P「千早、学校はどうだ?馴染めてるか?」
千早「なんなんですかいきなり。大きなお世話です、プライベートに干渉しないでください」
P「そうはいかない。最近仕事がパッとしないのは普段の生活でストレスを抱えているからだと俺は思うぞ」
千早「はぁ……馴染めてますよ、これでいいんですか?」
P「いいやよくないね。千早のことだから『歌以外興味ありません』とか言って周囲に壁を作ってるんだろ」
千早「そ、そんなことありません!」
P「でも千早ってそういうタイプだろ。告白してきた奴に『歌以外興味ありませんから』とか言って振るだろ?やったことあるだろ?」
千早「ありません!いい加減にしてください」
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P「いるんだよな~たまに。ジュピター相手でも振るからねそういう人は。あ~こわいこわい」
千早「くっ……」
P「今までに何人振った?いったいどれだけの男が千早という高い壁の前に砕け散った?」
千早「……よ」ワナワナ
P「え?何?」
千早「ゼロですよ!ええ、初日の自己紹介で『歌以外興味ありません』って言ったら、浮きましたけど何か?学校で一言も話さない日もありますけど何か?男どころか女すら近寄ってきませんけど何か?何か文句あるんですか!?」
P「あ、ありません……」
P(文句ありまくりだけど、今言ったら死ぬな……)
千早「それを知ってどうするというんですか?歌の仕事を増やせるんですか?増やせないでしょう?普段から言うように、私は歌にしか興味ありません。ですから歌の仕事も取ってこれないような人と話すことには興味ありません!」スタスタ
P(千早を少し怒らせてしまったみたいだ……)
P「はぁ、参ったよ……」
春香「うへへ、プロデューサーさん、千早ちゃんに怒られてやんの」
P「おうリボン、どこから湧いて出た。少し黙れ」
春香「黙りませ~ん。さっき千早ちゃんとすれ違ったんですけど、すごい剣幕でしたね。どうしたらあんなにキレるんですか」
P「普段の学校生活について聞いてみたんだよ。健全な生活ができているか確かめるためにな」
春香「で、どうだったんですか?千早ちゃんの学校生活」
P「まあ、あまりよくないみたいだな。孤立気味だ」
春香「でもそれを知られたくらいで怒りますか?」
P「ああ、誰にも告白されたことがないのもついでにバレたからな。プライドを傷つけてしまった」
春香「ぶふっ!でも千早ちゃん、それで怒るってことは、年相応に恋愛のこと気にしてるんですね」
P「ああ、確かにそうなのかもな……っておい、お前笑ってるけどさ、何、普段モテモテなの?」
春香「のヮの」
P「どっちだよ!……いや、分かるよ?そりゃアイドルだもん。知ってるよ、ファンクラブがあってさ、アレだろ、屈強な男に守られて校舎を闊歩しているんだろ。とっかえひっかえしてるんだろ」
春香「意味が分かりません!そんなことするわけないじゃないですか!」
春香「そんな人なんかより、私はあなたに守ってほしいんですよ……」
P「えっ!?春香、今なんて……」
春香「ふふふ、プロデューサーさん、テンプレ台詞ですよ、テンプレ台詞!騙されちゃいました?」ニヤニヤ
P「え?何のことかさっぱり分からないな~。何、天ぷらだって?そんなに天ぷらが食いたかったならおととい言え、連れてってやったのに。はっはっは」
春香「は?プロデューサーさん、冗談は顔だけにしといてくださいよ。穴という穴に大量のえび天を詰め込まれたいんですか?」
P「おい、随分な言い方じゃないか。そういえば、チョコレートの天ぷらって美味いのかな?春香なら知ってるだろ」
春香「なんですか、急に話が飛びましたけど、それは暗にバレンタインの注文をしているんですか?男の風上にも置けませんね」
P「ちげーよ!思いついただけだ!」
春香「思いつくにしても普通アイスクリームの天ぷらでしょう?やっぱり深層心理でチョコをせびる気持ちがあるんですね。下衆ですよ、下衆!」
P「はっ、アイスクリームの天ぷらだぁ?だからお前はいつまでたっても『普通』なんだよ!どうせ将来取る免許も普通自動車免許なんだろ」
春香「それは誰でもそうでしょうが!」
P「まあな。で、何の話だったっけ?」
春香「千早ちゃんの話でしょ!」
P「ああ、千早の話だったな。そう、うまく仕事が取れないんだよ。冷たすぎて印象があまりよくないからだと思う。とびぬけた才能とはいえ、もう少し『普通の女の子』らしさがないとテレビ出演は厳しい。残念だがそういう世の中なんだろうな」
P「そこで春香、丁度いいから手伝いを頼みたい。千早をもう少し普通の女の子らしくしてやりたいんだ。歌以外の仕事でも感情が出せるように」
春香「プロデューサーさん、これでも私は普通すぎるとか散々言われて、それなりに悩んだりしてたんですよ?私にとって、『普通になりたい』という願いはイヤミでしかありません。だから断ります」
