女「いっその事間違えてしまいましょう」 (48)
女「今帰りですか、先輩」
先輩「そうだけど」
女「そうですかー。ではでは、気をつけて!」
先輩「あー、うん」
女「…………」
先輩「……」
女「待って下さいよ!!」
先輩「何さ」
女「そこは”一緒にそこまで歩く?”とか聞くもんじゃないんですか?」
先輩「知らないよ。”気をつけて”って言われたら”そうだね”って帰るしかないでしょ」
女「一緒に!駅まで歩きましょう!」
先輩「いいよ」
女「わーい!」
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女「最近めっきり寒くなりましたねー」
先輩「そうかなぁ……」
女「寒いですって!先輩無茶苦茶着込んでるじゃないですか!」
先輩「外気温は極力気にせず行動したいから」
女「ていっ」ピト
先輩「冷たっ!!」バシ
女「やんっ」
先輩「何すんの。いきなり首元に手、突っ込んで」
女「先輩に世間の冷たさを味わって欲しくて」
先輩「ムカつく」
女「あー!あー!早歩きNO!ダメ!先行かないでせんぱーい!!」
先輩「はぁ……」
女「代わりに私の首元にも手を突っ込んでも良いですよ!」
先輩「しないから」
女「暖かいですよ!」
先輩「しないから」
女「いけず!」
先輩「そういえば、なんでいっつもついてくるの?」
女「やだなー、先輩がついてきてる癖にー」
先輩「電車の時間変えようかな……」
女「すみません!ただお近づきになりたいな!っと思ったからです!」
先輩「物好きだ」
女「ええ、物好きなんです」
先輩「学年違う時点で話そうって気にはならないでしょ」
女「別にそんな事はないですよ。ただビビビっときたから話したくなる!みたいな」
先輩「へー」
女「で、毎日こうして登下校しているわけですよ」
先輩「まぁ、基本学校じゃ会わないし」
女「誰だ!学年が違うと階も違うという流れを作ったのは!」
先輩「知らないよ」
女「へいカーノジョ、お茶してかない?」
先輩「それはアンタが言われるべき言葉でしょ。電車遅れるし嫌」
女「ああ、喫茶店でのんびり語らう人々の楽しそうな事……」
先輩「じゃあ行ってくれば?」
女「ヤですよ!先輩と帰ります!」
先輩「あー、そう」
女「もうちょっと私に興味持ってくれてもいいんじゃないですかー?私とか秘密いっぱいありそうでしょー?」
先輩「好きな物は?」
女「ドーナツです!」
先輩「好きな飲み物」
女「カフェオレです!」
先輩「ご苦労様、もういいや」
女「酷い!私の秘密を教えたからには、ただでは返しませんよ」
先輩「好きな物は林檎、好きな飲み物はコーラ」
女「ちくしょう!帰りましょう!」
先輩「そうだね」
女「先輩ってクールとか格好良いとかって言われません?」
先輩「言われないよ」
女「私は元気があるとかパッション溢れるって言われるからピッタリだと思うんですよ」
先輩「騒がしいって遠回りに言われてると思うな」
女「オブラートに包んだのに本質を見抜かれた!」
先輩「包む物が薄過ぎるよ」
女「先輩は騒がしいのは好きですか?」
先輩「嫌い」
女「ひゃー」
先輩「けど元気があるのは好き。こっちも元気になるし」
女「ひゃああああ!!」
先輩「うるさい」
女「そのー、急に口説いといてそりゃないですよー」
先輩「口説いてないから」
女「私も先輩といると落ち着くから好きですよ!」
先輩「落ち着けてないのによく言うよ」
女「……なんつって」
先輩「照れてんじゃねーよ」
女「やー」
女「あー、駅が……駅がドンドン近づいてくる……」
先輩「いや、向かって進んでるんだから当然でしょ」
女「次の駅まで歩きましょう」
先輩「電車を使う意味を考えなさい」
