秋月「半額シール……?」 (282)

秋月「はぁ、朝市にも夕市にも間に合わないなんて……照月と初月が待ってるのにお夕飯どうしよう」

店員「これより鮮魚コーナー、精肉コーナー、惣菜コーナーの商品半額になりまーす」

秋月「半額?」

ペッタラヘッタラ

秋月「!!」

秋月「お肉が……98円のお肉が半額!?」

客「こっちも半額に脱ぎなってるわよ!」

客「半額だ半額だー!」

ワ-ワ-!

秋月「あっ、ちょっと……それ買います!買います!きゃっ!」バタン

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店員「お会計61円になります。ありがとうございました」

秋月「……」


秋月「はぁ。結局パンの耳を買ってきたけど……お肉、食べたかったな……」

秋月「情けないお姉ちゃんでごめんね、照月、初月」

照月「おかえりなさい秋月姉!」

初月「お疲れ様」

秋月「ごめんね、こんなのしか買えなくて」

照月「もう、謝らないでよ!照月はパンの耳大好きだよ?」

初月「最近は麦飯も貴重だし仕方ないさ」

秋月「ありがとう。さあお水とケチャップ用意しましょ」

照月「ケチャップパンおいしいね!ピザみたい!」

初月「ピザは食べた事が無いが……多分こんな感じなのだろうな」

秋月「そうね、あれは上にチーズが乗っているらしいわ」

照月「へー、そうなんだー」

初月「そう言えば一昨日、お隣がピザを頼んでいたね」

照月「そうそう!あの日は良い匂いでケチャップパンも美味しかったよね!」

照月「ねぇ、2人は今なんでも食べれるなら何を食べたい?」

秋月「またそんな事言って。お腹がすくだけよ」

照月「まあまあ、良いじゃ無い少しくらい。照月はやっぱお肉が食べたいなー」

秋月「お肉……」

照月「秋月姉、たとえ話だよ?そんな深刻な顔しないで?」

初月「僕はお刺身かな。昔一度だけ食べた事があるんだ」

秋月「はい、もうこの話は止めて寝ましょ!」

照月「そうだね。言い出しといてなんだけど虚しくなるだけだもんね」

初月「……」

秋月「どうしたの?初月」

初月「いや、姉さん達は前から鎮守府への勧誘が何度もあったよね。着任すればまともな住居と食事が与えられるはずなのに……」

照月「何言ってるの。別にこの家でも不自由は無いよ?ね、秋月姉」

秋月「照月の言う通り。初月は余計な事考えないで」

初月「家……?確かに台所はあるけど、こんなの風が吹けば飛びそうな小屋じゃ無いか。食事だって……」

照月「大丈夫よ。明日からまた内職頑張りましょ!」

秋月「今月はきっと沢山仕事を回してもらえるから」

初月「僕は!!僕は……僕に声が掛からないせいで姉さん達がこんな生活に付き合わされているのが耐えられないんだ……」

照月「初月……」

初月「だから姉さん達だけでも鎮守府に着任してよ。僕もきっと後から追いかけるから」

秋月「初月、良い加減にしなさい」

初月「姉さん達は楽な生活が出来るはずなのに……。僕のせいで苦しまないで欲しいんだ」

秋月「楽な生活の為に妹を捨てるような姉がいるわけないでしょ?」

初月「でも……」

秋月「苦しい時を共にして、それでこそ姉妹じゃない」

初月「秋月姉さん……」

秋月「大丈夫よ。初月1人を置いて鎮守府に着任したりしないわ。着任する時は3人一緒よ。いいわね?」

初月「うん……、うん……!」

翌日

照月「秋月姉ー、今日のお買い物はー?夕市終わっちゃうよ?」

秋月「ん……、もう少ししたら行くわ」

初月「言ってくれれば僕が行くけど」

秋月「大丈夫、2人を戦場へ行かせるわけにはいかないから」

照月「戦場?」

秋月(今夜こそは……)

店長「7時か。おーい、そろそろ頼むよ。スーパーアイドル君」

店員「はぁ、何がスーパーアイドルですか」

店長「スーパーのアイドルだからスーパーアイドルだろ?ほら、今日も出待ちがズラリだぞ?」

店員「勘弁してくださいよ。あの人たち毎日同じで半額狙いっすよ?だいたい同じメンツのおばさんばかりだし」

店長「まぁそう言うな。ほら、お客さんがお待ちだ」

店員「あーあ、また今日もたかられるのか」

ガチャッ

秋月(来た……!)

店員「只今より半額シール貼ってい」

客「ちょっと!これ半額になるんでしょ!早く貼ってよ!」

客「こっちも頼むよ~」

客「はいこれ、早く貼って」

秋月(なんてこと……お客さんはみんなどれが半額になるか知ってて確保しているなんて……)

店員「はいはい、他のお客様の迷惑になりますので一列に並んでくださーい」

店員(ったく、シール貼るまでカゴに入れるなよ)

秋月(なるほど、あの2割引のシールが貼ってある商品を持っていけば半額に……)

店員「さてと、フライングババア共を片付けたしサッサと残りに貼ってあがるか」

店員「まぁもう荒らされて残ってるのはイマイチな惣菜ばっかで廃棄だろうけど」

秋月「あ、あの……すみません……」

店員(ちっ、まだいたのか。貼るまで待てってーの)

店員「はい」クルッ

秋月「このかぼちゃの煮物……半額になりますか……?」ドキドキ

店員(天使?俺は死んだのか?)

秋月「あの……?」

店員「あ、ああ!なりますよ!なりますですよ!」

秋月「本当ですか?よかったぁ……」

店員「じゃあシール貼らせていただきますね」

秋月「はい!お願いします!」

店員(うわ、眩しい!笑顔が眩しい!)

秋月「ただいま!」

照月「おかえり秋月姉、遅かったね」

秋月「今日は良いものが手に入ったの!ほら!」カボチャ-ン

初月「かぼちゃの煮物?」

秋月「そう、半額で買えたの!なかなかかぼちゃも高くて買えなかったから久々でしょ?」

照月「後はお米さえあれば……あっ、ごめんなさい、今の無しね!」

秋月「実は……今日は大奮発して買っちゃった。半額おにぎり、おかか入り」

初月「なるほど、今夜はパーティーだ」

翌日

秋月(昨日はお惣菜を買ったけれど、やっぱり半額と言えども割高……)

秋月(今日こそはお肉か魚を手に入れないと)

店員「これより半額シール貼らせていただきます」

秋月(来た!元値が安くて2割引のシールが貼ってあるお肉は……)

豚切り落とし野菜炒め用 88円

秋月(これだ!)

