※登場人物は涼宮星花、櫻井桃華、水本ゆかり、相原雪乃、桐生つかさ
あとSideMから渡辺みのりがでます
他作
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455668137
346プロダクションの多目的ホールにおいて涼宮星花、櫻井桃華、水本ゆかり
そして相原雪乃の四人は互いに一礼をして席に着いた。
彼女たちの囲んでいるテーブルは全自動卓で、格調高い白檀の木と
ビロードをベースに据えてある大変気品に溢れたものだった。
エメラルドグリーンの河に浮かぶ牌山の列も
彼女たちの手に行き渡るのを心待ちにしているかのようだ。
この日開催される闘牌は、桐生カンパニーと西園寺グループが提携して
合同出資した映画のオーディションという名目で行われた。
この映画はまだヒロイン役が決まっていなかった。
というのも、監督が日本一の令嬢から選ぶと言って聞かないからだ。
桐生つかさと西園寺琴葉は出資者という立場の手前、立候補を控えた。
この監督の雀狂ぶりは筋金入りで、大事なオーディションすら卓を囲んで行うという人間だった。
つかさと琴葉、そして監督による麻雀オーディショントーナメントが
行われ、見事上記の四人が選ばれた。
どのアイドルも令嬢の名に恥じない優雅で気品溢れる打ち方をする一流の雀士だ。
「そ、それではっ、オーディション決勝戦のルールを説明いたしますっ!
一発、ウラドラすべて、カンドラ、食いタン、不聴罰符はありませんっ。
流し満貫、八連荘はありで……二盃口は三翻っ!
解説はアタシ桐生つかさと、315プロダクションの人気アイドルで
筋金入りのアイドルオタク、渡辺みのりさんとで、お送りいたします!」
「宜しくお願いいたします」
マイクを握った若き女社長つかさの隣で、一見すらっとしたイケメンに見えて
何やら得体のしれないプレッシャーを与えてくる男が会場の人間に手を振る。
「社長さん、緊張しなくていいよ。いつも通りラフに行こう?」
「は、はいっ! で、ではみのりさん。率直にお聞きいたしますが
即ち、令嬢アイドルの魅力とは何でしょうか」
「んー端的に言えば、ギャップ萌えかな。
近年、アカギや咲、ムダヅモといった作品が人気を博し、それまでアウトローな
イメージのつきまとう麻雀というゲームの印象は
若者に受け入れやすい形に変わりつつある」
「ええ、しかしほとんどの雀荘では未だに中年男性がメイン客では……」
「そうだね。言い換えれば女性雀士は正にそういった土壌の上に立つ
アイドル的存在とも言える訳だ。
話は変わるけど、社会は日々目まぐるしく変化している。
それに伴い、アイドルの多様化も著しいのは社長もご存知でしょう。
ロックアイドル、ギャルアイドル、アラサーアイドル、中二病アイドル
熱血系アイドル、男の娘アイドル、クラウザー化アイドル、着ぐるみアイドル
……とまあ色々とあるけど、その中でも令嬢アイドルは
本来高翌嶺の花であるお嬢様が庶民の遊びに興じたり
馴れない事を一生懸命に頑張ったりする姿に萌えたり応援したりする訳だ。
特に清楚なお嬢様が、男の世界と言える麻雀界に降臨すれば
脚光を浴びるのは必然と言えるね」
「なるほど、令嬢アイドルとアイドル雀士、二つの需要が一つになった、という事ですね」
東一局、八巡目。親はゆかり。ドラは北。
二二四四五七八238南西北發
「さぁ、洗牌が終わり、ゆかりさんが起家。
これはドラの北を生かしたい……って、あれ?」
水本ゆかりはドラを含めた字牌を立て続けに切った。
そして六巡目にこの形にしてリーチを見送った。
二二三三四四七八23488
「ロン。二千九百です」
果たして三巡目に対面の雪乃から出た九萬を和了する。
「うーん、何だか良く分からない打ち方。
ただのピンフ手よりも第一打で索子を切り飛ばして
ドラの絡んだホンイツを狙うべきだったんじゃ……
それにせめて六萬の方で和了った方がいいと思うんだけど。
立直しないのも一体どうして……」
「勝ちにいくのであればその通りだけど、社長、忘れてないかな?