女「やだー!今日は帰りたくないのー!」
先輩「誰だよ」
女「先輩の癒し的存在の女です!」
先輩「笑えない冗談はやめて」
女「いつかそうなれると良いな!と思います!」
先輩「はい、頑張ってね」
女「おっとぉ?頑張らせちゃって良いんですか?私、本気になると凄いですよー」
先輩「迷惑にならなければ、別に」
女「ヒモにはしませんからね!」
先輩「いや、そんな気さらさらないから」
女「あー、電車止まらないかなー」
先輩「止まったら困るんだけど」
女「その分先輩といられるので私はオールオッケーです!」
先輩「うわぁ」
女「なんですか!いいじゃないですか!」
先輩「その間一緒にいるこっちの身にもなってほしいかな」
女「またまたーそんな事言っちゃってー」
先輩「…………」
女「せんぱーい?」
先輩「…………」
女「無視は酷いんじゃないですかー?」
先輩「………………」
女「喋らないと舌入れてキスしちゃいますよー」
先輩「やったら殴る」
女「殴りながら言わないで下さい!」
女「明日の電車はどうします?」
先輩「なんでそれをアンタに言わなきゃならないのか……7時10分」
女「ぶつくさ言いながら教えてくれる先輩好き好きーです!」
先輩「うるさい」
女「3両目!」
先輩「5」
女「たまには私に合わせてくれても良いんじゃないですか?」
先輩「アンタが会いにきた方が楽」
女「私がホームから人だかりの中泳いで並んでるの知ってます?」
先輩「……じゃあ、3両目で良い」
女「”アンタにそんな苦労は掛けさせたくないからな”的な!」
先輩「……うるさい」
女「え、あ……その……図星ー、みたいに取られるとこっちも……へへへ」
先輩「…………」
女「気まずいの嫌です!はい!さようならのハグ!そしてグッバイまた明日!」ギュ
先輩「まだ電車、駅についてないんだけど」
女「…………」
先輩「このままでもいいけどさ」
女「やー!これ以上無理無理無理!恥ずかしくて顔から火が出ますから!」パッ
先輩「はいハグ」ギュ
女「うわー、こりゃしんどいですわー」
先輩「仕返し的なアレ」
女「そういうイジメ、良くないと思います、私」
女「…………」
女(昨日3両目にするように、と口約束はしたものの、本当にいるのか不安だなー)
女(もしこれでいなかったら先輩を羽交い締めにして……)
女(……あ、普通に乗ってた!約束守ってくれる辺り本当に先輩大好きです!)
女(意地でも!先輩の前のポジションは譲らない!)
女(乗客皆様にそこはかとなく迷惑をかけてしまうと思いながらも、それだけです!それ以上はあげません!)
先輩「…………」
女「おはよう……ございます」ゼェゼェ
先輩「ん」
女「もっといたわりの言葉とかないんですかっ?」
先輩「ご苦労様……って言いたい所だけど、膝に乗ろうとするな馬鹿」
女「あ、バレました?」
先輩「分かるよアホ」
女「へへへへへ」
先輩「急に気持ち悪い」
女「人ごみ掻き分けたおかげで膝が笑うものでして……」
先輩「あーはいはいアンタの笑いのツボは面白いなー」
女「わー、そっけない」
先輩「そりゃあね」
女「愛想尽かされても知りませんからねー」
先輩「誰に?」
女「私にですよ!」
先輩「尽かすの?」
女「尽かしませんっ」
先輩「言うと思った」
先輩「…………」
女「急に立ってどうしたんですかー?まだ降りる駅じゃないですよー」
先輩「急に立ちたくなった」
女「まっ」
先輩「そして急にアンタを座らせたくなった」
女「いやいやいや!それは先輩に悪いですって」
先輩「うるさい、先輩命令」
女「えー、上下関係の乱用しちゃう系ですかー?」
先輩「するさ、年上だし」
女「とか言いつつ私を気遣ってくれる先輩」
先輩「…………」