秋月「ど、どうしよう……カゴにお肉入れちゃった……」ドキドキ

秋月「今夜は焼肉……照月が喜ぶに違いないわね」

秋月(あっ、前のおばさんも同じお肉いれてる)

店員「はいシール貼らせていただきまー……」

店員「あれ?」

客「何よ!」

店員「申し訳ありません。こちらの商品は半額対象外なので」

客「はあ?2割引のシール貼ってるじゃない!」

店員「こちらの商品は賞費期限が明後日ですので」

客「いいじゃない!明日には半額になるんでしょ?」

店員「決まりですので」

客「だったら2割引にするんじゃないわよ!ややこしいわね!!」

店員(こんのクソババア……)

店員「はぁ、次の方ー」

秋月「……」ガタガタ

店員(あっ!天使ちゃん!!)

秋月「あ、あの……私、どうしたらいいのか……」

店員「どうかしましたか?シールですよね?」

秋月「これ、半額になると勘違いしてカゴに入れちゃって……買わなきゃダメですよね……?」

店員「いえ、あった場所に戻していただければ……」

秋月「本当ですか?……よかった」

店員「と言うか半額シールですよね?」

秋月「実はこれ消費期限が明後日になってて……」

店員「大丈夫です。貼らせていただきますよ」

秋月「えっ……?良いんですか?」

店員「もちろん。何も問題ありません!」

秋月「それじゃあ……」

秋月「あの、ありがとうございました!」

店員「店員として当然のことをしたまでですよ」

秋月「お肉だなんて妹が喜びます。それじゃあまた明日」

店員「お待ちしています」


客「ちょっと!どうしてあの子は良くてわたしはダメなのよ!!同じ肉じゃない!!」

店員「明日も来るのか……楽しみだな」

客「聞いてるの!?平等にこっちもシール貼りなさいよ!!」

店員「黙れババア!!貴様と天使が平等だと!?わきまえろ!!このクズが!!」ペッ

客「なっ……!なによ、その言い方……」キュンッ

店員のサービスは続きますが寝ます

照月「良い匂ーい」

初月「よだれが止まらないな」

秋月「お待たせ。今日はハンバーガー?よ」

照月「このパンの耳に挟んであるの……もしかしてお肉なの!?」

秋月「照月が食べたいって言ってたでしょ?」

照月「そうだけど……秋月姉、まさか悪い事してないよね?」

秋月「悪い事?」

照月「だからその……泥棒とか……」

秋月「そんな事してません!これは安かったから買ってきただけだから」

照月「でもお肉だよ?安くないよ!」

秋月「でもね、このお肉200g入ってたけど半額で88円なのよ?」

初月「それはすごい」

秋月「ふふっ、明日は初月の好きなお魚を買って帰るから楽しみにしててね」

翌日

店員「これより半額シール貼りまーす」

ざわざわ

店員(あれ?あの子来てないのかな……)

客「ちょっと、早くしてよ!」

店員「はい」

店員「……」ペタペタ

店員(あれ、この仕事こんなにつまらなかったっけ)

店員「結局あの子は来なかったな」

店長「おつかれさん。今日も大人気だったな」

店員「はあ」

店員「……!!」

秋月「えっと、えっと……」キョロキョロ

店長「どうかしたのかい?」

店員「店長、鮮魚コーナーの半額シールはまだなんですか?」

店長「ああ、あのバイトまた時間過ぎてるのに忘れてるな」

店員「そんな」

店長「まあそのうち出てくるだろう」

店員「そのうちっていつですか!」

店長「どうしたんだ凄い剣幕で……別に予告している訳じゃないし時間は大体で良いんだよ」

店員「なに言ってるんですか!お客様がわざわざこの時間に来て半額シールを待っているんですよ!」

店員「もう我慢できない。僕が鮮魚コーナーも半額シールを貼ってきます」

店長「あっ、キミ……あんなに熱い子だったかね。ふっ……しかしやる気があるのは良い事だ」


店員の時給が10円上がった

店員「今夜は秋刀魚ですか?」

秋月「あっ、店員さん!はい、秋刀魚です♪妹が好きなんですよ」

店員「確かお肉も好きだったよね。妹さん」

秋月「それはもう1人の妹で、魚は下の子が好きなんです」

店員「3姉妹なんですね。だから秋刀魚も3尾で」

秋月「はい、今のところ3姉妹です」

それからの数日間

店員「これから半額シール貼りまーす」

秋月「こんばんわ、店員さん」ニッコリ

店員(天使)



店員「これから半額シール貼りまーす」

店員(あれ?あの子がいない?鮮魚コーナーかな)チラッ

秋月「えへへ」フリフリ

店員(こっちに微笑みかけながら手振ってる可愛い!!)

秋月「いつもありがとうございます」

店員「いえ、これが仕事ですから」

客「みてみて、これ半額だって」

客「えー、でも半額って色悪いし買うの恥ずかしくない?レジで半額でーすとか言われるしぃ」

客「きゃはは、言えるー。半額商品だけ買うとかマジ恥ずいよねー」


秋月「…………」ギュツ

店員(あのクソアマぶち転がしてやろうか)