P「春香、俺が言いたいのは、千早は本当は優しい女の子なんだってことを、みんなに知ってもらわなきゃならないってことなんだよ。言葉が悪かったなら謝る。頼む春香、手を貸してほしい」
春香「……見返りは?」
P「は?」
春香「タダでモノ頼むつもりですか?」
P「わかってるけどさ……」
春香「プロデューサーさぁん」
P「なんだよ、怪しいな」
春香「一週間」
P「何?」
春香「一週間、私の言うことを何でも聞いてくれますか?」
P「ぐっ……」
春香「できないならこの話は無しです」
P「一日なら……」
春香「千早ちゃんのこと、うまくいくといいですね」スタスタ
P「ちょ、春香さん、待って!お前だけが頼りなんだ」
春香「『お前』?言葉遣いがなってないみたいですけど」
P「……くっ!春香様、あなただけが頼りなのです。一週間……くそっ!一週間あなたの言うことを聞きますから、どうかこの卑しい私めに、お助けを」
春香「くすくす……自分から『卑しい』なんて言葉を使うなんて、プロデューサーさん、変態ですね。でもわかりました。そんなに頼られたら、無視するわけにはいかないですよね。まあ、千早ちゃんが気になるのは私もですし、助けてあげます」
P「どうしてこうなった……」
春香「じゃあ、ちょっと千早ちゃんと話してきますね」タタタ
P「頼んだぞ」
ドンガラガッシャーン
P「白か……」
所変わって……
春香「千早ちゃん、さっきは随分機嫌が悪かったみたいだけど」
千早「え!?それは……何でもないの」
春香「何でもないわけないよ!プロデューサーさんと喧嘩したって聞いたよ?」
千早「喧嘩だなんて、そんなこと」
春香「でも、プロデューサーさん怒ってたよ(大嘘)」
千早「えっ……」
春香「これは大変だなぁ、仲直りできるかなぁ。さすがに見捨てられることはないと思うけど」
千早「プロデューサーが……見捨てる……春香!その話本当?」
春香「どうだったかなぁ」のヮの
千早「春香、プロデューサーは何て言ってたの、教えて!」
春香「えっと、確か『歌以外の仕事でももっと自分の感情を出してほしい』だとか言ってたような……」
千早「そんな、今の私には到底無理だわ……くっ、こうなったらプロデューサーとどこかに出かけて、その流れで仲直りをしないと」
春香「うんうん、そうだよね……って」
春香「えっ、千早ちゃん?プロデューサーさんと、何て?」
千早「だから、プロデューサーとどこかに出かけて、仲直りするって」
春香「ん?」
春香(千早ちゃん、それデートだよ!デート!え?もしかして千早ちゃん、普段からプロデューサーさんとそういうことを……)
千早「どうしたの、春香?」
春香「……千早ちゃん、知ってたら謝るけど、それってデートじゃない?」
千早「デ!?そ、そんな訳ない……いや、そう言われてみればそうかも……」
千早「……どうしよう春香、助けて」
春香「千早ちゃんがポンコツだった(う、うん……)」
春香(でも、プロデューサーさんと千早ちゃんが付き合ってる、って訳ではないのか……)
春香「えっと、まず聞きたいんだけど、千早ちゃんってプロデューサーさんのこと、好きなの?」
千早「べ、別に好きじゃないわ。ただ、歌のことを気兼ねなく話せる初めての人だから、少し気になっているだけで」//////
春香(あ、これ完全に好きな時の反応だ)
春香(そっかぁ、千早ちゃん、プロデューサーさんのこと好きなんだ……)
春香「そ、そうなんだ……じゃあ、今回はあくまでも事務的なデートっていうことだね」
千早「事務的なデート……使い勝手のよさそうな言葉ね」
春香「そう!だから今回は、プロデューサーさんをあくまでも『事務的な用事』として誘って、そこで仲直りをするといいんじゃないかな?」
千早「なるほど!」
春香「最初にどこに行きたいのかは決めておいた方がいいかもね」
千早「謝るのだし、話しやすい所がいいわね。となると……」
こうして、千早はプロデューサーとデートをすることになった……
そして……
千早「あの、プロデューサー」
P「千早か。どうした?」
千早「これはあくまでも事務的なことなんですが、明日は空いてますか?」
P「明日か?まあ、午前で絶対しなきゃならない仕事を片付ければ午後は何とかなる」
千早「そ、そうですか。それなら、明日は付き合ってください」
P「どうした?用事なら今済ませてもいいぞ?」
千早「だめです。じっくり話し合う必要があります。今後のことなども含めて」
P「お、おう。そういうことなら午後は空けておくよ」
千早「これはあくまでも仕事の話し合いですからね。誤解しないでください。変な期待を抱かないでくださいね!」タタタ
P「行ってしまった……」
春香(千早ちゃん、意外と肝が据わってるな……ってやばい、プロデューサーさんにばれたかな?)