女「やー!座り直さないで下さいよー!私も座りたいです!」
先輩「降りる時に代わってあげるよ」
女「遅い!」
先輩「で、座り心地はいかがでしょう」
女「はぁ~……先輩のお尻の温もりがじんわりと残ってます」
先輩「…………」
女「ちょ、その冷めた目線やめてくださいよ。冗談ですってー冗談」
先輩「次そういう変な事言ったら無視するから」
女「先輩に私が無視できますかねー?」
先輩「ちっ……」
女「あー!舌打ちした!」
先輩「あーもううるさいうるさい」
女「お詫びに私の上に座って下さい」
先輩「……」
女「冗談!ジョーク!通じて!私の冗談!」
先輩「…………これでいいの?」
女「あ……はい……」
先輩「重い?」
女「いえいえ、フカフカで暖かいです」
先輩「着込んでるからね」
女「先輩の温もりではない事が悔しい。脱がしていいですか?」
先輩「駄目」
女「っかー!毎朝毎朝よく律儀に寿司箱に押し込められるように電車に乗るもんですねー、皆さん」
先輩「まぁ、そういう用途のものだし」
女「かといって電車を降りてしまえばさっきまでの窮屈さが嘘のような開放感!」
先輩「寒い」
女「暖めますか!?」
先輩「何をだ」
女「やだなー、先輩に決まってるじゃないですかー」
先輩「学校で暖まるからいらない。さっさと行くよ」
女「私というものがありながら!」
先輩「じゃあ暖めてみてよ」
女「えっ……あー……こうですか?」
先輩「30点赤点回避、かな」
女「手を繋ぐぐらいでなければ歩きにくいから仕方ないですね!どうですか!私のポケット中!」
先輩「アンタの手が冷たい」
女「心は暖まっていると信じたいです……」
女「学校に到着しそうです」
先輩「そうだね」
女「肩を寄せ合い登校する私たちを見て周囲の人達は何を思うのでしょうかねー」
先輩「仲の良い友達」
女「ですよねー」
先輩「不満?」
女「不満ではないですけどー……つまらないっていうかー?」
先輩「そう」
女「そんな単純な言葉では説明できない壮大な物語というものがあるのに!」
先輩「ないから」
女「何気ない日常の中出会ってしまった二人!激変する日常!ジェノサーイド」
先輩「勝手に日常を壊すな」
女「いやー、ぶっちゃけ灰色学校生活だったのがびっくり七色ファンタスティック学校生活ですよ?」
先輩「そりゃどうも」
女「先輩は、どうでした?」
先輩「…………」
女「……………」
先輩「赤くなるなら言うなっつの…………まぁでも、少しは楽しくなったと思う」
女「きゃー」
先輩「照れ隠しに変な声出すなっての。それともう離れろ」
女「授業が終わったら迎えに行っちゃいますぜ!」
先輩「勝手にしろ」
女「わーい!」
先輩「下駄箱の所で待ち合わせでいい?」
女「りょーかいですっ!」
先輩「…………」
先輩(寒いな。待つんだったらもう少し暖かい所を指定するべきだった)
先輩(まぁ言った手前、キチンと待ってあげなければあの子は面倒だし)
先輩「…………」
先輩(別に面倒っていうのは悪い意味じゃあなく、応答に色々考えさせられる手間がそこそこ気に入っている自分もいるわけで、好意といっても差し支えはない)
先輩(一体何に対して言い訳をしているんだろう……)
先輩(それにしても、もう大半の生徒が帰ってしまったのに遅過ぎだ)
先輩(いっその事置いて行ってやろうかな)
先輩(きっとそれも面白い。あの尻尾を振る犬のような彼女の事だから、しばらくむくれているんだろうな)
先輩(その後、もっと構えとアレやコレやと理由をつけて何かさせようと企むんだろう)
「せーんぱーいっ」ピト
先輩「冷たっ!」
女「お待たせしました!」
先輩「その首元に手をやるの、やめろ」
女「目を隠すのとどっちか悩んだんですけども、こっちの方が面白そうなので!」