秋月「半額商品だけを買うのは恥ずかしい事なんでしょうか……」

店員「とんでもない!ああいう事を言う連中の方がよっぽど恥ずかしいですよ!」

秋月「……」

店員「それに、僕は君に会えるのが楽しみだし……」

秋月「店員さん……本当に半額シールを貼るのがお好きなんですね」

店員「あれ?」

君に会えるのが楽しみ→半額シールを求める秋月に合うのが楽しみ→半額シールを貼るのが楽しみ

秋月「仕事熱心なのは素晴らしい事だと思います」

店員「あはは……じゃなくて、半額商品を買うのは恥ずかしくないですから本当に!」

秋月「でも半額しか出さずに毎日買い物をされたらスーパーもこまりますよね……」

店員「なに言ってるんですか!こっちからすれば消費期限が切れて廃棄する前に買ってもらえてありがたいんですから!」

秋月「……」

店員「だから毎日でも来てください。お待ちしていますから」

秋月「……はい。例えこれが恥ずかしい行為だったとしても生活の、大切な妹達のため。これくらいなんともありません」

店員「ならよかった」

秋月「店員さん、本当にお優しいんですね。あなたがこの店にいてくれて本当に良かった。また明日も来ますね。さようなら」

店員「優しいか。ああ……心がぴょんぴょんする……」

客「ちょっと、これも半額に」

店員「うるせえババア!今ひたってる所なんだよ黙ってろ!」

客「な、なによ。亭主関白気取っちゃって」キュン

午後の戦いが始まるずい

スーパーの半額商品によって食卓が豊かになった秋月姉妹だったが毎日が上手く行く訳では無かった。

歴戦の猛者達は半額シールが貼られる30分程前から2割引の商品をカゴに潜め、半額の時間まで息を潜めている。

対して秋月は店員が出て来てから商品を手にとり列に並ぶ。

姉妹の為どんな恥ずかしい行為でも耐える覚悟はしているが、最低限のモラルだけは捨てる事ができなかった。

敗北の日

秋月「ただいま」

照月「おかえりなさい!秋月姉、今日の戦果は?」

秋月「ごめんなさい。今日は商品も少なくてダメだったの」

照月「そっか……うん、たまにはそんな日もあるよ!じゃあすぐにケチャップ用意するね!」

初月「僕たちはこれがあれば生きていける。秋月姉さんは何も気にしなくて大丈夫」


食パンを一斤焼いた時に出る両側のパン耳部分。

半額商品を買うようになってからも通常パン粉などに使われるこれが秋月達の主食だった。

秋月「今夜こそは必ずおかずを手に入れないと……」

店員(今夜こそは必ずあの子に商品が行き渡りますように)


店員「ただいまより半額シール貼りまーす」

秋月(始まった!あの豚肉をーー)

客「よいしょ」ゴッソリ

秋月「ええっ!?そんな、全部……」

客「フンッ。獲物(店員)を狙っているのはあんただけじやないのよ」

秋月「獲物(商品)が……」

秋月「…………」ショボ-ン

店員(うう、今日も買えなかったのか)

客「ねぇ、早くシール貼ってよね!こんなに沢山買うんだから」

店員「てめぇ……!周りの事も少しは考えて買い物しろ!!」

客「な、なんであなたにそんな命令されなきゃいなくないのよ!彼氏気取りも大概にしてもらいたいわね!」カァァァ

秋月(今日も夕飯はパン耳だけ……)

店員「うわー、今日はミンチ肉結構売れ残ってんなぁ」

秋月「え?……ええ!?」


秋月「あ、あの、これも半額になるんですか?2割引じゃないのに…」

店員「ええ。ミンチ肉はすぐ鮮度が落ちるみたいで、昼間に出しても夜には半額なんです」

秋月「知らなかった……これさえあればそぼろパンがちあた

飛ぶ飛ぶ意識がまた明日

秋月「ただいま」

照月「おかえりなさーい」ソ-

秋月「えへへ」ニッコリ

照月「あっ! 秋月姉!今日の夕飯は!?」

秋月「今日はミンチ肉が半額で買えたからそぼろを作りましょ」

初月「あの豆腐を細かくしてボロボロになるまで焼く……?」

秋月「今日は本物のお肉だから楽しみにしてて!」

照月「秋月姉、照月も何か手伝うよ!」

秋月「じゃあ醤油と砂糖、あとみりん風調味料入れてくれる?沢山は勿体無いから少しだけよ?」

初月「なら僕は味見係をしよう」

秋月「だーめっ、出来てからのお楽しみなんだから。初月はパン耳をむこうに運んで」

初月「わかった」

秋月「よし、あとはこのそぼろをパン耳に挟めば……はんばーがーの出来上がりよ」

照月「はんばーがーってお肉をパンで挟むやつだよね!」

秋月「ええ、多分こんな感じだと思うわ」

初月「ではいただこう」

ムシャムシャ……


照月「うん!美味しいよ!これがはんばーがーなんだね!」

初月「確かにパン耳の香ばしさとそぼろの甘辛煮がすごく良く合う」

秋月「本当は野菜とかも挟むらしいんだけど美味しくできて安心したわね」

照月「でもこれならお米がもっと合いそうだよねー」

秋月「!!」

初月「照月姉さん!」

照月「へ?あっ、ち、違うよ秋月姉!別にお米が食べたいとかじゃなくて、パン耳も大好きだし!」

秋月「無理しなくても良いの。お米、食べたいのよね」

初月「それは……」

照月「秋月姉、お米は半額にならないのかな?」

初月「最初のまとまった出費は痛手でも長い目で見れば半額なら……」

秋月「うーん……一度店員さんに聞いてみるわ」

照月「まって秋月姉!今回言い出したのは照月なんだから自分で聞いてくる!」

秋月「大丈夫なの?」

照月「うん!いつものスーパーだよね?あっ、でもどの店員さんなんだろう?特徴とかある?」

秋月「そうねぇ……1番かっこいい人?」

照月「ふーん……へぇー♪そうなんだ。へぇー♪へぇー♪」

秋月「?」

初月「?」ムシャムシャ

店員(あれ?今日は鮮魚コーナーにもいない……?)

客「ちょっといつまでぼさっとしてるのよ!早くしなさいよ!」

店員「あんたいつもいつもうるさい客だな!今貼るから静かにしてろ!」

客「なによその言い方!他にも客は沢山いるじゃない!」

店員「毎日毎日1番前に並んでたら顔も覚えるわ!このババア!」

客「フンッ、つまり私に目を付けてるって訳ね。べ、別にあんたに顔覚えてもらう為に先頭で並んでんじゃないんだからね!!」

店員(どうしたんだろう。何かあったのかな……)

照月「あのー……」

店員「はい?……うわっ!!」

照月「ひっ……」

店員(なんだこの暴力的なまでのドスケベわがままボディは……)

照月「えっと、秋月姉が言ってた店員さんですか?」

店員「秋月姉?あっ、そう言えばあの子に似てるような……もしかして半額の?」

照月「はい!よかったぁ……秋月姉に1番かっこいい人って聞いてただけだから心配で」

店員「えっ!?」

照月「そだそだ。それはさて置き」

店員(大事なことがさて置かれた)