これは令嬢アイドルのオーディションだという事を……」
「勿論忘れてませんが、しかし、どういう事です?」
「今の和了りは、実に令嬢に相応しいアピールだという事だよ」
みのりはコップの水を一口飲んで続けた。
「ドラの北に拘った混一色あるいは清一色まで見えるこの手なら
もっと高い点棒がきっと得られるけど、これは庶民の感覚だよ。
起家でこれをするのは点棒を得る代わりに令嬢への疑問符を相手に抱かせてしまう。
いいかい、令嬢の家柄は総じて経済環境に恵まれている。
ゆえに、金銭的に豊かな彼女たちは点棒やドラ牌などを見ても
決してがっつく事はないんだ。
手牌にあれば、それが危険牌でもない限り平等に扱う。
最初からドラや高得点に執着する……それは道端に落ちていた小銭に
飛びかかって懐に仕舞うに等しい、お嬢様としてはしたない行為なんだよ」
「へー。でもあの手は普通にホンイツ行った方が楽だと思いますよ。
がっつくがっつかないのではなく」
「それだけではないよ社長。
ここで普段の食事マナーがいかなるものかが垣間見えるんだ。
フランス料理のフルコースを注文した際、肉料理がいきなり来て
最後にスープが来るようなでたらめはないはずだよね。
多少違いはあるかもしれないけど、大体食前酒、前菜、スープ
そして魚料理、肉料理と来るようになっている。
その順番で食べる事に慣れた令嬢たちはまず食前酒に相応しい軽い手を好み
跳ね満や倍満のような高い手をいきなり狙わないものなんだよ」
「うーん、なるほど~! しかし令嬢の生態にお詳しいですね」
「まあね。彼女たちの事は事前によく調べてある。
俺もアイドルだからね、同じ道を歩むものとして当然だよ」
東二局、十三巡目。親は星花。ドラは一筒
雪乃は次の手を張っていたが七巡目から一向に有効牌が引けないでいた。
そんな所に、上家である星花の手から五索が出てくる。
二三①①③12346789
「あの、星花さん……」
「はい。どうぞ」
涼宮星花は相原雪乃の手を取り、そっと五索を渡した。
「うーむ、あれこそ令嬢だ」
みのりは味わうように小さく長く唸ってうなずく。
「えっ、あの鳴いたイッツードラドラがですか?」
「違うよ。牌の渡し方。令嬢たちは恵まれている反面
他人に物を乞う事に慣れていない事が多い。
中には強い抵抗を示す人もいる。もう十三巡目
終盤の所でやっと出た有効牌、星花さんはそんな雪乃さんの気持ちを汲み
手厚く牌を渡したという事だよ。
そこには相手に気を使わせない真心というものがある。
沈んでクサクサしている相手から満貫を和了った事はないかな。
そして気の立った彼に点棒を投げ捨てられた事はあるよね。
投げ捨てられた後、相手の胸ぐらを掴んで
『テメェ今何しやがった! ザケた真似をしやがると
テメェの仲間が来るまでに、俺がそのツラをコレで
ふた目と見られないようにしてやるぜェ!』
と言って釘バットでぶん殴って半殺しにし、最終的に千葉から茨城まで
またがった抗争に発展した事は?」
「……いや、ないです……」
つかさは途中で急にドスの利いた声を出したみのりに怯えながら小さくつぶやいた。
「ははは、そんな時どう思う?
