【ガルパン】現在の燃料では不足です!【ガンヘッド】 (163)


ナカジマ「ホシノー、もう始まってる?」

ホシノ「おはようナカジマ。まだ試合はこれからだよ」

スズキ「ツチヤは?」

ナカジマ「まだ起きそうにないや。連日徹夜続きだったからねー」

ねこにゃー「皆さまお疲れ様でしたにゃー」

ナカジマ「猫田さん達も、最後まで手伝ってくれてありがとうございました」

ぴよたん「リアル戦車に沢山触れてマジ感激ずら」

ももがー「楽しかったなりー」


スズキ「それにしても、対外試合は初っ端から聖グロリアーナか」

ホシノ「親善試合とはいえ強豪校が相手とは思い切ったことするね。ウチの会長は」

ナカジマ「へー、アレが聖グロの戦車かー……うわ、やっぱガンちゃん画面越しから見てもデカい」

ぴよたん「チャーチルにも負けてないっちゃ」

スズキ「そこらの戦車に比べたらそりゃねえ」

ももがー「異次元級の存在感もも……あ、向こうの隊長ぽい人が何か落したなり」

ホシノ「初のお披露目だからね。きっとびびってるよ」

スズキ「あのシルエットは存在感あるからねー」

ナカジマ「あの人たち紅茶でも飲んでたのかな? 試合前なのに」

ねこにゃー「聖グロリアーナは、試合中も戦車の中で紅茶を飲んでるらしいですにゃー」


スズキ「そろそろスタートだ。皆が戦車に乗り込んでるよ」


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───
──



《前方に敵影を確認。数は5》


「了解。マチルダⅡ4輌、チャーチル1輌ですね。うはあ、綺麗な隊列で進んでますー」

「みぽりん、合流ポイントでみんな待ってるって」

「わかりました。これから私たちも合流します」

「でも、本当に大丈夫なんでしょうかこの作戦」

「うーん……多分……」


《これからのゲームの行方は、血気盛んなインディアンスのサポーターも裸足で逃げ出すようなワイルドピッチが連投されることでしょう。勝率を測定するまでもありません》


「……そこは選手じゃないんですか? サージェント殿」

「ときどき何言ってるのかわかんないのよね、この子」

「あまりよろしくない作戦、ということをおっしゃっているのでしょうか?」

「そもそも、ゲームとして成立しないと言ってるようにも聞こえるんだけど」

「みぽりんは言ってることわかるの?」

「うーん……断片的には」


《我がチームのエースピッチャーには、視力の合った眼鏡をかけさせることをお勧めします》


「ああ、これは誰のことをおっしゃっているのか分かりました」

「みんなわかってるから言わなくていいわよ華」

「あはは……まあ、それは腕と戦術でカバーするしかない、かな?」

「はいっ」

「こちらAチーム──あんこうより各車へ、これより作戦を開始します」

「麻子、ほら起きて」

「むぅ……」

「できるだけ目立たないように、直立形態から戦車形態へ移行してください」


《ラジャー。車輌形態をG2からG1へ移行。変形開始》


「えぇー、またあのペチャンコみたいな恰好になるの?」

「みたいというか、ぺちゃんこになりますね。わたくし達も一緒に」


ゴウン ゴウン ゴウン …


「冷泉殿、大丈夫ですか?」

「せまい……」

「ごめんね。試合中はできるかぎりタンクモードで、って言われてるから」

「だって戦車道ですもの。仕方がありません」


《不本意ですが》


「でも5人で乗るのやっぱキツイよこれ……」

「この試合が終わったら、ナカジマさんに相談してみる?」

「これでも、試合で使わない装置とモニターと、あと計器類なんかも取れるだけ取っちゃってギリギリまで広げたんですけどねー」

「この中で一番場所を取ってるのは沙織の通信機だ」

「それは私のせいじゃないもん!」


《ミポリン、敵車輌がこちらに気づいたようです》


「りょ、りょうかいです。やっぱり見つかったか……」

「目立っちゃうもんね」

「一発撃ってけん制する手間が省けてよかったですね!」

「わたくしは少し残念です……」


《ミポリン、次の行動を》


「て、低速後進から車体を旋回して一旦停車」


《ラジャー、ミポリン》


「はうぅ……」

「もう色々と諦めてますね西住殿」

「沙織と一緒に居合わせたのが運の尽きだったな」

「だからそれは私のせいじゃ……いや、私のせいか」エヘヘ

「可愛らしい呼び方で素敵だと思うのですが」


《スタートラインに着きました。ハンドルを預けます》


「いつでもいいぞ」

「うう、緊張してきたぁ」

「頑張りましょう」

「わくわくしますー!」


「それでは、……パンツぁー・フォー!」


《Jawohl. Gewehr Kopf "GUNHED" vor》

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こちらはガルパンSSのスレッドです。
基本的にTV版の進行に準じたストーリーですが、劇場版やスピンオフ作品の内容に触れる箇所もありますのでご注意ください。
あと、細かい描写の違いや、設定の独自解釈など多々ありますが、劇的なストーリーの改変やスケベなシーンなどはまったくありません。
それから、ガンヘッドが少し出てきます。

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……

沙織「そういえばさ、今さらかもしれないんだけど」

優花里「何ですか武部殿?」

沙織「この子って、きゅらきゅらするやつタイヤに付けてないじゃない? それって戦車的にオッケーなの?」

華「きゅらきゅら?」

優花里「きゅらきゅら?」

麻子「履帯のことか。コイツは無くても走れる」

沙織「そうそれ! へー、なくてもいいんだ!」

みほ「一応、継続高校の主力戦車が履帯を外して走るときがあるよ」

華「そんな戦車もあるのですね」

みほ「前の学校にいた頃に対戦した事があるんだけど、それでちょっとびっくりさせられたよ」

優花里「さすが継続高校のクリスティ突撃砲ですね!」

みほ「もとは違う学校の戦車だったらしいんだけどね……」


《後続から敵影が接近。全車輌からマークされています》


みほ「麻子さん、なるべくジグザグに走行してください。こちらは装甲が抜かれる事はありませんが、撃破判定が低めに設定されているので主砲の直撃にはそれほど持ちこたえられません」

麻子「ほい」


《急な加速や停車などから搭乗者が車内で振り回されたり、旋回時における遠心力などの影響でコントロールを奪われたりする事があります。少しずつ慣れておくと良いでしょう》


沙織「そんな荒っぽい事にこれから慣れなきゃいけないんだ……」

みほ「緊急のときだけだから滅多に起こらないよ。だから大丈夫」

華「みほさん以外はみんな未経験者ですから、これから色々なことに慣れないといけませんね」

沙織「てか、私たち皆から一番遅れてるし、もっと練習しなきゃだね」

優花里「しょうがないですよ。サージェント殿が完成したのが、つい数日前のことですもん」

華「手伝って頂いたみなさんには感謝してもしきれませんね」

みほ「うん」

麻子「Eチームの連中以外はな」

沙織「生徒会はむしろ邪魔ばっかしてたような……」


みほ「華さん。走行中に大きな照準のブレなどはありませんか?」

華「はい、問題ないと思います。わたくし達もメンチ切って撃ち返しますか?」

みほ「メ……う、ううん、今はまだ大丈夫」

華「わかりました……」シュン

沙織「華、この後でたくさん撃てるんだから我慢しなって」

 バコンッ

《左脚部に被弾》


沙織「きゃ、当たった!? 当たってるよ! 華、今すぐこっちも撃ち返してッ!!」

麻子「おい」


《ダメージは軽微です》


華「みほさん。やっぱり、こちらもガン飛ばして威嚇しましょうか?」

みほ「いや、いいです……」

優花里「なんでさっきからそんなに攻めた発言なんですか五十鈴殿は」

華「申し訳ありません。こういうときのアクティブな対処法を新三……家の者に聞いたのですが、間違っていました?」


《戦術として悪くない判断です》


華「まあ、ありがとうございます」

沙織「いや、女の子としては絶対に間違ってるからね」


《威嚇や牽制行為で背後のランナーへプレッシャーを与えることが、スチールを阻止する秘訣となります》


沙織「だからもー途中から何言ってんのかわかんないんだってば」

麻子「十中八九、野球のことだと思うが意味はさっぱり分からん」

優花里「我々スポーツに関してあんまり詳しくないんですよねー」

華「バレー部の方たちも、時々なにをおっしゃっているのか分からないときがあります」


《残念です》


みほ「ちょ、ちょっとだけなら少しずつルール覚えるから……ね?」


沙織「ねぇ麻子、もっとスピード出せないの?」


《これ以上加速すれば、後続の敵車輌を引き離してしまいます》


麻子「だそうだ」


《なお、現在のトップスピードは、試合開始前に掛けられたリミッターの影響で40㎞相当までに制限されています》


優花里「戦車道の競技用車輌として認可されるまでに、他にも色々と制限がかけられましたもんね。後部の武装もほとんど取っちゃいましたし、本体の主砲も単発の75㎜砲身に付け替えましたし」

沙織「もう! どうして私たちばっかりそんなに制限されちゃたわけ?」


《選手保護用カーボンコーティングの強度と、戦車道連盟が定めたレギュレーションを私の基本スペックと照合した結果、今回付与された諸々の制限・制約は、私が他の競技用車輌と足並みを揃える為に必要な処置と判断されました》


みほ「言ってみれば、こんなスペックでよく試合に出られたね……」

優花里「私は戦車道の試合に出られるだけで夢のようです」

沙織「うー。なんか納得できない……」


華「それにしても、最初の頃から色々と装備を外して、見た目は随分とすっきりされましたね」

みほ「そうだねー」

沙織「私もこんな簡単にダイエットできたらいいのに」

麻子「言っておくが、ここまで換装するのに沙織の見えないところで相当苦労したんだからな!」

沙織「わかってるわよー。わたしも1年の子たちと一緒にお弁当作り頑張ったもん!」

麻子「全然わかってない……」

優花里「冷泉殿は、猫田殿とご一緒に電気系統の配線ををギリギリまで調整されていましたね」

みほ「華さんと優花里さんも、部品の付け替えや取り外しを頑張ってたね」

華「うふふ。ここ数日で行った整備作業のお陰で、皆さん心なしかダイエットされたんじゃないですか?」

沙織「やだー戦車も私たちもスレンダー体系って感じ?」


《私はどちらかといえば、セミヌードにされた心境です》


みほ「そうなんだ……」

優花里「なんかすみません……」

沙織「やだもーえっち!」


みほ「苦労したといえば75㎜の主砲だけど、試合まで時間がほとんど無かったのによく交換できたね」

優花里「自動車部の皆さんが物干し竿で使ってたのを、突貫工事で無理矢理くっ付けたんですよねー」

華「皆さん本当に手先が器用な方たちですよね。先日に試射してみましたところ、特に問題無く撃つことができました」

優花里「ちょっとクセはありますけど、装填機構もバッチリです!」

みほ「もう手先が器用って次元を超えてるような……」

沙織「砲身を換えたってみんなと話してたとき、物干し竿ってフレーズに歴女の人達がやたら食いついてきたのは結局何だったのかしら……」

華「それは物干し竿ですから」

麻子「まあ、物干し竿だしな」

優花里「物干し竿ですもんね」

みほ「物干し竿だねー」

沙織「え? えっ? 私以外みんな知ってる感じ? 何のトリビア??」


《西暦1600年代の日本で活躍した著名な剣客が、主力武器として装備していたという記録があります》


沙織「へ、へえー、そうだったんだ」

みほ「その説明は何か誤解が生まれるような……」

麻子「沙織はもっと勉強しろ」

沙織「してるもん!」


《指定のポイントに到着するまで、あと4分》


優花里「まもなく合流ポイントです!」

みほ「沙織さん、各チームへ3分後に到着すると連絡してください」

沙織「わかった!」


《ミポリン。先ほども進言しましたが、この向こうは我々にとってもキルゾーンです》


沙織「何か言ってたっけ?」

華「インディアンがワイルドになるとか、おっしゃられていたような」

優花里「何かちょっと違う気がします……」


《パーティー会場で待つ我々のチームメイトたちは、完璧な作法でゲストを迎え入れることで頭が一杯です。緊張はピークに達していることでしょう》


沙織「絶対、河嶋先輩が最初に撃ってくるよ……」

みほ「そうはならないと信じたいんだけど……」


《それは絶望的なギャンブルです》


優花里「ですよねー」

華「河嶋先輩は、ある意味で最も信頼における方ですね」

麻子「期待は裏切らないだろうな」

みほ「あはは……困ったなぁ」


麻子「どうする隊長?」

みほ「……はい。少々強引ですが、ギリギリまで惹きつけてから、聖グロリアーナの隊列と混ざるように合流ポイントへ入ります」

麻子「わかった」

沙織「いきなり荒っぽいことになりそうだよ! 滅多にないってさっき言ってたよね!?」

優花里「大丈夫です。西住殿の判断に間違いはありません!」

華「わたくしはみほさんを信じます」

沙織「うう、それは私もだけど……」

みほ「ありがとうみんな……。麻子さん、私が合図したら徐々にスピードを上げて、これから言う指示通りに走ってください」

沙織「頼んだわよ麻子っ」

華「冷泉さん、お願いします」

優花里「よろしくお願いします!」

《グッドラック》

麻子「おうよ」


《到着まであと50秒》


みほ「それでは──いきます!」

一旦ここまで


─ 親善試合の数日前 ─


▼大洗女子学園/戦車格納庫


ナカジマ「ホシノー、積み下ろし終わったー?」

ホシノ「終わったよー! じゃあ私たちはこれで」

みほ「すみません無理言って……自動車部の皆さん、本当にありがとうございました」

優花里「ありがとうございました!」

ホシノ「残ってるパーツがあったらいつでも言ってね。また持ってきてあげるよ」

みほ「はい、よろしくおねがいします」

優花里「お世話になります!」


ツチヤ「西住さん。足滑らせてころんだ拍子に、廃棄ダクトのスロープに頭から突っ込んで、船底のスクラップ置き場まで落っこちたって聞いたけど大丈夫だった?」

ナカジマ「ケガはしてません?」

みほ「ふえっ!?……あ、だ、だいじょうぶ、です……」

スズキ「落っこちた先が、もう使われてないような廃材置き場だったから良かったけど。危ないから気を付けようね」

ホシノ「もう少しで、学園長の首が飛んじゃうところだったろうね」

華「ご心配をおかけして頂いて、申し訳ありません」

沙織「ほんっとご迷惑をおかけしました」ペコペコ

みほ「すみません……」シュン


ナカジマ「ウチの学校が戦車道を再開するって話が出始めた頃から、西住さんは私たちの間でもちょっとした噂になってましたけど……いやー、色んな意味で危なっかしいお嬢さんですね!」