照月「照月、あなたにひとつお聞きしたい事があるんです!」

店員(秋月ちゃんに照月ちゃんか。可愛い名前だ)

照月「店員さん?聞いてますか?」

店員「もちろん!」

照月「えっと、単刀直入に言いますけどお米は半額になるんでしょうか?」

店員「お米?お米は……まあなると言えばなるような……」

照月「なるんですか!?」

店員「まぁ古くなれば割り引かれて最終的には半額になるんだけど……」

店員「需要が高くてなかなか残らないし、生物と違って期限が長いからね。半額になる前に2割引とかでも売れちゃうんだよ」

照月「そうなんですか……」

店員「お米が欲しいのかい?」

照月「半額なら買おうと思って来たんですけど」

店員「うーん……あっ、このレンジであたためるご飯なら半額であるよ?」

照月「すみません。うちにはレンジが無くて」

店員「あっ……」

午後も頑張るずぃ

店員(この子達はいつも半額にこだわるけど、やっぱり貧しい家庭とかなのかな……)

照月「今日はありがとうございました。半額の商品も無くなっちゃったみたいだし帰りますね」

店員「あっ、待って!」

照月「はい、なんでしょうか?」

店員「半額商品は売り切れちゃったけど見切り野菜ならまだこっちに。ほら、果物とか」

照月「えっと、今日はお夕飯代150円しか持ち合わせが無くて……」


店員「…………」

照月「店員さん?」

店員「すごく失礼な事聞くけど……君のお姉さんはいつもパン耳と半額商品を一つ買っていくよね?」

照月「そうですね。半額商品はあったりなかったりですけど……」

店員「お米は食べないの?いや、食べないなら半額になるか聞かないと思うけど」

照月「?」

店員「つまりその……もしかして、貧しくてお米が買えないとか……?」

照月「ま、貧しいだなんて失礼じゃないですか!あっ、失礼な事聞くって言ってたっけ、ごめんなさい!」

店員「いやいや、こっちこそごめんね!」

照月「でも貧しくはありませんよ?お米は無くてもパン耳は毎日2枚食べれるし、ガスと水道も通ってますから」

店員(なんで電気は入ってなかったんだろう。まさか)

照月「あと調味料は結構残ってるし、ロウソクも沢山」

店員(ロウソク……)

店員「もし良かったらお米買ってあげようか?」

照月「本当ですか!?……あっ」

店員「いつも買い物に来てくれてるし、お礼に」

照月「ダ、ダメです!そんな高級な物貰ったりしたら秋月姉に怒られちゃう!」

店員「でもしっかり食べないと栄養が……」

照月「ダメよ、我慢しなきゃ。我慢よ照月!」ボイン

店員(栄養は結構行き渡ってるな)

照月「あのっ、さ、さようなら!」

店員「あっ……」


照月「はあぁ……やっぱり無理せず貰っちゃえば良かったかなぁ……」トボトボ

照月「ただいまー」

秋月「おかえりなさい。どうだった?」

照月「うーん、一応半額になる事はあるみたいだけど難しいみたい」

秋月「そう。仕方ないわね」

初月「それで今日の夕飯は?」

照月「……あっ」

店員「半額なら買おうとするけど、プレゼントとしては受け取ってくれないか」

店員「お米はなかなか半額にならないし。なっても店の人が買ってっちゃうからなぁ」

店員「半額になったら俺がすぐ買って、あの子達に半額で譲るくらいしか……」

店員「でも俺がいるタイミングで半額になんてそれこそ滅多にならないし」

店員「この賞味期限じゃ売れ残っても当分は半額にならない。それこそ何か袋が破れたりして売れない様な問題でも起きないと……」

店員「…………」

店員「よいしょ、店長ー」

店長「ん?米なんてさげてどうしたんだ?」

店員「見てくださいよここ、何かに引っかかったみたいで破けて少しこぼれ落ちてたんですよ」

店長「あーあー、これじゃあ売り物にならないな。まったく」

店長「おーい、だれか半額でいいからこの米」

店員「買います!」

店長「ああそう?」

店員(よし、半額の米は手に入った。って言うか、わざわざこんな事しなくても半額シールだけ貼って渡せば良かったかな……)

店員「あとはコレを渡すだけなんだけど、明日も来るかな」

店長「おーい、時間だからもうあがって良いぞー」

店員「はーい。おつかれ様です」

店長「米持って帰らないのか?」

店員「あー……明日持って帰ります」

店長「まぁ別に良いけど。邪魔にならない所に置いておけよー」

店員「さてと、帰るか」

秋月「こんばんわ、店員さん。今日の任務は終了ですか?」

店員「あれ?秋月ちゃん?」

秋月「はい。……えっと、どうして名前を?」

店員「あっ、ごめん!今日妹さんが来てそれで」

秋月「そうでした、今日は色々ご迷惑をお掛けしてすみません」

店員「そうだ!ちょうど良かった!渡したい物があるんだよ!」

店員「はい」

秋月「お米……?」

店員「妹ちゃんがお米探してたみたいだったし、もし良かったら秋月ちゃんにと思って」

秋月「こ、こんな高価な物受け取れません!」

店員「じゃあ半額でどうかな?ここを見てよ。破けてて売り物にならないんだ」

秋月「確かに……半額シールも貼られて……」

店員「俺は家に沢山あるからいらないんだけど、売り物にはならないから店長に買わされてさ」

秋月「それでその……おいくらなんですか?」

店員「うーん……500円かな」

秋月「そんな、いくら半額でも安過ぎます!」

店員「2千円か3千円のを半額で俺が買って、それを無理言って引き取ってもらうんだから更に半額だよ」

秋月「2千円か3千円って……せめて千円は出させてください」

店員「いやいや、ここは譲れません」

数十分後

秋月「はぁ、店員さんもなかなか強情な方だったんですね……」

店員「じゃあ500円ね」

秋月「分かりました。では明日お金を持ってきますから待って貰えますか?まとまったお金は家に置いてきてしまったので」

店員(500円がまとまったお金……)

秋月「その時にお米をいただきますね」

店員「あっ、迷惑じゃなければ家まで運ぼうか?結構重いし」

秋月「それは助かりますけど……良いんですか?」

店員「もちろん」

秋月「じゃあ……」

秋月「すみません、お仕事が終わったばかりなのに」

店員「いえいえ」

店員(美少女と夜の散歩とか誰でも喜んで引き受けるさ)