P「おい、春香、出てこい。そこにいるのは分かってる」
春香「ばれてましたか。どうしました?プロデューサーさん」
P「これはお前が関係しているのか?」
春香「どうでしょう。でも、これで仲直りの機会ができましたね。よかったじゃないですか」
春香「これを機に千早ちゃんと仲良くなって、普段の千早ちゃんをもっと知って、営業に役立てたらいいんじゃないですか?」
P「そうだな……春香、ありがとうな」
春香「まあ、約束は約束ですから。しっかり千早ちゃんと話してください」
P「ああ、わかったよ」
翌日
P「これでとりあえず終わりか……おーい千早、終わったぞ!」
千早「そんなに大声じゃなくても聞こえます」
P「悪かったな。腹減ったし、飯でも食いに行くぞ。おごってやるから千早も来い」
千早「おごっていただかなくても結構です」
P「そう言うなよ。とはいえ、どこに行くかは決めてないんだけどな……」
千早「だらしないですね。私なんてそこのコンビニ以外行かないので、迷いようがありませんよ」
P「しかも買うのはいつも非常食だろ。それはそれでどうかと思うけどな」
千早「プロデューサーには一生分からないんでしょうね。本当はチーズ味が食べたいのに、においが気になってプレーンで妥協する人の気持ちが」
P「そんな気持ち分かりたくもないわ!」
千早「担当アイドルの気持ちを『分かりたくもない』ですか。屑ですね」
P「おい、結構傷つくんだけど。千早の罵倒、ほんと心に刺さるから勘弁して」
千早「あっ……」
千早(そういえば、今日はプロデューサーと仲直りする予定だったんだ。ついいつも通りの態度で接してしまったわ。プロデューサー、やっぱり怒ってるかしら?本当は私のこと疎ましく思いながら、こうやって話してるんじゃ……)
千早「あの、ごめんなさい……」
P「お、おう……でも、謝るほどのことじゃないぞ」
千早「すみません……」
P「ま、まあ、千早のいうことも確かに一理あるな。今度の昼飯は○ロリーメイトを全種類食べてみるよ」
千早「はい……」
P(そこは『しなくていい』って言ってほしかった……)
P「そうだ千早、こうして適当に歩いてるけど、気になった店があったら言えよ。ランチ3000円の店とかじゃなければ連れてってやるから」
千早「そうですか?じゃあプロデューサー、あそこに行ってみたいです。あのビルの最上階」
P「おいっ!高級ホテルじゃねーか!人の話聞いてた!?」
千早「そう言えと言われたような気がしたんです。それはともかく、前々から気になっていた店があるんですけど……」
P「ん?どこだ?」
千早「あそこです」
P「あれは……?や○い軒じゃないか」
千早「はい。ここでいいですか?」
P「もちろん。だけど、どうしてここを?」
千早「は?高槻さんがかわいいからに決まっているでしょう!?そんなことも分からないんですか!!」
P(ここはやよいとは一切関係ないんだけどな……)
千早「高槻さんの店……ふふふっ」
P(まあ、久しぶりの笑顔も見れたし、黙っておくか)
入店……
店員「いらっしゃいませ、そこの券売機で食券をお求めください」
千早「えっ、ちょっと、何ですかこの機械は。聞いてませんよ」
P「そうか、千早は食券の店は初めてか。とりあえず食べたいもの決めろ。俺が買っておくから」
千早「いやです!せっかく高槻さんの店に来たんですから、一人で全部やります!」
P「そうかよ。じゃあこれ金な。俺は向かいの券売機で買うから、がんばれよ」
千早「そうは言ったけど、どうすればいいのかしら……」