折角満貫を和了ったのに損した気になるんじゃないかな。
この優しい牌の渡し方をする事によってね
双方共に気兼ねなく次巡を迎える事が出来る訳だよ。
我々も見習いたいものだね」
「おぉ~さりげない行動の裏には何ともおしとやかな
アピールがあった訳ですね。ありがとうございます」
つかさは早く話題を変えようと次局の映ったモニターに目を向けた。
東三局、八巡目。親は雪乃。ドラは發。
3346788白白白東南南
八巡目に相原雪乃は次の手になっていた。
彼女の上家から七索が出たが、雪乃はそのままツモに手を伸ばす。
「おや、相原さん鳴きませんね」
「確かに鳴けばイーシャンテンになるけど
令嬢となるとあまり鳴く事はないからね。
それよりもあの手、彼女自身の考えあっての事だと思うよ」
数巡後、白を槓した際に雪乃は六索をツモ和了った。
「ツモ。リャンシャンメンホン白イーペーコー」
■白白■ 34567788南南
「雪乃さんの趣味は紅茶との事だが、それが彼女の雀風に
表れている所も見逃せないな」
「と、いうと?」
「あの手、鳴けば三翻の所をねばって跳ね満にした。
牌をゆっくり寝かせて最終型にコクを持たせる、それが彼女の雀風なんだと思うよ」
東四局、五巡目。親は桃華。ドラは二筒
桃華は五巡目に四筒を切ってリーチをかけた。
まだ早い巡でのリーチという事で他の三人はスジを頼りにオリていくが
二巡目に星花から八筒が出た。
「星花さん、それ当たりでしてよ!」
三四五八八③④⑤⑥⑦345
「おお、桃華ちゃんがメンタンピン三色を見事和了りました!」
「いいですねー。リーチのように素直で、ピンフのように純粋で
タンヤオのように柔順で、三色のようなロマンスを……
メンタンピン三色とは令嬢のための
いや雀役の令嬢そのものと言ってもいい美しい手だ。
雀士によって色々表情や仕草を変える、エスコートし甲斐のある役だよ」
「令嬢の条件には役にもこだわりがある、という事でしょうか?」
「ええ。単騎待ちはともかく、あまりカンチャン、ペンチャンといった愚形の聴牌は
たとえ得点が高くても見栄えが悪く、令嬢のアピールには相応しくない。
役で言えばやたら相手から牌を取る対々和
愚形待ちになりやすい純チャンなども好かれないね」
「令嬢に相応しい手はメンタンピン三色のみなんでしょうか」
「いいや、例えばホンイツは鳴く鳴かない問わず
その字牌と一色に統一された数牌の美しさで人を魅了する。
その点では發の絡んだ緑一色は最高の手役と言えるよ。
手の中の箱庭で彩られる緑の調和は、その高得点以上に
雀士にやすらぎをもたらしてくれる」
東四局、一本場、四巡目。親は桃華。ドラは三索。
二三四四五①②③23788
四巡目、星花はこの手で五索をツモった。
二三四もしくは一二三の三色にこだわるのであれば
ここは一向聴をキープしつつ、ツモ切りである。
しかし彼女は躊躇なく五萬を切って順子ターツを落としていく。
「おおっと星花さん! まだ三色が見えているとはいえ
イーシャンテンを崩して両面待ちの好形を切った。
よく分かりませんがこれもアピールの一環なんでしょうか? みのりさん」
「うん、彼女の動向に注目してみようか」
(牌が囁いてくる……この調べを途切れさせてはいけない……)
星花は次巡、そのまた次巡に六索、四索と
立て続けに引き込んで、八巡目に三萬でリーチをかけた。
「ロン。メンピンイッツードラ1」
四四①②③23456789
星花は下家から出た一索で和了する。
「おお、三色から一気通貫への移行が絶妙でしたね。
しかしあの段階で萬子の順子を潰してイッツーを
狙ったのはどういう意図なんでしょうか」
「手元の資料によると、涼宮家は代々優れたバイオリン奏者を
多く輩出している名家……彼女の家系は、音はもとより牌の調べ
すなわち『河』という鍵盤で奏でられる牌の流れすらも
聴き取れる技に優れているという事らしい。正に『聴』牌とも言うべき技だね。
しかし……牌の囁きに耳を傾けられるのは涼宮家だけではない。
何を隠そうゆかりさんの水本家もまた、類似した能力を持つ家系なんだ」
南一局、七巡目。親はゆかり。ドラは西。
「リーチ!」
「リーチ!」
「おおっ! 星花さんに続いてゆかりさんも親リーをかけた!