先輩「人を玩具にしないで」
女「な、なんなら……」
先輩「しないから」
女「まだ何も言ってないのに!」
女「怒ってます?」
先輩「怒ってない」
女「じゃあもう一回……」
先輩「なんでそうなる」
女「私に触られるのも満更ではないんじゃないんですかー?ということで」
先輩「嫌いになるよ」
女「嫌です!」
先輩「ならやめて」
女「けちー」
先輩「冷たいのと寒いのは苦手なんだ」
女「じゃあ手、繋ぎます?」
先輩「…………」ギュ
女「先輩の手、暖かいので好きです!」
先輩「アンタの手、冷たいから嫌い」
女「それでも握ってくれるのはどうしてですかねー」
先輩「聞きたい?」
女「是非!」
先輩「…………」
女「……………」
先輩「……」
女「や!やっぱいいです!なんか恥ずかしー!!」パタパタ
先輩「微妙に温いからだよ。何舞い上がってんの、馬鹿みたいに」
女「悔しい」
先輩「だろうね」
先輩「そういえば、随分と遅かったね」
女「あ、やっぱ気になっちゃいます?」
先輩「別に」
女「気にして下さい!聞いて下さい!」
先輩「何してようと関係ないし」
女「……実は男子に告白されてしまいまして」
先輩「へー」
女「あっ、痛い!どうして握る力強めるんですかー!」
先輩「気のせいだよ」
女「そっかー、気のせいかー……いや!このジリジリと強まる手の痛みは気のせいじゃありません!」
先輩「で?それを私に言ってどうしてほしいの?」
女「嫉妬、してくれました?」
先輩「しないよ。元からそんな気ないし」
女「…………ですよねー」
先輩「返事はどうしたの?」
女「それ、先輩に関係あります?」
先輩「……いや、ないね」
女「だったら聞かないでくださーい」
先輩「吹っ掛けてきたのはアンタじゃん……」
女「やめやめー。この話はもうしませーん!」
先輩「あっそ」
女「嫌いです」
先輩「別に構わないよ」
女「嫌いです!嫌いです!大嫌いです!大嫌いになりました!」
先輩「じゃあ手、離してよ」
女「…………それも嫌ですー……」
先輩「アンタは私にどうして欲しいんだ」
女「もっと面白い反応を期待してました」
先輩「どういう?」
女「私の女に手を出すとはけしからーん!!的な」
先輩「や、私も女だし、それはないでしょ」
女「それでもして欲しかったです」
先輩「しないよ、普通」
女「どうして手を握る力、強めたんです?」
先輩「それアンタに関係ある?」
女「あります!大いにあります!」
先輩「なんかムカついたから」
女「誰にですか!?」
先輩「嬉々として話すアンタにだよバーカ、浮かれるな」
女「浮かれてないですもーん」
先輩「口出しなんて出来ないでしょ。恋愛事に何か言える立場じゃないし」
女「私は言って欲しかったです」
先輩「知らないよ」
女「先輩は私の事どう思ってるんですかー!」
先輩「やかましい後輩。ムカつく年下」
女「素直に!」
先輩「馬鹿」
女「辛辣!!」
先輩「それ以上なんてないでしょ」
女「私は先輩の事好きですよ!」
先輩「知ってる」
女「どういう好きか知ってますか!?」
先輩「…………いや、それは知らない」
女「言った事ないですからね!」
先輩「何得意げになってんの。ムカつく」
女「じゃあこの際言わせてもらいますけど!!」
先輩「はいどうぞ」
女「女性として好きなんですよ!」
先輩「うん、それは私もさ」
女「あれ……伝わってないっぽい……」
先輩「友達的なアレでしょ。別に私に遠慮しなくても、男子と付き合う付き合わないなんて勝手にすればいい話だし」
女「はい、先輩ストーップ」
先輩「何?」
女「こっち向いて下さい」
先輩「はい」
女「…………好きです!」
先輩「知ってる」
女「愛の告白に対して随分とあっさりじゃないですか!私はスーパー緊張してるのに!」