秋月「こうして2人で夜の散歩するのってなんだかドキドキしますね♪」ニコッ

店員「はううっ!」ドドドド

秋月「あっ!変な事言ってごめんなさい!すみません!」

店員(あのスーパーで働いてて本当に良かった)


店長「さて、私もあがるか。と、その前に防犯カメラ防犯カメラ。もしイタズラで穴を開けられたりしたのなら大変だからチェックしておかないと」

今日もあと半日頑張るずぃ

秋月「店員さんここです。着きました」

店員「この倉庫?にしまえば良いのかな?」

秋月「いえ、その……」

ガラッ

照月「おかえり秋月姉!照月のせいで買い物に行かせちゃってごめんね!」

店員「あっ……」

照月「あれ?店員さん?」

秋月「えっと……」

店員「倉庫とか言ってすみませんでした!」

秋月「良いんです良いんです!実際小屋みたいな家ですから」

店員「なんて言うか……趣があって良いですよね……」

照月「秋月姉、どうして店員さんが一緒なの?」

秋月「そうだ、代金をお支払いしないと!」

秋月「すみません。あの……少し細くなってもかまいませんか?」

店員「はい、全然構いませんよ」

…………

秋月「460、470、480、490、495……500円」ジャラジャラ

店員(中盤1円玉も混じって想像以上に細かった)

店員「じゃあこれを」

照月「お米!?買ったの?」

秋月「ええ、店員さんが安く譲ってくれたの」

照月「そうなんだ。ありがとう店員さん!」

照月「そうだ、せっかくだし店員さん夕飯食べて行きませんか?」

店員「いいの!?」

秋月「ご迷惑じゃなければ是非」

店員「迷惑だなんてとんでもない!喜んでご馳走になります!」

秋月「では狭くて恥ずかしい部屋ですけどどうぞ」

店員「おじゃまします!」

店員(いやー、美少女3姉妹と夕飯なんて。なんで日だ!)

店員(……あれ?そう言えば3姉妹って言ってたよな)

秋月「照月、初月はどうしたの?」

店員(初月ちゃんか……)

照月「初月なら押入れの中に」

店員「え?」


初月「……」

店員(めっちゃ隙間から見てる……)

秋月「初月出てきなさい。お客様に失礼よ」

初月「なんだ、敵襲じゃなかったのか。てっきり姉さん達を人質に侵入してきたのかと思って」

店員「ハッハッハッ、初月ちゃんは怖がり屋さ」

初月「背を向けたらこの長10㎝砲で撃ち殺そうと思っていたんだ」

店員(おっかねぇ……)

店員「それにしても少し暗いね。電気は付けないの?」

照月「あっ、ごめんなさい。すぐにロウソク持ってきますね」

店員「……」


照月「今日はお客さんが来てるから多めにつけとくねー♪」

秋月「もう、あんまり恥ずかしい事言わないで。あの、いつもこれくらいロウソクは付けていますよ?本当ですからね?ね?」

店員「ロウソク……いいですよね。なんだかパーティーみたいで」

秋月「ではお夕飯の準備してきますね」

照月「照月も手伝うよ!銀シャリ銀シャリ♪」

初月「なら僕はお前の相手をしよう」

店員「なんてことだ」

初月「まあこたつに入ってゆっくりしてくれ」

店員「はあ……あれ?あったかい?」

初月「こたつなんだから当然だろ?バカなのか?」

店員(電気は通っているのか?この線の先にコンセントが)

カラカラカラカラ

ハムスター「しれぇ!がんばります!」

店員(この電力はもっと有意義に使うべきでは)

初月「で?」

店員「え?」

初月「だから、どこが好きなんだ?」

店員「な、なな、なに?急に!?」

初月「この家に客が来るなんて初めてだからな。僕も少し興味があるんだ」

店員「初めて?」

初月「客が来てもだいたいは玄関先で姉さんが断ってしまうからな。で?どこが好きなんだ?」

店員(どういう意味なんだ……俺が姉さんに気があると見抜いて聞いてきたんだろう?)

店員(どこが好き……全部好きなんだが)

店員(やっぱり人柄とか性格って答えるのが無難なのか?)


店員「そ、そうだね。やっぱり優しい性格かな」

初月「なにを言っているんだ?いまいち意味がよくわからないのだが」

店員「ぐぬぬ」

初月「この家にまで来たんだ。そういう事なんだろ?」

店員(どうしようなに言ってるのか全然分からない)

初月「まったく。ハッキリしないのは感心しないな」

店員「質問をハッキリしてくれないと答えようがないじゃないか」

初月「だから僕が聞いているのは……」


初月「尻が好きなのか」

秋月「照月、お塩とって」

初月「胸が好きなのか」

照月「はい、これ塩だよね?」

初月「お腹が好きなのか」

初月「という事だ」


店員「マジでなに言い出すんだこの子は」

初月「さあ答えろ。じゃないと僕もどうすれば良いのか困るだろ」

店員「ええー……」


店員(身体の部位で答えろって……いきなり胸が気に入って好きになりましたなんて変態にしか聞こえないし)

店員(お尻の形が最高でした?それこそ変態っぽいな」

店員(あとはお腹……ウエストか。胸と尻はセクハラっぽいけどウエストを褒めるのはギリギリセーフなのか……?)

店員(まぁ胸や尻よりはマシか)


店員「よし、決めた。俺はお腹が好きだ!」

初月「そ、そうか。そんな大声で……案外情熱的な奴なんだな。お前は……」

初月「すこし冷えてきたな」

店員「そう言えばこたつもなんだか冷んやり……」

ハムスター「すぴー……」スヤスヤ

店員「ああ、貴重な初電源が」

初月「……」スタスタ

店員「ん?」

初月「……」ストン

店員「んん?」

初月「もう少し足を広げろ。お尻が入らないだろ」

店員「んんん!?

初月「やはり背もたれがあるのは良いな。しかし……」

店員(どうして?なぜいきなり俺の前に座って、寄りかかって……いや、それよりもだ)

店員(やっぱり女の子だ!見た目って言うか口調とか男の子っぽいけど!めちゃくちゃ柔らかい!あとなんか温い!)


