たまンねぇや)
江風(あんたらの方が、よっぽど怖えぇよ)
江風(……やっぱこいつらは敵だ)
江風(とてもじゃないけど……分かり合えはしないだろうね)
江風(人間……ましてや江風のような)
江風(こいつらと戦う“兵器”とあっちゃ、ね)
江風「まぁいいや」
江風「それより……」グゥー…
江風(さっきのヤシの実は汁しか吸えなかったぜ……)
江風(だから、なンかこう……)
江風(なにか、胃にズシンとくるものが欲しいねぇ)ハァ…
江風「…………」ジーッ
PT「?」
江風(食えそうにないな、こいつは!)ブンブン
江風「仕方ない……」
江風「こっからは、一人の力で頑張るぜ!」スクッ
PT「?」
江風「海には魚が一杯いンだろ?」
江風「そいつを獲れば……っ!」グッ
……
…………
………………
江風「チク……ショウ……」ガクッ
江風(あいつら、滅茶苦茶すばしっこいのな)
江風(素手じゃ、捕まりっこないよ……)シュン
江風(だめだ、江風の力じゃとても……)シュン
ズドーン!
……ザバザバッ
……ビチッ!
江風「!?」
江風(な、なんだ!?丸焦げの魚が飛ンで来やがったぞ!?)
江風「まさかッ」バッ
PT「キャハハ!キャハ!」ズドンズドン
チュドーン!
……ザバザバッ
江風「あンな魚雷の使い方……初めて見らぁ」ポケー
………………
…………
……
江風(グソォォー……悔じぃぃい……)モグモグ
PT「キャハ」ムシャムシャ
江風(江風は艤装がなきゃ、なンもできねえのかよ……!)
PT「キャハハッ」モグモグ
江風(段々自信が無くなってきたぜ)シュン
江風(ひょっとして、人間より……)
江風(こいつらのが……進んだ生き物なのかな)
PT「ギッ!ギギー!」
江風「あン……?」
江風「どうしたんだー?」
PT「ギ!ギ!」バタバタ
江風「?」
江風「……ほれ、とれたぜ」
PT「キャハハハ!」ピョン!ピョン!
江風(手が短いのに自分の頭がでかすぎて)
江風(喉に刺さった骨が自分で取れないなンてな……)クスッ
……
…………
………………
江風「こうアチィと喉が渇くねぇ……」
PT「キャハハッ!」
江風「その色のついた水、どっから持ってきたンだ?」
PT「…………キャハッ」
江風「……江風は飲まねーぞ」
PT「……」シュン
……
…………
………………
江風「覗くンじゃねーぞ」バサッ…
PT「?」
江風(ま、あいつが男なのか女なのかは分からねーけどよ)チャプ…
江風「あぁーっ!海の中は生き返るねぇ!」ザブザブ
PT「キャハハ!」コクコク
江風「……って、覗くなってンだろー!」
PT「?」
……
…………
………………
江風「なぁ……さっきみたいにあの木の実、取れねーか?」
PT「キャハ!」コクッ
江風「ンじゃ、もっかいいってみよーかい!」
江風「うりゃっ!」ブン!
ゴン!
PT「ギ―――――ッ!」グスッ
江風「アハハ……悪りぃ悪りぃ……」
江風「ミスって木に当てちまった……」テヘヘ
……
…………
………………
江風「なぁ、機嫌直せよー……」
PT「ギ」プイッ
江風「江風の分もやるからよー」
PT「……」
江風「……しゃーねーな」
江風「いたいのいたいの……」ナデナデ
江風「とんできなっ」パッ
PT「!」
江風「ふふ、どーだい?」
PT「……キャハ!」ニコッ
江風「!」
江風「おぉ……」
江風(そういや、もう夜になりはじめてたンだな)
江風「あんたも見て見なよ、空!」
PT「キャハ?」
江風「ホラ!」
PT「…………!!」
彼女たちのきらきらと光る瞳。
その中いっぱいに映ったのは光のない島の黒と、満天に輝く星のコントラスト。
朝は陽が登る東の空にふたご座を望み、やがて一筋の流星が流れ落ちる。
ここは地上の膨大な光が空に届く大陸ではなく、
また、澱んだ紺碧のカーテンの深いところでもない。
そんな島の片隅で、二人は口をひらいて空を眺めた。
その姿かたちは違えど、見ているものは同じだった。
やがて眠りに落ちるまで、二人はずっとずっと……空を見ていた。
……
…………
………………
ギギ…ギギギ……
江風「スピー………」
江風「……スー……」
江風「……ン、んぁ」ムクッ
江風「ふぁぁ……よく寝た……のかな?」
江風「おい、起きてっか……」クル
江風「……っ!」
PT「ギ……ギギ……」ブルブル
江風「お、おい!?」
江風「どうした、おい!?」
スッ
江風(す、すごい熱だ……ッ!!)