先輩「アンタの愛の告白なんて日常茶飯事だからね」
女「特別なんです!スペシャルなんです!オンリー!ワン!的な!」
先輩「はいはい」
女「先輩が男だったら付き合ってます!それぐらい好きです!!」
先輩「分かった、分かったから。電車遅れるしさっさと歩け」
女「なぁあああああああ!!!伝わらなーい!!!!」
女「…………」
先輩「いつまでいじけてんの」
女「先輩が私の気持ちに気付いてくれるまでです」
先輩「だから分かってるって」
女「いーや、分かってないです。カスリもしてないです。明後日の方向です」
先輩「はぁ……面倒臭い」
女「どうせ面倒な女でーす」
先輩「……駅ついたけど」
女「ついちゃいましたねー」
先輩「………」
女「…………」
先輩「…………」
女「先輩、ちゅーしましょう」
先輩「は?」
女「そうです!それが一番手っ取り早い!」
先輩「いやいやいや、ないでしょ」
女「ありです!」
先輩「いや、色々と間違ってるでしょ、それは」
女「さっきの、男だったら付き合ってるというのが駄目でした。女でも付き合いたいです!」
女「先輩だから、付き合いたいんです!」
先輩「いや、あり得ないって、普通」
女「普通じゃなくてもいいです」
先輩「だって、おかしいでしょ」
女「関係ないです」
先輩「そりゃ好きだけど……そういうのじゃないし……」
女「好きなんですよね!先輩も!私の事!」
先輩「でもアンタのとは違うって」
女「だから違うって言ってたじゃないですか!」
先輩「そんな急に言われても困るし……」
女「先輩も好きなんだったら、いいじゃないですか」
先輩「………」
女「………」
先輩「…………」
女「……いっその事間違えてしまいましょう」
先輩「…………電車、来たよ」
女「乗りたくないです」
先輩「じゃあここでバイバイ、だね」
女「泣きますよ。置いて行かれた寂しさで大泣きですよ」
先輩「泣くなら乗れ。後味悪い」
女「後味悪くしてるのは先輩じゃないですか……」
女「もう友達に戻れないかも、なんて思いながら、必死になって言ったのに!」
女「友達じゃ先輩の好きが足りないんです!」
女「もっと先輩の好きを独り占めしたいんだぁあああああ!!!!」
先輩「うるさいうるさい。早く乗れ」
女「…………」
先輩「ったく、まだ人がたくさん乗る駅じゃなくて良かった……恥ずかしさで死ぬ」
女「あああああ、もう……明日からどうすりゃいいんだよー……」
先輩「…………」
女「顔合わせ辛い、気まずい……嫌だぁあああ……」
先輩「うだうだうるさい」
女「こんな事なら言わなきゃ良かった……」
先輩「私もどうしたらいいか分からない状態だっつの」
女「泣きそう」
先輩「帰ってからにして。迷惑」
女「はぁ…………」
先輩「女、こっち向いて」
女「今、泣きそうで顔クチャクチャなので嫌です」
先輩「良いから向いて」グイ
女「……や、マジで泣きそうなんで、勘弁して下さいっすー……」グスグス
先輩「……」チュ
女「へ?」
……
「ドアが閉まります、ご注意下さい」
先輩「よっと」ピョン
バタン
先輩(恥ずかしさに堪え兼ねて電車から降りてしまった)
先輩(そして電車を逃してしまった。一時間に一本ぐらいしか走らないのに)
先輩「あー、顔熱い」
先輩(別に女になら、間違えても良いと思ってるっつの、バーカバーカ)
先輩「柔らかかったなぁ……なんか甘いし」
続くor続かない
先輩(………今朝は一段と眠いな)
先輩(なんだかんだ、色々考えて眠れなかったからだろうけど)
女「……おはようございます」
先輩「なんだ、随分と湿っぽい面持ちだね」
女「昨日長湯し過ぎたからだと思いますよー」
先輩「そんな馬鹿な」
女「や、冗談ですけど」
先輩「知ってるよ」
女「…………」
先輩「気まずいの、あんまり好きじゃないんだけど」
女「私だってそうですよ!」
先輩「だから気まずくないようにしてやったのに……」
女「あれのどこが気まずくならないでいられるんですか!」
先輩「嫌だった?」
女「…………いえ」
先輩「なら問題ないね」
女「問題!大有りです!」
先輩「例えば?」
女「色々と思い出して寝られませんでした」
先輩「こっちもだよ。会えて良かった」
女「はぁ……」
先輩「座る?」
女「……是非とも」
先輩「公衆の面前で先輩を尻に敷いた心地はいかがかな?」
女「不安定です」
先輩「そりゃそうだろうね」
女「先輩が座れって言わなきゃ座りませんし」
先輩「出来れば隣を空けててあげたいけど、マナー違反だしね」
女「私がこうしてるのはマナー違反じゃないんですか?」
先輩「さぁ?迷惑をかけてなければ良いんじゃない?」
女「実を言うと、この体勢は立ってるよりもキツかったりー……しなかったり」
先輩「そうなの?私は暖かいから特に気にならないけど」
女「カイロ代わりに使わないで下さい!」
先輩「手、回した方が楽?」
女「ふおお……」
先輩「変な声出すなよ」
女「味わった事のない感覚が」
先輩「ま、普段こんな事はないだろうからね」
女「安定しましたけど、色々と不安定になりそうです!」
先輩「頼むからおかしな真似はしないでよ。迷惑だから」
女「酷い!」
女「せんぱーい」
先輩「ん?」
女「これから電車乗る時はいつもこうなんですかねー?」
先輩「うーん、気分次第」
女「それは残念です」
先輩「アンタが乗る駅でドッと乗車数が増えるし、この先も変わる事はないだろうから、隣に座るのは不可能だ」
女「私が先輩と同じ駅で乗れば解決ですね!」
先輩「そうだね」
女「先輩は私が隣にいてほしくないんですか!?」
先輩「どっちでも良いかなー」
女「腹立たしい!」
先輩「仕方のない事だと思って過ごすしかないね」
女「一人暮らしだったら簡単に先輩の家に転がり込めるのに……」
先輩「アンタは危なっかしいから、一人暮らしは駄目だ」
女「お母さんと似たような事言いますねー」
先輩「そう?」
女「そうですよ!私だって本気を出せば炊事洗濯なんでもござれですよ!」
先輩「そういう問題じゃないんだけどなー」
女「?」
先輩「はいよしよーし」
女「あ、撫でられるの好きです」
先輩「そうか」
先輩「外は寒いな」
女「そうですかー?」
先輩「逆にこれで寒くないと言える辺り凄い」
女「ギュッとしましょうか!?」
先輩「やだ」
女「寒い寒いと言いながらこの対応はいかがなものか」
先輩「恥ずかしいじゃん」
女「恥ずかしいですかー?私はそんな事ないと思うんですけどね!」
先輩「恥を捨てたら人として終わりだよ」
女「特におかしな事をしているわけでもないのに恥じる方が駄目です!」
先輩「手」
女「はい!」
先輩「さりげなく繋ぐのやめて」
女「あれれー?恥ずかしいですかー?」
先輩「うわぁ、うぜぇ」
女「そう言いながら離さない先輩好きですよ」
先輩「なんだかんだで暖かい」
女「体温が高くて良かった!」
先輩「うざい」
女「あっ!やめて!離さないで!」
先輩「マジでうっとおしい」
女「泣きますよ?」
先輩「泣け」
女「慰めてくれますか?」
先輩「慰めない」
女「好きでいてくれますか?」
先輩「嫌いになります」
女「離します……」
先輩「…………」
女「…………」
先輩「…………」
女「…………どうして繋ぎ直すんですか?」
先輩「寒い」
女「仕方がないなぁー先輩は!」
先輩「黙ってろ」
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