女勇者「優しくされたいなぁ」 (47)
子供の頃…
父「おぉ、村に入ってきた魔物を退治したのか!」
少女「うん! 弱い魔物だったから、ボク1人で倒せたよ!」
父「お前は剣の才能に恵まれているな」ナデナデ
母「そうね、きっと男にも負けない凄腕の剣士になれるわよ」
村人「騎士団に入れば、この村の出世頭だな」
友達「少女ちゃん、かっこいいー!」
少女「えへへー」
剣の腕を上げれば上げる程、皆はボクを褒めてくれた。
それが嬉しくて、ボクはひたすら腕を上げた。
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そして数年後…
王「剣術大会で見事優勝を果たしたお主に、勇者の称号を与えよう」
勇者「光栄でございます…ですが本当によろしいのでしょうか」
王「当然だろう。何を遠慮する必要がある?」
少女は誰もが認める剣士となり、国で開催された剣術大会で優勝する程の腕前になった。
その剣術大会は勇者を決める為の大会で、勇者は魔王討伐の旅のバックアップが受けられるのである。
勇者「故郷ではもう『お前は優勝できて当たり前』って言われてたもので、改めて祝福して頂けると嬉しいというか…」
王「何を言っておる。お主は我々の救世主となる者だぞ」
勇者「えへ、えへへへ…」
王「お主が利用する施設の料金は国で負担しよう。それから旅を共にする者もこちらで選考しておいた」
戦士・魔法使い・僧侶「宜しくお願いします!」
勇者「宜しく!」
戦士「へぇ、あんたが剣術大会で優勝したのか。どんなゴリラかと思ったら、可愛いめの女の子じゃねぇかよ!」
魔法使い「こらこら戦士、早速ナンパしないの。宜しく勇者、足引っ張らないように頑張るね!」
僧侶「大会で勇士を拝見していましたよ。とても力強く、頼りがいがありますね」
勇者「えへへー、それほどでもぉ」
勇者(絶対に皆をガッカリさせないように頑張ろう!)
勇者「でりゃああぁーっ!!」ズババッ
魔物「ガハッ」
戦士「すっげー!! あの巨体を一擊かよ!」
僧侶「流石です、勇者さん!」
勇者「えへへ、これくらいなら慣れてるからね~」
魔法使い「でも勇者、女の子なんだから掛け声には気をつけなさい」
勇者「ああいう掛け声出した方が力入るもんで…」
僧侶「なるほど、あの掛け声も勇者さんの力の秘訣なんですね」
魔法使い「それはいいけど、嫁の貰い手がなくなるわよー」
勇者「えへへ…別にいいや、剣さえできれば皆認めてくれるでしょ?」
戦士「まぁ、勇者を認めない奴なんていないと思うけど」
勇者「じゃあ、それでいい! ボクにとって1番大事なのは、強くあることだから!」
魔法使い「そう。ごめんね上から目線で色々言っちゃって」
勇者「ううん、いいよー」
>1週間後
勇者「でりゃあああぁぁっ!!」ズババッ
魔物「ガハッ」
魔法使い「よし倒したね」
僧侶「お怪我はありませんね? では行きましょうか」
勇者「……」
戦士「どうした勇者?」
勇者「今ボクが倒した魔物、新種だったよね?」
僧侶「? そうですね」
勇者「今までの敵で1番体も大きかったし…」
魔法使い「そうね」
戦士「でも勇者なら倒せるだろ、これくらい?」
勇者「………うん」
勇者「でりゃぁーっ!」ザクザクッ
魔物「グハアアァッ」
勇者「ねぇねぇ、見て見て! 10匹切り達成し…」
魔法使い「戦士、大丈夫?」
戦士「ちょっと腕をやっちまった、いてて」
僧侶「今、回復しますね」
勇者「……ねぇ」
僧侶「あ、ごめんなさい勇者さん。今ちょっと忙しくて」
戦士「僧侶の回復魔法には助けられるなぁ~」
勇者「……ボク、魔物10匹倒した」
魔法使い「うん、お疲れ様」
勇者「………」
>夜
戦士「カードやらねー?」
魔法使い「いいわね。あれ、勇者は?」
僧侶「外で体を動かしてくるとのことですよ」
戦士「元気だなー」
勇者「でりゃああぁぁっ!!」ブンブン
勇者「ハァ、ハァ……」
勇者(もっと、もっと強くなる…)
勇者(もっと強くなれば、きっと褒めてもらえる!!)
勇者「どりゃあぁーっ!!」ズバアアァァッ
魔物「ウグッ」
勇者「ねぇねぇ、20匹倒したよ! 見て見て!」
戦士「あぁ、そうだな」
勇者「そうだな…って……」
魔法使い「そんな大げさに言うことじゃないでしょ。勇者ならもっとやれるんでしょ?」
勇者「……え?」
僧侶「最近、宿についた後もトレーニングされているようですし。余裕あるんですよね?」
戦士「勇者ならできて当然だろ。つぅか疲れた……」
勇者「………」
>夜
勇者「ハァ…」
勇者(「もっとやれる」「余裕ある」「できて当然」)
勇者(違うもん…ボクだって努力してるもん)
勇者(どうすればまた皆、前みたく褒めてくれるかな…)
勇者(そうだ! 自分がされて嬉しいことは人にやれって言うよね!)
勇者「戦士、腕上げたね! やっぱ男の人だし腕力はかなわないや!」
戦士「……あ、うん」
勇者「魔法使いって色んな魔法使えて凄いよね~! ボクは頭悪いから、こんなに覚えられないや」
魔法使い「……そう」
勇者「僧侶の回復魔法って重宝するよね! 聖魔法習得は厳しい修行を必要とするって聞くし、ありがたいよね!」
僧侶「……どうも」
勇者(何でも自分自分じゃダメだよね~。皆だって凄いとこ一杯あるんだもん、これからはガンガン褒めていこう!)
勇者「あ、それで皆って~…」
戦士「…なぁ」
勇者「ん、なーに?」
戦士「そんな風におだてられてもさ。俺とお前はかなり差があるし、皮肉にしか聞こえねーんだよな」
勇者「えっ」
魔法使い「いくら魔法を覚えたところで、勇者程貢献してないし…」
勇者「そ、そんなこと」
僧侶「それに勇者さんダメージ受けないから、私の力を必要としていないじゃないですか」
勇者「!!」
戦士「慰めるつもりでそういうこと言うのやめてくれ、惨めになる」
魔法使い「私達、勇者みたいな天才じゃないんだから」
僧侶「それよりも行きましょう。私達が足を引っ張ってしまっているので申し訳ありませんけど」
勇者「あ、あの…」
勇者「………」
>夜
勇者「うぅ、ゴホゴホ」グスッ
勇者(そんなつもりないのに…ボク、皆のこと大事な仲間だって思ってるのに)
勇者(剣の稽古ばっかりで、皆とあんまり遊んだりお喋りしたりしてないもんなぁ…)
勇者(今日は稽古は休み! 宿に戻って皆と一緒にいよう!)ゴホゴホ
勇者「ただいま~…コホッ」
魔法使い「お帰り勇者…あれ、顔が赤いわね?」
勇者「え?」
戦士「何か声も変だな」
僧侶「ちょっと熱計ってみましょう」
勇者「……? ゴホッ」
勇者「あうぅー…」
魔法使い「まさか風邪なんてね~」
勇者「ゴメンね、ゴホッ…」
僧侶「いえ、気にしないで下さい。それにしても勇者さんだけ風邪を引くなんてねぇ」
戦士「勇者も超人ではないわけだ」アハハ
勇者「当然だよぉ…。ボクのこと何だと思ってたの」
戦士「はは、わりわり。リンゴ剥いてやるよ勇者」
魔法使い「何か食べたいものある?」
僧侶「無理しないで、ゆっくり体を休めて下さいね」
勇者「……えへへ」
勇者(風邪引いたら、みんな優しいなぁ……)
>3日後
勇者「完全復活! 今までゴメンね、さぁ行こう!」
戦士「良かったな、すっかり元気になって」
魔法使い「いい休息になったわ。リフレッシュもしたし、行きますか」
ワーワー
勇者「でりゃーっ!!」ズバッ
魔物「ガハッ」
勇者「……」
戦士「おらっ!」
魔法使い「喰らえ、火炎魔法!」
僧侶「サポートします!!」
勇者(何か元通りだなぁ……ちょっと寂しい)
戦士「おい、勇者、後ろっ!」
勇者「え?」
ガンッ
魔法使い「火炎魔法! よし倒したわ、勇者は!?」
勇者「いちち……」
戦士「だ、だだだ大丈夫か勇者!?」
僧侶「凄い出血…。今、回復魔法をかけますね!!」
勇者「はは、そんな焦らなくても…」
魔法使い「勇者が攻撃を喰らうなんて珍しいもの…焦るわよ」
戦士「あー、でも良かったぜ命に別状が無さそうで」
僧侶「痛みませんか、勇者さん?」
勇者「…あ、うん」
勇者(そうか……皆、風邪を引いたり怪我をしたら優しくしてくれるんだ)
ズバッ
勇者「いたーっ」
ボコッ
勇者「~っ!」
ドカッ
勇者「あたたっ」
戦士「……」
魔法使い「……」
勇者「ごめん僧侶、回復魔法かけて!」
僧侶「…もうMPも残り少ないんですよ」
勇者「あ、そう? じゃあ町に着くまで頑張るよ!」
戦士「……おい勇者」
勇者「ん、なーに?」
戦士「お前、ここのところ不注意だな」
勇者「え?」
魔法使い「ふざけてるの? あの程度の魔物、勇者なら攻撃をよけられるわよね?」
勇者「え…っと」
魔法使い「真面目にやってよね!」
勇者「………」
>夜
勇者(また元通りだ…)
勇者(ボクは強くて当然だから、怪我したら怒られるんだ)
勇者(ひどいよ。ボクだって怪我したら痛いんだよ)
勇者(どうしてわかってくれないのかなぁ…)
勇者(ここの所、皆と一緒にいるのつらいや……)
今日はここまで。
嫌な予感がしたら読むのやめましょう。
>洞窟
戦士「複雑な洞窟だなぁ…」
魔法使い「これじゃあ目的のものがどこにあるんだかわかったもんじゃないわね」
勇者「じゃあさ…二手に別れて行動しない?」
僧侶「二手に…ですか?」
勇者「うん。ボクは1人でこの先見てくるから、皆はこっちをお願い」
戦士「おい、1人で大丈夫かよ!?」
勇者(あ、心配してもらえた♪)
勇者「大丈夫、大丈夫! それじゃ、お互いにがんばろー!」
魔法使い「気をつけてねー」
勇者(こっちには何もなかった、っと)
勇者(さてと皆は…)
<うわああぁぁぁ
勇者「ん?」
戦士「くっ、数が多すぎる!!」
魔法使い「ハァ、ハァ…」
僧侶「皆さん…もう、駄目……」
勇者(皆が大量の魔物にやられている!)
勇者「やめろぉーっ!!」
戦士「!! 勇者!」
勇者「皆を傷つけるなああぁぁっ」
ズバババッ
勇者「ふぅ…皆、大丈夫だった?」
僧侶「…勇者……」
勇者「ん?」
魔法使い「…ありがとう!!」ガバッ
勇者「!!」
戦士「危うく死ぬかと思ったぜ…助かったよ勇者」
魔法使い「やっぱり私達、勇者がいないと駄目だよぉ~」
僧侶「勇者さんが来てくれて、良かったぁ…」
勇者「………!!」パアァ
勇者「当然だよ! だって皆は、ボクの大事な仲間だもん!」
魔法使い「ありがとう、ありがとう……」
勇者「えへへへ……」ジーン
勇者(そうか、これだ……)
・
・
・
勇者「それじゃ皆、ちょっと休憩しようか!」
魔法使い「さんせーっ」
僧侶「ふぅ、疲れましたねぇ…」
勇者「あ、ちょっとボクトイレ。皆ここで待っててね」
戦士「おう、気をつけてな」
勇者(確かこの辺は肉食の魔物が沢山生息しているはず…)コソッ
<うわーっ
<きゃあぁーっ
勇者(早速皆のピンチだ! 行かなきゃ!)
勇者「待て! ボクの仲間に手出しは許さないよ!」
魔法使い「ありがとう、ありがとう勇者…」グスッ
僧侶「また助けられてしまいましたね…」
勇者「これくらい、当たり前じゃない!」
戦士「お前は俺たちの恩人だ。本当に頼りになるぜ」
勇者「えへへ……」ジィーン
・
・
・
魔法使い「くっ、もう駄目……」
勇者「皆、今助けるね!!」
ズババッ
戦士「……」
勇者「皆、大丈夫だった?」
魔法使い「うん…ありがとう」
僧侶「ありがとう、ございます……」
戦士「……助かったぜ」
勇者「?」
>夜
勇者(今までの傾向から見て、何回も同じことがあったら皆もう「助けてもらって当たり前」になってるのかな)
勇者(もう、皆贅沢だなぁ! でもまぁ、仕方ないか)
勇者(今日の稽古は早めに終わらせて、宿に戻ろう)
勇者「ただい…」
魔法使い「…やっぱ、そうよね?」
勇者(? 中で何か深刻そうな話をしているなぁ)
僧侶「だって、おかしいですよ…私達3人の時に必ず魔物達に囲まれるなんて…」
戦士「それに勇者の奴ここんとこ頻繁に1人になるが、何をしているんだ…?」
勇者(ボクの話……?)
魔法使い「考えられる可能性はひとつ…」
戦士「勇者は、魔物側の内通者……!!」
勇者「!!!」
どうして…?
戦士「勇者選考の剣術大会にも、内通者として出場したのかもしれない…!」
どうして、そんなこと言うの…?
魔法使い「思えばあの人間離れした強さも胡散臭かったのよね…」
違うよ…――
僧侶「私達を助けるのも、油断させる為でしょうか?」
違うのに……
戦士「俺たちの情報は魔王に筒抜けかもしれないな…」
魔法使い「勇者に気を許さない方がいいわね」
僧侶「一旦首都へ戻って、王様にそのお話をした方がいいかも……」
勇者「――っ!!」ダッ
勇者「何で、何で何で何で何でなんでなんでなんでなんで――っ!?」
勇者「皆、どうしてそんなこと言うんだよぉ…」グスッ
最初はあんなに優しかったのに――
勇者「優しくしてよぉ…」
褒めてくれない、信じてくれない……――
勇者「そんなの、そんなの……」
仲間だと、思われてない……――
勇者「………」
勇者「…あはっ」
それなら――
勇者「あははははははははははははははははははははははははははははははは」
勇者「皆もう…」
勇者「…――いらないや」
>翌日
勇者「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」
戦士「あぁ」
魔法使い「……」
僧侶「…よし、後をつけましょう」
戦士「昨日はああ言ったけど、やっぱ信じたいよな…」
魔法使い「私達の目で決定的な所を見ない内に決めつけたら、駄目よね…」
僧侶「あれ? 勇者さんどこに…」
ザザッ
戦士「うわっ!!」
魔法使い「魔物の大群!? くっ、こんな時に…」
僧侶「皆さん! 応戦しましょう!」
勇者「……」コソッ
戦士「くっ…ゼェゼェ」
魔法使い「キリがないわ…いつもの魔物の群れと量が全然違う!!」
僧侶「もうほとんどMP残っていません……」
ザシュッ
戦士「うわああぁぁっ!!」
魔法使い「戦士ぃーっ!!」
戦士「ガ、ハ……」ピクピク
魔法使い「ちょっと、う、嘘でしょ…!?」ガタガタ
僧侶「う、えうぅ…」グスッ
魔法使い「ちょっと僧侶、泣かないでよこんな時に!!」
僧侶「いつもなら、勇者さんが助けてくれたのに……」
魔法使い「……っ」
僧侶「きっと勇者さんと、入れ違いになちゃったんですよ……」
魔法使い「そ、そんなこと言わないでよ…」
僧侶「仲間を疑ったバチが当たっちゃったんですよ……」
魔法使い「!!!」
ガルルル
魔法使い「い……」
魔法使い「いやああぁぁ―――っ!!」
勇者「……」
勇者「皆、さようなら」
>魔王城
魔王「勇者が我に会いたがっている、だと?」
いつものように玉座で指令を出していた魔王は、突然の報せに怪訝な顔をした。
側近「はい。人間側に出回っている人相書きと照らし合わせてみましたが、勇者でしたね」
魔王「確か勇者一行の者は魔物達に殺され、勇者自身も生死不明ではなかったか?」
側近「勇者だけは難を逃れて生き残ったのでしょう」
魔王「ふむ…そして我々を欺く為に、身を潜めていたか…」
側近「恐らくは」
魔王「しかし、わからんな。我を殺す為に来たのなら、何故乗り込んで来ぬのだ」
側近「何か企んでいるのでしょう。…如何致しましょう、魔王様」
魔王「…良い。奴が仕掛けた罠だというのなら、打ち破ってやろう。ここに通せ」
側近「はっ」
勇者「初めまして、魔王」ニコニコ
魔王「貴様が勇者か。話には聞いていたが、とても剣など扱えそうにない小娘だな」
勇者「そんなことないよ? ボクは人間で1番強いんだよ~」
勇者「ボクの仲間だった皆もね、3人合わせたってボクの足元にも及ばなかったんだから」
勇者「この小さい体でそれだけの力を得る為にどれだけ頑張ったか…わかってくれるかなー?」
勇者「それなのにね、皆はボクを天才だって決め付けて。ボクは強くて当たり前だって言って」
勇者「でもね…多分魔王を倒せば、世界中の皆から褒めてもらえるの!」