しかもこの同巡連続リーチ、二人の捨て牌は奇妙な事に
牌種こそ違えど同じ並びになっていますよ!」
星花:南三一5④④二
ゆかり:南③15四四②
「ええ、これが水本家に代々伝わる雀技『シンクロニティ』!
俺もこの眼で見るのは初めてだけど……資料によると
相手と波長を同調する事によって同じ牌勢を得る
……まるで魔法のような技だそうだよ」
「同じ牌勢って……そ、そんな事が可能なんですか!?」
四巡目、桃華の手から八索が出た。
「ロン!」
「ロン!」
星花:東東二二2255778 8
ゆかり:西西②②3344778 8
「何と! 同じ七対子! 同じ単騎八索待ち!
これはゆかりさんの頭ハネとなります!」
「星花さんが牌の奏でる旋律を聴き取れると同様に
ゆかりさんは相手の心の旋律を聴き取る事に長けているようだね。
かならずしも同じ待ちになるとは限らないそうだけど
これを使われると対面にいる雀士は厳しいだろうな」
めぐり「なんでって……。比企谷くんがどんな風に抱きしめるか調べないと。そこからどんな匂いの抱き枕が合うか逆算するんだから」
八幡「は、はぁ………。いや、抱きしめ方で匂いがどうこうって、ちょっと」
めぐり「うるさい!」
八幡「!?………?…………!?」
めぐり「ほら、私を抱き枕だと思って、ぎゅーって。早く」
八幡「…………」ギュッ
めぐり「あぁあっ、んん、はぁっ///」
八幡「………どうでしょう」
めぐり「もうちょっと待って///」スンスン
八幡「えっ」
めぐり「匂いは、計る、のが、難しい、から///」スンスン
八幡「やっ、その、もう」
めぐり「………うん。この感じだと……落ち着きやすいお花の匂いとかが良いかな」
八幡「……そうですか」
めぐり「それはそうと私の家はシトラスの香りがするよ」
八幡「……………いや、花とか言われても、あんまり」
南一局、三巡目、一本場。親はゆかり。ドラは三索。
六七八⑦⑧24445678 ツモ⑥
「さて、桃華ちゃんはここで……ええっ!?」
つかさは二索を切ってリーチをかけた桃華に驚いた。
五索でリーチをした場合、平和は消えるものの
三色確定の変則二面待ちになるからだ。
「言いたい事は分かるよ社長さん。
二索ならば待ちは三・五・六・八・九索の五面待ちになる。
しかし五索ならまだしも八索は三色が
九索に至っては三色どころかタンヤオすら崩れてしまう。
そういう事だろう。
しかしなるべく待ちの多い良聴牌の形にする打ち方は
デジタル志向の打ち手ならさほど珍しくないんだ。
だが、桃華さんの場合、それだけではない、と俺は思う」
「と言うと?」
「彼女はその未成熟な体に似合わない包容力、つまり母性に溢れている。
この麻雀オーディションに臨んで、彼女はこう言っていた。
『自分を受け入れ求めてくれるファンたちを
全て受け入れられる、そんなアイドルになりたい』と。
彼女の麻雀にはその姿勢が色濃く反映されている……」
「ツモですわ。ティアマト(メンタン三色ツモ)」
三巡目に桃華は五索をツモ和了った。
「ツモりましたねー。なるほど、豊かな母性ゆえに広く牌を受け入れる。
しかし、これは対策を立てられやすいこだわりだ。
何せ単騎待ちなどの愚形の聴牌はまずないという事ですからね」