みほ「あぅ…」

ツチヤ「ほらーイジメちゃだめだよ先輩」

ナカジマ「えーイジメてないもんー。ホシノー、ツチヤがイジメるー」

ホシノ「はいはい」


華「本当に、皆さんには何とお礼を申し上げたら……」

ツチヤ「いいって、いいって」

スズキ「代わりと言っては何だけど、コレの組み立ては私たちにも手伝わせてくれないかな」

優花里「でも、皆さんは他の戦車の整備で忙しいのでは?」

沙織「てか、お礼の代わりになってないし……」

ホシノ「問題ないよ。他の戦車は今日中に全部まとめて走らせる状態までに仕上げてみせるさ」

みほ「えっ、昨日回収して洗浄が終わったばかりの状態って聞いたんですけど……4輌とも全部」

ナカジマ「なんとかしてみせますよ。……といって私たちもも戦車弄るのはこれが初挑戦なんですけどね」

ホシノ「構造さえ解れば、まあ後は普通車の整備とやる事は変わらないでしょう」

スズキ「足りなさそうな部品はリストアップして、今日のウチに全部揃えたところだよ」

優花里「なんと手際の良い……」

スズキ「戦車道で扱う車輌に関しては結構前から勉強してたんだ」

ツチヤ「先輩、戦車道のオーナー目指してるって言ってたよねー」

ナカジマ「今まで戦車の"せ"の字も無かったのにねー。この学校」

スズキ「いいじゃない別に。今年から復活したんだし」


沙織「でも、ほんとにいいんですか?」

ナカジマ「うん。どっちかって言うとね、私たちが手伝いたいんです。コイツも見た感じ今まで触ったことなさそうなレア物っぽい匂いがするんですよねー」

ツチヤ「燃えるねえー」

優花里「すごい、自動車部の皆さんがいれば百人力ですー!」

華「組み立ての作業は、わたくし達も誠心誠意、励みたいと思います」

沙織「差し入れ作って持ってきます!」

麻子「楽しみにしているぞ」

沙織「いいけど、アンタも手伝いなさいよ」

麻子「むぅ」

ナカジマ「あははは。それじゃあ、決まったらいつでも連絡くださいねー!」

みほ「わかりましたー!」

優花里「ありがとうございましたー!」


ブロロロロロ…




沙織「はぁ、終わったぁー」

優花里「ようやく、ひと段落つけますね」

みほ「みんな、今日は迷惑かけて本当にごめんね」

麻子「ん。西住さんが無事ならそれでいい」

華「みほさん、よほど思い詰めていらしたのですね」

みほ「うん……」


沙織「そういえば麻子。アンタみぽりんを助けに行ったとき、珍しく積極的に動いてたじゃない」

優花里「ご友人の船舶科の方に事情をお伝えしてから、下のブロックまで直行されるまで、素晴らしい手際と行動力でした!」

みほ「冷泉さん、ありがとう」

麻子「西住さんには借りがあったしな」

優花里「借り……でありますか?」


沙織「あーそうだ! みぽりんから聞いたわよ。学校行く途中にアンタ拾ったせいで遅刻しちゃったって」

華「あら、沙織さんの幼馴染というのは、冷泉さんの事でいらしたのですね」

沙織「もーいいかげん早く起きれるようにしなさいよねー」

麻子「無理だ。起きれるわけがない」

みほ「すごい自信だね……」


沙織「だったら麻子も戦車道やる? 遅刻欠席、ぜーんぶ免除してくれるんだって」

麻子「……なん、だと?」

沙織「アンタ出席日数足りなくて進学でるかヤバいんでしょ? 悪いこと言わないから、書道やめてコッチに移りなさいよ」

麻子「うううう……」

優花里「ぜひ! 私からもお願いします!」

華「わたくしも冷泉さんがご一緒してくださいますと、とても心強いです」

みほ「私からもお願いします、冷泉さん」

麻子「……考えておく」



優花里「結局、戦車を見つけてくるのは、我々が一番最後になってしまいましたね」

麻子「まだ戦車にもなっていないけどな」

沙織「やっぱりなんか、部品だけ見ても全然戦車には見えないんだけど……」

みほ「でも、戦車道の競技用車輌っていうことは確かなの」

華「それは、先ほどみほさんがお話されてた?」

みほ「うん、搭乗者を守る内装のカーボンコーティング。私が落ちた先にこれが無かったら、本当に大ケガしてたかも……」

華「そうなっていましたらもう、きっと学園長の首だけでは済みませんでしたね……」

麻子「廃校になってたかもな」

みほ「ぅえっ!?」

優花里「そ、そんなのやです! せっかく皆さんとお知り合いになれたのに」


杏「廃校がどうしたってー?」

沙織「うわ、出た」


桃「我が校は廃校などにはならん。不穏なことを言うんじゃない!」

柚子「そ、そうだよ……そんな事には絶対ならないから……ね?」

みほ「生徒会のみなさん……」


杏「やーやー、格納庫に何か色々運ばれてきたって報告があったから来てみたんだけどさー。どういうことか説明してくれる?」

みほ「えっと……」

桃「我々は、この学園艦のどこかにある戦車を見つけて来いと言ったはずだ……」

みほ「はい……」

桃「だというのに、なんだこのガラクタの山は! 戦車はどうした!?」

柚子「桃ちゃん、落ち着いて」

みほ「これは……」

優花里「これは戦車のパーツです!」


桃「見ればわかる! ……いや、実際にどこからどこまでが戦車なのかわからんが。とにかく、部品だけ拾ってきても仕方あるまい」

沙織「だからさ、これからこの部品を組み立てて戦車にするところなんですけど」

桃「馬鹿なことを言うな! 部品も全部足りるかどうかもわからん上に……、それに完成までにどれだけ掛かるというんだ。全国大会までの時間はもうそんなに無いんだぞ!? 」