初月「ゴツゴツして座り心地はいまいちだが……まぁ悪くない」

店員「あ、ああ……」

初月「なんだ?自分は椅子代わりにされて不満と言う顔だな」

店員(幸せのあまり声が出ないんだけど)

初月「仕方ない。僕がこんな事を許したなんて姉さん達には内緒だからな……」

店員「えっ?」

初月「ほら、少しだけ触らせてやる……好きなんだろ?おなかが」チラッ


何が何だか分からなかったが店員は一心不乱、欲望のままに揉みまくった。

秋月「お待たせしてすみません、やっと炊き上がりました」

照月「はい、お鍋おくねー」

店員(お鍋で炊いたのか……)

秋月「あら、随分仲良しになったんですね♪」

店員「あはは、正直嫌われてると思ってたから安心しましたよ」

初月「激し過ぎだ、バカ……」クテン…

照月「秋月姉も店員さんを椅子にしたかったりしてー♪」

秋月「く、くだらない事で口を動かしてる暇があるなら手を動かしなさい」

照月「はーい」

秋月「あつっ、あつっ……」ギュッギュッ

照月「お塩をふりかけて……はい、出来上がり!」

初月「銀シャリの握り飯……それも沢山。こんな贅沢が許されるなんて」

秋月「明日からはちゃんと節約するからね」

照月「いっただっきまぁーす♪はふはふ」


店員(米と塩だけであんなに幸せそうに……)

眠気には勝てなかったよ……歯磨いて寝ます

秋月「初月、いつまでもそんな所に座っていたら店員さんが食べにくいでしょ?」

初月「僕は問題ないが。お前は食べ辛いのか?」

店員「全然大丈夫だよ」

初月「そうか。なら問題ないな」

秋月「初月!」

照月「秋月姉も初月みたいに素直になればいたたたたたた!」

秋月「……」

照月「ほめんふぁふぁい~!」

秋月「それに店員さんをお前呼ばわりするのもダメです」

初月「じゃあなんて呼べば良いんだろうか?お前はなんて呼んでもらいたいんだ?」

店員「おにいちゃんでお願いします」キリッ

初月「にいさん。これで良いか?」

店員「ん……ま、まぁこれはこれで……悪くないな」

秋月「初月、失礼でしょ」

照月「良いんじゃないかなぁ?ねー、おにぃーちゃーん♪」

店員「ふひひっ」

照月「ほら喜んでるし!」

秋月「ダメなものはダメです!」

照月「えー、じゃあなんて呼べば良いの?店員さんって言うのもおかしくないかなぁ」

初月「勤務時間も終えているし、そもそもココは店じゃない。だからこいつは店員ではないと思う」

秋月「うう……」

店員「まぁ呼び方なんて何でも良いよ。店員でもお前でも。こいつは流石にちょっとあれだけど……」

初月「何でも?……なら提督と呼ぼう」

秋月「!!」

照月「いいね、いいね!本当に照月たちの提督になってくれれば良いのに!」

初月「僕もお前となら上手くやっていける気がするぞ」

秋月「2人とも良い加減に」

コンコン

秋月「……」

店員「お客さん?」

照月「秋月姉、出てみようよ。もしかしたら今回は……ね?」

初月「……」

店員「?」

秋月「そうね。出てみないと何も始まらないから」


秋月「はい」

提督「ああ!本当にいた!ここまで来た甲斐があったな!」

長門「浮れるのはまだ早いのではないか?」

提督「っと、そうだった。夜分遅くに失礼……今日ここまで来させて貰ったのは他でもない、ぜひ君達2人をを我が鎮守府へ迎え入れたい!」

秋月「2人……ですか」

提督「ここには妹の照月もいると聞いたんだけど」

秋月「確かに照月はいます。ですがもう1人妹がいるんです」

提督「もう1人?そうなのか?」

長門「いや、艦娘として登録されている秋月型は秋月と照月の2隻だけだが」

秋月「うちにはもう1人、初月がいます。3人一緒にと言うなら……」

提督「それは困ったな……」

長門「艦娘で無い者を鎮守府へ迎え入れる事は出来ない。1人の人間、つまり提督に従う決まり。これは国が決めた事だ」

提督「でも秋月の妹って言ってるし良いんじゃ無いか?ほら、なんか前に連絡が来てただろ?」

長門「確かに……近く初月と言う者が艦娘として登録される話は大本営から聞いた事がある。だが今は未登録だ」

提督「お堅いなぁ~」

長門「はぁ……お前が緩いから私が厳しくせねばならんのだろう」

提督「そんな所も好きだよ長門。ケッコンしよ」

長門「それは、その……か、かまわないが……」プシュ-

唐突に2人は絆を結びました


秋月(なんなのこの人たち……)

提督「まぁ嫁はこう言っているし、とりあえず2人で来てくれないか?」

長門「今は職務中だ、嫁では無い……」テレテレ

秋月「ダメです。私達3人はいつでも一緒ですから」

提督「なら2人は鎮守府に、初月は近くに住まわせて艦娘の登録が済んだらすぐ着任は?」

秋月「でしたらその時に私達も。それまではココで3人揃って待たせてもらいます」

提督「ぐぬぬ……しかしそれでは後から来た誰かに引き抜かれたり……」

秋月「ご安心ください。ここまで来たのはあなた達が初めてでは有りません。もう何人もの提督が訪ねてきましたから」

秋月「申し訳ありませんが食事中でしたのでお引き取りを」

提督「しかし!」

照月「ダメダメ、秋月姉ったらこう見えて頑固者だから言い出したら聞かないですよー?」

提督「照月!生照月!」

長門「確かに。さ、先に来た競争相手が他にも沢山いるようだし今日は引き返そう。心象を悪くするのはマイナスになる」

提督「目の前に防空駆逐艦が2隻もいると言うのに……!だが仕方ない……必ずまた迎えに来ます。その時に」


提督「行くぞ長門」

長門「うむ……」

提督「どうした?」

長門「今日の任務はもう終わった訳なのだから、私は今からお前の妻という訳だし、その……」

提督「ああ、今日はもう遅いしホテルに泊まりだ。めちゃくちゃビッグセブンセック」

バタン

秋月「はぁ……」

店員「大丈夫?」

秋月「はい、よくある事ですから」

店員「何か鎮守府にどうこう聞こえたけど……」

照月「スカウトですよ、スカウト!照月達って引っ張りだこなんですから!」

初月「そう。姉さん達は引く手数多の艦娘。でも僕が足を引っ張っているからどこにも行けないんだ」

秋月「初月……私は初月を置いて鎮守府に着任したいなんて少しも思った事なんて無いし、ここで3人仲良く暮ら」

店員「えっ?あ、え?あの、3人は艦娘だったの?」

照月「そうだけど……知らなかったの?」

店員「だってほら、艦娘って言ったら鎮守府にいて、国から結構な額の給料が貰えるって聞いた事があるけど」

秋月「それはあくまで着任した艦娘に限ってですから。鎮守府にいれば衣食住にこまりませんし」

店員「でも着任前の艦娘にも着任まで生活に困らない額が支給されてるよね?なのになんで発電をハムスターに任せるような生活……」

秋月「私達は鎮守府からの要請を断り続けていますから。着任する意思が無い者に補助金は出ないんです」

店員「でも3人揃ってなら着任するつもりなんだよね?そんな世知辛い……」

秋月「決まりですから」



初月「……」

店員「ぬ、ぬぬ……ぬわぁぁぁぁぁ!」

初月「な、なんだいきなり!?」

店員「分かる!分かるよ!みんな辛いだろうけど1番責任を感じて辛いのは初月ちゃんだって!」

初月「なぜお前が泣いている!?」

店員「大丈夫、君達3人は必ず俺が守ってみせる。もちろんずっとみんな一緒に!」

照月「うん!なんか急に熱いね!おにいちゃん!」

初月「兄さん……いや、やっぱりお前は僕の提督だ。そう呼ばせてくれ」

秋月「そうね……もしあなたが提督になったら、司令と呼ばせていただきたいです」

提督「おおお!!なんだか力がみなぎってきた!明日からバリバリ働いて面倒みるからね!」



翌日、店員はスーパーをクビになった。

残り半日がんばるずぃ

提督「ようこそ鎮守府へ。これが君たちの艤装だ」
長10「ギ…ギ……会いた……かっ……た……」

翌日

秋月「みんな一緒に守ってみせるか……」

照月「どうしたの秋月姉。そんなにニヤニヤしちゃって」

初月「きっと沢山お米があるからにやけてしまったんだろうね」

照月「確かにお米がこれだけあれば当分生きていけるね!」

秋月「あっ、もうこんな時間。お買い物行ってくるわね」

照月「え?秋月姉、まだ6時前……行っちゃった」

秋月「ちょっと早く来すぎちゃった……この時間店員さんは確か鮮魚コーナーで掃除してる筈」

秋月「……いない?レジのお手伝いかな?」

秋月「こっちにもいない……7時まで待たないと会えないかな……」


7時

バイト「はい、これより商品半額になりまーす」

秋月「あ、あれ?」

秋月「今日はお休みだったのかな?」

客「ちょっと!いつもの店員はどうしたのよ!」

バイト「知りませんけど」

客「休みなら休みで私に一言あってもいいじゃない!」

バイト「風邪でもひいたんじゃないですか?」

客「いいえ!お昼はいつもと変わらず私に感情を剥き出しにしてアタックしてきたもの!」

バイト「僕も急に店長から言われてこっちに来ただけですから」


秋月(お昼はいたんだ……早上がり?早退しちゃったのかな?)

翌日

バイト「これより半額になりまーす」

客「またあなたなの!?今日は昼も見なかったしなにしてるのよあの店員は!」

バイト「知りませんよ……」

秋月(今日は1日来てなかったんだ)


翌日

バイト「これより半額になりまーす」

客「またあなたなの!?」

バイト「それはこっちのセリフですよ……」

客「もう我慢できない!直接聞くから住所教えなさいよ!電話番号でもメアドでも良いわ!」

バイト「そんな事出来るわけないじゃないですか」

秋月(どうしちゃったんだろう……重い病気とかじゃなければ良いけど)

数日後

バイト「これより半額に……うわ」

客「どうなってるのよいったい……」

バイト「あのー……そんな所に座られては他のお客様の迷惑に……」

客「放っといてよ!!もう、おしまいよ……」

バイト(ほんと終わりにしてもらいたい)

バイト「言う事聞いてもらえないのなら店長を呼ぶ事になりますけど」

客「店長?そうよ、店長だわ!すぐに呼んでちょうだい!!」

客「ちょっとちょっとちょっとちょっと!あの店員はどうしたのよ!」

店長「あの店員?」

客「いたでしょ先週まで!!半額シール貼ってた!!」

店長「ああ、彼ならもう店を辞めましたよ」

秋月「!!」

客「……」パタリ

バイト「お客さん!?お客さーん!!」

店長「一応救急車呼んでおこうか」

店長「やれやれ」

秋月「あ、あの……」

店長「はいうわかわいっ!あ、失礼、どうしましたか?」

秋月「さっき話していたここにいた店員さん……辞めちゃったって本当ですか?」

店長「ああ、彼ね。確かに辞めたよ」

秋月「どうして!?前の日まであんなにやる気だったのに!」

店長「いやー……まぁ色々あってね。あまり口外出来ないから」

秋月「教えてください!」

店長「だからプライベー」

秋月「教えてください……お願いします……」

店長「うん、良いよ。だから泣かないで」

店長「ーーという訳なんだ」

秋月「そんな……店員さんがお米の袋を故意に破って……?」

秋月(どうしよう……私のせいだ……)

店長「彼は仕事熱心で真面目な子だったんだけど、どうしてあんな事しちゃったのか……私も知りたいくらいだよ」

秋月「私の、私のせいなんです!」

店長「君の?」

秋月「私が弁償します!警察に突き出して貰ってもかまいません!ですから店員さんを許してあげてください!」

店長(びっくりした。流れ的に何でもしますからって言うのかと期待したけどダメだったか)