めぐり「なんでって……。比企谷くんがどんな風に抱きしめるか調べないと。そこからどんな匂いの抱き枕が合うか逆算するんだから」
八幡「は、はぁ………。いや、抱きしめ方で匂いがどうこうって、ちょっと」
めぐり「うるさい!」
八幡「!?………?…………!?」
めぐり「ほら、私を抱き枕だと思って、ぎゅーって。早く」
八幡「…………」ギュッ
めぐり「あぁあっ、んん、はぁっ///」
八幡「………どうでしょう」
めぐり「もうちょっと待って///」スンスン
八幡「えっ」
めぐり「匂いは、計る、のが、難しい、から///」スンスン
八幡「やっ、その、もう」
めぐり「………うん。この感じだと……落ち着きやすいお花の匂いとかが良いかな」
八幡「……そうですか」
めぐり「それはそうと私の家はシトラスの香りがするよ」
八幡「……………いや、花とか言われても、あんまり」
めぐり「なんでって……。比企谷くんがどんな風に抱きしめるか調べないと。そこからどんな匂いの抱き枕が合うか逆算するんだから」
八幡「は、はぁ………。いや、抱きしめ方で匂いがどうこうって、ちょっと」
めぐり「うるさい!」
八幡「!?………?…………!?」
めぐり「ほら、私を抱き枕だと思って、ぎゅーって。早く」
八幡「…………」ギュッ
めぐり「あぁあっ、んん、はぁっ///」
八幡「………どうでしょう」
めぐり「もうちょっと待って///」スンスン
八幡「えっ」
めぐり「匂いは、計る、のが、難しい、から///」スンスン
八幡「やっ、その、もう」
めぐり「………うん。この感じだと……落ち着きやすいお花の匂いとかが良いかな」
八幡「……そうですか」
めぐり「それはそうと私の家はシトラスの香りがするよ」
八幡「……………いや、花とか言われても、あんまり」
南二局、五巡目。親は星花。ドラは發
「リーチですわ!」
二巡目からゆかりにマークされている事を桃華は感じていた。
しかし彼女は変わらず、牌の持つ最高のポテンシャルを
引き出して多面待ちのスタンスを崩さない。
一萬を切ってリーチをかけたこの時の彼女の手は次の通りである。
三四五六七七七②③④⑤⑤⑤
「おおっ! 桃華ちゃん、二・五・八・三・六萬の
包容力に満ち溢れた五面待ちでテンパイ! リーチをかけた!」
二巡後、ゆかりの手から四萬が出てきた。
牌はそのまま横に向き、桃華を睨み付ける。
「……それでは、私もリーチをかけさせていただきます」
二三四⑧⑧⑧3456777
「そしてそして! ゆかりさんも当然の如くシンクロニティで
二・五・八・三・六索の五面待ちで追っかけリーチ!」
その巡の星花の手である。彼女はここで三萬をツモった。
三五五六六③⑥⑦23455
「おおっと! ここで星花さん、当たり牌の三萬を引いた!
六萬はゆかりさんの現物です!」
星花は牌の調べに耳を傾け、その後、三筒、六筒の順に切って次のようになった。
三三五五六六⑦223455
「星花さん、当たり牌の三萬に加えて二索も押さえたね。
あの手、五・六萬と切れば五六七の三色手も狙えたけど
萬子を警戒して筒子を切り捨てたようです」
「ええ。しかし星花さんは手持ちの十三枚のうち
十一枚が当たり牌という危機的状況です。
まさにわずかな一挙一動が命取りの綱渡り!
