渋谷凛型「51世紀火星地表。原生人類滅亡から3000年」 (132)

渋谷凛型造成クローン人類「原生人類が滅亡してから約3000年」

凛「我々クローン人類からは、かつて存在した文明、人類の最大の発明品とも言われている」

凛「『アイドル』という概念は失われていた」

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【火星・地表付近】


未央「行こっか、しぶりん」

凛「うん」


凛(私は渋谷凛型造成クローン人類。製造番号はYNDR-KNKR-428号)

凛(相棒の未央は本田未央型)

凛(私たちは、『346細胞』によって、かつて実在したオリジナルの人間から作られた造成クローン人類だ)


[原生人類]かつて存在した人間という霊長類。現在の人類はその遺伝子をベースに作られたクローン生命体
[346細胞]万能細胞の一種。現在の生命体は主にこの細胞から作られる
[造成クローン人類]346細胞から作られたかつての人間遺伝子を持つ生命体

凛(私たちは今、火星地表面で『あるもの』を探している)

凛(そのあるものとは、人間)

凛(人類滅亡を逃れた人間を探している)


未央「無いね。それらしい痕跡は」

凛「この辺りの遺跡はもう探しつくされているんだと思う」

凛「もう少し奥に行こうよ」

未央「了解!」


[火星]太陽系第4惑星。原生人類滅亡の前後に、地球より入植が試みられた。現在その頃の施設は遺跡と化している

凛(人間と言っても、生きた人間を見つけたいわけではない)

凛(重要なのは遺伝子データ。あるいは現在は失われてしまった人類の文明の一端)

凛(そういったものを探し出すのが、私たち遺跡派遣調査員の任務だ)

凛(そんなものを探す意味は・・・あまり考えたことはない)

凛(ともかく、現在の人類にとって重要なものだと教わっている)


未央「遺跡のかなり奥にまで入ってきちゃったね」

凛「こんな場所まで来るのは初めて。だけど、ここも調査履歴があるよ」

未央「・・・もっと奥まで行かないといけないかぁ」


[遺跡派遣調査員]滅亡により失われた原生人類の遺伝子や文明を調査・発掘するためのエージェント

凛(当局は『アイドル』という、かつての人類の発明品を探し求めているらしい)

凛(そのアイドルとやらを探すために、私たち遺跡派遣調査員たちが結成されたと言われている)

凛(アイドルって、なんだろうな)

凛(それがあると、どんな良いことがあるの?)

凛「・・・よく、わかんないや」

未央「ん、何か言ったしぶりん?」

凛「ううん。なんでもない」


[アイドル]現在は失われた文明の一つ。その詳細は一般にはよく知られていない

中断
続きはまたそのうち

凛「かなり深い遺跡だね」

未央「うん。当局も全貌は把握しきれていないみたい」

凛「今まで何度か調査してきたはずなのに、どうして?」

未央「古い警備ユニットが居たみたい。そいつが最近、稼働を停止したらしくて」

凛「ふーん。それで新たに調査可能になったってわけなんだ」


[当局]現在の人類の統治機関。全人類の管理・運営を旨とする
[警備ユニット]おそらくは原生人類の時代になんらかの目的で配備した、戦闘・自衛・警備が可能な機械類のこと

未央「だから、たぶん戦闘に及ぶ心配は無いよ。一応装備一式は持ってきてるけどね」

凛「もし新しく警備ユニットが出てきたら、その時は撤退しよう」

未央「そだね」

凛「この先からはデータベースに無い、未開拓ゾーンだから。気をつけないと・・・」

ガシャン!

凛「あっ!!」

バキンッ!

未央「しぶりん!?」

ガシャーン!

凛「・・・痛った」

凛「やれやれ。言ったそばから足元が崩れたね」


未央「しぶりーん!無事ー?怪我してないー?」


凛「無事だよ。怪我してない。鎧殻が上手く機能してくれたみたい」


未央「登ってこれそうー?」


凛「ちょっと調べてみる。待ってて」


[鎧殻]表皮を覆う硬質な膜のような組織。クローン製造時に鎧殻組成器官を設けることで生成される。
これに覆われた造成クローン人類は宇宙空間でも生存が可能。耐衝撃・耐摩耗性などに優れる
[組成器官]造成クローンには346細胞により、本来の遺伝子構造では存在しなかった様々な臓器等を付与できる

凛(どこか、登れる場所は・・・)

凛「地下に思ったよりも広い空間がある」

凛(何のため?)

凛(もしかして、さっき言ってた警備ユニットはこの場所を守っていた・・・?)

凛「そして・・・」

凛「なんだろう、この物体」


凛(そこには、筒状の金属の物体が安置されていた)

凛(大きさは人間一人がすっぽりと収まるくらい)

凛(まるで、柩のようだ。そう思った)

凛「未央、やっぱり降りてきて。ここは調査が必要な場所みたい」


未央「了解。降りてみるね」


凛(この物体、見た目はただの金属の容器)

凛(なのに・・・すごく気になる)

凛(どうしてだろう?)


凛「・・・すみの方に何か書いてある」

凛「ええと、何かの名前かな?」

凛「『島村卯月』・・・?」

中断

『島村卯月』


ヴゥン・・・!


凛「起動した!?」

未央「しぶりん、何したの!?」

凛「ごめん、音声認識だったみたい」

未央「どうしよ!?ここ大気が無いし、もしこれで蓋が開いたら死んじゃうよ!」

凛「・・・死んじゃう?」

未央「あれ?」

未央「あれ?なんで私、これに生き物が入ってると思ったんだろ?」

凛「ううん。私も」

未央「えっ?」

凛「私もこの物体の中に、誰かがいる気がしてるんだ」

未央「二人して変なの」

凛「それよりも、この物体どこかに運ぼう。未央の言うように、ここで開いたりしたら危険かもしれない」

未央「そだね。どこか密閉空間で大気と放射線を調整しないと」

未央「てか、これそもそも動かせるの?固定されてない?」ぐいっ

凛「下手に動かさない方がいいのかな?」

未央「一発分だけ遮光膜を射出できるから、動かせないなら包んじゃおっか?」

凛「それが一番良いかもしれない。光源と空気精製器の予備を使うことになるけど」

未央「それじゃあ道具持って来てからだねー」


[遮光膜]光や熱、放射線やガスを遮断する物質を射出する装置。対象を膜状やバルーン状に覆う。
膜の内部に必要な物資を入れてから包めば臨時の生活空間として代用可能
[空気精製器]生命活動に必要な割合の気体を作る装置。温度の調整も可能

凛「どっちかはここで待機だよね?」

未央「私が拠点まで行ってくるよ。しぶりん上に登るルートわかんないっしょ?」

凛「ごめん、お願い。ここでこの子と待ってるから・・・

ひたっ

凛(無意識に、その柩のような物体に触れただけだった)

凛(たまたま私と未央が、同時にそれに触れるかたちとなって)

凛(ただそれだけのはずだったのに)



バシュンッ・・・!

未央「開いた!?」

凛「どうして・・・?」


凛(開いたのは、言うならば外蓋のような部分で、中をガラス質の透明な窓から見えるようになった)

凛(そして柩の中には・・・)



卯月「・・・ん~~」ぱちっ

卯月「おはようございますっ!凛ちゃん、未央ちゃん!」にこっ



凛(女の子が、いた)

中断

凛(どうしてこの女の子は私の名前を知っているんだろう?)

凛(どうして私もこの子を知っている気がするのだろう?)

凛(どうして、私はこの子を見ると懐かしい気持ちになるのだろう?)

凛(この出会いは・・・何だ?)


未央「ね、ねぇ。君は、誰?どうして私たちの名前がわかるの?」

卯月「えっ、私ですか?」

卯月「私は・・・あれ?」

卯月「私、私の名前ってなんでしょうか?」うーん

凛「どういうこと?私たちの名前はわかるのに、自分の名前はわからないの?」

卯月「はいっ!凛ちゃんと未央ちゃんの名前は、顔を見た時になんとなくわかっちゃいました」

卯月「私たち、会ったことがあるのかもしれませんね!」にこっ

凛「そんなわけが・・・」


凛(『会ったことはないはずだ』)

凛(そう言い切れない思いがしていた)

凛(おそらくは、未央もそう感じているのだと思う)

未央「彼女、記憶の冷凍焼けかもしれないね」

凛「可能性はあるね」

卯月「よくわかりません・・・」

凛「ねぇ。アンタの入ってる物体に『島村卯月』って書いてあるけど、これって名前なんじゃないの?」

卯月「そうなんですか?なら私、きっと島村卯月なんですねっ!」

未央「まいったね」


[冷凍焼け]長期のコールドスリープから覚めた時に起こる一時的な記憶障害の俗称。稀に治らない場合がある
[コールドスリープ]生物を超長期間生命活動を維持したまま保存する技術全般のこと。
古くは生物を絶対零度下に置いたためコールドスリープと呼ばれる。現在では方法はそれに限らず様々な種類がある

卯月「ところで、私はどこにいるのでしょうか?何かの中に入っているみたいですが・・・」

未央「こっちが聞きたいよ」

凛「こんなケース、初めてだよね?」

未央「生きた人間が、しかも原生人類の可能性がある人間が見つかるなんて聞いたこともないよ」

凛「ともかく、当局に報告しないと」

卯月「よくわからないけど、お世話になりますね」にこにこ

未央「気楽なもんだよ・・・」

凛「ねぇ。アンタ・・・島村卯月、さん?」

卯月「卯月でいいですよ、凛ちゃん。なんでしょうか?」

凛「卯月。アイドルって何か知ってる?」

未央「しぶりん?」

凛(遺跡で見つけた謎の女の子に、どうしてそんなことを聞いたのかは私自身わからない)

凛(でも、彼女ならきっと知っている気がしたから)


卯月「アイドル!」

卯月「はい、知ってます!」

凛「!! 本当に・・・?」

未央「うそっ、アイドルを知ってるって、本当!?」

卯月「はいっ!」

卯月「だって私、アイドルなんです!」にこっ

中断

凛「卯月がアイドル・・・?」

卯月「はいっ!」にこにこ

凛「ねぇ、教えて。アイドルっていったい何なの?」

未央「私も知りたい!アイドルって何!?」

卯月「うーん、アイドルというのはですね・・・」


ドガーン!


凛「!!!」

未央「何!?」バッ


警備ユニット『ウィーン ウィーン』


凛「警備ユニット!」

未央「見た感じ、新品っぽいね」

凛「卯月が目覚めたことで起動したってこと?」

未央「って言うことは・・・」


警備ユニット『ヴィブブブブブブブ!!』ギュッ


未央「気をつけて!こっちに攻撃してくるよ!!」

卯月「どうなっているんですか?」

凛「・・・。卯月、あの警備ユニットはアンタを私たちに渡したくないみたい」

卯月「警備ユニット・・・?」

凛「だから、決めて」

凛「卯月はここに残りたい?」

卯月「・・・。」

凛「卯月はずっとここにいた。だから、もしこのままが良いって言うなら・・・」

卯月「凛ちゃん」

卯月「私を連れて行って!」

凛「わかった。いっしょに行こう、卯月!」

警備ユニット『ヴィーッ!ヴィーーッ!!』


凛「未央!アンプルはもう射った!?」

未央「射ったよ!」

凛「代わって。私が闘う・・・」チャキッ

凛「アンプル、注入!」ブシュッ!

凛「未央は卯月を連れて脱出して!」

未央「了解!!」


警備ユニット『ギュイーン!ギュイーーン!!』


[アンプル]造成クローンが用いる兵装の一つ。注射器。アンプル瓶に調整薬剤を混合し、人体に注射することができる。
単にアンプルと言う場合は拳銃状の持ち手と引き金の付いた注射器と活性346細胞のアンプルとその保温機がセットになったものを指す
[活性346細胞アンプル]生きた346細胞と培養液、調整薬剤が入っている。造成クローンの治療や身体の機能回復など多用途に用いる。
これを特定部位に特定の調整薬剤を混合し注射することで、
造成クローンは一時的な著しい身体能力の上昇、代謝の向上による外傷治癒、欠損した四肢臓器の蘇生などが可能。
346細胞最大の特徴でもある培養液と添加する調整薬剤により多岐の用途で使用できる。
保存には専用の保温機を用いることが推奨される。

警備ユニット『ヴィーッ!ヴィーーッ!!』


凛「薬剤が効いてきた・・・行くよ!」ぐいっ

凛「ハッ!!」グンッ

ベゴン!!

警備ユニット『ヴィ・・・ッ』ガシャン!



未央「蓋が開いて、中のガラスケースだけ外せるようになってる」ガコッ

未央「しまむー!担いで走るから、ちょっと揺れるよ!」

卯月「はいっ!」

未央「よしっ!」ダッ!

凛「アンタ、永い間卯月を守ってたんだね」

警備ユニット『ヴィーゥ!ヴィーーゥ!!』ガシャン!ガシャン!

凛「でも、もういいんだよ」ぐいっ

凛「卯月は私たちといっしょに、ここを出るんだ!!」ドシュッ!

ガシャーーーーン!!

警備ユニット『ヴィィーー・・・・・・ゥ』

ガコン・・・

凛「・・・止まった」

凛「未央、卯月、無事?」

未央「しぶりん!」
卯月「凛ちゃん!」

凛「良かった。怪我無いね」

未央「しぶりんこそ無事?」

凛「うん。多少のすり傷はアンプルで治ったみたいだよ」

未央「えへへっ、そっか。しまむーも平気だよ~」

凛「しまむー?」

未央「うん!島村卯月だから、しまむー!」

卯月「しまむーです!」

凛「相変わらず、変なあだ名」

未央「えへへへっ」

凛「さて、それじゃ当局に報告して帰還しようか」

未央「うん!また新しい警備ユニットに追いかけられても困るし、まずはしまむー連れて脱出だね!」

卯月「はいっ!よろしくお願いしますね!」

注釈が本編

中断します

ピピッ

未央「うん。どうやらしまむーが入れられてる容器?は有害な光やら放射線は通さないみたいだね。簡易検査だけど」

卯月「私、どうしてこんな物に入れられているんでしょう?」うーん

未央「何なんだろうね?中は液体みたいだけど、呼吸できるんでしょ?」

卯月「あれっ?私、意識してませんでしたけど、不思議です!水の中なのに息ができてるっ!」ごぼぼぼ

未央「ははっ。じゃあ水じゃないんだねー」

未央「ふーむ、『容器』って呼ぶのも味気ないなぁ。これからしまむーが入った瓶みたいなのは『フラスコ』とでも呼ぼうか?」


[フラスコ]便宜上命名された島村卯月が封印された円筒形の容器。遺跡に安置された柩状の物体に入っていた。
金属製の機械部分と思われるパーツ以外の大部分はガラス質で中を見られる。
内部は液体で満たされているが呼吸でき、有害な光線等を通さない事が確認されている。

凛「フラスコって言うには縦長で試験管っぽいけどね」

未央「しぶりん、通信できた?」

凛「ううん。まずデータベースに前例が無いか確かめたら、機密案件として弾かれた」

凛「つまり、今回の件で通常無線を使ってわいけないってこと」

未央「あ~。有線通信可能エリアまで行かないとダメかぁ」

凛「自力でどうにか行くしかないね」

未央「大型船で迎えに来てくれるかと思ったんだけどなー」


[データベース]当局が管理する過去の記録や知識を管理しているコンピューター。
当局所属のエージェントからの問い合わせに対し、前例を検索し対応を指示・命令する機能を持つ。
遺跡派遣調査員はここへのアクセス権を持つと同時に、データベースの下す命令への服務規程がある。
[通信]火星の天候や環境、地理的状況如何により、電波、レーザー、有線通信などを使い分けなくてはならない。

凛「仕方ないよ。バギーで一番近い基地まで行こう」

未央「うん。しまむー、車乗るよー」

卯月「・・・。」

凛「卯月?」

卯月「あ、いえ。私、今本当に火星にいるんだなぁって思って・・・」

未央「あ、さっきここは火星だよって言ったら、しまむーすっごい驚いてさ」

凛「ふーん」


[バギー]2組の車輪が付いた四輪駆動車。動力は主に電気。砂地移動のために改造がなされている。
火星では比較的一般的な乗り物。コンピューター制御であり、操縦者が運転する機能を持つものは極めて稀。

凛「卯月は火星に来た記憶は無いの?」

卯月「はい。私の憶えている限り、火星というのは・・・うっ!?」ズキッ

凛「卯月!?」

卯月「あ、いえ、なんだか・・・急に頭が・・・痛っ」ズキンッ

未央「無理しないでしまむー。フラスコから出せないから、治療はできないんだ」

凛「安静にして。ごめん、無理に思い出さなくていいから・・・」

卯月「・・・はい、もう、大丈夫です」

ブロロロロ・・・

未央「しまむー?バギーの乗り心地が悪かったら言ってねー?」

卯月「はいっ、大丈夫です!頭痛はもう治っちゃいましたっ!」

凛「・・・。」

凛(もしかしたら、また卯月が苦しがるかもしれない)

凛(それでも私は質問を抑えられなかった)

凛「卯月」

卯月「はいっ」

凛「さっきの話。『アイドル』が何か、教えてくれないかな?」

中断
質問等があれば答えるかSSに反映されるかもしれません

未央「そう言えばそんな話だったっけ?」ちらっ

凛「卯月は自分がアイドルだって言ってたよね?」

卯月「はいっ!島村卯月、アイドルです!」

凛「アイドルって何?」

卯月「アイドルというのはですね、ええと・・・」

卯月「歌を歌ったり、ダンスを踊ったり、ライブをしたりします!」

凛「歌・・・?ライブ・・・?」

未央「歌って、もしかして音楽?」

卯月「音楽?あ、そう言えばそうですね。歌は音楽の一つですよ」

凛「すごい。音楽って、失われた人類の文化だよね」

未央「うん!私たちが遺跡をいくら探しても、その痕跡しか見つけられなかった。あの音楽だよ!」

卯月「歌や音楽が失われた文化・・・?」

凛「ねぇ、ダンスっていうのはどんなことをするの?」

卯月「えっ、あ、はい、ダンスはですね・・・」





凛「すごいんだね、アイドルって」

未央「ねぇ、しまむーはアイドルだって言うけど、アイドルは音楽を作ることができるの?」

卯月「作れる人もいるんですけど、私はそういうのは全然できなくて・・・」

未央「そっかぁ。聞いてた話とはやっぱり違うみたいだね」

卯月「聞いてた話?」

凛「未央が聞いてた話ってどんなの?」

未央「前に当局のエライ人が話してるのをこっそり聞いたことがあるんだ」

未央「『アイドル因子』さえ見つかれば、失われた人類の文化を復興できるかもしれないって!」

凛「アイドル因子?」

未央「よくわかんないけど、しまむーみたいなアイドルが見つかれば、そのアイドル因子ってのがわかるんじゃないかな?」

未央「私はてっきりアイドルさえ見つかれば、音楽や歌やダンスの秘密がわかるんじゃいかって思ってたんだけどね」

卯月「なんだかすみません。私、まだまだ駆け出しアイドルなので・・・」

未央「ううん!しまむーが見つかっただけですごい事なんだから、気にしないでよ!」


[アイドル因子]現段階ではアイドルにまつわる何かだと推察される。一般人には全く知られていない用語。
当局の上層部ではその存在が確認、ないしは信奉されているものと思われる。

卯月「そうなんですか?」

凛「私たちはたぶんそのアイドル因子を探すために、ずっと遺跡を探してたみたいだし」

未央「しまむーが見つかったことを報告すれば、きっとみんな驚くよ!」

卯月「驚く、ですか?」

凛「うん。きっとアイドルっていうのはすごいものなんだよね。卯月を連れて行けばみんな喜ぶと思う」

未央「ほら!あの基地!あそこに行けば、当局の人に連絡を取れるんだよ。アイドル見つかったって、みんなに教えられるんだ!」

卯月「よくわかりませんけど、島村卯月、がんばります!」


ブロロロロロ・・・


[基地]開拓やエネルギー生産などの何らかの役割を持った拠点。
遺跡派遣調査員は当局の指示で各地の基地に間借りする形で遺跡探索の拠点を設ける。

ブロロロ・・・キィ!

未央「はい到着!手続きするからしまむーはちょっと待っててね」

卯月「はいっ」

凛「・・・ねぇ未央。誰かこっちに来るよ?」

未央「えっ、誰?」


奈緒「君たちが先ほどデータベースに連絡した、遺跡派遣調査員の渋谷凛型と本田未央型だな?」

加蓮「我々は本件の調査委員会より派遣された、査問官だ!」

凛「・・・査問?」

未央「どういうこと?」

奈緒「君たちは、これより我々の指示に従ってもらう。これは当局からの命令である」

未央「えっ、あの、は、はい・・・」

凛「命令って、どんな命令?」

加蓮「質問はこちらからします。そのケースの中が、君たちの発見した例のものね?」

凛「・・・はい」

卯月「えっと、どうかしましたか、凛ちゃん、未央ちゃん?」

奈緒「加蓮、しゃべったぞ!」

加蓮「・・・名前も呼んだね」

加蓮「君たちは彼女と・・・ケースの中のものと会話をした?」

未央「・・・しました」

凛「はい」

奈緒「決まりだね」

加蓮「うん」

卯月「??」

加蓮「君たちの身柄を拘束します!」

奈緒「速やかに指示に従って!」

卯月「へっ・・・!?」

凛「なっ!?」

未央「どうしてっ!?」

中断


質問に答えられる範囲で答えます

地球の設定は大雑把に考えているので、のちに出てくるかもしれません

ウサミンはきっと17歳

プロデューサーのポジションは出そうかどうか迷ってます
出ないかもしれない

奈緒「それじゃあ、必要がない限りはこの部屋に居てもらうから」

加蓮「他の人間や、機械類との接触は厳禁。理解しているわね?」

凛「・・・はい」


凛(私たちは卯月を連れて訪れた基地内で軟禁されることとなった)

凛(名目は機密情報への接触、とのことだ)

凛(当面の間、当局が方針が決定するまでは他者との接触は厳禁)

凛(外出も制限されるのだという)

凛(未央は隣の部屋にいるが、決まった時間以外は会話できない)

凛(彼女はちょっとした休暇だと思うことにする、と嘯いていたが)

凛(仕事として、原生人類に関する文献や資料の勉強を課せられているので、軟禁状態とはいえ暇をする余裕もない)

凛(卯月とは、この軟禁が始まってから会えていない)

凛「・・・卯月はどうしているかな」

みく「局長。発見された原生人類と思われる者に関する報告が来ました」

??「やはり、本物の原生人類でしたか?」

みく「・・・はい。おそらく信憑性は高いかと」

??「なるほど。それで、その者の名前は?」

みく「『島村卯月』だそうです」

??「島村卯月・・・」

??「そうですか。彼女、生きていたんですね」

みく「局長、島村卯月というのは、何者ですか?」

??「彼女はアイドル因子を持つ者だと思われます」

??「いいえ、彼女であればきっとアイドル因子を持っていることでしょう」

みく「では、彼女こそが我々が追い求めた・・・!」

??「素晴らしいことですね。ようやく私たちが探し求めていたひとが見つけられました」

??「今度こそうまくいくと信じたいですね」

??「くれぐれも丁重に扱ってくださいね」

みく「はっ!」

みく「それと、彼女を発見した遺跡派遣調査員についてですが」

??「なにか問題がありましたか?」

みく「島村卯月と、会話によるコミュニケーションをかなりとっており、アイドルに関する情報を得たものと思われます」

??「なるほど」

みく「現在は当該基地に軟禁しておりますが、いかがいたしましょうか?」

みく「遺跡派遣調査員2名、始末しますか?」

??「そうですね・・・」

中断


造成クローン人類は技術的には男性を造ることも可能ですが、
作劇上アイドルしか出てこないことになるので、結果としては女性しか出てこないと思います

フラスコ内の卯月は全裸です
フラスコのガラス質の部分を窓枠のような金属の帯が数本通っているので、大事な部分だけ隠れるかもしれません

??「ふふっ。始末とは、ずいぶんと気が早いですね」

みく「申し訳ありません」

??「彼女の存在を知った者を片っ端から始末していては、どのみちいずれは人手不足になります」

??「コミュニケーションを取れたと言うのなら、彼女はその遺跡派遣調査員たちにそれなりに懐いているのでしょう」

??「その2名を彼女の世話係にすると良いでしょう」

みく「はっ。では、そのように」

??「では、改めて命令を下します」

??「遺跡派遣調査員2名を島村卯月の世話係に任命。一般人にその存在を秘匿する任を与えます」

??「さらに査問官に命じ、至急この火星中枢まで島村卯月と世話係2名を呼びよせてください」

??「彼女も我々の計画を知れば、きっと協力してくれるでしょう」

みく「仰せの通りに、局長」


[火星中枢基地]火星における首都の役割を持つ城塞都市。当局の機関施設などが密集している

加蓮「あなたたちの処分が決定したわ」

加蓮「渋谷凛型、本田未央型、両遺跡派遣調査員は、島村卯月付きの世話係、及び護衛の任を与えられました」

加蓮「原生人類・島村卯月の存在を秘匿するようにとの厳命よ」

奈緒「そして、3人にはあたしたちと共に中枢まで同行してもらうよ」

奈緒「局長直々の招集命令なので、そのつもりでね」


凛「了解」
未央「了解」

凛「それで、卯月は今どこに」

加蓮「すぐに会えるわ。遺物研究班が彼女と彼女の容れ物を検証中だから」

凛「ふーん」

未央「それで、中枢まではどうやって行くの?」

奈緒「万一に備えて陸路を行くことになったよ。連絡鉄道の使用許可が下りたんだ」

未央「すごっ・・・私それ初めて乗るよ!」


[遺物研究班]遺跡派遣調査員の一組織。遺跡より発見された遺物の研究・維持・管理を行う
[連絡鉄道]各基地を地下道で結んだ鉄道路線。主に緊急時の人員や物資の運搬にのみ使われる当局機関専用路線。

凛(火星中枢基地、か)

凛(産まれた時以来だから・・・憶えてないや)

凛(私、どんなところで生まれたんだろう?)

凛(卯月は・・・あの子はどこで生まれてどこから来たんだろう?)

凛(私が卯月と初めて会った時、懐かしい感じがしたのはなぜ?)

凛(中枢まで行けば、もしかしたら卯月のことが何かわかるかもしれない・・・)

中断

ウィーン

加蓮「調査は進んでる?」


卯月「・・・。」すー


奈緒「島村卯月は眠っているのか?」

泉「ええ、先ほど。どうやら睡眠は必要なようです」

志希「食事やらは全く必要ないんだけどね。中に入った液体が役割を担うみたい」

晶葉「ガラス部分の両端の機械が液体を管理しているみたいだ」

奈緒「346細胞の培養液みたいなものか?」

志希「かなり近い物質みたいだねー」


[フラスコ内容液]島村卯月の体調管理全般を担う液状物質。この内部では呼吸や食事・排泄は必要無く、一定の温度が保たれている。
346細胞の培養液に成分は近いらしい。フラスコの機械部によりその管理がなされていると思われる。

加蓮「それで、この容器・・・今後は『フラスコ』と呼称するね。これ、開けられそう?」

泉「この容器、なんらかのロックが掛かっているようです。解析には少し時間を要しますね」

晶葉「でも、破壊しようと思えば壊せないこともないよ」

奈緒「遺物の破壊はなるべく避けたいかな」

加蓮「急いで島村卯月をフラスコから取り出さないといけない理由はある?」

晶葉「無いね。開けるとしても、上層部に指示をあおいだ方がいい」

凛「ってことは、フラスコを開けて卯月を取り出すこと事態は可能ってこと?」


卯月「・・・!」ぴくっ

卯月「凛ちゃん・・・?」


未央「あ、しまむー起きた!」


泉「彼女たちは、遺跡派遣調査員の?」

晶葉「いいの、ここに入れて?」

奈緒「今日付で彼女たちは島村卯月の世話役になったんだ」

加蓮「軽く調査内容を説明してあげて」

志希「そっか。可能だよ。島村卯月はそのフラスコから出ても問題無し」

凛「どういうこと?卯月は生身の原生人類なんでしょ?」

未央「原生人類は生身では放射線に耐えられないはずだよね?」

志希「ところが!彼女は生身じゃないんだな~」

卯月「えっ、私、普通の人じゃなかったんですか!?」

志希「うん。島村卯月は原生人類に346細胞を移植したものだったんだよ」

凛「原生人類に346細胞を移植・・・?」


[346細胞の細胞移植]もともと346細胞は原生人類が作ったものとされており、
何らかの目的でその細胞移植をすることが可能なように作られている。

晶葉「346細胞の移植により、我々造成クローンほどではないにしろ、火星への適応力は高められているはずだ」

卯月「そっか。私、ここから出られるんですね?」

未央「良かったねしまむー!」

晶葉「とは言え、フラスコからの脱出は非推奨だ。どのような不足な事態が起こるかわからん」

泉「希少な生きた原生人類です。うっかり死なせてしまっては困ります」

志希「フラスコから出ない限りは安全みたいだし、中枢の研究施設でじっくり解析してからが無難かなー?」

卯月「そうなんですかぁ・・・」

未央「がっかりしないでしまむー!」

凛「私たち、これから中枢まで行くんだよ」

卯月「本当ですか!?二人もいっしょに、そのちゅうすうってところまでっ」

凛「うん。中枢の研究施設なら、きっと卯月のことがもっとわかるはずだよ」

未央「いっしょに行こうしまむー!」

卯月「はいっ!私、凛ちゃんと未央ちゃんがいっしょなら、どこまでも行きます!」

中断

【火星中枢基地】


未央「ふぅ!まさかたった数時間で中枢まで来れちゃうなんて、連絡鉄道ってすごいねー!」

奈緒「地下の真空の専用通路を亜音速で移動するんだ。これでも揺れないようにかなり速度抑えて走ったらしい」

卯月「すごいんですねぇ」

加蓮「私たちは上層部に到着の報告をしてくるから、しばらくくつろいでていいよ?」

凛「そうしてる」

卯月「ここが中枢・・・火星の、都市」ぼーっ

未央「やっぱりしまむーには珍しい?」

卯月「はい。でも、この街は空があるんですね」

未央「あれはスカイスクリーン。スクリーンにかつての地球の空を映しているんだって」

卯月「地球の・・・!」

未央「私たちには見なれないけど、中枢の名物みたいなものなんだよ」

未央「あっちは擬似太陽。上空全面をスクリーンで覆ってるから、あれがこの基地の光源」


[スカイスクリーン]中枢基地の屋根内面を覆うスクリーンパネル。地球の空の記録映像を時間に合わせて常時放映している。
[擬似太陽]中枢基地の屋根中央部にある太陽を模した巨大な光源。夜間は月の光を模した輝きにまる。

凛「これが地球の空なんだね。私も初めて見る・・・」

未央「しぶりんは生まれて以来初めて中枢来たんだっけか?」

凛「0歳代にここで生まれて、移送された記録があるんだ。記憶無いけどほぼ15年ぶり」

未央「私も20年ぶりくらいかなー?」

卯月「えっ?」

卯月「未央ちゃん、何歳なんですか?」

未央「私?製造から40年だよ」

凛「私は15年」

卯月「そ、そうなんですか・・・」

未央「えへへ。しまむーはクローン見慣れてないから、驚くかもね」

卯月「びっくりしました・・・」

未央「あれなんかも、驚くんじゃない?」

卯月「?」じーっ


[造成クローンの寿命]346細胞を断続的に注入される造成クローンは半永久的な寿命を持つ。
346細胞を摂取しない場合の寿命は個々の状況により異なる。

渋谷凛型「・・・。」てくてく


卯月「凛ちゃん!?」

卯月「?? !?」キョロキョロ

凛「私はこっち」

未央「クローンだからね。たまに同型がいるんだよ」

卯月「凛ちゃんが二人いると思ったから、びっくりです!」

未央「やっぱり驚いた!」

凛「実は私も自分と同型の個体初めて見るんだよね。あんな感じなんだ、私って」

未央「って、しぶりんもかいっ!」

未央「まぁ、確かに渋谷凛型はちょっと珍しいかもね」

卯月「珍しい・・・?」

凛「運動能力が高かったり、学習能力が高い型の方がたくさん造られるから」

未央「と言うか、胎児期の学習能力が高い型は製造コストが安く済むんだよ」

卯月「安く、ですか・・・」


[造成クローンの成長と教育]造成クローンは胎児から幼少期までは成長速度を速め、睡眠学習装置の中で教育を受ける。
1歳を過ぎると睡眠学習装置から出され、他の造成クローンの子供と共に生活し、情操教育と睡眠学習装置の半々の教育を4歳まで受ける。
4歳で成人してから1年ほどは各自の任務のための訓練に当てられる。
[睡眠学習装置]造成クローンの脳内で擬似的な体験学習をさせる装置。効率的に学習を行うために、被験者の脳内時間を加速させる。

未央「そうそう。造ってから出来が悪くて廃棄する分は無駄なコストになっちゃうでしょ?」

卯月「は、廃棄!?」

凛「うん。任務に適さない造成クローンの個体は廃棄されるんだけど・・・」

未央「地球の原生人類は違ったの?」

卯月「そんな。廃棄だなんて・・・」

中断

繰り返しになるが、注釈が本編みたいなものなので

凛(卯月、すごくショックな顔してた)

凛(廃棄の話をしてから、喋らなくなっちゃった)

凛(地球と火星では、かなり違う生活だったのかな・・・)

凛(卯月はどんな場所で生まれたんだろ?)

凛(・・・私こそ、どこでどう生まれたのかも知らないくせに)

凛(私たちの生活って、卯月から見るとひどいのかな?)

凛(卯月が笑っていていてくれないと、すごく不安になる)

凛(どうしてかな・・・)

ウィーン


加蓮「準備が出来たよ」

奈緒「これから局長にお会いする。3人ともついて来てくれ」

卯月「・・・はい」

未央「きょ、局長か~。私初めてだよ、お会いするの」

凛「どんな人なの?」

奈緒「うーん、人って言うか・・・」

加蓮「会えばわかるよ」

凛「ふーん?」

卯月「・・・。」

卯月「凛ちゃん、未央ちゃん」

未央「なーにしまむー?」

凛(卯月、ようやく口をきいてくれた)

卯月「局長っていうのは、どんな人ですか?何をする人なんですか?」

未央「んー、私たちもよく知らないんだけど、この当局の一番偉い人だね」

卯月「当局の・・・一番偉い人・・・」

未央「当局ってのは、全人類の最高統治機関。つまり局長は一番偉い人だよ」

凛「私たちもその言葉でしか知らないけどね」

卯月「そうなんですか」

卯月「じゃあ、今のこの世界を作っているのが、その局長さんなんですね・・・」


[局長]当局局長。現在の全人類の指導者にして最高権力者。全人類の管理・運営を担う。

【火星中枢基地・最深部】

ウィーン


加蓮「ここに局長がいらっしゃるんだよ」

未央「一番地下深い場所にいるんだね」

奈緒「ああ、そうだ。失礼の無いようにな」

卯月「・・・。」



??「よく来てくれましたね。皆さん」



凛「これが・・・局長!」

未央「液状コンピューターの中の、人格プログラムだったんだ!」


[液状コンピューター]ドロドロとした半液体状の物質内に金属線等により電気信号を用いるコンピューターの総称。
人間の脳に近いとされ、人間の人格をコピーするのに適するとされる。
[人格プログラム]生きた人間の人格を複製・再現することを目的としたプログラムの総称。

??「その通り。私はかつて存在した人間の人格をトレースしただけのコンピュータープログラム」

卯月「そんな・・・!この世界の人間は、これまでプログラムに従って生きてきたということですか!?」

??「そうなりますね」

卯月「それじゃあ、これまで廃棄されてしまった人たちも、あなたの意思で・・・?」

??「最終的には、私の判断です」

卯月「そんなことって・・・」

??「人間・島村卯月。あなたには聞かせなければならないことがたくさんあります」

??「すべてお話しましょう。この世界の成り立ちを」

??「そして、なぜ我々があなたを探していたのかを」

??「なぜアイドルを探し求めていたのかを


卯月「・・・はい、聞かせてください」

卯月「どうしてこんな世界になってしまったのかを」

中断

飽きっぽいので他のSSを書く合間合間に更新していきたいと思います
質問等があればどうぞ好きなタイミングでお願いします

??「かつての地球では戦争、事故、災害などにより、急速に原生人類にとって住みにくい地になっていきました」

??「滅亡の一途をたどる人類はやがて、まだ未熟なテラフォーミングを携えて宇宙に飛び出さなくてはならなくなります」

??「月、火星、宇宙ステーション、さらにはもっと外宇宙に出るための開拓宇宙船。様々な場所に人類はたどり着きます」

??「しかし、それらすべての地で、未熟な人類は滅亡の運命を逃れられません」


[テラフォーミング]人為的に特定地域の環境を地球的にする技術全般。
かつての原生人類は地球の荒廃速度にテラフォーミングの技術研究が追いつかなかったため、極めて稚拙な技術を用いて宇宙へ進出せざるを得なかった。
[開拓宇宙船]人類未進出の航路を新規に拓くことを目的にした宇宙船。すでに存在する航路を行く場合は航行宇宙船と呼ばれる。
かつての原生人類が乗ったとされる開拓宇宙船は事実上の難民船に近いものであった。

??「宇宙での定住は失敗が連続し、人類は少しずつ摩耗していきます」

??「それでもなお、自分の子孫を遺そうと試みる者たちがいました」

??「現在のクローンたちのオリジナルです」

??「346細胞を使い、あらゆる環境に適合できるクローンを造ることで、自分たちには出来なかった宇宙での定住を実現します」

??「造成クローン人類の誕生です」

??「そして、宇宙の環境に適合した造成クローンが生き残る一方で、原生人類は滅亡に向かいます」

??「その過程で、人類の文明は多くが継承されませんでした」

??「生存に必要な科学技術の継承と発展を優先させた結果であり、どうしようもないことでした」

??「『アイドル』もその継承されなかった、途絶えた文明の一つですね」

??「やがて原生人類が滅亡し、造成クローン人類の生活基盤が安定すると、失われた文明の数々を求めるようになりました」

??「多くの遺跡や外宇宙へ出た開拓宇宙船の痕跡を探す日々が始まります」

??「そして、ついにあなたを見つけた」

??「人間・島村卯月」

??「いいえ、『アイドル・島村卯月』!」

??「あなたこそ、私たちが探し求めた人なんですよ」


卯月「私を、アイドルを探していた・・・」

卯月「人類の歴史や火星の事情。少しだけわかった気がします」

卯月「でも、アイドルをそこまでして探し求めていた理由がよくわかりません」

??「現在、造成クローン人類の文明は頭打ちなんです」

??「このままではさらなる進歩は望めず、かつての原生人類と同じ運命をたどるでしょう」

??「それを避けるためには、人類の文明の遺産であり、その粋」

??「人類最大の発明である『アイドル』が必要なのです」


卯月「アイドルが人類最大の発明・・・?」

??「そうですよ。アイドルこそ人類の最大の発明であり、文明」


??「そう、『偶像(アイドル)』!!」


??「崇め奉るための偶像!」

??「造成クローン人類にはどうやってもたどり着けなかったその対象・・・!」

??「たとえどれ程理不尽でも、非効率であろうとも、人類すべてが一致し崇拝していられるもの」

??「それこそが人類の生み出した最大の文明」

??「私たちはこの地に、造成クローン人類たちに」


??「『神』を復興させたいのです」

中断


クローン以外の人間はこの通り滅亡しており、もしかすると生き残りがいないかと造成クローン人類たちが探していました
人間以外の家畜に関しては一部原種が保存されています

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