店長「何があったのかは知らないけど君のせいじゃないさ」

秋月「私の……」

店長「確かにやった事は犯罪行為だ。でもね、彼は翌日私が呼びつける前にお金を持って謝罪しに来たんだ。あの時はどうかしていたと」

店長「長く真面目に勤めてくれていた彼だから、私も特別に今回の事は胸の内に収めて彼を許す事にしたんた」

秋月「ならどうして店員さんは……?」

店長「どうやら最初から辞めるつもりだったらしい。何かやらなくちゃいけない事が見つかったとかでね」

秋月「やらなくちゃいけない事……?」

店長「そんなこんなで彼は仕事を辞める事にしたんだよ」

秋月「そうですか……ても少しだけ安心しました。店員さんはクビになったんじゃなくて自分の意思で辞めたんですね」

店長「まぁシフトの関係もあるから2週間後の予定だったんだけど」

秋月「え?でも最近姿を見ませんよ?担当が変わったんですか?」

店長「まぁクビにしたからね」

秋月「……え?」

クビになった日

店長「じゃあ残り2週間だけどしっかり頼むよ」

店員「ご迷惑をかけて申し訳ありません」

店長「気にすることは無いさ。それより品出しをお願いできるかな?」

店員「はい!」


店長「彼が居なくなるのは寂しくなるが……どれ、たまには働きっぷりを見せて貰おうか」チラッ

店員「てめー!このババア!!まだ半額になるわけねーだろうが!時間見てみろ!!昼前だ!昼前!!」

客「なによ!そっちが夜以外に出てくるからややこしいんじゃ無い!早く会いたいんだか知らないけどそんな我慢も出来ないの!?」

店員「なに訳わかんねー事言ってんだババア!」

客「あ、あら、今日は随分情熱的じゃない。そんなに猛々しい姿見せたって私は全然」キュン

店長「うわああああああ!お客様すみません!!」


店長「彼はお客様に暴言吐きまくってたからクビにしたんだ」

帰り道

秋月「店員さん……守ってくれるんですよね……」

店員「秋月ちゃん?」

秋月「店員さん……?店員さん!」

店員「いやー、実は元店員なんだけど。あはは」

秋月「知っています!どうして辞めちゃったんですか!」

店員「あれ?色々知られちゃってる?」

秋月「知ってます。知ってますけど……店員さんが何を考えているのかは分かりません……」

店員「あの日帰ってから色々考えたんだ。君たちを守るにはどうすれば良いのか」

店員「最初はバリバリ働いて君たちを養うつもりだった。でもそれじゃだめなんだ」

店員「初月ちゃんが艦娘として認められたらみんなは鎮守府へ行っちゃうだろ?」

秋月「はい。それが使命ですから」

店員「それだと君たちを守る事が出来ない。だから僕が本当の提督になって君たちを守る」

秋月「そんな……気持ちは嬉しいですけど簡単になれるんですか?」

店員「うん。今は昔と違って審査も緩くなってるからね!」

店員「でも全てが上手くいくとは限らないから。だから3人は僕を待たなくても3人が一緒に着任できる条件の良い鎮守府から誘いが来たらそこへ行って欲しい」

店員「その時は僕も諦めてまた普通に仕事を始めるさ」

秋月「……初月が正式に艦娘として登録されるまでは全て断って良いんですよね?店員さんを待っても良いんですよね?」

店員「そうしてくれるなら嬉しいかな」

秋月「分かりました。じゃあ待ちます……だから必ず迎えに来てくださいね?」

店員「うん」


そして数週間が経ち、初月が艦娘として登録される日が来た。

秋月「…………」

照月「あ、秋月姉元気出して。ね?今日は初月が艦娘登録された記念日だし!」

秋月「ごめんなさい……少し1人にさせて」

照月「秋月姉……」

初月「仕方ないさ。僕たちだって待ち焦がれていたのに……姉さんはもっと辛いはずだよ」

照月「じゃあ誰か来ても追い払っちゃう?えいーって!照月はまだまだ待っても平気だよ!」

秋月「それはダメ。3人一緒に着任出来るような好条件だったら着任します。それが店員さんとの約束だから……」

照月「そんな約束なかった事にしてさ!ね?」

初月「照月姉さん」

照月「ううー……暗い雰囲気は嫌いなんだけど……もうご飯食べよう!ご飯!」

照月「ああ~!!」

初月「どうしたんだい?」

照月「ご飯がもう無かったんだった……」

初月「……」

秋月「フフッ……」

照月「あ、秋月姉!?どうしたの!?こわいよ急に笑い出すなんて……」

秋月「ハァ……店員さんがくれたお米も丁度無くなるなんて、早く行きなさいって言ってるみたいね」

初月「大変だ。姉さんの頭のネジが飛んで行ったのかもしれない」

コンコン

照月「ハッ!ど、どうしよう秋月姉!隠れる?あっ、でも隙間から外の様子を見てーー」

秋月「いいえ、玄関を開けましょう。最初に3人一緒に着任させてくれる鎮守府に行きます」

初月「僕は……分かった。姉さんに従うよ」

照月「……うん」

秋月「じゃあ開けるわね」

ガチャ

元店員「お待たせ!ギリギリセーフ!?」

秋月・照月・初月「店員さん!?」

元店員「まぁ元店員だけどね。いやー、初月ちゃんが登録されたって聞いたから大慌てで来たんだけど間に合ったみたいだね」

秋月「店員さん……店員さん、店員さん!」

元店員「うん、約束通り迎えに来たよ。それからもう店員さんは止めてくれないかな?」

秋月「うん、うん……っ、ずっと待ってましたーー」

コンコン

提督「おおおおじゃましまあぁぁぁす!!!!」

秋月「!!」

提督「いた!まだいたぞ長門!!」

長門「やかましい。まったく……」

提督「みんな、俺の事は覚えてるよね!?今日来たのは他でもない、君たち3人を迎え入れる準備が出来たんだ!」

照月「秋月姉……」コクッ

初月「うん」コクリ

秋月「……はい、喜んで着任させていただきます」

提督「いやったあぁぁぁ!!」

照月「新しい生活の始まりだね!」

初月「僕たちの力を存分に見せてやろう」

秋月「ええ、私たち4人の力を……守ってくれるんですよね。店員さん……いいえ」


秋月・照月・初月「長10cm砲さん!」


長「ああ、君達は俺が守る。必ず!」



客「あの艦娘が私の店員を奪ったのね……」

客「許せない、許せないわ……!艦娘なんてみんな……ヒノ……カタマリトナッテ……」

空母棲姫「シズンデシマエ……!!」

そろそろ終わりまずぃ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月16日 (水) 12:18:11   ID: ZnYDDkF4

何この……クソSS120点

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