江風(なンでだっ!昨日はあんなに元気だったのに!?)
江風「おい、しっかりしろッ!」スサスサ
PT「ギギ……ッ」ガタガタ
江風「待ってろ!江風がなんとかするからなッ!」
江風「それまで……頑張れッ!!」ダッ
PT「ギ……」ジーッ…
江風はただひたすら走った。
自身の消耗も鑑みず、あれやこれやと試せることは全て試した。
服を濡らして頭を冷やし、昔試した薬草に似た草をすりつぶして与え、寄り添って体を暖めた。
……だが人も深海棲艦も、その母体たる大自然の前では無力な存在に過ぎなかった。
なにも好転はせず、この小さな鬼はみるみる衰弱していったのだ。
PT「……」ガタガタ
江風(だ、だめだ……!)
江風(こいつは……もう……)
PT「……キャハ……」
江風「っ!」
江風「……なんでだよ」
江風「……死ぬほど苦しいンじゃないのか」
江風「なん……で……」
PT「……」プル…
PT「コワクナイ……」
江風「!」
PT「カワ……カ……ゼ……」プルプル
江風「……もう」
江風「喋るンじゃ……ない」
江風(……江風は……艦娘だ)
江風(こいつは……深海棲艦)
江風(……江風は、使命を果たす……)
ガチャ
PT「……キャ……ハっ……」ガクガク
江風(のこり一発の弾……)
江風(これで、使命が果たせる)
江風(そして……こいつはすぐ楽になれる)チャキッ
PT「カ……ワ……」ブルブル
PT「……カ……ゼ」ニコッ
江風「………すまねぇ……」グググ…
シン…
江風「…………」ポロ…ポロ…
江風「……撃て……」グスッ
江風「……なかっ……た……ぁ……!」
江風「あ……あぁ……」
江風「……ああああああ……っ!」ポロ…ポロ…
江風は艦娘としての使命を果たせなかった。
また、その手で小鬼を楽にしてやることもできなかった。
そんな自身の脆さ知った彼女は、その場で12.7㎝砲を自身のこめかみに突き付けた
……だが、彼女はそれの引き金を引くこともできなかった。
救助にやってきた時雨達に保護されるまで
冷たくなった小鬼の前で、彼女はただただ打ちひしがれていた。
……
…………
………………
時雨「……やぁ、江風」
江風「……時雨の姉貴」
時雨「こんなところにいたんだ」クスッ
時雨「潮風が体に障らないかい?」
江風「……へへっ、平気さ」
江風「そンなことより、どーしたぁ?」
江風「お見舞いのアイスでも御馳走してくれンのか?」ヒヒッ
時雨「あはは、それは後でね」ニコッ
時雨「それより江風、あれから分かったことがあるんだ」
江風「ン、何……?」
時雨「コロネハイカラで僕たちを襲ったPT子鬼たちのこと」
江風「…………」
時雨「小鬼たちは深海棲艦の中でも、未成熟の存在……」
時雨「だから、小鬼は“群”にならないと海での活動ができないんだ」
江風「……そうなのか」
江風「だから……海に戻れなかったんだ……あいつ」
時雨「それから、これは他の深海棲艦にも言えることだけど……」
時雨「彼女達は、陸の感染病に対する免疫もほとんどないんだって」
江風「……そっか」
江風「やっぱりな」
時雨「それと、江風は言ったね」
時雨「“敵に個人的な情が移ってしまった”」
時雨「“自分は艦娘としておかしくなった”って……」
江風「……」コク
時雨「それは……僕は違うと思う」
江風「……え?」
時雨「あれから江風と同じように、深海棲艦と接触した艦娘が増えているんだ」
江風「……そうなのか」
時雨「みんな、今までのような敵意は無くなっていったよ」
江風「…………」
時雨「それは既にれっきとしたデータにされていて」
時雨「それを元に最近、深海棲艦にも同じように自分たちのことを」
時雨「もっとよく知ってもらおうとする動きがあるんだ」
江風「……!」
時雨「これがうまくいけば、この戦争を終わらせられるかもしれない」
時雨「そのためには……」
時雨「この流れを生み出した、君の力も必要なんだ」
江風「!!」
江風「江風の力が……!」
その時を境に、江風は戦うことの目的を変えたんだ
艦娘だから深海棲艦を倒すンじゃなくて
自分たちが、多くの者の助けの下で生きていられるからこそ
その助けを彼女達に乞うために……
あの時に残った一発の弾……あいつも江風もやれなかった弾
そのための戦いが終わる日まで、とっておくことにしたよ
終戦の祝砲は、あれで打ち上げてやるんだ
――――――――――――――fin――――――――――――――
このお話は、これで以上になります
ここまで読んでくださった方、お付き合いいただきありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません