ガルパンSS・みほ「進路かあ」 (22)
あの夢の様な戦いから一年が経ちます。
大洗女子学園は今年も戦車道全国大会に出場し、準優勝という結果を残しました。
決勝の相手は逸見エリカさん率いる黒森峰学園で、昨年の私の奇策を十全に研究して臨んだようでした。
西住流の定石を踏まえつつ凄みの増した戦法を取ってきたのでこちらも奮戦しましたが力及ばずといったところです。
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そんな全国大会も終わって秋学期です。
戦車道クラスの引退式や最終試合などもあるわけだが目下私の頭を悩ませるのが進路のことでした。
私はそこまで勉強ができるわけじゃないけどできなくもない。
戦車道に頼らない進路、例えばぬいぐるみのデザイナーを目指すような道もあるけれど、そうした場合当然受験をすることになります。
だけど私のもとにはたくさんの招待状が来ていて、これが悩みの種なんです。
「あたしからすれば贅沢な悩みだけどなあ」と沙織さんが言うので「まあそれはそうなんだけど」と返しました。
私の戦車道の腕を買って沢山の大学から指名が来ているんです。つまりはスポーツ推薦ということです。
行きたいところに行けばいいじゃないかと思うかもしれませんが、どの学校にも恩義のある人がいるのだから困っています。
優花里さんは好奇心を抑えられない様子です。
「ちなみにどこから来てるんですか」と聞いてくるので「えっと、黒森峰大、サンダース大、白雪大、スターリン大の四つ」と私は答えました。
「四大学リーグの全校からなんてすごいですよ!」
「そうかな」
「そうです!」となんだか私より興奮しちゃっているのが優花里さんらしいなあ。
「私ならどこでも受かるだろうけど、黒森峰とスターリンは沙織じゃ厳しい」と麻子さんがねむそうな顔で言うものだから沙織さんは「私だって出来る子なんだからね!」と息巻いています。
「あれ、みんな私に合わせてくれようとしてる?」
私が聞くと皆さん呆れたような顔でこちらを見てきます。
「当たり前じゃん!」
と沙織さんが言えば華さんもこちらにしっかりと向き直りました。
「みほさんの指揮のもとで砲手を続けたいです」
「ええ、でも進路は大事なことだし私なんかに合わせること無いよ」
私は皆さんが一時の感情で重要な選択を決めてしまったのではないかと危惧していました。でも優花里さんが真面目そうに言うのです。
「私達とて考えなしではありません。そりゃあ学びたいことは各自違いますけど西住殿が誘われたのは全て名門の総合大学ですから大丈夫です。だったら西住殿と一緒に戦車道を続けられる道を選ぼうってみんなで考えたんですよ」
「一度きりの人生だ。気心のしれた仲間といるほうがいいだろ」
麻子さんもそう呟きました。私はあまりにも予想外だったのでぽかんと口を開けてしまったようです。沙織さんに「よだれが垂れるよ」と閉められてしまいました。
「それではまずどこから参りましょうか」
「潜入捜査ならお任せください。大学は制服の手配が必要ないですから簡単なものですよ」
「いや普通に堂々と行こうよ……」
「乗り換えが多いと寝れないから嫌だな」
「もう、麻子はそんなことばっかり言って!」
みんな何を言ってるんだろう。私がきょとんとしていると沙織さんに手を握られました。
「ほらみぽりん、選ぶにしてもまず実際見てみないと!」
私はやっと気が付きました。みんなは適当な軽い気持ちで私に合わせてくれるんじゃない。自分で方向を選んで、より良い道を選び抜こうとしてくれていました。
「じゃあまず黒森峰から」
「遠いな」なんて言うのは麻子さんらしいや。
「後回しにするとお姉ちゃんが悲しんじゃう」
「あの西住まほ選手がですか? にわかには信じがたいです」
優花里さんは大げさに驚いているけどお姉ちゃんはあれで結構さみしがりやなんだよね。
「それじゃあ、黒森峰大にレッツゴー!」
「そこは、パンツァー・フォーではありませんか?」
「それもそっか。じゃあみぽりん、いつもの!」
沙織さんと華さんに促されて私はいつものセリフを高らかに読み上げました。
「パンツァー・フォー!」
どこに行くことになっても、この最高の仲間達と一緒なら上手くやっていける気がします。
短いですがおわり
読んでくれて有難う
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