魔王「ほう…賞賛を得る為に我を倒すと申すか」
勇者「ううん」
魔王「何」
勇者「最初はきっと褒めてくれる。だけど皆すぐにそれが当たり前になって、褒めてくれなくなる。そんなのむなしいじゃない」
勇者「ねぇねぇ魔王」
魔王「何だ」
勇者「魔王は…ボクを褒めてくれる?」
魔王「っ!?」
兵「があぁっ!!」
勇者「あー弱い弱い。皆弱い!!」ズババッ
兵「がは……」パタッ
兵「ぐぐ…お逃げ下さ…へい、か……」
勇者「さぁ~て、残りは…」
王「ゆ、勇者よ……」
勇者「あはは、情けない顔~。駄目ですよ、一国を統べる人がそんな顔したら!」
王「何故だ…何故、裏切ったのだ!?」
勇者「何故?」
勇者「そう言うならさぁ…」チャキ
王「!!」
勇者「どうして、皆ボクに優しくないんだろうね…――?」
王「――っ」
魔王「…本当に、たった1人で国を壊滅させるとは…」
勇者「ねぇねぇ、凄い? ねぇ魔王ーっ」
魔王(この力…敵に回すのは得策ではないな)
勇者「ねぇ魔王ったら! 1人でやったんだよ、ボク1人で! ねぇったら!」
魔王(自身も人間に追われる身となった今…こいつが我を裏切ることはない、と考えて良いだろう)
勇者「…魔王も褒めてくれないの?」
魔王(それなら……)
勇者「それなら……」チャキ…
魔王「よくやった」
勇者「!」
魔王「お前の力は我々にとって大きな助けとなるだろう…歓迎しよう」
勇者「!!!」パアァ
魔王(そして勇者は我の配下となり、3つの国を壊滅させた)
勇者「どう魔王! 今回は結構骨が折れたよ~」
魔王「あぁ、よくやってくれた。お前の活躍で魔王軍は安泰だ」
勇者「えへへ、それほどでもぉ~」
魔王(この実力…勇者は努力のみで身につけたと言っているが、恐らく才能もあったのだろう)
魔王(そしてその血筋…試してみる価値はある)
勇者「魔王?」
魔王「勇者よ」
勇者「ん?」
魔王「我の妻となれ」
勇者「!!!」
ワーワー
勇者「えへへ。剣一筋だったボクがお嫁さんになれるとは思わなかったなぁ~」
魔王「我にはお前が必要なのだ」
勇者「えへへ~。たっくさん子供作ろうね、魔王!」
魔王「あぁ。そうすれば我々の国は安泰だ」
勇者「そうなの? ボクが子供産めば安泰なの?」
魔王「我々魔物は血統よりも実力主義…しかし我々の子ならばこの国を率いる程の逸材になれるであろう」
勇者「そうなんだ! よし、今晩から頑張ろうね魔王!」チュッ
>数ヵ月後
勇者「ねぇ魔王」
魔王「どうした」
勇者「…出来ちゃったみたい」
魔王「…む?」
勇者「ボクたちの、子供……」
魔王「!! 本当か!」
勇者「うん…お医者様が、そう言ってたから……」
魔王「よくやった!!」ギュッ
勇者「っ!!」
魔王「よくぞ我の子を身ごもってくれた…こちらの国に来てからのお前の働きには感謝してもし足りない」
勇者「…えへへ」ニコニコ
勇者(幸せだなぁ……)
>3ヶ月後
勇者「…ねぇ魔王」
魔王「どうした」
勇者「あのね、お腹の子の様子なんだけどお医者様がね」
魔王「後にしてくれ。今、我は忙しいのだ」
勇者「……」
魔王「経過は順調だと聞いている。あまり城を動き回るな、何かあっては困るからな」
勇者「………」
勇者(まただ…)
勇者(皆ボクが何をしても、それが「当たり前」になって冷たくなっていく)
勇者(魔王は違うと思ったんだけどなぁ…結局、同じか)
勇者(どうすれば皆、ずっと優しくしてくれるのかなぁ?)
勇者「……そうだ」
ここは魔物の国。血縁よりも実力が物を言う世界。
それならば――実力を示せばいいのだ。
勇者「どうして今まで気付かなかったのかなぁ…えへへ、待っててね魔王」
勇者「ボクが、その座を奪ってあげるから…――」
Fin
ご読了ありがとうございました。
バッドエンド耐性ない方はすみませんでした。
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