華「けれども、戦車がなければわたくし達は試合にも出ることができません」

麻子「このままだと大会出場も夢のまた夢だな」

桃「ううっ、しかしだなぁ……」

柚子「みんな、本気で言ってるの?」


杏「西住ちゃんさー」

みほ「はい」

杏「この戦車ってさ、戦車道の試合出れんの?」

みほ「それは……この戦車がレギュレーションを満たした戦車であるかどうかは、実際に完成させるまでわかりません」

桃「おいっ、戦車道連盟が決めた規定に反した戦車だったら出場すらできんのだぞ?」

みほ「はい。でも、本体の内装は戦車道に使われるカーボンでコーティングされていますし、撃破判定の装置も搭載されていたんです」

柚子「それじゃあ、この戦車は……」

みほ「競技用に作られたか、もしくは改修された車輌だということに、間違ない筈なんです」

桃「我々が戦車道に関して素人だからといって、虚言は吐いていないだろうな」

みほ「はい、誓って」

杏「んー……」

柚子「会長……」


杏「おっけー。んじゃーちゃっちゃと組んじゃおっか」

桃「会長!」

柚子「桃ちゃん。会長と、西住流の家の人がああ言ってるんだし」

桃「わ、わかってる! あとここで桃ちゃんはやめろ!」


華「戦車の組み立てを、許可していただけるのですか?」

杏「うん、いーよ。時間も無いしさ、やれるだけの事はやっとこーよ」

みほ「はいっ、ありがとうございます!」

優花里「ありがとうございます!!」

沙織「まあ、許可なんかなくてもそのつもりだったし」

麻子「珍しく積極的だな」

沙織「だって、こういうの知ってたらカレシと共通の話題でおしゃべりに使えるじゃん?」

華「彼氏もいないのに?」

杏「まー彼氏とかそういうのはどうでもいいんだけどさ」

沙織「どうでもいいって言ったー!」

麻子「間違ってはいない」

華「そうですね」

優香里「辛辣ですねお二人とも……」

桃「こら、私語はつつしめ」


杏「んで、西住ちゃん。近日中に他の学校と親善試合でもしようかと思ってんだけどさ、それまでには間に合いそうかな?」

優花里「もう試合ですか!?」

桃「当たり前だ。会長がおっしゃったように、我々に残された時間は少ない。……もし、完成が試合までに間に合わなかったら、わかってるだろうな貴様ら」

沙織「どうするっていうんですか?」


桃「出席日数の免除や、最初に提示したその他諸々の待遇は無しだッ!」

麻子「それだと戦車道を選ぶ理由が無いじゃないか……」

沙織「大丈夫だって、試合が始まるまでにパッパと作っちゃえばいいんだし」

華「みんなで頑張りましょう?」

柚子「自動車部の皆さんには私たちからも、西住さん達のサポートをお願いしておきますね」

みほ「はい、ありがとうございます」

優花里「必ず間に合わせます! あ、あと、それから……西住殿」


みほ「……うん」

沙織「えっ、あのこともう話しちゃうの?」

麻子「どうせバラすなら今のうちだ」

華「なんだか、ドキドキします」


桃「なんだ貴様ら。急にコソコソと」

柚子「どうしたのみんな?」

優花里「あのですね……ひとつ申し遅れましたが、この戦車なんといいますか……」

杏「なになにー?」

桃「勿体ぶらずにさっさと言え!」


沙織「喋るんです」

桃「は?」

柚子「……ごめんなさい。よく聞こえなかったから、もう一度お願いできるかしら」


華「この戦車さん、お話ができるんです」

桃「はぁあああ!? そんなわけあるか!! 馬鹿にするのも大概にしろ!!!」

柚子「桃ちゃん、落ち着いて」


みほ「すみません。生徒会の方たちにご挨拶と自己紹介を、お願いします」


《ラジャー》


   ヒュウウウウ……

柚子「も、桃ちゃん!?」

桃「なっなんだ!?」


《ハロー、モモチャン》


柚子「ひっ」

桃「ひええっ!?」ビクッ


《私はガンヘッド。UHEDシリーズ──サージェント・ユニット:507型 》


みほ「この戦車、推論型コンピュータが搭載されているんです。私も初めて見ました」


柚子「……」

桃「」

杏「……あらー」

一旦ここまで
こんな感じでしばらく組み立てていきます


─ 回収されてから数日後 ─

───
──


▼大洗女子学園/自動車部作業場


ナカジマ「ホシノー。そっちはどおー?」

ホシノ「いつでもいいよ。秋山さんは?」

優花里「燃料タンクの接続完了しましたー!」

スズキ「よし! それじゃあ動力テストいってみよーか。ツチヤー」

ツチヤ「いまやってまーす! 五十鈴さんどうですか?」

華「はい、計器類の確認は終わりました。いつでもどうぞ」

ナカジマ「じゃ、いくよー! エンジン始動!!」

ホシノ「了解、エンジン始動!」


フィイイイイイ……


優花里「燃料漏れ無し! パイプラインは問題ありませんー!」

ナカジマ「りょうかーい! ツチヤー」


ツチヤ「どうです? 五十鈴さん」

華「はい、一番高い数字のところから、計測器に動きは無いようです」


ツチヤ「先輩ー、いい感じだよー!!」

ナカジマ「うんうん。安定して出力できてるみたいだね!! ホシノー」

ホシノ「了解、一旦切るよー!」

キュウウウウウ……

ナカジマ「動作テスト終わり! みんなさんお疲れさまでしたー!」

優花里「お疲れ様ですー!」

ホシノ「はい、お疲れ様」


華「ふぅ……」

ツチヤ「五十鈴さんもお疲れさま」

華「ええ、お疲れ様でした」

ツチヤ「ごめんね。こういったテストするのに、あっちの格納庫じゃ設備が足りなかったからさ。結局私たちの作業場までパーツ全部持って来ちゃった」

華「いえいえ。わたくし達はこういった作業は初めてなので、自動車部の皆さんにお任せするしか」


ガラガラ …

沙織「お弁当作ってきましたー!」

優花里「武部どのー!!」

沙織「わ。ゆかりん急に大っきい声でびっくりだよ!」

優花里「す、すみません……さっきまで騒音が響くところに居ましたので、少々耳が遠くて」

華「おかえりなさい沙織さん」


ホシノ「ありゃ。もうこんな時間か」

ナカジマ「作業に集中してるとあっという間だね。ツチヤー、休憩入るからスズキと冷泉さんと、あと武部さんの連れの子も呼んできてー!」

ツチヤ「ほーい」


───
──


優花里「じゃあ今の状態って、壊れたジェネレーターの代わりに、外から給油したガソリンを補助燃料として代用してる……って事なんですか?」


《その解釈で差し支えありません》


ホシノ「やれやれ。燃料タンクを探しても外付けのボンベみたいなのしか見当たらなかった訳だ」

優花里「給油口はあくまで緊急用って感じで、燃料はそんなに入らなそうですよね」

麻子「差し支えだらけじゃないか」

ナカジマ「まあまあ。そこは皆で何とかしていきましょう」

ツチヤ「武部さんの竜田揚げうまー!」

沙織「でしょでしょ? いっぱい食べてっ」

スズキ「いつもありがとうね、武部さん」


ナカジマ「うーん。それにしても2020年代辺りの戦車ですかー」

ホシノ「年代だけで言えば骨董品みたいな代物だね」

ツチヤ「そんなこと言ったら私達が今レストアしてるコスモなんて、遺跡の発掘物と変わらないんじゃない?」

ホシノ「あれは保存状態が良かったから特別なの」

スズキ「テラダ先輩の執念だね」

沙織「こすも?」

華「壮大さ感じさせるお名前の戦車ですね」

ツチヤ「いやいやコスモスポーツは戦車じゃなくて自動車だから!」

スズキ「戦車でいうと、自衛隊の61式が現役で動いてた頃の自動車になるのかな?」

優花里「おー! 61式が発掘物だとすれば、戦車道に出られる車輌なんてほとんど化石ですよー!」

沙織「ゆかりん今日も活き活きとしてるよ……」

ねこにゃー「戦車マニアと自動車マニア。通じる道は一緒みたいですにゃ」


スズキ「だけどアレ……、いや"彼"のコックピット周りの内装って、80~90年代っぽいレトロな雰囲気で妙にチグハグな印象なんだよね」

麻子「モニターもブラウン管だったしな」

ねこにゃー「電卓みたいなスイッチとか」

ホシノ「正規品じゃない寄せ集めのパーツで組み立てたような継ぎ目を、どこかしらで見かけるよ」

ナカジマ「そうそう。給油口とパイプラインも見た感じ、誰かが後で付けたような手作り感がするんだよねー」

ツチヤ「なんか酒臭かったよ給油口……」

ホシノ「ん? ということはアルコール系の液体燃料でもいけるの?」


《はい。私の動力炉は外部から供給するあらゆる燃料を分解し、本体を稼働させるエネルギーとして代謝することができます。アルコールでも》


スズキ「つまり、燃やせる物ならなんでも燃料にできるってことか……凄いなそりゃ」

華「便利な身体でいらっしゃるのですね」ヒョイパク ヒョイパク

沙織「華はちょっとセーブして。いっつも言ってるけどお願い、少しでいいからその手を止めて」

優花里「五十鈴殿専用のおかずエリアが凄いスピードで空になっていきます……」

ツチヤ「ロータリーも真っ青な消費ペースだねー!」


ナカジマ「コックピットのスペースは、出来る限り広げたいところですね。今のままだと皆さん乗れなさそうですし」

ツチヤ「てか、あのスペースはどう見ても一人乗りでしょ」

華「男の隠れ家、といった印象でしたね」

沙織「え、何でそんな事わかるの華!?」

華「いえ、実家に居たとき少々」

沙織「少々って何!? ちょっと詳しく聞かせなさい!」

麻子「後にしてくれ」


《"現役"だった頃の私は、当初から無人機としての運用を想定し設計されていました。しかし、とある作戦中に大破した私のボディを、当時のチームメイトが"現場"で修復をおこなった結果、現在の有人仕様となりました》


ツチヤ「コックピットも即興の手作りとかマジですか……」


《はい。その他に見られるパーツのアンバランスさも、そのときに受けた処置の名残りです》


優花里「戦士の勲章ですねー! 私そういうの憧れますっ!」

ホシノ「いやいや、秋山さん女の子なんだから……」

ツチヤ「ホシノ先輩の口から女の子なんて言葉が出ることも有……いたいたいチョーク決めながら工具でグリグリするのやめて」


ねこにゃー「ツチヤさんの顔色がレッドゾーンですにゃ」

華「あれは大丈夫なのでしょうか」

スズキ「うん、大丈夫だよ。いつものことだし」


優花里「このような戦車があったなんて。なんていうか浪漫を感じますねー!」

ナカジマ「そうですね。今の私たちの世代でも未だに再現できない……ええと、なんて言うのかな。……ホラ、あれだ。中二病じゃなくて」

ねこにゃー「黒歴史」

ナカジマ「そう、それ! そういった歴史の影に埋もれたマシンに触れられるって、私たちにとって凄く貴重な体験になるんですよねー」

華「それなら、今こうして戦車を組み立てているわたくしも気持ちは一緒です」

沙織「私は華の実家の体験が知りたい……!」

麻子「後にしろ」


《皆さんにとって私という存在は、ベーブ・ルースのサインボール相当の扱いになるのでしょうか》


沙織「べーぶるーすって……だれ?」

麻子「よせ。今はそいつの野球トークを聞きたくない」

ねこにゃー「一種の洗脳マシーンでしたにゃ……」

ナカジマ「何か話し声は遠くから聞こえてたけど」

スズキ「うん。気がついたら作業中にノンストップで語り尽くしてたよ……」

ホシノ「そいつは……是非ともご遠慮願いたいな」


《ベーブ・ルースをご存知でない?》


沙織「ごめん、後にしてくれる?」

優花里「武部殿!?」

沙織「えーだって今のこの子、お隣のお爺ちゃんが長話はじめる雰囲気とそっくりだったんだもん」

ツチヤ「武部さん急にギアチェンジするから怖いっす……」

ねこにゃー「ああでも……お爺ちゃんの長話……」

スズキ「大体合ってる気がする……」


ホシノ「まあ何にせよ、エンジンは問題無く動くことはさっきのテストで分かった」

ツチヤ「問題なのはやっぱ燃料かな」

ナカジマ「うん、とりあえずはガソリンでも動くみたいだけど……なんか効率は悪そうだねぇ」

ホシノ「装甲削って軽量化する?」

優花里「やー、それは戦車道のレギュレーション的にどうなんでしょう」

沙織「てか、削ったところ撃たれて穴が開きそうだから嫌なんですけど」

ホシノ「大丈夫、大丈夫。要は例のコーティングさえ残してればいいんでしょう?」

ツチヤ「フロント周りを肉抜きして冷却効果もアップ!」

優花里「本気だこの人たち……」

ねこにゃー「ほっといたらミニ四駆感覚で改造されるにゃあ」

麻子「勘弁してくれ」


ツチヤ「あ、そうだ。レギュレーションっていえば年代縛りどうすんの? ガンちゃんの製造年月日ブッチ切りの2000年代だよ?」

優花里「ガンちゃんって……」

ナカジマ「えへへ、可愛いでしょう?」


沙織「あーそれなら確か、今日の練習に来てるイケメン教官に相談するって、みぽりんが言ってたような」

ツチヤ「へー、そんな人が来てたんだ。……イケメン?」

麻子「女のイケメンな」

華「来訪初日に学園長の自動車を戦車で轢き潰した、最高にロックなイケメンですわ」ウットリ

スズキ(ときどき五十鈴さんの事が分かんなくなるときがあるよ……)


ホシノ「ふーん。それじゃあまあ、そっちの方は何とかなりそうなのかな」

ねこにゃー「となると、現状の大きな問題はやっぱ燃費ですかにゃ」

ナカジマ「うんー。装甲じゃないにしろ削れるところ削ってさ、ちょっとでも効率よくしなきゃですね」

スズキ「それは一旦納車してからのアフターサービスでいいんじゃない? とりあえず電気系統の配線とか制御系のソフトウェアでも、調整次第で結構変わってくるし」

ナカジマ「そだね。ソッチ系の担当はスズキと、冷泉さんと、それから、えっと──」

ねこにゃー「あ、ボク猫田です。よろしくです」


ツチヤ「普通に馴染んでるけど、今日来たばっかの新人さんだよね」

ねこにゃー「はいです。お世話になります」

ツチヤ「よろしくねっ」

ホシノ「お、早速ツチヤが新人イビリしてるぞ」

ツチヤ「人聞きの悪いこと言わないでくれるかなぁ!」

ねこにゃー「ぼ、ボクのために争うのはやめてー」

優花里「ツチヤ殿は相変わらず弄られてますね……」

ナカジマ「ウチの可愛い後輩ですから」

スズキ「ナカジマ。こっちは冷泉さんと猫田さんに手伝ってもらってるから順調だよ」

華「"コンピューターに詳しい人を知ってる"……と沙織さんがおっしゃっていましたが、猫田さんの事でいらしたのですね」

ねこにゃー「やー。詳しいといっても自宅でネトゲしてるくらいなのですが……」

麻子「沙織にかかれば、機械の電源が付けられる人間は誰でもパソコンの先生か」

沙織「そんなことないもん!」


スズキ「いやいや、猫田さんはエンジニアとしてのセンスがバッチリあるよ」

ねこにゃー「ええっ」

ツチヤ「そーなの?」

ホシノ「詳しく聞きたいね」


スズキ「うん。彼の巨体を見れば分かるんだけどさ、もの凄い数の配線が何種類もあるんだよ」

ツチヤ「てか、見かけによらずシャレにならないほど精密機器の束だよ」

ナカジマ「はい。数えようとした私はチェックリスト作るの諦めました」

ホシノ「しっかりしてよリーダー」


麻子「リストは代わりに作っておいた」

ねこにゃー「さ、さすが学年主席のしと」

ツチヤ「ナカジマ先輩はもう冷泉さんに足向けて寝れないね」

ホシノ「むしろ土下座して謝ったほうがいい」

ナカジマ「心の底からありがとうございました!」

麻子「うむ」


沙織「こら、先輩なんだから調子に乗らないの」

ナカジマ「なんなら私が冷泉先輩って呼んでもいいよっ!」

麻子「うぐっ……!」

沙織「あ、すみません。この子そういう話題に今ちょっとナイーブなんで……」

ナカジマ「あ、うん。何かわかんないけどごめんね……」

ツチヤ「学年主席の冷泉さんに何があったの?」

ねこにゃー「出席日数……」ボソッ

スズキ「あー……」

ホシノ「私たちには殆ど無縁な問題だなあ」

優花里(あ、この人たち授業にはちゃんと出てるんだ……)


スズキ「まあ話を戻すとね、そんな膨大な数の部品を一つ一つちゃんと管理してくれる冷泉さんも凄いし、それを猫田さんが非情に効率よくコンパクトに纏めてくれるんだ」

ナカジマ「へえー、そりゃすごいや!」

スズキ「気になってたデッドスペースは殆ど潰せるかもしれないね。コックピットまわりは思った以上に余裕のある仕上がりになりそうだよ」

ツチヤ「冷泉さん、猫田さん、グッジョブ!」

優花里「グッジョブです!」

麻子「おう」

ねこにゃー「あ、あざす…」


沙織「ほらーやっぱり私の女の感に間違いはなかった!」ドヤッ

華「女の感はどこで役に立ったのですか?」

一旦ここまで
時代背景は適当にでっち上げてるので
あまり本気になさらずに


─ さらに数日後 ─

───
──



▼大洗女子学園/戦車格納庫前


ナカジマ「おーらーい! おーらーい!」




カエサル「破壊者の風格だな」

エルヴィン「うむ」

おりょう「観音様の後光が差してるぜよ……」

左衛門座「ありがたやありがたや」ナムナム



あけび「おっきいですねキャプテンー」

妙子「おっきーい」

典子「いーなーこれだけ大っきい選手だったらブロックスパイクし放題だろうなー」

忍「キャプテン、まずコートに入れないと思います……」



ぴよたん「こんな戦車作ってたなんて、ねこにゃーさん凄いっちゃ!」

ももがー「ねこにゃーさんすごーい」

ねこにゃー「い、いえいえボクはちょっとしか手伝ってないんで……あ、お二人ともリアルでは初めまして」


柚子「これは、本当に戦車なんでしょうか……」

桃「やっぱり騙されてるんじゃ……」

杏「大丈夫なんじゃないー? とりあえず完成したら、蝶野教官と一緒に連盟の本部へ直接見せに持って行くよ」

ソド子「ちょっと生徒会長!」

桃「なんだお前たち」

ソド子「何だじゃありません! こんな大きな戦車を移動させるなんて聞いてなかったんですけど!」

ゴモ代「他の生徒が近づかないように誘導するの大変でした」

パゾ美「大変でした……」


ソド子「もーこれじゃあ校則で定めた規定の車輌サイズを超えてるじゃないですか!」

杏「まーまー固いこと言わないでさー」

麻子「そんな校則は無かったと思うぞソド子」

ソド子「戦車道が復活するって言うから新しく作ったの! 冷泉さんは黙ってなさい!」

杏「そだっけ? まーこの戦車の前じゃ意味ないと思うから、そういうのは適当に変えといてよ」ヒラヒラ

桃「早急に対応するように」

ソド子「そんなー!」

ゴモ代「またあの生産性のない協議を100人以上の風紀委員みんなでしなきゃいけないの?」

パゾ美「天井のシミでも数えてたほうがマシです……」

柚子「下校前にはちゃんと提出してね?」

ナカジマ「今後は格納庫の中で作業しますし。試合のとき以外そんな頻繁に外へ出す事はないと思いますよ?」

ホシノ「うん。ここまでくればもう大丈夫」

ソド子「そういう問題じゃないのー!」


ツチヤ「搬入終わりましたー!」

スズキ「工具も今から持ってくるぞー」

ナカジマ「わかったー! よろしくねー」


華「いよいよですね」

麻子「さっさと完成させないとな」

みほ「うん」

優花里「バレー部や歴女のみなさんも、組み立ての手伝いを申し出てくれました!」


梓「私たちも、邪魔にならないようにお手伝いします!」

あや「わからないことがあったらネットで調べます!」

桂利奈「かんばりましゅ!!」

優季「やだぁ桂利奈かんでるー」

あゆみ「沙希も頑張るって言ってます! あ、わたしも頑張りまーす」


沙織「みんなぁー頑張るのはいいけど、ケガだけはしちゃだめよぉー」


「「「はあーいっ!」」」


沙織「やーん何なのこの子たち可愛すぎー!」

華「沙織さん、モテ期ですね」

麻子「引率は沙織に任せるか」

みほ「あはは……」


ナカジマ「よーし。他の学校との試合まであと1週間ちょっとだけど、みんなで頑張って乗り切りましょー!」


「「「 おー!! 」」」

───
──


─ 1日目 ─


ホシノ「操縦手は目視での運転が原則らしいから、使わないモニター類は取っ払って腹部あたりに覗視孔を開けてみたよ」

ツチヤ「みんな顔出しやすいように窓とかもいろいろ作ったよー」

優花里「それでも……やっぱりギリギリですね」

あけび「わあっ、冷泉先輩サイズぴったり!」

ツチヤ「ちっちゃいのは優良ドライバーの素質だね」

麻子「あんまり嬉しくない……」

スズキ「私なんか、何乗っても窮屈だから冷泉さんが羨ましいよ」

あけび「私も先輩が羨ましいですー」

ねこにゃー「ボクもー」

麻子「むぅ」



あや「桂利奈、それじゃなくて、こっちのホースじゃない?」

桂利奈「あい!」ブスッ

あゆみ「えー、こっちのホースだよー。ねえ優季?」

優季「わかんなーい」

桂利奈「あい!」ドスッ

あや「ネットでアンケート取ってみるからちょっと待っててー」

桂利奈「あいい!」ドドスッ

───
──


─ 2日目 ─


妙子「キャプテンー、燃料タンクごと私も縛られてるんで、一旦そのベルト緩めて……いや、ちょっ、根性じゃなくて……痛だだだだだ!!」

忍「あけびー! 今すぐキャプテン止めてー!!」



ソド子「いい? 夜間の作業が許可されてるからって、戦車なんかでコンビニ行って買い食いするのはダメよ。それと、夜更かししたからって身だしなみは崩さない。顔はちゃんと洗う!」

紗希「……」

ソド子「それから、気が立ってるからってケンカするのはもってのほか! もちろん、家に帰らずに部室や飼育小屋で寝泊まりするのなんて絶対禁止ッ!! わかってるの冷泉さん!?」

麻子「……ふっ、わかった」

紗希「……」ニャ

ソド子「なにが可笑しいのよ!」

麻子「今言われたことは大体ソド子で想像できた。全部気をつけよう」

紗希「……」コクコク

ソド子「何よー! 冷泉さんなんて知らないんだからーー!!」



ねこにゃー「立派なリアル戦車乗りを目指して……」

ももがー「バレー部のみんなに習って基礎トレで体を鍛えるなりぃ……」

ぴよたん「ふ、腹筋がもう限界ぴよ……」ガクガク

典子「根性で立ち上がれー!!」


《まずは基礎的な柔軟体操から始めた方が良いのでは?》


───
──


─ 3日目 ─


ナカジマ「ホシノー。ノーズの先っぽ、どこ行ったか知らない?」

ホシノ「ノーズ? なんだそれ」

ナカジマ「ほら、センサーから伸びてる銀色の長いホースみたいなやつ」

ツチヤ「ああ、それなら五十鈴さんが──」


華「……」ブンブンブン …

優季「…♪」カン カン カン カン …


ツチヤ「無心の表情で振り回してるよ。一年の子が後ろでリズムとりながら」

ナカジマ「何あの異空間」

ホシノ「五十鈴さんは、もうちょいしっかりしてる子だと思ってたんだけどなあ……」


《これ以上の負荷は作動不良の原因となります。即刻中断を──》


───
──


─ 4日目 ─


沙織「ねぇねぇみぽりん、みんなでクッション買いにいかない?」

みほ「く、クッション?」

ナカジマ「ああ、それは悪くないかもしれませんね。ドライバーも足腰守るのは大事ですから」

沙織「でしょでしょ? 乗ってる途中できっとお尻痛くなってくると思うし」

華「芳香剤もあると嬉しいですね」

みほ「と、とりあえず、……あっちの方が落ち着いたら相談してみようか?」

沙織「なんか、あっちは終わる気配がしなさそうなんだけど……」



《貴女たちの現状は、全米女子プロ野球リーグで数々の成績を残した、ロックフォード・ピーチーズの華々しいエピソードが始まる瞬間を思い起こさせます》


カエサル「」
エルヴィン「」
左衛門佐「」
おりょう「」


《彼女たちは1943年のリーグ創設から12年の運営期間中に4度の優勝を飾り──》


梓「すごい、歴女の先輩たちが何も言い出せずに圧倒されている……」

ツチヤ「野球バカの偏ったウンチクについて行けないだけだと思うよ?」

───
──


─ 5日目 ─


ナカジマ「38tのリペイント完了しました!」

桃「うむ、ご苦労」

柚子「会長が無理言ってすみませんでした」

ナカジマ「いえいえー何かあればいつでもどうぞー」


スズキ「いや、こんな事してる暇があるなら、先に内装のチェック終わらせたかったんだけど……」

ホシノ「よく考えなくても、こんなもん試合の前日でよかったんじゃないか……」

ツチヤ「下儲けの辛いとこだねー」




優花里「あああああM3が! Ⅲ突があぁ!! 皆さん何てことを!?」

華「あらあら」

麻子「目が痛い……」

沙織「ほらーやっぱ私たちもカワイイ感じに塗り直そうよー」

優花里「絶対ダメですぅうう!!」

みほ「……どうする?」

《お好きに》

───
──


─ 6日目 ─

ナカジマ「カメさんチームの車長さーん、ちょっと確認したいことがあるんですけど」

杏「うん? なんだいそれ」

ナカジマ「武部さんが手の空いてる子達と一緒に、皆のチーム名を考えてるんです。生徒会の38tはカメさんチーム」

杏「えー何か微妙」

ナカジマ「あはは。今はパーソナルマークのイラストコンペを開催中ですよ」

杏「みんな余裕があって頼もしいねー」

ナカジマ「でしょう?」


みほ「それで私たちのチーム名が……」

《イエス。本作戦における当機のコードネームを"オライオンズ"から"アンコウ"に更新しました》

沙織「自分で付けといて何だけど……やっぱ似合わないわ」

麻子「おい」

華「それは流石に無責任では……」

優花里「でも、ご本人は心なしか気に入ってるみたいですね」

───
──


─ 試合前日……の深夜 ─


《試合開始時間まで残り8時間を切りました》


ツチヤ「こんな時間から主砲の取っ換えなんて本当に出来んの? もう今日の朝すぐに試合だよ!?」

ホシノ「できるかなじゃなくてやるんだよ! 文句言う暇あるなら手ぇ動かせ!」

スズキ「あー砲塔がちっちゃいから装填の構造とかどうしたらいいかわからん!」

ナカジマ「砲塔っていうか、砲頭だよね」


ホシノ「ツチヤー、クルマ出してⅢ突見に行って来い! アレも確かコイツと同じ75mmだったはずだから!」

スズキ「私も行くからちょっと待ってー! くそー迂闊だった。20mmの小口径だし大丈夫だと思ってたのに」

ナカジマ「いやーガンちゃんの主砲に合いそうな規格の弾薬がどこも取り扱ってなかったのは盲点だったね」

ツチヤ「他のパーツ発注してたときに気づいてよ!!」


スズキ「盲点と言えば、こんな近くに戦車の砲身があったなんて全然気づかなかった」

ナカジマ「フロントライト下暗しだねー。散々走り回って結局ここにあったんだもん」


ホシノ「一体どこのバカが洗濯干すのに使いやがったんだー!!」

ツチヤ「ホシノ先輩に決まってるじゃないかー!!」

ホシノ「ツチヤは後で泣かすーー!!!!」

ツチヤ「なんでーーーー!!!!」

───
──

一旦ここまで

───
──


─ 試合当日 ─

▼大洗町/戦車道親善試合会場


麻子「──」Zzz...


みほ「──環境センサー作動。光学スコープ、オン。1番、2番……問題なし」

《ナンバー3作動不良、ナンバー4は改造によりカット》


みほ「了解。対物センサーチェック」

《対物センサー作動》


みほ「赤外線センサーチェック」

《赤外線センサー作動。なお、各種センサーの広域展開は、チームメイトの安全確認に限定して使用が許可されています》


みほ「了解。後部ウェポンラックは……特に動かさないからポジションはこのままで」

《ALL Right. ALL Green. 全システムのチェックを完了しました》


みほ「ふう。麻子さんすごいな、全然起きないや」

麻子「……オバケが……緑色の目玉のオバケが……」ウーン


みほ「……でもちょっと、うなされてるっぽい?」


《ミポリン》

みほ「うん?」

《これはあなたが選んだルートであり、私が望んだ選択肢でもある》

みほ「うん、そうだね」

《しかし、ここから先はあなたが望んだ結果になるとは限らない。未来は誰にも予測できません》

みほ「いいの。どっちにしたって結局、私たちはあなたに頼るしか他に道は無かった」

《それが、あなた方がこれまで築いてきた道を壊すことになっても?》

みほ「……うん、私はもう決めたから」

《わかりました。あの墓場同然のスクラップ置き場からあなたは最後まで私を見捨てなかった。だから私は、私の持てる全ての機能をもってあなたのバックアップに尽くします》

みほ「……ありがとう」


《私からひとつだけ》

みほ「うん?」

《これから始まる試合の開幕だけは、スタンディングモードでお願いします》

みほ「ふふっ、わかった……あなたがどれだけ凄いのか、皆に見せてあげないと」


麻子「……」


みほ「私もひとつだけ、いいかな?」

《なんでしょう?》

みほ「どうして私だけミポリンって呼──」

 パカッ

優花里「西住どのー! 外装のチェック完了でありますっ」

みほ「あ、ありがとう優花里さんっ」

華「車内点検をみほさん一人にお任せして申し訳ありません」

みほ「ううん。私も初めて乗る車輌だから、いろいろ憶えておかなきゃ」


沙織「おまたせーみぽりん……って麻子、まだ寝てるし」

麻子「やめろウ●コババア……その手に触れたら教会が消えちゃうなんて……ウソに決まってるんだよ……」ウゥ

沙織「どんな夢見てんのよ……」

華「悪夢にうなされてるようですね」

優花里「無理もありませんよ。布団から出てすぐ目の前に、サージェント殿の右腕がでーんと待ち構えてたんですもん」


《出来得る限りソフトに起こしたつもりだったのですが》

みほ「あはは……そのあと麻子さん気絶しちゃったじゃない」

沙織「麻子はねー。こう見えて苦手なモノいっぱいあるから」


華「優花里さん、先ほどおっしゃっていたサージェント、というのは?」

優花里「戦車道連盟に登録された戦車殿のお名前であります。正式名称は……えっと」

みほ「"M5R-サージェント"……だったかな? 制式名とか型番とか色々ややこしいみたいなんだけど、とりあえずこの名前に落ち着いたんだって」


《今後、試合中に撃破されたり、走行不能判定を受けた際に、この名称でアナウンスされます》


沙織「試合直前だってのに不穏な事言わないでよ……」

優花里「しかも何でちょっと嬉しそうなんですか……」


華「それにしても、お役人の方々をよく説得させられましたね」

《予測される128通りの球種(質疑)から、選出した1937通りのスィングパターン(応答)で迎え打ちました。結果は皆さんが聞いての通り、6回裏途中でこちらが優勢のままコールドゲームです》


みほ「話が終わった後の理事長と文科省の人、死んだ目になってたのはそういうことだったんだ……」

沙織「言ってる意味はわかんないんだけど、何かとんでもないことやらかしたってのはわかった……」

華「"無理ゲー"、と言うものだったのでしょうか? 先方からしてみれば」

みほ「うん……間違ってはないかも」


優花里「西住殿は、お立会いにならなかったのですか?」

みほ「うん。角谷会長がね、私は別室で待ってるようにって。私が同席しても、あまり役には立たないだろうし」

華「そのようなことは無いと思うのですが……」

沙織「てか、戦車本人に説得させるとか普通じゃ思いつかないよね」

麻子「正気の……沙汰じゃ……ない」Zzz...

みほ「まあ、思いついたのが蝶野教官だし。……麻子さん起きた?」

沙織「んー、まだ3分の2くらいは寝てるかも」


華「だけど、こうして無事に認可されて本当によかったですわ」

みほ「うん、そうなんだけど」

優花里「サージェント殿が出場できる試合は今年の全国大会までなんですよね……」

《今年度に開催される戦車道全国高校生大会へのエントリーを最優先した結果です》


華「あなたは、それでよかったのですか?」

《はい》


沙織「私たちは納得してないんだけど」

優花里「そうですよー」

沙織「せっかくみんなで組み立てたのに。麻子だって、あなたのためにすっごく頑張ってたんだから」

みほ「沙織さん……」

《そう悲観することはありません。戦況は常に流動的です》

華「どういうことでしょう?」


《これから我々が叩きだすスコアによって、出場に関する有益な条件を更に取り付けることは可能です。これは戦車同連盟と文部科学省の双方の上層部から了承を得ています》

優花里「それは私たちの戦果次第、ということですか?」


《はい。ですから今は目の前のゲームに集中しましょう。未来の行き先を考えるのは、それからでも遅くありません》

沙織「そ、そうだよね。今は目の前のイケメンに集中しなきゃ!」

麻子「いや、だから試合に集中しろ」

華「あら、やっと起きられました?」

麻子「酷い夢だった……」


みほ「あはは……おはよう麻子さん」

麻子「西住さん……」

みほ「ん? どうしたの?」

麻子「……いや。やっぱり何でもない」

みほ「そっか」

沙織「もー寝ボケてんじゃないの。そろそろ目覚して」


桃『西住、もうすぐ試合開始だ。お前も降車してこい』


みほ「わかりました……っと、その前に」

沙織「どしたの?」

みほ「ううん、ちょっとだけね。……あんこう、喉頭マイクの最終チェック」

《マイクテスト完了。回線を全車輌へオープンにします》


みほ「了解。各車へ、Aチーム『あんこう』の車輌はこれより、スタンディングモードへ移行します」

《 Okey, You got it Boss. 》


沙織「えー!!?」

華「あらあら」

ゴウン ゴウン ゴウン …


桃『おい西住! 何を勝手なことを──』

優花里「最高だぜぇぇぇぇ!!」

ゴウン ゴウン ゴウン ゴウン ゴウン …


みほ『すみません! 試合が始まったらまたすぐに戻しますから』

杏「ふーん。ならいいんだけど」

柚子「か、会長! 聖グロリアーナの人が……っ」



ダージリン「」

ダージリン「」 ガシャーン

ルクリリ「だ、ダージリン様ー!!」


───
──



▼大洗女子学園/自動車部部室


ももがー「──あ、向こうのリーダーぽい人が何か落したなり」

ホシノ「初披露だからね。きっとびびってるよ」

スズキ「あのシルエットは存在感あるからねー」

ナカジマ「あの人たち紅茶でも飲んでたのかな? 試合前なのに」

ねこにゃー「聖グロリアーナは、試合中も戦車の中で紅茶を飲んでるらしいですにゃー」

ぴよたん「それも一滴も零さないって噂だっちゃ」


スズキ「それは凄いね。姿勢制御とバランス感覚が相当鍛えられるよ」

ホシノ「今度ツチヤにやらせてみようか」

ナカジマ「えーやめようよー。前に似たような事やらせたら、運転席水浸しになって大変だったじゃん」

ホシノ「そりゃ後先考えずにドリフトかまして峠攻めようとしたアイツが悪い」


スズキ「そろそろスタートだ。皆が戦車に乗り込んでるよ」

ももがー「さあ、はじまるなりよ」

ぴよたん「うおーだっちゃ」

ねこにゃー「ふんにゃー」

ツチヤ「燃えるねぇー!」


ホシノ「あ、起きたなツチヤ」

ナカジマ「ツチヤー、寝ぐせが凄いことになってるよ?」

一旦ここまで


───
──



▽聖グロ/チャーチル車内

オレンジペコ「ダージリン様。こちらは最初のご指示通り、横陣で進行中です……あの、その後のお加減はいかがですか?」

ダージリン「ええ、もう大丈夫。むしろ絶好調でしてよ?」ツヤツヤ

オレンジペコ「そうですか」


『ダージリン様、10時方向に大洗の車輌が……例の重戦車です』


ダージリン「よろしい。全車、重戦車の方向へ転進」

アッサム「ダージリン体隊長、大洗の戦車に変化が──」

ダージリン「なんですって! それは見逃せないわ!!」

オレンジペコ「あ、あの、ダージリン様。不用意にお顔を出されてはっ」

パカッ

アッサム「……」

オレンジペコ「……」

バタンッ

ダージリン「ペコっ、貴女もご覧なさいあの戦車! 変形してるわよ変形! 変形ッ!!」キラッ* キラッ*

オレンジペコ「私もさっき見ましたから……何度も言わなくていいですってば……もー袖が伸びるから引っ張っちゃダメです」

アッサム(ペコ、負けちゃ駄目よ……)


ダージリン「何度見ても個性的な戦車で羨ましいですわ。うちにも一輌くらい寄越して頂けないかしら」

オレンジペコ「ああいう個性的すぎるのはちょっと……」

アッサム「大洗女子は、あれを戦車と言い張っていましたが……本当に一体何なのでしょうね」

ダージリン「アッサムもご存知なくて?」

アッサム「はい。試合前に開示された車輌のスペックと、我が校で持ち得るデータを照合中ですが……申し訳ありません、まだ私の方でデータを精査できておりません」

オレンジペコ「これまで存在しなかった、全く未知なる戦車……?」

アッサム「ええ、そういこと」


ダージリン「あっはっはっはっ! 良いですわそれ!!」

アッサム「え?」

ダージリン「データが無いというデータ。今日の中で最高のジョークよアッサム!」ケラケラ

アッサム「あ、ありがとうございます……」

オレンジペコ「お願いですから、素のアッサム様相手に天然でボケ倒すのはお止め下さい」

ダージリン「まあどのような戦車が御相手であろうと、わが校は受けた勝負から逃げませんの。──全車、砲撃開始」



みほ「麻子さん、なるべくジグザグに走行してください。こちらは装甲が抜かれる事はありませんが、撃破判定が低めに設定されているので主砲の直撃にはそれほど持ちこたえられません」

麻子「ほい」



ダージリン「思っていたよりやるわね」

アッサム「見た目以上に軽快な走行ですわ」

ダージリン「ペコ、この先の地形は?」

オレンジペコ「直前に高低差のあるブロックが待ち構えています。このペースで行けば、およそ6分後には到着するかと」

アッサム「見え透いた待ち伏せですこと」

ダージリン「よろしいですわ。どのような持て成しをされるのか、せいぜい楽しみにしていましょう」



沙織「絶対、河嶋先輩が最初に撃ってくるよ……」

みほ「そうはならないと信じたいんだけど……」

《それは絶望的なギャンブルです》



オレンジペコ「間もなくゴールのようです」

ダージリン「見掛けばかりで拙いエスコートね。この先もそれほど期待できそうにありませんわ」ハァ

オレンジペコ(飽きるのも早いなあ……)

アッサム「大洗の車輌、ペースを上げたようです」

ダージリン「こちらも速度を上げて。追うわよ」

ルフナ「了解」


みほ「それでは──いきます!」

… ガコンッ


ルフナ「大洗の重戦車、急停止……全速でこちらに後退してきますッ!」

アッサム「はあっ!?」

ルフナ「ぶつかります。衝撃に備えてっ!!」


 ガリガリガリガリ!

オレンジペコ「きゃあ!」

ダージリン「くっ……被害報告!」

アッサム「……チャーチルの左右側面、両サイドから車体を当てられた様です」

ルフナ「損傷はおそらく軽微。履帯に問題はありません」

ダージリン「両サイド……?」


『後続に大洗の車輌っ!? チャーチルの真後ろです!!』


オレンジペコ「そんなっ!?」

『さっきまでこちらが追いかけていたのにどうして──ッ!』

 ズカンッ!
      ヒュパッ

【聖グロリアーナ マチルダⅡ 走行不能!】


アッサム「一体何が……!」

ダージリン「ルフナ、急速旋回。アッサムは重戦車を狙いなさい。あれは私たちが引き受けます」

アッサム「はっ!」

ルフナ「了解!」

ダージリン「マチルダⅡ全車、全速前進。この先で待ち構えている鼠から速やかに片付けなさい」


『『『了解!』』』



ナカジマ「わー。さっきのあんこうチームすごい動きしてたよ!?」

ぴよたん「あんこう戦車が急に大股広げたかと思ったら、チャーチルを跨いで後ろに下がったずら……」

ホシノ「ガンちゃんの脚まわりだけ変形させながら、そのまま後続車目がけて急速バック……相当肝が据わってるか、頭のネジ飛んでなきゃできないよアレ」

ねこにゃー「冷泉さんとんでもないにゃー」

ナカジマ「やってのけた冷泉さんも凄いけど、あれをやるって踏み切った西住さんも相当だね」

ツチヤ「西住流熱いわー」


ねこにゃー「チャーチルの車幅がそれほどないからって、一歩間違えてたら大惨事にゃ……」

ももがー「あんこう戦車だいじょうぶなりー?」

スズキ「うーん、脚部の可動域を考えたらかなり無理してる動きに見えたんだけど……」

ナカジマ「ああ、でもガンちゃん。『身体硬いから体操しろ』って昔言われてから、ストレッチのイメトレは毎日欠かせてないって、前に言ってたっけ」

ホシノ「効果あるのかそれ……」

ツチヤ「あのおっちゃん絶対どっか天然入ってるよね」


《敵チームのコマンダーにマークされました》

麻子「どうする?」

みほ「ここで決着をつけます」

優花里「おおっ!」

沙織「えー!?」




ダージリン「あちらも仕掛けてくるようね」

アッサム「望むところ!」




みほ「……と見せかけて、本隊に合流しましょう。左にフェイントを入れたら、全速でチャーチルの右脇を抜けてください」

優花里「ぉお…?」

沙織「あれ、逃げちゃうの!?」

《"タイマン"を張るにはまだ早い。そうでしょう?》

華「はい。今はまだその時ではありません」

麻子「行くぞ」




ダージリン「」

アッサム「……ターゲット、ロスト」

オレンジペコ「こちらへまっすぐ向かって、通り抜けたようです……」

ダージリン「全速転進。今すぐっ!」

ルフナ「りょ、了解!」

ダージリン「おやりになるようね……ですが、これ以上はやらせませんわ」


『ダージリン隊長、こちらは大洗の車輌と接触。現在交戦中です』

『こちらの練度は大したことないようですわ』

ダージリン「先ほどの重戦車がそちらに向かったわ。くれぐれも油断なさらぬよう」

ルクリリ『了解!』



桃「撃て撃てー! 見えるものは全部撃てぇー!!」

みほ『ああ、そんなバラバラに攻撃しても……履帯を狙って下さい』


優季『無理ですー!』

あゆみ『もういやー!』

みほ『ああぁ逃げちゃ駄目だってばー』


桃「撃て! 撃て! 撃ちまくれー!!」

柚子「桃ちゃん落ち着いて」

杏「小山ーなんか後ろに下がってない?」


ナカジマ「よーし良いぞ、いけいけ……あっ、カメさんの履帯が取れちゃった」

ツチヤ「あーあー……」

ホシノ「おいおいウサギの1年生、みんな飛び出しちゃったぞ」

スズキ「外に出ちゃったら余計に危ないんじゃないか……?」


ねこにゃー「慢性的なパニックだにゃあ」

ももがー「みんな慌ててるなりぃ」

ぴよたん「河嶋副長すごい。天才的に外しまくってるっちゃ」

ナカジマ「あれで砲手続けるなら将来楽しみですねー」


スズキ「うーん、大体猫田さん達が予想してたとおりの結果になっちゃったねー」

ツチヤ「勝てんのこれ?」

ももがー「でもでも、今のところコッチの撃破数はゼロなりよ?」

ホシノ「経験とテクニックはあっちが上だからね。 西住さんはここからどうするかね」

ナカジマ「大ボスの緑色をどう攻略するか、でしたっけ?」

ねこにゃー「うん。アンコウとカバさんが残っていれば、まだ勝機はありますにゃ」

ぴよたん「あとはチャーチルを迎え撃つポイントを探すっちゃね」

ももがー「だけどチャーチルのDEF値、マジヤバなり」


ダージリン「各車、状況報告を」

『こちら01。撃破には至りませんでしたが、大洗は2輌が行動不能となりました』

『こちら03。先ほどの大洗の重戦車ですが、今現在チャーチルが上る坂の向かいから接近しています』

ルクリリ『こちら04。大洗の重戦車、Ⅲ突と八九式を引き連れてこのブロックから離脱するようです』


アッサム「我々の脅威となるのは、やはりあの重戦車ですね」

ダージリン「マチルダ全車、追撃を中断して隊列に戻りなさい。重戦車を追うわよ」

ルフナ「了解」

ダージリン「わたくしを愚弄した代償……高くつきましてよ」

一旦ここまで

>>85 若干修正


『ダージリン隊長、こちらは大洗の戦車4輌と接触。現在交戦中です』

『動きはまるで初心者。練度は大したことありませんわ』

ダージリン「先ほどの重戦車がそちらに向かわれましてよ。くれぐれも油断なさらぬよう」

ルクリリ『了解!』



桃「撃て撃てー! 見えるものは全部撃てぇー!!」

みほ『ああ、そんなバラバラに攻撃しても……履帯を狙って下さい』


優季『無理ですー!』

あゆみ『もういやー!』

みほ『ああぁ逃げちゃ駄目だってばー』


桃「撃って撃って撃ちまくれー!!」

柚子「桃ちゃん落ち着いて」

杏「小山ーなんか後ろに下がってない?」


>>87 若干修正

ダージリン「マチルダⅡ各車、状況報告なさい」

『こちら03。撃破には至りませんでしたが、大洗は2輌が行動不能となりました』

『こちら02。先ほどの大洗の重戦車ですが、今現在チャーチルが上る坂の向かいから接近しています』

ルクリリ『こちら04。大洗の重戦車、Ⅲ突と八九式を引き連れてこのブロックから離脱するようです』


アッサム「我々の脅威となるのは、やはりあの重戦車ですね」

ダージリン「マチルダ全車、追撃を中断して隊列に戻りなさい。重戦車を追うわよ」

ルフナ「了解」

ダージリン「わたくしの頭上を乗り越え、あまつさえ手を払い除けた代償は高くつきましてよ?」



みほ(こそこそ作戦は失敗。包囲網から脱出できたもの、ついて来れたのはⅢ突と八九式の2輌だけ)

みほ「私たちは車輌の大きさが目立って、後続を完全には撒くことは不可能……」

パカッ

沙織「みぽりーんっ」

みほ「どう? 沙織さん」

沙織「カメさんはまだ履帯の修理で動くの無理っぽい。ウサギさんは……やっぱり返事がないよぅ」

みほ「そっか……」

みほ(どうすれば勝てる……)


《ミポリン、ゲームはまだ3回裏に入ったばかりです。それにスコアはこちらが一点リード、勝機は十分にあります》


みほ「一点……リード?」

麻子「私たちがマチルダを1輌撃破したぞ」

華「はい。記念すべき撃破です」

優花里「あれ? それじゃあ我々のチームは、まだ誰も撃破されていないんですか?」

沙織「だったらウサギさんは? 誰も乗ってないぽいんだけど……」


《いいえ、1人だけ車内に残っています。まだ行動不能と判定はされていません》


沙織「えー! だったら何でコッチの通信に出てくれないの!?」

麻子「通信機の調子が悪いんじゃないのか?」

沙織「そんなことないもん! 繋がってるけど何か変な雑音がして……あ」

華「沙織さん。ひょっとして残ったお一人というのは……」



▽大洗女子/M3リー車内

紗希「……」



沙織 「あー」
優花里「あー」
麻子 「あー」


みほ「……脱出した他のみんなはどこへッ!?」


《先ほど市街地のブロックへ移動しました。4人ともまだ競技エリア内です》


みほ「沙織さん! 急いでウサギさんの戦車に戻るように、坂口さんと山郷さんへメールして。電話が繋がるようなら直接連絡!」

沙織「わ、わかった、桂利奈ちゃんとあゆみちゃんの2人でいいんだよね?」

みほ「うん。他の皆には私から連絡するから」

沙織「おっけー!」


みほ「優花里さん、スモークの準備をお願い」

優花里「了解であります!」

みほ「麻子さん。スモークを巻いたら、聖グロリアーナの車輌をもう一度こちらに惹きつけます。アヒルさんとカバさんがこのブロックを離脱するまでに時間を稼いでください」

麻子「わかった」

華「みほさん、わたくしは?」

みほ「チャーチルへ向けて機銃を掃射するから、準備をお願い」

華「承りました」


みほ「こちらあんこう。これから車輌の周辺にスモークを散布します。あんこうがもくもくしている間に、カバさんとアヒルさんは2ブロック前進。その後は、これから伝えるエリアに入って潜伏してください」

エルヴィン『もくもく了解!』

典子『もくもく了解です!』

みほ「逃走ルートは各自の判断にお任せします。カメさんは履帯の修理が終わったら報告して下さい」

杏『おっけー』


みほ「それでは──、『緊急もくもく作戦』及び、『もっとこそこそ作戦』の開始です!」

優花里「もくもく開始!」


《スモーク散布》



▽聖グロ/チャーチル車内

ダージリン「煙幕……まだ逃げるおつもり?」

オレンジペコ「これ以上距離を空けられると、流石に厄介ですわね」

アッサム「ええ、データでの総合機動力はやはり大洗が上。こちらもクルセイダーで対抗していれば……」

ダージリン「そうですわね。もし、この状況下にクルセイダーがいれば……」


──
───

自称・聖グロ1の俊足『おほほほほ!! 聖グロナンバーワンの俊足が尋常に勝負いたしますわー!!』

クルセイダー隊の総長『ほらほら急がないとダージリン様の、おっ紅ゥ茶が冷めてしまいますわよー!!』

落ち着きのない軽戦車『えーい! お面倒ですからリミッター解除しちゃいますわーそれそれーい!!』

やっつけお嬢様『あれれれー? おっかしいですわぁーー??』

 … …ッスワー
      … ワー …


ダージリン「……いえ、ここにいない者の話は止めましょう」

オレンジペコ「賢明なご判断です」

アッサム「失言でした。申し訳ありません」

ルフナ(酷い言われようね……)


ダージリン「何ごとも適材適所よ。地の利があちらに有る以上、どれだけ足が速かろうと私たちが先に息切れを起こすのは明白」

オレンジペコ「いかがなされます?」

ダージリン「マチルダ各車は偶数と奇数に分かれて左右に展開。先行するであろうⅢ突と八九式を追いなさい」

ルクリリ『了解!』

ダージリン「チャーチルはこのままの速度で前進。きっとあの重戦車がもう一度、わたくし達にぶつかって来られるでしょうね」

ルフナ「承知しました」

アッサム「今度こそ逃しませんわ」


ダージリン「そうえば、アッサムは忍道の経験がお有りでしたかしら?」

アッサム「えっ、無いですわよ。急に何をおっしゃいますの」

ダージリン「あら残念。忍道を習得していれば、このような煙幕の中でも目が利くと噂なのですが」

アッサム「誰ですかそんなゴシップを吹聴しているのはっ! ローズヒップですか?」

オレンジペコ(アッサム様が忍道を習得されていれば、他校への偵察も少しは楽になるのでしょうね……)


▽大洗女子/Ⅲ突車内

左衛門佐「くっくっく。忍道を習得した我々にとって、このような煙幕など恐るに足らず!」

エルヴィン「ああ、竹を破る勢いで突き進むぞ!!」

おりょう「どっちに進むぜよ?」

カエサル「東が吉と出た」

左衛門佐「よし、この先を右折だッ!」

おりょう「……行き止まりぜよ」


カエサル 「……」
エルヴィン「……」
おりょう 「……」

左衛門佐 「……東ってどっち?」

一旦ここまで
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ありがとうございます

───
──


あゆみ「ふう、ここまで来れば大丈夫っしょ」

桂利奈「怖かったー!!」

優希「戦車乗るのもーやだぁー」

梓「もう……後で怒られても……知らないんだからね……」ゼェ ハァ


ピリリリッ

あや「げっ、何かメールきた!」

桂利奈「私の携帯にもきたー!」

あゆみ「きっと武部先輩だよ!」

優希「怒られるのやだあー」

梓「待って、先輩のアドレスじゃない。M5R……どこかで見たような」

優季「でもこんなアドレス知らなーい」


あや「これってスパムじゃない?」

あゆみ「うわーきっとスパムよスパム!」

桂利奈「スパムこわいスパムー!」


梓「スパムスパムうるさいっ! こんなタイミングで全員にメール送ってくるなんて、きっと先輩達の他に居ないでしょ!?」

あや「じゃあ最初に梓が開いてよ」

梓「えっ」

桂利奈「梓お願い!」

優季「おねがーい」

あゆみ「謝るときは私たちも一緒だから!」

梓「うぅ、しょうがないなあ……」

ピッ


======================
件名:ヘイ アズサ
======================

梓「……」


======================
本文:ユウキ ヲ ダシテ
======================

梓(なんか片言の外人っぽいー!!)


あゆみ「梓、大変ー!!」

梓「な、なに?」

あゆみ「武部先輩からメールきてる!?」

梓「い、いや私にはまだ……」

桂利奈「紗希おいて来ちゃったー!」

梓「あっ」

あや「ああーー!!! 誰かいないと思ったら!」

梓「紗希……」

優季「どうしよぉ」

あゆみ「え、えっとさ! 武部先輩の指示で私と桂利奈が迎えに行くから、皆はここで待っててよ!」

桂利奈「紗希ごめーん!! 今行くから待っててーー!!」



梓「はぁ、何やってんだろ私……」

あや「へこむのは後あと。私たち、まだまだやれるよ!」

優季「ゆうきをだしてっ ……なんちて♪」

梓「……」


 ユウキ ヲ ダシテ


梓「……」

あや「あ、あずさ……?」

優季「梓ぁ、怒ってる?」

梓「あや。優季」

「「は、はいっ」


梓「今度は絶対に逃げちゃダメだからね。みんなで先輩を助けるよっ!」

あや「お、おうよ!」

優季「がんばるー!」


梓(誰からのメールか結局わからなかったけど、ありがとうございました……)




あや「うわキモっ! この半角メール何で私の名前知ってるの!?」

優季「やだぁ怖ーい」

梓(……凄く胡散臭いメールだったけど……)

───
──


▽聖グロ/チャーチル車内


 バチュンッ!

アッサム「…ッ 右側部被弾。良い腕をしてるわ」

オレンジペコ「煙幕が晴れる寸前のタイミングを見計らって当ててくるなんて、あちらの砲手は相当腕に自信がお有りのようですね」

ダージリン「もしくは、それができる度胸と集中力があってのことよ。こちらの損傷は?」

アッサム「装甲を少々削られたようですが、まだ抜かれてはいません。牽制で撃ってくる機銃も大したダメージにはなり得ませんわ」

ダージリン「あちらの狙いもあくまで主砲による撃破。双方の有効射程をよく考えて距離を詰めなさい」

ルフナ「了解」


アッサム「それにしても、危なっかしい装填方法ですこと」ハァ

オレンジペコ「あの重戦車は、どのような装填の仕方なのですか?」

アッサム「見た感じ砲身が丸ごと車体の外に出ているから、装填手が外に出て排莢口から直接突っ込んでいるような……まったく、見ているこちらが冷や冷やしますわ」

オレンジペコ「それは、次弾装填までかなりの時間を用するでしょうね。きっとわたくしでたら……」

ダージリン「ダメよ。そのような危険な行為、とてもじゃないけどウチのペコには──」


《ハロー、チャーチル。応答を願います》


ダージリン「……誰?」

オレンジペコ「……マチルダからの通信ではありません」


《ハロー、チャーチル。応答を願います》

ダージリン「こちらチャーチル。我が校の回線に割り込む無粋な殿方は、一体どなたかしら?」


《ハロー、チャーチル。このメッセージを送信しているのは、今、貴女たちの目の前にいる戦車の……戦車そのものです》

ダージリン「目の前……?」


《イエス。今、貴女たちにピースサインを向けている戦車です》

ルフナ「えっと、目標の戦車がこちらに手……のようなものを振ってます……」

オレンジペコ「」

アッサム「マジですの……」


《初めまして、チャーチルのコマンダー。私はガンヘッド507・M5Rサージェント》

ダージリン「まあ、これはご丁寧に。わたくしの事はダージリンで結構ですわ」

《Yes sir,ダージリン》


オレンジペコ(なんで普通に応対できちゃいますのーっ!)


ダージリン「それで、本日はこのような硝煙弾雨の真っ只中に、如何様なご用件でらして?」

《 Sir. 現在我々は、先ほどの交戦時に誤って車輌の外へ飛び出したチームメイトを捜索中です》

ダージリン「ああ、その件についてはわたくし達の方でも心配してましたの。皆さまの無事息災をお祈り申し上げますわ」


《 Sir. 恐縮です。また、私に搭載された各種探知センサーの使用に伴い、特定されるであろう聖グロリアーナ車輌の位置情報やその他の情報に関しては、本試合において一切の開示、及び作戦に利用しない事をここに約束します》

ダージリン「まあ、フェアプレーを重んじる紳士でいらっしゃるのね。良いでしょう、わたくし達からは、あなた方の行為について咎める用意は何らございません」


《 Sir. ありがとうございます》


ダージリン「礼には及ばなくてよ。ねぇ戦車さん、こんな格言を知ってる?」

《 No sir. 》

ダージリン「"イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない"の。ですから、どうかお気になさらずに」

《 Sir. それは、我々のような"Bandits(ならず者)"にも適応可能なルールですか?》


ダージリン「あらあら、そうですわね……」クスクス

《"戦争はすべて盗むことのみを目的とする"》

オレンジペコ「ヴォル──」

ダージリン「ヴォルテールね。けれども、"計算された恋は卑しいもの"よ?」

オレンジペコ「シェイ──」

《 Shakespeare. "良い戦争、悪い平和などあったためしがない"》

オレンジペコ「フら──」

ダージリン「フランクリンね。しかし、"分別を忘れないような恋は、そもそも恋ではない"」

オレンジペコ「と─」

《 Thomas Herdy. それではまた戦場で。良い戦争を、ダージリン》



ルフナ「目標、このブロックから離脱します……あ、またピースしながら手を振ってます」

アッサム「器用ね……」

ダージリン「ふふふ……楽しいひと時でしたわ」

アッサム「独自に推論するコンピュータを搭載していると車輌スペックの備考にありましたが、ここまでとは」

ダージリン「さて、あのような殿方をお茶にお誘いするときは、一体どのようなお声をかければ良いかしらね」

アッサム「……本気でおっしゃってますの?」

ダージリン「わたくしはいつだって本気よ。ペコ、貴女はどう思われて?」

ペコ「……」

ダージリン「ペコ?」チョイ チョイ

ペコ「…………"イギリスは、将兵が各自の本分を尽くすことを望む"」ムスー

ダージリン「ネルソンね……ど、どうされたのペコ? なにを怒ってらっしゃるの?」

オレンジペコ「怒ってないですー」プクー

ダージリン「そんなお顔をされても説得力がありませんわっ。ね、ねぇペコ……」

オレンジペコ「知らないですー」ツーン


アッサム「"行動は雄弁である"……」

ルフナ「シェイクスピア……でしたかしら?」

一旦ここまで

Sir(サー)とMa'am(マム)は場所によって使い分けなくても良いらしいですが
性別の概念が無さそうな連中なんで、とりあえずSirに統一しました
間違ってたらすみません


▽大洗女子/ガンヘッド車内


《情報収集完了》

みほ「ん? 何かしてたの?」


ガコンッ

優花里「五十鈴殿ー。主砲、装填完了です!」

華「ありがとうございます」

優花里「そういえば、先ほどサージェント殿がチャーチルに向かって手を振ってましたが?」

みほ「ほんと何してたの……」

《情報収集です》


沙織「みぽりん! 桂利奈ちゃんとあゆみちゃんが戦車に戻ってるって!」

みほ「本当!? よかったぁ……」

沙織「梓ちゃん達もみぽりんからのメール見たって」

華「皆さんご無事で、本当になによりです」


沙織「それでね、知らないアドレスから何かよくわかんないメールが来たって、1年生の子みんなが言ってるんだけど……何か心当たり無いかって」

みほ「……それで、何を送ったの?」

《勇気が出る魔法を少々》


華「まあ素敵」

沙織「ロボット戦車が魔法とか……」

麻子「胡散臭すぎる」

みほ「……まあ問題無さそうならいいんだけど」


沙織「みぽりん、生徒会は……あー、また履帯が外れちゃったぽい」

みほ「そっか。どの辺りまで移動してる?」

沙織「今は市街地入ったところの神社近くに居るよ、桂利奈ちゃんとあゆみちゃんも見かけたって」

みほ「了解。カメさんチームは修理が終わったら、商店街のブロックに移動するように伝えて」

沙織「りょーかいっ」

みほ「M3に残ってる丸山さんの様子はどう?」


《車内に侵入した昆虫の捕獲に成功しました》

みほ「そっか……」

優花里「平和ですね……」


《振動センサーの計測結果から、捕獲されたのは昆虫綱チョウ目のポピュラーな品種であると推測します》

沙織「紗希ちゃん、蝶々とか好きって言ってたもんね……」

華「ひょっとして、一人だけ残ってた理由はそれですか?」

麻子「残り少ないエネルギーを下らない計測で消耗させるな!」


優花里「西住殿。このまま後退すると、もうじきT字路の突き当たりです」

みほ「了解。麻子さん、向かって左方向の道に入って。それから……」

優花里「左折した先の道は、およそ100メートルほど直線でありますっ」

みほ「ありがとう。それじゃあ左折後は突き当りまで真っ直ぐ、中速後進でお願いします」

麻子「ほい」

沙織「みぽりん、カバさんとアヒルさんから通信だよ」



典子『こちらアヒルさんチーム! 1輌撃破っ!』

エルヴィン『こちらカバさんチーム、1輌撃破!』



華「まあ、1度に2輌も」

優花里「やりましたね!」

《 Nice work. 》


▼住宅エリア

「車長、Ⅲ突の旗が……塀の上から丸見えです」

ルクリリ「馬鹿め。壁越しに撃ち抜かれるがいい!」



 ズガンッ!


     …ヒュパッ

典子「こちらアヒルさんチーム! マチルダ撃破失敗、及び走行不能すみませんっ!!」

妙子「サーブ権取られちゃいました~」

あけび「もっと火力を~」

忍「もっと装甲を~」



優花里「アヒルさんが!」

華「そんな……」

みほ「沙織さん、カバさんチームから応答は?」

沙織「まだないよ……みぽりんどうしよう……」

みほ「大丈夫だよ、落ち着いて」


 …キュゥウウウウ…


華「なんの音でしょう?」

麻子「まずい、そろそろ燃料が切れる」


《走行不能まであと8分59秒 58、57、56──》


沙織「やだもーーーー!!」

優花里「たた武部どのおおおちついてっ!」

みほ「カウントはまだ早いから止めて……」


《ラジャー》


みほ「……」

麻子「どうする隊長」

華「ここでタイマン張ります?」

みほ「……ウサギさんチームと合流はできそう?」


《M3リーは2キロ先のブロックを走行中。残り燃料では600メートルしか走れません》


沙織「無理っぽいよぉ」

みほ「了解。この先の角を曲がったら、そこで、今度こそチャーチルと決着をつけます」

優花里「この先といえば……」

麻子「バレー部が隠れてた駐車場だな」

みほ「はい。ですから、まだこの周辺にいるマチルダを──」


 ズガンッ!
      …ヒュパッ


華「片付けましたわ」

みほ「」

沙織「華すご……」

優花里「なんという神業……」

麻子「急に手前の角で顔出してきたから、少しヒヤっとした……」


《 Excellent. 》


みほ「……っと、優花里さん今のうちに次弾装填! 急いでっ!!」

優花里「りょ、了解でありますっ!」

ガコンッ



みほ「華さん。交戦中は優花里さんが外に出て装填する余裕は無いかもしれない」

華「わかりました。これが最後の装填になりそうですね」

みほ「無理言ってごめんね。砲弾や機銃の弾丸は人に近づいたら避けるか自壊するように設計されてるけど、車輌同士の接触はそうもいかないから」

麻子「チャーチルを撃破するための有効射程を考えれば、次は互いの車輌がぶつかるくらいに近づくかもな」

華「ああ、合点がいきましたわ」

沙織「ゆかりんが外に出てる間に事故ったら危ないもんねぇ」


華「それもありますが……先程みほさんが1年生の方達へお伝えしていた指示の内容が、少々気になってまして」

みほ「えっ」

華「みほさんらしくなかったな、と」

みほ「そう……かな」

沙織「ちょっと華」

華「ごめんなさい。出過ぎたことを申しまして」

みほ「……ううん。いいの」


ガコンッ

優花里「装填完了、チャーチル来ます!」

華「この一撃は決して無駄にはしません」


みほ「ここが私たちの正念場です。お願いみんな、もう少しだけ頑張って!」


優花里「了解であります! 何でもご命令くださいっ!」

沙織「私たちがついてるからね!」

華「わたくし達、みほさんには最後まで付いて行きます」

麻子「どこへだって行ってやるぞ」

みほ「みんな……」


《現在の燃料では不足です》


麻子「さっき無駄遣いしたからだろうが」

華「根性でどうにかなりません?」

優花里「予備タンク積みたかったんですよねー」

沙織「もー締まらないなあ……」

みほ「あはは……みんなありがとう」

一旦ここまで




オレンジペコ「マチルダⅡ、更に撃破されました」

アッサム「わたくし達と合流する前にやられるとは……まったく」

ダージリン「ルクリリ、そちらの状況は?」


ルクリリ『はいっ! こちらは依然、大洗のⅢ突と交戦中で……ああもう何で当たらないの──』


ダージリン「サンドイッチはお預けね。ペコ、装填時間はまだ短縮できて?」

オレンジペコ「はい。0.5秒ほどですが」

ダージリン「ふふっ、さすがオレンジペコの名を継ぐ者ね」ツンツン

オレンジペコ「危ないですから装填中にほっぺたつっつかないでくださいっ!」

 ガコッ

アッサム「さあここからが聖グロリアーナの本領発揮ですわよ」



ドォン!
      …ドォン!

《撃破判定率が70%を超えました》

バコンッ!

沙織「てか、だんだん撃たれる間隔が短くなってきてるんだけどおお!!」

    バコンッ!

優花里「聖グロリアーナは走行間射撃が得意なんですうう!!」

典子「あんこうチーム! ファイトぉー!!」

あけび「私たちの分もお願いしますー!」

みほ「回収車来るまで戦車から出ないでー!」

沙織「みぽりんも顔出してないで入ってなって!!」


バタンッ

みほ「ふうっ」

沙織「もー危ないことするなって言ってる本人が一番危ないんだからっ」

みほ「ごめんごめん。でも、砲弾は滅多に人に当たらないから」

沙織「そーいうことじゃなくてっ」

麻子「いいから後にしろ」


華「みほさん」

みほ「うん。華さん、麻子さん、準備はいい?」

華「はい」

麻子「いいぞ」


ダージリン「もうすぐ有効射程の圏内よ」

アッサム「ええ、先に撃たせればこちらの勝──」

みほ「フレアッ!!」

《 Fire 》


パラララララララ!!!!!


ダージリン「くっ!」

ルフナ「閃光弾!?」

オレンジぺコ「アッサム様!!」

ダージリン「アッサム! 貴女で光を反射させて防御なさい!!」

アッサム「そんなのできる訳……ってどういう意味ですのコラ!!!!」



典子「くおおお目がぁーー!!」

あけび「まぶしー!!」

忍「いいから二人とも早く車内に戻って!」

妙子「今のうちにキャプテンだっこして回収しちゃいますー!」


優花里「西住殿、この距離なら装甲抜けます!」

みほ「停車っ!!」

麻子「ん!」 ガコンッ

 ギギーッ


みほ「……撃てっ!!」

華「はいっ!」

 ズガンッ!

───
──


ねこにゃー「あんな隠し球を残してたとは……」

ナカジマ「そーいえば、ミサイル迎撃用のフレアが後部ラックに残ってたから、そのままにしてたんだっけ?」

ももがー「画面がまっしろなりー!」

スズキ「中継のカメラが焼き付いてなきゃいいけど……」

ツチヤ「……映像戻ったよ!」

ホシノ「やったか!?」

ぴよたん「あ、今そのセリフは言ったらダメっちゃ──」



みほ「……」

麻子「……」


  キュラキュラキュラキュラ…


優花里「チャーチル……健在です」

沙織「そんなぁ」


華「……申し訳ありません。外してしまいました」


《エネルギー完全消失》

 キュウウウゥゥ…
        … ヒュパッ

『大洗女子 M5R-サージェント、走行不能!』


優花里「ああ……」

麻子「ここまでか」



ダージリン「運命は浮気者。紙一重の勝負でしたわね」

みほ「……」

沙織「みぽりん! ウサギさんが──」


あゆみ「つっこめ桂利奈ー!!」

桂利奈「あいあいー!!!!」

沙希「──」

 ズガンッ!
       …ヒュパッ


『大洗女子 M3リー、走行不能!』


ダージリン「今ので終わりかしら?」


優花里「せっかくのチャンスが!」

沙織「もー何でこっち来ちゃったかなぁ」

あゆみ『すみませんー!!』

桂利奈『ごめんなさー!!』


《いえ、ウサギ=サンは良い仕事をしてくれました》


沙織「えっ」

あゆみ『えっ』


《今この瞬間、敵の目は"こちらに"釘づけ。奇襲をかけるには絶好のチャンスです》


カエサル『うむ、今こそ木馬から放たれる時ッ!!』

『『『応ッ!!!』』』


優花里「歴女の皆さん!?」

桂利奈『カバさんだー!!』

沙織「ええーなんでー!!」


 ウィーン

忍「きゃ、キャプテン、駐車場が勝手に下がってるみたいです!」

典子「なにー!!」

あけび「出オチの芸人みたいで何か嫌ですー!」

妙子「バレー部にもっと光をー!」



ルフナ「3時方向にⅢ突!? 八九式の側面に隠れてました!!」

ダージリン「ッ!」

オレンジペコ「いつのまに!?」


《ピッチャーが投球するその瞬間まで誰にも悟らせない。それがスチール──盗塁を成功させる秘訣です》


みほ『カバさん、そこから見えるチャーチルのウィークポイントを狙ってください』

エルヴィン「左衛門佐!」

左衛門佐「心得たっ!!」


ダージリン「アッサム!!」

アッサム「やらせませんわ!」

キュィーン


おりょう「まずい、急ぐぜよっ!」

左衛門佐「往生せぇーい!!!!」


 ズガガンンッ!!
         …ヒュパパッ


みほ「……っ!」

麻子「やれやれ、とんだ化け物だ」

華「ええ、本当に……」



『聖グロリアーナ チャーチル、走行不能!』

『大洗女子 Ⅲ号突撃砲、走行不能!』



エルヴィン「ここまで仕掛けて相打ちとは……」

左衛門佐「無念……」

おりょう「無理もないぜよ。気が付いたらチャーチルの砲身がこっちに向けて回転してたから」

エルヴィン「ああ。すさまじい反応速度だ」

左衛門佐「くっ……せめてもう一太刀!」

カエサル「ごめん、筋肉痛が限界で砲弾持ち上げるの……もう無理」プルプル

おりょう「リーダー貧弱すぎるぜよ!」

左衛門佐「ネトゲ女子と混ざって筋トレせい! 筋トレ!」



ダージリン「アッサム、よくやってくれました」

ルフナ「お見事でした」

アッサム「いえ、この周辺に複数の車輌が潜伏している可能性が高いと、先ほど統計データに表れましたので」

ダージリン「ペコも装填を間に合わせてくれて助かりましたわ」ツンツン

オレンジペコ「突っついちゃダメですってば! もーお茶淹れてあげませんわよっ!」

ダージリン「そんな!」

オレンジペコ「……それで、アッサム様はいつから警戒されていたのですか?」

アッサム「そうね、いつからかと言われたら──」

───
──

▼商店街エリア


ルクリリ「あー! 全っ然当たらないと思ったら、アンタたちがⅢ突の旗持って走ってたのね!!」


あや「やっべ、バレちゃった!!」

優季「あずさー見つかっちゃったよー!」

梓『了解。二人とも試合の邪魔にならないところまで退避して!』



梓「──というわけで、私たちもここまでみたいです」

杏「ん、お疲れさーん」

柚子「それにしても、すごい作戦思いついたわね西住さん……」

梓「ええ、砲弾は人を避けてくれるらしいので、あとは車輌に近づかないように私が2人をナビするようにって」

桃「ふん。それで先にやられるとは世話がない」

柚子「私たち履帯外れてばっかで全然役に立ってなかったからね」

桃「う」

杏「それに一発も当ててないよねー私たち」

桃「あうぅ……」

杏「だけど砲弾が当たらないにしたって、観客エリアじゃない試合会場は特に危ないからねー」

柚子「もう試合中は勝手に戦車から外に出ちゃダメよ?」

梓「はい……すみませんでした」シュン


杏「よし! んじゃーそろそろ行こっか」

桃「遂に決着のときですね」

梓「よろしくお願いします!」

柚子「桃ちゃん、頑張ろうね!」

桃「呼ぶなっ!」


▼駐車場エリア

沙希「……」

桂利奈「カバさんやられちゃったぁー」

あゆみ「梓たち、大丈夫かなあ……」



優花里「これでマチルダⅡと38tの一騎打ちですね」

みほ「うん」

沙織「なんかもう不安しかないんだけど」

麻子「不安というか絶望だな」

華「そうですね」


《ゲームまだは続行中。勝敗は決してません》


沙織「だけどそんなこと言ったってさあ……」


《決意した人間の勝負は予測できません。モモチャンを信じて》


みほ「決意……」

沙織「う、うんっ、そうだよね!」

優花里「生徒会の皆さんを信じましょう!」


───
──


  ズガンッ!
             …ヒュパッ



『大洗女子 全車輌の走行不能を確認!』


ホシノ「……」

スズキ「……」

ツチヤ「……」


『──よって、聖グロリアーナの勝利!!』


ねこにゃー「」

ももがー「」

ぴよたん「」


ナカジマ「うん、まあそうなりますよねー」

一旦ここまで
次で最後にしたいです


─ 試合終了から数時間後 ─


~ ア アアン♪ ア アアン♪  アン・アン・アン♪ ~


みほ「はぅうぁ~」フラフラ

沙織「信じた結果がこれだよ!!」

《仕方ありません》

 チュィーン


華「恥ずかしがっていたら、余計に恥ずかしくなってしまいます!」

優花里「あーでも、お客さんの視線は殆ど後ろの方に集中してるみたいですねぇ……」

麻子「ああ、私たちは完全にオマケだ」

沙織「それはそれで何か負けたみたいで嫌ぁー!!」



「アメイジング……」

「あっははは!! ほらほらアリサ、ロボッ…ロボットが、ロボットダンスを踊っ……ブフッー!!」

「マム、言い終わる前に自分で笑わないでください……」


~ イヤヨ♪ イイワヨ♪ アン・アン・アン♪ ~

───
──


《本日のミッションは全てコンプリートしました》


ナカジマ「はーい、おつかれさまでした」

ホシノ「大急ぎで燃料補給させて何すんのかと思えば……」

スズキ「試合終わってからの方が、駆動系の消耗が激しいってどういうことよ……」

ツチヤ「てか何でガンちゃんも踊ってたの?」


《連帯責任という名目での懲罰だったからです》


杏「あんこう戦車踊り!! いやー思った以上に大盛況だったよー」

桃「自治体の方からも、評判は上々でしたね」

柚子「会長と桃ちゃんは今日の試合をもっと反省してください……」


《メインコンピューターが完璧に修復されていれば、アンコーダンス本来の動きを忠実にトレースできるのですが》

スズキ「やめてやめて。あんな動きされたらフレームとモーターの寿命がマッハで縮む」

ホシノ「とりあえず今の消耗具合もバカにならないから、格納庫に戻って全体のチェックしないと」


杏「ということで引き続き戦車の移動よろしくー」

柚子「お願いしますね」

桃「19時には出港するから、それまでに間に合わせるように」

ナカジマ「はいはーい。了解ですー」


ねこにゃー「ナカジマさーん」

ぴよたん「問題ぴよー」

ナカジマ「はーい、どうしました?」


ももがー「搬入用のドックが一杯なり」

ナカジマ「あー、そりゃ確かに問題だ」

ねこにゃー「出港の時間に間に合うかにゃー」

ホシノ「たしか19時くらいって言ってたっけ」

スズキ「それなら、まだ時間に余裕はあるんじゃない?」

ナカジマ「そんじゃ、先に他の戦車を学校まで持って帰りましょうか」

ホシノ「ガンちゃん、悪いけどちょっとここで待っててよ」

ツチヤ「すぐに迎えに来るからねー」


《ラジャー》

───
──



ダージリン「ごきげんよう。お取込み中だったかしら?」

《 Sir. ダージリン。今は待機中です》


ダージリン「それは良かった。折角ですからお茶のお誘いに来たのですけれど」

《 Sir. 光栄です》


ダージリン「他の皆さんはご一緒ではないのかしら?」

《 No sir. 各自、自由行動中です》


ダージリン「……あの、わたくしにお返事をするときは、お言葉の前に"サー"はつけなくても良いんですのよ?」

《ラジャー。私のチームメイトですが、おそらく出港時間の夜まで戻らないでしょう》

ダージリン「あら残念。お茶はまたの機会までお預けですわね」

《はい。その機会が訪れる日を楽しみにしています》


ダージリン「ふふっ、それは何よりですわ。ところであなた、紅茶はお好き?」

《嗜む程度には》


ダージリン「ああ良かった。ペコの淹れる紅茶は香りが素晴らしいのよ?」

オレンジペコ「本気ですか……」

アッサム「いえ、今のはきっと社交辞令ですから」

《心配には及びません。液体化合物は、基本的にどのような物質でも分解する事ができますし、空気中の臭気も各種センサーを経由して感知可能です》

オレンジペコ「その表現だと最早お茶を楽しむというか……」

ダージリン「ペコ、楽しみ方は人それぞれよ」

オレンジペコ「人じゃなくて戦車ですってば」


カチューシャ「ダージリーン。カチューシャが来てやったわよー!!」

ダージリン「あら、遅かったじゃない」

ノンナ「申し訳ありません。ここから納涼祭の迷子センターまで、少々距離がありましたので」

カチューシャ「こらーっ、なんで言っちゃうのよ!!」


ダージリン「あらあら、それはご苦労さま」

カチューシャ「い、言っとくけど、カチューシャは迷子になんてなってないんだからね!!」ゴシゴシ

ノンナ「はい。同志カチューシャは迷子になどなっておりません」ニィ

アッサム(黒い微笑……)

オレンジペコ(真っ赤な目……)


カチューシャ「まったくもう。こんな狭くてちっこくて分かりずらい場所なんかを、カチューシャとの合流地点にしたのが悪いのよ!」

ダージリン「ふふっ、そうね、ごめんなさい。……ああ、この子はカチューシャ。紅茶仲間なんですの」

《ハロー、カチューシャ》

カチューシャ「ふん、これがさっきのポンコツ重戦車ね」


《古くはありますが、ポンコツではありません》

カチューシャ「どっちだっていいわよ! そんなことよりカチューシャがわざわざ声をかけてやってるんだから、顔くらい出したらどうなの?」

オレンジペコ「カ、カチューシャ様、その戦車は……」

カチューシャ「言っとくけど、カチューシャと目線を合わせなきゃお話してあげないんだからね!」

《ラジャー》

 キュイー
    ガコンッ


《右マニピュレータの高度を96cmマイナス修正》

カチューシャ「ぎゃーーー!!!!」


《さらに5cmマイナス修正》コー

カチューシャ「」


《これで同じ"目線"になりました。改めまして、カチューシャ》

カチューシャ「」ショワ ~.。.:*


ダージリン「カチューシャ?」

ノンナ「気絶してしまいました」

オレンジペコ「あ、あのっ、カチューシャ様のお召し物が大変なことに」

ノンナ「はい。その直後、盛大にやってしまいましたね」


《トリックオアトリート》

カチューシャ「」


ノンナ「これでは貴艦に乗せられませんね。申し訳ありませんが、カチューシャを新しい下着とパジャマに着替えさせに参ります。出港の時間までには戻りますので」

ダージリン「ええ、どうぞごゆっくり。お二人は我が校が責任をもって、プラウダの学園艦までお送りしますわ」

ノンナ「スパシーバ。それでは」

《 Do svidanya. 》



アッサム「ダージリン様。我々もそろそろ」

ダージリン「あら、もうこんな時間。なんだかバタバタしてしまってごめんなさいね」


《いいえ。貴重なデータが収集できました》


ダージリン「ふふっ、うちのデータ主義と仲良くできそうね」

アッサム「勘弁してくださいまし……」

オレンジペコ「ダージリン様、こちらを」

ダージリン「そうそう忘れるとこでした。流石はペコね」

オレンジペコ「もう……」


《見慣れないユニットのようですが》

ダージリン「親愛の証、といったところかしらね。受け取ってくださると嬉しですわ」

《喜んで》キュィーン


アッサム(ほんと器用ね……)

オレンジペコ(箱が潰れないのが不思議です)

ダージリン「他の皆さんのお口にも合えばよろしいのだけど。あなたの隊長さんにもよろしくね」

《次の試合でお会いしましょう》

ダージリン「ええ、次の全国大会には必ず──」

───
──



ナカジマ「ガンちゃんおまたせー……ってあれ、何持ってんの?」

《親愛の証です》


ナカジマ「なにこれ紅茶? ……ふーん、西住さんに渡しとこっか?」

《よろしくお願いします。毒物、爆発物などの可能性は極めて低いのでご心配なく》キュィーン

ナカジマ「そういうのは手渡す前に言ってほしいなぁ」

《善処します》

ナカジマ「頼むよー……っと」

ガコン

ナカジマ「それにしても今日は頑張ったね。何もかも急造品で間に合わせたような状況でさ」

《プラスチックが貴重品だった時代に比べれば、遥かに恵まれてた状況です。問題にすらなり得ません》

ナカジマ「さすが軍人さん上がりは頼もしいねー」

《とっくの昔に退役したロートルですが》


ナカジマ「そういえば、ひとつ聞きたかったんだけど」

《なんでしょう》

ナカジマ「どうしてガンちゃんは戦車道の試合に出ようとしたの? いや、ウチの学校で持ってる戦車の数が全然足りないって、私たちの方に理由はあったんだけどね」

《……》

ナカジマ「今さらだけど、なんでこんなに協力してくれたのかなーって」


ナカジマ「ああー言いたくなかったら別にいいよ? 変なこと聞いちゃってごめんね」

《いいえ。その質問に対して回答するには少々時間を要するので、最低限の並列化に必要な情報を精査していました》

ナカジマ「長くなりそう?」

《レフティ・ブローブが辛抱強く聞ける程度には圧縮可能です》

ナカジマ「そっかそっか。まあ、コッチは急がないからゆっくりでいいよー」

《……》

ナカジマ「……」


《ちなみに、レフティ・グローブという人物は、1920年代にデビューしたメジャーリーグ──》

ナカジマ「あーわかったわかった! そっちは帰ってからツチヤがじっくり聞くからっ!!」

《ラジャー。ではロートルの昔話をひとつ》

ナカジマ(危なかった……)



《私が『戦車道』という競技に関する情報を得たのは、ミポリンやあなたちが製造されるずっと前のことです》

ナカジマ「製造って……そこはもうちょっと気を使ってほしいなぁ」

《善処します》

ナカジマ「んで、初めて見た戦車道はどうだった?」

《まるで神話をこの目で見ているようでした》

ナカジマ「神話かー。そりゃ随分とスケールが大きいね」

《"我々"にとっての神話です》

《バイオドロイドでもない、一片もサイボーグ化されていない生身の人間が、かつて太古に実在した完全マニュアルタイプの戦闘車輌に乗り込み戦場を駆け巡る。それを目にしたときの衝撃は、決して忘れることはできないでしょう》

ナカジマ「そっか……」


《そのとき見た光景は、いつまでも私の目に焼き付いて離れることはありませんでした》

ナカジマ「それで、自分も出たくなっちゃった?」

《はい。様々な紆余曲折があって、今日という日を迎えることができました。あなた達には心から感謝しています》

ナカジマ「そりゃどういたしまして」

《ロートルの昔話はこれで終わりです。ご静聴、ありがとうございました》

ナカジマ「いえいえこちらこそ……妙なところで律儀だよね」



ナカジマ「そろそろ出港の時間なんだけど……西住さん達まだ来ないなぁ」

《たった今、定時連絡を受信しました。これより19分後に帰還するとの報告です》

ナカジマ「おー、そりゃけっこうギリギリだね。私たちは搬入作業あるから先に戻りましょっか」

《ラジャー》

 グィーン


ナカジマ「ねぇガンちゃん」

《なんでしょう?》

ナカジマ「私たちってさ、色々あって今度の全国大会に優勝しなくちゃいけないんだ」

《大洗女子学園の現状については、文部科学省からある程度の説明を受けています》

ナカジマ「なら話が早いや……あ、これってまだ皆には内緒ね。西住さんにも」


《最大レベルのセキュリティで管理しています。私からこの情報が漏れることはありません》

ナカジマ「あははは、やっぱ頼もしいねーガンちゃんは」

《お役に立てれば幸いです》

ナカジマ「会長も言ってたよ。あなたがいればきっと優勝できるって」

《……》


《ひとつ、こんな格言を知っていますか?》

ナカジマ「はい? どうしたの急に……」


《"ヒーローとは、結果を考えず"──》

《"自分をヒーローと思わず"──》

《"自分が信じた道を突き進む者"です》

ナカジマ「……」


《"信じる"とは、"決意する"と同義です。ミポリンは決意しました。あの生徒会のリトルリーダーも。そしてあなた達も》

ナカジマ「うん……私たちのやることはもう決まってるよ」


《我々は最高のチームです、ですからきっと──》

ナカジマ「うん! 絶対に優勝しようね!!」


《いいえ。全国大会の優勝"程度"など、我々にとって小さな通過点にすぎません》

ナカジマ「う……それはちょっと大きく出すぎじゃないかなぁ……」

───
──


一旦これで終わり。
色々と至らないところがありましたが、最後までご覧頂きありがとうございました。

続きを投下できる時間を確保できるかちょっと怪しくなってきたので、
このスレッドはあとでHTML依頼出してきます。

全国大会とか、その後の顛末が書けたらまた新規にスレ立てます。

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