親を死守したい所ですが思うように身動きが取れません!」
めぐり「なんでって……。比企谷くんがどんな風に抱きしめるか調べないと。そこからどんな匂いの抱き枕が合うか逆算するんだから」
八幡「は、はぁ………。いや、抱きしめ方で匂いがどうこうって、ちょっと」
めぐり「うるさい!」
八幡「!?………?…………!?」
めぐり「ほら、私を抱き枕だと思って、ぎゅーって。早く」
八幡「…………」ギュッ
めぐり「あぁあっ、んん、はぁっ///」
八幡「………どうでしょう」
めぐり「もうちょっと待って///」スンスン
八幡「えっ」
めぐり「匂いは、計る、のが、難しい、から///」スンスン
八幡「やっ、その、もう」
めぐり「………うん。この感じだと……落ち着きやすいお花の匂いとかが良いかな」
八幡「……そうですか」
めぐり「それはそうと私の家はシトラスの香りがするよ」
八幡「……………いや、花とか言われても、あんまり」
一方、星花のとの対面である雪乃は桃華からこぼれた中
そしてゆかりからこぼれたドラの發を連続で鳴いた。
もうこれで白は切れない。
リーチをかけた二人は白の来ない事を祈りつつ、ツモを進める。
中中中 發發發 ①②②③⑥⑦⑧
実際、雪乃は中膨れの二筒待ちで白は持っていなかったが
単騎・ノベタン・シャンポンそしてリャンメン待ちと
容易に移行出来る分、星花よりも余裕があった。
「カン」
發を引っ張ってきた雪乃は迷わずカンをした。
そこで彼女は嶺上牌から九筒をツモって二筒を打つ。
中中中 發發發發 ①②②③⑥⑦⑧ ツモ⑨
「中と發の二副露をさらして倍満テンパイの雪乃さん!
六・九筒のノベタン待ちに替えた!」
星花はその巡目に切ったばかりの六筒を持ってきてしまう。
一度捨てた牌だが、彼女は牌に耳を傾け
額に汗を浮かべながら四索を打った。
食い縛る歯の軋みが聞こえてきそうな打牌だ。
中中中 發發發發 ①②③⑥⑦⑧⑨ ツモ白
雪乃はさらにここで白をツモり、当然のように六筒を打つ。
これで彼女はチャンタ混一色小三元ドラ四の三倍満になった。
同巡、星花は三索をツモり、七対子を聴牌した。
そして今通ったばかりの六筒を打つ。
まさに己の一進一退は綱一本分の隙間しかない中での応酬である。
三三五五六六⑦223355
この勝負の行く末はハイテイまでもつれ込んだ。
運悪く、桃華が最後のツモで白を引いてしまった。
和了牌でない限りは切らなければいけない。
「ロン!」
桃華の小さな手から白が離れた瞬間、雪乃が牌を倒す。
しかし……。
「失礼、頭ハネです」
星花が静かに自牌を倒した。
三三五五六六223355白
「何と! 星花さん、三家の当たり牌を全部押さえたままチートイツを和了った!
今だかつてドラも乗っていないのにこれほど熱く
これほど静かなチートイツのみがあったでしょうか!」
「全部、止められてしまいましたね」
「ふふ、苦しかったけれど楽しかったです。
ごめんなさい雪乃さん。折角の手を邪魔して」
「いいえ、これだけの手なら負けても悔しくはありません」
桃華は星花の手を握って優しく手中に点棒を置いた。
「見事ですわ星花さん。
ニ千四百点にはもったいないくらいの素敵なチートイツでしてよ?」
「ありがとう桃華ちゃん。でも私は牌の調べに従っただけ
そんなにみんなから褒められると何だか恥ずかしいわ」
オーラスである。トップは水本ゆかり、僅差で相原雪乃
涼宮星花と続き、桃華は一万二千点差で最下位に留まっていた。
明確な放銃を回避する対策のある分、彼女は他の三人に比べて不利だ。
彼女以外では雪乃がやや手作りに時間がかかる短所があったが、彼女はその分高い和了が多い。
「リーチですわ」
しかし桃華はラストニ巡に何を思ったのか、發をツモ切ってリーチをかけた。
一発ウラドラのないルールでは運を味方にした逆転が難しい。
誰もが桃華が大物手を張っているという事を疑わなかった。
その時彼女の捨て牌を一瞥した三人は同時に、あっ、と声を上げた。
「これは……っ!」
「あと一枚で……流し満貫に……!」
そう、桃華の捨て牌は見事に公九牌のみで占められていた。
この時点で星花たちは誰も鳴いていない。
親の流し満貫が成立すれば桃華の勝ちだ。
2333344567888
「おおっと! 桃華ちゃんの手牌は中張牌を贅沢に使った
一・二・四・五・六・七・八・九の八面待ちだ!
