【艦これ】提督「A.F.G.T」 (12)
戦争が起きた。
深海棲艦と呼ばれる正体不明の化物が大海の至る所に出没し、海を荒らした。
尨大なる力を持った深海棲艦に抗う術を人類は持ち合わせていなかった。
殊に日本などの島国においてその影響は甚大であった。
海路による国交は頽廃し、海沿いの町からは人が消え、内陸部に人々が密集した。
然れどそれらの人々を雇うだけの雇用などはなく、貧しい人々が内陸部に溢れかえった。
そうして世界が衰退していくこと数年、ある技術の完成により人類は反撃に転ずる。
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艦娘。
第二次世界大戦時に建造され海に沈んだ、大日本帝国軍の艦艇の魂を宿した、女形の兵器。
日本政府は、艦娘建造工廠などを備えた小規模の軍事施設、鎮守府を、各地の港に設置し、各鎮守府に海軍士官を配置。
その士官の指揮の元、艦娘は各地で編隊を組み、深海棲艦に立ち向かった。
およそ3年に渡る戦いの末、艦娘達の活躍により、確認されている全ての深海棲艦の殲滅に成功。
港町には人が戻り、戦争時、各港町の鎮守府に配置された士官が、そのまま先頭に立って、町の復興が進められることになった。
戦争は終結した。
しかし……
各地に深く残された戦争の爪痕……『戦災』は未だ続いている。
その最たるものの一つが、艦娘を従えた、一部の士官の横暴、圧政であった。
ガシャーン!
「ん……?」
男「ど、どうかご勘弁を!これ以上食料を持って行かれたら、私共の暮らしが……!」
士官「あぁ、すまん。『分けろ』と言ってるように聞こえたか?言い直そう。『寄越せ』と言っているんだ」
男「そんな……後生です。これを持って行かれたら私たちは生きていけません!」
士官「じゃあ今死ぬか?なぁ、神通」
神通「……」
男「ヒィッ……す、すぐにお持ちします!」
「提督、クソ野郎を見つけたよ」
提督『そうか、俺が行くまで待機しろ』
「りょーかい……あ」
士官「おい」
「……りょーかい取り消し」
提督『おまっ……!』ブツッ
士官「お前……なんでお前がここにいる。勝手に鎮守府から出るなと言っておいたはずだが……」
「……呆れた、自分のとこの艦娘との見分けもつけられないなんて」
士官「何を言っている、川内」
神通「姉さん……」
川内「わからない?私はアンタのところの川内じゃないってことだよ」
士官「は……?じゃあ……」
川内「よりによって妹相手にしなきゃいけないなんて……」キラッ
士官「……!その指のリング……!まさか、お前本部の……!」
川内「ま、川内お姉ちゃんがこのクソ野郎をとっちめて……」
神通「川内姉さん、逃げ……!」
士官「う、撃て!神通!」
神通「……了解」
ドンッ!!!!!
提督「!」
「ご主人様、今の音」
提督「ああ、あっちだ。行くぞ」
「はーい、ご主人様」
『司令』
提督「聞こえたな?砲撃音のした方へ向かえ」
『了解』
モクモク
ワー!!キャー!!
士官「は……ハハハ!直撃だ!どうだ!見たか愚民ども!ここの支配者は俺だ!いいか!逆らったらお前らも……」
「浅慮でしてよ、川内。また一人で専行して」
川内「別に守ってくれなくても避けられたよ」
士官「なっ……!?」
「バカね、避けたら町に被害が出ますわよ。まぁ、そこな大バカよりはマシですけれど」
士官「ぐ……重巡熊野か……」
熊野「全く、こんな街中で艦娘に艤装を展開させるなんて。のみならず、砲撃まで。一体どんな神経してますの?」キラッ
士官「こいつもリングを……!くそっ!神通、逃げるぞ!」
神通「はい……あ……」ガクッ
士官「何してる!くっ、もういい!」ダッ
熊野「逃げましたか。艦娘を放っていくなんて、呆れてものも言えませんわ」
提督「熊野、川内」
川内「あ、遅いよ提督」
漣「漣もいるのね!」
提督「お前が場所も言わずに通信切るからだろ……対象は?」
川内「逃げてったよ」
提督「そうか。その子、神通は奴の所の艦娘か?」
川内「うん」
神通「あの……すみません……」
熊野「気にしなくてもよろしくてよ。わたくしたち艦娘は提督の命令には逆らえませんものね」
提督「足を痛めたのか?見せてみろ」
神通「あ……くっ……」
漣「ご主人様、手つきがいやらしいです!」
提督「大腿筋が肉離れを起こしてるな」
川内「肉離れ?」
「おそらく陸上で主砲を使用したせいでしょう。我々の装備は水が緩衝材になってくれる水上での運用を前提として作られていますから」
提督「霧島か」
霧島「申し訳ありません、遅れました。私が最後ですね」
提督「よし、川内、お前は神通と待機だ」
川内「えー……」
提督「漣、熊野、霧島は俺と来い。奴を捕らえる」
「「「了解」」」
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