千早「ボタンがないのだけれど……どうすれば動くのかしら」
券売機「タッチしてメニューをお選びください」
千早「あっ!……いえ、知っていたわよ?それくらいは」ポチッ
千早「あっ!やった、メニューが表示されたわ!」
千早「それにしてもたくさんのメニューがあるのね……パフェがあるのは予想外だわ」ポチポチ
千早「高槻さんが作ってそうなのは……野菜炒めかしら」
千早「ああ、でもサバの味噌煮も捨てがたいわね」
千早「迷うわね……」
後ろのおじさん「嬢ちゃん、迷うのは分かるけど早くしてくれよな」
千早「ひゃっ!ご、ごめんなさい!それじゃあ、サバの味噌煮を……」ポチッ
券売機「お金を入れてからメニューを選択してください」
千早「くっ!」
その後……
千早「さすがは高槻さんの店ね。注文の段階から簡単にはいかないわ」
P「いや、千早くらいだからな。あんなに手間取るのは」
千早「あんなもの、私にとっては手間取った内にも入りません」
P「強がりを……」
千早「それでプロデューサー、昨日のことなんですけど……」
P「昨日?ああ、千早を怒らせちゃったな。ごめん」
千早「その、私こそ」
P「アイドルなのに告白の一つもされないなんて、知られたらそりゃ恥ずかしいよな、俺だったら穴掘って埋まるわ」
千早「~~!!」
P「!?……っていうのは冗談で……」
千早「冗談でも、言っていいことと悪いことがあります」
千早「ひどいです、プロデューサー」
P(やばい、やってしまった……本当にバカだ、俺)
P「なあ千早、軽はずみな発言ばかりで、迷惑かけてごめんな?」
千早「……許しません」
P「ほら、ご飯もきたし、食べようぜ?」
千早「……あなたのお金で買った食事なんて、いりません」
P「ぐっ……!」
千早(くっ、こんなこと言いたくなかったのに……どうして私はこうなんだろう。プロデューサーに嫌われてしまったかしら……)
P「そうだよな、考えてみると俺ってなれなれしすぎてプロデューサー失格だよな……千早のこと、女の子扱いしてなかったかもしれない。本当にごめんな。これからは態度を改めるから、機嫌直してくれないか?」
千早「プロデューサーは、私のことが嫌いなんですよね……」
P「えっ!?どうしてそんなことを言うんだ」
千早「私のことが嫌いだから、そうやって意地悪するんでしょう」
千早「これでもプロデューサーのこと、信頼していたんですけど……プロデューサーはそうじゃなかったんですね」
P「そんな訳ないだろ!千早は俺の担当アイドルだぞ、嫌いなわけあるか!」
千早「じゃ、じゃあ、すす、す、好きですか?」
P「好きに決まってるだろうが!」
千早「ふえっ!?」
P「当たり前だろ!俺が千早のファン一号だぞ!死ぬまでお前のファンでい続けるからな、覚悟しとけ」
千早「そ、そうですか……ありがとうございます」
千早(あくまでもファンとしてよね)
千早「分かりました、これからは気を付けてください」
P「ああ。じゃ、暗い話はこれくらいにして、食べようか」
千早「ええ、いただきます」
P「千早はサバの味噌煮か。うまそうだな」
千早「なんですか、和解したとたん物欲しそうに。図々しいにも程がありますよ」
P「うるせー」
後ろの席で……
春香(気になりすぎて尾行してしまった……)
春香(やたら深刻な話してたけど、や○い軒でする話じゃないでしょ!千早ちゃんもよりによってデートでや○い軒!?)
春香(それにしても千早ちゃん、怒ると怖いなぁ……気をつけよう)
春香(チキン南蛮おいしい……って千早ちゃんの様子が?)
Pと千早のテーブルでは……
P「ここ、ご飯お替わり自由なのがいいんだよな。ちょっと取って来る」
千早「いってらっしゃい」
千早「プロデューサーのからあげ……」ゴクリ
千早「一つくらい、いいわよね……」モグモグ
千早「おいしい!もうちょっとだけ……あっ、無くなっちゃった」
春香(千早ちゃん~!)
P「もうちょっとお椀を大きくしてほしいんだよな……ってあれ?」
千早「プ、プロデューサー……すみません、全部食べてしまいました」
P「おいっ!!……まあいいや、さっきのお詫びもかねて許す。漬物もお茶もあるしな」
春香(プロデューサーさん、意外と心が広い)
出店……
店員「ありがとうございましたー」
千早「プロデューサー、ごちそうさまでした」
P「おう。しかし千早、普段は小食なのに結構食べるんだな」
千早「食べたいときに食べたいだけ食べるのが私の主義です」
P「俺としてはたくさん食べてくれるのはありがたいんだけどな。千早は少し痩せすぎな気がするし」
千早「くっ!」
P「まあ、無理はするな。今の体形も好きだしな」
千早「そ、そうですか?」//////
春香(食券制だったおかげで尾行がスムーズにできた……プロデューサーさんと千早ちゃん、どこに行くのかな)コソコソ
P「そうだ千早、今後のことを話したいって言ってたけど」
千早「すみません、本当はあなたに昨日のことを謝りたかっただけなんです。だからもう用事は終わりました」
春香(千早ちゃん、それでいいの?)
P「そうか。でもさ、せっかくだからもう少し話そう。俺、千早のことよく知らないしな。千早のことをもっと知って、もっといい仕事取ってきてやりたいんだ」
千早「えっ!?……は、はい、プロデューサーがそう言うなら、少しだけ」
P「そうと決まれば行くぞ」
千早「どこにですか?」
P「飲みに行く」
千早「食べたばかりじゃないですか!ダメ人間ですね」
P「心配するな。きっと千早も気に入るぞ、平日昼から酒に溺れる食っちゃ寝の生活。成人したらやってみろ」
千早「いやです。私はお酒なんて絶対に飲みません」
P「どうして?」
千早「酒なんて飲んでも、喧嘩にしかなりませんから」
P「う~ん、必ずしもそうとは言えないと思うけどな」
千早「世の中に酒さえなければ……」
P(酒の話題はやめといた方がいいかもな)
P「わかったよ、アルコールは無しにしよう。でもさ、そこはいい店だから、千早も気に入るよ」
千早「分かりました、信じてあげます」
移動……
P「ここだよ」
千早「何だか、古そうな店ですね」
P「そこそこ歴史のあるジャズバーだからな」
千早「ジャズですか。クラシックばかり聴くのでさほど詳しくはないですが」
P「そうか、俺はクラシックの方はさっぱりだな。ただな、『交響曲第七番ニ短調』っていい響きだと思う」
千早「ドヴォルザークあたりですか?マニアックですね」
P「いや、曲は聞いたことない。というかそんな曲実在したんだな」
千早「……プロデューサー、何か悪意を感じたのですが、気のせいでしょうか」
P「気のせいだ」
入店……
P「千早、コーヒーでいいか?」
千早「ケーキも付けてください」
P「お前、少しは遠慮しろよ……まあいいけどさ」
春香(天海春香、まだまだ追いかけますよ)
春香(いいなあ千早ちゃん。プロデューサーさん、私を担当していた時はこんなところ連れて来てくれなかったのに)
春香(千早ちゃんとプロデューサーさん、ずっと話してる……千早ちゃんがあんなに目を輝かせているってことは、きっと歌の話なんだろうな)
P「千早はクラシックを好んで聴いているんだったよな」
千早「クラシックは好きです。でも、できるだけ多くのジャンルを聴くようにはしています。よりよい歌を歌うためには当然ですけど」
P「へえ、すごいな、千早は。」
千早「そんなことはありません、私なんてまだまだです。オペラの発声は聴きこんでいるつもりなのに、真似しようとしてもなかなかうまくできませんし、ロックだって奥が深くて……」
P「そうなんだ」
千早「ジャズみたいな、自分独特の味を出すのも魅力的ですが、私はまだ未熟なので、今は基礎固めをしたいと思っているんです」
P「はは、千早は本当に歌が好きなんだな。ずっと話していられそうだ」
千早「はっ!?……ごめんなさい、つい夢中になってしまいました」
P「いいって。自分の好きなものについて話してる千早って、こんなにかわいかったんだな。気づかなかったよ」
千早「かわ……!?かわいさなんて、そんなもの必要ありません。なくたって構わないじゃないですか」
P「俺が、ファンが構うんだよ。しかしアレだな、こんなに楽しそうに話す千早を見ると、俺は歌以外にも、もっといろんなものを好きになってもらいたいって思うよ」
千早「歌以外、ですか」
P「そう。きっと、損はしないと思うぞ」
千早「私が歌以外に好きなものって……」ブツブツ
P「はぁ、千早の仕事を増やすためにどうすればいいか、とか悩んでたけど、単に俺が無能だったのか……千早のいい所なんて、普段からいくらでも見つけられたのに、気づかなかっただけだったんだな……」
千早「プロデューサー、私、歌以外にも好きなもの、あるかもしれません」//////
P「おっ、他にあるのか?教えてくれよ」
千早「その、そ、それは……あの、あ、あな」//////
Pの携帯「ヴヴヴ……」
P「ん?ごめん千早、ちょっと連絡がきた」
千早「ひっ!?は、はい。どうぞ出てください」
P「はい、もしもし?あ、音無さんですか?……えっ!?急ぎの書類!?音無さんやってくださいよ……え?無理!?……そうですか、それじゃすぐ行きます」ピッ
P「あのメンドリめ……千早、すまない。事務所に戻らないといけなくなった」
千早「そ、そうですか……(メンドリって何だろう)」
P「本当にごめん。千早の好きなものの話、今度聞かせてくれ」
千早「気が向いたら教えてあげます」
P「あ、そうだ。アルコール止めてくれて助かったよ。おかげでクビにならずに済む」
千早「どうせ冗談でしょう、本当は飲む気なかったくせに……」
P「ははは、ばれたか。じゃあ、ここに金置いとくぞ。好きな時に出ていいからな」
千早「短い間でしたが、楽しかったです。ありがとうございました」
P「こちらこそ。じゃ、また明日な」
千早「はい」
千早「……」ポー
春香(プロデューサーさん、行っちゃった……)
春香(千早ちゃん、さっきすごく動揺してるように見えたけど、何かあったのかな。告白してたりして)
春香(よし、ちょうどいいし真相を確かめにいこう)
春香「ちーはーやーちゃん」
千早「は、春香!?どうしてここに!?」
春香「尾行しちゃった」
千早「尾行!?」
春香「うん。千早ちゃん、何だか顔が赤いけど、どうしたの?」
千早「ちょっと春香、尾行ってどういうこと!?」
春香「その話は置いといて。どうなの、千早ちゃん?プロデューサーさんと進展はあった?」
千早「あると言えばあるけど……」
春香「そうなの?」
千早「ええ、プロデューサーと仲直りできたわ」
春香「うん、見てたから知ってる。千早ちゃん、すごい拗ねてたよね」
千早「春香……後で覚えてなさいよ」
春香「そうじゃなくてね、私が聞きたいのは、さっきプロデューサーさんに何を言おうとしてたのかな~ってこと」
千早「えっ!?な、何の話かしら……」
春香「しらばっくれても無駄だよ。千早ちゃん、プロデューサーさんに告白したでしょ」ニヤニヤ
千早「し、してないわ!」
春香「ふ~ん……じゃあ何て言ったの?」
千早「言わない」
春香「そっか。じゃあ聞かないでおくね」
千早「大体、私はプロデューサーのことは特に何も思っていないから」
春香「はいはい、わかってます」
千早「それならいいけど」
春香「でもね千早ちゃん、たとえ何とも思っていなくても、このままプロデューサーさんにお礼もせずに終わるわけにはいかないよね」
千早「そ、それはそうね」
春香「だから一緒に次のプランを考えよう!」
千早「ええっ!?」
春香「よし、丁度プロデューサーさんの置いていったお金もあるし、コーヒーのおかわり買ってくるね。千早ちゃんもコーヒーでいい?」
千早「勝手におつりまで使って、いいのかしら……」
春香「大丈夫だよ、多分」
千早「多分って……」
注文……
春香「よし、じゃあ飲み物も届いたところで、千早ちゃんがプロデューサーさんとくっつくことを祈って、乾杯~!」
千早「乾杯……って、だから違うわよ、春香!……というかコーヒーで乾杯って何よ」
おわり
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