一索・九索は場にありません。
その捨て牌も公九牌が来れば流し満貫が成立するので
実質十九面待ちと言っても良い! これはすごい!」
「一筒です!」
①②③④④⑤⑥⑥⑦⑧⑨五五 ツモ④
ゆかりは祈るように一筒を切った。
こうなっては中張牌は軒並み危険牌、ならばこう切るしかなかった。
「だめ、鳴けない……南を鳴いて」
⑦⑧⑨一一二二三三七八九南 ツモ六
「鳴けない……九筒です」
四五六④⑤⑥⑦⑧⑨⑨456 ツモ④
星花、雪乃も健闘するが誰も捨て牌を鳴けず、ツモ順は桃華に回ってくる。
(来て……わたくしはあなたを受け入れる……!)
一索は両手を広げて待つ桃華の胸の中に吸い込まれていった。
「……ツモ! ガイア(リーチハイテイツモチンイツ)……八千オールですわ」
桃華は捨ててもツモっても満貫手な一索を引き和了り、勝者に決まった。
捨て牌と手牌で待ちの広い手の二段構え、これは桃華の持つ母性の究極形と言えた。
「半荘オーディションが今、終了いたしました!
苦戦していた桃華ちゃん、トップだったゆかりさんを二着に落として堂々の一位!」
つかさとみのりは席を立って惜しみのない拍手を雀士アイドル四人に送る。
「素晴らしい! 最後の牌勢には桃華さんの溢れる母性愛が感じられました!
麻雀の河、まさにそれは大地母神と言える存在……!
なんという圧倒的包容力! 桃華さん、ああっ……!
俺の母親(ママ)になってください!」
「えー、みのりさんが暴走気味ですがここでニュースです。
南二局のあの攻防を見た監督が、ぜひとも他の三人にも映画に出てほしいとの事でした。
彼は早速脚本家と演出家を緊急で呼び寄せて会議を開くそうです。
ああっ! 今全員が微笑み合い、握手を交わしています。
オーディエンスもそんな二人に熱い拍手を向けています。
何と爽やかで美しい光景でしょう!
脚本の書き直しさえも辞さないほど監督の気に入った
四人の令嬢の『声』は、きっと海を隔てた我々にも届く事でしょう!
それでは、司会はアタシ、桐生つかさと」
「ああっ! ママぁ――っっ! ママぁ――――っっっっ!」
「……渡辺みのりさんでした! バイバイ!」
以上です。星花さんや雪乃さんのボイスまだですかね
乙
それぞれ見せ場があって良かった
>>58
感想、ありがとう。励みになるよ
手牌とかなしで麻雀風ならわかるが
手牌は出すけど闘牌になってないから中途半端だった
>>61
ありがとう。ガチ闘牌とか書いてみたいが実力不足だ
頭の中ドーナツにして気軽に読んでくれればそれだけでいいよ
読みづらいスレになってごめんよ
あ、琴歌の名前間違えていたのだけはちょっと……
面白かっただけに残念でした
>>65
失礼しました。渋では琴歌に修正しました
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません